説明

伝熱管およびその製造方法

【課題】 管の内側表面に、管の内面にて流動する媒体が蒸発する際の伝熱を著しく向上させ、同時に圧力降下を過度に増大させないような構造を具備させることであり、さらに、当該構造は低コストで確実に製造可能でなければならない点である。
【解決手段】 管軸線に対し測定した内側フィンのねじれ角が45゜よりも小さいか、45゜に等しく、内側フィンの、管壁から離間している領域が、片側において規則的な間隔で実質的に管周方向に非対称に成形され、内側フィンの成形材料が溝上方に突出部を形成しており、突出部がそれぞれ有限の成形ゾーンにわたって1つの内側フィンに沿って延在し、成形の度合いが成形ゾーンの内側で連続的に変化しており、成形部はエッジよりも成形ゾーンの中央部においてより強く刻設され、溝底と内側フィンの側部と形成された突出部との間に、気泡の形成を好ましくさせる中空空間が設けられているようにした伝熱管であることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の伝熱管、および、請求項6の前提部に記載の伝熱管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質の蒸発は、冷凍技術および空調技術の多くの分野で、また化学技術、プロセス技術、エネルギー技術で発生する。蒸発する物質が蒸発するには熱が必要であり、この熱は他の媒体から引き出される。他の媒体は冷却されるか、圧縮される。冷却と圧縮の混合形態もありうる。
【0003】
伝熱面を構造化することにより伝熱を強化させることができることは知られている。これにより、表面が平滑である場合よりも、伝熱面の1単位あたりより多くの熱を伝達させることが達成される。さらに、駆動性温度差を減少させ、よってプロセスを効率的に構成することが可能である。金属製の熱交換器管の場合は、管壁の材料からフィンまたは同様の要素を成形することによって伝熱面の構造化を行なうことが多い。これら一体成形されるフィンは管壁と強固な金属結合を持ち、したがって熱を最適に伝達させることができる。
【0004】
管の内面には、伝熱特性を改善するために軸線平行なフィンまたは螺旋状のフィンが使用されることがある。フィンを形成することにより、管の内側表面積が増大する。さらに、フィンが螺旋状に配置されている場合には、管内を流動する流体の渦が増大し、よって伝熱を改善させる。管内を流動する流体を蒸発させる必要がある場合は、内側フィンに補助的な構造特徴部を備えさせて、蒸発プロセスを好都合に制御する。この場合、中空空間またはアンダーカットした構造を生じさせることが多い。というのは、この種の構造は気泡形成プロセスを好ましくさせるからである。
【0005】
管の内側表面を構造化させることによって伝熱が強化されるばかりでなく、管内を流動する媒体の圧力降下も増大する。この作用は、圧力により蒸発温度が下がり、それによりプロセス全体があまり効率的にならないので、望ましいものではなく、特に蒸発プロセスの際には望ましくない。
【0006】
特許文献1では、互いに隣接しあうフィンの間に管路を生じさせ、この管路の開口部が該管路の最大幅よりも狭くなるように、内側フィンの先端を曲げることが提案される。同様の実施態様は特許文献2および特許文献3からも読み取れる。特許文献2および特許文献3では、内側フィンの先端を成形するばかりでなく、フィン全体を曲げる。特許文献4では、フィンがT字状の横断面を含み、よって個々のフィンの間にアンダーカットされた管路が生じるように、フィン先端を成形することが提案される。以上取り上げた4つの文献はいずれも、アンダーカットされた管路の横断面積および開口幅は変化しない。その結果、この種の構造では、気泡の形成および剥離にとって有利な場所が存在しない。
【0007】
気泡蒸発の形成と安定化にとってより好ましいのは、横断面形状と開口幅とが変化するような、アンダーカットされた構造である。開口幅が変化する構造は、たとえば特許文献5に記載されている。材料は、個々のフィンの間の管路が部分的に閉鎖されるように内側フィンの側面から転位せしめられる。蒸発泡は管路の開口部位に逃げることができる。しかしながら、開口部のサイズのコントロールが極めて困難であり、製造プロセスが安定しない。したがってこの構造は、管を低コストで機能安定に製造するには適していない。
【0008】
さらに、特許文献6は、二次溝を半径方向に刻設することによってフィンの上部領域から材料を左右対称に転位させるようにした構造を記載している。個々のフィンの間にある一次溝は、二次溝の領域で材料が転位することによって閉鎖される。これによりトンネル状部分が生じる。一次溝を閉鎖させるために十分な材料を転位させるには、二次溝は鋭く縁取りした台形状の横断面を有していなければならない。鋭く縁取りすることにより鋭いエッジを備えた構造が生じ、鋭いエッジは流動する媒体の圧力降下を増大させ、望ましいものではない。特許文献7には、これに非常に類似した構造が提案されている。特許文献6と著しく異なるのは、その製造方法である。特許文献6では、多段階の引張り・成形プロセスにより管を加工するのに対し、特許文献7では、まずベルトを構造化し、次にベルトを付形して管を形成させ、縦継ぎ目を溶接する。しかしながら、その他の製造プロセスによって構造の不具合な特性は解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59−202397A号公報
【特許文献2】欧州特許第1061318B1号明細書
【特許文献3】特開平05−106991A号公報
【特許文献4】欧州特許第1544563B1号明細書
【特許文献5】特開平05−253614A号公報
【特許文献6】米国特許第4733698号明細書
【特許文献7】特開平04−100633A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、管の内側表面に、管の内面にて流動する媒体が蒸発する際の伝熱を著しく向上させ、同時に圧力降下を過度に増大させないような構造を具備させることである。さらに、当該構造は低コストで確実に製造可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、伝熱管に関しては請求項1の構成を特徴とするものであり、伝熱管の製造方法に関しては請求項6の構成を特徴とするものである。その他の従属項は本発明の有利な他の構成に関わるものである。
【0012】
本発明は、管軸線と、管壁と、管外面および管内面とを備え、管壁から、管内面に、軸線平行な内側フィンまたは螺旋状に周回するように延在する内側フィンであって、それぞれ互いに隣接しあっている該内側フィンの間に溝を備えている前記内側フィンが成形されている伝熱管において、管軸線に対し測定した内側フィンのねじれ角が45゜よりも小さいか、45゜に等しく、内側フィンの、管壁から離間している領域が、片側において規則的な間隔で実質的に管周方向に非対称に成形され、内側フィンの成形材料が溝上方に突出部を形成しており、突出部がそれぞれ有限の成形ゾーンにわたって1つの内側フィンに沿って延在し、成形の度合いが成形ゾーンの内側で連続的に変化しており、成形部はエッジよりも成形ゾーンの中央部においてより強く刻設され、溝底と内側フィンの側部と形成された突出部との間に、気泡の形成を好ましくさせる中空空間が設けられているようにした伝熱管に関わる。
【0013】
この場合本発明は、特に管内面に構造を一体成形した金属性伝熱管において、管内面で物質が蒸発する際の効率を改善させるという思想から出発している。
【0014】
蒸発する物質と熱を放出する媒体とは、通常、熱を伝達する壁によって互いに物質的に分離されていなければならない。このため金属管が使用されることが多い。蒸発する物質は管外面にあり、他方熱を放出する媒体は管内面を流動する。これとは択一的に、蒸発する物質が管内面を流動し、熱を放出する媒体が管の外面にあるケースがある。本発明は後者のケースに関わるものである。
【0015】
管内面で蒸発する場合、管は水平または垂直に配置されていてよい。さらに、管が水平線または垂直線に対しわずかに傾斜しているケースもある。冷凍技術では、通常、水平管を備えた蒸発器が使用される。これに対し化学技術では、蒸留塔を加熱するために鉛直型循環蒸発器が使用されることが多い。この場合、物質の蒸発は垂直に立っている管の内面で行なわれる。
【0016】
熱を放出する媒体と蒸発する物質との間での熱移動を可能にするには、熱を放出する媒体の温度が蒸発する物質の温度よりも高くなければならない。この温度差は駆動性温度差と呼ばれる。駆動性温度差が大きければ大きいほど、より多くの熱を伝達させることができる。他方、駆動性温度差が小さくなるよう努める場合もある。プロセスの効率にとって有利だからである。
【0017】
本発明によれば、蒸発の際の熱伝達率を高くするため、気泡沸騰工程を集中的に行なう。気泡の形成は核部位で始まる。これらの核部位は、通常、ガス封入体または蒸気封入体である。気泡が成長して一定のサイズに達すると、気泡はその表面から剥離する。気泡が剥離して核部位に液体が流れ込むと、核部位は不活性になる。すなわち表面は、気泡が剥離する際に小さな気泡が残り、この気泡が気泡形成の次のサイクルのための核部位として用いられるように構成されねばならない。これを達成するため、気泡の剥離後に小さな気泡を残らせるキャビティを表面に配置する。
【0018】
本発明では、溝底とフィンの側部と成形される突出部との間に形成される中空空間が本発明によるキャビティである。突出部は、上部フィン領域を部分的に成形することによって形成させる。その際の成形は、ゾーンの内部で成形の度合いが連続的に変化し、成形部が成形されたゾーンのエッジよりも該ゾーンの中央部でより強く刻設されているように実施されている。これにより、際立ったエッジがない、湾曲した境界面を備える輪郭が生じる。この種の輪郭は圧力降下が少ない点で好ましいが、これは流体の流動がエッジにおいて急激に転向せずに、流体が湾曲した境界面に沿って流動できるからである。
【0019】
格別な利点は、1つの管の内側表面が、管の内面を流動する媒体が蒸発する際の熱移動を著しく改善させ、これと同時に、圧力降下を過度に高めないような構造を備えている点にある。さらに、この構造は低コストであり、確実に製造可能である。
【0020】
本発明の有利な構成では、成形ゾーンの中央部において、1つの内側フィンの成形材料が周方向に隣接する内側フィンに接触している。これにより、それぞれ隣接しあっているフィンの間の溝に部分的にカバーを備えさせる。すなわち、当初開口している溝から、内側フィンに対し平行に延在し、2つの側で開口する中空空間を局部的に形成させ、この中空空間を、溝底と、互いに境界を接している2つの内側フィンの側部と、成形したカバーとによって画成させる。この中空空間の横断面積は、該中空空間が両端部においてホッパー状に開口溝へ移行するように、内側フィンに沿って変化している。中空空間は、ホッパー状の両移行部の間に、もっとも小さな横断面積を持った部位を有する。この部位に小さな気泡またはガス封入体をとどませることができるので有利である。これは大きな気泡を形成させるための核部位を形成するので有利であり、これによって蒸発プロセスが促進される。
【0021】
有利には、成形ゾーンの中央部において、成形材料が内側フィンと周方向において当該内側フィンに隣接している内側フィンとの間にある溝底に接触し、これにより、溝が互いに隣接しあっている内側フィンの間において部分的に閉鎖されているのがよい。部分的な閉鎖により、気泡の形成を特に促進させるホッパー状の中空空間が生じる。この実施態様において形成される中空空間は単に1つの開口部を有しているにすぎないので、気泡が剥離した場合、その後に液体が流入しにくくなる。これにより、小さな気泡またはガス封入体を滞留させるのに特に好ましい条件が提供される。この小さな気泡またはガス封入体は、すでに小さな駆動性温度差がある場合に新たな気泡を発生させるための核部位を形成するので有利である。
【0022】
有利な構成では、内側フィンの、互いに隣接しあっている突出部は、螺旋状周回方向において互いに接触しておらず、または、互いにオーバーラップしていない。成形ゾーンの幅は、通常は、個々の突出部の互いに隣接しあっているゾーンの間に内側フィンの本来の高さHが得られるように選定されている。これは管内を流動する流体の渦化を促進させる。
【0023】
有利には、管外面に、螺旋状に周回するように延在し、一体に成形される外側フィンが形成されているのがよい。このように両側にフィンを形成させたタイプの管の場合、伝熱面積が増大し、その結果対応的に平滑な表面の場合よりもより多くの熱を伝達させることができる。
【0024】
本発明の他の特徴は、管外面にねじ線状に周回するように延在している一体の外側フィンと、管内面に軸線平行にまたはねじ線状に周回するように延在している一体の内側フィンであって、該内側フィンの、管壁から離間している領域が、片側において規則的な間隔で管周方向に非対称に成形されている前記内側フィンとを備えた、本発明による伝熱管の製造方法において、
【0025】
a)圧延ステップにより管壁から材料を排除することによってフィン材を得て、生じたフィン管を圧延力により回転させ、生じたフィンに応じてフィン管に送りを与えるようにして、平滑管の管外面に、ねじ線状に周回するように延在する外側フィンを成形させ、その際外側フィンを、高さを増大させながら、まだ成形されていない平滑管から成形させるステップと、
【0026】
b)管壁を、外側フィンが成形される領域において、管内にある圧延マンドレルであってマンドレルバーで回転可能に支持され且つそのマンドレル外面に軸線平行な溝または螺旋状の溝を有する前記圧延マンドレルによって支持させ、その際軸線平行な内側フィンまたは螺旋状の内側フィンを成形させるステップと、
【0027】
c)内側フィンの、管壁から離間している領域を、圧延マンドレルの下流側に配置される少なくとも1つの回転不能なピンによって規則的な間隔で非対称に実質的に管周方向に成形させ、その際内側フィンの成形材料を、互いに隣接しあっている2つの内側フィンの間にして溝の上方に突出部が形成されるように転位させるステップと、
を含むことにある。
【0028】
この場合、本発明は、それぞれ少なくとも1つの圧延工具が一体化されているn=3または4個の工具保持体から成る圧延装置を使用するという思想から出発している。それぞれの工具保持体の軸線は管軸線に対し傾斜して延在している。工具保持体はそれぞれ360゜/nだけずらして管の周囲に配置されている。工具保持体は半径方向に送り調整可能である。工具保持体は定置の圧延架台に配置されている。圧延工具は互いに並設される複数個の圧延ディスクから成り、その直径は外側フィンの前進成形率の方向に増大している。
【0029】
プロファイル化された圧延マンドレルも同様に本発明による装置の構成部材である。圧延マンドレルはバーに装着されており、該バーに回転可能に支持されている。圧延マンドレルの軸線はバーの軸線と同じであり、管軸線と一致している。バーはその他端を圧延架台に固定され、回転できないように固定されている。バーを用いて圧延マンドレルは圧延工具の作業範囲内に位置決めされる。
【0030】
さらに、圧延マンドレルの後には、半径方向に指向するピンが装着されている。ピンは前記バーと固着され、したがって回転不能である。したがって、回転不能なピンは、当初圧延マンドレル表面によって形成される内側フィンに係合し、これによって突出部が生じる。これらの突出部は、規則的な間隔で非対称に実質的に管周方向に一体成形されている。これに関連して、実質的に、管外壁に係合する圧延工具の圧延ディスクは1回転ごとに管に対しある程度の送り、しかし小さな送りを与えるという概念が明らかになる。すなわち、マンドレルバーに配置されている位置固定のピンは、軸線方向の前記小さな送りの際に、近似的に管周方向に対応する運動を伝熱管内で実施する。
【0031】
本発明の有利な構成では、ピンの端部は丸みを帯びた輪郭を有している。ピンのこの輪郭に対応して成形の度合いが変化し、その結果強く成形される領域とあまり強く成形されない領域とが存在することになる。丸みを帯びた輪郭により、形成された突出部が前記成形度合いが異なる領域の移行部に鋭いエッジを有することが阻止される。
【0032】
有利には、ピンの端部が半球体の形状を有しているのがよい。この半球体形状に対応して、1つの成形ゾーンの内部で成形の度合いが連続的に変化し,鋭いエッジか生じることがない。成形部は、盆地のように、成形ゾーンのエッジよりもその中央部でより強く成形されている。これによって突出部は舌片状の形状を呈する。
【0033】
本発明の他の有利な構成では、前記バーの軸線からピンの端部まで測定したピンの半径方向延在距離は、最大で、圧延マンドレルの直径の半分の大きさである。この限定により、内側フィンの成形部がフィン付き管の心壁まで延在して管の安定性を減少させることが阻止される。ピンの半径方向延在距離が短ければ短いほど、内側フィンの成形度合いが少なくなり、材料が側方へ排除される量が少なくなる。すなわち、ピンの半径方向延在距離を選定することによって成形の強度に著しく影響を与えることができる。
【0034】
有利には、前記バーの軸線からピンの端部まで測定したピンの半径方向延在距離が、圧延マンドレルの直径の半分よりも非成形内側フィンの高さの35%ないし65%だけ短いのがよい。内側フィンの高さがたとえば0.4mmだとすると、前記バーの軸線からピンの端部まで測定したピンの半径方向延在距離は、圧延マンドレルの直径の半分よりも0.14ないし0.26mmだけ短い。ピンの半径方向延在距離がマンドレルの直径の半分よりも非成形内側フィンの高さの65%差し引いた分だけ短ければ、熱移動の十分な改善を得ることはできない。ピンの半径方向延在距離がマンドレルの直径の半分よりも非成形内側フィンの高さの35%差し引いた分だけ短ければ、生じる中空空間が気泡核部位を形成させるために特に有利な形状を有するように、内側フィンの成形部が構成される。
【0035】
管を加工するには、周囲に配置される回転圧延工具に対し平滑管のほうへ半径方向の送りを与え、平滑管と係合させる。これによって平滑管はその軸線のまわりに回転する。圧延工具の軸線が管軸線に対し傾斜しているため、圧延工具は、平滑管の壁材から、ねじ線状に周回するように延在する外側フィンを成形させ、これと同時に、ねじ線状に周回するように延在する外側フィンのピッチに対応して、生じたフィン付き管に対し送りを与える。管軸線に沿って測定した、互いに隣接しあう2つの外側フィンの間隔は、フィンピッチpと呼ばれる。フィンピッチpは通常は0.4mmと2.2mmの間である。外側フィンは、好ましくは多条ねじのごとく周回して延在する。管の1回転ごとにm条のねじが生じるとすれば、1回転ごとに軸線方向に送られる管送り量はmpである。外側フィンのピッチpが小さければ、通常は3、4、6または8の値をとる。
【0036】
圧延工具の作業領域内で、管壁はプロファイル化された圧延マンドレルによって支持される。圧延マンドレルのプロファイル部は通常、圧延マンドレルの外面上に互いに平行に配置されている実質的に台形状の多数の溝から成っている。これらの溝は圧延マンドレルの軸線に対し0゜ないし45゜のねじれ角で延在している。圧延工具の半径方向の力によって、管壁の材料は圧延マンドレルの溝のなかへ圧入される。これにより、軸線平行な内側フィンまたはねじ線状に周回するように延在する内側フィンが管の内側表面に成形される。管軸線に対し測定した内側フィンのねじれ角は、圧延マンドレルの溝のねじれ角に等しい。管壁を起点として測定した内側フィンの高さHは、0.3mmと0.5mmの間である。互いに隣接しあう2つの内側フィンの間に溝が延在する。
【0037】
圧延工具の作業領域にしたがって、圧延マンドレルの後方に装着されているピンによって内側フィンがさらに加工される。ピンは前記バーによって位置固定して位置決めされているのに対し、成形された内側フィンを備える管は自らの軸線のまわりに回転する。ピンの半径方向延在距離は、内側フィンの、管壁から離間している領域が、半径方向に指向するピン端部によって規則的な間隔で非対称に実質的に管周方向に成形されるように選定されている。内側フィンの材料は側方へ転位し、内側フィンの高さは成形によって局部的に減少する。側方に転位した内側フィンの材料は、互いに隣接しあっている2つの内側フィンの間の溝の上方に突出部を形成する。成形部は、ピンの幅に対応して、それぞれ有限のゾーンにわたり内側フィンに沿って延在する。ピンの端部は丸みを帯びた輪郭を有しているので、1つのゾーン内部での成形の度合いが連続的に変化している。成形ゾーンの中央部での成形部は、成形ゾーンのエッジよりも強く刻設されて盆地のようになっている。内側フィンを成形するために1本のピンのみを使用すれば、1つの内側フィンに沿って軸線方向に測定した、互いに隣接しあっている2つの成形ゾーンの中心の間隔は、管が1回転ごとに行う軸線方向の送り量(mp)に等しい。複数本のピンを使用する場合には、前記間隔はピンの本数に応じて減少する。
【0038】
次に、本発明の実施形態を図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】平面状に展開した管セグメントの管内面の構造を示す図である。
【図2】図1の管セグメントの内側構造の詳細図である。
【図3】1つの圧延マンドレルと4つの外側の圧延工具とを用いて両面にフィンを形成させた伝熱管の製造を説明する図である。
【図4】両面にフィンを形成させた図3の伝熱管の製造を説明する、他の方向から見た斜視図である。
【図5】回転不能なピンを備えた、回転可能に支持される圧延マンドレルを示す図である。
【図6】外側の圧延工具の領域での詳細図である。
【図7】ピンの領域での他の詳細図である。
【図8】両面にフィンを形成させた伝熱管を半分に切断した図で、内側構造を形成する工程を異なる段階で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図に示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。全図において、互いに対応する部材には同一の符号が付してある。
【実施例1】
【0041】
図1は、伝熱管1の管セグメントを平面状に展開させたときの管内面3の構造を示す図である。この場合、管軸線Aは管セグメントの切断エッジの1つに対し平行に延在している。管軸線Aに対して測定した内側フィン31のねじれ角αは約35゜である。内側フィン31の、管壁11から離間している領域、すなわち実質的にフィン先端の領域は、片側において規則的な間隔で管周方向に非対称に成形されている。内側フィン31の成形材料は、溝32の上方に延在する突出部4を形成している。成形ゾーン41のエッジ412には、互いに隣接しあう突出部4の間に内側フィン31の小さな残部が成形されないままに残っており、その結果内側フィン31の互いに隣接しあっている突出部4の間には螺旋状周回方向においてわずかに間隔があり、互いに接触していない。
【0042】
成形材料は、1つの突出部4の成形ゾーン41の中央部411において、周方向に隣接する内側フィン31と接触しており、これにより溝32は互いに隣接しあっている内側フィン31の間で部分的に閉鎖される。したがって、本来開口している溝32から、内側フィンに対し平行に延在し且つ2つの側で開口する中空空間5が形成される。この中空空間5は、溝底321と、互いに境を接している2つの内側フィン31の側部311と、カバーとしての突出部4とによって画成される。
【0043】
成形材料を、成形ゾーン41の中央部411において内側フィン31の間の溝底321まで延在させ、これによりそれぞれの突出部4の下にいわば仕切り壁によって仕切られる2つの中空空間5を生じさせるようにしてもよい。
【0044】
図2は、図1の伝熱管1の管セグメントの内側構造の詳細図である。管内面3には、表面全体にわたって配分されて規則的に反復する突出部4を備えた内側フィン31が配置されている。突出部4の下には中空空間5が形成されている。1つの中空空間5の内部には気泡が形成されるのが好ましい。しかしながら、気泡核が発生すれば、内側フィン31の側部311と溝32とに沿って溝底321に横方向に成長するので、個々の突出部4の間において内側へ開口する領域全体にわたってホッパー状の開口部を介して伝熱管1から剥離される前に、該気泡核を突出部4によって制限しなければならない。
【0045】
図3と図4に図示した装置の一部分は、両側にフィンを形成させた伝熱管1の製造を説明する工程を異なる斜視図で示したものである。一体圧延される伝熱管1は、管外面2に、ねじ線状に周回するように延在する外側フィン21を有している。使用する装置は、伝熱管1の周囲に配置される4つの圧延工具9から成る。圧延工具9は、必要な管送りを生じさせるために管軸線Aに対しいくぶん斜めに圧下されており、半径方向に送りを与えることができる。圧延工具9自体は、圧延装置の基礎架台に固定されている定置の圧延ヘッドに配置されている(図面には図示せず)。
【0046】
伝熱管1の内側構造を生じさせる圧延マンドレル6も圧延装置の構成要素である。圧延マンドレル6はマンドレルバー7の自由端に装着され、回転可能に支持されている。マンドレルバー7は、その他端を、圧延装置の基礎架台(図面には図示せず)に固定されている。マンドレルバー7は製造される伝熱管1と少なくとも同じ長さでなければならない。
【0047】
本来は平滑な管を加工するには、周囲に配置され、回転する圧延工具9に、平滑管に対し半径方向に送りを与えて、平滑管に係合させる。これによって平滑管は回転する。それぞれの圧延工具9の軸線は管軸線に対し斜めに設定されているので、圧延工具9は平滑管の管壁11からねじ線状に周回するように延在する外側フィン21を成形し、これと同時に、生じる伝熱管1に対し、ねじ線状に周回するように延在する外側フィン21のピッチに応じた送りを与える。
【0048】
管壁11は、圧延工具9の成形ゾーンにおいて、プロファイル化された圧延マンドレル6によって支持される。圧延マンドレル6の軸線は管軸線Aと一致している。圧延マンドレル6のマンドレル外面61には螺旋状の溝611が付与されている。マンドレルバー7の端部には、半球体の形状のピン8が配置されており、マンドレルバー7の軸線からピンの外端81まで測定した該ピン8の半径方向延在距離は、最大で、圧延マンドレル6の直径の半分の大きさである。このピン8は管内面3の内側フィンの材料に食い込んで、回転している伝熱管1に、図1または図2に図示した突出部4を形成させる。
【0049】
図5は回転可能に支持される圧延マンドレル6を示す図であるが、この圧延マンドレル6は2分割のマンドレルバー7の端部に回転不能に設けたピン8を備えている。ねじ山71は個々のバー部分を形状拘束的に結合させて、使用に適した安定な構造を提供している。圧延マンドレル6には螺旋状の溝611が付与されている。付与されたこのプロファイルは通常は多数の台形状または略台形状の溝から成っており、これらの溝は互いに平行を成すようにマンドレル外面61にねじれを持って配置されている。図示した圧延マンドレル6の場合、ねじれ角は約35゜である。
【0050】
図6は、本発明による装置の、外側の圧延工具9の領域の詳細図である。圧延工具9はそれぞれ互いに並設された複数個の圧延ディスク91から成り、圧延ディスク91の直径は送り方向Vに増大している。外面2に対する圧延工具9の半径方向の力によって、管壁11の材料は管内面3において圧延マンドレル6の螺旋状の溝611に圧縮される。これにより、方法的に後続のピンが突出部を成形する前に(この図には図示せず)、ねじ線状に周回するように延在する内側フィン31が伝熱管1の内面に成形される。互いに隣接しあう2つの内側フィン31の間に溝32が延在する。
【0051】
図7は、伝熱管1および圧延マンドレル6の他の詳細図で、ピン8の領域にあるマンドレルバー7の端部を示したものである。この領域では、突出部4が管内面3に挿入されることによって、圧延マンドレル6によって形成される内側フィン31が成形される。ピン8は半球体状の構成を有し、マンドレルバー7の軸線からピンの端部81まで測定した、ピン8の半径方向延在距離は、圧延マンドレル6の直径の半分よりも短い。内側フィンがたとえば0.4mmの高さを持った構造の場合、マンドレルバーの軸線からピンの端部81まで測定した、ピン8の半径方向延在距離は、圧延マンドレル6の直径の半分よりも0.14mmないし0.26mmだけ短い。
【0052】
図8は、両面にフィンを形成させた伝熱管1を半分に切断した図で、管内面3に構造を形成させる工程を異なる段階で示したものである。管壁11から管外面2に形成させた外側フィン21は、ほとんどが内側フィン31よりも大きなフィン高さを持っている。送り方向Vに見ると、平滑管から出発して、まず外側フィン21と内側フィン31を成形し、その後の方法工程で突出部4が形成される様子がよく見て取れる。
【符号の説明】
【0053】
1 伝熱管
11 管壁
2 管外面
21 外側フィン
3 管内面
31 内側フィン
311 内側フィンの側部
32 溝
321 溝底
4 突出部
41 成形ゾーン
411 成形ゾーンの中央部
412 成形ゾーンのエッジ
5 中空空間
6 圧延マンドレル
61 マンドレル外面
611 螺旋状の溝
7 マンドレルバー
71 2分割のマンドレルバーのねじ山
8 ピン
81 ピンの端部
9 圧延工具
91 圧延ディスク
A 管軸線
V 送り方向
α ねじれ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸線(A)と、管壁(11)と、管外面(2)および管内面(3)とを備え、管壁(11)から、管内面(3)に、軸線平行な内側フィン(31)または螺旋状に周回するように延在する内側フィン(31)であって、それぞれ互いに隣接しあっている該内側フィン(31)の間に溝(32)を備えている前記内側フィン(31)が成形されている伝熱管(1)において、
管軸線(A)に対し測定した内側フィン(31)のねじれ角(α)が45゜よりも小さいか、45゜に等しいこと、
内側フィン(31)の、管壁(11)から離間している領域が、片側において規則的な間隔で実質的に管周方向に非対称に成形され、内側フィン(31)の成形材料が溝(32)上方に突出部(4)を形成していること、
突出部(4)がそれぞれ有限の成形ゾーン(41)にわたって1つの内側フィン(31)に沿って延在していること、
成形の度合いが成形ゾーン(41)の内側で連続的に変化しており、成形部はエッジ(412)よりも成形ゾーン(41)の中央部(411)においてより強く刻設されていること、
溝底(321)と内側フィンの側部(311)と形成された突出部(4)との間に、気泡の形成を好ましくさせる中空空間(5)が設けられていること、
を特徴とする伝熱管。
【請求項2】
成形ゾーン(41)の中央部(411)において、1つの内側フィン(31)の成形材料が周方向に隣接する内側フィン(31)に接触していることを特徴とする、請求項1に記載の伝熱管。
【請求項3】
成形ゾーン(41)の中央部(411)において、前記成形材料が内側フィン(31)と周方向において当該内側フィン(31)に隣接している内側フィン(31)との間にある溝底(321)に接触し、これにより、溝(32)が互いに隣接しあっている内側フィン(31)の間において部分的に閉鎖されていることを特徴とする、請求項2に記載の伝熱管。
【請求項4】
内側フィン(31)の、互いに隣接しあっている突出部(4)が、螺旋状周回方向において互いに接触しておらず、または、互いにオーバーラップしていないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の伝熱管。
【請求項5】
管外面(2)に、螺旋状に周回するように延在し、一体に成形される外側フィン(21)が形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の伝熱管。
【請求項6】
管外面(2)にねじ線状に周回するように延在している一体の外側フィン(21)と、管内面(3)に軸線平行にまたはねじ線状に周回するように延在している一体の内側フィン(31)であって、該内側フィン(31)の、管壁(11)から離間している領域が、片側において規則的な間隔で管周方向に非対称に成形されている前記内側フィン(31)とを備えた請求項5に記載の伝熱管(1)の製造方法において、
a)圧延ステップにより管壁(11)から材料を排除することによってフィン材を得て、生じたフィン管を圧延力により回転させ、生じたフィンに応じてフィン管に送りを与えるようにして、平滑管の管外面(2)に、ねじ線状に周回するように延在する外側フィン(21)を成形させ、その際外側フィン(21)を、高さを増大させながら、まだ成形されていない平滑管から成形させるステップと、
b)管壁(11)を、外側フィン(21)が成形される領域において、管内にある圧延マンドレル(6)であってマンドレルバー(7)で回転可能に支持され且つそのマンドレル外面(61)に軸線平行な溝(611)または螺旋状の溝(611)を有する前記圧延マンドレル(6)によって支持させ、その際軸線平行な内側フィン(31)または螺旋状の内側フィン(31)を成形させるステップと、
c)内側フィン(31)の、管壁(11)から離間している領域を、圧延マンドレル(6)の下流側に配置される少なくとも1つの回転不能なピン(8)によって規則的な間隔で非対称に実質的に管周方向に成形させ、その際内側フィン(31)の成形材料を、互いに隣接しあっている2つの内側フィン(31)の間にして溝(32)の上方に突出部(4)が形成されるように転位させるステップと、
を含むことを特徴とする伝熱管の製造方法。
【請求項7】
ピン(8)の端部(81)が丸みを帯びた輪郭を有していることを特徴とする、請求項6に記載の伝熱管の製造方法。
【請求項8】
ピン(8)の端部(81)が半球体の形状を有していることを特徴とする、請求項7に記載の伝熱管の製造方法。
【請求項9】
前記バー(7)の軸線からピンの端部(81)まで測定したピン(8)の半径方向延在距離が、最大で、圧延マンドレル(6)の直径の半分の大きさであることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか一つに記載の伝熱管の製造方法。
【請求項10】
前記バー(7)の軸線からピンの端部(81)まで測定したピン(8)の半径方向延在距離が、圧延マンドレル(6)の直径の半分よりも非成形内側フィンの高さの35%ないし65%だけ短いことを特徴とする、請求項6から9までのいずれか一つに記載の伝熱管の製造方法。
【請求項11】
前記バー(7)の軸線からピンの端部(81)まで測定したピン(8)の半径方向延在距離が、圧延マンドレル(6)の直径の半分よりも0.14ないし0.26mmだけ短いことを特徴とする、請求項10に記載の伝熱管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181138(P2010−181138A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283845(P2009−283845)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(592179160)ヴィーラント ウェルケ アクチーエン ゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】WIELAND−WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】