説明

仮想位置表示システム、仮想位置表示方法および表示端末装置

【課題】 移動の距離感を現実空間と同じように仮想的に体験することを可能とする。
【解決手段】 仮想位置表示システム10は、現実空間とは異なる地点を表す地図情報を格納する地図データベース31と、現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段203と、現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段208と、地図データベース31から取得した地図情報とともに位置演算手段208によって算出された仮想現在地を表示する表示手段204と、を備え、位置演算手段208は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想的な世界を表示するシステムに関するものであり、特に、現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現するように構成した仮想位置表示システム仮想位置表示方法および表示端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を利用したナビゲーションシステムが広く使用されている。このようなナビゲーションシステムでは、地球上を周回している複数のGPS衛星から送信されるGPS信号をGPSアンテナで受信し、該GPS信号に含まれる衛星位置や時計情報等を解析して位置を特定することができる。
【0003】
そして、GPSを利用したナビゲーションシステムでは、GPS衛星からの信号を受信して測位するGPS受信機を搭載した携帯電話などの端末装置の現在位置を含む地図データが経路探索サーバから配信されて端末装置において表示する技術が一般的に知られている。
【0004】
また、GPSなどから得られる実世界の現在地の変位を、迷路などの仮想世界の変位として表示する技術が、例えば、下記の特許文献1(特開2001−70656号公報)に「仮想的な世界を表示するシステムおよび方法」として開示されている。この特許文献1には、現在位置と変位を求める前にいた位置との差分から現在位置の変位を求め、現在位置の変位と仮想的な世界の変位について、仮想的な世界の地図にあうような変換比率を定め、現在位置の変位に対して仮想的な世界の変位を算出し、仮想的な世界の変位として表示することが開示されている。
【0005】
この特許文献1に開示された技術によれば、自己の動きが地図といった現実の世界を反映した表示に限定されることなく、実世界と離れた世界に反映することができるため、実世界の状況に限定されることなく、自己の好みなどに合わせて自由な世界の中で自分の動きを楽しむことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−70656号公報(段落[0005]〜段落[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に開示されている仮想的な世界の表示方法では、仮想的な世界が実在する場所だった場合に、現在位置の変位に対して仮想的な世界の地図にあうような変換比率で仮想的な世界の変位に置換するという演算処理を、移動に伴う変位が発生するたびに繰り返し行い、仮想的な世界の変位を表現している。
【0008】
しかしながら、現在位置の移動に伴う変位を取得するごとに、変換の演算処理を行うため、演算回数によって蓄積する誤差が大きくなってしまうという問題点があった。また、変換比率は仮想的な世界の地図にあうように決められるものであるため、正確に現在位置の移動を仮想的な世界の移動へ反映できないという問題点があった。
【0009】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、現実空間とは異なる地点における仮想基点と、この仮想基点に対応する現実空間における基点と、所定の時間間隔毎に取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出することにより、上記問題点を解消し得ることを想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、移動の距離感を現実空間と同じように仮想的に体験することを可能とした仮想位置表示システム、仮想位置表示方法および表示端末装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する仮想位置表示システムであって、
現実空間とは異なる地点を表す地図情報を格納する地図データベースと、
現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段と、
現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段と、
前記地図データベースから取得した地図情報とともに前記位置演算手段によって算出された仮想現在地を表示する表示手段と、
を備え、
前記位置演算手段は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出することを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる仮想位置表示システムにおいて、前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換える位置比較手段を備えたことを特徴する。
【0013】
また、本願の請求項3にかかる発明は、
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する仮想位置表示方法において、
現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とする第1のステップと、
前記仮想基点に対応付けて位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とする第2のステップと、
所定の時間間隔毎に前記位置取手段によって現実空間における現在地の位置情報を取得する第3のステップと、
前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出し表示する第4のステップと、
を有することを特徴とする。
【0014】
本願の請求項4にかかる発明は、請求項3にかかる仮想位置表示方法において、前記第3のステップは、前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換えるステップを含むことを特徴とする。
【0015】
さらに、本願の請求項5にかかる発明は、
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する仮想位置表示装置であって、
現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段と、
現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段と、
前記地図データベースから取得した地図情報とともに前記位置演算手段によって算出された仮想現在地を表示する表示手段と、
を備え、
前記位置演算手段は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる表示端末装置において、前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換える位置比較手段を備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる発明においては、現実空間とは異なる地点を表す地図情報を格納する地図データベースと、現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段と、現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段と、前記地図データベースから取得した地図情報とともに前記位置演算手段によって算出された仮想現在地を表示する表示手段と、を備え、前記位置演算手段は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出するように構成した。
【0018】
このような構成によれば、現在位置の移動を他の地図上の移動に変換することができるため、現実空間における移動の距離感を現実空間と同じように現実空間とは異なる地点において仮想的に体験することが可能になる。
【0019】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる仮想位置表示システムにおいて、前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換える位置比較手段を備えるように構成した。
【0020】
このような構成によれば、現在位置の移動を他の地図上の移動に誤差を抑えて変換することができるため、現実空間における移動の距離感を現実空間と同じように現実空間とは異なる地点において仮想的に体験することが可能になる。
【0021】
また、請求項3および請求項4にかかる発明においては、それぞれ請求項1および請求項2にかかる仮想位置表示システムを実現するための仮想位置表示方法を提供することができ、請求項5および請求項6にかかる発明においては、それぞれ請求項1および請求項2にかかる仮想位置表示システムを構成する表示端末装置を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例においては本発明の技術思想を具体化するための地図表示システムを例示するものであって、本発明をこの地図表示システム、地図表示方法および地図示装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の仮想位置表示システム、仮想位置表示方法および表示端末装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例にかかる地図表示装置20を含む地図表示システム10の構成を示すブロック図である。本発明の実施例にかかる地図表示装置20は、図1に示すように、ネットワーク12を介して地図配信サーバ30に接続され、通信型の地図表示システム10を構成している。
【0024】
図1に示す地図配信サーバ30は、地図データベース31を備え、地図表示装置20から所望の地点やPOI(興味対象場所)を指定して地図データの取得要求があると、地図データベース31を参照して地図検索を行う。そして地図検索の結果として得た地図データを地図表示装置20に送信する一般的な地図配信サービス機能を有している。
【0025】
地図データベース31は、所定の緯度範囲、経度範囲で区分されたメッシュ状の単位地図データから構成されているベクトル地図データを蓄積しており、地図表示装置20から要求された地図データを読み出して要求元の地図表示装置20に配信する。一般的には、地図表示装置20の現在位置を中心に、上下、左右、斜め方向のメッシュに相当する単位地図9枚分の地図データを配信する。また、地図表示装置20が移動して地図データが不足する場合は、地図表示装置20の移動方向を判別して地図配信サーバ30は不足分の単位地図データを配信する。
【0026】
なお、地図配信サーバ30は、単に地図表示装置20に地図データを配信するだけでなく、ナビゲーション機能を有する経路探索サーバであってもよい。この場合、地図表示装置20は、車載型のナビゲーション端末やナビゲーションサービスを受けるナビゲーションアプリケーションを備えた携帯電話などの携帯型の端末装置であってもよい。そして、地図配信サーバ30は、経路探索用のネットワークデータベースを参照して、出発地から目的地までの経路探索を行う。このような経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。このような構成は一般のナビゲーションシステムと同様のものである。
【0027】
地図表示装置20は、図1に示すように、制御手段201、通信手段202、位置取得手段203、表示手段204、操作入力手段205、配信要求手段206、地図データ記憶手段207、位置演算手段208、位置比較手段209、位置データ記憶手段210などを備えて構成されている。
【0028】
地図表示装置20において、制御手段201は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段202は、ネットワーク12を介して地図配信サーバ30などと通信データを送受信するためのインターフェースである。
【0029】
位置取得手段203は、GPS衛星からの信号を受信して地図表示装置20の現在位置を緯度,経度で測位する衛星航法手段により位置情報を取得するものである。取得された位置情報(緯度,経度)は、位置データ記憶手段210に記憶されて、後述するように、基点の位置データとして利用されたり、仮想現在地を算出するために用いられたりする。また、地図配信サーバ30に送信されて、地図データを検索する際や、地図データを表示するとともに現在位置を特定する際に利用することができる。
【0030】
表示手段204は、液晶表示ユニットなどから構成され、地図配信サーバ30から配信された地図などの表示を行う。また、表示手段204には地図表示装置20の操作のためのメニュー画面が表示され、プルダウンメニューなどの操作により検索条件などを選定することができる。したがって、表示手段204は操作入力手段205の一部としても機能する。
【0031】
操作入力手段205は、数字キーやアルファベットキー、その他の機能キー、選択キー、スクロールキー(上下左右の矢印キー)などからなる操作、入力のためのものであり、出力手段である表示手段204に表示されるメニュー画面から所望のメニューを選択し、あるいは、キーを操作して仮想基点(初期位置)の設定など種々の入力操作を行うものである。
【0032】
配信要求手段206は、操作入力手段205や表示手段204に表示されたメニュー画面の操作によって設定された地図表示条件に基づいて編集された配信要求を地図配信サーバ30に通信手段202を介して送信する。なお、地図表示システム10がナビゲーション機能を有す場合には、操作入力手段205によって指定された経路探索の条件も地図配信サーバ30に送信される。
【0033】
地図データ記憶手段207は、地図配信サーバ30から配信された地図データなどを一時保存するメモリであり、この地図データ記憶手段207に記憶されたデータは必要に応じて読み出され、表示手段24に表示される。なお、地図表示システム10がナビゲーション機能を有する場合には、地図配信サーバ30から配信される案内経路のデータや地図上のランドマークなどのデータも保存する。
【0034】
地図表示装置20は、地図データを受信すると、地図データ記憶手段207の所定メモリ領域にこれを記憶し、表示手段204に現在位置あるいは仮想現在位置を中心とした地図を表示する。この時、現在位置マークあるいは仮想現在位置マークなどが地図に重ね合わされて表示される。
【0035】
位置演算手段208は、本発明にかかる仮想現在地を算出するための処理部である。位置演算手段208は、所定の時間間隔毎に位置取得手段203によって取得された地図表示装置20の現在位置の緯度,経度と、位置データ記憶手段210に記憶されている基点および仮想基点の緯度,経度とに基づいて、仮想現在地の緯度,経度を算出する。
【0036】
位置比較手段209は、本発明にかかる基点位置の置き換えを行うか否かを判定し、必要に応じて前回の現在地および仮想現在地を基点として置き換えるための処理部である。位置比較手段209は、位置データ記憶手段210に記憶されている基点の緯度と、位置取得手段203によって取得された地図表示装置20の現在位置の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前回の現在地および仮想現在地を基点として置き換える。
【0037】
位置データ記憶手段210は、本発明にかかる基点および仮想基点の位置(緯度,経度)データなどを保存するメモリである。位置データ記憶手段210は、位置取得手段23が地図表示装置20の現在位置の緯度,経度を取得し、これを基点としてその位置データを保存する。また、ユーザの移動を別の地点の地図上に表示するために、この地図上に初期位置を設定し、これを仮想基点としてその位置データを保存する。
【0038】
図3は、本発明の実施例にかかる地図表示装置の表示画面の一例を示す図であり、ユーザの移動を地図上に表示する例を示した図である。図3(a)は実際に地点Aから地点A1までのユーザの移動の様子を表示しており、図3(b)は図3(a)に示すユーザの移動を別の地点の地図上の仮想地点A´から仮想地点1´までの移動として表示している。
【0039】
図3(a)に示すように、表示手段204に地図を表示する場合、一般的には、位置取得手段203で取得した地図表示装置20の現在位置(地点A1)を含む一定の縮尺、一定の範囲の地図に、移動経路と、地図表示装置20の現在位置を示すマークを重ね合わせて該現在位置マークが表示画面の中心になるように表示する。なお、地図表示システム10がナビゲーション機能を有する場合には、取得した位置情報には誤差が含まれるため、現在位置が案内経路からずれていると現在位置を案内経路上に補正するルートマッチング処理が行われる。
【0040】
また、図3(b)に示すように、例えば、日本国内の任意の場所を実際に移動しているユーザの移動を別の地点(例えば、実在するアメリカやヨーロッパ)の地図上に表示する場合、まず変換表示する地図上に初期位置を設定し、これを仮想基点(地点A´)とする。次に、位置取得手段203によりユーザの現在位置(緯度,経度)を取得し、これを基点(地点A)とする。
【0041】
さらに、ユーザの移動に伴って位置取得手段203により所定の時間間隔毎に取得する位置情報を現在位置(地点A1)として、位置演算手段208により仮想現在地(地点A1´)へと変換する演算処理を行い、演算処理により得られた仮想現在地(地点A1´)を含む一定の縮尺、一定の範囲の地図に、仮想上の移動経路と、仮想現在地を示すマークを重ね合わせて該仮想現在地マークが表示画面の中心になるように表示する。
【0042】
次に、図4および図5を参照して、本実施例における仮想現在地の緯度と経度の算出方法について説明する。なお、図4と図5は本発明の実施例にかかる仮想現在地の計算方法を説明するための模式図である。
【0043】
仮想現在地(地点A1´)は、ユーザの現在位置(地点A1)の緯度,経度に基づいて、以下の式で算出することが可能である。すなわち、
基点(地点A)の緯度,経度を(lat,lon)、
仮想基点(地点A´)の緯度,経度を(lat´,lon´)、
現在位置(地点A1)の緯度,経度を(lat1,lon1)、
仮想現在地(地点A1´)の緯度,経度を(lat1´,lon1´)、
とすると、基点から現在位置の緯度,経度の差は、それぞれ次の式(数1)で表すことができる。
【0044】
【数1】

【0045】
これを仮想現在地における仮想基点からの移動量に換算すると、緯度による経度の間隔を考慮して、緯度,経度の差は、それぞれ次の式(数2)で表される。
【0046】
【数2】

【0047】
ここで、緯度による経度の間隔を考慮した上記式(1)の算出方法について、図4を参照して説明する。緯度aにおける経度cから経度dの距離がlon_aで表され、緯度bにおける経度cから経度dの距離がlon_bで表されるので、この2つの比について、次の等式(数3)が成り立つ。
【0048】
【数3】

【0049】
このため、lon_aは、次の式(数4)で表される。
【0050】
【数4】

【0051】
したがって、緯度aでの経度差lon_aと経度bでの経度差lon_bとを同じ距離にするためには、経度bでの経度差にその逆数となるcosb/cosaを乗算することによって補正する必要がある。
【0052】
図5は、上記の考え方に基づいて図3に示す基点Aから現在地A1までの移動を仮想的な移動へ変換する部分について簡易的に表した図である。図4に基づいて、仮想基点A´から仮想現在地A1´までの経度の変化量dif_lon´は、緯度を考慮すると、次の式(数5)で表すことができる。
【0053】
【数5】

【0054】
ここで、(lat+lat1)/2および(lat´+lat1´)/2は、基点Aから現在地A1および仮想基点A´から仮想現在地A1´のそれぞれ緯度を平均値で取ることを意味している。以上のようにして上記式(1)が導かれる。
これにより、仮想現在地の緯度,経度は、次の式(数6)で表される。
【0055】
【数6】

【0056】
以上のようにして、基点および仮想基点と現在位置から仮想現在地の緯度と経度を正確に算出することが可能である。そして、ユーザが移動を続けると、地図表示装置20の位置取得手段203によって所定時間後に現在地の緯度,経度が取得され、位置演算手段208は、基点および仮想基点に対して新たに取得した現在位置の緯度,経度から仮想現在地を算出する。
【0057】
ここで、仮想現在地の経度(lon1´)を算出するのに、基点となる緯度(lat)の値を用いているので、基点を固定させたままユーザが移動を続けることによって基点から現在地までの緯度差が大きくなると、この算出結果(変換補正)が正しくなくなってしまうため、本来なら基点を現在地に順次置き換える必要がある。ところが、基点を演算の都度直前の現在地に置き換えてしまうと、1回の計算により誤差は少なく見えるがGPSの精度や移動の距離により位置更新回数(すなわち、仮想現在地の算出回数)に比例して誤差が蓄積されてしまう。
【0058】
このため、本発明の実施例では、位置比較手段209によって、基点の緯度と現在地の緯度とが所定の値以上の大きさになった場合にのみ、基点を前回の現在地の緯度,経度に置き換え、仮想基点を前回の仮想現在地に置き換える。これによって、基点Aから現在地A1および仮想基点A´から仮想現在地A1´のそれぞれ経度の平均を取ることによる誤差の増大を防ぐことが可能となる。
【0059】
地図表示装置20は、以上のような演算処理を位置演算手段208にて行い、それにより得られた結果(仮想現在地)を、地図データベース31から取得する地図とともに表示手段204に表示を行う。
【0060】
図2は、本発明の実施例にかかる地図表示装置における地図表示の動作手順を示すフローチャートである。図2に示す動作手順は、地図表示装置20の制御手段201がROMに記憶された制御プログラムを実行することで実現される。
【0061】
先ず、ステップS401の処理において、制御手段201は、初期位置として仮想現在地(仮想基点A´)を設定する。仮想現在地を設定する方法としては、表示手段204に入力画面を表示し、操作入力手段205を用いてフリーワード入力で施設名などの地点名称や住所あるいは電話番号、緯度,経度などを入力してもよく、または、表示手段204に地図を表示させ、表示されている地図上でポイントを指定して緯度,経度の情報に変換する方法を用いてもよい。操作入力手段205および表示手段204により設定された仮想現在地の基点位置情報は位置データ記憶手段210に保存される。
【0062】
次に、ステップS402の処理において、位置取得手段203は、現在位置(地点A1)を現在地として緯度,経度を取得する。取得された現在地の位置情報は位置データ記憶手段210に保存される。
【0063】
そして、ステップS403の処理において、制御手段201は、変換の演算処理のための基点の位置が設定されているか否かを判断する。基点の位置が設定されていない場合には、ステップS404の処理に進み、ステップS202で取得した現在地の緯度,経度を基点(基点A)として設定し、ステップS405に進む。設定された基点情報は位置データ記憶手段210に保存される。一方、基点の位置が設定されている場合には、ステップS405に進む。
【0064】
ステップS405の処理において、位置比較手段209は、基点Aの緯度と現在位置A1における緯度との差が所定の値以上であるか否かを判断する。もし所定の値以上である場合には、ステップS406に進み、基点および仮想基点を置き換える。置き換える基点は、直前の位置であっても良いし、所定の時間前の位置を使用してもよい。一方、もし所定の値以上でない場合には、ステップS407に進む。
【0065】
そして、ステップS407の処理において、位置演算手段208は、基点Aおよび現在位置A1と、仮想基点A´より仮想現在位置A1´を算出する。さらにステップS408の処理において、制御手段201は、地図データベース31から取得して地図データ記憶手段207に記憶されている地図とともに仮想現在位置A1´の表示を表示手段204に対して行う。
【0066】
次に、ステップS409の処理において、制御手段201は、操作入力手段205からの終了指示の有無を確認する。もし、終了指示がない場合にはステップS402の処理に戻り、処理を続ける。一方、終了指示がある場合には処理を終了する。
【0067】
なお、上記実施例では、地図表示装置と地図配信サーバとからなる通信型の地図表示システムとして説明したが、これに限られることはなく、地図データの更新が管理可能であれば、地図表示装置と地図配信サーバが一体となったスタンドアロンで動作する携帯情報装置に地図データをダウンロードして、携帯情報端末単独で地図表示を行う際に本発明を適用してもよい。
【0068】
また、上記実施例では、ユーザの現在地とは異なる実在する他国などの地図上の地点を仮想現在地としてその地図を表示させる場合について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、CGなどによって構成された実在しない仮想空間上の地点を仮想現在地として仮想空間を表示させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上詳細に説明したように、本発明にかかる仮想位置表示システムによれば、現在位置の移動を他の地図上の移動に誤差を抑えて変換することで、移動の距離感を仮想的に体験することが可能になり、ユーザが訪れることが難しい場所でのフィールドテストにも活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例にかかる地図表示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例にかかる地図表示装置における地図表示の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例にかかる地図表示装置の表示画面の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施例にかかる仮想現在地の計算方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施例にかかる仮想現在地の計算方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・・地図表示システム
12・・・・ネットワーク
20・・・・地図表示装置
201・・・・制御手段
202・・・・通信手段
203・・・・位置取得手段
204・・・・表示手段
205・・・・操作入力手段
206・・・・配信要求手段
207・・・・地図データ記憶手段
208・・・・位置演算手段
209・・・・位置比較手段
210・・・・位置データ記憶手段
30・・・・地図配信サーバ
31・・・・地図データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する仮想位置表示システムであって、
現実空間とは異なる地点を表す地図情報を格納する地図データベースと、
現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段と、
現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段と、
前記地図データベースから取得した地図情報とともに前記位置演算手段によって算出された仮想現在地を表示する表示手段と、
を備え、
前記位置演算手段は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出することを特徴とする仮想位置表示システム。
【請求項2】
前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換える位置比較手段を備えたことを特徴する請求項1に記載の仮想位置表示システム。
【請求項3】
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する仮想位置表示方法において、
現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とする第1のステップと、
前記仮想基点に対応付けて位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とする第2のステップと、
所定の時間間隔毎に前記位置取手段によって現実空間における現在地の位置情報を取得する第3のステップと、
前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出し表示する第4のステップと、
を有することを特徴とする仮想位置表示方法。
【請求項4】
前記第3のステップは、前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換えるステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の仮想位置表示方法。
【請求項5】
現実空間における移動及び位置を、現実空間とは異なる地点における移動及び位置として仮想的に表現する表示端末装置であって、
現実空間における現在地の位置情報を取得する位置取得手段と、
現実空間における現在地に対応して仮想的に表現される仮想現在地の位置を算出する位置演算手段と、
前記地図データベースから取得した地図情報とともに前記位置演算手段によって算出された仮想現在地を表示する表示手段と、
を備え、
前記位置演算手段は、現実空間とは異なる地点における初期位置を仮想基点とし、前記仮想基点に対応付けて前記位置取得手段が位置情報を取得する現実空間における現在地のうち所望の現在地を基点とし、前記仮想基点と基点及び所定の時間間隔毎に前記位置取得手段によって取得する位置情報に基づいて、仮想現在地を算出することを特徴とする表示端末装置。
【請求項6】
前記位置取得手段が所定の時間間隔毎に現在地の位置情報を取得すると、当該位置情報に含まれている緯度と前記基点の緯度とを比較し、緯度の差が所定の値以上である場合には、前記位置取得手段によって前回取得された現在地とそれに対応する仮想現在地をそれぞれ基点と仮想基点として置き換える位置比較手段を備えたことを特徴する請求項5に記載の表示端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−258180(P2009−258180A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104007(P2008−104007)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】