伝送システム
【課題】主にマイクロ波帯より移動する送信点からの映像・音声素材を基地局を介して放送局に伝送するシステムにおいて、基地局または放送局における回転受信アンテナ装置により、移動体との伝送路を確立する場合に、低コストで伝送路の確立の時間を短縮する。
【解決手段】基地局は、移動する送信点の方向に旋回させる回転受信アンテナを備えており、さらに、複数の指向性の広い固定受信アンテナを備えている。固定受信アンテナの入力レベルから減衰量の差によって、移動体の受信角度を推定して、回転受信アンテナを推定された角度に向けるようにする。さらに、伝送情報から送信元を識別し、放送局での端末上に、送信元とその伝送情報を表示させるようする。
【解決手段】基地局は、移動する送信点の方向に旋回させる回転受信アンテナを備えており、さらに、複数の指向性の広い固定受信アンテナを備えている。固定受信アンテナの入力レベルから減衰量の差によって、移動体の受信角度を推定して、回転受信アンテナを推定された角度に向けるようにする。さらに、伝送情報から送信元を識別し、放送局での端末上に、送信元とその伝送情報を表示させるようする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送システムに係り、無線伝送を用いた遠隔制御監視システムであって、回転受信アンテナの方向調整を迅速におこない、オペレータの操作性に優れる伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
報道、スポーツイベントの中継などで、テレビジョン放送用の無線中継伝送装置であるFPU(Field Pickup Unit)から、基地局を介して、テレビジョン放送局に放送用の映像を伝送する遠隔制御システムが知られている。
【0003】
以下、図21を用いて、従来技術に係る遠隔制御監視システムの例として、マイクロ受信基地局システムを説明する。
図21は、従来技術に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【0004】
このマイクロ受信基地局システムは、FPUから映像、音声をマイクロ波により送信し、それを基地局で受信して、変調をおこなった後、放送局に送信するシステムである。
【0005】
以下、説明する従来技術のマイクロ受信基地局システムの動作例としては、送信点A11および送信点B14から放送局13へ映像・音声素材を伝送する場合を考える。放送局から遠距離にある送信点A11からの映像・音声素材は、基地局12を介して放送局13へ無線伝送される。ここで、送信点A11や送信点B14は、実際には、無線中継伝送装置であるFPUである。
【0006】
先ず、送信点A11にある送信部111は、映像・音声素材を無線伝送可能なマイクロ波信号に変換しアンテナ112から電波を送信する。この送信部111は、SDI(Serial Digital Interface)信号をFPUでの伝送に用いられる固定長のパケット形式のフレームフォーマットであるTS(Transport Stream)信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、マイクロ波帯へ周波数変換しアンテナへ伝送する機能を有する。送信された電波は、基地局12内の回転受信アンテナ装置121で受信され、受信部122に送られる。ここで、受信部122とは、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調し、SDI信号へ復号する機能を有する。ただし、基地局内の受信部122においては、最小限、信号劣化のないTS信号へ変換するまでの機能があればよい。TS信号は、送信部123へ送られ、固定アンテナ126から電波で送信される。また、受信部122と同様、基地局内の送信部123は、最小限、TS信号をマイクロ波帯へ変換する機能があればよい。基地局12から送信された電波は、放送局13の固定アンテナ131で受信され、受信部132、復号部135によってSDI信号へ復号され、本線へ送られる。
【0007】
また、放送局13から近距離にある送信点B14からの映像・音声素材は、送信部141を通り、アンテナ142から送信され、基地局を介することなく、直接、放送局13の回転受信アンテナ装置133で受信され、受信部134、復号部135によって復号され本線へ送られる。
【0008】
このシステムを用いた無線伝送では、基地局12において送信点からの電波を如何に効率よく受信できるかが重要となってくる。すなわち、送信点の位置によって、基地局12内の回転受信アンテナ装置121は、方向を変えられねばならない。そのため、マイクロ受信基地局システムでは、回転受信アンテナ装置121は、放送局13からの遠隔制御により回転が可能な回転架台となっている。
【0009】
その制御監視方法は、以下の通りである。放送局13内、操作端末1310よりネットワークに送信された制御パケットは、制御端局139で受信され、シリアル信号に変換される。ここで、ネットワークに複数の操作端末、複数の制御端局をつなげ、それぞれの機器IDによって送信・受信相手を特定し送受信が可能であることはもとよりである。シリアル信号は、さらに変復調部138において、例えば、アナログ信号に変調され、基地局12へ向けて送信される。送信されたアナログ信号は、基地局12内の変復調部125で受信され、シリアル信号に復調後、被制御端局124へ送信される。被制御端局124は、その制御信号を解読し、回転受信アンテナ装置121へ制御をおこなう。回転受信アンテナ装置121における角度などの監視情報は、監視信号として被制御端局124へ送られる。被制御端局124はその情報をシリアル信号として、変復調部125へ送信し、変復調部125は、例えば、アナログ信号に変調して、放送局13に向けて送信する。放送局内の変復調部138は、受信した信号をシリアル信号へ復調し、制御端局139へ送信する。制御端局139は、受信したシリアル信号を解読し、監視パケットをネットワークへ送信する。操作端末1310は、監視パケットを受信し、端末上に情報として表示する。
【0010】
以上のようにして、基地局12内の回転受信アンテナ装置121の制御監視が可能であるが、このマイクロ受信基地局システムでは、基地局に設置された受信部122や送信部123における受信・送信レベル、送受信チャンネル周波数帯、変調方式、送信出力、復号方式、また、例えば、信号切替器の接点選択、信号多重・分離装置の信号入力・出力選択などは、回転受信アンテナ装置121へのそれと同様、操作端末1310、制御端局139、被制御端局124への一連の信号伝達によって制御監視可能である。また、送信点B14からの映像・音声素材を伝送するときのように放送局に直接送信する場合は、操作端末1310、制御端局139という信号伝達経路を用いて、放送局13に存在する回転受信アンテナ装置133や受信部134などの装置に対し制御監視が可能である。
【0011】
また、このシステムでは、受信アンテナの方向調整をおこなうためのより詳細な情報の提供として、受信部122,134における受信周波数や変調方式などの伝送パラメータを含むTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信レベル、余裕度(Margin Degree)、BER(Bit Error Rate)、MER(Modulation Error Ratio)、遅延プロファイル、コンスタレーションなどの支援データを、TS信号に重畳させて放送局へ伝送し、情報生成部136によって分離し、情報編集部137によって編集し、操作端末1310上に表示させる方法がある。
【0012】
特許文献1には、素材用のパラボナアンテナとは、別に、複数の電界強度測定用アンテナを設け、電界強度測定用アンテナの電界強度情報により、回転台を回転させるFPU受信基地局が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−77025号公報
【特許文献2】特開2003−309536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これら基地局無線伝送では、用途に応じて上記の回転受信アンテナ装置や基地間伝送用固定アンテナのような指向性の高いアンテナから、近隣広範囲から固定アンテナで送受信をおこなう指向性の広いアンテナまで様々なアンテナが用いられる。一般に指向性の高いアンテナは狭域(角度)で長距離・高利得、指向性の広いアンテナは広域(角度)で短距離・低利得という特徴がある。
【0015】
例えば、上述のマイクロ受信基地局システムでは、指向性の高いパラボラアンテナを用いることが多い。それは、基地局を山頂やビルの屋上などに設置し、地域周辺の多くのポイントから距離を問わず見通し位置(受信可能)となるよう受信設計されている面や、遠距離となりやすい基地局間に信頼性の高い固定伝送路を作れるよう回線設計を行っている面が関係している。
【0016】
しかし、今日のアンテナ技術向上により、広域の指向性をもち、かつ利得を得ることができるアンテナが開発されてきており、マイクロ受信基地局システムなどのような高い利得を必要とする伝送路にも用途が広がっている。ただし、それでもパラボラアンテナを代表とする高利得アンテナに比べれば、その利得差は当然大きい。
【0017】
したがって、マイクロ受信基地局システムでFPUなどの移動体からの映像・音声素材を受信するアンテナ装置としては、パラボナアンテナの回転受信アンテナ装置が主力である。回転受信アンテナ装置は、指向性は狭いが、アンテナを回転することにより、最も適切な位置に調整しうるし、利得も高いからである。また、広指向固定アンテナにより、全範囲を伝送可能とするために過剰な数のアンテナが必要なコスト的課題が発生するからである。しかしながら、オペレータが端末から操作をして回転受信アンテナ装置の位置の調整しないときには、回転受信アンテナ装置は、位置の自動調整のために、多大の時間を要するという問題点があった。また、放送局では、オペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでに、送信開始から端末を注視していなければならず、多大の労力がかかっていた。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、基地局または放送局における回転受信アンテナ装置により、移動体との伝送路を確立する場合に、低コストで伝送路の確立の時間を短縮しうる伝送システムを提供することにある。
【0019】
また、放送局での、オペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでの労力を軽減しうる伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の伝送システムは、主にマイクロ波帯より移動する送信点からの映像・音声素材を基地局を介して放送局に伝送するシステムである。
【0021】
基地局は、移動する送信点の方向に旋回させる回転受信アンテナを備えており、さらに、複数の指向性の広い固定受信アンテナを備えている。固定受信アンテナの入力レベルから減衰量の差によって、移動体の受信角度を推定して、回転受信アンテナを推定された角度に向けるようにする。
【0022】
また、回転受信アンテナで、周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなうようにする。このとき、送信方向検出を、例えば、一定時間ごとにおこない、送信点を自動追尾するようにしてもよい、
また、基地局に複数の回転受信アンテナ装置を設置してもよい。
【0023】
さらに、伝送情報から送信元を識別し、放送局での端末上に、送信元とその伝送情報を表示させるようする。
【0024】
このように、本発明は、従来の回転受信アンテナ装置に加え、基地局に指向性の広い固定受信アンテナにより受信する設備を具備し、現状の回転受信アンテナ制御に内在する伝送路確立までの時間的ロスを改善させ、かつ操作性を向上させる新たな制御方法を備えた伝送システムを提供する。
【0025】
したがって、本発明は、指向性の広い固定アンテナでその受信範囲を瞬時に伝送可能とする点と、回転受信アンテナ装置で任意の角度を伝送可能とする点について、両アンテナを用いる手法の利便性を保持している。そしてかつ、広指向固定アンテナを用いて全範囲を伝送可能とするために過剰な数のアンテナが必要なコスト的課題、および回転受信アンテナ装置を用いてオペレータの送信点入力なしに伝送路を確立するために全範囲の自動微調整をおこない多大な時間を浪費してしまうという時間的課題を解決することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、送信側の電波送出から受信側での受信可能状態までの遷移にて、送信情報提供と受信通知の自動遷移を可能とし、オペレータへの負担をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、その目的は、基地局または放送局における回転受信アンテナ装置により、移動体との伝送路を確立する場合に、低コストで伝送路の確立の時間を短縮しうる伝送システムを提供することにある。
【0028】
また、本発明によれば、放送局でのオペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでの労力を軽減しうる伝送システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【図2】回転受信アンテナ装置211の制御について説明する図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【図4】基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
【図5】アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである(その一)。
【図6】アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである(その二)。
【図7】固定アンテナの様子を示す模式図である(その一)。
【図8】固定アンテナの様子を示す模式図である(その二)。
【図9】固定アンテナの様子を示す模式図である(その三)。
【図10】固定アンテナの様子を示す模式図である(その四)。
【図11】送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
【図12】各アンテナ毎の送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
【図13】各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルである。
【図14】本発明の第二の実施形態に係る基地局22のアンテナに関わる部分のみ示した図である。
【図15】本発明の第二の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示したフローチャートである。
【図16】本発明の第三の実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【図17】本発明の第四の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【図18】伝送情報テーブルの一例を示す図である。
【図19】操作端末に表示される送信情報の表示例を示す図である。
【図20】操作端末に表示される伝送路を確立したときの表示例を示す図である。
【図21】従来技術に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図19を用いて説明する。
【0031】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図1ないし図13を用いて説明する。
【0032】
先ず、図1および図2を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
図2は、回転受信アンテナ装置211の制御について説明する図である。
【0033】
本実施形態のマイクロ受信基地局システムの本社の構成は、従来技術と同様である。また、図1に示される送信点は、送信点21のみであるが、従来技術の図21のシステムのように、本社に直接、映像・音声素材を伝送する送信点があってもよい。
【0034】
基地局22は、図21に示したマイクロ受信基地局システムにおける基地局12を拡張した系統を有する。各部は、それぞれ回転受信アンテナ装置221(図21に示した従来技術に係るシステムの121に対応)、受信部222(122に対応)、送信部223(123に対応)、被制御端局224(124に対応)、変復調部225(125に対応)、固定アンテナ226(126に対応)であり、本実施形態の基地局では、固定アンテナ227,229,2211,2214、固定受信部228,2210,2212,2215および信号選択部2213が加わっている。
【0035】
固定アンテナ227,229,2211,2214は、後に、説明するように送信点を特定するために電波を受信するアンテナである。固定受信部228,2210,2212は、固定アンテナ227,229,2211,2214を監視し、電波を信号として受け取る部分である。信号選択部2213は、受信部222および固定受信部228,2210,2212,2215からの複数の入力から、所望の信号を選択し送信部へ出力するための機能を有する。
【0036】
次に、図2を用いて回転受信アンテナ装置221の制御について説明する。
【0037】
回転受信アンテナ装置221は、図2に示されように、被制御端局224に制御・監視ケーブルで接続されている。そして、アンテナの回転方向は、パラメタ例1のように、被制御端局224からの水平制御電圧、垂直制御電圧で制御する。また、回転受信アンテナ装置221は、回転アンテナ部の水平角度、垂直角度を被制御端局224に送信する。また、アンテナの回転方向は、パラメタ例2のように、被制御端局224から、各種の接点を入力して制御するようにしてもよい。
【0038】
次に、図3を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理について説明する。
【0039】
図3は、本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【0040】
ここで、図3(a)フローチャートが、本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示しており、図3(b)が、従来技術に係る回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示している。
【0041】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図3(a)に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S311)。
【0042】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S312)、回転アンテナの方向調整をおこなわずに処理を終了する。
【0043】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S312)、回転アンテナの方向制御をおこない(S313)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S314)。
【0044】
従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図3(b)に示されるように、送信点情報を入力する(S321)。
【0045】
そして、その入力情報に基づき、回転アンテナの方向制御をおこない(S323)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S323)。
【0046】
以上のように、従来技術に係るマイクロ受信基地局システムでは、固定アンテナによる受信手段を持たずに、オペレータ側からの明示的に、回転受信アンテナ装置221の方向を制御するための送信点情報の入力が必要であった。それは、例えば、図1に示した操作端末1310のリモコンアプリケーションにおける、アンテナ角度の入力、送信点位置の入力(地図上の指定、緯経度値の入力等)などが挙げられる。
【0047】
一方、本実施形態に係るマイクロ受信基地局システムでは、固定アンテナによる受信手段を有し、それらで送信点からの映像・音声素材を受信可能のときには、固定アンテナによる受信手段で、送信点から映像・音声素材を伝送させ、受信可能のときには、固定アンテナによる受信手段により得た情報に基づいて、回転受信アンテナ装置221の方向を制御するものである。
【0048】
次に、図4および図13を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムにおける回転受信アンテナ装置221の回転アンテナを方向調整する原理とその詳細について説明する。
図4は、基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
図5および図6は、アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである。
図7ないし図10は、固定アンテナの様子を示す模式図である。
図11は、送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
図12は、各アンテナ毎の送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
図13は、各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルである。
【0049】
本実施形態は、固定アンテナで受信した電波の状況によって、送信点に向けての回転受信アンテナ装置221の回転アンテナを方向調整するためのパラメタを得るものである。すなわち、固定アンテナの入力信号により、送信点の位置を推定するものである。
【0050】
一般に、アンテナの減衰パターンには、図5の実データグラフ41として提示される。この図では、アンテナ方向を0度とする角度方向線411と、その角度からの入力に対する受信レベル412が円中心との距離によって示されている。
【0051】
この図5の例は、比較的広い指向特性を持つアンテナのものであり、送信角度411と、曲線との交点における受信レベル412により、減衰値を読み取ることができる。そして、このデータにより、アンテナ方向からの角度ズレによってどの程度の減衰があるかを知ることができ、例えば、単位角度ズレごとに減衰量を読み取りデータベース化することが可能である。本発明では、設置される複数の固定アンテナの方向を予め測定しておくことにより、任意の方向からの減衰量が個々のアンテナごとに推定可能となる。ここで、例えば、予め任意の角度に対する各アンテナの減衰量の差を求めておく。これにより、実際に電波を受信した際、固定受信の入力レベルを監視し各々の差を求めることで、オペレータからの明示的な入力を必要とせず、その送信点に近い方向を導き出し、入力角度を推定することが可能になる。
【0052】
以下、具体的に、送信点の入力角度を推定する手法について説明する。
【0053】
先ず、図4は、基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
この図4では、その他の構成部分は省略して、それぞれ、回転受信アンテナ装置221、固定アンテナ227,2214,2211,229、各固定アンテナを利用し無線伝送可能な範囲227r,2214r,2211r,229rを示している。ここで、図7ないし図9以降では、固定アンテナ227,2214,2211,229を、それぞれ、アンテナ(1)、アンテナ(2)、アンテナ(3)、アンテナ(4)と表記する。
【0054】
このアンテナ(1)〜(4)は、広い指向性を持つアンテナとして、各アンテナは、図7に示されるように、矢印の方向を向いているものとする。アンテナの角度については、図8に示されるように、アンテナ(1)のアンテナ角度を、0(すなわち、アンテナ(1)の向いてる方向を基準線にとる)、アンテナ(2)のアンテナ角度を、+θ2、アンテナ(3)のアンテナ角度を、+θ4とする。これらは、基地局22のアンテナの設置に関するものであり、既知の角度である。
【0055】
例えば、送信角度が、40度であるとき、図6に示されるように、グラフと曲線の交点の減衰値を読み取って、5dBと読める。このようにして、各角度の減衰値を読み取って、図10に示されるように、送信角度と減衰値の対応テーブルを作る。図では、20度毎になっているが、実際上、必要ならもっと細かく中間角度の減衰値も計算する。
【0056】
このようなテーブルをアンテナ毎に作っていく。アンテナ毎に、角度と減衰値のペアを作っていけばよいので、各アンテナの仕様が同じである必要はない。すなわち、基地局22の固定アンテナとして、アンテナ減衰パターンの異なるアンテナを共存させてもよい。このときは、登録される減衰量の差に、予め各固定アンテナのアンテナ利得を加算しておけばよい。
【0057】
さらに、例えば、アンテナ(2)に対する送信角度は、以下の(式1)で与えられる。
【0058】
(2)に対する送信角度=(1)に対する送信角度−(2)のアンテナ角度
=(1)に対する送信角度−(+θ2) …(式1)
このようにして、アンテナ(1)に対する送信角度に基づいて、各アンテナ(2)〜(4)の減衰値を得ることができ、図11に示されるテーブルを得ることができる。
【0059】
次に、アンテナ(1)とアンテナ(2)の減衰値の差、アンテナ(1)とアンテナ(3)の減衰値の差、…というように、それぞれのアンテナの減衰値の差分を算出しておく。これにより、図12に示したような各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルを得ることができる。この例のように、四つのアンテナが存在すると、差のデータは、一つの角度について6種類(四つから二つとる組合せの数)できる。
【0060】
さて、このような状況で、図9に示されるように、ある方向から送信電波が来たとする。各アンテナの入力レベルは、e1,e2,e3,e4と測定されたとする。今、目的は、図9に示されるψを推定することである。
【0061】
各アンテナの入力レベルは、以下の(式2)に示されるようになる。
【0062】
e1=送信出力−(1)までの自由空間損失−(1)までの減衰値
e2=送信出力−(2)までの自由空間損失−(2)までの減衰値 …(式2)
e3=送信出力−(3)までの自由空間損失−(3)までの減衰値
e4=送信出力−(4)までの自由空間損失−(4)までの減衰値
ここで、送信点と基地局は、十分距離があるため、各アンテナまでの自由空間損失は、全て等しいと近似する。この仮定のもとで、e1からe2を引くと、以下の(式3)を得る。
【0063】
e1−e2=送信出力−(1)までの減衰値−(2)までの減衰値 …(式3)
したがって、(式3)で算出された(e1−e2)と図12の各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルのカラムの((1)までの減衰値−(2)までの減衰値)の中で、等しいか近いものを見出せれば、その角度が判明する。もちろん、複数の角度において、減衰値の差が同等であることが存在するが、複数のアンテナの組み合わせで、減衰値の差が一意に決まればよいので、この例のように四つのアンテナ(六つの組合せ)なら、実用上ほぼ確実に、送信点の角度を推定することができる。
【0064】
なお、減衰差が角度に対して複数存在すること問題の回避方法としては、予定している固定アンテナの設置角度差で、それらのアンテナの減衰パターンにおいて、ある送信角度の減衰量の差と等しくなる別の送信角度が存在するか否かを予め確認しておくことが挙げられる。
【0065】
以上の手法は、固定アンテナの信号入力レベルの差により、送信点の角度を推定するものであるが、この固定アンテナの減衰量の差を求める方法以外にも、他の手法としては、おおよその角度を導き出し、回転受信アンテナ装置221の自動微調整機能を用いてある程度広域の範囲をサーチすることを前提とした簡易的手法であれば、最も入力レベルの高い固定アンテナの方向、あるいは、最も高い入力レベルを示した二つの固定アンテナ間で、それらの2アンテナの減衰量の比によって求めた角度などに決定することも可能である。この簡易的手法によれば、従来手法を用いてオペレータの入力を不要とするために360度全範囲の微調整サーチを必要とするところを、例えば、複数方向に均等に角度分散し設置された固定アンテナがあれば、高々(360/固定アンテナ数)度の範囲の水平サーチで可能となる。また、一つの固定アンテナのみ設置する場合には、その固定アンテナへの一定レベル以上の入力時においてのみ、回転受信アンテナ装置をその一つの固定アンテナ方向へ制御するとしてもよいし、一定レベル以下の場合に固定アンテナ方向と180度逆の方向へ向けることとしてもよい。一般に、微調整サーチをおこなうにあたっては、各々の角度における正確な入力レベルデータが必要となるため、回転受信アンテナ装置の旋回速度は、1度/秒程度の低い速度でなければならない。もし従来技術に係る回転受信アンテナ装置において、全域(360度)自動微調整を試みる場合は、1度/秒の速度として水平微調整だけで少なくとも6分の時間を要する。これは、自動伝送路確立に要するために、多大の時間を要していると評価せざるを得ない。対して、本発明の送信点の角度の推定方法を用いれば、簡易的手法を用いたとしても所要時間を大幅に短縮可能である。もし、詳述したアンテナ減衰量の差分による指向特性データベースを用いた手法であれば、自動微調整をおこなわずともほぼ正確な角度が得られることになる。これは、回転アンテナを送信点に向けるためのオペレータ側への作業を全く不要とし伝送路確立を実現可能とするものであり、非常に効果的である。
【0066】
さらに、図3(a)のフローチャートにおけるS312で示されるように、そもそも固定アンテナからの信号入力レベルが、送信点からの無線伝送可能性の面で許容できるものであれば、回転受信アンテナ装置221を用いる必要はない。もちろん、固定アンテナが指向性が広いものを用いたときには、指向性の広さを得たための利得が低下することがあるため、送信点からの映像・音声素材を伝送できない場合もありうる。そのような固定アンテナ方向の周辺角度領域において高指向性をもつ回転受信アンテナ装置221でしか伝送できない遠距離からの送信については、回転受信アンテナ装置を用いた広範囲の自動微調整検出も必要となる場合がある。しかしながら、そのような固定アンテナの実伝送利用機会を考慮すれば、全体の時間的ロスは画期的に改善されると言ってよい。
【0067】
そして、さらなる拡張を検討すれば、この手法は送信が移動体である場合における受信の自動追尾にも応用可能であることが推測される。すなわち、固定アンテナによる送信方向検出を、例えば、一秒間隔のような一定期間ごとにおこなうことによって、固定アンテナで伝送可能な範囲、あるいは、指向特性から得られる減衰量によって送信方向が推定可能な範囲であれば、固定アンテナおよび回転受信アンテナ装置の自動制御により送信点の自動追尾が可能となるということである。よって、本発明は、従来手法におけるアンテナ制御方法について、送信点情報を取得する方法を自動化し、さらに、その後の回転受信アンテナ制御におけるほぼ全ての方式に対応し、かつ各方式への効率化要素を含んでいると言える。これらの実現例は、図1における基地局に設置される回転受信アンテナ装置221以外に、放送局内に設置される回転受信アンテナ装置233を利用した系統にも、そのまま転用可能である。
【0068】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る第二の実施形態を、図14および図15を用いて説明する。
図14は、本発明の第二の実施形態に係る基地局22のアンテナに関わる部分のみ示した図である。
図15は、本発明の第二の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示したフローチャートである。
【0069】
第一の実施形態では、基地局22における回転受信アンテナ装置221は、一つであったが、本実施形態では、基地局に複数の回転受信アンテナ装置を設置した例である。
【0070】
本実施形態では、図14に示されるように、基地局22における回転受信アンテナ装置221a,221bが設置されている。
【0071】
このようにすれば、回転受信アンテナ装置221a,221bの各々で、各回転受信アンテナ装置の旋回範囲を分担することで、目標角度への初期制御における時間コストを最大(1/台数)に軽減できる点で有用である。これは、複数の回転受信アンテナ装置を等角度間隔に設置することで、1回転装置の担当範囲を台数分、分割できるということである。また、全ての回転受信アンテナ装置を同方向に制御した後、自動微調整の範囲を分割するという制御方法も考えられる。これは、上記で説明したような簡易的手法を用いたときのような自動微調整範囲が広域となる場合に、回転受信アンテナ装置の旋回速度が最も低速となってしまう自動微調整段階において、所要時間を台数分に分割できるという点で特に有効と考えられる。ここで、第一の実施形態で説明したアンテナ減衰パターンから複数の固定アンテナの減衰量の差を求め送信方向を推定する方法を用いたときの問題点であった複数の候補角度が存在してしまう場合においては、各回転受信アンテナ装置を別々の候補角度へ旋回させ、両候補角度への初期制御および自動微調整を同時におこなうことが有効である。
【0072】
他にも、回転受信アンテナ装置の複数台設置には複数周波数受信対応という効果的利点が含まれる。
【0073】
以下、図15を用いてこのときの回転受信アンテナ装置221a,221bにおける方向調整の処理を説明する。
【0074】
一般に、送信点となるFPUなどのマイクロ送受信機には、複数の受信周波数チャンネルが備わっていることが多い。そこで、任意の周波数においてオペレータの明示的情報入力操作なく伝送路確立を実現する方法が求められる。
【0075】
本実施形態の図15における方向調整の処理は、そのような課題を解決するものである。
【0076】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221a,221bの方向調整の処理では、先ず、図15に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S611)。
【0077】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S612)、S616に行く。
【0078】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S612)、方向調整が必要なそれぞれの回転受信アンテナ装置が既に他伝送に使用中であるか、否かを調べ(S613)、使用中のときには、S616に行く。使用中でなければ、回転アンテナの方向制御をおこない(S614)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S615)。
【0079】
固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のとき、方向調整が必要なそれぞれの回転受信アンテナ装置が既に他伝送に使用中のとき、回転アンテナの自動微調整が終わったときに、一つつの周波数において伝送路が確立した後に他の周波数を検索し(S615)、他の周波数がなければ、処理を終了し、他の周波数があれば、固定受信部における受信周波数をその周波数に変更し(S617)、S611に戻る。
【0080】
基地局22に複数の回転受信アンテナ装置を設置して、図15に示した処理をおこなうことによって、複数周波数を用いた1基地局での同時伝送が可能となる。この場合は、当然、後の系統における放送局への送信手段は複数用意されていることが必要であるが、これは基地局間アンテナおよび送信部の数を増設することで可能である。
【0081】
〔実施形態3〕
以下、本発明に係る第三の実施形態を、図16を用いて説明する。
図16は、本発明の第三の実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【0082】
第一の実施形態の基地局22では、図1に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214の各々に対して、固定受信部228,2210,2212,2215が接続されていた。これに対して、本実施形態の基地局71は、図16に示されように、固定受信手段の監視手段である固定受信部を1つの固定受信部7111として、受信部を削減し、前段に切替部7110を設けた系統である。
【0083】
この場合、例えば、4固定アンテナからの受信信号は、切替部7110にて選択され、最も受信レベルの高い信号のみ固定受信部に伝えられる。このとき、切替部からは、どの固定アンテナからの信号が選択されているかが被制御端局7114を通じて伝えられる。本実施形態では、例えば、一つの周波数に対して受信する固定受信部を固定し、固定受信部の周波数変更を不要とする効果を得ることができる。これを拡張すれば、切替部から複数の固定受信部に接続し、切替部7110で受信した信号の周波数に応じて出力先の固定受信部を切り替えるという手法も考えられる。
【0084】
本実施形態のような基地局71の系統をとる場合、切替部7110にて選択されている固定アンテナの方向へ回転受信アンテナ装置を制御する制御方法が効果的である。これにより、回転受信アンテナ装置での自動微調整範囲を縮小することが可能となる。
【0085】
〔実施形態4〕
以下、本発明に係る第四の実施形態を、図17ないし図20を用いて説明する。
図17は、本発明の第四の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
図18は、伝送情報テーブルの一例を示す図である。
図19は、操作端末に表示される送信情報の表示例を示す図である。
図20は、操作端末に表示される伝送路を確立したときの表示例を示す図である。
【0086】
上記実施形態では、複数の固定受信手段を設けることにより、従来回転受信アンテナ装置のみでおこなっていた方向調整操作の時間的ロスをなくし、操作性を向上させるものであった。本実施形態は、放送局におけるオペレータの操作介入を無くし、可能な部分を自動化させたいという需要に対応して、オペレータ側の負担をできるだけ軽減させ、自動化できる部分は自動化し、その確認作業のみに注力することで、人的効率化および少人数での有効活用という面で向上を図るものである。
【0087】
以下、図17を用いて本発明の第三の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理について説明する。
【0088】
本実施形態の伝送システムは、第一の実施形態に示した図1と同じシステム構成をとるものとする。
【0089】
ここで、図17(a)フローチャートが、本実施形態の回転受信アンテナ装置221の基地局と放送局における方向調整の処理を示しており、図17(b)が、従来技術に係る回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示している。また、ここで、処理のボックス内に、◆を描いているのは、人手を要する処理であることを示している。
【0090】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図17(a)に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S311)。
【0091】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S312)、回転アンテナの方向調整をおこなわずに処理を終了する。
【0092】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S312)、回転アンテナの方向制御をおこない(S313)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S314)。
【0093】
このS311〜S314は、第一の実施形態と同様である。
【0094】
本実施形態では、固定受信手段からの入力確認(S311)、途中の伝送可否判断(S312)、回転アンテナ方向制御(S313)および自動微調整(S314)の間について、各受信部にて入力信号の送信元・または伝送パラメータ情報認識のための受信監視(S316)をおこなう。
【0095】
これは、例えば、送信点から基地局への伝送方式が、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のような、入力レベルが低く映像信号が正常に再生できない環境下においても、一部の伝送パラメータ情報(例えば、TMCC)をエラー耐性の高い変調方式にて再生可能である場合に特に有効である。すなわち、アンテナの方向調整中のような受信が変動する場合において、一時的な受信による情報取得をより早く、またより高い確率で情報取得が可能とすることができる。
【0096】
このとき、放送局23の操作・表示手段である操作端末2310において、基地局より伝送された伝送データを表示する(S317、図19)。なお、この伝送データは、例えば、基地局内の各装置からの情報を得る被制御端局から変復調部、アナログ信号を通じて本社に伝送される信号に乗せてもよいし、受信部から送出されるTSストリーム中に多重し、本社にて分離し取得してもよい。
【0097】
そして、S314において最終的な自動微調整が完了した後、基地局から伝送路確立を通知し(S315)、これを放送局23の操作端末2310に伝送路確立のメッセージを表示する(S318、図20)。
【0098】
従来手法においては、送信点位置は、オペレータ側からの明示的な入力によるものだった。この入力は、例えば、操作端末1310,2310のリモコンアプリケーションにおけるアンテナ角度の入力、送信点位置の入力(地図上の指定、緯経度値の入力等)などが挙げられる。よって、オペレータは、送信点からの送信開始の時点から、該操作端末への送信点情報入力をおこない、また続くアンテナの方向調整段階においても入力送信点情報の正確性の確認を含めて受信部の入力レベルや受信試験映像、また、例えばデジタル伝送などにおいては、コンスタレーション、遅延プロファイル等に注視しなければならず、伝送路確立までに多大な時間を費やさねばならなかった。
【0099】
本実施形態の伝送システムでは、上記ように、オペレータの操作負担を大きく縮小させることができる。
【0100】
以下、図18ないし図19を用いて放送局の操作端末での伝送情報の表示について説明する。
【0101】
放送局の操作端末2319の表示画面には、電子地図511、基地局点512、伝送路情報513が表示されている。
【0102】
図19には、送信元名称として、「TX−A」が画面に表示されている。
【0103】
これには、操作端末2319には、図18に示される伝送情報テーブル81を保持しておき、伝送情報により、送信元名称を求めればよい。
【0104】
伝送情報テーブル81は、各送信元(または、伝送路)を示す送信元名称811と、送信機識別情報812、伝送パラメータ813、送信位置814の各フィールドからなる。この内で、送信元の送信位置は、GPSシステムにより取得することができる。また、例えば、図内の情報に加えて予想される入力レベル、また、予想されるアンテナの方向などを入れてもよい。
【0105】
操作端末は、基地局22から送られた伝送データに対し、この伝送情報テーブル81から送信元(伝送路)の候補を検索して、特定し、該当する送信元名称をえることができる。
【0106】
もし、伝送情報テーブル81内の送信位置814の位置情報が存在すれば、その位置情報に基づいて、電子地図511上の該当する位置に送信点として表示し、また、例えば送信点と基地局を結ぶ伝送路を表示してもよい。また、もし操作端末2310が伝送情報テーブル81を保持していない場合でも、伝送パラメータなど基地局内で取得した伝送データの一部を表示することが可能である。
【0107】
このときの伝送情報を用いた操作端末内における伝送路特定の鍵には、伝送情報テーブル81に示したもの以外にも、例えば、主データの変調方式や受信周波数などの伝送パラメータ、受信したアンテナの角度方向、または、伝送信号の伝送パラメータ内に挿入された送信機固有情報からその伝送路を特定する方法などが考えられる(この伝送パラメータ内に送信機固有情報を挿入する手法に関しては、特許文献2を参照)。
【0108】
この送信固有情報からの特定には、その送信元が自局のものであるか否かを確認することにも有用である。例えば、自局の送信識別情報一覧に該当しない送信には、無関係の送信であるとして方調操作を中止し、音などを用いてオペレータに明示的な警告をおこなうことも効果的である。
【0109】
また、同様の方法にて送信出力を挿入していれば、送信信号を受信した際のアンテナの角度情報、空中の自由空間損失、基地受信部までのアンテナロスなどを参考に、そのおおよその位置を予測し、電子地図上に表示することもできる。また、同様の方法にてGPSなどの位置情報が挿入されている場合には、操作端末に伝送情報テーブル81がなくとも位置情報をそのまま表示することもできる。このように、アンテナ方向調整の途中段階に伝送路情報を表示させておくことができるが、これはあくまでも自動方向調整操作に意識的に注目するオペレータ向けのためのものであって、この時点でオペレータへの強制的な操作や確認を求めるものではない。
【0110】
また、図20に示されように、特にアンテナ角度については最終的な方向調整が終了した段階では、例えば、送信方向614、または、アンテナ角度線を表示させておくことが有用である。また、もし受信した伝送信号、または伝送パラメータ内、または伝送情報テーブル81の特定した伝送路情報内に位置情報、角度情報あるいは、予想される入力レベル等が存在すれば、その情報と受信したアンテナの現在角度、または現入力レベルを比較し妥当な方向、値にあることを確認することは非常に有効であり、またそこで異なる方向、明らかに低い入力レベルとなっているのであれば、自動的に再探索をおこなったり、あるいは、アラームを発信、またはログとして記録することとしてよい。
【0111】
また、そもそも伝送情報テーブル81の伝送情報からその伝送の伝送パラメータに該当する伝送路が特定できない場合は、これらの操作端末上の表示をおこなわず同様に自動再探索をおこなう、またはアラームを発信、またはログとして記録することとしてもよい。
【0112】
さらに、図20に示されるように、オペレータに通知するために、この伝送路確立時点では操作端末2310に伝送が確立した旨のメッセージ615を表示する(S318)。メッセージ615のように、複数の回転アンテナが存在する場合や、各々の固定アンテナ・回転アンテナを区別したい場合などのため、現在どの受信部で受信しているかを明示するとよい。これは、たとえば複数伝送路の同時受信時において、どのアンテナおよび受信機が使用中であるかを容易に認識することに有効である。この通知は、図19に示したアンテナ方向調整中の伝送情報の表示とは異なり、例えば、音で通知したり、通常と異なる色・文字で表示したりするなどオペレータへ明示的に通知する。これにより、それまでの確立した伝送路状態の確認、及び次遷移で必要となる伝送準備などのオペレータ操作についてフォローすることができる。
【0113】
以上のように、本実施形態の方向調整のユーザインタフェースによれば、送信側の送信開始後、オペレータが意識的に端末に注視しなければならなくなるのは、伝送路が機械的に確立された後の伝送路状態確認作業のみになることが分かる。
【0114】
このように、本実施形態では、以上のようなアンテナの方向調整作業を含む伝送路確立時において、送信開始から端末に注視しなければならなかった従来の方法に比べ、必要なタスクを最終的な伝送路状態の確認のみとし、オペレータ側の負担を格段に軽減するものである。
【符号の説明】
【0115】
11…送信点A、111…送信部、112…アンテナ、
12…基地局、121…アンテナ装置、122…受信部、123…送信部、124…被制御端局、125…変復調部、126…固定アンテナ、
13…放送局、131…固定アンテナ、132…受信部、135…復号部、133…回転受信アンテナ装置、134…受信部、135…復号部、136…情報生成部、137…情報編集部、138…変復調部、139…被制御端局、1310…操作端末、
14…送信点B、141…送信部、142…アンテナ、
21…送信点A、211…送信部、212…アンテナ、
22…基地局、221…アンテナ装置、222…受信部、223…送信部、224…被制御端局、225…変復調部、226,227,229,2211,2214…固定アンテナ、228,2210,2212,2215…固定アンテナ、
23…放送局、231…固定アンテナ、232…受信部、233…回転受信アンテナ装置、234…受信部、235…復号部、236…情報生成部、237…情報編集部、238…変復調部、239…被制御端局、2310…操作端末、
24…送信点B、241…送信部、242…アンテナ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送システムに係り、無線伝送を用いた遠隔制御監視システムであって、回転受信アンテナの方向調整を迅速におこない、オペレータの操作性に優れる伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
報道、スポーツイベントの中継などで、テレビジョン放送用の無線中継伝送装置であるFPU(Field Pickup Unit)から、基地局を介して、テレビジョン放送局に放送用の映像を伝送する遠隔制御システムが知られている。
【0003】
以下、図21を用いて、従来技術に係る遠隔制御監視システムの例として、マイクロ受信基地局システムを説明する。
図21は、従来技術に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【0004】
このマイクロ受信基地局システムは、FPUから映像、音声をマイクロ波により送信し、それを基地局で受信して、変調をおこなった後、放送局に送信するシステムである。
【0005】
以下、説明する従来技術のマイクロ受信基地局システムの動作例としては、送信点A11および送信点B14から放送局13へ映像・音声素材を伝送する場合を考える。放送局から遠距離にある送信点A11からの映像・音声素材は、基地局12を介して放送局13へ無線伝送される。ここで、送信点A11や送信点B14は、実際には、無線中継伝送装置であるFPUである。
【0006】
先ず、送信点A11にある送信部111は、映像・音声素材を無線伝送可能なマイクロ波信号に変換しアンテナ112から電波を送信する。この送信部111は、SDI(Serial Digital Interface)信号をFPUでの伝送に用いられる固定長のパケット形式のフレームフォーマットであるTS(Transport Stream)信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、マイクロ波帯へ周波数変換しアンテナへ伝送する機能を有する。送信された電波は、基地局12内の回転受信アンテナ装置121で受信され、受信部122に送られる。ここで、受信部122とは、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調し、SDI信号へ復号する機能を有する。ただし、基地局内の受信部122においては、最小限、信号劣化のないTS信号へ変換するまでの機能があればよい。TS信号は、送信部123へ送られ、固定アンテナ126から電波で送信される。また、受信部122と同様、基地局内の送信部123は、最小限、TS信号をマイクロ波帯へ変換する機能があればよい。基地局12から送信された電波は、放送局13の固定アンテナ131で受信され、受信部132、復号部135によってSDI信号へ復号され、本線へ送られる。
【0007】
また、放送局13から近距離にある送信点B14からの映像・音声素材は、送信部141を通り、アンテナ142から送信され、基地局を介することなく、直接、放送局13の回転受信アンテナ装置133で受信され、受信部134、復号部135によって復号され本線へ送られる。
【0008】
このシステムを用いた無線伝送では、基地局12において送信点からの電波を如何に効率よく受信できるかが重要となってくる。すなわち、送信点の位置によって、基地局12内の回転受信アンテナ装置121は、方向を変えられねばならない。そのため、マイクロ受信基地局システムでは、回転受信アンテナ装置121は、放送局13からの遠隔制御により回転が可能な回転架台となっている。
【0009】
その制御監視方法は、以下の通りである。放送局13内、操作端末1310よりネットワークに送信された制御パケットは、制御端局139で受信され、シリアル信号に変換される。ここで、ネットワークに複数の操作端末、複数の制御端局をつなげ、それぞれの機器IDによって送信・受信相手を特定し送受信が可能であることはもとよりである。シリアル信号は、さらに変復調部138において、例えば、アナログ信号に変調され、基地局12へ向けて送信される。送信されたアナログ信号は、基地局12内の変復調部125で受信され、シリアル信号に復調後、被制御端局124へ送信される。被制御端局124は、その制御信号を解読し、回転受信アンテナ装置121へ制御をおこなう。回転受信アンテナ装置121における角度などの監視情報は、監視信号として被制御端局124へ送られる。被制御端局124はその情報をシリアル信号として、変復調部125へ送信し、変復調部125は、例えば、アナログ信号に変調して、放送局13に向けて送信する。放送局内の変復調部138は、受信した信号をシリアル信号へ復調し、制御端局139へ送信する。制御端局139は、受信したシリアル信号を解読し、監視パケットをネットワークへ送信する。操作端末1310は、監視パケットを受信し、端末上に情報として表示する。
【0010】
以上のようにして、基地局12内の回転受信アンテナ装置121の制御監視が可能であるが、このマイクロ受信基地局システムでは、基地局に設置された受信部122や送信部123における受信・送信レベル、送受信チャンネル周波数帯、変調方式、送信出力、復号方式、また、例えば、信号切替器の接点選択、信号多重・分離装置の信号入力・出力選択などは、回転受信アンテナ装置121へのそれと同様、操作端末1310、制御端局139、被制御端局124への一連の信号伝達によって制御監視可能である。また、送信点B14からの映像・音声素材を伝送するときのように放送局に直接送信する場合は、操作端末1310、制御端局139という信号伝達経路を用いて、放送局13に存在する回転受信アンテナ装置133や受信部134などの装置に対し制御監視が可能である。
【0011】
また、このシステムでは、受信アンテナの方向調整をおこなうためのより詳細な情報の提供として、受信部122,134における受信周波数や変調方式などの伝送パラメータを含むTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信レベル、余裕度(Margin Degree)、BER(Bit Error Rate)、MER(Modulation Error Ratio)、遅延プロファイル、コンスタレーションなどの支援データを、TS信号に重畳させて放送局へ伝送し、情報生成部136によって分離し、情報編集部137によって編集し、操作端末1310上に表示させる方法がある。
【0012】
特許文献1には、素材用のパラボナアンテナとは、別に、複数の電界強度測定用アンテナを設け、電界強度測定用アンテナの電界強度情報により、回転台を回転させるFPU受信基地局が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−77025号公報
【特許文献2】特開2003−309536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これら基地局無線伝送では、用途に応じて上記の回転受信アンテナ装置や基地間伝送用固定アンテナのような指向性の高いアンテナから、近隣広範囲から固定アンテナで送受信をおこなう指向性の広いアンテナまで様々なアンテナが用いられる。一般に指向性の高いアンテナは狭域(角度)で長距離・高利得、指向性の広いアンテナは広域(角度)で短距離・低利得という特徴がある。
【0015】
例えば、上述のマイクロ受信基地局システムでは、指向性の高いパラボラアンテナを用いることが多い。それは、基地局を山頂やビルの屋上などに設置し、地域周辺の多くのポイントから距離を問わず見通し位置(受信可能)となるよう受信設計されている面や、遠距離となりやすい基地局間に信頼性の高い固定伝送路を作れるよう回線設計を行っている面が関係している。
【0016】
しかし、今日のアンテナ技術向上により、広域の指向性をもち、かつ利得を得ることができるアンテナが開発されてきており、マイクロ受信基地局システムなどのような高い利得を必要とする伝送路にも用途が広がっている。ただし、それでもパラボラアンテナを代表とする高利得アンテナに比べれば、その利得差は当然大きい。
【0017】
したがって、マイクロ受信基地局システムでFPUなどの移動体からの映像・音声素材を受信するアンテナ装置としては、パラボナアンテナの回転受信アンテナ装置が主力である。回転受信アンテナ装置は、指向性は狭いが、アンテナを回転することにより、最も適切な位置に調整しうるし、利得も高いからである。また、広指向固定アンテナにより、全範囲を伝送可能とするために過剰な数のアンテナが必要なコスト的課題が発生するからである。しかしながら、オペレータが端末から操作をして回転受信アンテナ装置の位置の調整しないときには、回転受信アンテナ装置は、位置の自動調整のために、多大の時間を要するという問題点があった。また、放送局では、オペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでに、送信開始から端末を注視していなければならず、多大の労力がかかっていた。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、基地局または放送局における回転受信アンテナ装置により、移動体との伝送路を確立する場合に、低コストで伝送路の確立の時間を短縮しうる伝送システムを提供することにある。
【0019】
また、放送局での、オペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでの労力を軽減しうる伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の伝送システムは、主にマイクロ波帯より移動する送信点からの映像・音声素材を基地局を介して放送局に伝送するシステムである。
【0021】
基地局は、移動する送信点の方向に旋回させる回転受信アンテナを備えており、さらに、複数の指向性の広い固定受信アンテナを備えている。固定受信アンテナの入力レベルから減衰量の差によって、移動体の受信角度を推定して、回転受信アンテナを推定された角度に向けるようにする。
【0022】
また、回転受信アンテナで、周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなうようにする。このとき、送信方向検出を、例えば、一定時間ごとにおこない、送信点を自動追尾するようにしてもよい、
また、基地局に複数の回転受信アンテナ装置を設置してもよい。
【0023】
さらに、伝送情報から送信元を識別し、放送局での端末上に、送信元とその伝送情報を表示させるようする。
【0024】
このように、本発明は、従来の回転受信アンテナ装置に加え、基地局に指向性の広い固定受信アンテナにより受信する設備を具備し、現状の回転受信アンテナ制御に内在する伝送路確立までの時間的ロスを改善させ、かつ操作性を向上させる新たな制御方法を備えた伝送システムを提供する。
【0025】
したがって、本発明は、指向性の広い固定アンテナでその受信範囲を瞬時に伝送可能とする点と、回転受信アンテナ装置で任意の角度を伝送可能とする点について、両アンテナを用いる手法の利便性を保持している。そしてかつ、広指向固定アンテナを用いて全範囲を伝送可能とするために過剰な数のアンテナが必要なコスト的課題、および回転受信アンテナ装置を用いてオペレータの送信点入力なしに伝送路を確立するために全範囲の自動微調整をおこない多大な時間を浪費してしまうという時間的課題を解決することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、送信側の電波送出から受信側での受信可能状態までの遷移にて、送信情報提供と受信通知の自動遷移を可能とし、オペレータへの負担をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、その目的は、基地局または放送局における回転受信アンテナ装置により、移動体との伝送路を確立する場合に、低コストで伝送路の確立の時間を短縮しうる伝送システムを提供することにある。
【0028】
また、本発明によれば、放送局でのオペレータが移動体とアンテナ装置の伝送路を確立するまでの労力を軽減しうる伝送システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【図2】回転受信アンテナ装置211の制御について説明する図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【図4】基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
【図5】アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである(その一)。
【図6】アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである(その二)。
【図7】固定アンテナの様子を示す模式図である(その一)。
【図8】固定アンテナの様子を示す模式図である(その二)。
【図9】固定アンテナの様子を示す模式図である(その三)。
【図10】固定アンテナの様子を示す模式図である(その四)。
【図11】送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
【図12】各アンテナ毎の送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
【図13】各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルである。
【図14】本発明の第二の実施形態に係る基地局22のアンテナに関わる部分のみ示した図である。
【図15】本発明の第二の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示したフローチャートである。
【図16】本発明の第三の実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【図17】本発明の第四の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【図18】伝送情報テーブルの一例を示す図である。
【図19】操作端末に表示される送信情報の表示例を示す図である。
【図20】操作端末に表示される伝送路を確立したときの表示例を示す図である。
【図21】従来技術に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図19を用いて説明する。
【0031】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図1ないし図13を用いて説明する。
【0032】
先ず、図1および図2を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの構成図である。
図2は、回転受信アンテナ装置211の制御について説明する図である。
【0033】
本実施形態のマイクロ受信基地局システムの本社の構成は、従来技術と同様である。また、図1に示される送信点は、送信点21のみであるが、従来技術の図21のシステムのように、本社に直接、映像・音声素材を伝送する送信点があってもよい。
【0034】
基地局22は、図21に示したマイクロ受信基地局システムにおける基地局12を拡張した系統を有する。各部は、それぞれ回転受信アンテナ装置221(図21に示した従来技術に係るシステムの121に対応)、受信部222(122に対応)、送信部223(123に対応)、被制御端局224(124に対応)、変復調部225(125に対応)、固定アンテナ226(126に対応)であり、本実施形態の基地局では、固定アンテナ227,229,2211,2214、固定受信部228,2210,2212,2215および信号選択部2213が加わっている。
【0035】
固定アンテナ227,229,2211,2214は、後に、説明するように送信点を特定するために電波を受信するアンテナである。固定受信部228,2210,2212は、固定アンテナ227,229,2211,2214を監視し、電波を信号として受け取る部分である。信号選択部2213は、受信部222および固定受信部228,2210,2212,2215からの複数の入力から、所望の信号を選択し送信部へ出力するための機能を有する。
【0036】
次に、図2を用いて回転受信アンテナ装置221の制御について説明する。
【0037】
回転受信アンテナ装置221は、図2に示されように、被制御端局224に制御・監視ケーブルで接続されている。そして、アンテナの回転方向は、パラメタ例1のように、被制御端局224からの水平制御電圧、垂直制御電圧で制御する。また、回転受信アンテナ装置221は、回転アンテナ部の水平角度、垂直角度を被制御端局224に送信する。また、アンテナの回転方向は、パラメタ例2のように、被制御端局224から、各種の接点を入力して制御するようにしてもよい。
【0038】
次に、図3を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理について説明する。
【0039】
図3は、本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
【0040】
ここで、図3(a)フローチャートが、本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示しており、図3(b)が、従来技術に係る回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示している。
【0041】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図3(a)に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S311)。
【0042】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S312)、回転アンテナの方向調整をおこなわずに処理を終了する。
【0043】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S312)、回転アンテナの方向制御をおこない(S313)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S314)。
【0044】
従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図3(b)に示されるように、送信点情報を入力する(S321)。
【0045】
そして、その入力情報に基づき、回転アンテナの方向制御をおこない(S323)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S323)。
【0046】
以上のように、従来技術に係るマイクロ受信基地局システムでは、固定アンテナによる受信手段を持たずに、オペレータ側からの明示的に、回転受信アンテナ装置221の方向を制御するための送信点情報の入力が必要であった。それは、例えば、図1に示した操作端末1310のリモコンアプリケーションにおける、アンテナ角度の入力、送信点位置の入力(地図上の指定、緯経度値の入力等)などが挙げられる。
【0047】
一方、本実施形態に係るマイクロ受信基地局システムでは、固定アンテナによる受信手段を有し、それらで送信点からの映像・音声素材を受信可能のときには、固定アンテナによる受信手段で、送信点から映像・音声素材を伝送させ、受信可能のときには、固定アンテナによる受信手段により得た情報に基づいて、回転受信アンテナ装置221の方向を制御するものである。
【0048】
次に、図4および図13を用いて本発明の第一の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムにおける回転受信アンテナ装置221の回転アンテナを方向調整する原理とその詳細について説明する。
図4は、基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
図5および図6は、アンテナの減衰パターン特性の一例を示すグラフである。
図7ないし図10は、固定アンテナの様子を示す模式図である。
図11は、送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
図12は、各アンテナ毎の送信角度と減衰値の対応テーブルの一例を示す図である。
図13は、各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルである。
【0049】
本実施形態は、固定アンテナで受信した電波の状況によって、送信点に向けての回転受信アンテナ装置221の回転アンテナを方向調整するためのパラメタを得るものである。すなわち、固定アンテナの入力信号により、送信点の位置を推定するものである。
【0050】
一般に、アンテナの減衰パターンには、図5の実データグラフ41として提示される。この図では、アンテナ方向を0度とする角度方向線411と、その角度からの入力に対する受信レベル412が円中心との距離によって示されている。
【0051】
この図5の例は、比較的広い指向特性を持つアンテナのものであり、送信角度411と、曲線との交点における受信レベル412により、減衰値を読み取ることができる。そして、このデータにより、アンテナ方向からの角度ズレによってどの程度の減衰があるかを知ることができ、例えば、単位角度ズレごとに減衰量を読み取りデータベース化することが可能である。本発明では、設置される複数の固定アンテナの方向を予め測定しておくことにより、任意の方向からの減衰量が個々のアンテナごとに推定可能となる。ここで、例えば、予め任意の角度に対する各アンテナの減衰量の差を求めておく。これにより、実際に電波を受信した際、固定受信の入力レベルを監視し各々の差を求めることで、オペレータからの明示的な入力を必要とせず、その送信点に近い方向を導き出し、入力角度を推定することが可能になる。
【0052】
以下、具体的に、送信点の入力角度を推定する手法について説明する。
【0053】
先ず、図4は、基地局22のアンテナに関わる部分のみ再掲した図である。
この図4では、その他の構成部分は省略して、それぞれ、回転受信アンテナ装置221、固定アンテナ227,2214,2211,229、各固定アンテナを利用し無線伝送可能な範囲227r,2214r,2211r,229rを示している。ここで、図7ないし図9以降では、固定アンテナ227,2214,2211,229を、それぞれ、アンテナ(1)、アンテナ(2)、アンテナ(3)、アンテナ(4)と表記する。
【0054】
このアンテナ(1)〜(4)は、広い指向性を持つアンテナとして、各アンテナは、図7に示されるように、矢印の方向を向いているものとする。アンテナの角度については、図8に示されるように、アンテナ(1)のアンテナ角度を、0(すなわち、アンテナ(1)の向いてる方向を基準線にとる)、アンテナ(2)のアンテナ角度を、+θ2、アンテナ(3)のアンテナ角度を、+θ4とする。これらは、基地局22のアンテナの設置に関するものであり、既知の角度である。
【0055】
例えば、送信角度が、40度であるとき、図6に示されるように、グラフと曲線の交点の減衰値を読み取って、5dBと読める。このようにして、各角度の減衰値を読み取って、図10に示されるように、送信角度と減衰値の対応テーブルを作る。図では、20度毎になっているが、実際上、必要ならもっと細かく中間角度の減衰値も計算する。
【0056】
このようなテーブルをアンテナ毎に作っていく。アンテナ毎に、角度と減衰値のペアを作っていけばよいので、各アンテナの仕様が同じである必要はない。すなわち、基地局22の固定アンテナとして、アンテナ減衰パターンの異なるアンテナを共存させてもよい。このときは、登録される減衰量の差に、予め各固定アンテナのアンテナ利得を加算しておけばよい。
【0057】
さらに、例えば、アンテナ(2)に対する送信角度は、以下の(式1)で与えられる。
【0058】
(2)に対する送信角度=(1)に対する送信角度−(2)のアンテナ角度
=(1)に対する送信角度−(+θ2) …(式1)
このようにして、アンテナ(1)に対する送信角度に基づいて、各アンテナ(2)〜(4)の減衰値を得ることができ、図11に示されるテーブルを得ることができる。
【0059】
次に、アンテナ(1)とアンテナ(2)の減衰値の差、アンテナ(1)とアンテナ(3)の減衰値の差、…というように、それぞれのアンテナの減衰値の差分を算出しておく。これにより、図12に示したような各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルを得ることができる。この例のように、四つのアンテナが存在すると、差のデータは、一つの角度について6種類(四つから二つとる組合せの数)できる。
【0060】
さて、このような状況で、図9に示されるように、ある方向から送信電波が来たとする。各アンテナの入力レベルは、e1,e2,e3,e4と測定されたとする。今、目的は、図9に示されるψを推定することである。
【0061】
各アンテナの入力レベルは、以下の(式2)に示されるようになる。
【0062】
e1=送信出力−(1)までの自由空間損失−(1)までの減衰値
e2=送信出力−(2)までの自由空間損失−(2)までの減衰値 …(式2)
e3=送信出力−(3)までの自由空間損失−(3)までの減衰値
e4=送信出力−(4)までの自由空間損失−(4)までの減衰値
ここで、送信点と基地局は、十分距離があるため、各アンテナまでの自由空間損失は、全て等しいと近似する。この仮定のもとで、e1からe2を引くと、以下の(式3)を得る。
【0063】
e1−e2=送信出力−(1)までの減衰値−(2)までの減衰値 …(式3)
したがって、(式3)で算出された(e1−e2)と図12の各アンテナ毎のアンテナ減衰値の差分を示すテーブルのカラムの((1)までの減衰値−(2)までの減衰値)の中で、等しいか近いものを見出せれば、その角度が判明する。もちろん、複数の角度において、減衰値の差が同等であることが存在するが、複数のアンテナの組み合わせで、減衰値の差が一意に決まればよいので、この例のように四つのアンテナ(六つの組合せ)なら、実用上ほぼ確実に、送信点の角度を推定することができる。
【0064】
なお、減衰差が角度に対して複数存在すること問題の回避方法としては、予定している固定アンテナの設置角度差で、それらのアンテナの減衰パターンにおいて、ある送信角度の減衰量の差と等しくなる別の送信角度が存在するか否かを予め確認しておくことが挙げられる。
【0065】
以上の手法は、固定アンテナの信号入力レベルの差により、送信点の角度を推定するものであるが、この固定アンテナの減衰量の差を求める方法以外にも、他の手法としては、おおよその角度を導き出し、回転受信アンテナ装置221の自動微調整機能を用いてある程度広域の範囲をサーチすることを前提とした簡易的手法であれば、最も入力レベルの高い固定アンテナの方向、あるいは、最も高い入力レベルを示した二つの固定アンテナ間で、それらの2アンテナの減衰量の比によって求めた角度などに決定することも可能である。この簡易的手法によれば、従来手法を用いてオペレータの入力を不要とするために360度全範囲の微調整サーチを必要とするところを、例えば、複数方向に均等に角度分散し設置された固定アンテナがあれば、高々(360/固定アンテナ数)度の範囲の水平サーチで可能となる。また、一つの固定アンテナのみ設置する場合には、その固定アンテナへの一定レベル以上の入力時においてのみ、回転受信アンテナ装置をその一つの固定アンテナ方向へ制御するとしてもよいし、一定レベル以下の場合に固定アンテナ方向と180度逆の方向へ向けることとしてもよい。一般に、微調整サーチをおこなうにあたっては、各々の角度における正確な入力レベルデータが必要となるため、回転受信アンテナ装置の旋回速度は、1度/秒程度の低い速度でなければならない。もし従来技術に係る回転受信アンテナ装置において、全域(360度)自動微調整を試みる場合は、1度/秒の速度として水平微調整だけで少なくとも6分の時間を要する。これは、自動伝送路確立に要するために、多大の時間を要していると評価せざるを得ない。対して、本発明の送信点の角度の推定方法を用いれば、簡易的手法を用いたとしても所要時間を大幅に短縮可能である。もし、詳述したアンテナ減衰量の差分による指向特性データベースを用いた手法であれば、自動微調整をおこなわずともほぼ正確な角度が得られることになる。これは、回転アンテナを送信点に向けるためのオペレータ側への作業を全く不要とし伝送路確立を実現可能とするものであり、非常に効果的である。
【0066】
さらに、図3(a)のフローチャートにおけるS312で示されるように、そもそも固定アンテナからの信号入力レベルが、送信点からの無線伝送可能性の面で許容できるものであれば、回転受信アンテナ装置221を用いる必要はない。もちろん、固定アンテナが指向性が広いものを用いたときには、指向性の広さを得たための利得が低下することがあるため、送信点からの映像・音声素材を伝送できない場合もありうる。そのような固定アンテナ方向の周辺角度領域において高指向性をもつ回転受信アンテナ装置221でしか伝送できない遠距離からの送信については、回転受信アンテナ装置を用いた広範囲の自動微調整検出も必要となる場合がある。しかしながら、そのような固定アンテナの実伝送利用機会を考慮すれば、全体の時間的ロスは画期的に改善されると言ってよい。
【0067】
そして、さらなる拡張を検討すれば、この手法は送信が移動体である場合における受信の自動追尾にも応用可能であることが推測される。すなわち、固定アンテナによる送信方向検出を、例えば、一秒間隔のような一定期間ごとにおこなうことによって、固定アンテナで伝送可能な範囲、あるいは、指向特性から得られる減衰量によって送信方向が推定可能な範囲であれば、固定アンテナおよび回転受信アンテナ装置の自動制御により送信点の自動追尾が可能となるということである。よって、本発明は、従来手法におけるアンテナ制御方法について、送信点情報を取得する方法を自動化し、さらに、その後の回転受信アンテナ制御におけるほぼ全ての方式に対応し、かつ各方式への効率化要素を含んでいると言える。これらの実現例は、図1における基地局に設置される回転受信アンテナ装置221以外に、放送局内に設置される回転受信アンテナ装置233を利用した系統にも、そのまま転用可能である。
【0068】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る第二の実施形態を、図14および図15を用いて説明する。
図14は、本発明の第二の実施形態に係る基地局22のアンテナに関わる部分のみ示した図である。
図15は、本発明の第二の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示したフローチャートである。
【0069】
第一の実施形態では、基地局22における回転受信アンテナ装置221は、一つであったが、本実施形態では、基地局に複数の回転受信アンテナ装置を設置した例である。
【0070】
本実施形態では、図14に示されるように、基地局22における回転受信アンテナ装置221a,221bが設置されている。
【0071】
このようにすれば、回転受信アンテナ装置221a,221bの各々で、各回転受信アンテナ装置の旋回範囲を分担することで、目標角度への初期制御における時間コストを最大(1/台数)に軽減できる点で有用である。これは、複数の回転受信アンテナ装置を等角度間隔に設置することで、1回転装置の担当範囲を台数分、分割できるということである。また、全ての回転受信アンテナ装置を同方向に制御した後、自動微調整の範囲を分割するという制御方法も考えられる。これは、上記で説明したような簡易的手法を用いたときのような自動微調整範囲が広域となる場合に、回転受信アンテナ装置の旋回速度が最も低速となってしまう自動微調整段階において、所要時間を台数分に分割できるという点で特に有効と考えられる。ここで、第一の実施形態で説明したアンテナ減衰パターンから複数の固定アンテナの減衰量の差を求め送信方向を推定する方法を用いたときの問題点であった複数の候補角度が存在してしまう場合においては、各回転受信アンテナ装置を別々の候補角度へ旋回させ、両候補角度への初期制御および自動微調整を同時におこなうことが有効である。
【0072】
他にも、回転受信アンテナ装置の複数台設置には複数周波数受信対応という効果的利点が含まれる。
【0073】
以下、図15を用いてこのときの回転受信アンテナ装置221a,221bにおける方向調整の処理を説明する。
【0074】
一般に、送信点となるFPUなどのマイクロ送受信機には、複数の受信周波数チャンネルが備わっていることが多い。そこで、任意の周波数においてオペレータの明示的情報入力操作なく伝送路確立を実現する方法が求められる。
【0075】
本実施形態の図15における方向調整の処理は、そのような課題を解決するものである。
【0076】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221a,221bの方向調整の処理では、先ず、図15に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S611)。
【0077】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S612)、S616に行く。
【0078】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S612)、方向調整が必要なそれぞれの回転受信アンテナ装置が既に他伝送に使用中であるか、否かを調べ(S613)、使用中のときには、S616に行く。使用中でなければ、回転アンテナの方向制御をおこない(S614)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S615)。
【0079】
固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のとき、方向調整が必要なそれぞれの回転受信アンテナ装置が既に他伝送に使用中のとき、回転アンテナの自動微調整が終わったときに、一つつの周波数において伝送路が確立した後に他の周波数を検索し(S615)、他の周波数がなければ、処理を終了し、他の周波数があれば、固定受信部における受信周波数をその周波数に変更し(S617)、S611に戻る。
【0080】
基地局22に複数の回転受信アンテナ装置を設置して、図15に示した処理をおこなうことによって、複数周波数を用いた1基地局での同時伝送が可能となる。この場合は、当然、後の系統における放送局への送信手段は複数用意されていることが必要であるが、これは基地局間アンテナおよび送信部の数を増設することで可能である。
【0081】
〔実施形態3〕
以下、本発明に係る第三の実施形態を、図16を用いて説明する。
図16は、本発明の第三の実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【0082】
第一の実施形態の基地局22では、図1に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214の各々に対して、固定受信部228,2210,2212,2215が接続されていた。これに対して、本実施形態の基地局71は、図16に示されように、固定受信手段の監視手段である固定受信部を1つの固定受信部7111として、受信部を削減し、前段に切替部7110を設けた系統である。
【0083】
この場合、例えば、4固定アンテナからの受信信号は、切替部7110にて選択され、最も受信レベルの高い信号のみ固定受信部に伝えられる。このとき、切替部からは、どの固定アンテナからの信号が選択されているかが被制御端局7114を通じて伝えられる。本実施形態では、例えば、一つの周波数に対して受信する固定受信部を固定し、固定受信部の周波数変更を不要とする効果を得ることができる。これを拡張すれば、切替部から複数の固定受信部に接続し、切替部7110で受信した信号の周波数に応じて出力先の固定受信部を切り替えるという手法も考えられる。
【0084】
本実施形態のような基地局71の系統をとる場合、切替部7110にて選択されている固定アンテナの方向へ回転受信アンテナ装置を制御する制御方法が効果的である。これにより、回転受信アンテナ装置での自動微調整範囲を縮小することが可能となる。
【0085】
〔実施形態4〕
以下、本発明に係る第四の実施形態を、図17ないし図20を用いて説明する。
図17は、本発明の第四の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理と従来技術の回転受信アンテナ装置221の方向調整の方向調整の処理を対比して示したフローチャートである。
図18は、伝送情報テーブルの一例を示す図である。
図19は、操作端末に表示される送信情報の表示例を示す図である。
図20は、操作端末に表示される伝送路を確立したときの表示例を示す図である。
【0086】
上記実施形態では、複数の固定受信手段を設けることにより、従来回転受信アンテナ装置のみでおこなっていた方向調整操作の時間的ロスをなくし、操作性を向上させるものであった。本実施形態は、放送局におけるオペレータの操作介入を無くし、可能な部分を自動化させたいという需要に対応して、オペレータ側の負担をできるだけ軽減させ、自動化できる部分は自動化し、その確認作業のみに注力することで、人的効率化および少人数での有効活用という面で向上を図るものである。
【0087】
以下、図17を用いて本発明の第三の実施形態に係るマイクロ受信基地局システムの回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理について説明する。
【0088】
本実施形態の伝送システムは、第一の実施形態に示した図1と同じシステム構成をとるものとする。
【0089】
ここで、図17(a)フローチャートが、本実施形態の回転受信アンテナ装置221の基地局と放送局における方向調整の処理を示しており、図17(b)が、従来技術に係る回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理を示している。また、ここで、処理のボックス内に、◆を描いているのは、人手を要する処理であることを示している。
【0090】
本実施形態の回転受信アンテナ装置221の方向調整の処理では、先ず、図17(a)に示されるように、固定アンテナ227,229,2211,2214を介して、固定受信部228,2210,2212,2215からの入力を確認する(S311)。
【0091】
次に、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送可能のときには(S312)、回転アンテナの方向調整をおこなわずに処理を終了する。
【0092】
一方、固定アンテナと固定受信部より、映像・音声素材が伝送不可能のときには(S312)、回転アンテナの方向制御をおこない(S313)、その後の周辺角度で最も高い受信レベルを検出し角度調整するための自動微調整をおこなう(S314)。
【0093】
このS311〜S314は、第一の実施形態と同様である。
【0094】
本実施形態では、固定受信手段からの入力確認(S311)、途中の伝送可否判断(S312)、回転アンテナ方向制御(S313)および自動微調整(S314)の間について、各受信部にて入力信号の送信元・または伝送パラメータ情報認識のための受信監視(S316)をおこなう。
【0095】
これは、例えば、送信点から基地局への伝送方式が、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のような、入力レベルが低く映像信号が正常に再生できない環境下においても、一部の伝送パラメータ情報(例えば、TMCC)をエラー耐性の高い変調方式にて再生可能である場合に特に有効である。すなわち、アンテナの方向調整中のような受信が変動する場合において、一時的な受信による情報取得をより早く、またより高い確率で情報取得が可能とすることができる。
【0096】
このとき、放送局23の操作・表示手段である操作端末2310において、基地局より伝送された伝送データを表示する(S317、図19)。なお、この伝送データは、例えば、基地局内の各装置からの情報を得る被制御端局から変復調部、アナログ信号を通じて本社に伝送される信号に乗せてもよいし、受信部から送出されるTSストリーム中に多重し、本社にて分離し取得してもよい。
【0097】
そして、S314において最終的な自動微調整が完了した後、基地局から伝送路確立を通知し(S315)、これを放送局23の操作端末2310に伝送路確立のメッセージを表示する(S318、図20)。
【0098】
従来手法においては、送信点位置は、オペレータ側からの明示的な入力によるものだった。この入力は、例えば、操作端末1310,2310のリモコンアプリケーションにおけるアンテナ角度の入力、送信点位置の入力(地図上の指定、緯経度値の入力等)などが挙げられる。よって、オペレータは、送信点からの送信開始の時点から、該操作端末への送信点情報入力をおこない、また続くアンテナの方向調整段階においても入力送信点情報の正確性の確認を含めて受信部の入力レベルや受信試験映像、また、例えばデジタル伝送などにおいては、コンスタレーション、遅延プロファイル等に注視しなければならず、伝送路確立までに多大な時間を費やさねばならなかった。
【0099】
本実施形態の伝送システムでは、上記ように、オペレータの操作負担を大きく縮小させることができる。
【0100】
以下、図18ないし図19を用いて放送局の操作端末での伝送情報の表示について説明する。
【0101】
放送局の操作端末2319の表示画面には、電子地図511、基地局点512、伝送路情報513が表示されている。
【0102】
図19には、送信元名称として、「TX−A」が画面に表示されている。
【0103】
これには、操作端末2319には、図18に示される伝送情報テーブル81を保持しておき、伝送情報により、送信元名称を求めればよい。
【0104】
伝送情報テーブル81は、各送信元(または、伝送路)を示す送信元名称811と、送信機識別情報812、伝送パラメータ813、送信位置814の各フィールドからなる。この内で、送信元の送信位置は、GPSシステムにより取得することができる。また、例えば、図内の情報に加えて予想される入力レベル、また、予想されるアンテナの方向などを入れてもよい。
【0105】
操作端末は、基地局22から送られた伝送データに対し、この伝送情報テーブル81から送信元(伝送路)の候補を検索して、特定し、該当する送信元名称をえることができる。
【0106】
もし、伝送情報テーブル81内の送信位置814の位置情報が存在すれば、その位置情報に基づいて、電子地図511上の該当する位置に送信点として表示し、また、例えば送信点と基地局を結ぶ伝送路を表示してもよい。また、もし操作端末2310が伝送情報テーブル81を保持していない場合でも、伝送パラメータなど基地局内で取得した伝送データの一部を表示することが可能である。
【0107】
このときの伝送情報を用いた操作端末内における伝送路特定の鍵には、伝送情報テーブル81に示したもの以外にも、例えば、主データの変調方式や受信周波数などの伝送パラメータ、受信したアンテナの角度方向、または、伝送信号の伝送パラメータ内に挿入された送信機固有情報からその伝送路を特定する方法などが考えられる(この伝送パラメータ内に送信機固有情報を挿入する手法に関しては、特許文献2を参照)。
【0108】
この送信固有情報からの特定には、その送信元が自局のものであるか否かを確認することにも有用である。例えば、自局の送信識別情報一覧に該当しない送信には、無関係の送信であるとして方調操作を中止し、音などを用いてオペレータに明示的な警告をおこなうことも効果的である。
【0109】
また、同様の方法にて送信出力を挿入していれば、送信信号を受信した際のアンテナの角度情報、空中の自由空間損失、基地受信部までのアンテナロスなどを参考に、そのおおよその位置を予測し、電子地図上に表示することもできる。また、同様の方法にてGPSなどの位置情報が挿入されている場合には、操作端末に伝送情報テーブル81がなくとも位置情報をそのまま表示することもできる。このように、アンテナ方向調整の途中段階に伝送路情報を表示させておくことができるが、これはあくまでも自動方向調整操作に意識的に注目するオペレータ向けのためのものであって、この時点でオペレータへの強制的な操作や確認を求めるものではない。
【0110】
また、図20に示されように、特にアンテナ角度については最終的な方向調整が終了した段階では、例えば、送信方向614、または、アンテナ角度線を表示させておくことが有用である。また、もし受信した伝送信号、または伝送パラメータ内、または伝送情報テーブル81の特定した伝送路情報内に位置情報、角度情報あるいは、予想される入力レベル等が存在すれば、その情報と受信したアンテナの現在角度、または現入力レベルを比較し妥当な方向、値にあることを確認することは非常に有効であり、またそこで異なる方向、明らかに低い入力レベルとなっているのであれば、自動的に再探索をおこなったり、あるいは、アラームを発信、またはログとして記録することとしてよい。
【0111】
また、そもそも伝送情報テーブル81の伝送情報からその伝送の伝送パラメータに該当する伝送路が特定できない場合は、これらの操作端末上の表示をおこなわず同様に自動再探索をおこなう、またはアラームを発信、またはログとして記録することとしてもよい。
【0112】
さらに、図20に示されるように、オペレータに通知するために、この伝送路確立時点では操作端末2310に伝送が確立した旨のメッセージ615を表示する(S318)。メッセージ615のように、複数の回転アンテナが存在する場合や、各々の固定アンテナ・回転アンテナを区別したい場合などのため、現在どの受信部で受信しているかを明示するとよい。これは、たとえば複数伝送路の同時受信時において、どのアンテナおよび受信機が使用中であるかを容易に認識することに有効である。この通知は、図19に示したアンテナ方向調整中の伝送情報の表示とは異なり、例えば、音で通知したり、通常と異なる色・文字で表示したりするなどオペレータへ明示的に通知する。これにより、それまでの確立した伝送路状態の確認、及び次遷移で必要となる伝送準備などのオペレータ操作についてフォローすることができる。
【0113】
以上のように、本実施形態の方向調整のユーザインタフェースによれば、送信側の送信開始後、オペレータが意識的に端末に注視しなければならなくなるのは、伝送路が機械的に確立された後の伝送路状態確認作業のみになることが分かる。
【0114】
このように、本実施形態では、以上のようなアンテナの方向調整作業を含む伝送路確立時において、送信開始から端末に注視しなければならなかった従来の方法に比べ、必要なタスクを最終的な伝送路状態の確認のみとし、オペレータ側の負担を格段に軽減するものである。
【符号の説明】
【0115】
11…送信点A、111…送信部、112…アンテナ、
12…基地局、121…アンテナ装置、122…受信部、123…送信部、124…被制御端局、125…変復調部、126…固定アンテナ、
13…放送局、131…固定アンテナ、132…受信部、135…復号部、133…回転受信アンテナ装置、134…受信部、135…復号部、136…情報生成部、137…情報編集部、138…変復調部、139…被制御端局、1310…操作端末、
14…送信点B、141…送信部、142…アンテナ、
21…送信点A、211…送信部、212…アンテナ、
22…基地局、221…アンテナ装置、222…受信部、223…送信部、224…被制御端局、225…変復調部、226,227,229,2211,2214…固定アンテナ、228,2210,2212,2215…固定アンテナ、
23…放送局、231…固定アンテナ、232…受信部、233…回転受信アンテナ装置、234…受信部、235…復号部、236…情報生成部、237…情報編集部、238…変復調部、239…被制御端局、2310…操作端末、
24…送信点B、241…送信部、242…アンテナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する送信点からの電波を受信する伝送システムにおいて、
回転アンテナと、
前記回転アンテナを制御する回転アンテナ制御手段と、
一つ以上の固定アンテナと
前記固定アンテナの入力を監視する固定受信手段とを有し、
前記回転アンテナ制御手段は、前記固定受信手段に入力されたデータに基づいて、前記送信点から送信位置方向を求めて、前記回転アンテナを旋回させて前記送信位置方向の角度に向くように制御することを特徴とする伝送システム。
【請求項1】
移動する送信点からの電波を受信する伝送システムにおいて、
回転アンテナと、
前記回転アンテナを制御する回転アンテナ制御手段と、
一つ以上の固定アンテナと
前記固定アンテナの入力を監視する固定受信手段とを有し、
前記回転アンテナ制御手段は、前記固定受信手段に入力されたデータに基づいて、前記送信点から送信位置方向を求めて、前記回転アンテナを旋回させて前記送信位置方向の角度に向くように制御することを特徴とする伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−188280(P2011−188280A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51875(P2010−51875)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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