説明

伝送システムにおける通信装置

【課題】ONUのスリープの可否を的確に判断させる。
【解決手段】OLT5に受信経過時間計測・モニタ部58を設け、LLID毎にそのLLID宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測・モニタする。このOLT5が計測・モニタするLLID毎の最後のフレーム受信からの経過時間からONUのスリープの可否を判断する。同様の機能をONUに設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位装置から送られてくるフレームを受信し、このフレーム内の情報に基づいて当該フレームを下位装置に転送する伝送システムにおける通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の通信装置として、GE−PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network:Ethernetは登録商標)では、局側装置(OLT:Optical Line Terminal)や加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)が用いられている。このGE−PONにおいて、OLTと複数のONUとは光スプリッタを介して接続され、1心の光ファイバを複数ユーザで共有する。
【0003】
図20にGE−PONの構成例を示す。同図において1(1−1〜1−3)はユーザ装置、2(2−1〜2−3)はONU、3は光スプリッタ、4は光ファイバ、5はOLT、6は上位装置、7は事業者ネットワーク、8(8−1〜8−3)はユーザ装置1とONU2との間のインタフェース(UNI:User Network Interface)、9はOLT5と上位装置6との間のインタフェース(SNI:Service Node Interface)である。
【0004】
このGE−PONにおいて、OLT5は、上位装置6から送られてくるフレーム(下りフレーム)を受信し、このフレーム内の情報に基づいて当該フレームを下位装置であるONU2に転送する。ONU2は、上位装置であるOLT5からのフレーム(下りフレーム)を受信し、このフレーム内の情報に基づいて当該フレームを下位装置であるユーザ装置1に転送する。また、GE−PONのPON区間、すなわちONU2−1〜2−3とOLT5との区間10では、図21に示すような構成のフレームでデータがやり取りされる。
【0005】
図21において、プリアンブルは、EthernetのプリアンブルにLLIDを埋め込んだものである。
LLID(Logical Link ID)は、各ONUと1対1に対応する識別子(IEEE規格で定義された識別子)である。ONU登録(ONUがOLTの配下となる)時にOLTで決定され、OLTは自分の配下のONUでLLIDの重複が起こらないように管理している。
【0006】
VLANタグは、VLAN情報を含むタグである。タグがついていない場合やタグが複数ついている場合もある。このVLANタグは、TPID、TCIを含んでいる。
TPID(Tag Protocol ID)は、VLANタグが続くことを示すEther Type値である。通常は0x8100である。
TCI(Tag Control Information)は、VLANタグ情報である。このTCIは、PCP、CFI、VIDを含んでいる。
【0007】
PCP(Priority Code Point)は、当該フレームの優先度である。
CFI(Canonical Format Indicator)は、MACヘッダ内のMACアドレスが標準フォーマットに従っているかどうかを示す値である。
VIDまたはVLANID(VLAN Identifier)は、フレームが属するVLANを指定する値である。
Typeは、上位プロトコルの種別を示すEther Type値である。この領域をLength値として使用する場合もあるので、合わせて“Type/Length”等と表記する場合もある。
【0008】
図22に従来のGE−PON用のOLTの要部のブロック図を示す(例えば、特許文献1参照)。図23に、従来のGE−PON用のOLTで用いられるフレーム転送処理部の要部のブロック図を示す。
【0009】
図22に示されたOLT5(5B)において、第1の送受信回路51は、PONを介してONU2との間でフレームを送受信するための回路である。
第2の送受信回路52は、事業者ネットワーク7とのインターフェースになる回路である。
【0010】
フレーム分離部53は、第1の送受信回路51より入力されたフレームのうち、OLT5B宛てのフレーム(PONの制御に用いられる制御フレーム)を制御フレーム処理部54へ送信するとともに、その他のフレームをフレーム転送処理部55(55B)へ送信する処理部である。
【0011】
フレーム多重部56は、フレーム転送処理部55Bからの下りフレームと制御フレーム処理部54からの制御フレームを時分割的に多重し、第1の送受信回路51に対して送信する処理部である。
フレーム転送処理部55Bは、フレーム分離部53と第2の送受信回路52の双方から受信したフレームについて、それぞれ宛先MACアドレスに基づき、フレームの転送処理を行う処理部である。
【0012】
制御フレーム処理部54は、各ONU2にLLIDを自動的に割り当てるための発見処理(Discoveryプロセス)や上り信号(ONUからOLT宛ての信号)の調停といった、PONの制御に関する処理や、各ONU2のLLID等のPON−IFポート情報を帯域割当処理部57へ転送する処理を行う処理部である。
【0013】
帯域割当処理部57は、制御フレーム処理部54からの要求に従い、ONU2への帯域(送信開始時刻と送信データ量)を割り当てる処理や、制御フレーム処理部54から転送されたPON−IFポート情報を管理する処理を行う処理部である。
【0014】
また、図23に示したフレーム転送処理部55Bにおいて、下り出力先判定部551は、上位装置6からの下りフレームの宛先MACアドレスに基づいて、MACアドレス検索テーブル552から、対応するLLIDを読み出して、下りフレームに付与するLLIDを決定する。MACアドレス検索テーブル552には、各MACアドレスに対応するLLID情報が登録されている。
【0015】
レイテンシ吸収部553は、受信した下りフレームに遅延を付加して、下り出力先判定部551でのLLID決定処理によるレイテンシを吸収する。
LLID付与部554(554B)は、レイテンシ吸収部553からの下りフレームのプリアンブルに、下り出力先判定部551で決定されたLLIDを挿入することにより、送信する下りフレームに宛先LLIDを付与する。
下り出力タイミング調整部555は、フレーム出力のタイミングを調整して、フレーム多重部56へフレームを転送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−260668号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】2010年 電子情報通信学会 通信ソサイエティ大会,B−8−20.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
現在、ITU−TやIEEEでGE−PON関連のシステム(装置)レベルの標準化が行われている。その中で、ONUの省電力化を行う方法が議論されており、ONUの光送受信機能を一時的にすべて停止(スリープ)させることが提案されている。
【0019】
ONUの光受信機能をスリープさせる場合、OLTはそのONU宛ての下りフレームの送信を停止する(フレーム廃棄ではなく、該当のフレームをOLT内のバッファに保管する)ことが求められているが、保管するためのバッファの容量を最小限にするために、各ONU宛ての下りフレームの転送状況(OLTへの入力、もしくは、OLTからONUへの出力)をモニタして、転送フレーム数(もしくは転送データ量)が多いONUについてはスリープさせないようにする必要がある。
【0020】
例えば、各ONU宛ての下りフレームのOLTへの入力フレーム数、もしくは、OLTからONUへの出力フレーム数をカウントする機能を実装し、定期的にそのカウント数を確認することにより転送状況を確認することが可能である。しかし、この方法では、カウンタ数の確認を行う周期毎に平均化されたフレームレート(単位時間当たりのフレーム転送数)しか分からず、ONUのスリープの可否を的確に判断することができない。
【0021】
また、非特許文献1では、フレーム到着間隔を定期的に確認して、間隔が小さい場合にはスリープさせないという制御方法が提案されているが、フレーム到着間隔の計測方法については記載されていない。また、フレーム到着間隔だけでは、ONUのスリープの可否を的確に判断することはできない。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONUに代表される通信装置のスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することが可能な伝送システムにおける通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するために本発明は、上位装置から送られてくるフレームを受信し、このフレーム内の情報に基づいて当該フレームを下位装置に転送する伝送システムにおける通信装置において、受信したフレームに付与されているもしくは自己の装置内で付与された当該フレームの宛先を示す識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測し、この計測した識別子情報毎の経過時間を下りフレームの転送状況としてモニタする転送状況モニタ手段を備えることを特徴とする。
【0024】
例えば、本発明において、通信装置をOLTとする場合、OLTは受信したフレームにそのフレームの宛先を示す識別子情報(LLID)を付与する識別子情報付与手段を備えており、転送状況モニタ手段は、識別子情報付与手段によって付与された識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測する。
【0025】
例えば、本発明において、通信装置をONUとする場合、ONUは受信したフレームに付与されている識別子情報(LLID)が自己の識別子情報であるか否かを判定する識別子情報判定手段を備えており、転送状況モニタ手段は、識別子情報判定手段によって自己の識別子情報と判定された識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測する。この経過時間の計測において、計測した経過時間が予め定められた最大経過時間を超えた場合、その最大経過時間を経過時間のモニタ値とするようにしてもよい。
【0026】
また、本発明において、転送状況モニタ手段は、識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間に加え、その識別子情報宛ての最後に受信したフレームと同じ識別子情報宛てでその直前に受信したフレームとの時間間隔を計測し、この計測した経過時間と時間間隔とを下りフレームの転送状況としてモニタするものとしてもよい。この場合、フレーム間の時間間隔は、ONUをスリープさせて問題ないか否かを判断するための補足情報として使用できる。また、この時間間隔の計測において、計測した時間間隔が予め定められた最大時間間隔を超えた場合、その最大時間間隔を時間間隔のモニタ値とするようにしてもよい。
【0027】
本発明において、経過時間や時間間隔を提供するためには専用のハードウエアを内蔵することが必要となるが、予め定められた最大経過時間や最大時間間隔をモニタ値とすることにより、そのハードウエアを必要最低限の大きさで実現することができる(提供する経過時間及び時間間隔の最大値を大きくするほどハードウエアのサイズが大きくなるので、提供する経過時間及び時間間隔の最大値を最低限の値とすることにより、ハードウエアサイズも最低限のサイズとなる)。
【0028】
また、本発明において、転送状況モニタ手段は、識別子情報毎の下りフレームの転送状況のモニタに代えて、予め設定された識別子情報の組み合わせを1単位とし、その1単位の識別子情報毎に下りフレームの転送状況をモニタするようにしてもよい。この場合、1単位の識別子情報を、同一のスリープ単位IDとして設定することが考えられる。このようにすることにより、例えば、1台のONUで複数のLLIDを用いた通信を行う場合に、その際のスリープの可否の判断はLLID単位ではなく、複数のLLIDをまとめて行うことが可能となり、スリープの可否の判断をソフトウエアで行う場合は、複数のLLIDをまとめた単位で判定する方が負荷が小さくなる(経過時間等を取得する回数が少なくなる)。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、受信したフレームに付与されているもしくは自己の装置内で付与された当該フレームの宛先を示す識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測し、この計測した識別子情報毎の経過時間を下りフレームの転送状況としてモニタするようにしたので、識別子情報毎の最後のフレーム受信後の経過時間を知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONUに代表される通信装置のスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することが可能となる。
【0030】
すなわち、本発明によれば、ハードウェアやソフトウェアなどに、計測された識別子情報毎の経過時間を下りフレームの転送状況として提供することにより、経過時間が十分大きい場合には、例えば、その識別子情報が割り当てられたONUの配下の端末(パーソナルコンピュータ(以下、PCと略す)等)が通信中ではない可能性が高く、ONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることが可能となり、単位時間当たりのフレーム転送数やフレーム到着間隔だけで判断する方法と比較し、ONUのスリープの可否を的確に判断させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る伝送システムにおける通信装置の第1の実施の形態(実施の形態1)として挙げたOLTの要部の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1のOLTにおけるフレーム転送処理部の構成例を示す図である。
【図3】フレーム転送処理部で用いるMACアドレス検索テーブルの構成例を示す図である。
【図4】フレーム転送処理部における下り出力先判定部での処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】フレーム転送処理部におけるフレーム情報出力部の出力例を示すタイムチャートである。
【図6】実施の形態1のOLTにおける受信経過時間計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図7】実施の形態2のOLTの要部の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2のOLTにおける受信経過時間等計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図9】実施の形態3のOLTの要部の構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態3のOLTにおける受信経過時間計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図11】実施の形態3のOLTにおける受信経過時間計測・モニタ部で用いるLLIDテーブルの構成例を示す図である。
【図12】本発明に係る伝送システムにおける通信装置の第4の実施の形態(実施の形態4)として挙げたONUの要部の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態4のONUにおけるフレーム転送処理部の構成例(下り)を示す図である。
【図14】フレーム転送処理部におけるフレーム情報出力部の出力例を示すタイムチャートである。
【図15】実施の形態4のONUにおける受信経過時間計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図16】実施の形態5のONUの要部の構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態5のONUにおける受信経過時間等計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図18】第6の実施の形態(実施の形態6)としてONUの要部の構成を示すブロック図である。
【図19】実施の形態6のONUにおける受信経過時間計測・モニタ部の構成例を示す図である。
【図20】従来のGE−PONの構成例を示す図である。
【図21】PON区間で伝送されるフレームの構成例を示す図である。
【図22】従来のOLTの要部の構成を示すブロック図である。
【図23】従来のOLTで用いられるフレーム転送処理部の要部の構成を示すブロック図である。
【図24】従来のONUの要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1(OLT)〕
図1に本発明に係る伝送システムにおける通信装置の第1の実施の形態(実施の形態1)として挙げたOLTの要部のブロック図を示す。同図において、図22と同一符号は図22を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0033】
本実施の形態のOLT5(5A1)は、図22に示した従来のOLT5Bに対して、受信経過時間計測・モニタ部58が追加されている。また、フレーム転送処理部55(55A)の機能が従来のフレーム転送処理部55Bと一部異なり、受信経過時間計測・モニタ部58へのフレーム情報の出力を行う機能を有している。このフレーム情報の出力機能についての詳細は後述する。
【0034】
受信経過時間計測・モニタ部58は、フレーム転送処理部55Aから入力されたフレーム情報に基づいて、LLID毎に、そのLLID宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測し、この計測したLLID毎の経過時間を下りフレームの転送状況としてモニタする機能を有している。この受信経過時間の計測・モニタ機能についての詳細も後述する。
【0035】
図2にOLT5A1におけるフレーム転送処理部55Aの構成例を示す。このフレーム転送処理部55Aにおいて、下り出力先判定部551は、上位装置6からの下りフレームの宛先MACアドレスに基づいて、MACアドレス検索テーブル552から、対応するLLIDを読み出して、下りフレームに付与するLLIDを決定する。
【0036】
図3は、MACアドレス検索テーブル552の構成例である。MACアドレス検索テーブル552には、ONUと接続されたユーザ装置もしくはONUのMACアドレスごとに、LLID、および登録データの有効/無効を示す情報が設定されている。
【0037】
図4に下り出力先判定部551での処理の手順を示す。下り出力先判定部551は、受信した下りフレームの宛先MACアドレスがMACアドレス検索テーブル552に登録されているか否かをチェックし(ステップS101)、MACアドレス検索テーブル552に登録されていなければ(ステップS101のNO)、フレーム廃棄指示出力を「1(有効)」とし、このフレーム廃棄指示出力をフレーム情報として出力し(ステップS104)、MACアドレス検索テーブル552に登録されていれば(ステップS101のYES)、登録データの有効/無効をチェックする(ステップS102)。
【0038】
ここで、登録データが有効とされていれば(ステップS102の有効)、MACアドレステーブル552から対応するLLIDを読み出し、LLID情報有効表示出力を「1(有効)」とし、このLLID情報有効表示出力とLLID情報とをフレーム情報として出力する(ステップS103)。登録データが無効とされていれば(ステップS102の無効)、フレーム廃棄指示出力を「1(有効)」とし、このフレーム廃棄指示出力をフレーム情報として出力する(ステップS104)。
【0039】
レイテンシ吸収部553は、受信した下りフレームに遅延を付加して、下り出力先判定部551でのLLID決定処理によるレイテンシを吸収する。
LLID付与部554(554A)は、レイテンシ吸収部553からの下りフレームのプリアンブルに、下り出力先判定部551で決定されたLLIDを挿入することにより、送信する下りフレームに宛先LLIDを付与する。また、入力されたフレーム情報をフレーム情報出力部556へ出力する。
下り出力タイミング調整部555は、フレーム出力のタイミングを調整して、フレーム多重部56へフレームを転送する。
フレーム情報出力部556は、入力されたフレーム情報を受信経過時間計測・モニタ部58へ出力する。
【0040】
フレーム情報出力部556の出力例を図5に示す。この例におけるLLID付与部554Aとフレーム情報出力部556の動作を以下に示す。
LLID付与部554Aは、下り出力先判定部551のLLID情報有効表示出力とフレーム廃棄指示出力を常時監視し、下り出力先判定部551のLLID情報有効表示出力が「1(有効)」になった場合(図5(a),(c)参照)、フレーム情報出力部556に対して、1フレーム毎にLLID情報有効表示出力とLLID情報を出力する(図5(d),(e)参照)。下り出力先判定部551のフレーム廃棄指示出力が「1(有効)」になった場合には(図5(b),(c)参照)、LLID情報有効表示出力とLLID情報は出力しない(図5(d),(e)参照)。フレーム情報出力部556は、LLID付与部554から入力された情報をそのままフレーム情報として出力する(図5(f),(g)参照)。
【0041】
図6に受信経過時間計測・モニタ部58の構成例を示す。受信経過時間計測・モニタ部58は時刻出力回路581と、LLID毎受信時刻記録回路582と、LLID毎受信経過時間計測回路583と、LLID毎受信経過時間モニタ回路584とを備えている。
【0042】
時刻出力回路581は、受信経過時間計測・モニタ部58でフレーム情報を受信した時刻を記録する際の時刻の計時用として用いられる回路である。この回路の表示はX時Y分Z秒という表示とすることも可能であるが、IEEE(802.3)で規定されているローカルタイムカウンタ(16ns毎にカウントアップし、16進数表示でFFFFFFFFになってから16ns経過するとall”0”に戻ってカウントアップを継続するカウンタ)、もしくは、ローカルタイムカウンタと同様なラウンドアップカウンタ(例えば、all”1”になった後、all”0”に戻ってカウントを継続するカウンタ)を時刻出力回路581として使用することも可能である。
【0043】
LLID毎受信時刻記録回路582は、フレーム情報が入力されると、時刻出力回路581の出力を取り込んで、LLID毎受信時刻記録回路582のLLID毎の受信時刻記録回路(図示せず)に記録してその値を出力する。この受信時刻記録回路はLLID毎に1個だけ内蔵すれば良く、その場合、最後に受信した時刻が記録されることになる。
【0044】
LLID毎受信経過時間計測回路583は、LLID毎受信時刻記録回路582の出力と時刻出力回路581の出力との差分を計算することにより、LLID毎の受信経過時間を計算してその値を出力する。ただし、ハードウエアのみで受信経過時間を計測する場合、無限大の時間を計測することはできない、すなわち、LLID毎受信経過時間計測回路583の出力の最大値をあらかじめ決めておく必要がある。
【0045】
例えば、ローカルタイムカウンタを時刻出力回路581として使用する場合は、以下のように出力する。
【0046】
LLID毎受信経過時間計測回路583内にLLID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えた場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「FFFFFFFF」とする。
【0047】
受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が時刻出力回路581の出力値(以下、「local Time」と記す)より小さい場合は、受信経過時間出力=「local Time」−LLID毎受信時刻記録回路582の出力値とする。
【0048】
受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時以外の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「FFFFFFFF」とする。
【0049】
受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「00000000」とする。
【0050】
受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」より大きい場合は、受信経過時間出力=「local Time」+「16進数表示の「FFFFFFFF」」+1−LLID毎受信時刻記録回路582の出力値とする。
【0051】
なお、LLID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断するには、例えば、LLID毎受信時刻記録回路582の出力をLLID毎に「local Time」と常時比較し、受信時刻記録更新時以外で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力が「local Time」と一致すれば、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたと判断できる。
【0052】
LLID毎受信経過時間モニタ回路584は、LLID毎受信経過時間計測回路583の出力をソフトウエアもしくは外部のハードウエアに対して提供する。例えば、ソフトウエアもしくは外部のハードウエアからLLIDが16進数表示で「0000」のフレームの受信経過時間の出力要求があった場合に、該当のLLIDの受信経過時間を出力する。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態のOLT5A1によれば、LLID毎に該当のLLID宛てのフレームの最後の受信からの経過時間を知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONUのスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することができる。
【0054】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに、計測されたLLID毎の経過時間を提供することにより、経過時間が十分大きい場合には、そのLLIDが割り当てられたONUの配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。
【0055】
なお、以上の例では、OLT5A1の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間の計測ではなく、受信経過時間計測・モニタ部58におけるフレーム情報受信からの経過時間を計測しているが、第2の送受信回路52と、下り出力先判定部551、レイテンシ吸収部553、LLID付与部554A、及び、フレーム情報出力部556の処理遅延がフレームにより変わらないようにすることにより、OLT5A1の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間と同等に扱うことができる。
【0056】
もし、厳密に、OLT5A1の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間を知りたい場合は、LLID毎受信経過時間計測回路583における受信経過時間出力の値に、第2の送受信回路52と、下り出力先判定部551、レイテンシ吸収部553、LLID付与部554A、及び、フレーム情報出力部556の処理遅延の合計値(ハードウエア固有の値)を加算すれば良い。
【0057】
ちなみに、OLT5A1の下り出力(PONへの出力)で経過時間を計測する場合は、上位装置から入力されたフレームの間に制御フレームが挿入され、フレームにより遅延が変わってしまうため、OLT5A1の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間を正しく計測することはできない。
【0058】
また、本実施の形態の構成は、下り出力先判定部551のLLID判定機能を利用している。この下り出力先判定部551の機能とLLID付与部554AのフレームへのLLID付与機能は、従来のOLT5B(図22)にも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLID付与部554A内の一部とフレーム情報出力部556、及び、受信経過時間計測・モニタ部58内の各回路(図6)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0059】
それに対して、仮に、OLT5A1の入力(上位装置からの入力)で受信経過時間を計測しようとすると、送信先のONUのLLIDを判断するために、出力先判定部551と同様な回路をもう一つ搭載することになり、OLT5A1の仕様によってはかなり大きな回路の追加が必要となる。
【0060】
さらに、受信経過時間計測・モニタ部58内の各回路の仕様の最適化により、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、LLID毎受信時刻記録回路582における受信時刻記録回路を全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、OLT5A1がサポートするONUの台数分(例えば、32台)だけ搭載し、各受信時刻記録回路にどのLLIDの情報を記録するのかをソフトウエアもしくは外部のハードウエアから設定できるようにすることにより回路規模が小さくなる。
【0061】
また、受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる。時刻出力回路581としてローカルタイムカウンタを使用する場合、1G−Ethernetの最小フレームの長さが512nsなので、16ns単位で受信経過時間を計測する必要はなく、下位5ビットは記録する必要がない。
【0062】
さらに、LLID毎受信経過時間計測回路583の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力の上位ビットを記録する必要がなくなる。非特許文献1によると、「フレーム到着間隔閾値」が14ms以上にするとスリープしない場合とほとんど性能が変わらないことが示されている。これは、「フレーム到着間隔閾値」として14ms以下の値が使用される可能性が高いことを意味しており、その場合、受信経過時間が14msを超えていればONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断することが可能である。
【0063】
2倍程度の余裕を持たせて、LLID毎受信経過時間計測回路583の出力の最大値を「local Time」で「001FFFFF」(約33ms)にすると時刻出力回路581の出力の上位11ビットの記録は不要となる。この場合、LLID毎受信経過時間計測回路583内にLLID毎の受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えた場合、受信経過時間出力=16進数表示で「001FFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」より小さい場合は、受信経過時間出力=「local Time」−LLID毎受信時刻記録回路582の出力値とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時以外の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「001FFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「00000000」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、LLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」より大きい場合は、受信経過時間出力=「local Time」+「16進数表示の「001FFFFF」」+1−LLID毎受信時刻記録回路582の出力値とする。
【0064】
受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力のビット数を削減すると、LLID毎受信経過時間計測回路583の計測回路のビット数が削減され、また、LLID毎受信経過時間モニタ回路584のビット数も削減できる。
【0065】
〔実施の形態2(OLT)〕
図7に第2の実施の形態(実施の形態2)としてOLT5(5A2)の構成を示す。実施の形態1のOLT5A1では、受信経過時間計測・モニタ部58を用いていたが、実施の形態2のOLT5A2では受信経過時間等計測・モニタ部59を用いる。他は実施の形態1のOLT5A1の構成と同じである。
【0066】
受信経過時間等計測・モニタ部59は、フレーム転送処理部55Aから入力されたフレーム情報に基づいて、LLID毎に、そのLLID宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測してその結果をモニタする。また、LLID毎に、そのLLID宛ての最後のフレーム受信時刻と、その直前に受信した同一LLID宛てのフレームの受信時刻との差分(フレーム受信間隔)を計測してその結果をモニタする。
【0067】
図8に受信経過時間等計測・モニタ部59の構成例を示す。実施の形態1のOLT5A1における受信経過時間計測・モニタ部58との差分は、LLID毎受信時刻記録回路585と、LLID毎受信間隔計測回路586と、LLID毎受信間隔モニタ回路587とが追加されている点である。なお、この例において、LLID毎受信時刻記録回路582は第1のLLID毎受信時刻記録回路と呼び、LLID毎受信間隔計測回路585は第2のLLID毎受信時刻記録回路と呼ぶ。
【0068】
この受信経過時間等計測・モニタ部59において、第2のLLID毎受信時刻記録回路585は、フレーム情報が入力されると、第1のLLID毎受信時刻記録回路582に入力されたフレームのLLIDの出力を取り込んで、第2のLLID毎受信時刻記録回路585内の該当のLLID毎の受信時刻記録回路(図示せず)に記録してその値を出力する。この受信時刻記録回路はLLID毎に1個だけ内蔵する。この受信時刻記録回路の出力は、LLID毎に、そのLLID宛ての最後のフレーム受信の直前に受信した同一LLID宛てのフレームの受信時刻を示すものである。
【0069】
LLID毎受信間隔計測回路586は、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力と第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力との差分をLLID毎に計算して出力する。例えば、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力の最大値が16進数表示の「FFFFFFFF」だった場合は以下のように出力する。
【0070】
LLID毎受信間隔計測回路586内にLLID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、フレーム情報入力時に受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えていた場合、受信間隔出力=16進数表示で「FFFFFFFF」とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力より大きい場合は、受信間隔出力=第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値−第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力値とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力と同じ値の場合は、受信間隔出力=16進数表示で「00000000」とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力より小さい場合は、受信間隔出力=第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値+「16進数表示の「FFFFFFFF」」+1−第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力値とする。
【0071】
なお、LLID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断するには、例えば、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力をLLID毎に時刻出力回路581の出力と常時比較し、受信時刻記録更新時以外で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力が時刻出力回路581の出力と一致すれば、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたと判断できる。
【0072】
LLID毎受信間隔モニタ回路587は、LLID毎受信間隔計測回路586の出力をソフトウエアもしくは外部のハードウエアに対して提供する。例えば、ソフトウエアもしくは外部のハードウエアからLLIDが16進数表示で「0000」のフレームの受信間隔の出力要求があった場合に、該当のLLIDの受信間隔を出力する。
【0073】
以上に説明したように、本実施の形態のOLT5A2によれば、LLID毎に該当のLLID宛てのフレームの最後の受信からの経過時間に加えて、LLID毎に該当のLLID宛ての最後のフレーム受信時刻と、その直前に受信した同一LLID宛てのフレームの受信時刻との差分(フレーム受信間隔)も知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONUのスリープの可否をより的確に判断させる情報を提供することができる。
【0074】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに、計測されたLLID毎の経過時間と受信間隔を提供することにより、経過時間と受信間隔が共に十分大きい場合には、そのONUの配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。
【0075】
実施の形態2では、実施の形態1と比較すると、ONUをスリープさせて問題無いか否かを判断するための情報が増えているので、ONUをスリープさせた時に問題が発生する可能性を低下させることができる。
【0076】
なお、この実施の形態2では、OLT5A2の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信間隔の計測ではなく、受信経過時間等計測・モニタ部59の入力におけるフレーム受信を計測しているが、第2の送受信回路52と、下り出力先判定部551、レイテンシ吸収部553、LLID付与部554A、及び、フレーム情報出力部556の処理遅延がフレームにより変わらないようにすることにより、OLT5A2の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信間隔と同じ値を計測することが可能である。
【0077】
ちなみに、OLT5A2の下り出力(PONへの出力)でフレーム間隔を計測する場合は、上位装置から入力されたフレームの間に制御フレームが挿入され、フレームにより遅延が変わってしまうため、OLT5A2の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信間隔を正しく計測することはできない。
【0078】
また、実施の形態2の構成も、実施の形態1と同様に、下り出力先判定部551のLLID判定機能を利用している。この下り出力先判定部551の機能とLLID付与部554AのフレームへのLLID付与機能は、従来のOLT5B(図23)にも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLID付与部554A内の一部とフレーム情報出力部556、及び、受信経過時間等計測・モニタ部59内の各回路(図8)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0079】
それに対して、仮に、OLT5A2の入力(上位装置からの入力)で受信経過時間を計測しようとすると、送信先のONUのLLIDを判断するために、下り出力先判定部551と同様な回路をもう一つ搭載することになり、OLT5A2の仕様によってはかなり大きな回路の追加が必要となる。
【0080】
さらに、受信経過時間等計測・モニタ部59内の各回路の仕様の最適化により、実施の形態1と同様に、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、第1のLLID毎受信時刻記録回路582や第2のLLID毎受信時刻記録回路585における受信時刻記録回路を全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、OLT5A2がサポートするONUの台数分(例えば、32台)だけ搭載し、各受信時刻記録回路にどのLLIDの情報を記録するのかをソフトウエアもしくは外部のハードウエアから設定できるようにすることにより回路規模が小さくなる。
【0081】
また、受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる。時刻出力回路581としてローカルタイムカウンタを使用する場合、1G−Ethernetの最小フレームの長さが512nsなので、16ns単位で受信経過時間を計測する必要はなく、下位5ビットは記録する必要がない。
【0082】
さらに、LLID毎受信経過時間計測回路583とLLID毎受信間隔計測回路586の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力の上位ビットを記録する必要がなくなる。非特許文献1によると、「フレーム到着間隔閾値」が14ms以上にするとスリープしない場合とほとんど性能が変わらないことが示されている。これは、「フレーム到着間隔閾値」として14ms以下の値が使用される可能性が高いことを意味しており、その場合、受信経過時間が14msを超えていればONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断することが可能である。
【0083】
2倍程度の余裕を持たせて、LLID毎受信経過時間計測回路583とLLID毎受信間隔計測回路586の出力の最大値を「local Time」で「001FFFFF」(約33ms)にすると時刻出力回路581の出力の上位11ビットの記録は不要となる。この場合、LLID毎受信経過時間計測回路583内にLLID毎の受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えた場合、受信経過時間出力=16進数表示で「001FFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」より小さい場合は、受信経過時間出力=「local Time」−第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時以外の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「001FFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「00000000」とし、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が「local Time」より大きい場合は、受信経過時間出力=「local Time」+「16進数表示の「001FFFFF」」+1−第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値とする。
【0084】
また、LLID毎受信間隔計測回路586内にLLID毎の受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、フレーム情報入力時に受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超えていた場合、受信間隔出力=16進数表示で「001FFFFF」とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力より大きい場合は、受信間隔出力=第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値−第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力値とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力と同じ値の場合は、受信間隔出力=16進数表示で「00000000」とし、フレーム情報入力時、受信経過時間が16進数表示の「001FFFFF」を超える前で、第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値が第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力より小さい場合は、受信間隔出力=第1のLLID毎受信時刻記録回路582の出力値+「16進数表示の「001FFFFF」」+1−第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力値とする。
【0085】
受信時刻として記録する時刻出力回路581の出力のビット数を削減すると、LLID毎受信経過時間計測回路583とLLID毎受信間隔計測回路586の計測回路のビット数が削減され、また、LLID毎受信経過時間モニタ回路584とLLID毎受信間隔モニタ回路587のビット数も削減できる。
【0086】
なお、LLID毎受信間隔計測回路586の計測回路については、LLID毎に同じ回路を複数搭載する必要はない。フレーム情報入力時に、第1のLLID毎受信時刻記録回路582と第2のLLID毎受信時刻記録回路585の出力から入力されたフレーム情報のLLIDの出力を選択して演算し、LLID毎受信間隔モニタ回路587の該当のLLIDのモニタ回路に対して演算結果を出力し、LLID毎受信間隔モニタ回路587はフレーム情報が入力されたLLIDの情報のみを更新するようにすることが可能である。
【0087】
〔実施の形態3(OLT)〕
図9に第3の実施の形態(実施の形態3)としてOLT5(5A3)の構成を示す。実施の形態1のOLT5A1では、受信経過時間計測・モニタ部58を用いていたが、実施の形態3のOLT5A3では受信経過時間計測・モニタ部60を用いる。他は実施の形態1のOLT5A1の構成と同じである。
【0088】
図10に受信経過時間計測・モニタ部60の構成例を示す。受信経過時間計測・モニタ部60は、スリープ単位ID付与回路61と、スリープ単位ID毎受信時刻記録回路62と、時刻出力回路63と、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64と、スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路65とを備えている。
【0089】
この受信経過時間計測・モニタ部60において、スリープ単位ID付与回路61は、フレーム情報が入力されると、そのフレーム情報に含まれているLLID情報に従い、LLIDテーブル(図11参照)を用いてスリープ単位IDを決定して、その情報をスリープ単位ID毎受信時刻記録回路62に出力する。図11に示したLLIDテーブルの例では異なるLLID(例えば、「0x0001」と「0x0002」)に対して同じスリープ単位IDを付けている、すなわち異なるLLIDの組み合わせを1単位とし、この1単位のLLIDに同一のスリープ単位IDを設定しているが、LLID毎にすべて異なるスリープ単位IDを設定しても良い。
【0090】
スリープ単位ID毎受信時刻記録回路62は、スリープ単位IDの情報が入力されると、時刻出力回路63の出力を取り込んで、スリープ単位ID毎の受信時刻記録回路に記録してその値を出力する。この受信時刻記録回路はスリープ単位ID毎に1個だけ内蔵すれば良く、その場合、最後に受信した時刻が記録されることになる。
【0091】
スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64は、スリープ単位ID毎受信時刻記録回路62の出力と時刻出力回路63の出力との差分を計算することにより、スリープ単位ID毎の受信経過時間を計算してその値を出力する。ただし、ハードウエアのみで受信経過時間を計測する場合、無限大の時間を計測することはできない。すなわち、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64の出力の最大値をあらかじめ決めておく必要がある。
【0092】
例えば、ローカルタイムカウンタを時刻出力回路63として使用する場合は、以下のように出力する。スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64内にスリープ単位ID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断する回路を搭載し、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えた場合、受信経過時間出力=16進数表示で「FFFFFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値が「local Time」より小さい場合は、受信経過時間出力=「local Time」−スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値とし、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時以外の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「FFFFFFFF」とし、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値が「local Time」と同じ値で、受信時刻記録更新時の場合は、受信経過時間出力=16進数表示で「00000000」とし、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超える前で、スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値が「local Time」より大きい場合は、受信経過時間出力=「local Time」+「16進数表示の「FFFFFFFF」」+1−スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力値とする。
【0093】
なお、スリープ単位ID毎の受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたか否かを判断するには、例えば、スリープ単位ID毎受信時刻記録回路62の出力をスリープ単位ID毎に「local Time」と常時比較し、受信時刻記録更新時以外で、スリープ単位ID毎受信時刻回路62の出力が「local Time」と一致すれば、受信経過時間が16進数表示の「FFFFFFFF」を超えたと判断できる。
【0094】
スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路65は、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64の出力をソフトウエアもしくは外部のハードウエアに対して提供する。例えば、ソフトウエアもしくは外部のハードウエアからスリープ単位IDが16進数表示で「0000」のフレームの受信経過時間の出力要求があった場合に、該当のスリープ単位IDの受信経過時間を出力する。
【0095】
以上説明したように、本実施の形態のOLT5A3によれば、LLID毎に設定されたスリープ単位ID毎に該当のスリープ単位ID宛てのフレームの最後の受信からの経過時間を知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONUのスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することができる。
【0096】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに、計測されたスリープ単位ID毎の経過時間を提供することにより、経過時間が十分大きい場合には、そのスリープ単位IDによってグループ化されたLLIDが割り当てられたONUの配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONUをスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。
【0097】
また、1台のONUで複数のLLIDを用いた通信を行う場合、その際のスリープの可否の判断はLLID単位ではなく、複数のLLIDをまとめて行うことが望ましいが、本実施の形態のOLT5A3を用いて、複数のLLIDに同じスリープ単位IDを設定することにより、複数のLLIDをまとめてスリープの可否の判断を行うことが可能となる。特に、スリープの判断をソフトウエアで行う場合は、複数のLLIDをまとめた単位で判定する方が負荷が小さくなる(経過時間等を取得する回数が少なくなる)。
【0098】
なお、以上の例では、OLT5A3の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間の計測ではなく、受信経過時間計測・モニタ部60におけるスリープ単位ID毎受信時刻記録回路62におけるスリープ単位ID情報受信からの経過時間を計測しているが、第2の送受信回路52と、下り出力先判定部551、レイテンシ吸収部553、LLID付与部554A、及び、フレーム情報出力部556に加えて、スリープ単位ID付与回路61の処理遅延がフレームにより変わらないようにすることにより、OLT5A3の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間と同等に扱うことができる。
【0099】
もし、厳密に、OLT5A3の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間を知りたい場合は、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64の出力の値に、第2の送受信回路52と、スリープ単位ID付与回路61と、下り出力先判定部551、レイテンシ吸収部553、LLID付与部554A、及び、フレーム情報出力部556の処理遅延の合計値(ハードウエア固有の値)を加算すれば良い。
【0100】
ちなみに、OLT5A3の下り出力(PONへの出力)で経過時間を計測する場合は、上位装置から入力されたフレームの間に制御フレームが挿入され、フレームにより遅延が変わってしまうため、OLT5A3の入力(上位装置からの入力)におけるフレーム受信からの経過時間を正しく計測することはできない。
【0101】
また、実施の形態3の構成も、実施の形態1と同様に、下り出力先判定部551のLLID判定機能を利用している。この下り出力先判定部551の機能とLLID付与部554AのフレームへのLLID付与機能は、従来のOLT5B(図23)にも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLID付与部554A内の一部とフレーム情報出力部556、及び、受信経過時間計測・モニタ部60内の各回路(図10)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0102】
それに対して、仮に、OLT5A3の入力(上位装置からの入力)で受信経過時間を計測しようとすると、送信先のONUのLLIDを判断するために、下り出力先判定部551と同様な回路をもう一つ搭載することになり、OLT5A3の仕様によってはかなり大きな回路の追加が必要となる。
【0103】
さらに、受信経過時間計測・モニタ部60内の各回路の仕様の最適化により、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、スリープ単位ID付与用のLLIDテーブルを全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、OLT5A3がサポートするLLID数分(例えば、32個)だけとすることが可能である。
【0104】
また、受信時刻として記録する時刻出力回路63の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる(実施の形態1と同様)。
【0105】
さらに、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路63の出力の上位ビットを記録する必要がなくなる点も実施の形態1と同様である。
【0106】
受信時刻として記録する時刻出力回路63の出力のビット数を削減すると、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路64の計測回路のビット数が削減され、また、スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路65のビット数も削減できる。
【0107】
なお、実施の形態3のOLT5A3に、実施の形態2のOLT5A2に搭載されている受信経過時間等計測・モニタ部59(図8参照)のように、LLID毎受信間隔計測回路586やLLID毎受信間隔モニタ回路587と同様な回路(ただし、LLID毎ではなく、スリープ単位ID毎に計測、表示を行う回路)を追加することも可能である。
【0108】
〔実施の形態4(ONU)〕
図12に第4の実施の形態(実施の形態4)としてONU2(2A1)の構成を示す。同図において、21は第1の送受信回路、22は第2の送受信回路、23はフレーム分離部、24は制御フレーム処理部、25(25A)はフレーム転送処理部、26はフレーム多重部、27は上り帯域制御部、28は受信経過時間計測・モニタ部である。
【0109】
このONU2A1において、従来のONU2B(図24参照)との構成上の差分は、受信経過時間計測・モニタ部28が追加されている点である。また、フレーム転送処理部25Aの機能が従来のフレーム転送処理部25Bと一部異なり、受信経過時間計測・モニタ部28へのフレーム情報の出力を行う機能を有している。
【0110】
このONU2A1において、第1の送受信回路21は、PONを介してOLTとフレームを送受信するための回路である。第2の送受信回路22は、ユーザネットワークとのインターフェースになる回路である。
【0111】
フレーム分離部26は、第1の送受信回路21より入力されたフレームのうち、ONU2A1宛てのフレーム(PONの制御に用いられる制御フレーム)を制御フレーム処理部24へ送信するとともに、その他のフレームをフレーム転送処理部25Aへ送信する処理部である。
【0112】
フレーム多重部26は、フレーム転送処理部25Aからの上りフレームと制御フレーム処理部24からの制御フレームとを時分割的に多重し、第1の送受信回路21に対して送信する処理部である。
【0113】
フレーム転送処理部25Aは、フレーム分離部23から受信した下りフレームに付与されているLLIDをチェックして自ONU宛てのフレームのみを第2の送受信回路22に対して転送する一方、第2の送受信回路22から受信した上りフレームを上り帯域制御部27の指示に従ってフレーム多重部に26対して転送する処理部である。なお、フレーム転送処理部25Aは、上り帯域制御部27に対する帯域要求(送信が必要な上りフレームがどのくらい溜まっているかを通知)も行う。さらに、受信経過時間計測・モニタ部28へのフレーム情報の出力を行う。
【0114】
制御フレーム処理部24は、OLTとの通信を開始するための処理(Discoveryプロセス)や上り信号(ONUからOLT宛ての信号)の調停を行うための処理といった、PONの制御に関する処理を行う処理部である。
上り帯域制御部27は、制御フレーム処理部24とフレーム転送処理部25Aからの帯域要求に応じて、OLTに対して上り帯域の割当要求を行い、OLTからの上り帯域割当通知(送信開始時刻と送信データ量)に従って、フレーム多重部26、制御フレーム処理部24、及び、フレーム転送処理部25Aの上りフレームに対して、送信許可を与える処理を行う処理部である。
【0115】
受信経過時間計測・モニタ部28は、フレーム転送処理部25Aから入力されたフレーム情報に基づいて、LLID毎に、そのLLID宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測してその結果をモニタする処理部である(実施の形態1の受信経過時間計測・モニタ部58と同等)。
【0116】
ONU2A1におけるフレーム転送処理部25Aの構成例(下り)を図13に示す。同図において、251はLLIDフィルタ、252は下り出力タイミング調整部、253はフレーム情報出力部である。
【0117】
このフレーム転送処理部25Aにおいて、LLIDフィルタ251は、受信した下りフレームに付与されているLLIDをチェックして自ONU宛てのフレームのみを下り出力タイミング調整部252に対して出力する。また、自ONU宛てのフレームであった場合、LLID情報有効表示出力を「1(有効)」とし、このLLID情報有効表示出力を付加したLLID情報をフレーム情報としてフレーム情報出力部253へ出力する。
【0118】
下り出力タイミング調整部252は、フレーム出力のタイミングを調整して、第2の送受信回路22に対して下りフレームを転送する。フレーム情報出力部253は、入力されたフレーム情報を受信経過時間計測・モニタ部28へ出力する。
【0119】
フレーム情報出力部253の出力例を図14に示す。この例におけるLLIDフィルタ251とフレーム情報出力部253の動作を以下に示す。
LLIDフィルタ251は、入力フレームのLLIDを常時監視し、入力フレームのLLIDが自ONU宛てだった場合、フレーム情報出力部253に対して、1フレーム毎にLLID情報有効表示出力とLLID情報を出力する(図14(a),(b)参照)。入力フレームのLLIDが自ONU宛てでなかった場合、LLID情報有効表示出力とLLID情報は出力しない。フレーム情報出力部253は、LLIDフィルタ251から入力された情報をそのままフレーム情報として出力する(図14(c),(d)参照)。
【0120】
図15に受信経過時間計測・モニタ部28の構成例を示す。受信経過時間計測・モニタ部28は、時刻出力回路281と、LLID毎受信時刻記録回路282と、LLID毎受信経過時間計測回路283と、LLID毎受信経過時間モニタ回路284とを備えている。なお、受信経過時間計測・モニタ部28の構成は、図6に示した実施の形態1における受信経過時間計測・モニタ部58の構成と同じであるので、その機能および動作については省略する。この受信経過時間計測・モニタ部28において、LLID毎としているのは、1台のONUで複数のLLIDを用いることもあるからである。
【0121】
この実施の形態4のONU2A1によれば、実施の形態1と同様にして、LLID毎に自己宛てのフレームの最後の受信からの経過時間を知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONU2A1のスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することができる。
【0122】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに、計測されたLLID毎の自己宛てのフレームの経過時間を提供することにより、経過時間が十分大きい場合には、ONU2A1の配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONU2A1をスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。つまり、スリープの可否をOLTではなく、ONUで判断することが可能となる。
【0123】
また、本実施の形態の構成は、フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能を利用している。フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能は、従来のONUにも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLIDフィルタ251内の一部とフレーム情報出力部253、及び、受信経過時間計測・モニタ部28内の各回路(図15)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0124】
さらに、受信経過時間計測・モニタ部28内の各回路の仕様の最適化により、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、LLID毎受信時刻記録回路282における受信時刻記録回路を全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、ONU2A1がサポートするLLIDの数分(例えば、4つ)だけ搭載し、各受信時刻記録回路にどのLLIDの情報を記録するのかをソフトウエアもしくは外部のハードウエアから設定できるようにすることにより回路規模が小さくなる。
【0125】
また、実施の形態1と同様に、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる。
さらに、LLID毎受信経過時間計測回路283の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力の上位ビットを記録する必要がなくなることも実施の形態1と同様である。
【0126】
実施の形態1と同様に、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力のビット数を削減すると、LLID毎受信経過時間計測回路283の計測回路のビット数が削減され、また、LLID毎受信経過時間モニタ回路284のビット数も削減できる。
【0127】
〔実施の形態5(ONU)〕
図16に第5の実施の形態(実施の形態5)としてONU2(2A2)の構成を示す。実施の形態4のONU2A1では、受信経過時間計測・モニタ部28を用いていたが、実施の形態5のONU2A2では受信経過時間等計測・モニタ部29を用いる。他は実施の形態4のONU2A1の構成と同じである。
【0128】
図17に受信経過時間等計測・モニタ部29の構成例を示す。実施の形態4のONU2A1における受信経過時間計測・モニタ部28との差分は、LLID毎受信時刻記録回路285と、LLID毎受信間隔計測回路286と、LLID毎受信間隔モニタ回路287とが追加されている点である。なお、この例において、LLID毎受信時刻記録回路282は第1のLLID毎受信時刻記録回路と呼び、LLID毎受信間隔計測回路285は第2のLLID毎受信時刻記録回路と呼ぶ。また、受信経過時間等計測・モニタ部29の構成は、図8に示した実施の形態2における受信経過時間等計測・モニタ部59の構成と同じであるので、その機能および動作については省略する。
【0129】
この実施の形態5のONU2A2によれば、実施の形態2と同様にして、LLID毎に自己宛てのフレームの最後の受信からの経過時間に加えて、LLID毎に自己宛てのフレームの最後のフレーム受信時刻と、その直前に受信した同一LLIDの自己宛てのフレームの受信時刻との差分(フレーム受信間隔)も知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONU2A2のスリープの可否をより的確に判断させる情報を提供することができる。
【0130】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに計測されたLLID毎の自己宛てのフレームの経過時間と受信間隔を提供することにより、経過時間と受信間隔が共に十分大きい場合には、ONU2A2の配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONU2A2をスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。
【0131】
この実施の形態5でも実施の形態4と同様に、スリープの可否をOLTではなく、ONUで判断することが可能となる。また、実施の形態4と比較すると、ONUをスリープさせて問題無いか否かを判断するための情報が増えているので、ONUをスリープさせた時に問題が発生する可能性を低下させることができる。
【0132】
また、実施の形態5の構成は、実施の形態4と同様に、フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能を利用している。フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能は、従来のONUにも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLIDフィルタ251内の一部とフレーム情報出力部253、及び、受信経過時間等計測・モニタ部29内の各回路(図17)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0133】
さらに、受信経過時間等計測・モニタ部29内の各回路の仕様の最適化により、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、第1のLLID毎受信時刻記録回路282や第2のLLID毎受信時刻記録回路285における受信時刻記録回路を全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、ONU2A2がサポートするLLIDの数分(例えば、4つ)だけ搭載し、各受信時刻記録回路にどのLLIDの情報を記録するのかをソフトウエアもしくは外部のハードウエアから設定できるようにすることにより回路規模が小さくなる(実施の形態4と同様)。
【0134】
また、実施の形態1と同様に、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる。
さらに、実施の形態2と同様に、LLID毎受信経過時間計測回路283とLLID毎受信間隔計測回路286の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力の上位ビットを記録する必要がなくなる。
【0135】
実施の形態2と同様に、受信時刻として記録する時刻出力回路281の出力のビット数を削減すると、LLID毎受信経過時間計測回路283とLLID毎受信間隔計測回路286の計測回路のビット数が削減され、また、LLID毎受信経過時間モニタ回路284とLLID毎受信間隔モニタ回路287のビット数も削減できる。
【0136】
なお、実施の形態2と同様に、LLID毎受信間隔計測回路286の計測回路については、LLID毎に同じ回路を複数搭載する必要はない。
【0137】
〔実施の形態6(ONU)〕
図18に第6の実施の形態(実施の形態6)としてONU2(2A3)の構成を示す。実施の形態4のONU2A1では、受信経過時間計測・モニタ部28を用いていたが、実施の形態6のONU2A3では受信経過時間計測・モニタ部30を用いる。他は実施の形態4のONU2A1の構成と同じである。
【0138】
図19に受信経過時間計測・モニタ部30の構成例を示す。受信経過時間計測・モニタ部30は、スリープ単位ID付与回路31と、スリープ単位ID毎受信時刻記録回路32と、時刻出力回路33と、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路34と、スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路35とを備えている。なお、受信経過時間計測・モニタ部30の構成は、図10に示した実施の形態3における受信経過時間等計測・モニタ部60の構成と同じであるので、その機能および動作については省略する。
【0139】
この実施の形態6のONU2A3によれば、LLID毎に設定されたスリープ単位ID毎に該当のスリープ単位IDの自己宛てのフレームの最後の受信からの経過時間を知ることができ、ハードウェアやソフトウェアなどに対して、ONU2A3のスリープの可否を的確に判断させる情報を提供することができる。
【0140】
すなわち、ハードウェアやソフトウェアなどに計測されたスリープ単位ID毎の自己宛てのフレームの経過時間を提供することにより、経過時間が十分大きい場合には、ONU2A3の配下の端末(PC等)が通信中ではない可能性が高く、ONU2A3をスリープさせても問題無い(スリープ中に多数の下りフレームが入力される確率が低い)と判断させることができる。この実施の形態6でも実施の形態4と同様に、スリープの可否をOLTではなく、ONUで判断することが可能となる。
【0141】
また、1台のONUで複数のLLIDを用いた通信を行う場合、その際のスリープの可否の判断はLLID単位ではなく、複数のLLIDをまとめて行うことが望ましいが、本実施の形態のONU2A3を用いて、複数のLLIDに同じスリープ単位IDを設定することにより、複数のLLIDをまとめてスリープの可否の判断を行うことが可能となる。特に、スリープの判断をソフトウエアで行う場合は、複数のLLIDをまとめた単位で判定する方が負荷が小さくなる(経過時間等を取得する回数が少なくなる)。
【0142】
また、実施の形態6の構成は、実施の形態4と同様に、フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能を利用している。フレーム分離部23の機能とLLIDフィルタ251の機能は、従来のONUにも搭載されているものであり、受信経過時間の計測のために追加が必要な回路は、LLIDフィルタ251内の一部とフレーム情報出力部253、及び、受信経過時間計測・モニタ部30内の各回路(図19)のみであり、それほど大きな回路は必要としない。
【0143】
さらに、受信経過時間計測・モニタ部30内の各回路の仕様の最適化により、受信経過時間の計測のために追加する回路をさらに小さくすることができる。
例えば、スリープ単位ID付与用のLLIDテーブルを全LLID(16進数表示で「0000」〜「FFFF」)分用意せず、ONU2A3がサポートするLLID数分(例えば、4つ)だけとすることが可能である。
【0144】
また、受信時刻として記録する時刻出力回路33の出力の内、下位ビットは記録せず、上位ビットのみを記録することにより、回路規模が小さくなる(実施の形態1と同様)。
さらに、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路34の出力の最大値を必要最低限な値に制限することにより、受信時刻として記録する時刻出力回路33の出力の上位ビットを記録する必要がなくなる点も実施の形態1と同様である。
【0145】
実施の形態1と同様に、受信時刻として記録する時刻出力回路33の出力のビット数を削減すると、スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路34の計測回路のビット数が削減され、また、スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路35のビット数も削減できる。
【0146】
なお、実施の形態6のONU2A3に、実施の形態5のONU2A2の受信経過時間等計測・モニタ部29(図17)のように、LLID毎受信間隔計測回路286やLLID毎受信間隔モニタ回路287と同様な回路(ただし、LLID毎ではなく、スリープ単位ID毎に計測、表示を行う)を追加することも可能である。
【0147】
[実施の形態の拡張]
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。特に上記実施の形態では、伝送システムの一つであるPONを例として説明したが、本発明はPONに限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0148】
1(1−1〜1−3)…ユーザ装置、2(2−1〜2−3、2A1,2A2,2A3)…ONU、3…光スプリッタ、4…光ファイバ、5(5A1,5A2,5A3)…OLT、6…上位装置、7…事業者ネットワーク、8(8−1〜8−3)…UNI、9…SNI、51…第1の送受信回路、52…第2の送受信回路、53…フレーム分離部、54…制御フレーム処理部、55(55A)…フレーム転送処理部、56…フレーム多重部、57…帯域割当処理部、58…受信経過時間計測・モニタ部、59…受信経過時間等計測・モニタ部、60…受信経過時間計測・モニタ部、551…下り出力先判定部、552…MACアドレス検索テーブル、553…レイテンシ吸収部、554(554A)…LLID付与部、555…下り出力タイミング調整部、556…フレーム情報出力部、581…時刻出力回路、582…LLID毎受信時刻記録回路(第1のLLID毎受信時刻記録回路)、583…LLID毎受信経過時間計測回路、584…LLID毎受信経過時間モニタ回路、585…LLID毎受信時刻記録回路(第2のLLID毎受信時刻記録回路)、586…LLID毎受信間隔計測回路、587…LLID毎受信間隔モニタ回路、61…スリープ単位ID付与回路、62…スリープ単位ID毎受信時刻記録回路、63…時刻出力回路、64…スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路、65…スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路、21…第1の送受信回路、22…第2の送受信回路、23…フレーム分離部、24…制御フレーム処理部、25(25A)…フレーム転送処理部、26…フレーム多重部、27…上り帯域制御部、28…受信経過時間計測・モニタ部、29…受信経過時間等計測・モニタ部、30…受信経過時間計測・モニタ部、251…LLIDフィルタ、252…下り出力タイミング調整部、253…フレーム情報出力部、281…時刻出力回路、282…LLID毎受信時刻記録回路(第1のLLID毎受信時刻記録回路)、283…LLID毎受信経過時間計測回路、284…LLID毎受信経過時間モニタ回路、285…LLID毎受信時刻記録回路(第2のLLID毎受信時刻記録回路)、286…LLID毎受信間隔計測回路、287…LLID毎受信間隔モニタ回路、31…スリープ単位ID付与回路、32…スリープ単位ID毎受信時刻記録回路、33…時刻出力回路、34…スリープ単位ID毎受信経過時間計測回路、35…スリープ単位ID毎受信経過時間モニタ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から送られてくるフレームを受信し、このフレーム内の情報に基づいて当該フレームを下位装置に転送する伝送システムにおける通信装置において、
前記受信したフレームに付与されているもしくは自己の装置内で付与された当該フレームの宛先を示す識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測し、この計測した識別子情報毎の経過時間を下りフレームの転送状況としてモニタする転送状況モニタ手段
を備えることを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記受信したフレームにそのフレームの宛先を示す識別子情報を付与する識別子情報付与手段を備え、
前記転送状況モニタ手段は、
前記識別子情報付与手段によって付与された識別子情報毎にその識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測する
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記受信したフレームに付与されている前記識別子情報が自己の識別子情報であるか否かを判定する識別子情報判定手段を備え、
前記転送状況モニタ手段は、
前記識別子情報判定手段によって自己の識別子情報と判定された識別子情報毎にその識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間を計測する
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記転送状況モニタ手段は、
前記計測した経過時間が予め定められた最大経過時間を超えた場合、その最大経過時間を経過時間のモニタ値とする
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記転送状況モニタ手段は、
前記識別子情報毎に、その識別子情報宛ての最後のフレーム受信からの経過時間に加え、その識別子情報宛ての最後に受信したフレームと同じ識別子情報宛てでその直前に受信したフレームとの時間間隔を計測し、この計測した経過時間と時間間隔とを下りフレームの転送状況としてモニタする
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記転送状況モニタ手段は、
前記計測した時間間隔が予め定められた最大時間間隔を超えた場合、その最大時間間隔を時間間隔のモニタ値とする
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記転送状況モニタ手段は、
前記識別子情報毎の前記下りフレームの転送状況のモニタに代えて、予め設定された識別子情報の組み合わせを1単位とし、その1単位の識別子情報毎に前記下りフレームの転送状況をモニタする
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。
【請求項8】
請求項7に記載された伝送システムにおける通信装置において、
前記1単位の識別子情報は、同一のスリープ単位IDとして設定されている
ことを特徴とする伝送システムにおける通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−17015(P2013−17015A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148032(P2011−148032)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】