説明

仮眠微生物体

【課題】 従来技術の乾燥顆粒製品の場合には、かなりの割合の製品を配合するため、均質に配合することが難しい。また、かなりの間、配合率を低く抑えるために、乾燥した可溶粉末を水キャリヤと混合することが試みられたが、このような製品は、分子サイズおよび分子量がきわめて大きい液滴となるため、実際には、処理に回される液滴がわずか数滴に過ぎず、例えば、被処理牛馬飼料1トンにつき大きな液滴が10個程度使用されるに過ぎず、均質な配合を行えるとはいえない。
【解決手段】
休眠状態にある微生物を、実質的に無水の液体キャリヤに懸濁した生微生物体である。このキャリヤはオイルからなる。また、キャリヤには吸着剤も配合する。微生物体を保存し、プラスチックバッグで輸送し、対象ホストに噴霧する。水分およびpHにより微生物を活性化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2004年5月25日に出願され、“生バクテリア体”を発明の名称とする特許出願第10/853,346号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、休眠微生物体、特に休眠状態にある生微生物を液体流体キャリヤまたは媒体に懸濁させ、この懸濁体を簡単にポンプ輸送できるようにするとともに、微生物の生命を維持した状態で懸濁を維持できるようにした休眠生微生物体に関する。より具体的には、液体状態にあるキャリヤを脱湿(脱水)化し、食品や飼料に適用するまで、あるいは動物などに直接適用するまで、微生物が活性化しないように抑えておく微生物体に関する。なお、飼料(feeds、forages)や動物などを以下“対象ホスト”と呼ぶことにする。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
生バクテリア体は、発酵および/または消化を強化するために、牛馬飼料、その他の飼料などに配合することが多い。従来製品は大きく2つのカテゴリーに分類され、いずれも乾燥した可溶粉末か、あるいは乾燥した不溶顆粒の形を取るものである。乾燥した顆粒製品の場合は、通常被処理牛馬飼料1トンにつき4〜16オンスの量でGandyボックスなどの計量装置によって対象ホストに直接配合する。乾燥した可溶製品については、最初に水で加湿し、加湿後48時間以内に対象ホストに配合する必要がある。なお、配合は液体ポンプ装置で行い、配合量は牛馬飼料1トンにつき37グラム〜1ガロンである。
【0004】
従来の乾燥した顆粒製品については、プラスチックバケツで包装した場合でも、製造時および処理時に直接周囲の空気に接触することがあり、また蓋を単にあけただけでも、水分または湿度を含む周囲の空気に接触する。水分や湿度が存在し、これに接触すると休眠バクテリアが活性化し、牛馬飼料に配合する前に、バクテリアが偶発的に休眠から覚めるか死ぬ場合がある。この場合、製品の価値が完全に失われることになる。従来製品の石灰キャリヤの場合、微量の水分を含み、このような水分が存在すると、製品の十分な可使時間を持続する能力が大きく損なわれる。従来製品が可溶な粉末製品の場合には、配合する前に加湿する必要がある。加湿すると直ちに、すべての休眠バクテリアが活性化するため、混合物全体を48時間以内に使用しなければならない。なぜなら、当然のこととして、バクテリアがその食物源を失い、死ぬからである。この場合も同様に、製品の価値が完全に失われることになる。
【0005】
さらに、現在市場に出回っている従来製品の場合には、配合する前に、輸送容器から取り出すかあるいは乾燥配合装置に物理的に装入する必要がある。あるいは、水で加湿する必要があり、可使時間が加湿後48時間以内に短縮する。さらに、従来の顆粒製品には、輸送時に分離する傾向がある。この結果、より小さなものが輸送容器の底部に集まり、より大きなもの、あるいはより軽いものが上部に分離することになる。また、バクテリア自体がこれら粒子に付着するため、これら粒子とともに移行することになる。上記以外の可溶粉末も、加湿すると、配合タンクの底部に集まることがある。これは、大きくは、製品の希釈度に依存する。使用量を減らすという生産者側の現在の必要性を満たすために、配合量を減らすと、この条件を満足するためには、製造者側は製品の濃度を高くしなければならないが、これは製品の可溶度を制限する措置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の乾燥顆粒製品の場合には、かなりの割合の製品を配合するため、均質に配合することが難しい。また、かなりの間、配合率を低く抑えるために、乾燥した可溶粉末を水キャリヤと混合することが試みられたが、このような製品は、分子サイズおよび分子量がきわめて大きい液滴となるため、実際には、処理に回される液滴がわずか数滴に過ぎず、例えば、被処理牛馬飼料1トンにつき大きな液滴が10個程度使用されるに過ぎず、均質な配合を行えるとはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するのは、休眠状態にある生微生物をクリアな液体流体キャリヤまたは媒体に懸濁させ、この懸濁体を簡単にポンプ輸送できるようにするとともに、微生物の生命を維持した状態で懸濁を維持できるようにした休眠生微生物体である。より具体的には、この生バクテリアのキャリヤまたは媒体は、(1)鉱油およびポリマー、あるいは(2)動物源、植物源または石油源から得られる処理油からなる、実質的に無水の液体からなる。場合によっては、このキャリヤに、親油性分子シーブ吸着剤(掃湿剤-moisturescavenger)を配合してもよい。
【0008】
本発明の製品は、被処理対象ホスト1トンにつき2〜28グラムという少量で配合するのが好ましい。場合によって、この量は加減することができる。無水キャリヤに懸濁させることによって、生バクテリアは、対象ホストに接触し、この接触時点で対象ホストの水分によって微生物が活性化するまで、休眠状態を維持する。本発明製品は、何らかの水分汚染の心配が少ない、ポリウレタンバッグなどの制御された輸送容器で包装する。この製品は、使用者に直接販売され、送られるが、使用者は、このコラプシブルなバッグの製品を直接配合装置にフックにより装着し、製品を対象ホストに配合すればよい。対象ホストは牛馬飼料その他の飼料などであればよい。場合により、製品はにわとりなどの動物に直接噴霧し、該動物がグルーミングする間に製品を摂取するようにしてもよい。生の状態にある改良バクテリア製品であることが理想であるが、増殖の開始には周囲の水分を必要とする凍結乾燥した生休眠微生物製品であってもよい。例示すれば、Parvo、Bovine Rhinotracheitis、Leptospira、BVD、IBRおよびP13などの変性生バクテリア、ウイルスワクチンや、変性、未変性のパソゲンなどである。
【0009】
従って、本発明の第1の目的は、増殖を開始するために周囲の水分を必要とする生の休眠状態にある改良微生物体を提供することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、休眠状態にある生微生物をクリアな液体流体キャリヤまたは媒体に懸濁させ、この懸濁体を簡単にポンプ輸送できるようにするとともに、微生物の生命を維持した状態で懸濁を維持できるようにした休眠生微生物体を提供することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、対象ホストに配合するまで活性化することのないように無水化した生の休眠微生物体を提供することである。
【0012】
本発明の第4の目的は、きわめて少ない量で対象ホストに配合することができる生の休眠微生物体を提供することである。
【0013】
本発明の第5の目的は、キャリヤまたは媒体が、(1)鉱油およびポリマー、または(2)動物源、植物源または石油源のいずれかから得られる処理油からなる実質的に無水の液体からなる生の休眠微生物体を提供することである。
【0014】
本発明の第6の目的は、対象ホストの水分に接触するまで活性化しない生の休眠微生物体を提供することである。
【0015】
本発明の第7の目的は、好適な微量処理量で牛馬飼料その他の飼料などに配合することができる生の休眠微生物体を提供することである。
【0016】
本発明の第8の目的は、何らかの種類の含水空気や流体水などの外部汚染源に暴露されることを制限するように包装処理した生の休眠微生物体を提供することである。
【0017】
本発明の第9の目的は、変性、未変性の生のバクテリアおよびウイルスワクチンなどの生の休眠微生物体を提供することである。
なお、生の休眠とは、休眠状態で生存していることを意味する。
【0018】
これら目的、およびこれら以外の目的については、当業者にとっては明らかなはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を生の休眠バクテリア体について説明する。なお、本発明の微生物体としては、(1)増殖を開始するために周囲の水分を必要とする生の休眠微生物体、(2)Parvo、Bovine Rhinotracheitis、Leptospira、BVD、IBRおよびP13などの変性したバクテリア、ウイルスワクチンあるいは生バクテリア、ウイルスワクチン、あるいは(3)変性、未変性のパソゲンを使用することができる。
【0020】
本発明では、従来利用されている生の成長できる、無害なバクテリアを実質的に無水の液体キャリヤまたは媒体と混合する。一般的には、本発明の微生物体に使用される生バクテリアとしては、動物関連製品に用いることが許されている任意の乳酸産生バクテリアを利用することができる。FDA(米国食品医薬品局)およびAAFCO(米国飼料調整協会)は、直接配合微生物体に用いていても“全体として安全と認められる”(GRASS)微生物種のリストを明らかにしている。以下の表1に、動物関連製品に利用できる、現在承認されているバクテリアを示す。
【0021】
表1
36.14−“GRASS”として承認されているDFM微生物
Aspergillus niger Lactobacillus curvatus
Aspergillus oryzae Lactobacillus delbruekii
Bacillus coagulans Lactobacillus fermentum
Bacillus lentus Lactobacillus helveticus
Baillus licheniformis Lactobacillus lactis
Bacillus pumilus Lactobacillus plantarum
Bacillus subtilis Lactobacillus euterii
Bacteroides amylophilus Leuconostoc mesenteroides
Bacteroides capillosus Pediococcus acidilacticii
Bacteroides ruminocola Pediococcus cerisiae
Bacteroides suis Peidococcus pentosaceus
Bifidobacterium adolescentis Propionibacterium freudenreichii
Bifidobacterium animalis Propionibacterium shermanii
Bifidobacterium bifidum Saccharomyces cerevisiae
Bifidobacterium infantis Enterococcus cremoris
Bifidobacterium longum Enterococcus diacetylactis
Bifidobacterium thermophilum Enterococcus faecium
Lactobacillus acidolphilus Enterococcus intermedius
Lactobacillus brevis
Lactobacillus buchneri Enterococcus lactis
Lactobacillus bulgaricus Enterococcus thermophillus
Lactobacillus casei Yeast (定義について文献を参照)
Lactobacillus cellobiosus
【0022】
無水液体キャリヤとしては、ペンシルバニヤ州16041−9799、カーンズ市、138ペトリアストリートのPenreco製の、商標“Synergel(登録商標)”で販売されている製品からなるものが好ましい。この製品は一般にゲル化鉱油と呼ばれ、参照番号は1004−100で、ブルックフィールド粘度は1,242cPsである。また、澄明無臭で、水に不溶である。このキャリヤはまたポリマーを有する。場合に応じて、バクテリアの沈降を補助または減らすために、Cobisal(ポリマー繊維)などの他の懸濁剤も使用することができる。
【0023】
上記の無水鉱油が好ましいが、動物源、植物源または石油源のいずれかから得られた処理油も使用することができる。本発明の微生物体の場合、バクテリアは、対象ホストと物理的に接触した時点でのみ活性化する。接触すると、対象ホストの周囲水分が、液体微生物媒体またはキャリヤ内に存在する休眠バクテリアを活性化する。本発明の液体微生物媒体またはキャリヤは、Penrecoが開発した特殊な産生プロセスを受ける。即ち、まず、周囲水分を特異的に対象とし、これを吸収する改良ろ過システムで鉱油をろ過処理する。次に、鉱油を加熱処理し、ポリマーを配合し、鉱油粘度および懸濁品質をよくする。そして鉱油を制御された輸送容器に包装し、何らかの水分汚染が発生する恐れを少なくする。
【0024】
包装キャリヤを受け取った時点で、親水性分子シーブ吸着剤などの掃水剤を配合し、効果を確実なものにする。吸着剤としては、結晶性金属アルミノシリケート、アルカリ金属アルミノシリケートまたはナトリウムアルミノシリケートからなる天然ゼオライトまたは合成ゼオライトからなるものを使用することができる。最後に、特定の用途においてバクテリアが必要とするものを配合する。得られた配合物を、I.V.バッグにきわめて類似したコラプシブルなポリウレタンバッグなどの耐水性、耐紫外線容器で包装する。このように製品化したものを小売業者および/またはエンドユーザーに直接販売、受け渡す。エンドユーザー側は、この液体微生物配合物のコラプシブルなバッグをフックによりアプリケータに直接装着し、対象ホストにきわめて微小な液滴として配合する。
【0025】
以上の本発明によれば、生の休眠バクテリアに軽い噴霧処理によって他の微生物を接種することができる。バクテリアを鉱油/ポリマーで保護し、ホストバクテリアが好ましくない環境でも長期間生存できるように構成したが、バクテリア細胞壁を鉱油/ポリマーで被覆しているため、これが物理的化学的水分バリヤとして作用する。このため、生バクテリアをペレット化飼料に配合することができ、飼料自体の周囲水分汚染を通じて、鉱油/ポリマー/ホストバクテリアが直ちに偶発的に活性化することはない。
【0026】
本発明の微生物体の場合、牛馬飼料または被処理材1トンにつき2〜28グラムという好適な少量で対象ホストに配合することができ(水やキャリヤを追加配合する必要はない)。場合に応じて、配合量は加減することができる。この処理配合量は、被処理牛馬飼料1トンにつき37.88グラム〜8.3453ポンドを使用する従来方法の場合に比較してはるかに少量である。
【0027】
本発明の微生物体およびその包装製品は、何らかの種類の水分含有空気や流体水などの考えられる外部汚染源への暴露を抑えるものである。また、本発明の微生物体の場合、対象ホストに物理的に接触した時点でのみバクテリアを活性化する。対象ホストに接触すると、pHおよび水分が変化し、休眠バクテリアが活性化する。
【0028】
以上本発明によれば、上記の目的の少なくともすべてを実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的に無水の液体キャリヤと休眠微生物とを混合することによって混合物を得ることからなることを特徴とする休眠状態にある成長可能な微生物の安定化混合物を生成する方法。
【請求項2】
上記の実質的に無水の液体キャリヤを、鉱油およびポリマー、または動物源、植物源または石油源から得られる処理油のいずれかから選択する請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記混合物が、親水性分子シーブ吸着剤を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記吸着剤が、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトからなる請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記ゼオライトが、結晶性金属アルミノシリケートからなる請求項4記載の方法。
【請求項6】
上記ゼオライトが、アルカリ金属アルミノシリケートからなる請求項4記載の方法。
【請求項7】
上記ゼオライトが、ナトリウムアルミノシリケートからなる請求項4記載の方法。
【請求項8】
上記混合物を対象ホストに噴霧し、水分およびpHにより微生物を活性化する請求項1記載の方法。
【請求項9】
牛馬飼料材1トンにつき2〜28グラムの配合量で上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項8記載の方法。
【請求項10】
上記混合物を対象ホストに噴霧し、周囲水分およびpHにより微生物を活性化する請求項1記載の方法。
【請求項11】
飼料材1トンにつき2〜28グラムの配合量で上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項8記載の方法。
【請求項12】
実質的に無水の液体キャリヤ、および
この液体キャリヤに懸濁した休眠状態にある成長可能な微生物からなる飼料、牛馬飼料、動物などに供給することを特徴とする安定化混合物。
【請求項13】
上記の実質的に無水の液体キャリヤがオイルからなる請求項12記載の混合物。
【請求項14】
上記混合物が、親水性分子シーブ吸着剤を含む請求項12記載の混合物。
【請求項15】
上記吸着剤が、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトからなる請求項14記載の混合物。
【請求項16】
上記ゼオライトが、結晶性金属アルミノシリケートからなる請求項15記載の混合物。
【請求項17】
上記ゼオライトが、アルカリ金属アルミノシリケートからなる請求項15記載の混合物。
【請求項18】
上記ゼオライトが、ナトリウムアルミノシリケートからなる請求項15記載の混合物。
【請求項19】
上記混合物を対象ホストに噴霧し、対象ホストの水分およびpHにより微生物を活性化する請求項12記載の混合物。
【請求項20】
牛馬飼料材1トンにつき2〜28グラムの配合量で上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項19記載の混合物。
【請求項21】
上記混合物を対象ホストに噴霧し、対象ホストの水分およびpHにより微生物を活性化する請求項12記載の混合物。
【請求項22】
対象ホスト1トンにつき2〜28グラムの配合量で上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項21記載の混合物。
【請求項23】
上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項12記載の混合物。
【請求項24】
上記混合物を対象ホストに噴霧する請求項1記載の方法。
【請求項25】
上記微生物が、生バクテリアワクチンからなる請求項12記載の混合物。
【請求項26】
上記微生物が、生ウイルスワクチンからなる請求項12記載の混合物。
【請求項27】
上記微生物が、変性または未変性パソゲンからなる請求項12記載の混合物。

【公開番号】特開2006−217910(P2006−217910A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154453(P2005−154453)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505195166)
【氏名又は名称原語表記】JAMES B.WATSON
【住所又は居所原語表記】Route 1,Box 503,Pierce,Nebraska 68767 USA
【Fターム(参考)】