説明

伸縮ブーム

【課題】伸縮ブームの伸縮作動に影響を及ぼすことなく、送油送電ラインが先端ブーム内で保持されている伸縮ブームを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る伸縮ブーム50は、それぞれ内部に中空空間を有した基端ブーム51、中間ブーム52、先端ブーム53と、突出入自在に設けられて基端ブームに対して中間ブームを伸縮動させる伸縮シリンダ60と、前後に延びる送油送電ライン90とを有して構成されている。このとき、先端ブームは、その内周面において内方に向けて立設し前後に延びる係止リブ54、54を有するとともに、係止リブと内周面とによってライン保持空間55が形成され、さらに、送油送電ラインは、係止リブによって取り付けられた保持部材80により保持されて、ライン保持空間内において前後に延びて配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車やクレーン車の車体上に備えられた伸縮ブームに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車やクレーン車等に備えられる伸縮ブームは、内部に中空空間が形成されたブームを複数用いてこれらを入れ子式に組み合わせて、伸縮シリンダ(例えば、ピストンロッドをシリンダチューブに対して伸縮させる油圧シリンダ)により伸縮動させる構成となっている。このような伸縮ブームには、例えば基端ブーム、中間ブームおよび先端ブームの3段から構成されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、例えば高所作業車に備えられる伸縮ブームにおいて、先端ブームの先端部には作業台が取り付けられており、この作業台や伸縮ブームを伸縮動させる伸縮シリンダ等に対して、油圧を供給するための送油ホースおよび電力を供給するための送電ケーブル等のライン状部材(以下において、送油送電ラインと称する)が配設されている。これら複数の送油送電ラインは、伸縮ブームの伸縮作動に応じて伸縮ブーム内で繰り返し引き込みされるため、緊結部材等を用いて一体化するとともに、伸縮ブーム内において整然と移動可能となっている。
【0004】
ここで図9に、従来の伸縮ブーム構成の一例である、基端ブーム、中間ブームおよび先端ブーム200の3段から構成された伸縮ブームにおける、先端ブーム200の断面図を示す。ここで、先端ブーム200内において、3本の送油送電ライン210は、ブームの伸縮方向(紙面の奥方向および手前方向)の数箇所が緊結部材220により一体化されて、先端ブーム200の下方底部に載置されている。このとき、送油送電ライン210は、この緊結部材220によって一体化された状態で、伸縮ブームの伸縮作動に応じて先端ブーム200内を整然と移動可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−199407号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記構成の先端ブーム200において、緊結部材220によって一体化された送油送電ライン210は、先端ブーム200内において下方底部に載置されているのみであって、先端ブーム200に対して固定されていない。そのため、先端ブーム200が大きく揺動した場合には、先端ブーム200内で自由に移動することとなり、先端ブーム200を中間ブームに対して移動させる2つの滑車230、231等に干渉して、伸縮ブームの伸縮作動の妨げとなるという課題があった。
【0007】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、伸縮ブームの伸縮作動に影響を及ぼすことなく、送油送電ラインが先端ブーム内で保持されている伸縮ブームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る伸縮ブームは、内部に基端中空空間を有した基端ブームと、前記基端中空空間に対して前後に伸縮動自在に挿入されるとともに内部に中間中空空間を有した中間ブームと、前記中間中空空間に対して前後に伸縮動自在に挿入されるとともに内部に先端中空空間を有した先端ブームと、前記先端中空空間内に突出入自在に設けられて前記基端ブームに対して前記中間ブームを伸縮動させる伸縮シリンダと、前記基端中空空間、前記中間中空空間および前記先端中空空間を通って前後に延びるライン状部材とを有して構成されている。そして、伸縮ブームは、前記伸縮シリンダを伸縮動させて前記基端ブームに対して前記中間ブームを伸縮動させるとともに、前記中間ブームに対して前記先端ブームを伸縮動させるように構成されている。このとき、前記先端ブームは、その内周面において内方に向けて立設し前後に延びる係止リブを有するとともに、前記係止リブと内周面とによって保持空間が形成され、さらに、前記ライン状部材は、前記係止リブによって取り付けられた保持部材により保持されて、前記保持空間内において前後に延びて配設されている。
【0009】
上記構成の伸縮ブームにおいて、前記保持部材は、前記係止リブに支持されて前記保持空間を覆う前記固定部材と、前記保持空間内に位置して前記固定部材に取り付けられた支持部材とから構成されていることが好ましい。また、上記構成の伸縮ブームにおいて、前記保持部材は、前記係止リブに対して前後に移動自在となっている構成が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関する伸縮ブームによれば、先端ブームは、その内周面において内方に向けて立設して前後に延びる係止リブと内周面とによって形成される保持空間に、送油送電ラインを保持している。このとき、送油送電ラインは、保持部材により保持されているとともに、この保持部材は、係止リブによって先端ブームの保持空間に取り付けられている。よって、送油送電ラインは、先端ブーム内において保持空間の外部に移動することが規制された状態で保持されることとなり、送油送電ラインが滑車等と干渉して、伸縮ブームの伸縮作動に影響を及ぼすことが回避できる。
【0011】
また、保持部材は、係止リブに支持されて保持空間を覆う固定部材と、保持空間内に位置して固定部材に取り付けられた支持部材とから構成されている。よって、固定部材と係止リブとを当接させるという簡易な構造により、先端ブーム内において、送油送電ラインが保持空間の外部へ移動することを規制可能となる。
【0012】
さらに、保持部材は、送油送電ラインに取り付けたままで係止リブに対して前後に移動自在となっている。よって、送油送電ラインおよび保持部材のメンテナンス等を行う場合に、保持空間内に保持された送油送電ラインを前方または後方に引くことで、容易に保持空間から引き出すことができ、メンテナンス等を行う場合の作業効率を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る伸縮ブームの好ましい実施の形態について、実施例1から実施例3を挙げ、図1から図8を参照しながら説明する。ここで説明の便宜上、図1に示す矢印方向を前後、上下方向とし、さらに紙面手前を左方向、紙面奥を右方向とする。
【実施例1】
【0014】
まず、第1の実施例について説明する。図1に、当該伸縮ブームを搭載した作業車の一例としての高所作業車1を示す。高所作業車1は、4つの走行タイヤ11を備えて、運転キャビン12から運転操作が可能なトラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回台20に起伏動自在に取り付けられた伸縮ブーム50と、この伸縮ブーム50の先端部に取り付けられた作業員搭乗用の作業台40とを有して構成されている。旋回台20は、走行体10の後部に上下軸まわり360度開動自在に取り付けられており、走行体10に内蔵された旋回モータ23を油圧駆動することにより、水平旋回作動させることができる。
【0015】
伸縮ブーム50は、基端ブーム51と、中間ブーム52と、先端ブーム53とが入れ子式に構成されてなり、その基端部が旋回台20の支柱21にフートピン22を介して取り付けられている。伸縮ブーム50の内部には、伸縮シリンダ60が設けられており、この伸縮シリンダ60を油圧駆動することにより、伸縮ブーム50を伸縮作動可能となっている。また、基端ブーム51と支柱21との間に跨設された起伏シリンダ24を油圧駆動させることにより、伸縮ブーム50が起伏作動するように構成されている。先端ブーム53の先端部には、ブームヘッド33が取り付けられており、このブームヘッド33は、揺動ピン34を介して垂直ポスト35の下端部が取り付けられている。この垂直ポスト35は、伸縮ブーム50内に設けられたレベリングシリンダ(図示せず)により、伸縮ブーム50の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0016】
作業台40は、作業員が搭乗する箱状の作業台本体41と、この作業台本体41に取り
付けられた作業台保持ブラケット42とを有して構成されている。作業台保持ブラケット
42は、垂直ポスト35の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット42の内部には、首振りモータ43が設けられており、この首振りモータ43を油圧作動させることで、作業台40全体を垂直ポスト35まわりに首振り作動可能となっている。ここで、垂直ポスト35は、上記のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台本体41の床面は常時水平に保持される。また、伸縮ブーム50の起伏、伸縮、旋回操作は、作業台40上に備えられたブーム操作レバー44により行われる。
【0017】
走行体10の前後左右には、高所作業中の走行体10を安定状態に支持するための4つのアウトリガジャッキ13が設けられている。これらは、上下方向に延びたアウタージャッキ13aと、このアウタージャッキ13a内に設けられて上下方向に伸縮自在なインナージャッキ13bと、インナージャッキ13bの下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド13cとを有して構成されている。各アウトリガジャッキ13において、インナージャッキ13bを下方に移動(伸長)させ、ジャッキパッド13cを地面に接地させて突っ張らせることにより、走行体10を安定状態に持ち上げ支持させることができる。なお、これらのアウトリガジャッキ13の作動操作は、走行体10の後部に備えられたジャッキ操作レバー14の操作により行われる。
【0018】
以上、本発明に係る伸縮ブーム50が搭載された高所作業車1について説明したが、以下において伸縮ブーム50の構成について詳しく説明する。
【0019】
図3に示すように、伸縮ブーム50は、基端ブーム51、中間ブーム52、先端ブーム53、伸縮シリンダ60、保持部材80および送油送電ライン90とを主体に構成されている。基端ブーム51は、断面視略矩形状で内部に中空空間を有するとともに、前後に延びて形成されている。中間ブーム52は、基端ブーム51と同様に、断面視略矩形状で内部に中空空間を有して前後に延びて形成されており、その断面視における外形は基端ブーム51よりも小さく形成されている。先端ブーム53は、上記2つのブーム51、52と同様に形成されており、その断面視における外形は中間ブーム52よりも小さく形成されている。
【0020】
図5に示すように、先端ブーム53の左右側面53b、53bの各内周面には、内方に向けて立設して前後に延びる4つのガイドリブ71が形成されている。また、先端ブーム53の下方凸面53cは下方に張出して形成されており、ここで、左右側面53b、53bの下端部と下方凸面53cの左右側端部との接合部内周面には、2つの係止リブ54、54が形成されている。この係止リブ54は、それぞれ左右内方に向けて立設するとともに、先端ブーム53の中空空間の前端部から後端部まで延びて形成されている。このとき、下方凸面53cの内周面および2つの係止リブ54、54によって囲まれた、ライン保持空間55が前後に延びて形成されている。さらに、このような断面形状を有した先端ブーム53は、例えばアルミニウムを材料として用いて、押し出し成形(または引き抜き成形)することで形成される。このようにして形成することで、先端ブーム53の内面において前後に延びた係止リブ54およびガイドリブ71を、容易に形成することが可能である。
【0021】
伸縮シリンダ60は、シリンダチューブ60aおよびピストンロッド60bが一体化されて伸縮動可能に構成されている。保持部材80は、図6に示すように、支持部材81および固定部材82を主体に構成される。支持部材81は、例えば金属材料を用いて形成された棒状の素材を、コの字状に折曲することにより形成されており、左右に延びる基部81a、基部81aの左右端部から折曲して上方に延びる側部81b、81b、側部81bの上端部で形成されたネジ部81c、81cから構成されている。固定部材82は、例えば金属材料を用いて板状に形成されており、支持部材81の側部81b、81bが上下に挿通する部分において、円形の開口部(図示せず)が形成されている。ここで、保持部材80が、先端ブーム53のライン保持空間55に配設された状態において、固定部材82の上方面を上面82a,下方面を下面82bとしておく。送油送電ライン90は、走行体10から作業台40等に油圧を供給する送油ホースおよび、電力を供給する電気ケーブル等が複数集まって構成されており、図3に示すように、それらの外周部は断面視略円形でかつ弾性変形可能な材質で形成されている。
【0022】
以上、伸縮ブーム50の構成について説明したが、以下において伸縮ブーム50の組立構成について説明する。
【0023】
まず、基端ブーム51に中間ブーム52を挿入し、さらに、中間ブーム52に先端ブーム53を挿入することで、伸縮ブーム50の内部において前後に延びたブーム内部空間Sが形成される。そして、このブーム内部空間Sに伸縮シリンダ60を配設する。このとき、伸縮シリンダ60のシリンダチューブ60aは、その前方側が先端ブーム53内において前後移動可能となっており、一方、後端側がチューブ支軸52aにより中間ブーム52の後部に枢支されている。また、ピストンロッド60bは、ブーム内部空間Sにおいて後方に延びており、その後端部が、ロッド支軸51cにより基端ブーム51の後端部に枢支されている。
【0024】
図2および図4に示すように、シーブ機構Mがブーム内部空間Sに配設される。ここで、シーブ機構Mは、伸長機構M1と収縮機構M2とから構成され、基端ブーム51と先端ブーム53を連結することにより、これらの伸縮作動を可能にしている。伸長機構M1は、シリンダチューブ60aの前端部において回転自在に設けられた第1滑車61と、第1ワイヤ62とから構成される。ここで、第1ワイヤ62は、基端ブーム51に固設された第1ワイヤ接合部51a、先端ブーム53に固設された共通ワイヤ接合部53aを、第1滑車61を掛け回して連結する。
【0025】
同様に、収縮機構M2は、中間ブーム52後端部において回転自在に設けられた第2滑車63と、第2ワイヤ64とから構成される。ここで、第2ワイヤ64は、基端ブーム51に固設された第2ワイヤ接合部51b、先端ブーム53に固設された共通ワイヤ接合部53aを、第2滑車63を掛け回して連結する。なお、2つの第1滑車61、61は、その側方で形成された回転支持部61a、61aが、左右側面53bおよびガイドリブ71により形成された空間内に収容されて、回転自在かつ前後に移動自在となっている。
【0026】
送油送電ライン90は、図2に示す収縮状態において、基端ブーム51に開口した挿入口51dからブーム内部空間Sに挿入され、基端ブーム51と中間ブーム52との間を後方へと延びて、中間ブーム52の後端部で上方へ折曲して、中間ブーム52内およびライン保持空間55内を後方から前方へと延びて配設されている。このとき、送油送電ライン90の、挿入口51dから中間ブーム52の後端部に至る部分において、その外周部が保護案内部材Kによって囲まれている。また、送油送電ライン90は、先端ブーム53の後端部で形成された後端保持部53eに対して、固定部90aで固定され、一方、先端ブーム53の先端部で形成された先端保持部53fに対して、固定部90bで固定されている。このとき、送油送電ライン90が、ライン保持空間55内において前後に所望の張り状態となるように、固定部90a、90bで固定されている。
【0027】
さらに、送油送電ライン90は、図2および図4に示すように、ライン保持空間55内において4箇所を保持部材80によって保持されている。ここで、保持部材80による送油送電ライン90の保持方法は、まず図6に示すように、支持部材81の側部81b、81bの間で、送油送電ライン90を基部81aの上部に載置する。そして、固定部材82の開口部(図示せず)を、支持部材81の側部81b、81bに挿通させて送油送電ライン90上方に載置する。次に、座金84、84をネジ部81c、81cに挿通させた後、ネジ部81c、81cにナット83を締結する。このとき、基部81aの上部および固定部材82の下面82bが、送油送電ライン90の外周部に当接して押圧することで、保持部材80が送油送電ライン90に対して固定される。
【0028】
ここで、送油送電ライン90は、送油および送電の支障とならない程度に押圧されている。なお、送油送電ライン90の構成(ライン合計本数、各ラインの外径等)に変更があった場合には、支持部材81の構成(例えば、基部81aおよび側部81bの長さ)を変更することで対応可能で、かつ固定部材82は変更前のものが流用可能となっている。よって、保持部材80は、種々の送油送電ライン90構成に対応できる汎用性の高い構成となっているとともに、製作コストの低減も図られている。
【0029】
上記のように、保持部材80によって保持された送油送電ライン90を、先端ブーム53のライン保持空間55に挿入して組み立てる方法について、以下に簡単に説明する。保持部材80によって保持された送油送電ライン90は、ライン保持空間55の後端部から挿入されて組み立てられる。このとき、保持部材80をライン保持空間55内に収容させるとともに、保持部材80および送油送電ライン90を前方に押し出しながら挿入していく。ここで、送油送電ライン90は、保持部材80によって一体化されているために扱いやすく、よって、組立性の向上および作業効率の向上を図ることが可能となっている。そして、4つの保持部材80および送油送電ライン90が、ライン保持空間55内に収容された後、先端ブーム53の前後端部における固定部90a、90bに対して、送油送電ライン90を固定する。
【0030】
保持部材80がライン保持空間55に挿入保持された状態において、2つの係止リブ54、54の下面54a、54aと固定部材82の上面82aとは、対向する領域があるとともに上下に若干の隙間を有している。よって、ナット83を緩めることなく保持部材80は、送油送電ライン90を保持した状態で、ライン保持空間55内を前後に移動自在となる。なお、上記のようにして、保持部材80が送油送電ライン90に固定されていることで、例えば、保持部材80が前後左右に回転して、固定部材82が係止リブ54から外れるとともに、保持部材80および送油送電ライン90が、ライン保持空間55の外部に飛び出すことを規制可能となる。
【0031】
上記のように、送油送電ライン90は先端ブーム53内において、固定部90aおよび固定部90bで固定されることによって前後への移動が規制されるとともに、左右上下への移動が、保持部材80および2つの係止リブ54、54によって規制されることにより、ライン保持空間55の外部に移動しない構成となっている。よって、図2に示す収縮状態および、図4に示す伸長状態において、どちらの場合においても送油送電ライン90は、先端ブーム53のライン保持空間55において、前後への張り状態等が変化することなく一定の状態に保たれている。つまり、送油送電ライン90は、伸縮シリンダ60の伸縮に伴う伸縮ブームの伸縮動作にかかわらず、常に所望状態を維持することが可能である。
【0032】
ここで、本発明の第1の実施例に係る、伸縮ブーム50の効果について簡単にまとめると、第1に、保持部材80によって保持された送油送電ライン90が、何らかの外力よって上方に移動する場合に、係止リブ54、54の下面54a、54aと上面82aとが当接することによって、送油送電ライン90が、ライン保持空間55の外部へ移動することを規制可能となる。よって、送油送電ライン90と、伸縮シリンダ60、第1滑車61および第1ワイヤ62とが干渉することがなく、伸縮ブーム50の伸縮作動の信頼性を高めることが可能となる。
【0033】
第2に、送油送電ライン90は、その外周部を保持部材80により固定されて一体化されており、また、係止リブ54、54の下面54a、54aと固定部材82の上面82aとは、上下に若干の隙間を有している。そして、保持部材80は、下面54a、54aにガイドされながら、前後に移動自在となっている。このとき、ナット83を緩めることなく、保持部材80はライン保持空間55内において前後に移動可能である。よって、送油送電ライン90および保持部材80のメンテナンス等を行う場合に、ライン保持空間55内に保持された送油送電ライン90を前方または後方に引くことで、容易にライン保持空間55から引き出すことができ、メンテナンス等を行う場合の作業効率を高めることが可能となる。
【0034】
第3に、上記のように保持部材80を前後に移動可能な構成とすることで、例えば、伸縮ブーム50が完全に収縮した状態においても、保持部材80を前後に移動させて送油送電ライン90のたわみを矯正可能となる。そのため、たわみを矯正時に、伸縮ブーム50を伸長させる必要がなく、よって、狭い作業場所においても送油送電ライン90のたわみを矯正可能となる。
【実施例2】
【0035】
以下において、本発明の第2の実施例に係る伸縮ブーム100について説明する。伸縮ブーム100は、第1の実施例で述べた伸縮ブーム50と比較して、送油送電ライン90を保持する保持部材のみが異なる構成となっており、その保持部材を中心に説明する。図7に示すように、伸縮ブーム100は、保持部材110によって送油送電ライン90を保持する構成となっており、まず、保持部材110の構成について説明する。保持部材110は、支持部材120および固定部材130を主体に構成される。支持部材120は、例えば金属素材を用いて略直方体に形成されており、その上面には送油送電ライン90の本数および外形に合わせて略半円形の下ライン溝121が、前後に延びて(4つ)形成されている。固定部材130は、例えば金属素材を用いて略直方体に形成されてその下面には、下ライン溝121と上下に対向する位置に、下ライン溝121と同様に略半円形の上ライン溝131が形成されている。ここで、固定部材130の上方面を上面132としておく。
【0036】
次に、保持部材110の組立構成について説明する。まず、支持部材120の下ライン溝121に送油送電ライン90を載置し、その後、固定部材130の上ライン溝131を送油送電ライン90に合わせるようにして、支持部材120と固定部材130とを対向させる。そして、ボルト140を用いて、支持部材120と固定部材130とを上下に締結する。このとき、下ライン溝121および上ライン溝131は、送油送電ライン90の外周部と当接して押圧することで、保持部材110が送油送電ライン90に対して固定される。ここで、送油送電ライン90は、送油および送電の支障とならない程度に押圧されている。
【0037】
そして、上記のように組み立てられた保持部材110は、ライン保持空間55内において、固定部材130の上面132と係止リブ54の下面54aが、対向する部分を有しているとともに、上面132と下面54aとは上下に隙間を有している。よって、ボルト140を緩めることなく、保持部材110は、送油送電ライン90を保持した状態で、ライン保持空間55内を前後に移動自在となっている。
【0038】
ここで、本発明の第2の実施例に係る、伸縮ブーム100の効果について簡単にまとめると、上述の第1の実施例に係る効果に加えて、次のような効果がある。つまり、保持部材110および支持部材120は、送油送電ライン90のラインそれぞれを保持する下ライン溝121および上ライン溝131が形成されている。よって、送油送電ライン90のそれぞれは、保持部材110によって保持された部分において、互いに干渉することがないので、外周部が損傷することなく安定して保持することが可能となる。
【実施例3】
【0039】
以下において、本発明の第3の実施例に係る伸縮ブーム150について説明する。伸縮ブーム150は、第1の実施例で述べた伸縮ブーム50と比較して送油送電ライン90を保持する保持部材のみが異なる構成となっており、その保持部材を中心に説明する。図8に示すように、伸縮ブーム150は、保持部材160によって送油送電ライン90を保持する構成となっており、まず、保持部材160の構成について説明する。保持部材160は、支持部材170および固定部材180を主体に構成される。支持部材170は、例えば板状の金属素材を用いて、中央で左右に延びた基部171、基部171の左右端部で折曲して上方に延びた側部172、側部172の上端部で折曲して左右側方に延びた縁部173から構成されている。固定部材180は、例えば板状の金属素材を用いて形成されており、その上方面を上面181としておく。
【0040】
次に、保持部材160の組立構成について説明する。まず、支持部材170の基部171の上面に送油送電ライン90を載置して、その後、固定部材180を縁部173に当接させる。そして、ボルト190を用いて、縁部173と固定部材180とを上下に締結する。このとき、基部171の上部および固定部材180の下面は、送油送電ライン90の外周部と当接して押圧することで、保持部材160が送油送電ライン90に対して固定される。ここで、送油送電ライン90は、送油および送電の支障とならない程度に押圧されている。
【0041】
そして、上記のように組み立てられた保持部材150は、ライン保持空間55内において、固定部材180の上面181と係止リブ54の下面54aが、対向する部分を有しているとともに、上面181と下面54aとは上下に隙間を有している。よって、ボルト190を緩めることなく、保持部材160は、送油送電ライン90を保持した状態で、ライン保持空間55内を前後に移動自在となる。
【0042】
ここで、本発明の第3の実施例に係る、伸縮ブーム150の効果について簡単にまとめると、上述の第1の実施例に係る効果に加えて、次のような効果がある。保持部材160は、支持部材170および固定部材180から構成されており、これらはどちらも板状の素材を用いて形成されている。そうすることで、1種類の素材から保持部材160を形成することが可能となり、よって、保持部材160の製作コストを低減することが可能となって、伸縮ブーム150全体の製作コストの低減が図られる。
【0043】
上述の実施例1から実施例3において、図2および図4に示すように、保持部材80は先端ブーム53内において略等間隔に4つ配置されているが、この個数および配置場所に限定されることなく、例えば、先端ビーム53の前後長さおよび送油送電ライン90の構成(本数、前後への張り具合等)などを考慮して、各保持部材80、110および160の使用個数および配置場所を任意に決定可能である。さらに、各保持部材80、110および160の前後幅に関しても、任意に構成可能である。
【0044】
上述の実施例1から実施例3において、各保持部材80、110および160を構成する支持部材および固定部材の素材形態は、上述の素材形態(例えば、板状または棒状等)に限られず、上述の機能を有する構成であれば素材形態は特に限定されない。
【0045】
上述の実施例1から実施例3において、各保持部材80、110および160の材質は上記の構成に限られることなく、上述の機能を満たす構成であれば、保持部材の材質は特に限定されない。
【0046】
上述の実施例1から実施例3において、各保持部材80、110および160が送油送電ライン90を保持する方法は、上述の送油送電ライン90に保持部材を当接させて押圧させることで固定する方法に限定されず、例えば、保持部材が送油送電ライン90を保持した状態において、保持部材が前後に移動自在となるように構成するとともに、係止リブ54に保持部材の前後移動を規制する規制部材を設ける構成でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る伸縮ブームを搭載した高所作業車の側面図である。
【図2】伸縮ブームの側面図であり、ブーム収縮状態を示している。
【図3】図2中のIII−III部分を示す断面図である。
【図4】伸縮ブームの側面図であり、ブーム伸長状態を示している。
【図5】図4中のV−V部分を示す断面図(先端ブームのみ)である。
【図6】先端ブームに取り付けられた保持部材の斜視図である。
【図7】第2実施例に係る保持部材の側面図である。
【図8】第3実施例に係る保持部材の側面図である。
【図9】従来の先端ブームの断面図である。
【符号の説明】
【0048】
50 伸縮ブーム
51 基端ブーム
52 中間ブーム
53 先端ブーム
54 係止リブ
55 保持空間(ライン保持空間)
60 伸縮シリンダ
80 保持部材
81 支持部材
82 固定部材
90 送油送電ライン(ライン状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基端中空空間を有した基端ブームと、
前記基端中空空間に対して前後に伸縮動自在に挿入されるとともに内部に中間中空空間を有した中間ブームと、
前記中間中空空間に対して前後に伸縮動自在に挿入されるとともに内部に先端中空空間を有した先端ブームと、
前記先端中空空間内に突出入自在に設けられて前記基端ブームに対して前記中間ブームを伸縮動させる伸縮シリンダと、
前記基端中空空間、前記中間中空空間および前記先端中空空間を通って前後に延びるライン状部材とを有して、
前記伸縮シリンダを伸縮動させて前記基端ブームに対して前記中間ブームを伸縮動させるとともに、前記中間ブームに対して前記先端ブームを伸縮動させる伸縮ブームであって、
前記先端ブームは、その内周面において内方に向けて立設し前後に延びる係止リブを有するとともに、前記係止リブと内周面とによって保持空間が形成され、
前記ライン状部材は、前記係止リブによって取り付けられた保持部材により保持されて、前記保持空間内において前後に延びて配設されていることを特徴とする伸縮ブーム。
【請求項2】
前記保持部材は、前記係止リブに支持されて前記保持空間を覆う固定部材と、前記保持空間内に位置して前記固定部材に取り付けられた支持部材とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブーム。
【請求項3】
前記保持部材は、前記係止リブに対して前後に移動自在となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮ブーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12871(P2009−12871A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173212(P2007−173212)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】