説明

伸縮ブーム装置用給脂装置

【課題】例えば三段以上の伸縮ブーム装置であっても、各ブームの摺動板の摺動面に直接的な給脂が可能であり、しかも省スペースに配置し得る伸縮ブーム装置用給脂装置を提供する。
【解決手段】この給脂装置10は、基端ブーム2の外面に設けられるグリスニップル12と、各ブーム2,3,4の内面にその伸縮方向に沿って装着されるブロック20,30,40を有している。ブロック30,40には、ブーム3,4の伸縮方向に沿って形成された連結油路34,44と、この連結油路34,44に連通するとともに摺動板60の上面に開口する給脂油路32,42とが形成されている。また、隣り合うブロック20,30,40の一方には、蛇腹部54と、ブームの伸縮方向に沿って貫通する中継油路52とを有する中継継手50が付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームを備え、隣接するブーム間に摺動板を有する伸縮ブーム装置に係り、特に、この種の伸縮ブーム装置に用いられる給脂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトラック等の車両に架装される油圧クレーンには、基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームを有する伸縮ブーム装置が多く用いられている。この種の伸縮ブーム装置では、その複数のブームが多段の入れ子型をなしており、この複数のブームが伸縮機構の作動に応じて伸縮される。
ここで、この種の伸縮ブーム装置では、その複数のブームの伸縮を案内するために、隣接するブーム間に摺動板が設けられている。そして、この摺動板の摺動面に、定期的にグリス等の油脂を給脂することで、複数のブームの円滑な伸縮作動を行わせている。
【0003】
ところで、この摺動板への給脂作業は作業性の悪い工程である。つまり、摺動板の摺動面は、ブームを最伸長したときであっても伸縮ブーム装置の表側には露出しない。そのため、摺動面に直接給脂することはできないので、従来は、複数のブームを最伸長させた後に、中間ブームの上面にグリスを大量に塗布していた。これにより、このグリスが複数のブームの伸縮に伴ってブーム内壁面に付着し、その付着したグリスが摺動板の摺動面に更に付着することで間接的に摺動板に給脂がなされていた。しかし、このような給脂方法では、中間ブームの上面に塗布された大量のグリスのほとんどは無駄となり、また、摺動板の摺動面に直接的にグリスが塗布されるわけではないので、確実に良好な潤滑状態とする上でも改善の余地がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、この種の伸縮ブーム装置におけるグリスの給脂を容易かつ確実にするために、各ブームの上面にグリスニップルをそれぞれ設け、各グリスニップルの真下に向けて摺動板の摺動面にまで垂れ落ちるように貫通孔を形成している。特許文献1に記載の技術によれば、クレーン作業終了時にブームを格納状態とし、各グリスニップルからグリスを注入すれば各摺動板の摺動面への直接的な給脂が可能である。つまり、給脂作業のために複数のブームを伸長させずに給脂することができる。また、グリスの自然な落下を利用するため、単純な構造で済むという利点がある。
また、例えば特許文献2に記載の技術では、ブーム前面からブーム基端の内側(摺動板が取付けられるブーム裏面の位置)にかけて、各摺動板毎にグリス配管を配設している。そして、摺動板に形成した貫通孔を通して摺動板に給脂を行っている。この特許文献2に記載の技術は、中空のブーム内の空間を利用することにより、給脂油路の集中配管を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−17693号公報
【特許文献2】特許第4231618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、粘度の高いグリスでは、ブームが多段になればなるほど摺動板の上面にグリスが垂れ落ちるまでの時間が長くなる。また、ブーム段数分の複数のグリスニップルが必要となるなどの問題がある。また、各ブーム上面に設けられたグリスニップルは、地上から2m程度の高さとなる。そのため、トラックの荷台上からでも目視による位置確認が困難なので、作業性に改善の余地がある。また、ブームを起立させれば目視が容易になるものの、給脂構造がグリスの自然な落下を利用しているため、伸縮ブーム装置の起立姿勢では、給脂したグリスが意図したようには摺動板の上面に垂れ落ちなくなってしまうという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の技術では、二段式の伸縮ブーム装置であれば問題がないものの、三段以上の伸縮ブーム装置に採用する場合には、中空のブーム内の空間を利用することにより、給脂油路の集中配管を行っているので、各中間ブームに給脂するための給脂油路の集中配管が困難である。つまり、一般的に伸縮ブーム装置内の空間には、各ブームを伸縮させるためのシリンダやワイヤロープ、ブーム先端への電源供給線、各種の信号線が設けられているため、給脂構造の配管や付設のためのスペースを確保することが容易ではない。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、例えば三段以上の伸縮ブーム装置であっても、各ブームの摺動板の摺動面に直接的な給脂が可能であり、しかも省スペースに配置し得る伸縮ブーム装置用給脂装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームと、その複数のブームのうち隣接するブーム間に設けられた摺動板とを有する伸縮ブーム装置に用いられる給脂装置であって、基端側の基端ブームの外面に設けられる給脂口と、各ブームの内面にブームの伸縮方向に沿って装着される複数の給脂路形成部材と、隣り合う給脂路形成部材の一方の端面に付設される給脂路中継部材とを備え、前記給脂路形成部材は、ブームの伸縮方向に沿って且つ隣り合う給脂路形成部材と対向する位置に貫通形成された連結油路と、該連結油路に連通するとともに摺動板上面または前記給脂口に開口する給脂油路とを有し、前記給脂路中継部材は、これが付設される端面に開口する連結油路に連通する中継油路と、該中継油路を内部にもち隣り合う給脂路形成部材の当接に応じてブームの伸縮方向に沿って伸縮する伸縮部とを有し、前記複数のブームを最縮小した位置にあっては、前記給脂口、前記連結油路および給脂油路、並びに前記中継油路の全てが連通するようになっていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る伸縮ブーム装置用給脂装置によれば、複数のブームを最縮小したときに、基端側の基端ブームの外面に設けられる給脂口、連結油路および給脂油路、並びに中継油路の全てが連通するようになっているので、伸縮ブーム装置の起伏姿勢に拘わらず、伸縮ブーム装置を最縮小した姿勢であれば全ての摺動板の摺動面に対して給脂口から給脂することができる。つまり、上記特許文献2に記載の技術のような、給脂油路の集中配管等を行うことなく、基端ブーム外面の給脂口からグリスを注入するだけで、複数のブーム内部の全ての摺動板の各摺動面全体に亘って直接的な給脂をすることができる。したがって、給脂装置が省スペースな配置であっても、直接的な給脂が可能となる。
【0010】
また、伸縮ブーム装置の起伏姿勢に拘わらず、伸縮ブーム装置を最縮小した姿勢であれば、給脂口、連結油路および給脂油路、並びに中継油路の全てが連通しているので、例えば伸縮ブーム装置を起立させた状態として給脂口を目視容易な位置にしておき、この状態でグリスガンを基端ブームの給脂口に差し込むだけで、容易にグリスの補給も可能である。
【0011】
また、この給脂装置によれば、給脂路中継部材が、隣り合う給脂路形成部材の当接に応じて伸縮する伸縮部を有するので、ブームの伸縮方向に沿って対向配置された給脂路形成部材に対する当接状態を密着させることができる。そのため、伸縮ブーム装置を最縮小した状態での給脂時のグリスの漏れを抑制することができる。さらに、この伸縮部はブームの伸縮方向に沿って変形可能であり、内部が中継油路になっているので、これにより、給脂路中継部材の伸縮部がポンプ作用を奏することでグリスの供給を一層確実に行わせることができる。
【0012】
さらに、この給脂装置によれば、例えば各ブーム相互の嵌合誤差が生じており、これにより、各給脂路形成部材の連結油路中心と給脂路中継部材の中心との軸ずれが生じた場合であっても、給脂路中継部材の伸縮部が、これに対向配置された給脂路形成部材の当接に応じて伸縮可能なので、給脂路形成部材の表面および表面の角度に合わせて当接することができる。そのため、各ブームの嵌合誤差を吸収して確実な給脂路連通状態を確保することができる。
【0013】
また、この給脂装置によれば、給脂後に伸縮ブーム装置を伸長させた場合、給脂路形成部材と給脂路中継部材の伸縮部との給脂路が相互に離間したときに、給脂路中継部材の伸縮部が各ブームの伸縮方向に沿って伸長可能なので、その伸長された分の空間にグリスが入り込むことで、給脂油路の集中配管等を行うことなくとも、グリスの垂れ落ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明に係る伸縮ブーム装置用給脂装置によれば、例えば三段以上の伸縮ブーム装置であっても、各ブームの摺動板の摺動面に直接的な給脂が可能であり、しかも省スペースに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る伸縮ブーム装置用給脂装置を備える伸縮ブーム装置の一実施形態(第一実施形態)の正面図である。
【図2】図1のA部詳細図であり、同図では要部(A部)をブームの伸縮方向に沿った断面にて図示している。
【図3】第一実施形態の給脂装置の中継継手を説明する図であり、同図(a)はその正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は(b)でのB−B断面図である。
【図4】第一実施形態の給脂装置の動作を説明する図であり、同図では先端ブームが伸長した状態を図示している。
【図5】本発明に係る給脂装置の他の実施形態(第二実施形態)を説明する図であり、同図は図2に対応する図を図示している。
【図6】第二実施形態の中継継手を説明する図であり、同図(a)はその正面図、(b)は(a)でのC−C断面図である。
【図7】第二実施形態の給脂装置の動作を説明する図であり、同図では先端ブームが伸長した状態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る伸縮ブーム装置の一実施形態を説明する図である。なお、この伸縮ブーム装置1は、車両搭載型の油圧クレーンに用いられる例であり、同図は伸縮ブーム装置を全縮小した状態を示すとともに、給脂装置の部分については縦断面にて図示している。
【0017】
この伸縮ブーム装置1は、コラム5の上部に、起伏および伸縮自在に設けられ、同図に示すように、複数のブーム2,3,4を備えて構成されている。本実施形態は、三段の入れ子型をなす例であって、基端側(同図右側)のブームから順に、基端ブーム2、中間ブーム3および先端ブーム4が、順次摺動自在に嵌挿されている。そして、これら複数のブームのうち中間ブーム3および先端ブーム4が不図示の伸縮機構の作動に応じて伸縮されるようになっている。なお、コラム5にはウインチ6が装備され、このウインチ6から繰り出しおよび繰り込み可能にワイヤロープ7を導いてフック8に掛け回し、このフック8を伸縮ブーム装置1の先端から吊り下げている。
【0018】
ここで、この伸縮ブーム装置1には、隣接するブーム間の摺動面にグリスを供給するための給脂装置10が付設されている。以下、この給脂装置10について詳しく説明する。
この伸縮ブーム装置1には、図2に拡大図示するように、中間ブーム3および先端ブーム4の基端側の上面に、摺動板60が付設されている。各摺動板60は、複数のブーム3,4の伸縮方向に対してその前後が摺動板固定板66によって拘束されることで保持されている。そして、各摺動板60の上面は、その中央に凹の段部61が形成されることで、凹の段部61がグリス溜りとして機能するとともに、摺動板60前後の凸部が摺動面62になっている。これにより、各摺動板60前後の摺動面62は、これに対向するブーム2,3の内壁面に摺接することで各ブーム3,4の伸縮を円滑に案内している。
【0019】
ここで、この給脂装置10は、基端ブーム2の外面に、グリスニップル12が給脂口として設けられている。さらに、各ブームの内面には、給脂路形成部材として3つのブロック部材20,30,40が装着されている。
詳しくは、基端ブーム2の内面には、基端ブロック20が給脂路形成部材として装着されている。この基端ブロック20は、図2に示すように、グリスニップル12に連通する給脂油路22を有している。そして、この給脂油路22の先端側(グリスニップル12側とは反対の側であって同図において下側)がL字状に形成されて連結油路24になっている。この連結油路24は、複数のブーム2,3,4の伸縮方向(中間ブーム3側)に沿って伸びており、その先端が基端ブロック20側の端面に開口している。
【0020】
また、中間ブーム3の内面には中間ブロック30が給脂路形成部材として装着されている。さらに、先端ブーム4の内面には先端ブロック40が給脂路形成部材として装着されている。これら中間ブロック30および先端ブロック40は、基端ブロック20に対して複数のブーム3,4の伸縮方向に対向する位置に配置されている。
また、中間ブロック30には、連結油路34と、給脂油路32とがそれぞれ形成されている。連結油路34は、ブーム3,4の伸縮方向に沿って且つ隣り合うブロック20,40と対向する位置に貫通形成されている。また、給脂油路32は、上記連結油路34に連通するとともに中間ブーム3に固定された摺動板60の上面凹の段部61に開口している。
【0021】
同様に、先端ブロック40には、連結油路44と、給脂油路42とがそれぞれ形成されている。連結油路44は、ブーム3,4の伸縮方向に沿って形成されるとともに、隣り合うブロック30と対向する位置に貫通形成されている。また、給脂油路42は、この連結油路44に連通するとともに先端ブーム4に固定された摺動板60の上面凹の段部61に開口している。
【0022】
さらに、この給脂装置10は、基端ブロック20および中間ブロック30に、中継継手50がそれぞれ付設されている。この中継継手50は、中間ブロック30の連結油路34の出口、および基端ブロック20の連結油路24の出口に付設されている。各中継継手50は、ブーム3,4の伸縮方向に沿って貫通形成された中継油路52を内部に有している。
【0023】
詳しくは、図3に示すように、各中継継手50は、連結部56と、伸縮部としての蛇腹部54とを有している。連結部56は、外周面に雄ねじが形成されており、中間ブロック30の連結油路34の出口、および基端ブロック20の連結油路24の出口に形成された雌ねじに螺着可能になっている。また、この連結部56は、その中心に軸方向に貫通する貫通孔を有しており、この貫通孔が中継油路52になっている。
【0024】
一方、蛇腹部54は、対向配置された一対の蛇腹固定環58と、この一対の蛇腹固定環58に両端が固定された蛇腹本体59とから構成されている。蛇腹固定環58は円環状をなしており、中央の貫通孔が中継油路52になっている。また、蛇腹本体59はゴム等の弾性体からなり、軸方向に押圧力が作用していないときには、自身の弾性力により蛇腹全体が伸長状態となり、軸方向に押圧力を受けたときには、蛇腹形状により折りたたまれて縮小するようになっている。また、この蛇腹本体59は、押圧力が軸方向に対して偏倚していたり、斜めの方向に作用した場合には、その方向に応じて傾くことが可能である。
上記構成により、この給脂装置10は、図1に示すように、複数のブーム3,4を最縮小したときに、グリスニップル12、連結油路34および給脂油路42、並びに中継油路52の全てが連通するようになっている。
【0025】
次に、この伸縮ブーム装置1に装着された給脂装置10の作用・効果について説明する。
上述のように、この伸縮ブーム装置1には給脂装置10が付設されており、この給脂装置10は、図1に示すように、複数のブーム3,4を最縮小したときに、給脂口となるグリスニップル12、各連結油路24,34,44および各給脂油路22,32,42、並びに中継油路52の全てが連通するようになっているので、伸縮ブーム装置1の起伏姿勢に拘わらず、伸縮ブーム装置1を最縮小した姿勢であれば全ての摺動板60の摺動面に対してグリスニップル12から直接的な給脂をすることができる。つまり、基端ブーム2上面のグリスニップル12からグリスを注入するだけで、複数のブーム3,4内部の全ての摺動板60の各摺動面62全体に亘って直接的な給脂が可能である。
【0026】
また、伸縮ブーム装置1の起伏姿勢に拘わらず、伸縮ブーム装置1を最縮小した姿勢であれば、グリスニップル12、各連結油路24,34,44および各給脂油路22,32,42、並びに中継油路52の全てが連通しているので、この給脂装置10によれば、例えば伸縮ブーム装置1を起立させた状態としてグリスニップル12を目視容易な位置にしておき、この状態でグリスガンを基端ブーム2のグリスニップル12に差し込むだけで、容易にグリスの補給も可能である。
【0027】
また、この給脂装置10によれば、給脂路中継部材である中継継手50が、隣り合う給脂路形成部材である中間ブロック30および先端ブロック40の当接に応じて伸縮する蛇腹部54を有するので、対向配置された中間ブロック30および先端ブロック40に対する当接状態を密着させることができる。そのため、伸縮ブーム装置1を最縮小した状態での給脂時のグリスの漏れを抑制するとともに、蛇腹部54が伸縮ブーム装置1の伸縮方向に沿って変形可能なので、これにより、中継継手50の蛇腹部54がポンプ作用を奏することでグリスの供給を一層確実に行わせることができる。
【0028】
さらに、この給脂装置10によれば、例えば各ブーム2,3,4相互の嵌合誤差が生じており、各ブロック20,30,40の連結油路中心と中継継手50の中心との軸ずれが生じた場合であっても、中継継手50の蛇腹部54が、これに対向配置されたブロックの当接に応じて伸縮可能なので、ブロックの表面および表面の角度に合わせて自在に当接することができる。そのため、各ブーム2,3,4の嵌合誤差を吸収して確実な給脂路連通状態を確保することができる。
【0029】
また、この給脂装置10によれば、図4に示すように、給脂後に伸縮ブーム装置1を伸長させた場合に、ブロック30,40と各中継継手50との給脂路が離間(同図では、先端ブーム4の伸長に伴い、先端ブロック40と中間ブロック30に付設された中継継手50とが離間)したときに、中継継手50の蛇腹部54が各ブーム3,4の伸縮方向に沿って伸長可能なので、その伸長された分の空間にグリスが入り込むことで、グリスの垂れ落ちも抑制される。
【0030】
以上説明したように、この給脂装置10は、三段の伸縮ブーム装置1であっても、各ブーム2,3,4の摺動板60の摺動面62に直接的な給脂が可能であり、しかも省スペースに配置することができる。なお、本発明に係る伸縮ブーム装置用給脂装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、伸縮ブーム装置1が三段の例で説明したが、本発明に係る伸縮ブーム装置用給脂装置は、二段は勿論のこと、四段以上の伸縮ブーム装置に対しても適用可能である。
【0031】
また、例えば上記実施形態では、給脂路中継部材として、中継継手50が伸縮部として蛇腹部54を有する例で説明したが、これに限定されず、例えば,以下図5ないし7に示す第二実施形態のように、伸縮部を吸盤状(椀形状)に形成することもできる。なお、この第二実施形態においては、上記第一実施形態と同一ないし対応する構成については、同一の符号を付してある。
詳しくは、この第二実施形態の給脂装置10は、上記第一実施形態に対し、中継継手50が、上記蛇腹部54に替えて、図5に示すように、伸縮部として椀形部54を有する点が異なっている。
【0032】
この椀形部54は、図6に示すように、ゴム等の弾性体によって中空の吸盤状(椀形状)に形成されており、図5に示すように軸方向に押圧力が作用すると、周方向に卵型に変形することで、隣り合うブロック部材の当接に応じてブーム3,4の伸縮方向に沿って縮小することができる。また、図7に示すように、給脂後に伸縮ブーム装置1を伸長させた場合、ブロック30,40と各中継継手50との給脂路が離間(同図では、先端ブーム4の伸長に伴い、先端ブロック40と中間ブロック30に付設された中継継手50とが離間)したときには、椀形部54が円筒状に復帰することでブーム3,4の伸縮方向に沿って伸長可能である。また、偏倚した押圧力や斜めの力が作用した場合についても、それに応じて変形可能である。したがって、上記第一実施形態での蛇腹部54同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 伸縮ブーム装置
2 基端ブーム
3 中間ブーム
4 先端ブーム
5 コラム
6 ウインチ
7 ワイヤロープ
8 フック
10 給脂装置
12 グリスニップル(給脂口)
20 基端ブロック(給脂路形成部材)
22 給脂油路
24 連結油路
30 中間ブロック(給脂路形成部材)
32 給脂油路
34 連結油路
40 先端ブロック(給脂路形成部材)
42 給脂油路
44 連結油路
50 中継継手(給脂路中継部材)
52 中継油路
54 蛇腹部、椀形部(伸縮部)
56 連結部
58 蛇腹固定環
59 蛇腹本体
60 摺動板
61 段部
62 摺動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームと、その複数のブームのうち隣接するブーム間に設けられた摺動板とを有する伸縮ブーム装置に用いられる給脂装置であって、
基端側の基端ブームの外面に設けられる給脂口と、各ブームの内面にブームの伸縮方向に沿って装着される複数の給脂路形成部材と、隣り合う給脂路形成部材の一方の端面に付設される給脂路中継部材とを備え、
前記給脂路形成部材は、ブームの伸縮方向に沿って且つ隣り合う給脂路形成部材と対向する位置に貫通形成された連結油路と、該連結油路に連通するとともに前記摺動板上面または前記給脂口に開口する給脂油路とを有し、前記給脂路中継部材は、これが付設される端面に開口する連結油路に連通する中継油路と、該中継油路を内部にもち隣り合う給脂路形成部材の当接に応じてブームの伸縮方向に沿って伸縮する伸縮部とを有し、
前記複数のブームを最縮小した位置にあっては、前記給脂口、前記連結油路および給脂油路、並びに前記中継油路の全てが連通するようになっていることを特徴とする伸縮ブーム装置用給脂装置。
【請求項2】
前記給脂路中継部材の伸縮部は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブーム装置用給脂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−84349(P2011−84349A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236196(P2009−236196)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(506002823)古河ユニック株式会社 (54)
【Fターム(参考)】