説明

仮想計算機システム

【課題】
サーバやPCによる仮想計算機システムのユーザインタフェース機能を、SVP等を用いることなくソフトウエアの適用だけで提供する。
【解決手段】
仮想計算機の定義及び仮想計算機に対する操作指示を行うための仮想計算機制御スクリーンの表示制御を行う制御用仮想計算機を設け、仮想計算機制御プログラムが入力装置からの画面切り替え指示に応じて、各仮想計算機の各画面スクリーン又は仮想計算機制御スクリーンのいずれかをディスプレイ画面上に排他的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想計算機システムに関し、特にサーバやPCによる仮想計算機システムのユーザインタフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
大形計算機はシステムの保守操作を行うためのSVP(サービスプロセッサ)を有し、該SVPにはユーザがデータの入出力を行うためのコンソールディスプレイ装置が備えられている。従来の大形計算機による仮想計算機システムは、ユーザがSVPのコンソールディスプレイ装置上で、仮想計算機を定義し、各仮想計算機の処理能力の割合や使用される処理装置の資源等を指定することにより制御される。SVPによる仮想計算機システムのユーザインタフェースに関しては、例えば特開平6−250858号公報がある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−250858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーバやPC上に仮想計算機システムを実現するにあたり、大形計算機での仮想計算機システムと同等のユーザインタフェースを提供する必要があるが、サーバやPCに大形計算機が備えているSVP等を付加することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、サーバ及びPC上の仮想計算機システムにおけるユーザインタフェース機能を、SVP等を用いることなく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物理計算機上で複数の仮想計算機が動作する仮想計算機システムにおいて、各仮想計算機に対応する画面スクリーンを同一の表示装置上に排他的に表示する仮想計算機システムであって、各仮想計算機の制御を行うための仮想計算機制御スクリーンの表示を行う制御用仮想計算機を備えたものである。
【0007】
又、本発明は、仮想計算機制御プログラムにより複数の仮想計算機が制御される仮想計算機システムの表示画面切り替え方法であって、前記仮想計算機制御プログラムが入力装置からの画面切り替え指示を認識し、前記指示内容に応じて、各仮想計算機の各画面スクリーン又は各仮想計算機の制御を行うための制御スクリーンのいずれかを同一の表示装置上に排他的に表示するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サーバ及びPC上の仮想計算機システムにおけるユーザインタフェース機能を、SVP等を用いることなくソフトウエアの適用だけで提供することができる。また、ユーザインタフェース機能を1つのLPARとして実現することにより、他のLPARの画面切り替えと同様な処理にて実現でき、処理の煩雑さが低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るサーバ又はPC上の仮想計算機システム(以下、PC−LPARと呼ぶ。)及びその表示装置上の画面の切り替えの様子を示したものである。PC−LPARは、複数の論理的プラットホームを提供するために、メインフレームの仮想計算機システムと同様に、仮想計算機制御プログラム(以下HYPERVISORと呼ぶ。)によって複数の仮想計算機(以下、LPARと呼ぶ。)を制御する。
【0011】
図1では、論理的プラットホームを提供するための仮想計算機として、LPAR−A101とLPAR−C102が動作していて、そのうちLPAR−A101の画面スクリーンが表示されている状態を示している(表示107)。このとき同時に動作していて画面に表示されていないLPAR−C102の画面データは、HYPERVISOR103内のLPAR毎に用意されている画面バッファ104に格納される。尚、画面に表示中のLPAR(以後、画面所有LPARと呼ぶ。)の画面データについては、画面バッファに格納せず、画面入出力命令をHYPERVISOR103がシミュレーション処理後表示する。
【0012】
画面スクリーンを他のLPAR(例えばLPAR−C)に切り替える場合はキーボードからの特別なキー入力操作により行う。HYPERVISOR101は切り替え操作を認識すると、画面所有LPAR情報105を次に表示するLPAR−C102に更新して、LPAR−Cの画面バッファからLPAR−Cの画面スクリーンを表示する(表示108)。またそれ以降LPAR−A101の画面データは画面バッファ104に格納される。
【0013】
同様にキーボードからの切り替え操作を行い、画面所有LPAR情報105を次に表示するLPARに更新する。本ケースでは、LPAR構成情報106を表示するホストLPAR110に切り替える。ホストLPAR110は、定義されているLPAR構成情報106をHYPERVISOR103内部または外部の媒体から取り出し(本例ではHYPERVISOR103内部)、その内容を表示する(表示109)。表示内容の詳細については図2で説明する。
【0014】
図2は、各仮想計算機を定義したLPAR構成情報を表示するLPAR制御スクリーン201を示す。図2では、3LPARが定義され、その中で2LPARが動作中であることを示している。
【0015】
LP#202はLPARを識別するための番号(LPAR番号)を示す。表示される最大LPAR番号までシステムはLPARを定義でき、実行できる。LPNAME203はLPAR番号に対応したLPARの名称を示す。LPAR名称はユーザが自由に設定することが可能である。ST204は現在のLPARの状態を表している。AはそのLPARが活性化されていることを示し、Dは非活性化されていることを示す。UはそのLPARが未定義であることを表している。RAM205はそのLPARに割り当てるメモリ容量(MB単位)を指定する。BOOT206はそのLPARのプラットホームとなる基本ソフトを含んだデバイスの識別子を指定する。SRV207はシステムにおけるプロセッサ資源のうちそのLPARにサービスする相対性能比を指定する。MODE209はそのLPARに割り当てるプロセッサ資源を各LPARで共用(SHR)するか、占有(DED)するか指定する。PROC208はMODE209がDEDの時の占有プロセッサの数を指定する。IRQ210は各LPARで占有して使用するPCIデバイスの識別子を指定する。Command211は各LPARへの操作指示を出すコマンド入力エリアを示す。
【0016】
図3に画面データに着目したHYPERVISORの内部構造の概要を示す。
HYPERVISOR301を構成するタスクとしては、ホストLPARタスク302及び各LPAR303、305にて動作する論理IPタスク群304、306がある。本実施例では2LPARが動作中の場合を示している。
【0017】
ホストLPARタスク302は各LPARの構成情報等の管理とユーザ表示・ユーザ設定が必要な構成情報の画面表示を制御する。画面所有LPARがホストLPARである場合は、表示用データをLPAR構成情報エリア307から取り出し、画面データエリア308に画面データを作成して画面表示する。
【0018】
論理IPタスクは各LPARの動作を司りかつ直接プロセッサ実行できない命令をシミュレーションする。画面処理に関する命令はすべてHYPERVISOR制御下で処理され、そのLPARが画面所有LPARであれば、命令シミュレーションによって画面表示される。そうでない場合は事前に用意してある各LPARの画面バッファ309,310にその画面データを書き込み、そのLPARに制御を返す。キーボード及びマウスの制御権は画面所有LPARが所有し、キーボード及びマウスに対する割り込み及び処理に関する命令をHYPERVISORがシミュレーションして、その画面所有LPARに制御を返す。
【0019】
ホストLPARタスク302はLPAR制御スクリーン201からの操作に従い、当該LPARの各論理IPタスク群304,306に対して、その操作要求を出すことも行う。
【0020】
図4は、本実施例のシステム構成図を示す。通常のPC等と同様に、CPU401、メモリ402、HDD(0)403、FDD404、CDROM405等から構成され、さらにLPARをブートするOSを格納するHDD(1)406を各LPAR毎に用意する。CPU401は1又は複数のプロセッサから構成される。システムを構成する部位のうち各LPARで共用するものとしては、メモリ402及びCPU401があり、スクリーン407、キーボード408、マウス409等のI/Oデバイスについてはそれぞれ各LPARで、指定に従い、独立に割り当てて制御する。
【0021】
図5は、HYPERVISORのブート及び初期化処理の処理フローを示す。
PC−LPARとしてシステムを立ち上げる場合、事前に図6に示す記録媒体(FD等)601にローダ603を含めたHYPERVISOR本体604を格納しておく。その記録媒体601をシステム装置に挿入し(ステップ501)、システム装置の電源をONにする(ステップ502)。システム装置の電源をONにすると記録媒体に起動がかかり、記録媒体内のMBR(MASTER BOOT RECORD)602がハードウェアにより自動的にメモリに読み込まれ、MBR602自身でローダ603をメモリに読み込む(503)。次にローダ603自身でHYPERVISOR本体604をメモリにロード後、HYPERVISORに起動をかける(ステップ504)。次にHYPERVISORは制御に必要なテーブルの作成及び各タスクの生成及びそれらの初期設定を行う(ステップ505)。初期処理後ホストLPARタスクに起動をかけ、起動されたホストLPARタスクが図2で示すようなLPAR制御スクリーン201を表示する(ステップ506)。
【0022】
尚、HYPERVISORはメモリに常駐され、初期処理にてHYPERVISOR自身がその構成で使用するメモリを確保する。従って、各LPARで使用可能なメモリはシステム搭載メモリからHYPERVISOR使用部分を除いた容量となる。
【0023】
図7は、HYPERVISORの動作処理概要フローを示す。
ホストLPARによって表示されたLPAR制御スクリーンにて各LPARの構成情報をユーザが設定(既設定時は不要)する(ステップ701)。LPAR制御スクリーンにて動作させるLPARをACTIVEにしてHDDからメモリにブートする(ステップ702)。その後ブートしたLPARが動作を開始する(ステップ703)。ゲスト上で直接実行できない命令及びホストへの各種割り込み(タイマ、I/O、命令トラップ等)に対してHYPERVISORがシミュレーションを実行する(ステップ704)。その後HYPERVISORは各タスクに制御を戻す(ステップ705)。以後、HYPERVISORはステップ704とステップ705の処理を繰り返す。
【0024】
図8は、表示画面切り替え時の動作処理を示す。図8では、コンソール画面の表示をLPAR1からLPAR2に切り替える際の動作処理を示している。ここでLPAR1では基本ソフトウェアとしてOS1が動作し、LPAR2ではOS2が動作している。
LPAR2(OS2)が実行中に(1)、LPAR1の画面からLPAR2の画面への切り替えのキー操作が行われると(2)、キー操作による割り込みが受付けられて制御がOS2からHYPERVISORに移動する(3)。HYPERVISORはOS2の中断情報を退避し(4)、キー操作をLPAR2画面への切替え指示として認識し(5)、画面所有LPAR情報をLPAR2(OS2)に更新し(6)、LPAR2の画面バッファをコンソール出力に変更すると共にLPAR1のコンソール出力を画面バッファに変更する(7)。これにより、コンソール画面の表示がLPAR2に切り替わる。次に、HYPERVISORが退避した中断情報を回復して制御がHYPERVISORからLPAR2(OS)に移動し(8)、LPAR2(OS)の実行が再開される(9)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る仮想計算機及びその表示装置上の画面切り替えの様子を示した図である。
【図2】本発明に係るLPAR制御スクリーンを示した図である。
【図3】本発明に係るHYPERVISORの内部構造の概要を示した図である。
【図4】本発明に係る仮想計算機のシステム構成を示した図である。
【図5】本発明に係るHYPERVISORのブート及び初期化処理フローを示した図である。
【図6】本発明に係るHYPERVISORを格納した記録媒体の内容を示した図である。
【図7】本発明に係るHYPERVISORの動作処理フローを示した図である。
【図8】表示画面切り替え時の動作処理を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
101 LPAR−A
102 LPAR−C
103 HYPERVISOR
104 画面バッファ
106 LPAR構成情報
110 ホストLPAR
201 LPAR制御スクリーン
407 ディスプレイ
408 キーボード
601 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置と表示装置を備えた物理計算機上で複数のLPARが仮想計算機制御プログラムの制御下で動作する仮想計算機システムにおいて、前記複数のLPARにはユーザにより前記物理計算機の処理能力や資源の割当(以下、構成情報と呼ぶ。)が指定されて特定の仮想計算機として定義される1又は2以上のユーザ定義LPARと、ユーザが前記ユーザ定義LPARの構成情報を指定するためのホストLPARとが含まれ、前記仮想計算機制御プログラムは各ユーザ定義LPARにて動作する論理IPタスク群と前記ホストLPARで動作するホストLPARタスクから構成され、該ホストLPARタスクは前記ユーザ定義LPARの構成情報の指定及び表示のための制御スクリーンを前記表示装置上に表示し、前記表示装置には前記ホストLPARの制御スクリーン又は各ユーザ定義LPARに対応する画面スクリーンのいずれかが入力装置からの画面切り換え指示に従って排他的に表示され、前記ホストLPARタスクはシステムの立ち上げ時に前記仮想計算機制御プログラムにより生成されることを特徴とする仮想計算機システム。
【請求項2】
前記制御スクリーンは、前記ユーザ定義LPARの構成情報を指定するエリヤと動作させるユーザ定義LPARをACTIVEにしてブートする指示を出すコマンド入力エリアを有する請求項1記載の仮想計算機システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−242039(P2007−242039A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106658(P2007−106658)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【分割の表示】特願2001−120468(P2001−120468)の分割
【原出願日】平成13年4月19日(2001.4.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】