説明

伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法

【課題】伝熱管シール溶接部を内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修溶接することができる補修用具および補修方法を提供すること。
【解決手段】蒸気発生器を構成する管板2と、この管板2の管穴9内に装着された伝熱管7とを接合する伝熱管シール溶接部の補修用具13であって、前記伝熱管9の内径よりも小さい外径を有する中空円筒状の筒状部14と、この筒状部14の一端部から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成され、かつ、前記伝熱管7の外径よりも大きい外径を有するつば部15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器を構成する管板と、この管板の管穴内に装着された伝熱管とを接合する伝熱管シール溶接部の補修に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器としては、例えば、特許文献1に開示された原子炉用蒸気発生器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、図13にも示すように、特許文献1に開示された原子炉用蒸気発生器では、管板2と、この管板2の管穴9内に装着された伝熱管7とが、伝熱管シール溶接部19を介して接合され、1次系と2次系との間のバウンダリーを構成している。
1次系と2次系との間のバウンダリーを構成する伝熱管シール溶接部19に応力腐食割れ等によるき裂等の欠陥が万一生じてしまった場合には、補修溶接を実施する必要が生じる。補修の方法の1つとして、欠陥を除去した後に部分的な肉盛溶接を施して補修する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、部分的な肉盛溶接を行った場合、伝熱管と管板の小さなすき間が密閉された状態で加熱するため、内圧が上昇して溶接中に噴出しが発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、伝熱管シール溶接部を内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修溶接することができる補修用具および補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修用具は、蒸気発生器を構成する管板と、この管板の管穴内に装着された伝熱管とを接合する伝熱管シール溶接部の補修用具であって、前記伝熱管の内径よりも小さい外径を有する中空円筒状の筒状部と、この筒状部の一端部から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成され、かつ、前記伝熱管の外径よりも大きい外径を有するつば部とを備えている。
【0008】
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修用具によれば、例えば、図2または図3に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部14の外周面28は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが密着するように拡管することにより、メカニカルシール部を有効にして1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0009】
本発明の第2の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修用具は、蒸気発生器を構成する管板と、この管板の管穴内に装着された伝熱管とを接合する伝熱管シール溶接部の補修用具であって、前記伝熱管の内径よりも小さい外径を有するとともに、一端部が閉塞部により閉塞された筒状部と、この筒状部の一端部から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成され、かつ、前記伝熱管の外径よりも大きい外径を有するつば部とを備えている。
【0010】
本発明の第2の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修用具によれば、例えば、図6または図7に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部(スリーブ部)45の外周面47は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)45の外周面47と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)45の外周面47が伝熱管7の内周面29に密着するように拡管する。
さらに、図8に示すように、この補修用具(閉塞プラグ)により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグ72で施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0011】
上記伝熱管シール溶接部の補修用具において、前記筒状部の内径および前記つば部の外径が、前記伝熱管シール溶接部の補修を必要とする前記伝熱管に取り付けられた際に、欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部を覆い隠すことができる寸法に設定されているとさらに好適である。
【0012】
このような伝熱管シール溶接部の補修用具によれば、例えば、図4または図9に示すように、欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19を除去することなく、そのままにした状態で補修作業が進められることになるので、作業効率を向上させることができ、作業時間を短縮させることができる。
【0013】
上記伝熱管シール溶接部の補修用具において、前記筒状部の他端部に、半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成されたメカニカルシール部が設けられているとさらに好適である。
【0014】
このような伝熱管シール溶接部の補修用具によれば、例えば、図3または図5に示すように、メカニカルシール部16が伝熱管7の内周面29に食い込んで密着することになるので、シール性を向上させることができ、1次系と2次系との間のバウンダリーをより確実なものとすることができる。
【0015】
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法は、請求項1に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であって、
欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部を除去して、請求項1または2に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を伝熱管の内側に挿入し、前記伝熱管の内周面と前記筒状部の外周面との間にすき間が空いた状態で、前記つば部と前記管板とを溶接にて接合した後、前記伝熱管の内側に挿入された前記伝熱管シール溶接部の補修用具を、一端から他端に向かって拡管してバウンダリーを形成させる。
請求項2の伝熱管シール溶接部の補修用具(閉塞プラグ)を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であっては、この補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグ72で施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0016】
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、例えば、図2または図3に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部14の外周面28は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが密着することにより、メカニカルシール部を有効にして1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0017】
また、本発明の第2の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、例えば、図6または図7に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部(スリーブ部)45の外周面47は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)45の外周面47と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)45の外周面47が伝熱管7の内周面29に密着するように拡管する。
さらに、図8に示すように、この補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグ72で施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0018】
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法は、請求項1に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であって、欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部をそのままにして、請求項1に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を伝熱管の内側に挿入し、前記伝熱管の内周面と前記筒状部の外周面との間にすき間が空いた状態で、前記つば部と前記管板とを溶接にて接合した後、前記伝熱管の内側に挿入された前記伝熱管シール溶接部の補修用具を、一端から他端に向かって拡管する。
本発明の第2の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法は、請求項2の伝熱管シール溶接部の補修用具(閉塞プラグ)を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であっては、この補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグ72で施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0019】
本発明の第1の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、例えば、図4または図5に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19をそのままにして、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部14の外周面28は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが密着することにより、メカニカルシール部を有効にして1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0020】
また、本発明の第2の態様に係る伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、例えば、図9または図10に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19をそのままにして、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部(スリーブ部)45の外周面47は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)45の外周面47と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)45の外周面47が伝熱管7の内周面29に密着するように拡管する。
さらに、図11に示すように、この補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグ72で施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0021】
上記伝熱管シール溶接部の補修方法において、前記筒状部の一端部が閉塞部により閉塞された伝熱管シール溶接部の補修用具を用いる場合、当該伝熱管シール溶接部の補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグで施栓することにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0022】
このような伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、伝熱管の両端部(入口部および出口部)双方において、1次系と2次系との間のバウンダリーを形成させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法によれば、伝熱管シール溶接部を内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修溶接することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る伝熱管シール溶接部の補修用具を具備した原子炉用蒸気発生器の全体を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法を説明するための図であって、図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法を説明するための図であって、図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、逆U字形伝熱管の反対側の施栓状態を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、逆U字形伝熱管の反対側の施栓状態を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図である。
【図13】従来の補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る伝熱管シール溶接部の補修用具を具備した原子炉用蒸気発生器1の全体を示す断面図、図2および図3は本実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修用具および伝熱管シール溶接部の補修方法を説明するための図であって、図1の要部を拡大して示す断面図である。
【0026】
原子炉用蒸気発生器1の下部側には、管板2が設けられており、この管板2の下端には、原子炉冷却材の入口水室3および出口水室4が形成されている。また、この原子炉用蒸気発生器1の上部側には、周りを取り囲むように胴5が設けられており、この胴5の内部には、包囲管6および複数の逆U字形伝熱管(以下、「伝熱管」という。)7が配設されている。各伝熱管7内を高温の原子炉冷却材が貫流し、胴側流体である給水8を加熱し、蒸気を発生するように構成されている。
一方、各伝熱管7の両端部は、対応する管板2の管穴9(図2参照)内にそれぞれ挿着されている。そして、各伝熱管7は、鉛直方向に間隔を置いた複数の支持板10により伝熱管7は横方向に支持されている。
【0027】
このような構成を有する原子炉用蒸気発生器1において、原子炉から供給された高温の冷却材は、入口水室3を介して伝熱管7内に流入して貫流し、熱交換により熱を失って低温になり出口水室4まで流れたのち、原子炉に戻るようになっている。
一方、給水リング11から原子炉用蒸気発生器1内に流入した給水8は、包囲管6と胴5との間を下向きに流れ、管板2の上を流れたのち、伝熱管7に沿って上向きに流れる。このとき、給水8は上述した原子炉冷却材と熱交換をし、一部は蒸気となる。そして、加熱される給水8が上向きに流れるに際し、支持板10を貫通し、気水分離ベーン12を通って分離された蒸気が流出するようになっている。
なお、管板2は、例えば、SA508等の低合金鋼で作られており、その表面にNi基合金肉盛20が施工されている。また、伝熱管7は、例えば、インコネル600あるいはインコネル690で作られている。
【0028】
さて、本実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修用具(以下、「補修用具」という。)13は、筒状部(スリーブ部)14と、つば部15とを備えている。
筒状部(スリーブ部)14は、一端部(図2において上側の端部)にメカニカルシール部16を備えるとともに、伝熱管シール溶接部19(図4または図9参照)の補修を必要とする伝熱管7の内側(内周側)に挿入されて、伝熱管7の内側に新たな流路を形成する中空円筒状の部材である。
【0029】
メカニカルシール部16は、筒状部(スリーブ部)14の外周面から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成された、平面視環形状、断面視(略)正三角形状を呈する複数本(本実施形態では3本)の突起からなり、筒状部(スリーブ部)14の長手方向(図2において上下方向)に沿って設けられている。
【0030】
つぎに、本実施形態に係る伝熱管シール溶接部の補修方法(以下、「補修方法」という。)を説明する。
まず、図2に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19を除去し(取り除き)、筒状部(スリーブ部)14の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように設定され、かつ、メカニカルシール部16の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように設定された補修用具13を、当該伝熱管7の内側に挿入していく。
【0031】
つづいて、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する。なお、図2中の符号27は、新たに溶接した部分(新たなシール溶接部)を示している。
つぎに、図3に示すように、伝熱管7内に挿入された補修用具13を、一端(図3における下端)から他端(図3における上端)に向かって、例えば、ローラ式の拡管工具(図示せず)を用いて拡管する。ローラ式の拡管工具は、先細軸をなすマンドレルの周囲に衛星ローラを自転および公転可能に取り付けたものを補修用具13内に挿入し、マンドレルにスラストを与えつつ回転トルクを与えて回転させることにより衛星ローラが自転および公転しつつ拡管力が伝わり拡管を行なうものである。これにより、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と、伝熱管7の内周面29とが密着し、シール部16が伝熱管7の内周面29に食い込んで、補修用具13が伝熱管7に固定されることになる。
【0032】
本実施形態に係る補修用具13および補修方法によれば、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなるメカニカルシール部16は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)14のメカニカルシール部16が伝熱管7の内周面29に食い込んで密着することにより、メカニカルシール部を有効にして1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0033】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る補修用具および補修方法について、図4および図5を参照しながら説明する。
図4は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図、図5は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図である。
【0034】
本実施形態に係る補修用具13は、欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19をそのままにして、補修するという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0035】
図4に示すように、本実施形態に係るつば部15は、伝熱管シール溶接部19の補修を必要とする伝熱管7に取り付けられた際に、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19を覆う(取り囲む)ようにして設置される。
【0036】
つぎに、本実施形態に係る補修方法を説明する。
まず、図4に示すように、筒状部(スリーブ部)14の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように形成され、かつ、メカニカルシール部16の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように形成(設定)された補修用具13を、当該伝熱管7の内側に挿入していく。
【0037】
つづいて、つば部15と管板2とを溶接にて接合する。
つぎに、図5に示すように、伝熱管7内に挿入された補修用具13を、一端(図5における下端)から他端(図5における上端)に向かって、例えば、ローラ式の拡管工具(図示せず)を用いて拡管する。ローラ式の拡管工具は、先細軸をなすマンドレルの周囲に衛星ローラを自転および公転可能に取り付けたものを補修用具13内に挿入し、マンドレルにスラストを与えつつ回転トルクを与えて回転させることにより衛星ローラが自転および公転しつつ拡管力が伝わり拡管を行なうものである。これにより、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と、伝熱管7の内周面29とが密着し、シール部16が伝熱管7の内周面29に食い込んで、補修用具13が伝熱管7に固定されることになる。
【0038】
本実施形態に係る補修用具13および補修方法によれば、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19がつば部15によって完全に覆い隠され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなるメカニカルシール部16は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)14のメカニカルシール部16が伝熱管7の内周面29に食い込んで密着することにより、メカニカルシール部を有効にして1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0039】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る補修用具および補修方法について、図6から図8を参照しながら説明する。
図6は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図、図7は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図、図8は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、逆U字形伝熱管の反対側の施栓状態を示す図である。
【0040】
本実施形態に係る補修用具43は、筒状部(スリーブ部)14の代わりに筒状部(スリーブ部)45および閉塞部46を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0041】
図6に示すように、本実施形態に係る筒状部(スリーブ部)45の一端部(図4において上側の端部)には、閉塞部46が連続するようにして設けられている。また、この補修用具43は、伝熱管シール溶接部19の補修を必要とする伝熱管7の内側(内周側)に挿入されて、伝熱管7の内側に形成されていた流路を閉塞する中空円筒状のプラグ(栓)として機能する。
【0042】
つぎに、本実施形態に係る補修方法を説明する。
まず、図6に示すように、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19を除去し(取り除き)、筒状部(スリーブ部)45の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように形成(設定)された補修用具43を、当該伝熱管7の内側に挿入していく。
【0043】
つづいて、つば部15と管板2とを溶接にて接合する。
つぎに、図7に示すように、伝熱管7内に挿入された補修用具43を、一端(図7における下端)から他端(図7における上端)に向かって、例えば、ローラ式の拡管工具(図示せず)を用いて拡管する。ローラ式の拡管工具は、先細軸をなすマンドレルの周囲に衛星ローラを自転および公転可能に取り付けたものを補修用具43内に挿入し、マンドレルにスラストを与えつつ回転トルクを与えて回転させることにより衛星ローラが自転および公転しつつ拡管力が伝わり拡管を行なうものである。これにより、筒状部(スリーブ部)45と、伝熱管7とが密着し、補修用具43が伝熱管7に固定されることになる。
【0044】
ここで、補修用具43は、シール溶接部19をバイパスさせて伝熱管7を供用状態にできる補修用具13と異なり、供用状態から外す必要がある。そのため、図8に示すように、伝熱管7の反対側に位置する低温側の伝熱管7内は、メカニカルプラグ72で施栓されることになる。
【0045】
本実施形態に係る補修用具43および補修方法によれば、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19が完全に除去され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部(スリーブ部)45の外周面47は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)45の外周面47と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)45の外周面47が伝熱管7の内周面29に密着するとともに、伝熱管7の反対側に位置する低温側の伝熱管7内が、メカニカルプラグ72で施栓されることにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0046】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る補修用具および補修方法について、図9から図11を参照しながら説明する。
図9は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図2と同様の図、図10は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、図3と同様の図、図11は本実施形態に係る補修用具および補修方法を説明するための図であって、逆U字形伝熱管の反対側の施栓状態を示す図である。
【0047】
本実施形態に係る補修用具43は、欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19をそのままにして、補修するという点で上述した第3実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第3実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0048】
図9に示すように、本実施形態に係るつば部15は、伝熱管シール溶接部19の補修を必要とする伝熱管7に取り付けられた際に、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19を覆う(取り囲む)ようにして設置される。
【0049】
つぎに、本実施形態に係る補修方法を説明する。
まず、図9に示すように、筒状部(スリーブ部)14の外径が、伝熱管7の内径よりもわずかに(0.1mm〜0.5mm程度)小さくなるように形成(設定)された補修用具43を、当該伝熱管7の内側に挿入していく。
【0050】
つづいて、つば部15と、管板2を溶接にて接合する。
つぎに、図10に示すように、伝熱管7内に挿入された補修用具43を、一端(図10における下端)から他端(図10における上端)に向かって、例えば、ローラ式の拡管工具(図示せず)を用いて拡管する。ローラ式の拡管工具は、先細軸をなすマンドレルの周囲に衛星ローラを自転および公転可能に取り付けたものを補修用具43内に挿入し、マンドレルにスラストを与えつつ回転トルクを与えて回転させることにより衛星ローラが自転および公転しつつ拡管力が伝わり拡管を行なうものである。これにより、筒状部(スリーブ部)45と、伝熱管7とが密着し、補修用具43が伝熱管7に固定されることになる。
ここで、補修用具43は、シール溶接部19をバイパスさせて伝熱管7を供用状態にできる補修用具13と異なり、供用状態から外す必要がある。そのため、図11に示すように、伝熱管7の反対側に位置する低温側の伝熱管7内は、メカニカルプラグ72で施栓されることになる。
【0051】
本実施形態に係る補修用具43および補修方法によれば、き裂等の欠陥を生じた伝熱管シール溶接部19がつば部15によって完全に覆い隠され、新たなシール溶接部27が、管穴9よりも半径方向外側に位置する管板2の表面23に形成されることで、1次系と2次系との間の一方(一側)のバウンダリーとして形成される。
つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合する際、他方(他側)のバウンダリーとなる筒状部(スリーブ部)45の外周面47は、伝熱管7との間にすき間Aを有した状態であり密閉していないため、溶接により加熱されても内圧の上昇がなく噴出しを発生させずに補修することができる。
そして、つば部15と、管板2の表面23とを溶接にて接合した後、筒状部(スリーブ部)14の外周面28と伝熱管7の内周面29とが接し、筒状部(スリーブ部)45の外周面47が伝熱管7の内周面29に密着するとともに、伝熱管7の反対側に位置する低温側の伝熱管7内が、メカニカルプラグ72で施栓されることにより、1次系と2次系との間のバウンダリーが完成する。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、上述した実施形態では、つば部15が、管板2の表面23から(下方に)突き出すようになっているが、図12に示すように、つば部15が、管板2の表面23から(下方に)突き出さないように、管板2の表面23に、つば部15を受け入れる(つば部15が嵌り込む)凹所を加工し、管板2の表面23と、つば部15の表面(下端面)が、同一平面をなすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 蒸気発生器
2 管板
3 入口水室
4 出口水室
5 胴
6 包囲管
7 逆U字形伝熱管(伝熱管)
8 給水
9 管穴
10 支持板
11 給水リング
12 気水分離ベーン
13 補修用具(伝熱管シール溶接部の補修用具)
14 筒状部(スリーブ部)
15 つば部
16 メカニカルシール部
19 欠陥を生じた伝熱管シール溶接部
23 表面
27 新たなシール溶接部
28 外周面
29 内周面
43 補修用具(プラグ)
45 筒状部(スリーブ部)
46 閉塞部
72 メカニカルプラグ
A すき間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器を構成する管板と、この管板の管穴内に装着された伝熱管とを接合する伝熱管シール溶接部の補修用具であって、
前記伝熱管の内径よりも小さい外径を有する中空円筒状の筒状部と、この筒状部の一端部から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成され、かつ、前記伝熱管の外径よりも大きい外径を有するつば部とを備えていることを特徴とする伝熱管シール溶接部の補修用具。
【請求項2】
蒸気発生器を構成する管板と、この管板の管穴内に装着された伝熱管とを接合する伝熱管シール溶接部の補修用具であって、
前記伝熱管の内径よりも小さい外径を有するとともに、一端部が閉塞部により閉塞された筒状部と、この筒状部の一端部から半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成され、かつ、前記伝熱管の外径よりも大きい外径を有するつば部とを備えていることを特徴とする伝熱管シール溶接部の補修用具。
【請求項3】
前記筒状部の内径および前記つば部の外径が、前記伝熱管シール溶接部の補修を必要とする前記伝熱管に取り付けられた際に、欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部を覆い隠すことができる寸法に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具。
【請求項4】
前記筒状部の他端部に、半径方向外側に向かって突出するとともに、周方向に沿って形成されたメカニカルシール部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具。
【請求項5】
請求項1または2に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であって、
欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部を除去して、請求項1または2に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を伝熱管の内側に挿入し、前記伝熱管の内周面と前記筒状部の外周面との間にすき間が空いた状態で、前記つば部と前記管板とを溶接にて接合した後、前記伝熱管の内側に挿入された前記伝熱管シール溶接部の補修用具を、一端から他端に向かって拡管してバウンダリーを形成させることを特徴とする伝熱管シール溶接部の補修方法。
【請求項6】
請求項3に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を用いて行う伝熱管シール溶接部の補修方法であって、
欠陥を生じた前記伝熱管シール溶接部をそのままにして、請求項3に記載の伝熱管シール溶接部の補修用具を伝熱管の内側に挿入し、前記伝熱管の内周面と前記筒状部の外周面との間にすき間が空いた状態で、前記つば部と前記管板とを溶接にて接合した後、前記伝熱管の内側に挿入された前記伝熱管シール溶接部の補修用具を、一端から他端に向かって拡管してバウンダリーを形成させることを特徴とする伝熱管シール溶接部の補修方法。
【請求項7】
前記筒状部の一端部が閉塞部により閉塞された伝熱管シール溶接部の補修用具を用いる場合、当該伝熱管シール溶接部の補修用具により施栓される伝熱管の端部と反対側に位置する伝熱管の端部を、メカニカルプラグで施栓するようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載の伝熱管シール溶接部の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−215339(P2012−215339A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80805(P2011−80805)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【Fターム(参考)】