説明

伸び測定システムおよび方法

【課題】衝撃破壊のような高速引張試験に対応可能で、試験片の材料の種類や形状にも制約を受けることなく、比較的簡便に標点間の長さの変化を測定可能な非接触式の伸び測定システムを提供する。
【解決手段】伸び測定システム100は、引張試験用の試験片10の引張軸上の二つの標点位置にレーザ光を反射または散乱させる二個の微小突起物13,14を個々に配置する。レーザ変位計33,34で二個の微小突起物13,14の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定する。測定された各々の変位から伸び算出部で標点間の長さを算出することで試験片10の伸びを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の伸びを測定する伸び測定システムに関し、特に、非接触に試験片の伸びを測定する伸び測定システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、材料の引張挙動を調べる引張試験において、試験片の伸びを正確に測定するために、伸び計と呼ばれる測定機が広く使われている。伸び計は、試験片上の二つの基準点(標点)間の長さの変化を測定するものであり、一般的に、接触式と非接触式の二種類に大別される。
【0003】
接触式の伸び計では、試験片上の二つの標点に測定用の端子を機械的に接触させて固定し、端子間に装着された歪みゲージ等の変位センサによって、標点間の長さの変化が測定される。
【0004】
試験片が金属材料の場合には、本手法は比較的精度も高く一般的に広く使われるが、材料が樹脂の場合や試験片の厚さが薄い場合には、接触式の伸び計では試験片への影響が大きい。
【0005】
このため、端子の接触部における早期破壊や、伸び計自体の重量による試験片の変形、あるいは、伸び計の作動力によって試験片の見かけの剛性が増大するなど、試験結果に様々な悪影響が生じやすい。さらに、試験片に衝撃的な引張負荷を与える高速引張試験では、試験片の破断まで一気に負荷が与えられるため、伸び計も同時に破壊されてしまうという問題が生じる。
【0006】
一方、非接触式の伸び計は、試験片上の二つの標点にマークを設け、これらの標点マークの変位を非接触式の手法、例えば、光学的な手法を用いて測定するものである。図2は、光学的な手法として広く使われている、ビデオカメラを用いたビデオ式伸び計である。
【0007】
この手法は、試験片上の二つの標点位置に設けられた標点マークをビデオカメラで撮像し、その撮像信号を画像処理することによって標点間の長さの変化を測定するものであり、比較的簡便で精度も高いとされる。
【0008】
非接触式の他の光学的な手法としては、レーザ光走査による透過型の寸法測定器(レーザ測長機)を用いたものが提案されている(特許文献1)。この手法では、レーザ光はレーザ発振機から、測定部に向かってライン状に照射され、さらに、別に設けられた検出器にて受光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−89950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、一般的に標点マークは、試験片の表面にインク等により設けられるが、試験片が樹脂材料のような伸びる材料の場合には、試験片の変形とともにインクによるマークも伸びてしまい、測定精度が低下するという問題がある。
【0011】
また、標点マークとして、何らかのパターンを付したフィルム等を接着剤で貼り付けて固定する方法があるが、試験片が樹脂材料や厚さが薄い場合には、接着剤による影響で早期破壊が生じるという問題がある。
【0012】
さらに、高速引張試験のような高速挙動を捕らえるためには、一般的なビデオ式伸び計では対応できず、非常に高価な高速ビデオカメラが複数台必要になり、処理も複雑になるという問題がある。
【0013】
また、特許文献1の手法を用いれば比較的速い試験スピードに対応できるが、レーザ光はライン状に走査する必要があるため高速化には限界があり、衝撃破壊に対応するような非常に高速な引張試験(試験スピード:数m/秒)には対応できない。
【0014】
さらに、この手法による歪み計測装置は、固定部と測定部とを備えた非常に大きな測定治具からなるため、衝撃破壊のような高速挙動には追従できず、高速引張試験には適さない。
【0015】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、衝撃破壊のような高速引張試験に対応可能で、試験片の材料の種類や形状にも制約を受けることなく、比較的簡便に標点間の長さの変化を測定可能な非接触式の伸び測定システムおよび方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の伸び測定システムは、引張試験用の試験片の引張軸上の二つの標点位置に個々に配置されてレーザ光を反射または散乱させる二個の突起物と、二個の突起物の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定するレーザ変位計と、測定された各々の変位から標点間の長さを算出することで試験片の伸びを測定する伸び算出部と、を有する。
【0017】
本発明の伸び測定方法は、引張試験用の試験片の引張軸上の二つの標点位置にレーザ光を反射または散乱させる二個の突起物を個々に配置し、レーザ変位計で二個の突起物の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定し、測定された各々の変位から伸び算出部で標点間の長さを算出することで試験片の伸びを測定する。
【0018】
なお、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与された伸び測定システムおよび方法、コンピュータプログラムにより伸び測定システムおよび方法に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
【0019】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の伸び測定システムでは、引張試験用の試験片の引張軸上の二つの標点位置にレーザ光を反射または散乱させる二個の突起物を個々に配置する。レーザ変位計で二個の突起物の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定する。測定された各々の変位から伸び算出部で標点間の長さを算出することで試験片の伸びを測定する。このため、材料の引張試験における試験片の伸び測定において、衝撃破壊のような高速引張試験に対応可能で、試験片の材料の種類や形状にも制約を受けることなく、比較的簡便な方法および構成で、標点間の長さの変化を非接触で測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の伸び測定システムの構造を示す模式的な斜視図である。
【図2】現在の伸び測定システムの構造を示す模式的な斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の伸び測定システムの別の構造を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の伸び測定システムの別の構造を示す模式的な斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の伸び測定システムの別の構造を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の一形態を図1を参照して以下に説明する。図1は、本実施の形態の伸び測定システム100である。この伸び測定システム100は、図示するように、引張試験用の試験片10の引張軸上の二つの標点位置に個々に配置されてレーザ光を反射または散乱させる二個の微小突起物13,14と、二個の微小突起物13,14の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定するレーザ変位計33,34と、測定された各々の変位から標点間の長さを算出することで試験片10の伸びを測定する伸び算出部(図示せず)と、を有する。
【0023】
伸び算出部は、例えば、マイクロコンピュータからなり、二個のレーザ変位計33,34に接続されている。これらのレーザ変位計33,34は、試験片10の伸び方向と直角に交差する方向にレーザ光を照射する。
【0024】
試験片10近傍に試験片10に接触することなく配置されている二個の鏡面部材51,52が、二つのレーザ光を伸び方向に曲折させて二個の微小突起物13,14に個々に入射させる。
【0025】
これら二個の鏡面部材51,52は、微小突起物13,14で反射または散乱されたレーザ光を伸び方向と略直角に交差する方向に反射してレーザ変位計33,34に入射させる。
【0026】
なお、二個の微小突起物13,14は、試験片10の伸び方向と直交する横幅または直径よりも小さく、レーザ変位計33,34のレーザ光のスポット径よりも大きい。通常は1〜3mm角程度が好ましい。
【0027】
また、二個の微小突起物13,14は、粘着性または半流動性の材料(図示せず)で試験片10に半固定されている。このため、装着された微小突起物13,14が試験片10の伸びに影響を与えることがない。
【0028】
微小突起物13,14は、試験中に試験片10から脱落しないように固定する必要があるが、接着剤等で完全に固定してしまうと、特に樹脂材料や厚さの薄い試験片の場合には、固定部分を起点とした早期破壊が生じる可能性が高くなる。
【0029】
このため、粘着性の材料や半流動性の材料によって、半固定されることが好ましい。半固定するための材料は、例えば、グリースや両面テープが用いられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。
【0030】
試験片10は、伸び方向である上下方向の両端で二個の試験片保持部である上/下つかみ部21,22により個々に保持されている。これら二個の上/下つかみ部21,22を試験片伸び発生機構(図示せず)が離間させて試験片10に伸びを発生させる。
【0031】
より詳細には、微小突起物13,14の変位を測定するためのレーザ変位計33,34は、衝撃破壊のような高速引張試験への適用のために、三角測距方式で高速応答性を備えたものが望ましく、50kHz以上のサンプリング速度を有するものが好ましい。
【0032】
レーザ変位計33,34は、試験片10の引張方向の軸に対して側面に配置され、レーザ光の光軸を曲げるための鏡面部材51,52とともに、それぞれ支持台41,42に固定して設置される。また、鏡面部材51,52は、試験片10に接触することなく、試験片10の近傍に配置されることが好ましい。
【0033】
レーザ変位計33,34によるレーザ光は、それぞれ、鏡面部材51,52に向かって照射され、鏡面部材51,52によって、試験片10の引張方向に光軸を曲げられ、微小突起物13,14において反射または散乱され、再度、鏡面部材51,52によって光軸を曲げられた後、レーザ変位計33,34の受光部にて受光され、三角測距方式により各点の変位が測定され、二点間の伸びが算出される。
【0034】
本実施の形態の伸び測定システム100では、上述のように引張試験用の試験片10の引張軸上の二つの標点位置にレーザ光を反射または散乱させる二個の微小突起物13,14を個々に配置する。
【0035】
レーザ変位計33,34で二個の微小突起物13,14の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定する。測定された各々の変位から伸び算出部で標点間の長さを算出することで試験片10の伸びを測定する。
【0036】
このため、材料の引張試験における試験片10の伸び測定において、衝撃破壊のような高速引張試験に対応可能で、試験片10の材料の種類や形状にも制約を受けることなく、比較的簡便な方法および構成で、標点間の長さの変化を非接触で測定することが可能になる。
【0037】
しかも、レーザ変位計33,34は、試験片10の伸び方向と交差する方向にレーザ光を照射し、二個の鏡面部材51,52が試験片10近傍に試験片10に接触することなく配置されて二つのレーザ光を伸び方向に曲折させて二個の微小突起物13,14に個々に入射させる。このため、鏡面部材51,52を試験片10に接触させる必要がなく、非接触に試験片10の伸びを正確に測定することができる。
【0038】
さらに、二個の鏡面部材51,52は、微小突起物13,14で反射または散乱されたレーザ光を伸び方向と交差する方向に反射してレーザ変位計33,34に入射させる。このため、微小突起物13,14で反射または散乱されたレーザ光をレーザ変位計33,34に入射させるために専用の鏡面部材を用意する必要がなく、その構造を簡単とすることができる。
【0039】
しかも、二個の微小突起物13,14が、試験片10の伸び方向と直交する横幅または直径よりも小さい。従って、必要最小限のサイズの微小突起物13,14で試験片10の伸びを測定することができる。
【0040】
さらに、二個の微小突起物13,14が、レーザ変位計33,34のレーザ光のスポット径よりも大きい。従って、レーザ光が微小突起物13,14から外部に露出して迷光となり、試験片10の伸びの測定のノイズとなることを防止できる。
【0041】
しかも、二個の微小突起物13,14を試験片10に粘着性または半流動性の材料で半固定する。このため、微小突起物13,14の装着が試験片10の伸びに影響することがない。
【0042】
[実施例]
次に、本発明の実施例を図1を用いて説明する。まず、試験片平行部の長さ33mm、幅6mm、厚さ1mm、標点間距離25mmの試験片をポリカーボネートで作製し、試験片10とした。
【0043】
次に、一辺が2mmのアルミニウム製の二個の立方体を微小突起物13、14として、試験片10の標点位置にグリースを用いて半固定し、この状態で、試験片10を引張試験機の上つかみ部21と下つかみ部22によってグリップし保持した。
【0044】
次に、レーザ変位計33,34を、鏡面部材51,52とともに、それぞれ支持台41,42に固定して、さらに全体を引張試験機に固定した。
【0045】
レーザ変位計33,34は、三角測距方式でサンプリング速度50kHzのものを使用し、レーザ光が、試験片10の引張方向の軸に対して垂直に照射されるように配置した。鏡面部材は、45度にカットされた部分が鏡面となっており、試験片10に接触しないように、0.5mmから1mm程度、離して配置した。
【0046】
レーザ変位計33,34のレーザ光は、鏡面部材によって試験片10の引張方向に光軸が90度曲げられた後、試験片上に配置された突起物に照射されるように調整を行い、さらに、突起物において反射または散乱されたレーザ光が、再度、鏡面部材にて光軸を曲げられた後、レーザ変位計33,34の受光部にて受光されるように調整した。
【0047】
引張試験は、試験片10をグリップしている下つかみ部22が固定された状態で、上つかみ部21を、図1の矢印の方向へ移動させることによって行われる。試験片10が伸びるにしたがって、微小突起物13,14も矢印の方向へ移動し、そのときの各変位量がレーザ変位計33,34において計測され、各変位量の差分より二点間の伸び量が算出される。
【0048】
この際、引張試験の引張速度を、0.02mm/秒の低速から、衝撃破壊に近い速度である2000mm/秒の広範囲で変化させて行ったところ、何れの速度においても、二点間の伸び量が安定して測定できていることがわかった。
【0049】
また、本試験において、微小突起物13,14を試験片10に両面テープで半固定した場合についても実施したところ、上記グリースを使用した場合と同様、何れの速度においても、二点間の伸び量が安定して測定できていることがわかった。
【0050】
さらに、同様の試験を、厚さ0.1mmのエポキシ樹脂フィルムと、試験片平行部が直径10mmの円柱状の鉛フリーはんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)で行い、何れの速度でも、安定した測定結果が得られることを確認した。
【0051】
次に、本発明の別の実施例を、図3から図5を用いて説明する。試験片10と微小突起物13,14は、上記図1を用いた実施例と同様、それぞれポリカーボネート製とアルミニウム製のものを使用し、レーザ変位計33,34、鏡面部材51,52も同様のものを使用した。
【0052】
図3の構成では、二個の微小突起物13、14の配置を、試験片10の同一面上ではなく、それぞれ反対側となるように配置し、レーザ変位計33、34、支持台41、42と鏡面部材51、52も同様にそれぞれ反対側になるように配置される。
【0053】
すなわち、微小突起物13、レーザ変位計33、支持台41と鏡面部材51に対して、微小突起物14、レーザ変位計34、支持台42と鏡面部材52は、試験片10を挟んで反対側に配置され、レーザ変位計33、34からのレーザ光は、試験片10に対して、それぞれ反対方向から照射される。
【0054】
このような構成を採用することにより、レーザ変位計や鏡面部材の大きさに制約されることなく、二個の微小突起物間の距離を短く設定することが可能となり、より標点間距離が短い試験に対応することが可能となる。
【0055】
なお、二個の微小突起物は試験片に対して必ずしも反対側にある必要はなく、例えば、微小突起物を配置する部分の試験片の形状が円柱状の場合には、引張軸の周りの円周方向に、ある角度を有して配置されていればよい。
【0056】
また、図4の構成では、図1を用いた実施例と同様、二個の微小突起物13、14は、試験片10の同一面上に配置されるが、レーザ変位計33,34と鏡面部材51,52は、共通の支持台41の上下に配置され、レーザ変位計33、34からのレーザ光は、鏡面部材を介して、それぞれ引張軸上の反対側に光軸を曲げられ、微小突起物13,14に照射される。
【0057】
この場合、二個のレーザ変位計と二個の鏡面部材の取り付け位置精度が向上し、より精度の高い試験結果を得ることが期待できる。ただし、試験片が、例えばエラストマー(ゴム材)のように非常に伸びる材料の場合には、微小突起物14が試験中に鏡面部材52と接触する可能性があるため、伸びの小さい材料、例えば、脆性材料の試験への適用がより望ましい。
【0058】
一方、図5は、図1を用いた実施例の配置に対して、レーザ変位計33、34、支持台41、42と鏡面部材51、52が、引張軸の周りの円周方向に90°回転した位置に配置された場合の構成を示したものである。
【0059】
本構成は、試験機周辺の設置状況の制約等で、レーザ変位計からのレーザ光の照射方向を変更したい場合に有効である。なお、図5では、90°回転させた場合の例を示したが、その角度に特に制約はなく、これによって限定されるものではない。
【0060】
まず、二個の微小突起物13,14を試験片10の所定の位置に、グリースまたは両面テープを用いて半固定し、この状態で試験片10を引張試験機の上つかみ部21と下つかみ部22によってグリップし保持した。
【0061】
所定の位置とは、すなわち、図3の構成の場合には、試験片10の二箇所の標点位置で、かつ、それぞれ試験片10の反対側の面となる位置であり、また図4、図5の構成の場合には、試験片10の同一面上の二箇所の標点位置である。
【0062】
次に、レーザ変位計33,34は、図3から図5に示すように、鏡面部材51、52とともに、それぞれ支持台41、または42に固定され、さらに全体を引張試験機に固定される。なお、図4の構成の場合には、レーザ変位計33,34と、鏡面部材51、52は、共通の支持台41の上下に固定される。
【0063】
レーザ変位計33、34は、レーザ光が、試験片10の引張軸に対して垂直に照射されるように配置され、鏡面部材51、52は、試験片10に接触しないように、0.5mmから1mm程度、離れて配置される。
【0064】
レーザ変位計33,34のレーザ光は、鏡面部材によって試験片10の引張方向に光軸が90度曲げられた後、試験片上に配置された突起物に照射されるように調整を行い、さらに、突起物において反射または散乱されたレーザ光が、再度、鏡面部材にて光軸を曲げられた後、レーザ変位計33,34の受光部にて受光されるように調整した。
【0065】
引張試験は、図1を用いた実施例と同様にして行った。この際、図3から図5のすべての構成に対して、引張試験の速度を、0.02mm/秒の低速から、衝撃破壊に近い速度である2000mm/秒の広範囲で変化させて行ったところ、何れの速度においても、二点間の伸び量が安定して測定できていることがわかった。
【0066】
また、この結果は、微小突起物13,14の半固定方法として、グリースを用いた場合と両面テープを用いた場合で同様であり、何れの速度においても、二点間の伸び量が安定して測定できていることがわかった。
【0067】
以上説明したように、本発明による伸び測定システムおよび方法を用いれば、材料の引張試験における試験片の伸び測定において、衝撃破壊のような高速引張試験に対応可能で、試験片の材料の種類や形状にも制約を受けることなく、比較的簡便な方法および構成で、標点間の長さの変化を非接触で測定することが可能になる。
【0068】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…試験片
11、12…標点マーク
13、14…突起物
21…上つかみ部
22…下つかみ部
31、32…ビデオカメラ
33、34…レーザ変位計
41、42…支持台
51、52…鏡面部材
100…伸び測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張試験用の試験片の引張軸上の二つの標点位置に個々に配置されてレーザ光を反射または散乱させる二個の突起物と、
二個の前記突起物の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定するレーザ変位計と、
測定された各々の変位から前記標点間の長さを算出することで前記試験片の伸びを測定する伸び算出部と、
を有する伸び測定システム。
【請求項2】
前記レーザ変位計は、前記試験片の伸び方向と交差する方向に前記レーザ光を照射し、
前記試験片近傍に試験片に接触することなく配置されて二つの前記レーザ光を前記伸び方向に曲折させて二個の前記突起物に個々に入射させる二個の鏡面部材を、さらに有する請求項1記載の伸び測定システム。
【請求項3】
二個の前記鏡面部材は、前記突起物で反射または散乱された前記レーザ光を前記伸び方向と交差する方向に反射して前記レーザ変位計に入射させる請求項2に記載の伸び測定システム。
【請求項4】
前記二個の突起物が、前記試験片の伸び方向と直交する横幅または直径よりも小さい請求項1ないし3の何れか一項に記載の伸び測定システム。
【請求項5】
前記二個の突起物が、前記レーザ変位計のレーザ光のスポット径よりも大きい請求項1ないし4の何れか一項に記載の伸び測定システム。
【請求項6】
前記二個の突起物を前記試験片に半固定する粘着性または半流動性の材料を、さらに有する請求項1ないし5の何れか一項に記載の伸び測定システム。
【請求項7】
前記試験片を伸び方向の両端で個々に保持する二個の試験片保持部と、
二個の前記試験片保持部を離間させて前記試験片の伸びを発生させる試験片伸び発生機構とを、
さらに有する請求項1ないし6の何れか一項に記載の伸び測定システム。
【請求項8】
引張試験用の試験片の引張軸上の二つの標点位置にレーザ光を反射または散乱させる二個の突起物を個々に配置し、
レーザ変位計で二個の前記突起物の各々に照射して反射または散乱されたレーザ光を受光して各々の変位を測定し、
測定された各々の変位から伸び算出部で前記標点間の長さを算出することで前記試験片の伸びを測定する、伸び測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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