説明

代用乳溶解装置

【課題】均一な濃度、温度等のミルクを必要量自動的に作製し得ると共に子牛等の体調に応じて哺乳することができて、例えば子牛等の価値を高めてコスト的なメリットが得られる代用乳溶解装置を提供する。
【解決手段】代用乳を溶かすに必要な水を貯留して湯沸かしする湯沸かしタンクと、代用乳を収容する代用乳タンクと、湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌溶解させると共に底部に排出口を有する溶解タンクと、溶解タンクの排出口下方に設けられた哺乳瓶載せ台と、を備え、溶解タンクによって予め定めた頭数分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが排出口から排出されて哺乳瓶載せ台上の哺乳瓶にそれぞれ充填されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子牛等を人工哺育する際に子牛等に与えるミルクを作製するための代用乳溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子牛用のミルクを作製する装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1に開示の装置(哺乳器)は、濃縮ミルク等の原液を貯える原液タンクと、原液と水を加熱しつつ混合攪拌して人工乳(ミルク)を作製する加熱攪拌タンクと、人工乳を乳頭に導く人工乳供給部と、制御機構を有し、制御機構で原液や水を供給すると共に熱源を制御して所定温度の人工乳を乳頭に供給することにより、乳頭から子牛に人工乳を与えるようしたものである。
【0003】
また、特許文献2に開示の装置(自動哺乳機)は、粉乳を貯留する粉乳槽と、攪拌羽根を有して粉乳と水を攪拌してミルクを作製する乳槽と、該乳槽に給乳導管で接続されると共に先端に哺乳口が設けられた哺乳管が接続された哺乳槽等を備え、子牛乗台に子牛が乗った際にこれを検知して、哺乳口から哺乳槽内の所定量のミルクを子牛に与えるようにしたものである。
【特許文献1】特開昭58−67131号公報
【特許文献2】実公昭48−10788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの装置にあっては、乳頭や哺乳口を子牛が吸うことにより自動的に哺乳できるものの、子牛を全頭数同じ柵内に入れてほとんど飼育者が関与しない状態で哺乳されるため、例えば各子牛の下痢症状等の体調の悪化を個体管理することが困難で、子牛の価値(出荷価格)を低下させたり、出荷までの哺育期間が延びたり、あるいは本来なら体調が悪そうな子牛だけに与えればよい薬剤を全ての子牛に与えなければならない等、コスト的にディメリットが発生し易いという問題点を有している。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、均一な濃度、温度等のミルクを必要量自動的に作製し得ると共に子牛等の体調に応じて哺乳することができて、例えば子牛等の価値を高めてコスト的なメリットが得られる代用乳溶解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、代用乳を溶かすに必要な水を貯留して湯沸かしする湯沸かしタンクと、前記代用乳を収容する代用乳タンクと、前記湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌溶解させると共に底部に排出口を有する溶解タンクと、前記溶解タンクの排出口下方に設けられた哺乳瓶載せ台と、を備え、前記溶解タンクによって予め定めた頭数分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが前記排出口から排出されて哺乳瓶載せ台上の哺乳瓶にそれぞれ充填されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記繰り返し作製されるミルクの本数が選択可能であることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、前記湯と代用乳の溶解タンクへの供給量が、湯供給用の弁の開時間と代用乳供給用のモータの作動時間とで行われることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記代用乳タンクから溶解タンクに代用乳を搬送して供給するスクリュウ装置を備え、該スクリュウ装置の排出口側に、該排出口における代用乳の吸湿等を防止する吸湿等防止手段が設けられていることを特徴とする。また、請求項5に記載の発明は、前記吸湿等防止手段が、前記スクリュウ装置の排出口と溶解タンクとを連結するガイド筒の上部に設けられ該ガイド筒内に溶解タンク方向に向けて送風するファンであることを特徴とし、請求項6に記載の発明は、前記ファンが、少なくとも溶解タンクに湯が供給されている間作動状態に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、湯沸かしタンク、代用乳タンク、溶解タンク及び哺乳瓶載せ台等を備え、溶解タンクによって予め定めた頭数分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが溶解タンクの排出口から哺乳瓶載せ台上の哺乳瓶にそれぞれ充填されるため、溶解タンクにより均一な濃度、温度等のミルクを必要量自動的に作製することができると共に、このミルクが充填された哺乳瓶により飼育者が子牛等の体調を管理しながら哺乳することができ、子牛等の体調を良好に維持してその価値を高めたり哺育期間の延長を防止できると共に無駄な薬剤の投与等を防止できて、コスト的に有利な子牛等の哺育が可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、繰り返し作製されるミルクの本数が例えば1〜数本の範囲で選択可能であるため、哺育農家の規模に応じてミルクの温度が冷めない状態の所定本数の哺乳瓶を作製できて、哺乳作業の能率向上等を図りコスト的に一層有利な溶解装置を得ることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、溶解タンクへの湯の供給量が湯供給用の弁の開時間で、また代用乳の供給量が代用乳供給用のモータの作動時間とで行われるため、電磁弁やモータ等の簡易な制御により均一な品質のミルクを簡単に作製することができる。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、代用乳タンクから溶解タンクに代用乳を供給するスクリュウ装置の排出口側に代用乳の吸湿等を防止する吸湿等防止手段が設けられているため、代用乳の吸湿によるスクリュウ装置への固着等を防止して、代用乳の溶解タンクへの搬送供給をスムーズに行うことができ、所望量の代用乳により均一な濃度のミルクを簡単に作製することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、吸湿等防止手段がスクリュウ装置の排出口と溶解タンクとを連結するガイド筒の上部に設けられて溶解タンク方向に向けて送風するファンであるため、吸湿等防止手段の構成を簡略化して安価な溶解装置を得ることができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、ファンが少なくとも溶解タンクに湯が供給されている間作動状態に設定されるため、溶解タンク内のミルクによる湿気がスクリュウ装置側へ侵入することを抑制して、代用乳タンクと溶解タンク間における代用乳の吸湿・固着等をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図12は、本発明に係わる代用乳溶解装置の一実施形態を示し、図1〜図3がその概要を示す正面図、平面図、側面図、図4が湯沸かしタンクの正面図、図5が溶解タンクの一部破断した正面図、図6〜図8が代用乳タンクの正面図、平面図、側面図、図9及び図10が哺乳瓶載せ台の変形例を示す平面図、正面図、図11が制御系のブロック図、図12が動作の一例を示す工程図である。
【0016】
図1〜図3において、代用乳溶解装置1(以下、溶解装置1という)は、縦長に枠組み構成された架台2を有し、この架台2の上部には湯沸かしタンク3と代用乳タンク4が配置され、これらタンク3、4の下方で正面視左側には溶解タンク5が配置され正面視右側には制御装置としてのコントロールボックス6が配置されている。また、架台2の下部で溶解タンク5の下方には、哺乳瓶載せ台7が設けられている。なお、以下の例では、溶解装置1により例えば1度に2リットルの哺乳瓶3本分(子牛3頭分)のミルクを作製し、21頭の子牛の哺乳に適用できる容量である場合を例にして説明する。
【0017】
前記湯沸かしタンク3は、図4に示すように、ステンレス板により直方体形状で満水容積が略6リットルに形成されたタンク本体3aと、このタンク本体3aの上面開口部に着脱可能に配置された蓋体3b等で構成されている。また、タンク本体3aの内部には、水位センサ8と水温センサ9が配置されると共にその側壁にヒータ10が配置され、さらに、タンク本体3aの側壁の上部にはオーバーフロー管11が接続され、側壁の下部には給水電磁弁12と給湯電磁弁13が接続されている。なお、タンク本体3aの底壁外面には、該タンク3を前記架台2に取り付けるための取付台3cが固定されている。そして、この湯沸かしタンク3は、給水電磁弁12からタンク3内に所定量の水が供給され、この水がヒータ10で所定温度まで加熱されて湯となり、この湯が給湯電磁弁13から溶解タンク5に給湯されるようになっている。
【0018】
前記溶解タンク5は、図5に示すように、ステンレス板により底壁に円錐部を有する略円筒形状に形成されたタンク本体5aと、このタンク本体5aの上面開口部を閉塞する皿状の蓋体5b等で構成されている。蓋体5bは、その所定位置が前記架台2に固定されると共に、その上面には攪拌モータ15が取付板を介して取り付けられており、この攪拌モータ15の回転軸は、その先端が溶解タンク5の前記円錐部内に位置して該先端部に攪拌羽根16が固定されている。また、溶解タンク5は、その側壁外面で直径方向位置に一対の把手17が固定されると共に、側壁の上部で十字の直径方向位置に4個の係止突起18がそれぞれ固定されている。
【0019】
そして、このタンク本体5aの係止突起18が、蓋体5bの側壁に下方に開口して設けられた鈎状の係止溝(図示せず)に下方から挿入されて所定方向に回転することにより係止されて、タンク本体5aが蓋体5bに装着、支持されるようになっている。なお、溶解タンク5の蓋体5bの所定位置には、前記湯沸かしタンク3の給湯電磁弁13が接続された給湯管と後述する代用乳タンク4のガイド筒22が嵌挿する開口(図示せず)がそれぞれ設けられている。また、溶解タンク5のタンク本体5aの円錐部の底壁には排出口5cが設けられ、この排出口5cには手動により開閉可能な排出コック19が接続されている。この溶解タンク5は、攪拌羽根16が回転することにより、内部に投入された湯と代用乳が攪拌溶解されてミルクが作製され、このミルクが排出口5c及び排出コック19から下方に排出されるようになっている。
【0020】
前記代用乳タンク4は、図6〜図8に示すように、ステンレス板により横断面が長方形状のホッパ形状で代用乳が14リットル(約7Kg分)収容できるタンク本体4aと、このタンク本体4aの上面開口部を閉塞する蓋体4b等で構成され、その側壁には透明な収容量表示窓4c設けられると共に、その下部にはスクリュウ装置20が配置されている。このスクリュウ装置20は、樋状のスクリュウケース20aと、このケース20a内にスクリュウモータ20cにより回転可能に配設されたスクリュウ20b等を有している。
【0021】
そして、このスクリュウ20bの長手方向の所定位置には、代用乳タンク4のタンク本体4a底面の排出口の大きさに対応した所定間隔を有する一対の規制板21が配置されている。この規制板21は、スクリュウ20bの羽根の外径より僅かに大きな内径の略半円弧形状の凹部を有し、この凹部がスクリュウ20bの外側に位置した状態でスクリュウケース20a内に垂直状態で配置されることにより、代用乳タンク4から排出される粉ミルクからなる代用乳が、スクリュウ装置20の始端側や排出側にその粉体特性により侵入することが防止されるようになっている。
【0022】
また、スクリュウケース20aの排出口側にはガイド筒22が取り付けられており、このガイド筒22は、スクリュウ20bの搬送方向に対して直交する上下方向に指向して設けられ、その下面開口部が代用乳排出口となって前記溶解タンク5の蓋体5bの開口部に嵌挿されている。また、ガイド筒22の上面には、例えばプロペラファン等の防湿ファン23が配置されており、この防湿ファン23による送風がガイド22筒内を上から下方向に流れるように設定され、この防湿ファン23によって、溶解タンク5内の湿気による代用乳の吸湿や固着等が抑制される。そして、この代用乳タンク4は、内部に投入された代用乳が、スクリュウ装置20の作動によりガイド筒22まで搬送されて、該ガイド筒22から下方に落下して前記溶解タンク5内に供給(投入)されるようになっている。
【0023】
前記哺乳瓶載せ台7は、図1に示すように、架台2の所定高さ位置にステンレス板を平坦に配置することにより形成されており、この場合、哺乳瓶載せ台7の表面(上面)に、例えば溶解タンク5の排出口5cの位置を示す表示等を設けることが好ましい。なお、この哺乳瓶載せ台7は平坦状に限らず、例えば図9及び図10に示すように、哺乳瓶載せ台7の略中央部にすり鉢状の凹部33を形成し、この凹部33の最深の平坦部33aを溶解タンク5の排出口5c下方に位置させると共に、平坦部33aに図示しない排水ホースが接続される排水口34を設けるようにしても良い。このように構成すれば、哺乳瓶載せ台7の表面(上面)の水洗いが可能となって該載せ台7を清潔に維持できることになる。
【0024】
このように構成された湯沸かしタンク3、溶解タンク5及び代用乳タンク4は、図11に示すように、前記コントロールボックス6に接続されている。すなわち、コントロールボックス6は、マイコンやシーケンサー等で構成された制御部6a、操作パネル6b(図1参照)及び電源回路等を有し、制御部6aの入力側には、メインスイッチ25、運転スイッチ26、ユーザー設定入力部27、前記水位センサ8、水温センサ9、外気温センサ14等が接続されると共に、その出力側には、電源ランプ28、運転ランプ29、溶解完了ランプ30、洗浄完了ランプ31、異常ランプ32等のランプ類と、前記給水電磁弁12、給湯電磁弁13、ヒータ10、スクリュウモータ20c、攪拌モータ15及び防湿ファン23等が接続されている。
【0025】
次に、この溶解装置1の動作の一例を図12の工程図に基づいて説明する。先ず、コントロールボックス6のメインスイッチ25をオンすると溶解装置1が作動可能な状態となり、この状態でユーザー設定入力部27により、ミルクの作製本数を設定すると共に湯沸かし温度を設定する。この時、本数の設定は例えばロータリースイッチの回転操作によって、該設定入力部27に予め設定されている複数種類の設定本数からの選択で行われ、温度設定は例えば温度設定用の設定釦の操作で行われる。
【0026】
本数と温度等を設定して運転スイッチ26がオンすると、給水電磁弁12が開いて湯沸かしタンク3に所定量の水(本例の場合哺乳瓶3本分の水)が給水され、その給水量が所定量に達して水位センサ8が作動すると給水電磁弁12が閉となって給水工程(K1)が実行される。次に、給水が完了し水温センサ9で検出される温度が設定温度以下であることが確認されると、ヒータ10に通電されて湯沸かしタンク3内の水が所定温度まで加熱される湯沸かし工程(K2)が実行される。
【0027】
この湯沸かし工程K2で湯沸かしタンク3内の水が所定温度まで加熱されたら、給湯電磁弁13が開いて、選択された哺乳瓶本数に対応する量の湯(本例の場合哺乳瓶3本分)が溶解タンク5内に供給されて給湯工程(K3)が実行される。この給湯工程K3における湯の供給量の制御は、給湯電磁弁13の開時間によって行われ、この時の給湯は自動と手動のいずれかで行えるようになっており、自動の場合には、湯沸かし工程K2が終了すると自動的に給湯工程K3に移行し手動の場合には、給湯スイッチを押すことにより給湯電磁弁13が開となり給湯工程K3に移行する。なお、給湯電磁弁13の開時間は、哺乳瓶の作製本数によって決まり、自動も手動も同じ時間となっている。
【0028】
そして、給湯工程K3が開始されると略同時もしくは所定時間後に、代用乳供給工程(K4)が実行される。この代用乳供給工程K4は、スクリュウ装置20のスクリュウ20bの回転時間(すなわちスクリュウモータ20cの作動時間)で制御され、この時間も実験によって求めた値が予めコントロールボックス6の制御部6a内に記憶されており、設定した本数等に応じて所定の値(作動時間)が選択されるようになっている。この代用乳供給工程K4において、スクリュウ装置20に規制板21が設けられていることから、代用乳タンク4に収容された粉ミルクからなる代用乳が、前述したようにスクリュウケース20aの始端側や排出口側に侵入することがなくなり、スクリュウ20bの回転時間に応じた量の代用乳がスクリュウ装置20でその下流側に搬送されて排出口からガイド筒22内に排出される。
【0029】
また、ガイド筒22内に排出された代用乳は、ガイド筒22の下端開口が溶解タンク5内に開口していることから、溶解タンク5内に湯が供給されている場合、その湿気がガイド筒22内を上昇しようとするが、この湿気は、メインスイッチ25(もしくは運転スイッチ26)のオンと同時に回転している防湿ファン23による送風でガイド筒22内への侵入が防止されている。これにより、スクリュウ装置20の排出口からガイド筒22内に排出された代用乳が吸湿してガイド筒22の内面等に固着することがなくなり、代用乳がガイド筒22内を送風(追い風)を受けながらスムーズに落下(流下)して溶解タンク5内に投入されることになる。
【0030】
前記代用乳供給工程K4においてスクリュウ装置20が作動すると、これと同時もしくは所定時間後に、攪拌モータ15も作動して攪拌羽根16が所定時間回転して、溶解タンク5内に供給される湯と代用乳とが攪拌される攪拌溶解工程(K5)が実行される。この攪拌溶解工程K5によって必要量の湯と代用乳が攪拌溶解されると、溶解完了ランプ30が点灯して作業完了を作業者に知らせ、この知らせにより、作業者が哺乳瓶載せ台7上に哺乳瓶を載置して、溶解タンク5の排出コック19を開いて哺乳瓶にミルクを充填する充填工程(K6)を実行される。この充填工程K6は、予め選択設定した本数に応じた量のミルクが溶解タンク5内に作製されていることから、作業員の手作業によって、排出コック19の開閉動作と哺乳瓶への充填動作の繰り返しによって行われる。なお、ミルクの哺乳瓶への充填作業としては、排出コック19の手作業による開閉操作に限らず、例えば排出コック19の代わりに電磁弁を使用してスイッチ操作により所定量自動的に充填させることもできる。
【0031】
そして、この例の溶解装置1の場合、溶解タンク5内に作製されたミルクの量が哺乳瓶3本分であることから、作業者は、最初の3本の哺乳瓶にミルクを充填したら次の3本を作製するために、溶解装置1を前記給湯工程K1に戻して該工程K1以降を実行させると共に、充填した哺乳瓶を子牛の柵にセットして各子牛の個体観察を行って溶解装置1の場所に戻る。この作業がおおよそ5分ぐらいであることから、前記溶解装置1の場合、一連のミルク作製が5分程度で終わるように、ヒータ11の容量や各種電磁弁12、13のオリフィス径が予め設定されている。
【0032】
前記充填工程K6で一連の作業が終了したら、溶解タンク5のタンク本体5aを蓋体5bから取り外して、タンク本体5a、攪拌羽根16、蓋体5b等を洗浄する洗浄工程(K7)が実行される。この時、タンク本体5aの蓋体5bに対する取り外しは、タンク本体5aの把手17を手で持って円周方向に僅かに回転させることで、タンク本体5aの係止突起18と蓋体5bの係止溝の係止状態が解除され、タンク本体5aがその重みで下方に移動することにより、すなわちタンク本体5aの蓋体5bに対する回転操作という略ワンタッチ操作で行うことができる。また、洗浄工程K7時に、前述したように哺乳瓶載せ台7に排水口34や排水ホースが設けられている場合には、例えば溶解タンク5のタンク本体を蓋体5bから取り外すことなく、洗浄用の水や湯を湯沸かしタンク3から溶解タンク5及び哺乳瓶載せ台7上に流すことで、これらの経路を自動的洗浄することができたり、哺乳瓶載せ台7を別途設けた洗浄用ホースにより水洗いできることになる。
【0033】
つまり、前記溶解装置1を使用すれば、ミルクを自動的に作製する自動作業部分と哺乳瓶に作製したミルクを充填したりこのミルクが充填された哺乳瓶を使用して子牛に哺乳する手作業部分とを効果的に結び付けることができて、各子牛の個体管理を行いつつ均一なミルクによる哺育作業が効率的に行えることになる。
【0034】
このように、上記実施形態の溶解装置1にあっては、湯沸かしタンク3、代用乳タンク4、溶解タンク5及び哺乳瓶載せ台7等を備えて、溶解タンク5によって子牛3頭分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが溶解タンク5の排出コック19から哺乳瓶載せ台7上の3本の哺乳瓶にそれぞれ充填されるため、溶解タンク5によって均一な濃度、温度等のミルクを必要量自動的に作製することができると共に、このミルクが充填された哺乳瓶により飼育者が子牛の体調等を管理しながら哺乳することができる。その結果、子牛の体調を良好に維持して販売時の価値を高めたり哺育期間の延長を防止することができると共に無駄な薬剤の投与等を防止できて、子牛の哺育コストを低減化させること等が可能となる。
【0035】
また、一回の溶解作業で作製されるミルクの本数が、ユーザー入力設定部27により1〜数本まで入力設定できるため、哺育農家の規模に応じた最適本数の哺乳瓶を作製できて、汎用性に優れた溶解装置1の提供が可能になると共に、ミルクの温度が冷めない状態の各哺乳瓶によりスピーディに哺乳でき、哺乳作業の能率向上等を図って、一層コスト的に有利な溶解装置1を提供することが可能となる。
【0036】
さらに、溶解タンク5への湯の供給量が給湯電磁弁13の開時間で行われると共に、代用乳の供給量が代用乳供給用のスクリュウーモータ20cの作動時間で行われるため、電磁弁13やモータ20c等の制御により均一な品質のミルクを簡単に作製することができる。特に、スクリュウ装置20に規制板21が設けられているため、この規制板21でスクリュウケース20aの始端側や排出口側への代用乳の侵入を抑制でき、スクリュウモータ20cの作動時間に応じた量の代用乳をガイド筒22内に確実に排出、すなわち溶解タンク5内に供給される代用乳の量を高精度に維持することができる。
【0037】
また、代用乳タンク4のスクリュウ装置20の排出口側に、ガイド筒22内に送風して溶解タンク5内の湿気による代用乳の吸湿を防止する防湿ファン23が配置されているため、溶解タンク5に供給される代用乳の吸湿によるガイド筒22やスクリュウ装置20への固着等を防止して、代用乳の溶解タンク5への搬送供給をスムーズに行うことができる。特に、防湿ファン23がメインスイッチ25(もしくは運転スイッチ26)のオンと同時に作動するため、少なくとも溶解タンク5に湯が供給されている間作動状態を維持することができて、湯の湿気による代用乳の吸湿を確実に防止して所定量の代用乳を溶解タンク5に供給することができ、これらにより、より一層均一な濃度のミルクの作製が可能となる。
【0038】
またさらに、防湿ファン23を設けることで代用乳の吸湿、固着を防止できるため、吸湿防止構造を簡略化して溶解装置1を安価に形成することができると共に、各タンク3〜5が縦長の架台2内に効率的に配置されたり、哺乳瓶載せ台7やコントロールボックス6が作業のし易い位置に配置されているため、溶解装置1の例えば牛舎内への効率的な設置が可能となったり、作製したミルクの充填作業や哺乳瓶のセット作業等を容易に行うことができる。また、哺乳瓶載せ台7に凹部33や排水口34を設けるようにすれば、湯沸かしタンク3や溶解タンク4及び哺乳瓶載せ台7の自動洗浄が可能になると共に、哺乳瓶載せ台7の洗浄が容易となって常に清潔に維持できる等、使い勝手に優れた溶解装置1の提供が可能となる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、防湿ファン23としてプロペラファンを使用してガイド筒22内に送風したが、例えばシロッコファンやクロスフローファン等を使用すると共にガイド筒22内に誘導板を配置し、この誘導板によって送風を誘導しつつ代用乳の吸湿・固着を防止する構造とすることもできる。また、上記実施形態における、溶解装置全体の容量、各タンクの容量、架台に対する各タンクの配置位置、コントロールボックス6の操作パネル6bの形態等は一例であって、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、子牛への哺乳に限らず、子豚等の各種哺乳家畜の哺乳にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる代用乳溶解装置の一実施形態を示す概略正面図
【図2】同その平面図
【図3】同その側面図
【図4】同湯沸かしタンクの正面図
【図5】同溶解タンクの一部破断した正面図
【図6】同代用乳タンクの正面図
【図7】同その平面図
【図8】同その側面図
【図9】同哺乳瓶載せ台の変形例を示す平面図
【図10】同その正面図
【図11】同制御系のブロック部
【図12】同動作の一例を示す工程図
【符号の説明】
【0042】
1・・・代用乳溶解装置、2・・・架台、3・・・湯沸かしタンク、4・・・代用乳タンク、5・・・溶解タンク、5c・・・排出口、6・・・コントロールボックス、7・・・哺乳瓶載せ台、8・・・水位センサ、9・・・水温センサ、10・・・ヒータ、12・・・給水電磁弁、13・・・給湯電磁弁、15・・・攪拌モータ、16・・・攪拌羽根、17・・・把手、18・・・係止突起、19・・・排出コック、20・・・スクリュウ装置、20a・・・スクリュウケース、20b・・・スクリュウ、20c・・・スクリュウモータ、21・・・規制板、22・・・ガイド筒、23・・・防湿ファン、27・・・ユーザー入力設定部、33・・・凹部、34・・・排水口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代用乳を溶かすに必要な水を貯留して湯沸かしする湯沸かしタンクと、前記代用乳を収容する代用乳タンクと、前記湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌溶解させると共に底部に排出口を有する溶解タンクと、前記溶解タンクの排出口下方に設けられた哺乳瓶載せ台と、を備え、
前記溶解タンクによって予め定めた頭数分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが前記排出口から排出されて哺乳瓶載せ台上の哺乳瓶にそれぞれ充填されることを特徴とする代用乳溶解装置。
【請求項2】
前記繰り返し作製されるミルクの本数が選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の代用乳溶解装置。
【請求項3】
前記湯と代用乳の溶解タンクへの供給量が、湯供給用の弁の開時間と代用乳供給用のモータの作動時間とで行われることを特徴とする請求項1または2に記載の代用乳溶解装置。
【請求項4】
前記代用乳タンクから溶解タンクに代用乳を搬送して供給するスクリュウ装置を備え、該スクリュウ装置の排出口側に、該排出口における代用乳の吸湿等を防止する吸湿等防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の代用乳溶解装置。
【請求項5】
前記吸湿等防止手段は、前記スクリュウ装置の排出口と溶解タンクとを連結するガイド筒の上部に設けられ該ガイド筒内に溶解タンク方向に向けて送風するファンであることを特徴とする請求項4に記載の代用乳溶解装置。
【請求項6】
前記ファンは、少なくとも溶解タンクに湯が供給されている間作動状態に設定されることを特徴とする請求項5に記載の代用乳溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−244279(P2007−244279A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72043(P2006−72043)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000197344)静岡製機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】