説明

代用乳溶解装置

【課題】代用乳の種類等に係わらず最適な溶解状態が得られて均一な品質のミルクを常に安定して作製することが可能な代用乳溶解装置を提供する。
【解決手段】代用乳を溶かすに必要な水を貯留してヒータで湯沸かしする湯沸かしタンクと、代用乳を一時貯留する代用乳タンクと、湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌して溶解させる溶解タンクと、各タンクを制御する制御装置と、を備えた代用乳溶解装置であって、制御装置は、代用乳タンクと溶解タンクとの間に配置された代用乳定量供給機構を制御すると共に、湯沸かしタンクから溶解タンクへの給湯量が操作スイッチの選択操作に応じて複数段階に制御可能であることを特徴とする。前記制御装置は、給湯量の複数段階の制御を電磁バルブの開閉時間で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子牛等を人工哺育する際に各子牛等に与えるミルクを作製するための代用乳溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子牛哺育用のミルクを作製する装置としては、例えば特許文献1に開示されている。この装置(自動哺乳機)は、粉乳(代用乳)を貯留する粉乳槽と、攪拌羽根を有して代用乳と水を攪拌してミルクを作製する乳槽と、該乳槽に給乳導管で接続されると共に先端に哺乳口が設けられた哺乳管が接続された哺乳槽等を備え、子牛乗台に子牛が乗った際にこれを検知して、哺乳口から哺乳槽内の所定量のミルクを子牛に与えるようにしたものである。
【特許文献1】実公昭48−10788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような装置にあっては、代用乳の特性(粉体特性)がメーカ毎または同一メーカでも銘柄毎に異なるため、例えば一定量の代用乳に対する溶解に必要な湯量も異なり給湯量の微調整が必要となるが、このような調整を行うことが現実的に困難である等、代用乳の種類等に係わらず濃度や温度等の品質が均一なミルクを常に安定して作製することが難しい。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、代用乳の種類等に係わらず最適な溶解状態が得られて均一な品質のミルクを常に安定して作製することが可能な代用乳溶解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、代用乳を溶かすに必要な水を貯留してヒータで湯沸かしする湯沸かしタンクと、前記代用乳を一時貯留する代用乳タンクと、前記湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌して溶解させる溶解タンクと、前記各タンクを制御する制御装置と、を備えた代用乳溶解装置であって、前記制御装置は、前記代用乳タンクと溶解タンクとの間に配置された代用乳定量供給機構を制御すると共に、前記湯沸かしタンクから溶解タンクへの給湯量が操作スイッチの選択操作に応じて複数段階に制御可能であることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記制御装置が、前記給湯量の複数段階の制御を電磁バルブの開閉時間で行うことを特徴とし、請求項3に記載の発明は、前記制御装置が、前記給湯量のチェック機能と微調整機能を有することを特徴とする。また、請求項4に記載の発明は、前記制御装置が、湯面高さによる給湯量の変化を前記選択された給湯量の応じて補正することを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記制御装置が、前記湯沸かしタンク内への給水が完了した時点で水温センサにより水温検出を開始し、設定温度より低い水温を検出した際にヒータに通電して湯沸かしを開始すると共に、水温センサで検出された水温が前記設定温度以上でかつ予め設定した時間が経過した際にはヒータの通電を停止して湯沸かしを終了することを特徴とする。また、請求項6に記載の発明は、前記制御装置が、ミルクの出来上がり温度として、操作スイッチで設定された温度に溶解タンクの湯温低下と代用乳供給による湯温低下を加算した値で制御する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、各タンクを制御する制御装置によって、代用乳タンクと溶解タンクとの間に配置された代用乳定量供給機構が制御されると共に、湯沸かしタンクから溶解タンクへの給湯量が操作スイッチの選択操作に応じて複数段階に制御可能であるため、代用乳や湯の量を代用乳の種類に応じて制御できて、代用乳の種類等に係わらず最適な溶解状態を得ることができ、所望温度等の均一な品質のミルクを常に安定して作製することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、制御装置により、給湯量の複数段階の制御が電磁バルブの開閉時間で行われるため、制御自体を簡略化しつつ給湯量を高精度に制御することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、制御装置が給湯量のチェック機能と微調整機能を有するため、チェック機能により給湯量を確認しつつ微調整機能により給湯量を微調整できて、代用乳の種類等に係わらず一層最適な溶解状態を得ることができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、制御装置により、湯面の高さによる給湯量の変化が選択された給湯量に応じて補正されるため、例えば作製されるミルクの本数に応じた給湯量が得られて、より一層最適な溶解状態を得ることができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、制御装置により、水温センサで水温検出が開始されてから、水温が設定温度以上となりかつ予め設定した時間が経過するとヒータの通電を停止して湯沸かしを終了するため、例えば連続してミルクを作製する場合の湯沸かしタンク内の残湯による湯温の計測誤差の発生を抑制できて、所望温度のミルクを容易に作製することができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5に記載の発明の効果に加え、制御装置により、ミルクの出来上がり温度が操作スイッチで設定された温度に溶解タンクの湯温低下と代用乳供給による湯温低下を加算した値で制御されるため、湯沸かしタンク内の位置による湯温の計測誤差の発生を補正できて、所望温度のミルクを容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7は、本発明に係わる代用乳溶解装置の一実施形態を示し、図1がその概要を示す正面図、図2が操作パネルの正面図、図3が制御系のブロック図、図4がミルク作製の一例を示す工程図、図5及び図6がその具体的な動作を示すフローチャート、図7がそのタイミングチャートである。
【0015】
図1において、代用乳溶解装置1(以下、溶解装置1という)は、縦長に枠組み構成された架台2を有し、この架台2の上部には湯沸かしタンク3と代用乳タンク4が配置され、これらタンク3、4の下方で正面視左側には溶解タンク5が配置されると共に正面視右側には操作パネル6bを有する制御装置6が配置されている。また、架台2の下部で溶解タンク5の下方には、例えば平坦なステンレス板で形成された哺乳瓶載せ台7が設けられている。
【0016】
前記湯沸かしタンク3は、ステンレス板により上面開口部が蓋体が閉塞された直方体形状に形成され、その内部には水位センサ8と水温センサ9(図3参照)が配置されると共に、底壁内面側にはヒータ10が配置されている。また、前記溶解タンク5は、ステンレス板により底壁に円錐部を有する略円筒形状に形成され、その内部には、上面板上に配置された攪拌モータ11の作動により回転する攪拌羽根12が回転可能に配置されると共に、底壁に排出口が設けられ、この排出口には手動もしくは自動により開閉可能な排出コック13が接続されている。
【0017】
さらに、前記代用乳タンク4は、例えば樹脂成形により横断面が円形のホッパ形状に形成され、その内部に掻き出し羽根14が回転可能に配置されると共に、底壁の直径方向の一端側には排出口が設けられている。そして、この排出口の下方には、スクリュウモータ15aの作動により回転する代用乳定量供給部としてのスクリュウ装置15が配置され、このスクリュウ装置15の排出口にはガイド筒16が接続されている。このガイド筒16は、その下端開口部が前記溶解タンク5の上面板の開口部に接続され、ガイド筒16の上部には代用乳の吸湿、固着等を防止する例えばプロペラファン等のファン17が配置されている。
【0018】
前記制御装置6は、筐体内に配置されたマイコン等の制御部6a(図3参照)と操作パネル6b及び電源部(図示せず)等を有し、操作パネル6bは、例えば図2に示すように構成されている。すなわち、操作パネル6bは正面視横長の長方形状に形成され、その右端側上部に電源ランプ20と完了ランプ21が配置され、完了ランプ21の下方には溶解スイッチ22、洗浄スイッチ23及び停止スイッチ24が配置されている。また、溶解スイッチ22等の左側には、手動攪拌スイッチ25と、自動ランプ26aと手動ランプ26b及びその選択スイッチ26cからなる給湯開始スイッチ26が配置されている。さらに、これらの各スイッチの左側には、哺乳瓶給湯量選択表示部27、代用乳量濃度調整選択表示部28、1本当たりの代用乳量選択表示部29、給湯量調整選択表示部30が順に配置されており、これらの各選択表示部27〜30は、複数のランプ27a〜30aと選択スイッチ27b〜30bによって構成されている。
【0019】
また、操作パネル6bの前記1本当たりの代用乳量選択表示部29と給湯量調整選択表示部30には、1本分チェックスイッチ29c、30cが配置されており、このチェックスイッチ29c、30cを押すことにより、哺乳瓶1本分の代用乳量と給湯量がチェックできるように設定されている。またさらに、操作パネル6bの略中央上部には、2桁の数字を表示する7セグメントからなる表示器31と、ミルク温度設定用の上げるスイッチ32aと下げるスイッチ32bが配置され、左端側上部には、給水、湯沸かし、代用乳供給、攪拌の工程表示ランプ33が横方向に配置されている。
【0020】
そして、この操作パネル6bを有する制御装置6は、図3に示すように構成されている。すなわち、制御装置6の制御部6aの入力側には、溶解スイッチ22、洗浄スイッチ23、停止スイッチ24、手動攪拌スイッチ25、給湯開始スイッチ26、上げるスイッチ32a、下げるスイッチ32b及び各種選択スイッチ26c、27b〜30b、1本分チェックスイッチ29c、30cが接続されると共に、湯沸かしタンク3内の水位センサ8と水温センサ9及び架台2の適宜位置に配置した外気温センサ34が接続されている。
【0021】
また、制御部6aの出力側には、前記電源ランプ20、完了ランプ21、工程表示ランプ33、自動・手動ランプ26a、26b及び前記各選択表示部27〜30の各種ランプ27a〜30aが接続されている。また、制御部6aの出力側には、湯沸かしタンク3に水を供給するための給水バルブ35、湯沸かしタンク3内の湯を溶解タンク5に供給するための給湯バルブ36、前記ヒータ10、スクリュウモータ15a、攪拌モータ11、ファン17が接続されると共に、前記表示器31等が接続されている。
【0022】
次に、前記溶解装置1の動作を図4〜図7に基づいて説明する。先ず、溶解装置1は、図4の基本工程図に示すように、例えば給水工程K1、湯沸かし工程K2、代用乳供給工程K3、攪拌溶解工程K4、充填工程K5及び洗浄工程K6の6つの工程によって、所定量のミルクが作製されて子牛に哺乳されるようになっている。そして、これらの工程K1〜K6のうち、前記給水工程K1から攪拌溶解工程K4までは、図5および図6に示すフロチーャートに基づいて、前記制御部6aの制御信号によって自動的に実行される。以下、これらのフロチーャートについて説明する。
【0023】
先ず、図5に示すように、本体に電源が供給(S100)されると、電源ランプ20が点灯(S101)すると共にファン17がON(S102)し、この状態で前記操作パネル6bの例えば溶解スイッチ22がオン(S103)すると、給水バルブ35がオン(開)(S104)となり湯沸かしタンク3内に給水が開始される。そして、湯沸かしタンク3が満水か否か、すなわち水位センサ8がオンか否かが判断(S105)され、この判断S105で「YES」となった時点で給水バルブ35がオフ(閉)(S107)となる。このステップS104〜106により、前記給水工程K1が実行される。
【0024】
ステップS106で給水バルブ35がオフになると、水温センサ9により水温計測(水温検出)が開始(S107)され、設定された給湯設定温度に達したか否かが判断(S108)され、この判断S108で「NO」の場合は、ヒータ10をオン(S109)させて判断S108に戻る。一方、判断S108で「YES」の場合は、予め設定した所定時間が経過したか否かが判断(S110)され、この判断S110で「NO」の場合は判断S108に戻り、判断S110で「YES」の場合は湯沸かしを終了(S111)してヒータ10をオフ(S112)させる。なお、判断S110で使用される所定時間としては、例えば最大20秒が使用され、このステップS107〜112により、例えば水温計測が開始されてから所定時間が経過した場合は、自動的に湯沸かし終了と判断(タイムアウト)されることになり、例えば、連続してミルクを作製する場合の、湯沸かしタンク3内の残湯による湯温の計測誤差の発生を抑制することができる。
【0025】
そして、ステップS112でヒータ10がオフすると、給湯バルブ36がオン(S113)となり湯沸かしタンク3内の湯が溶解タンク5内に供給される。また、前記ステップS112でヒータ10がオフすると、所定のディレイ時間Ta(例えば5秒)後にスクリュウモータ15aと攪拌モータ11が同時にオン(S114)してスクリュウ装置15が作動すると共に攪拌羽根12が回転(駆動)する。このスクリュウ装置15と攪拌羽根12の駆動状態で、制御部6bにより給湯バルブ36のオン時間T1が算出(S115)されると共に、スクリュウ装置15の駆動時間T2が算出(S116)される。
【0026】
この時の給湯バルブ36のオン時間T1の算出は、前記哺乳瓶給湯量選択表示部27の選択スイッチ27bと給湯量調整選択表示部30の選択スイッチ30bの選択位置に応じて算出され、また、スクリュウ装置15の駆動時間T2の算出は、前記哺乳瓶給湯量選択表示部27の選択スイッチ27bと1本当たりの代用乳量選択表示部29の選択スイッチ29b及び代用乳量濃度調整選択表示部28の選択スイッチ28bの選択位置に応じて算出される。
【0027】
すなわち、時間T1の算出は、代用乳作製本数の最大量(本例の場合哺乳瓶5本で9リットル)に合わせて、例えば哺乳瓶給湯量が5.4リットル(哺乳瓶3本)の場合、T1=(TB+TL)/5×3+TH(但し、TBは哺乳瓶5本分排出に必要な給湯バルブ36の動作時間、TH:3本時の水面位置変位による追加時間、TL:給湯量調整選択表示部30の選択スイッチ30bによる補正値で、例えばTB=75.5でTB+TL=79.7)で算出される。なお、この給湯時間は、実験により求めた給湯量と給湯時間のデータに基づいている。このステップS115により、湯沸かしタンク3内の水面の位置変化(すなわち湯面の高さの変化)に応じて、給湯バルブ36の開閉時間(すなわち給湯量)が設定されることになる。
【0028】
また、時間T2の算出は、哺乳瓶が例えば3本の場合、T2=Tc+Td+X1×3×Te(但し、Tc:ミルク900gを搬送するに必要な基本時間、Td:代用乳量濃度調整選択表示部28の選択スイッチ28bで選択設定された値、Te:(Tc+Td)/18、X1:1本当たりの代用乳量選択表示部29の選択スイッチ29bで設定された定数でスイッチ位置に応じた例えば−2〜+6までの値)で算出される。この時間T2算出時に、TDやX1等を使用する理由は、代用乳のメーカ毎に前記スクリュウ装置15による排出量(すなわち溶解タンク5への供給量)を実験したところ、排出量がメーカ間にバラツキがあり、スクリュウ装置15の駆動時間を一定に設定した場合、メーカ毎に溶解タンク5に供給される代用乳の量、すなわち作製されるミルクの濃度が異なり子牛の哺育上好ましくないからである。この点は、同一メーカの銘柄の違いによっても異なることが実験的に確認されている。
【0029】
このようにして、給湯バルブ36のオン時間T1とスクリュウ装置15の駆動時間T2が算出されると、攪拌時間T3が算出(S117)され、その後、前記時間T2が経過したか否かが判断(S118)されると共に、前記時間T1が経過したか否かが判断(S119)される。なお、時間T3は、T3=T2+TF、但しTF:攪拌モータ11の駆動時間で例えば10秒)で算出される。そして、両判断S118とS119で共に「YES」となった時点で、スクリュウ装置15が停止(S120)すると共に給湯バルブ36がOFF(S121)となり、その後、時間T3が経過したか否かが判断(S122)される。攪拌時間T3が経過して判断S122で「YES」になると、攪拌モータ11が停止(S123)し、停止スイッチ24がONか否かが判断(S124)される。このステップS114〜S124により、前記給湯工程K3、代用乳供給工程K4及び攪拌溶解工程K5が一部並行して実行されることになる。そして、判断S124で「YES」の場合に、前記ステップS103に戻り溶解スイッチ22が再びONされた場合に、ステップS104以降を繰り返す。
【0030】
ところで、前記判断S108で使用される設定温度は、例えば図6に示すようにして設定される。以下、図5と同一ステップには同一符号を付して説明する。すなわち、本体に電源が供給(S100)されると、電源ランプ20が点灯(S101)すると共にファン17がON(S102)し、設定温度が前記表示器31に表示(S201)され、表示器31の横に配置した上げるスイッチ32aがONか否かが判断(S202)される。この判断S202で「YES」の場合は、上げる・下げるスイッチ32a、32bが1秒以上ONを継続か否かが判断(S203)され、この判断S203で「YES」の場合は、設定温度の値をアップもしくはダウン(S204)させる。この時、設定可能な温度範囲は34〜46℃とし、この範囲外の設定は不可能とする。
【0031】
そして、ステップS204で設定温度がアップもしくはダウンされると、上げる・下げるスイッチ32a、32bがONか否かが再び判断(S205)され、この判断S205で「YES」の場合はステップS204に戻り、判断S205で「NO」の場合は上げる・下げるスイッチ32a、32bが2秒以内に再度ONか否かが判断(S208)される。この判断S208で「YES」の場合は、前記ステップS204と同様のステップS209を行い、判断S203に戻り、判断S208で「NO」の場合はステップS201に戻る。また、前記判断S202で「NO」の場合、すなわち上げるスイッチ32aがOFFの場合は、下げるスイッチ32bがONか否かが判断(S206)され、この判断S206で「YES」の場合は判断S203に移行し、判断S206で「NO」の場合は、溶解・洗浄スイッチ22、23がONか否かが判断(S207)される。そして、この判断S207で「YES」の場合は、各工程に分岐(S210)し、判断S207で「NO」の場合は、ステップS201に戻る。
【0032】
なお、この給湯温度の設定については、外気温センサ34で検出された温度に基づいて調整(増減)されるようになっている。すなわち、例えば外気温が低い場合には、設定温度で作製されたミルクの放熱量が大きくて温度低下が生じ易いため、設定温度を所定温度上昇させて、溶解タンク5内において温度低下が起きても溶解タンク5から排出されるミルクの温度を目標温度により近づけるようにする。具体的には、制御装置6内に記憶されているユーザーが設定した給湯温度に対する補正値(例えば外気温度が0℃の場合は補正値が+11で外気温度が30℃の場合は補正値が+5)を使用し、ユーザーが設定した給湯温度にこの補正値が加えられるようになっている。つまり、例えば40℃の湯を必要とする場合、外気温度が0℃の時は51℃に設定し外気温度が30℃の時は45℃に設定する。
【0033】
また、この時、哺乳瓶の本数に応じた補正も加味され、例えば本数が1本の場合は補正値8で本数が4本の場合は−1.5が使用され、例えば1本の場合は設定温度を8℃アップさせ、4本の場合は設定温度を1.5℃ダウンさせる。これらの補正により、湯の温度が外気温度に応じて適正な値に設定されることになる。
【0034】
以上の給水工程K1から攪拌溶解工程K4までにおける、各バルブ35、36やモータ11、15a等の動作状態を示すのが図7のタイミングチャートである。このタイミングチャートから明らかなように、給水バルブ35がオンからオフとなった時点で水温センサ9により水温計測が開始されると共に、最大20秒の待ち時間をおいてヒータ10が作動し、その後、給湯バルブ36が前記所定時間T1オンとなる。また、ヒータ10の停止後、ディレイ時間Taをおいてスクリュウモータ15aが前記所定時間T2駆動すると共に、攪拌モータ11もディレイ時間Taおいて時間T3駆動しその後時間Tf(つまりT3=T2+Tf)作動するように設定されている。
【0035】
そして、上記フローチャート(タイミングチャート)においては、ステップS114でディレイ時間Taが設定されることから、代用乳が溶解タンク5内に湯より先に供給されることを防止する、すなわち代用乳が湯より先に供給されて溶解タンク5の底壁部の排出口5cに詰まりことが確実に防止されるようになっている。また、ステップS115とS116で給湯バルブ36の駆動時間T1とスクリュウ装置15の駆動時間T2が各種スイッチで選択された値に基づいて算出されることから、次のような作用が得られる。
【0036】
すなわち、代用乳はメーカもしくは同一メーカでもその粉体特性に前述したように違いがあり、同じ量の湯で溶解したとしても、作製されたミルクの濃度に微妙な差が生じるが、上記フローチャートの場合、哺乳瓶給湯量選択表示部27と給湯量調整選択表示部30の設定値から給湯量である給湯バルブ36のオン時間T1が設定されることになり、給湯量の微調整が可能となる。また、代用乳の種類によってスクリュウ装置15による搬送量にも差が生じることがあり、この差も、哺乳瓶給湯量選択表示部27と1本当たりの代用乳量選択表示部29及び代用乳量濃度調整選択表示部28の設定値によって調整できるようになっている。これらの調整により、代用乳の種類に係わらず、常に安定した濃度等の品質のミルクの作製が可能となる。
【0037】
このように、上記実施形態の溶解装置1にあっては、各タンク3〜5を制御する制御装置6によって、代用乳タンク4の排出口と溶解タンク5との間に配置されたスクリュウ装置15を制御すると共に、湯沸かしタンク3から溶解タンク5への給湯量が給湯量調整選択表示部30等の選択操作に応じて複数段階に設定可能であるため、代用乳や湯の量を代用乳の種類に応じて設定できて、代用乳の種類等に係わらず最適な溶解状態を得ることができ、所望温度や濃度等の均一な品質のミルクを常に安定して作製することができる。特に、一回の溶解作業で作製されるミルクの本数が、哺乳瓶給湯量選択表示部27により設定可能であるため、飼育農家の規模に応じた最適本数の哺乳瓶を作製できて、汎用性に優れた溶解装置1の提供が可能になると共に、ミルクの温度が冷めない状態の各哺乳瓶によりスピーディに哺乳でき、哺乳作業の能率向上等を図って、コスト的に有利な溶解装置1を提供することが可能となる。
【0038】
また、操作パネル6bの給湯量調整選択表示部30等の操作により、給湯バルブ36の駆動時間T1が制御されて給湯量が複数階に設定可能であると共に、代用乳の供給量が代用乳供給用のスクリュウーモータ15aの駆動時間T2で制御されるため、制御自体を簡略化しつつ給湯量や代用乳の供給量を高精度に制御することができて、より最適な溶解状態を得ることができる。特に、給湯バルブ36の駆動時間T1が湯面高さによる給湯量の変化に応じて補正されることから、例えば作製されるミルクの本数に応じた給湯量が得られて、より一層最適な溶解状態を得ることができ、これらのことから、例えば水道圧の違いによる給湯量のバラツキ(湯面高さの反応遅れ)等にも的確に対応できて、所望品質のミルクを容易に作成することが可能となる。
【0039】
また、操作パネル6bに給湯量をチェックする1本分チェックスイッチ29cと代用乳量をチェックする1本分チェックスイッチ30cが配置されているため、これらのスイッチ29c、30cの操作により給湯量や代用乳量を確認しつつ、各選択スイッチ27b〜30bによる微調整機能で給湯量や代用乳量等を微調整でき、代用乳の種類等に係わらず一層最適な溶解状態を容易に得ることができる。
【0040】
さらに、水温センサ9で水温検出が開始されてから検出温度が設定温度以上となりかつ予め設定した時間が経過すると、ヒータ10の通電を停止して湯沸かし工程を終了するため、例えば連続してミルクを作製する場合の湯沸かしタンク3内の残湯による温度計測誤差の発生を抑制できると共に、ミルクの出来上がり温度が各選択スイッチ27b〜30bで設定された温度に溶解タンク5の湯温低下と代用乳供給による湯温低下を加算した値で制御されるため、湯沸かしタンク3内の位置による温度誤差の発生を補正できる。その結果、作製本数が少ない場合に生じ易い、給水温と残湯の温度差による悪影響を防ぐことができて、所望温度のミルクを一層容易に作製することができる。
【0041】
また、上記実施形態の溶解装置1においては、次のような作用効果を得ることもできる。すなわち、各タンク3〜5及び哺乳瓶載せ台7等を備えて、溶解タンク5によって所定頭数分のミルクが繰り返し作製されると共に、繰り返し作製されたミルクが溶解タンク5の排出コック13から哺乳瓶載せ台7上の哺乳瓶にそれぞれ充填されるため、溶解タンク5によって均一な濃度、温度等のミルクを必要量自動的に作製することができると共に、このミルクが充填された哺乳瓶により飼育者が子牛の体調等を管理しながら哺乳することができる。その結果、子牛の体調を良好に維持して販売時の価値を高めたり哺育期間の延長を防止することができると共に無駄な薬剤や栄養剤の投与等を防止できて、子牛の哺育コストを低減化させること等が可能となる。
【0042】
また、代用乳を溶解する溶解タンク5内の湯の温度が、外気温センサ34で検出された温度に基づいて補正されるため、例えば外気温度が低い場合に溶解に使用される湯の設定温度を自動的に高めて、作製されたミルクの外気温による温度低下を抑制できる。その結果、予め設定した頭数分のミルクが充填された哺乳瓶のミルク温度を安定化させて、所定温度のミルクが充填された各哺乳瓶から各子牛にそれぞれ哺乳でき、各子牛に安定した哺乳ができて哺乳作業の能率向上等を図ることが可能になる。
【0043】
さらに、スクリュウ装置15の排出口側に、ガイド筒16内に送風して溶解タンク5内の湿気による代用乳の吸湿を防止するファン17が配置されているため、溶解タンク5に供給される代用乳の吸湿によるガイド筒16やスクリュウ装置15への固着等を防止して、代用乳の溶解タンク5への搬送供給をスムーズに行うことができる。特に、ファン17が本体への電源供給と同時に駆動するため、少なくとも溶解タンク5に湯が供給されている間作動状態を維持することができて、代用乳の吸湿を確実に防止して所定量の代用乳を溶解タンク5に供給することができ、これらにより、より一層均一な濃度等のミルクの作製が可能となる。
【0044】
なお、上記実施形態における、溶解装置全体の容量、各タンクの容量、架台に対する各タンクの配置位置、制御装置の操作パネルの各スイッチの配置形態等は一例であって、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、子牛への哺乳に限らず、子豚等の各種哺乳家畜の哺乳にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係わる代用乳溶解装置の一実施形態を示す概略正面図
【図2】同制御装置の操作パネルの正面図
【図3】同制御系のブロック図
【図4】同ミルク作製の一例を示す工程図
【図5】同具体的な動作を示すフローチャート
【図6】同他のフローチャート
【図7】同タイミングチャート
【符号の説明】
【0047】
1・・・代用乳溶解装置、2・・・架台、3・・・湯沸かしタンク、4・・・代用乳タンク、5・・・溶解タンク、6・・・制御装置、6a・・・制御部、6b・・・操作パネル、7・・・哺乳瓶載せ台、8・・・水位センサ、9・・・水温センサ、10・・・ヒータ、11・・・攪拌モータ、15・・・スクリュウ装置、15a・・・スクリュウモータ、16・・・ガイド筒、17・・・ファン、27・・・哺乳瓶給湯量選択表示部、28・・・代用乳量濃度選択表示部、29・・・1本当たりの代用乳量選択表示部、30・・・給湯量調整選択表示部、31・・・表示器、33・・・工程表示ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代用乳を溶かすに必要な水を貯留してヒータで湯沸かしする湯沸かしタンクと、前記代用乳を一時貯留する代用乳タンクと、前記湯沸かしタンクから供給される湯と代用乳タンクから供給される代用乳とを攪拌して溶解させる溶解タンクと、前記各タンクを制御する制御装置と、を備えた代用乳溶解装置であって、
前記制御装置は、前記代用乳タンクと溶解タンクとの間に配置された代用乳定量供給機構を制御すると共に、前記湯沸かしタンクから溶解タンクへの給湯量が操作スイッチの選択操作に応じて複数段階に制御可能であることを特徴とする代用乳溶解装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記給湯量の複数段階の制御を電磁バルブの開閉時間で行うことを特徴とする請求項1に記載の代用乳溶解装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記給湯量のチェック機能と微調整機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の代用乳溶解装置。
【請求項4】
前記制御装置は、湯面高さに応じた給湯量の変化を前記選択された給湯量に応じて補正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の代用乳溶解装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記湯沸かしタンク内への給水が完了した時点で水温センサにより水温検出を開始し、設定温度より低い水温を検出した際にヒータに通電して湯沸かしを開始すると共に、水温センサで検出された水温が前記設定温度以上でかつ予め設定した時間が経過した際にはヒータの通電を停止して湯沸かしを終了することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の代用乳溶解装置。
【請求項6】
前記制御装置は、ミルクの出来上がり温度として、操作スイッチで設定された温度に溶解タンクの湯温低下と代用乳供給による湯温低下を加算した値で制御する機能を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の代用乳溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212057(P2008−212057A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54155(P2007−54155)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000197344)静岡製機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】