説明

伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株およびワクチン

抗原性分離株および伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのためのワクチンは、分子グループ6ファミリーのIBDV分離株の改変体(特に、28−1分離株)を含む。具体的には、本発明は、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染を予防または改善することにおいて有効なワクチン組成物を提供し、この組成物は、図1に示される伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス抗原の実質的同定特徴を有する抗原または抗原成分を含み、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのデラウェア型改変体と実質的なモノクローナル抗体反応性を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの新規な抗原性分離株、およびこれらの分離株のうちの1種以上を含むワクチン組成物に関する。本発明はまた、家禽における伝染性ファブリキウス嚢症を予防または改善するための新たな方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
伝染性ファブリキウス嚢症(「ガンボロ病」ともよばれる)は、若鶏および他の家禽の急性かつ非常に接触感染性のウイルス感染である。これは、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス(IBDV)I型によって引き起こされ、このウイルスは、ビルナウイルス科といわれるウイルスの群のメンバーである。この疾患は、リンパ組織の変性によって特徴づけられる。感染の主な標的は、ファブリキウス嚢であるが、リンパ系の損傷はまた、脾臓、胸腺、およびハーダー腺に存在し得る。
【0003】
若鶏におけるファブリキウス嚢および他のリンパ組織の変性は、深刻な経済的結果を有する。なぜなら、感染した鶏は、ワクチン接種に対する応答が低下し、他の感染性因子(例えば、ニューカッスル病、マレック病、および感染性気管支炎)に対する罹病性が増すからである。家禽生産者は、IBDV感染に起因して、彼らの群れのかなりの部分を失い得る。しばしば、死亡率は、若鶏において80%以上に達し得る。
【0004】
免疫は、この疾患の制御の主な方法である。鶏は、母体由来抗体を受容することによって受動免疫され得るか、または鶏は、生ワクチン、弱毒化生ワクチン、または死滅(不活性化)ワクチンによって能動免疫され得る。弱毒化生ワクチンは、細胞培養における連続継代を通じて、「改変」されたかまたは弱毒化されたウイルスを含む。継代によって、病原性が低いウイルス株を生成することが期待されている。しかし、ワクチンにおいて有用であるために、そのもとのウイルスの抗原性特性および免疫原性特性を保持していなければならない。すなわち、中和抗体の生成を誘導しなければならない。免疫による疾患の制御は、野外条件下での抗原連続変異の結果として改変株が出現し始めるまで、たいてい成功してきた。これらの改変体は、能動免疫した鶏および受動免疫した鶏の両方で疾患を引き起こしていた。
【0005】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスは、しばしば、標準株または「STC」株、または改変型のいずれかとして当該分野で別個に分類されるが、米国における野生型IBDVの大部分は、今では改変体である。デラウェアウイルスは、最も一般的な改変型のうちのいくつかであり、デラウェアEは、特に、何年もの間、プロトタイプ改変型と考えられてきた。IBDV調査により、デラウェアEウイルスが、なお一般的に分離されることが示されている;しかし、他の改変ウイルス型(例えば、GLS、Rs593およびAL2)もまた、極めて流行してきた。これらの株は、モノクローナル抗体のパネルを用いて特徴づけられ得る。さらに、PCR−RFLP技術を用いて、異なる分子クラスのウイルス(グループ6といわれる)が、過去数年間にわたって有病率において上昇してきた。このファミリーのウイルスのアミノ酸配列決定により、大部分が、一般に、抗原性同一性または独自性に最も重要であるものの1つとして考えられている領域において、プロトタイプのデラウェア−Eウイルスと異なることが示されている。
【0006】
特許文献1は、標準株、デラウェア株および他の新たな型の改変ウイルスに対して若鶏を免疫するにあたって有効であることが報告されている、生の改変ワクチン株に関する。
【0007】
特許文献2は、伝染性ファブリキウス嚢症の診断、予防および処置における特定のモノクローナル抗体の使用を開示している。
【0008】
特許文献3は、哺乳動物細胞株に由来する抗原物質を有する、家禽のためのIBDVワクチンに関する。
【0009】
特許文献4は、生の弱毒化されているが、中程度にビルレントのIBDVの特定の株を含む、伝染性ファブリキウス嚢症を予防するためのワクチンを提供する。そのワクチンは、他の家禽の免疫原(ニューカッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、および感染性気管支炎ウイルスに対するものが挙げられる)を含み得る。
【0010】
さらに、特許文献5は、変化した認識部位を有するIBDV改変体を利用する診断剤およびワクチンに関する。
【0011】
IBDVのより良好な抗原性分離株、およびIBDV感染に対する使用のためのこれらの分離株を含むワクチンが、現在当該分野で必要である。また、家禽(特に、鶏)をIBDウイルスの多くの改変体(最近出現したより新しいものを含む)から防御するより良好な方法が必要である。
【特許文献1】米国特許第5,919,461号明細書
【特許文献2】米国特許第6,471,962号明細書
【特許文献3】米国特許第5,192,539号明細書
【特許文献4】米国特許第5,804,195号明細書
【特許文献5】国際公開第WO 91/05569号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
一局面において、本発明は、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染を予防または改善するにおいて有効なワクチン組成物に関し、この組成物は、図1に示される伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス抗原の実質的同定特徴を有する抗原または抗原成分を含む。用語が本明細書で使用される場合、「実質的同定特徴」とは、図1において分離株28−1のアミノ酸配列であって、IBDVのウイルスタンパク質−2(VP−2)の主要な親水性ピークBにおいて唯一の318位の置換G→D(すなわち、318−D)、およびさらに図1において分離株28−1について示された他の置換のうちの1つ以上(以下が挙げられる:222−T、249−K、254−SまたはN、279−Nおよび286−I)を含むものを意味する。さらに、この抗原または抗原成分は、デラウェア株改変ウイルスを特徴づけるモノクローナル抗体の基本的なパネルと実質的反応性を保持するべきである。
【0013】
従って、本発明は、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのVP−2アミノ酸配列の主要親水性ピークBにおいて唯一の置換として318−Dを有する抗原または抗原成分を含むワクチン組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスに対するワクチン組成物に関し、この組成物は、2004年3月4日にアクセッション番号PTA−5848の下でATCCに受託された、IBDVの新規な28−1抗原性分離株を含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、IBDに対するワクチンにおける使用に適したVP−2アミノ酸配列の主要親水性ピークBにおいて唯一の置換として318−Dを有する、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株が提供される。
【0016】
本発明はまた、図1に示されるアミノ酸配列を有する伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株(28−1)を提供する。これは、現在はIBDV分離株の分子グループ6ファミリーとして言及されている独特の分離株である。
【0017】
さらに、本発明の一部として、アクセッション番号PTA−5848の下で2004年3月4日にATCCに受託された、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株を提供する。
【0018】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染に対する防御を誘導するための方法もまた提供され、この方法は、図1に記載されるIBDV抗原性分離株の実質的同定特徴を有する抗原を含むワクチン組成物を、家禽動物に投与する工程を包含する。
【0019】
本発明はさらに、伝染性ファブリキウス嚢症に対する防御を誘導するための方法を提供し、この方法は、ATCCアクセッション番号PTA−5848で同定される抗原性分離株を、家禽動物に投与する工程を包含する。
【0020】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特徴および利点は、本明細書で以下に示される詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
一局面において、本発明は、新規な伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス(IBDV)抗原性分離株に関する。この分離株は、一般に、モノクローナル抗体−抗原捕捉ELISAを用いて、限定されたモノクローナル抗体のパネルに対して、デラウェア−Eと同じように反応するという点で、デラウェア型ウイルスとして特徴づけられる。さらに、このウイルスは、Jackwoodら(Restriction Fragment Length Polymorphisms in the VP2 Gene of Infectious Bursal Disease Viruses,Avian Dis.41:627−637,1997)の逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応/制限フラグメント長多型(RT−PCR/RFLP)法を用いて、分子グループ6ウイルス(分子グループ2(このグループにプロトタイプのデラウェア−E改変体が割り当てられている)ではなく)として、さらに特徴づけられる。
【0022】
図1を参照すると、比較のために、確立された分離株からの配列情報とともに、主要抗原性ウイルスタンパク質2(VP−2)の可変領域のアミノ酸配列に関するさらなる特徴付けが記載される。適切な例(本明細書で以下に規定される)として、28−1分離株の特別な性質に対する特別の注意を伴うIBDV分離株の特徴付けの概要もまた含まれる。当業者は、VP−2がIBDVの2つの主要構造タンパク質のうちの1つであり、防御免疫を付与する血清型特異的中和抗体の標的でもあることを認識する。(このウイルスの第2の主要構造タンパク質であるVP−3は、中和抗体を誘起しない)。
【0023】
図1に図示されるように、IBDV分離株は、2つの主要親水性ピーク領域および2つのマイナー親水性ピーク領域を有する。理論に束縛されることなく、この親水性領域全て、および特に主要親水性領域は、抗原性に対して重要な影響を有すると考えられる。この28−1分離株は、図1に示されるピークBにおいてその唯一の置換として318−Dを有し、よって、他の参照IBDV改変体(古典的(標準−STC)株およびデラウェア−E株が上げられる)とは別個に同定可能である。実際に、この28−1分離株は、一般に、IBDVの最も重要な抗原領域(主要親水性ピークB)として考えられるものが、デラウェア−Eとは異なる。さらに、このIBDVの28−1分離株は、以下のさらなる置換のうちの1種以上を有する:222−T、249−K、254−SまたはN、279−Nおよび286−I(一般に許容されている一文字アミノ酸略語に従って)。さらに、この28−1分離株は、222位のデラウェア−A改変体とは異なる。デラウェア−Aは、222−Q(これは、この位置では比較的稀な置換である)を有するのに対して、この28−1は、その好ましい実施形態において、222−Tを有する。大部分の野外ウイルスは、222−Tを有し、この222−Tは、おそらく、この28−1分離株が、米国の野外ウイルスに対してデラウェア−Aより良好な抗原性の匹敵するものであり、また、この2つの株を区別するに十分重要であることを示す。図1に示されるウイルス株におけるアミノ酸パターンの概要は、以下の表1に示される。
【0024】
(表1:重要なVP−2位置における参照ウイルスアミノ酸パターンの比較)
【0025】
【表1】

318位、321位、322位および323位は、ピークBに位置し、アミノ酸変化は、抗原性の変化を生じる。
【0026】
表1における上記の位置の各々は、中和モノクローナル抗体の結合に関連づけられており、よって、当業者は、これらの株(グループ6の28−1分離株を含む)の間の差異を理解し得る。
【0027】
米国野外サンプルのPCRによるタイプ分けを介したデータの蓄積により、現在では、分子グループ6のIBDVウイルスの有病率および重要性が明らかに示されている。グループ6のウイルスは、以下の表2が示すように、3つの野外分離株において約1つの野外分離株を占める、米国の肉用鶏から回収された圧倒的に最も一般的な分子型である。いかなる理論にも束縛されることなく、1997年以来、米国の肉用鶏においてグループ6のウイルスの有病率が増えているのは、おそらく、従来のIBDワクチンによって提供されるデラウェア−E型抗体および古典型抗体から、より成功裡に逃れた結果である。この概念の支持は、いくつかの米国の野外サンプルの配列決定分析により、グループ6ファミリーにおける大部分のIBDウイルスが、主要親水性ピークBにおいてデラウェア−E置換パターンを有さないことが示されるという事実である−Jackwoodら,Amino Acid Comparison of Infectious Bursal Disease Viruses Placed in the Same and Different Molecular Groups by RT/PCR−RFLP,Avian Dis.45:330−339,2001。
【0028】
(表2:米国における野生型ウイルスの有病率を経時的に示すJackwood PCR−RFLP試験系)
【0029】
【表2】

1997年のデータは、Jackwood調査(参照)から得た。
1998年〜2003年のデータは、600を超える陽性サンプルのFort Dodge調査から得た。
【0030】
グループ6ファミリーのウイルスの実際の重要性を、5つの異なる死滅IBDワクチン接種プログラムに対して5つの繁殖群の子孫のチャレンジ研究を行うことによって最近調べた。Jackwoodのグループ6改変体のうちの1つを、子孫のチャレンジ研究においてデラウェアE株およびGLS株のウイルスに対して比較した。結果は、グループ6改変ウイルスは、デラウェアE株およびGLS株の改変体のいずれかよりも高い割合で、母体からの抗体を突破し、結果として、ファブリキウス嚢萎縮がより頻繁であり、防御されるトリがより少ないことを示した。この研究により、その脅威が野生のビルレントグループ6ウイルスにより引き起こされるのみならず、このグループ6改変ウイルスに対する有効なワクチンの必要性もまたさらに求められることが実証された。
【0031】
本発明において使用するために特に好ましい、1つのグループ6のIBDV分離株は、現在では、分離株28−1として同定されている。分離株28−1は、図1に示される置換318−Dを有し、さらに、IBDVのVP−2において以下のさらなる置換のうちの1つ以上を有する:222−T、249−K、254−SまたはN、279−Nおよび286−I。好ましくは、この28−1分離株は、示されたさらなる置換のうち少なくとも2つ(特に、222−Tおよび254−SまたはN)、より好ましくは、少なくとも3つ、4つ、または5つ全ての、示されたさらなる置換を有する。適切な例は、2004年3月4日にアクセッション番号PTA−5848の下でATCCに受託された。このウイルス分離株28−1は、その分子グループ分類(上記に示される)の比較によって、そしてデラウェア型改変ウイルスを特徴づけるモノクローナル抗体の基本的パネルとの実質的反応性を保持するという事実によっても、以前の分離株とは異なる。
【0032】
このグループ6のIBDV抗原性分離株、特に28−1分離株は、当該分野で利用可能な技術を用いて分離され得る。例えば、感染した鶏からのファブリキウス嚢は、商業的肉用鶏群から得られ得る。次いで、このウイルスは、ファブリキウス嚢組織または他の適した培地中継代されて、マスター種ウイルス(master seed virus)を樹立し得る。当業者によるさらなる特徴付けはまた、利用可能な方法を用いて行われ得る。
【0033】
本明細書のさらなる局面において、本発明はまた、記載されるグループ6のIBDV抗原性分離株のうちの1つ以上を含むワクチン組成物を包含する。このIBDV抗原性分離株は、ワクチン組成物へと処方される場合に、有意な免疫原性および安全性の特徴を示すことが特に好ましい。このワクチン組成物の性質は、USDAの監督機関の承認およびその許可を得るために十分であることがさらに好ましい。この28−1分離株、および実質的に同じ実質的同定特徴を有する他の分離株は、このワクチン組成物にとってより好ましい。この本明細書に記載されるグループ6の抗原性分離株は、IBDVチャレンジの改変体(標準(STC)株、ならびにデラウェア改変体およびAL−2改変体、ならびにグループ6分子ファミリーからの改変体(28−1が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない)の広い範囲に対して有意な交差防御を提供するはずである。グループ6ファミリーのShelton 21、またはS−21改変株に対する防御もまた、本明細書で企図される(このS−21改変体は、VP−2領域において以下の置換を有する:318−Nおよび321−E)。
【0034】
本発明のワクチン組成物は、利用可能な技術を用いて、好ましくは、薬理学的に受容可能なキャリアとともに処方され得る。例えば、一実施形態において、水性処方物が企図される。このような処方物は、水、生理食塩水、またはリン酸緩衝液もしくは他の適切な緩衝液を利用する。なお別の実施形態において、このワクチン組成物は、好ましくは、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンである。しばしば、水中油中水エマルジョンとして特徴づけられる二重エマルジョンもまた、企図される。この油は、処方物を安定化し、ワクチンアジュバントとしてさらに機能する一助となり得る。適切な油は、当業者によって選択され得、その起源が天然由来か、合成由来かに関わらず、ホワイト油、カモ油、スクアランまたはスクアレン、および他の動物性油、植物油または鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、このワクチン組成物は、当該分野で利用可能な他の適切なアジュバントを含み得る。これらとしては、例えば、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、ならびに他の金属塩が挙げられ得る。
【0035】
さらなる賦形剤(例えば、界面活性剤または他の湿潤剤)がまた、このワクチン組成物中に含まれ得る。界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエートエステル(Tween(登録商標)シリーズ)、およびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(PLURONIC(登録商標)シリーズ)、ならびに当該分野で利用可能な他のものが挙げられ得る。安定化剤または保存剤として認識される他の化合物がまた、ワクチン中に含まれ得る。これらの化合物としては、例えば、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、澱粉、スクロース、デキストリンまたはグルコースなど)、および保存剤のホルマリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
このワクチン組成物はまた、外因性の水を実質的に含まない乾燥粉末として処方され得、次いで、この粉末は、エンドユーザーによって再構成され得る。
【0037】
このワクチン組成物は、生のウイルス、または生であるが弱毒化されたウイルスを含み得る。本発明における使用のために、死滅ウイルスまたは不活性化ウイルスもまた企図される。一実施形態において、このワクチン組成物中で利用されるウイルスは、連続継代技術を用いて弱毒化されている。完全なまたは部分的な抗原性分離株が利用され得る。抗原性分離株のどの形態が選択されようと、グループ6ファミリーの同定特徴(特に、本明細書中上記の抗原性特徴)が、特徴とされるワクチンウイルスにおいて保持されるものが非常に好ましい。本明細書に記載されるグループ6(例えば、28−1)の抗原性分離株の同定構造特徴を有する、核酸、アミノ酸配列、および/またはタンパク質を発現する組換えワクチンが、本明細書での使用について企図される。
【0038】
本発明のワクチン組成物は、伝染性ファブリキウス嚢症を予防または改善するために有効な量のIBDウイルス分離株を含む。本発明の一実施形態において、このワクチンは、分離株の約102.0〜約106.0のEID50(「卵感染用量」)/用量を含む。用量は、代表的には、約0.25mL〜約2.0mL/家禽動物、より好ましくは、約0.5mL〜約1.0mL/動物の範囲内である。
【0039】
本明細書に記載のされるワクチン組成物が、上記の新規な抗原性分離株とともに投与され得、さらに、ワクチン抗原として、1種以上の他のIBDV改変体(特に、この疾患に対して有効であると認識されているもの)を含み得る。例えば、Lukert株(AthensにあるUniversity of GeorgiaのPhil Lukert博士によって最初に分離され、Salsbury Laboratories,Inc.によって工業化された)は、IBDVワクチン組成物中で同時に投与され得る。
【0040】
他の疾患に対する他の家禽の抗原も、本発明のワクチン組成物に含められてもよいし、本発明のワクチン組成物とともに投与されてもよい。例えば、鶏ヘルペスウイルス、鶏貧血ウイルス(CAV)、ニューカッスル病ウイルスおよび感染性気管支炎(IB)ウイルスに対するワクチン抗原、ならびにレオウイルス抗原は、本発明のワクチン組成物の一部として含められ得る。1種以上のレオウイルス抗原が、本発明のワクチン組成物の一部として特に好ましいものであり得る。
【0041】
本発明はまた、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染からの防御を誘導するための方法に関する。この方法は、家禽動物に、図1に示されるIBDV抗原性分離株(すなわち、グループ6改変体の現在同定されたファミリーからの分離株)の実質的同定アミノ酸特徴を有する抗原を含むワクチン組成物を投与する工程を包含する。特に、この分離株28−1が好ましく、2004年3月4日にATCCアクセッション番号PTA−5848の下で受託された上記に示される分離株が、特に好ましい。
【0042】
投与方法は、当業者によって選択され得る。本明細書において、卵中投与が企図される。例えば、胚に、通常、約18日齢〜19日齢で接種され得る。さらに、このワクチン組成物は、孵化後の若鶏(数日齢〜数週齢)に、飲用水,噴霧または点眼を介して投与され得る。本発明のワクチン組成物が、スケジュール(これは、疾患を引き起こす伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのキャリアに対する予期される潜在的曝露の時間に従って決定され得る)に従って有効量で、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、経口投与、鼻内投与、または他の利用可能な手段、好ましくは、非経口投与、より好ましくは、筋肉内投与される、他の方法もまた、本発明の範囲内である。
【0043】
上記のように、本発明は、家禽のための、新規なIBDV抗原性分離株、ワクチン組成物および方法に関する。用語「家禽」とは、全ての産業的に繁殖されている家禽動物(鶏、アヒル、ガチョウ、クジャク、チャボなどが挙げられる)を包含するが、これらに限定されないと解釈される。
【0044】
本発明のさらなる実施形態において、図1に記載される抗原性分離株(28−1)を利用する、群のワクチン接種メンバーと非ワクチン接種メンバーとを区別するため、およびワクチン接種した動物を、このウイルスの1種以上の他の改変体に感染したことがあり得る動物から区別するための、IBDVのためのマーカーワクチンもまた提供される。このマーカーワクチンはまた、動物を試験するための試薬キットに含まれ得る。この試薬キットは、1種以上の抗原性分離株(例えば、28−1)、およびこの分離株を認識し、これと反応する抗体を含み得る。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明の種々の好ましい局面を例示するが、如何様にもその全範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【0046】
(実施例1)
(研究の概要)
特定病原体フリー(SPF)白色レグホン鶏に、1/50用量のプロトタイプの不活性化伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス(IBDV)/トリレオウイルス混合ワクチンを、5週齢で接種した。このワクチンは、トリレオウイルス抗原および伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス(Lukert株)(ファブリキウス嚢組織起源(BTO)の改変IBDV株の追加ありまたはなし)を含んだ。試験ワクチンを、55% 油:45% 水性物の比、0.5mL形式に処方した。競合相手のIBDV/Reoワクチン製品もまた、1/50用量で鶏群に投与した。
【0047】
この群を、ワクチン接種して24日後に採血して血清を採取し、ワクチン接種して28日後に、改変S−21、デラウェア改変Eまたは改変AL2 IBDV分離株でチャレンジした。ファブリキウス嚢 対 体重の比を、チャレンジの10日後に記録した。
【0048】
ワクチン接種した鶏からの血清学データおよび防御データにより、28−1とよばれる改変分離株から調製された抗原が、特に、不活性化ワクチン中のIBDV Lukert ACLに追加した場合に、免疫原性を有意に増大したことが示された。
【0049】
28−1改変株のIBDV抗原を含むさらなるワクチン開発の努力がなされるべきであると結論づけられた。
【0050】
(不活性化ワクチンとしてのさらなる改変IBDV分離株の評価:分割用量研究)
(背景)
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス(IBDV)の多くの野外分離株を、分子タイピングシステムにより、改変体の抗原性のウイルスを示すために新規なまたは独特のパターンが明らかになった場合から、記入した。この実施例を、生ワクチン、生の(弱毒化)ワクチンまたは不活性化ワクチンのいずれかとして考えられる将来的な開発のために、多くのこれらの分離株をさらに試験および特徴づけるために行った。特徴付けにおける最初の工程は、これらのウイルスの病原性を評価することであった。最初の試験の結果に基づいて、選択した分離株を、チャレンジウイルスとして使用して、もしあるとすれば、どのウイルスが現在の不活性化ワクチンにより誘導される免疫を突破する能力を有するかを決定した。第3の研究により、不活性化ワクチン中にIBDV Lukert ACLと混合して、2つの同定された改変分離株を使用することを評価しようと試みたが、不注意によりチャレンジ前にウイルスに曝露してしまったことにより、この研究は有効でなかった。
【0051】
ここで記載される研究は、不活性化ワクチン中で別の改変IBDV分離株に由来するBTO抗原を、IBDV Lukert ACLと混合して使用することを評価するように設計された。ELISAおよび血清中和(SN)アッセイにより測定される血清学的応答、ならびに3種の改変チャレンジ株に対する防御を評価した。
【0052】
(目的)
IBDV改変分離株S−21、15−4(デラウェア株改変体)、28−1およびArkProventに由来するBTO抗原を含むように調製されたプロトタイプワクチンが、鶏を免疫する能力を比較する(S−21およびArkProventは、他の分子グループ6ウイルス分離株であるが、S−21は、モノクローナル抗体のパネルによって規定される新規な型と考えられ、ArkProventは、そのようには規定されなかった)。競合相手の製品と比較して、プロトタイプワクチンの性能を評価する。
【0053】
(材料および方法)
(事象進行表)
【表A】

【0054】
(動物の選択)
試験動物
型:Gallus domesticus
数:400(試験において375羽使用し、25羽は、余分)
血清学的状態:SPF
年齢/体重範囲:3週齢
Sex:混合
品種:白色レグホン
識別:アイソレーターケージカード
供給源:HyVac
投与前/排除基準:接種時に明確に健康な状態の鶏のみを使用した。それらの行動または外見が、病気に罹った状態にあると考えられるいかなる鶏も、この研究から排除した。
【0055】
(動物の飼育および世話)
鶏を、試験施設の適切な建物の中の、陰圧の、改変Horsfal型Plexiglasアイソレーター中で飼育した。鶏には、研究の期間にわたって、自由に餌および水を与えた。動物試験施設のための標準的な家禽の世話手順を用いた。
【0056】
(試験ワクチン)
(ワクチン組成)
合計7種のワクチンを、研究において試験した。1種のワクチンは、実際の競合相手の製品(この製品は、少なくとも1種のBTO抗原成分を含む)であり、残りの6種のワクチンは、Research & Development at Fort Dodge Animal Health(Fort Dodge,Iowa)により調製された。
【0057】
試験ワクチンは、油中水型エマルジョンに処方した不活性化IBDVおよびトリレオウイルスのウイルス液から構成された。IBDV Lukert ACLロット抗原を、Bioproduction facilityから調達し、ストック抗原と比較して、1.0の相対的有効性(RP)を得るための量でこれらのワクチンのうちの5種に添加した。Shelton 21、15−4、28−1およびArkProvent改変体の液を、Research & Developmentにおいて調製されたファブリキウス嚢組織から調達し、104.0 EID50/0.5mlの用量を得るための量で添加した。5番目のワクチンは、基本のIBDV Lukert ACL抗原のみを含み、改変体は含まなかった。
【0058】
ヒナ(chicklet)起源のIBDV Lukert(ロット番号XXXX−XX−XX)を、6番目のワクチンに添加して、106.5 TCID50/0.5mL用量を得た。さらに、Shelton 21抗原を、104.0 EID50/0.5mLで添加した。
【0059】
トリレオウイルス抗原を、TTPIで生成しACLで増殖させたストックから調達し、全てのワクチンに添加して、106.7 TCID50/0.5mL用量を得た。この処方物は、Arlacel 83とTween 80を乳化剤として含む、55% 油:45% 水性物比であり、0.5mL最終容積/用量になるように処方された。
【0060】
(ワクチン供給源)
ワクチンを、商業的な卸売業者から入手した競合相手の製品を除いて、Fort Dodge R&Dの施設で調製した。
【0061】
(ワクチン輸送)
ワクチンを、定期的な施設内シャトルで研究開始前に輸送し、2℃〜7℃の温度で輸送および貯蔵して、維持した。
【0062】
(シリアル番号)
プロトタイプFort Dodgeワクチンは、シリアル番号により識別しなかった。個々のボトルに、以下の処置の表(表3)に示される名称を表示した。
【0063】
競合相手の製品−シリアル番号1159011(レオウイルス抗原も含んでいた)。
【0064】
(品質管理試験またはEUバッチ証明書(入手可能な場合))
品質管理部門によるワクチンの試験は行わなかった。Fort Dodge R&Dは、ワクチン処方物の開発の基礎として、改変体BTO抗原に対して不活性化前力価測定および不活性化完了試験を行った。
【0065】
(貯蔵) ワクチンを、2℃〜7℃で貯蔵した。
【0066】
(表3:実験設計)
【0067】
【表3】

(ワクチン接種)
鶏の胸に一度、筋肉内にワクチン接種した。そのワクチンを、20ゲージ針にはめ込んだ機械反復装置を備えたマイクロシリンジを用いて送達し、0.010mL容積を5週齢の各鶏に投与した。
【0068】
(チャレンジおよび観察手順)
Shelton 21、デラウェア改変体EおよびAL2のチャレンジ用分離株の適切な希釈液を、滅菌トリプトースホスフェートブロス(tryptose phosphate broth)で作製して、103.0〜103.5 EID50/鶏の用量を達成した。チャレンジを、ピペッターを用い、各分離株につき15羽/群の各々の一方の眼に30μlを送達する点眼によって施した。チャレンジは、ワクチン接種して4週間後に行った。
【0069】
チャレンジして10日目に、これらの群を安楽死させ、ファブリキウス嚢 対 体重の比を決定した。
チャレンジ表:
【表B】

【0070】
(サンプル収集および試験)
血液サンプルを、ワクチン接種して24日目に収集した。その血液を凝固させ、血清を別のチューブに注ぎだした。その血清を凍結させ、Idexx ELISA(広範囲)および企業内ウイルス中和アッセイによる血清学的分析のために、Fort Dodge R&Dに送った。
【0071】
ファブリキウス嚢 対 体重(B/BW)の比を決定するために、鶏を安楽死させ、各鶏の体重を記録した。各鶏について、ファブリキウス嚢をその全体において切り出し、同様に秤量した。
【0072】
ファブリキウス嚢のサンプルも、中性緩衝化ホルマリン中に収集し、保管した。
【0073】
(データ分析)
各群についての相乗平均のIBDV ELISA力価を計算し、データをStatviewソフトウェアパッケージにインポートした後に、一元ANOVAおよびフィッシャーのPLSD(α=0.05)により比較した。ELISAデータも、陽性%に関して評価した。ここで0.20より大きいシグナル 対 陽性コントロール(S/P)比を有する全てのサンプルを、(ELISAアッセイキット製造業者であるIdexxによって特定されるように)抗体陽性とみなした。血清中和データについては、相乗平均力価も計算し、陽性%を規定するために、20以上の逆数希釈率を有する全てのサンプルを、抗体陽性とみなした。
【0074】
そのB/BW比を、(記録したファブリキウス嚢重量÷その関連づけられた体重×1000)で計算した。その正常コントロールを、平均正常B/BW比を確立するために使用し、カットオフ値を、2つの標準偏差がこの平均より小さくなるように計算した。そのカットオフ値より小さいB/BW比を有する全ての鶏を、チャレンジによって罹患し、よってワクチンによって防御されなかったとみなした。この分析により、防御%のデータが得られた。
【0075】
群平均B/BW比も、データをソフトウェアパッケージにインポートした後に、一元ANOVA(α=0.05)およびフィッシャーのPLSDによって比較した。チャレンジコントロールより有意に高かった群平均B/BW比は、防御が群において達成されることを示した。ある群と比較して、別の群で統計的により高い群平均B/BW比は、その群における有意により高いレベルの防御を示した。
【0076】
(結果および考察)
(血清学)
ELISAおよび血清中和アッセイのデータを、表4に報告する。チャレンジコントロールおよび正常コントロール群は、チャレンジ前にIBDV抗体がないままであり、このことによって、研究の生物安全性(biosecurity)を確認した。
【0077】
Lukert ACLと追加のBTOを調達した改変抗原を含むワクチンは、Lukert ACLのみの群よりも有意に高いIBDVに対するELISA GMTを誘発したが、それらの力価は、非ワクチン接種コントロール群より常に有意に高いわけではなかった。そのLukert ACL+15−4ワクチンは、そのコントロール群およびLukert ACLのみ群の両方よりも有意に高いELISA GMTを誘発したが、28−1抗原のみが、「水準点」競合相手の製品のレベル以上のELISA応答に増大した。
【0078】
血清中和(SN)アッセイGMTは、一般に低かったので、統計的に評価しなかった。SN陽性%の観点から、ELISAによって得たものと類似の結果が観察された。そのコントロール群は、検出可能な抗体を含まなかった。Lukert ACLのみ群、Chicklet Lukert+S21群、Lukert ACL+ArkProvent群およびLukert ACL+S21群が、わずか1羽または2羽の陽性を有し、Lukert ACL+15−4群およびLukert ACL+28−1群が、5羽の陽性を有した。
【0079】
(チャレンジからの防御)
チャレンジからの防御を、2つの方法で評価した。第1は、表5に報告されるように、群平均B/BW比を比較することによった。表5は、チャレンジ用分離株毎に、組み合わせた全てのチャレンジについて分けて示した比較を含む。
【0080】
これは、ワクチンの免疫原性を評価するにおいて最も適切であり得る「組み合わせた全てのチャレンジ」データである。これは、一般に、開発中の全てのワクチンの目標物であるより最近の分離株を含め、改変体に対する防御の全般的な考察を提供すると予測される。
【0081】
組み合わせたチャレンジのデータを考慮する場合、Lukert ACLのみ群、Chicklet Lukert+S21群、Lukert ACL+S21群およびLukert ACL+ArkProvent群の平均B/BW比は、チャレンジコントロール群に統計的に等しかった。このことは、これらのワクチンの1/50の用量でのワクチン接種によってもたらされる防御は、本質的にないことを示した。このLukert ACL+15−4群は、そのチャレンジコントロール群より有意に高い平均B/BW比を有した。このことは、このワクチンによってあるレベルの防御が誘導されることを示した。このLukert ACL+28−1群は、Lukert ACL+15−4群より有意に高い平均B/BW比率を有した。このことは、よりさらに高いレベルの防御を示した。競合相手の製品ワクチンは、Lukert ACL+15−4群とLukert ACL+28−1群との間にあり、これらの群のいずれとも有意に異ならなかった。
【0082】
このデータはまた、表6に報告される非チャレンジの鶏の正常コントロール群から計算したカットオフ値より得られる防御%の観点から評価した。繰り返すと、これらのチャレンジの全てを組み合わせることによって得られたデータは、おそらく、最も適切である。この評価は、Lukert ACL+28−1および競合相手の製品ワクチンが、他のものより高いレベルの防御を誘発したという点で、群平均B/BWデータ(表5)と同じ結果を本質的に与え、このLukert ACL+28−1群は、数字的に最も高いレベルの防御を与えた。
【0083】
(考察)
この研究の主な目的のうちの1つは、IBDV Lukert ACLと組み合わせた他の改変分離株が、血清学的応答および防御応答により決定されるような、より抗原性のワクチンを得るか否かを決定することであった。その目的は、28−1分離株から得られた抗原をワクチンに補充することにより、より免疫原性のワクチンを得る結果となったことが決定されたので、この研究において本質的に達成された。等用量でプロトタイプワクチンに処方され、等しい経路によって等しい分割用量の容積で投与された場合、この28−1補充ワクチンは、他のワクチンより有意に高いELISA応答および防御応答を誘発した。
【0084】
この研究の第2の目的は、以前の研究においてよく行われていた競合相手の製品と比較して、種々のプロトタイプワクチンを評価することであった。SN応答%を除いて、評価の全てを平均しても、28−1 BTO抗原を補充したワクチンは、競合相手の製品ワクチンの性能レベルを満たしたかまたはその性能レベルを超えた。従って、この28−1抗原は、さらなるワクチン開発のための非常に適している。
【0085】
この研究において与えられた通常用量の1/50は、ワクチン間の差異を評価し得るような、低下した防御レベルを与えるように設計された。
【0086】
(結論)
28−1分離株のBTO抗原を含めることで、プロトタイプワクチンによって誘発される血清学的応答および防御応答が有意に増大した。
【0087】
28−1分離株のBTO抗原を含めると、改変体IBDVに対する血清学的応答および防御応答を考慮した場合に、競合相手の製品のレベルで機能したかまたはそのレベルを超えたプロトタイプワクチンが得られた。
【0088】
(表4.IBDV成分を含む、プロトタイプワクチンおよび現在許可された不活性化ワクチンにより誘導された血清学的応答)
【0089】
【表4】

*同じ上付文字を有する平均は、一元ANOVAおよびフィッシャーのPLSD(α=0.05)によって統計学的に等しい。
【0090】
(表5.群平均ファブリキウス嚢 対 体重の比によって測定される場合の、IBDV成分を有する、プロトタイプワクチンおよび現在許可された不活性化ワクチンにより誘導された改変体IBDVチャレンジに対する防御)
【0091】
【表5】

*同じ上付文字を有する列内の平均は、一元ANOVAおよびフィッシャーのPLSD(α=0.05)により統計学的に等しい。
【0092】
(表6.計算されたカットオフ値を参照した防御%により測定される場合の、IBDV成分を有する、プロトタイプワクチンおよび現在許可された不活性化ワクチンにより誘導された改変体IBDVチャレンジに対する防御)
【0093】
【表6】

*防御%は、正常コントロール群を用いたカットオフ値に基づいた。正常コントロール群の平均ファブリキウス嚢 対 体重の比(4.17) − 2標準偏差(2.23)=計算されたカットオフ値(1.94)である。チャレンジして10日後に剖検された場合に、ファブリキウス嚢 対 体重の比が1.94を超える鶏は、防御されたと分類した。
【0094】
(実施例2および3)
以下の表において、本発明のワクチン組成物を、肉用鶏の子孫チャレンジ研究においてさらに比較した。各野外試験において、市販のワクチンの2回注射からなる標準プログラムを、本発明のワクチン組成物を、市販のワクチンの1回と置き換えるプログラムに対して比較した。この肉用鶏繁殖業者群は、研究のために受精卵を収集したとき、38〜44週齢であった。この結果は、防御%の観点からグラフにする。各表において、右側の結果は、本発明の組成物を含むワクチンプログラムを示す:
【0095】
【表7】

(表7.子孫チャレンジ研究(野外試験1)における防御レベル)
【0096】
【表8】

(表8.子孫チャレンジ研究(野外試験2)における防御レベル)。
【0097】
本発明は、その種々の実施形態の各々において記載されてきたが、これらの実施形態に対する特定の改変が、前述の説明に示されるように、そして添付の特許請求の範囲においてさらに具現化されるように、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって行われかつもたらされ得ると予測される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、いくつかの参照米国改変IBDVと古典的(標準)ウイルスとのアミノ酸配列比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染を予防または改善することにおいて有効なワクチン組成物であって、該組成物は、図1に示される伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス抗原の実質的同定特徴を有する抗原または抗原成分を含み、かつ伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのデラウェア型改変体と実質的なモノクローナル抗体反応性を保持する、ワクチン組成物。
【請求項2】
薬理学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のさらなる家禽の抗原をさらに含む、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記キャリアは、水性キャリアおよびエマルジョンからなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記キャリアは、油中水型エマルジョンである、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記1種のさらなる家禽の抗原は、レオウイルスである、請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記抗原は、生の抗原、生の弱毒化抗原、または死滅不活性化抗原からなる群より選択される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記抗原は、生の弱毒化抗原であり、連続継代されたものである、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスに対するワクチン組成物であって、該組成物は、IBDVの28−1抗原性分離株を含み、アクセッション番号PTA−5848の下でATCCに受託されている、組成物。
【請求項10】
図1に示されるアミノ酸配列を有する、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株(28−1)。
【請求項11】
アクセッション番号PTA−5848の下でATCCに受託されている株の実質的同定特徴を有する、伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株。
【請求項12】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルス感染に対する防御を誘導するための方法であって、該方法は、図1に示されるIBDV抗原性分離株の実質的同定特徴を有する抗原を含むワクチン組成物を、家禽動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項13】
伝染性ファブリキウス嚢症に対する防御を誘導するための方法であって、該方法は、ATCCアクセッション番号PTA−5848で同定される抗原性分離株を、家禽動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
前記ワクチンは、卵中にまたは孵化後の若鶏に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記IBDV抗原性分離株は、家禽に対して少なくとも1種の他の抗原と一緒に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記他の抗原は、レオウイルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスのVP−2の親水性ピーク領域Bにおいて318G→D置換のみを有する抗原または抗原性分を含むワクチン組成物であって、ここで該ワクチン組成物は、IBDの標準株およびグループ6およびデラウェア株改変体に対して有効である、組成物。
【請求項18】
IBDに対するワクチンにおける使用に適したVP−2アミノ酸配列において318D置換を有する伝染性ファブリキウス嚢症ウイルスの抗原性分離株であって、該分離株は、IBDVの1種以上のデラウェア株と実質的な反応性を保持する、分離株。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528900(P2007−528900A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502981(P2007−502981)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/007879
【国際公開番号】WO2005/089795
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】