説明

仮設桟橋および仮設桟橋の施工方法

【課題】 設置作業性に優れ、十分な強度を有し、使用部材の繰り返し利用も可能な仮設桟橋および仮設桟橋の施工方法を提供する。
【解決手段】 仮設桟橋1は、河川等の水中(水上)に構築される。水中の地盤には鉛直方向に支持杭3が設けられる。支持杭3は、地盤から水面15上方まで形成される。支持杭3の上方には、作業等を行う場所となる上部工13が形成される。支持杭3の鉛直方向には所定間隔で梁部材7が設けられる。梁部材7は水平方向に支持杭3と接合される。支持杭3の間であって、水面15下方(水面15近傍)においては、補強部材9が設けられる。補強部材9は、略矩形の枠部17と、枠部17の対角線上に形成された方杖部19等を有する。補強部材9は、高強度繊維補強コンクリート製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海洋等の水上に設置される作業用の仮設桟橋および架設桟橋の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や海洋等の水上に作業用の仮設桟橋が設置されて用いられる。仮設桟橋は、所定の作業が終了後に撤去される。したがって、仮設桟橋は、作業時には、上部工を支え、水流や風等に対抗するだけの強度が必要であるとともに、使用後には容易に撤去できる構造が望まれる。
【0003】
このような仮設桟橋としては、例えば、地盤に埋設された複数の脚で支持され、下部脚と、着脱可能な連結手段を介して下部脚で連結された上部脚とで構成された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような従来の仮設桟橋は、河川や海洋など水流のある場所に設置されるが、水中または水面近傍においては水平方向に水の流れによる力を受けるため、水平方向の力に対する補強が必要である。しかし、水中での方杖等の接合作業は作業性も悪く、危険である
【0006】
また、仮設桟橋は、作業終了後に解体されるため、特許文献1のように着脱可能な連結手段等によって連結されているが、従来の仮設桟橋は解体後には部材の劣化等によって複数回の利用はできない。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、設置作業性に優れ、十分な強度を有し、使用部材の繰り返し利用も可能な仮設桟橋および仮設桟橋の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、水上に設置される仮設桟橋であって、水中地盤に設置された支持杭と、前記支持杭の上に設置される上部工と、を具備し、隣り合う前記支持杭の互いの対向面にはガイドが設けられ、前記ガイドには、高強度繊維補強コンクリート製の補強部材がスライド挿入されていることを特徴とする仮設桟橋である。
【0009】
水面下方においては前記支持杭の間には前記補強部材が設置され、水面上方においては前記支持杭の間には鋼製の方杖が設けられてもよい。
【0010】
前記ガイドの所定位置にはストッパが設けられており、前記補強部材は、前記ストッパの位置で保持されてもよい。
【0011】
前記補強部材は、矩形の枠部を有してもよい。
【0012】
前記補強部材は、前記支持杭に対して斜め方向の方杖部が形成されてもよい。
【0013】
前記補強部材は、水平方向または鉛直方向に複数分割された部材が接合されて形成されてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、支持杭にガイドが形成され、ガイドに高強度繊維補強コンクリート製の補強部材がスライド挿入されるため、補強部材の設置が容易であるとともに、補強部材が高強度繊維補強コンクリートであるため、錆び等の問題もなく、補強部材の再利用も可能である。
【0015】
特に、補強部材を水面下方に設置するため、水流等に対して十分な強度を有し、水面上方においては、安価な鋼製の方杖を設けることで、設置作業性にも優れ、効率のよい仮設桟橋を得ることができる。
【0016】
また、補強部材が設けられるガイドにはストッパが設けられるため、補強部材が確実にストッパの位置で保持される。このため、補強部材の設置が容易である。
【0017】
また、補強部材が枠部を有すれば、設置作業性がよく、強度も高い。また、方杖が形成されれば、水平方向の強度がより高い。
【0018】
また、補強部材が複数に分割された部材を接合されて形成されれば、部材を小型化でき、また、複数のサイズの部材を用意すれば、幅や高さの異なる支持杭間隔等に対応することができる。
【0019】
第2の発明は、仮設桟橋の施工方法であって、水中地盤にガイドを有する支持杭を設ける工程と、隣り合う前記支持杭の前記ガイドに、上方または側方から高強度繊維補強コンクリート製の補強部材をスライド挿入し、水中の前記支持杭の間に前記補強部材を設置する工程と、前記支持杭の上方に上部工を設置するとともに、水面上方の前記支持杭の間に方杖を設ける工程と、を具備することを特徴とする仮設桟橋の施工方法である。
【0020】
第2の発明によれば、簡易な作業で十分な強度を有する仮設桟橋を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、設置作業性に優れ、十分な強度を有し、使用部材の繰り返し利用も可能な仮設桟橋および仮設桟橋の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】仮設桟橋1を示す立面図。
【図2】補強部材9を示す図。
【図3】補強部材9とガイドとの関係を示す図で、(a)は図1のA−A線断面図、(b)は図1のB部における(a)のC−C線断面図。
【図4】仮設桟橋の設置方法を示す図。
【図5】仮設桟橋の設置方法を示す図で、補強部材9を挿入する状態を示す図。
【図6】補強部材の他の実施形態を示す図。
【図7】補強部材50の設置例を示す図
【図8】補強部材9を複数段設置した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかる仮設桟橋について説明する。図1は、本発明により構築された仮設桟橋を示す図である。
【0024】
仮設桟橋1は、河川等の水中(水上)に構築される。水中の地盤には鉛直方向に支持杭3が設けられる。支持杭3は、地盤から水面15上方まで形成される。支持杭3の上方には、作業等を行う場所となる上部工13が形成される。
【0025】
支持杭3の鉛直方向には所定間隔で梁部材7が設けられる。梁部材7は水平方向に支持杭3と接合される。支持杭3の間であって、水面15下方(水面15近傍)においては、補強部材9が設けられる。補強部材9については、詳細を後述する。
【0026】
水面15上方においては、支持杭3同士の間には方杖11が設けられる。なお、仮設桟橋1の側面等においても同様の構成で補強部材9、梁部材7、方杖11等が形成される。補強部材9および方杖11は仮設桟橋1の水平方向の水流等の力に対抗するためのものである。梁部材7、支持杭3、方杖11等は例えば鋼製である。
【0027】
次に、補強部材9について説明する。図2は、補強部材9を示す図である。補強部材9は、略矩形の枠部17と、枠部17の対角線上に形成された方杖部19等を有する。補強部材9は、高強度繊維補強コンクリート製である。
【0028】
高強度繊維補強コンクリートは、特殊な鋼繊維を混入した高強度繊維補強コンクリートで、設計基準強度は驚異の180N/mm(普通コンクリートの5〜8倍)、曲げ強度30N/mmを有する。特殊鋼繊維の混入により引張応力を負担することができるため、構造物に鉄筋を配置する必要がない。また、自己充填性が高く、耐久性に優れるため、部材を極限まで薄くすることができる。
【0029】
図3は、補強部材9の設置構造を示す図であり、図3(a)は図1のA−A線断面図であり、図3(b)は、図1におけるB部における図3(a)のC−C線断面図である。補強部材9は支持杭3に設けられるガイド21a、21bの間に設けられる。ガイド21a、21bは、例えばH鋼である支持杭3のウェブおよびフランジのいずれかにL字型のアングル等により形成される。ガイド21a、21bは、隣り合う支持杭3同士の間に形成され、補強部材9はガイド隣り合う支持杭3にそれぞれ形成されたガイド21a、21bにスライド挿入される。なお、ガイド21a、21bは支持杭3の長手方向等にあらかじめ溶接等で形成される。
【0030】
図3(b)に示すように、ガイド21a(または21b)の所定位置には、ガイド内にストッパ23が設けられる。すなわち、補強部材9をガイド21a、21bに挿入すると、補強部材9はストッパ23位置で保持される。したがって、補強部材9の設置部位(高さ)にあらかじめストッパ23を設けておけばよい。なお、ガイド21a、21bは、鉛直方向に設けられた例を示したが、水平方向に設けても良い。この場合、水平方向に設けられたガイド21a、21bに対し、水平方向に補強部材9を挿入すればよい。補強部材9を水平方向に挿入する場合には、ガイド21a、21bにストッパ23を水平方向に形成すればよい。
【0031】
次に、仮設桟橋1の施工方法を説明する。まず、図4に示すように、仮設桟橋の設置位置において、水中の地盤5に鉛直方向に支持杭3を設置する。支持杭3には、ガイド21a、21bおよびストッパ23をあらかじめ形成しておく。支持杭3の鉛直方向の所定位置には梁部材7を接合する。
【0032】
次に、支持杭3に形成されたガイド21a、21b等に補強部材9を上方からスライド挿入する(図中矢印D方向)。前述の通り、ガイド21a、21bの所定位置にはストッパ23が形成されるため、補強部材9は、ストッパ23位置で保持される。なお、隣り合うガイドに形成されたストッパ23の高さが異なり、補強部材9がまっすぐに保持されない場合には、ストッパ23の上部(ストッパ23と補強部材9との間)に高さ調整部材(ストッパ23に接合される板部材またはブロック部材等)を挟み込むことで、補強部材9を水平に設置することができる。なお、補強部材9は、少なくとも水面15よりも下方の位置に形成されればよい。なお、補強部材9が水面下方に設置されるとは、少なくとも補強部材9の下端が水面したに位置することを意味し、補強部材9の上端が水面上に露出する場合も含むものである。
【0033】
補強部材9の設置後、水面15上方の支持杭3間を方杖11で接合し、上方に上部工13を形成すれば、仮設桟橋1が構築される。
【0034】
本実施の形態にかかる仮設桟橋1によれば、水中における支持杭3間の水平方向の力を受け持つ部位(補強部材9)が、水上からスライド挿入することができるため、水中で方杖等を支持杭3に接合する必要がない。また、補強部材9は、高強度繊維補強コンクリート製であるため、水中での設置に対して腐食等により劣化することがなく、解体も容易であるとともに、解体後の補強部材9を他の仮設桟橋に再利用することも可能である。
【0035】
また、補強部材9はガイドに挿入するのみであり、また、ストッパ23によって所定位置に保持されるため、確実に水平方向の力を受け持つことができる。
【0036】
次に、補強部材の他の実施例について説明する。図6は、補強部材の他の実施例を示す図である。なお、以下に説明する各種の補強部材は、全て高強度繊維補強コンクリート製である。図6(a)に示すように、補強部材として、枠部17のみを有する補強部材30を用いても良い。略矩形の枠部17のみで構成される補強部材30も、同様に、仮設桟橋の補強部材として使用することができる。枠部17のみであれば、補強部材30の開口面積を大きくすることできるため、水流等の抵抗を受けにくくなる。
【0037】
また、図6(b)に示すように、枠部をなくし、方杖部29のみで構成される補強部材40を用いることもできる。補強部材40を方杖部19のみとすることで、軽量化が可能であるとともに、支持杭3の水平方向の傾きに対して十分な強度を得ることができる。
【0038】
また、図6(c)に示すように、枠部17を有する複数の補強部材50a、50b、50cを接合して一体の補強部材50を形成しても良い。補強部材50a、50b、50cはそれぞれバンド等の連結部材51によって連結される。
【0039】
図7は、複数の補強部材を連結した補強部材50の使用状態を示す図である。図7に示すように、例えば、3枚の小型の補強部材を連結して、W1の幅を有する補強部材50としても良い。この場合、例えば、小型の補強部材として、幅の異なるものを組み合わせることで、幅を容易に変更することもできる。例えば、図7においては、中央の補強部材を幅広のものを適用すれば、全体としてW2幅の補強部材50を得ることができる。
【0040】
したがって、支持杭3が完全に一定間隔で形成されない場合においても、全ての幅に対応する補強部材を製造する必要がなく、数種類の幅違いの部材を形成すれば、それらを組み合わせて各種幅の補強部材50を形成することができる。
【0041】
なお、図7においては、幅方向に複数の部材を連結して補強部材50を構築したが、高さ方向に複数の部材を連結して補強部材50を構築しても良い。この場合、複数種類の高さの補強部材50を得ることができ、設置部位や仮設桟橋の形状等に応じて部材を組みわせれば良い。
【0042】
なお、水中において高さ方向に補強部材を複数設置する場合には、それぞれの補強部材ごとにストッパ23を形成する必要はない。例えば、図8に示すように、下方の補強部材9がガイドに設けられたストッパによって保持され、上方の補強部材9は下方の補強部材9の上方に直接設置しても良い。
【0043】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1………仮設桟橋
3………支持杭
5………地盤
7………梁部材
9、30、40、50………補強部材
11………方杖
13………上部工
15………水面
17………枠部
19………方杖部
21a、21b………ガイド
23………ストッパ
51………連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に設置される仮設桟橋であって、
水中地盤に設置された支持杭と、
前記支持杭の上に設置される上部工と、
を具備し、
隣り合う前記支持杭の互いの対向面にはガイドが設けられ、
前記ガイドには、高強度繊維補強コンクリート製の補強部材がスライド挿入されていることを特徴とする仮設桟橋。
【請求項2】
水面下方においては前記支持杭の間には前記補強部材が設置され、
水面上方においては前記支持杭の間には鋼製の方杖が設けられることを特徴とする請求項1記載の仮設桟橋。
【請求項3】
前記ガイドの所定位置にはストッパが設けられており、前記補強部材は、前記ストッパの位置で保持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の仮設桟橋。
【請求項4】
前記補強部材は、矩形の枠部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の仮設桟橋。
【請求項5】
前記補強部材は、前記支持杭に対して斜め方向の方杖部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の仮設桟橋。
【請求項6】
前記補強部材は、水平方向または鉛直方向に複数分割された部材が接合されて形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の仮設桟橋。
【請求項7】
仮設桟橋の施工方法であって、
水中地盤にガイドを有する支持杭を設ける工程と、
隣り合う前記支持杭の前記ガイドに、上方または側方から高強度繊維補強コンクリート製の補強部材をスライド挿入し、水中の前記支持杭の間に前記補強部材を設置する工程と、
前記支持杭の上方に上部工を設置するとともに、水面上方の前記支持杭の間に方杖を設ける工程と、
を具備することを特徴とする仮設桟橋の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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