説明

伸縮性部材

【課題】 引張応力緩和および引張永久伸びが小さく、加硫ゴムに近い伸縮性を有し、かつ高温条件下でも性能低下が少ない伸縮性部材を提供すること。
【解決手段】 炭素数1〜8のアルキル基がベンゼン環に結合したアルキルスチレンから誘導される構造単位(a)を1質量%以上有する芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを有し、少なくとも重合体ブロックA部分が活性エネルギー線によって架橋可能なブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性重合体組成物を成形し、引き続き活性エネルギー線照射処理を行うことにより得られる伸縮性部材によって上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線の照射によって架橋された、引張応力緩和および引張永久伸びが小さく、加硫ゴムに近い伸縮性と柔軟性を有し、かつ高温条件下でも性能低下が小さい伸縮性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様に成形加工が可能であることから、近年、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療部品、建材部品、履物、雑貨等の広い分野で用いられている。また、伸縮性部材の分野においても、常温でゴム弾性を有しかつ加熱により可塑化、溶融して成形加工が容易である熱可塑性エラストマーが、衛生部材や医療用部材、ベルト用部材、バンド用部材、雑貨などに使用されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン−共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物であるスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性、成形性などに優れ、低比重であるという特徴を有していることから、近年、環境汚染などの問題と相俟って、加硫ゴムやポリ塩化ビニルの代替として、上記した広範囲の分野において使用されるようになっている。
【0004】
スチレン系エラストマーを用いた伸縮性部材については、成形加工性や伸縮などのさらなる改良を目的としてこれまでに種々の提案がなされ、例えば(1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAを少なくとも2個、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを少なくとも2個有するブロック共重合体を水素添加した水素添加ブロック共重合体と、ポリオレフィンからなる繊維で構成され、水素添加ブロック共重合体とポリオレフィンが特定の質量割合であり、かつ平均繊維系が10μm以下の極細繊維から構成される、優れた伸長特性(伸度、伸度回復性)、強度(耐水圧)、耐候性を有し、しかもソフトな風合いを有する伸縮性不織布(特許文献1参照);(2)主としてビニル芳香族化合物から構成された重合体ブロックAを少なくとも2個、主として共役ジエン化合物から構成された重合体ブロックBを少なくとも2個有し、かつ少なくとも1個の重合体ブロックBがポリマーの鎖の末端にあり、全体の数平均分子量及びビニル芳香族化合物が特定の範囲にあるブロック共重合体の水素添加物から製造された熱可塑性繊維よりなる、伸縮特性などに優れた伸縮性不織布(特許文献2参照);(3)(a)ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂などの極性の官能基を有する熱可塑性重合体および(b)ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体および/またはその水素化物に、もしくは該共重合体を幹部分とし、グラフト部分がラジカル崩壊型ポリマーであるブロック・グラフト共重合体に、前記熱可塑性重合体(a)と結合するかあるいは相互作用を示す官能基を含有する分子単位(例えば無水マレイン酸に基づく単位基など)が結合した変性ブロック共重合体および/または変性ブロック・グラフト共重合体含有する熱可塑性重合体組成物より形成される伸長回復性、柔軟性、耐候性などに優れる伸縮性不織布(特許文献3参照);(4)ポリビニルアレーン硬質ブロックとポリオレフィン軟質ブロックとからなるブロック共重合体、ポリオレフィンやポリスチレンなどの熱可塑性樹脂およびプロセスオイルより構成される熱可塑性重合体組成物から製造されたフィルムを電子線架橋してなる常温だけでなく人の体温付近においての伸縮特性、ローション耐性などに優れたフィルム(特許文献4参照)などが挙げられる。
また、近年、熱可塑性エラストマーを高温条件下(例えば70℃)で使用するケースが増加しており、かかる高温条件下でも性能を維持することが可能な部材の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−130448号公報
【特許文献2】特開平2−259151号公報
【特許文献3】特開昭63−203857号公報
【特許文献4】特表2003−509563号公報
【0006】
しかし、上記特許文献1〜4に記載された伸縮性部材(伸縮性の不織布、フィルム)は、高温条件下(例えば70℃)における引張応力緩和率、引張永久伸びなどの性能において必ずしも満足できるものではなく、これらの性能になお改良の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかして、本発明の目的は、かかる問題点を解決し、引張応力緩和および引張永久伸びが小さく、加硫ゴムに近い伸縮性を有し、かつ高温条件下(例えば70℃)でも性能低下が少ない伸縮性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、
〔1〕 炭素数1〜8のアルキル基がベンゼン環に結合したアルキルスチレンから誘導される構造単位(a)を1質量%以上有する芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを有し、少なくとも重合体ブロックA部分が活性エネルギー線によって架橋可能なブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性重合体組成物を成形し、引き続き活性エネルギー線照射処理を行うことにより得られる伸縮性部材;
〔2〕 熱可塑性重合体組成物が、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して架橋助剤(II)を10質量%以下の割合で含有する組成物であり、活性エネルギー線が電子線であることを特徴とする〔1〕に記載の伸縮性部材;
〔3〕 熱可塑性重合体組成物が、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して架橋助剤(II)を0.1〜10質量%、光重合開始剤(III)を0.05〜5質量%含有する組成物であり、活性エネルギー線が紫外線であることを特徴とする〔1〕に記載の伸縮性部材;
〔4〕 熱可塑性重合体組成物が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して熱可塑性樹脂(IV)を100質量部以下の割合で含有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の伸縮性部材;
〔5〕 構造単位(a)がp−メチルスチレン単位であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の伸縮性部材;
〔6〕 繊維、フィルム、シート、ストランド、帯状体または不織布の形態である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の伸縮性部材を提供することによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温条件下(例えば70℃)における引張応力緩和率、引張永久伸びなどに優れた伸縮性部材を提供することができる。また、本発明の伸縮性部材は、環境汚染を起こす物質が含まない繊維、フィルム、シート、帯状体、不織布などの形態とすることができ、特に紙おむつ、生理用品等の衛生用途に好適に用いることができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物を構成する付加重合系ブロック共重合体(I)は、炭素数1〜8のアルキル基がベンゼン環に結合したアルキルスチレンから誘導される構造単位(a)を1質量%以上有する芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを有し、少なくとも重合体ブロックA部分が活性エネルギー線によって架橋可能なブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体である。
【0011】
重合体ブロックAにおいて、構造単位(a)を誘導するアルキルスチレンとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜8であるo−アルキルスチレン、m−アルキルスチレン、p−アルキルスチレン、2,4−ジアルキルスチレン、3,5−ジアルキルスチレン、2,4,6−トリアルキルスチレン、前記したアルキルスチレン類におけるアルキル基の水素原子の1個または2個以上がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキルスチレン類などを挙げることができる。より具体的には、構造単位(a)を誘導するアルキルスチレンとしては、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、2,4,6−トリエチルスチレン、o−プロピルスチレン、m−プロピルスチレン、p−プロピルスチレン、2,4−ジプロピルスチレン、3,5−ジプロピルスチレン、2,4,6−トリプロピルスチレン、2−メチル−4−エチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、2,4−ビス(クロロメチル)スチレン、3,5−ビス(クロロメチル)スチレン、2,4,6−トリ(クロロメチル)スチレン、o−ジクロロメチルスチレン、m−ジクロロメチルスチレン、p−ジクロロメチルスチレンなどを挙げることができる。
【0012】
重合体ブロックAは、構造単位(a)として前記したアルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンのうちの1種または2種以上から誘導される単位を有することができる。それらのうちでも、構造単位(a)としては、架橋反応性に優れ、入手が容易な点から、p−メチルスチレン単位が好ましい。
【0013】
重合体ブロックAが有することがある構造単位(a)以外の芳香族ビニル化合物単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどから誘導される単位を挙げることができ、中でもスチレン、α−メチルスチレンから誘導される単位が好ましい。
【0014】
付加重合系ブロック共重合体(I)において、重合体ブロックAは熱可塑性エラストマーのハードセグメントに相当し、構造単位(a)におけるベンゼン環に結合したアルキル基は、活性エネルギー線の照射による静的な架橋反応により、重合体ブロックAからなるハードセグメントに架橋を導入する役割を有する。
【0015】
重合体ブロックAにおける構造単位(a)の割合は、付加重合系ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックAの質量[付加重合系ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックAを有する場合はその合計質量]に対し1質量%以上であり、10質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましく、さらにすべての単位が構造単位(a)からなっていてもよい。構造単位(a)の割合が1質量%未満であると、重合体ブロックAに架橋が充分に導入されず、得られる伸縮性部材が充分な伸縮性を示さない。重合体ブロックAにおける構造単位(a)とそれ以外の芳香族ビニル化合物単位との結合形態は、ランダム、ブロック、テーパードなどのいずれの形態であってもよい。
【0016】
付加重合系ブロック共重合体(I)における重合体ブロックAの含有量は、10〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。該含有量が10質量%より少ない場合には架橋が充分に生成せず、得られる伸縮性部材の伸縮性が低下する傾向があり、また40質量%より大きい場合には、伸縮性部材の柔軟性が低下する傾向がある。
【0017】
重合体ブロックAは、構造単位(a)を含む芳香族ビニル化合物単位とともに、必要に応じて他の重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の重合性単量体からなる構造単位の割合は、付加重合系ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックAの質量[付加重合系ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックAを有する場合はその合計質量]に基づいて30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。その場合の他の重合性単量体としては、例えばブタジエン、イソプレンなどを挙げることできる。
【0018】
また、付加重合系ブロック共重合体(I)は、上記の構造単位(a)を含む芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックAの他に、構造単位(a)を含まない芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックを有していてもよい。
【0019】
一方、付加重合系ブロック共重合体(I)における重合体ブロックBを構成する共役ジエン単位を誘導する共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。重合体ブロックBはこれらの共役ジエンから誘導される単位の1種類のみから構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとイソプレンの混合物から誘導される単位で構成されているのが好ましい。なお、重合体ブロックBのミクロ構造の種類および含有量に特に制限はない。また、2種以上の共役ジエンを併用した場合、それらの結合形態はランダム、ブロック、テーパード、またはそれらの2種以上の組み合わせからなっていることができる。
【0020】
重合体ブロックBは、共役ジエン単位とともに、必要に応じて他の重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合、他の重合性単量体の割合は、付加重合系ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックBの質量[付加重合系ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックBを有する場合はその合計質量]に基づいて30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。その場合の他の重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、構造単位(a)を構成する前記したアルキルスチレン(好適にはp−メチルスチレン)などを挙げることができる。
【0021】
重合体ブロックBは、イソプレン単位からなるポリイソプレンブロックまたは該イソプレン単位に基づく炭素−炭素二重結合の一部または全部が水素添加された水添ポリイソプレンブロック;ブタジエン単位からなるポリブタジエンブロックまたは該ブタジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の一部または全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;またはイソプレン単位とブタジエン単位からなるイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックまたは該イソプレン単位およびブタジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の一部または全部が水素添加された水添イソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであることが好ましい。
【0022】
付加重合系ブロック共重合体(I)は、重合体ブロックAと重合体ブロックBとが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらのうちでも、重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は直鎖状であるのが好ましく、その例としては重合体ブロックAをAで、また重合体ブロックBをBで表したときに、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体などを挙げることができる。それらのうちでも、トリブロック共重合体(A−B−A)が、付加重合系ブロック共重合体(I)の製造の容易性、柔軟性などの点から好ましく用いられる。
【0023】
付加重合系ブロック共重合体(I)の数平均分子量は特に制限されないが、好ましくは30000〜1000000の範囲内であり、より好ましくは40000〜300000の範囲内である。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0024】
付加重合系ブロック共重合体(I)は、例えば、次のような公知のアニオン重合法によって製造することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物などを開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの重合反応に不活性な有機溶媒中で、構造単位(a)を誘導するアルキルスチレンまたは構造単位(a)を誘導するアルキルスチレンと芳香族ビニル化合物との混合物、共役ジエンを逐次重合させてブロック共重合体(すなわち未水添の付加重合系ブロック共重合体(I))を形成する。
【0025】
得られたブロック共重合体は、必要に応じてさらに水素添加される。かかる水素添加反応は、例えば、該ブロック共重合体をシクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒中で、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルトなどの第9、10族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウムなどからなる有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒などの水素添加触媒の存在下に、通常、反応温度20〜100℃、水素圧力0.1〜10MPaの条件下で行うことができ、該ブロック共重合体の水素添加物(すなわち、水素添加された付加重合系ブロック共重合体(I))を得ることができる。
【0026】
水素添加率は、本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物に要求される物性に応じて適宜調整することができるが、耐熱性、耐候性および耐オゾン性を重視する場合、付加重合系ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックBの共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されているのが好ましく、水素添加率としては、85%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。なお、重合体ブロックBの共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の水素添加率は、ヨウ素価滴定、赤外分光光度計、核磁気共鳴などの測定手段により水素添加反応前後における重合体ブロックB中の炭素−炭素二重結合の量を測定し、その測定値から算出することができる。
【0027】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、必要に応じて成形加工性の改良および架橋性の向上を目的として、架橋助剤(II)を添加することができる。使用できる架橋助剤(II)としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−フェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。架橋助剤(II)の含有量としては、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して10質量%以下であるのが好ましく、0.1〜10質量%の範囲内であるのがより好ましい。架橋助剤(II)の含有量が10質量%より多い場合、その熱可塑性重合体組成物は活性エネルギー線を照射することによって架橋し過ぎてしまい、伸縮性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、特に後述する活性エネルギー線として紫外線(UV)を用いる場合、架橋性の向上を目的として、架橋助剤(II)とともに光重合開始剤(III)を添加するのが好ましい。使用できる光重合開始剤(III)としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾイン、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、α−t−ブチルベンゾインなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。光重合開始剤(III)の含有量としては、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して0.05〜5質量%の範囲内であるのが好ましい。光重合開始剤(III)の含有量が0.05質量%よりも少ない場合には露光感度が低く、紫外線を照射することによっても充分な架橋が形成されにくい傾向となり、一方、5質量%より多い場合には紫外線の透過率を低下させ、却って露光感度を低下させることになるため、充分な架橋が形成されにくい傾向となる。
【0029】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、強度等の力学的特性、成形加工性などの改良を目的として、必要に応じて熱可塑性樹脂(IV)を添加してもよい。熱可塑性樹脂(IV)としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン等の単独重合体;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ノネン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体およびこれらを無水マレイン酸などで変性した樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、無水マレイン酸−スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなどポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、キシレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂などが挙げられる。これらはいずれも高分子の相容性の尺度として用いられている溶解度パラメータ(Solubility Parameters of Polymers;以下、SP値と称する)が15〜23(MPa)1/2の範囲内にあるものである。なお、ここでいうSP値とは、式:SP値=ρΣG/Mにより、原子および原子団の凝集エネルギー定数G、ポリマー構造単位の分子量Mおよびポリマーの密度ρから算出される値である。なお、SP値が近いポリマー同士は、基本的に相容性がよいとされている。
【0030】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物に熱可塑性樹脂(IV)を添加する場合、その添加量は付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して100質量部以下であるのが好ましく、80質量部以下であるのがより好ましい。熱可塑性樹脂(IV)の含有量が付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して100質量部を超えると、得られる伸縮性部材の伸縮性が低下する傾向がある。
【0031】
熱可塑性樹脂(IV)としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を用いるのが、これらの樹脂が付加重合系ブロック共重合体(I)との相容性に優れ、混練条件によらず良好な伸縮性能を有する伸縮性部材を得やすい点で好ましい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が、付加重合系ブロック共重合体(I)の架橋性を損なうことなく、良好な伸縮性部材を得やすい点でより好ましい。
【0032】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性および流動性などの改質を目的として、付加重合系ブロック共重合体(I)以外のゴム・エラストマー成分、例えば天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴムおよびその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ポリイソプレンイソブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体やポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体またはそれらの水素添加物等のスチレン系エラストマーなどを配合することができる。
【0033】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、必要に応じて軟化剤を添加することができる。使用できる軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、落花生油、ロジン等の植物油系軟化剤などが挙げられる。これらの軟化剤は1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。軟化剤を添加する場合、その添加量は本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して200質量部以下であり、100質量部以下であるのが好ましい。
【0034】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ゴム補強剤または充填剤を添加してもよい。ゴム補強剤または充填剤としては、例えばタルク、マイカ、カオリン、クレー、アルミナ、シリカ、ガラス、ガラス中空球、ガラス繊維、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素中空球、炭素繊維、炭化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カルシウムアルミネート、チタン酸カルシウム、木粉、でんぷん、有機顔料などが挙げられる。
【0035】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、例えば、熱重合防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、撥水剤、防水剤、粘着付与剤、蛍光剤、アンチブロッキング剤、金属不活性化剤、抗菌剤などの他の添加剤を添加してもよい。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱重合防止剤としては、例えば2,6−ジt−ブチル−p−クレゾール、p−メトキシフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ)フェニルプロピオネート〕、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキシアニソール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチル)フェノールなどが挙げられる。
【0036】
上記した付加重合系ブロック共重合体(I)および必要に応じて添加される架橋助剤(II)、光重合開始剤(III)、熱可塑性樹脂(IV)などの成分を、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して、混練することにより、本発明の伸縮性部材に用いる熱可塑性重合体組成物を得ることができる。その際の混練温度としては、一般に120〜280℃の範囲内が好ましく、140〜260℃の範囲内がより好ましい。
【0037】
このようにして得られた熱可塑性重合体組成物を成形し、引き続き活性エネルギー線照射処理を行うことにより、本発明の伸縮性部材を製造することができる。本発明の伸縮性部材は、例えば、繊維、フィルム、シート、帯状体、ストランド、不織布など、用途に応じて、それぞれに適した形態にすることができる。
【0038】
本発明において、熱可塑性重合体組成物を前記した各種の形態に賦形する成形方法は特に制限されず、各成形体の形態に応じた一般的な成形方法を採用することができる。
【0039】
繊維状に賦形する場合には、通常の熱可塑性樹脂を溶融紡糸する際に用いられる装置と実質的に同等の装置、例えばスクリュー押出機にギアポンプを結合させた形式のものなどを用いることができる。紡糸温度、紡糸圧力、押出速度、紡糸孔形および巻き取り速度を制御することによって、通常の溶融紡糸の場合と同様に、製造する繊維のデニール構成を種々変えることができる。なお、巻き取られた繊維間で膠着が生じる場合は、これを防ぐために巻き取り前の紡糸した糸上に界面活性剤水溶液もしくはそれに微粒子化されたタルクや炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナなどを分散させた水溶液を塗布しておくとよい。このようにして巻き取られた繊維は通常の熱可塑性合成繊維の場合のように延伸してもよいが、延伸しなくてもよく、また熱処理等の工程は省略することができる。また、繊維の太さは通常の熱可塑性合成繊維の場合と同様に数デニール以上の範囲で任意に選ぶことができる。繊維の横断面形状は、通常の丸断面の他、扁平断面、多角断面、多葉断面、中空断面等のいずれであってもよい。
【0040】
フィルム、シート、ストランドまたは帯状体の形態に賦形する場合には、一軸押出成形機または二軸押出成形機を用いて成形することができる。フィルムおよびシートの厚さや幅は特に制限されないが、通常、厚みは15μm〜2mmの範囲内が好ましい。また、ストランドの断面形状は特に制限されず、例えば、円、楕円、方形などの形状が好ましい。帯状体の厚さや幅は特に制限されないが、通常、厚みは200μm〜2mmの範囲内が好ましい。
【0041】
不織布に賦形する場合には、例えば、通常のメルトブローン不織布製造装置を用いて、熱可塑性重合体組成物を溶融紡糸し、その繊維群を捕集面上で繊維ウェブを形成させることによってメルトブローン不織布を製造することができる。また、予め繊維ウェブを形成させ、その後ロールなどによって加熱し、繊維の接点を部分接着させるスパンボンド法によっても不織布を製造することができる。不織布を構成する繊維の繊度、目付けなどに特に制限はなく、用途に応じて適したものにすることができる。なお、該不織布を構成する繊維は繊度の均一な長繊維であることが、照射架橋後の引張応力緩和率、引張永久伸びに優れる点から好ましい。また、該不織布の目付けは、取り扱い性などの点から、5〜200g/mの範囲内が好ましい。
【0042】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物を前記した各種形態に賦形する際の成形温度としては、一般に120〜280℃の範囲内が好ましく、140〜260℃の範囲内がより好ましい。
【0043】
このようにして得られた成形体に活性エネルギー線照射処理を行うことにより、付加重合系ブロック共重合体(I)の少なくとも重合体ブロックA部分を架橋し、本発明の伸縮性部材を製造することができる。
【0044】
上記の活性エネルギー線としては、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)、α線、電磁波としては紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線、紫外線が好ましく、本発明における熱可塑性重合体組成物が架橋助剤(II)を含有する場合には、電子線がより好ましく、架橋助剤(II)と光重合開始剤(III)を含有する場合には、紫外線がより好ましい。これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。電子線の場合の加速電圧としては0.1〜10MeV、照射線量としては1〜500kGyの範囲内が適当である。紫外線の場合、その線源として放射波長が200nm〜450nmのランプを好適に用いることができる。線源としては、電子線の場合は、例えばタングステンフィラメントが挙げられ、紫外線の場合は、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、紫外線用水銀灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプなどが挙げられる。
【0045】
本発明の伸縮性部材に用いられる熱可塑性重合体組成物において、構成成分である付加重合系ブロック共重合体(I)の少なくとも重合体ブロックA部分を架橋させるために活性エネルギー線を照射する際には、重合体ブロックA部分以外に、付加重合系ブロック共重合体(I)の重合体ブロックB部分、熱可塑性樹脂(IV)にも一部架橋が生成し得るが、これらの架橋が生成しても本発明の目的を何ら阻害するものではない。
【0046】
なお、本発明の伸縮性部材は、優れた伸縮性を有する目安として、JIS K 6263記載の応力緩和試験において、40℃、50%伸長で100分間保持した場合の引張応力緩和率が30%以下、または70℃、50%伸長で10分間保持した場合の引張応力緩和率が50%以下であるのが好ましい。この条件を満たす場合、本発明の目的をより一層効果的に達成することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例などにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例では、次の方法により、得られた伸縮性部材の物性を評価した。
【0048】
1)トルエン抽出率
50mlスクリュー管にトルエン30mlを入れ、その中に、後述する引張応力緩和率の測定に使用した短冊状2号形試験片の一部を切り取り、予め質量を精秤した試験片(約0.3g)を入れた。振盪機を用いて25℃で12時間振盪した後、試験片を取り出して100℃、180分間減圧乾燥して、質量を測定した。得られた値から、下式に従ってトルエン抽出率を算出し、その結果を架橋性の指標とした。
トルエン抽出率(%)=100×(A−A)/A
但し、A:試験前の試験片の質量(g)
:試験後の試験片の質量(g)
【0049】
2)引張応力緩和率
JIS K 6263に記載された方法に従って測定した。すなわち、実施例および比較例で得られた重合体組成物のシートから短冊状2号の試験片を打ち抜き、インストロン万能試験機を使用して、予め設定した測定条件下で、つかみ具間距離20mm、試験速度300mm/分で50%伸長させたときの初期引張応力(m)を測定した後、そのままの状態で一定時間保持した後の引張応力(m)を測定して、下式によって引張応力緩和率を求めた。なお、測定は、[1]雰囲気温度40℃、100分間保持、および[2]雰囲気温度70℃、10分間保持の2条件で行った。
引張応力緩和率(%)=100×(m−m)/m
【0050】
3)引張永久伸び
JIS K 6262に記載された方法に従って測定した。すなわち、実施例および比較例で得られた重合体組成物のシートから短冊状2号の試験片を打ち抜き、この試験片に2cm幅の標線を付け、雰囲気温度25℃または70℃で50%伸長し、2時間保持した後開放し、30分後に標線間の長さ(L(cm))を測定し、下式によって引張永久伸びを求めた。
引張永久伸び(%)=100×(L−2)/2
【0051】
4)硬度
JIS K 6253に記載された方法に従って測定した。すなわち、実施例および比較例で得られた重合体組成物のシートを3枚重ねて、ASTM A硬度計を用いて測定し、柔軟性の指標とした。
【0052】
また、以下の実施例および比較例で使用したブロック共重合体は参考例1〜3で得られたものを使用した。
【0053】
参考例1
撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン40kg、sec−ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)200mlを加え、この溶液にp−メチルスチレン1.43kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合し、次にテトラヒドロフラン100gを加えた後、ブタジエン13kgを60分かけて加えて50℃で60分間重合し、さらにp−メチルスチレン1.43kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合することにより、ポリp−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリp−メチルスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。得られたブロック共重合体の数平均分子量は105000であり、H−NMRによって測定したp−メチルスチレン含有量は22質量%であった。
上記ブロック共重合体を含む反応混合液に、オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)60gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)350gを加えて別途調製した水素添加触媒を添加し、80℃、1MPaの水素雰囲気下で水素添加反応を行い、上記したポリp−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリp−メチルスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(I−1)と称する)を得た。得られたブロック共重合体(I−1)の数平均分子量は110000であり、H−NMRによって測定した、p−メチルスチレン含有量および水素添加率はそれぞれ21質量%、98%であった。
【0054】
参考例2
撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン40kg、sec−ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)240mlを加え、この溶液にp−メチルスチレンとスチレンの混合液(p−メチルスチレン/スチレン=50/50(質量比))1.17kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合し、次にテトラヒドロフラン80gを加えた後、ブタジエン10.7kgを60分かけて加えて50℃で60分間重合し、さらにp−メチルスチレンとスチレンの混合液(p−メチルスチレン/スチレン=50/50(質量比))1.17kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合することにより、ポリp−メチルスチレン/スチレン−ポリブタジエン−ポリp−メチルスチレン/スチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。得られたブロック共重合体の数平均分子量は89000であり、H−NMRによって測定したp−メチルスチレンとスチレンを合わせた含有量は18質量%であった。
上記ブロック共重合体を含む反応混合液に、オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)60gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)350gを加えて別途調製した水素添加触媒を添加し、80℃、1MPaの水素雰囲気下で水素添加反応を行い、上記したポリ(p−メチルスチレン/スチレン)−ポリブタジエン−ポリ(p−メチルスチレン/スチレン)トリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(I−2)と称する)を得た。得られたブロック共重合体(I−2)の数平均分子量は90000であり、H−NMRによって測定した。p−メチルスチレン/スチレン含有量および水素添加率はそれぞれ17質量%、98%であった。
【0055】
参考例3
撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン40kg、sec−ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)240mlを加え、この溶液にスチレン1.17kgを30分かけて加えて50℃で30分間重合し、次にテトラヒドロフラン80gを加えた後、ブタジエン10.7kgを60分かけて加えて50℃で60分間重合し、さらにスチレン1.17kgを30分かけて加えて50℃で30分間重合することにより、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。得られたブロック共重合体の数平均分子量は89000であり、H−NMRによって測定したスチレン含有量は18質量%であった。
上記ブロック共重合体を含む反応混合液に、オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)60gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)350gを加えて別途調製した水素添加触媒を添加し、80℃、1MPaの水素雰囲気下で水素添加反応を行い、上記したポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(1)と称する)を得た。得られたブロック共重合体(1)の数平均分子量は90000であり、H−NMRによって測定した。スチレン含有量および水素添加率はそれぞれ17質量%、98%であった。
【0056】
以下の実施例または比較例で用いた架橋助剤(II)、光重合開始剤(III)および熱可塑性樹脂(IV)の内容は下記のとおりである。
架橋助剤(II−1)
トリアリルイソシアヌレート[日本化成(株)製「タイク WH−60」(商品名)]
架橋助剤(II−2)
ヘキサンジオールジアクリレート[新中村化学工業(株)製「NK−ESTER A−HD−N」(商品名)]
光重合開始剤(III−1)
α−メチロールベンゾインメチルエーテル[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製「Irgacure 651」(商品名)]
樹脂(IV−1)
低密度ポリエチレン[日本ポリエチレン(株)製「ノバテックLD LC500」(商品名) MFR(190℃、2.16kg荷重)=4g/10分]
【0057】
〈実施例1〜5〉
参考例1および2で得られたブロック共重合体(I−1)、ブロック共重合体(I−2)、架橋助剤(II−1)、熱可塑性樹脂(IV−1)および酸化防止剤を表1に示す割合(すべて質量部)で、二軸押出機にて180℃で溶融混練して熱可塑性重合体組成物を得た。得られた熱可塑性重合体組成物より、プレス成形(成形温度180℃、プレス圧力10MPa、プレス時間1分)によって縦15cm×横15cm×厚さ0.1cmのシートを作製した後、片面に電子線を加速電圧5.0MeVで、表1に示す線量で照射した。このようにして得られたシート状の伸縮性部材を用いて、上記した各種性能を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
〈比較例1〜5〉
参考例1および参考例3で得られたブロック共重合体(I−1)、ブロック共重合体(1)、架橋助剤(II−1)、熱可塑性樹脂(IV−1)および酸化防止剤を表2に示す割合(すべて質量部)で、二軸押出機にて180℃で溶融混練して熱可塑性重合体組成物を得た。得られた熱可塑性重合体組成物より、プレス成形(成形温度180℃、プレス圧力10MPa、プレス時間1分)によって縦15cm×横15cm×厚さ0.1cmのシートを作製した後、片面に電子線を加速電圧5.0MeVで、表2に示す線量で照射した。このようにして得られたシート状の部材を用いて、上記した各種性能を評価した。結果を表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1および表2に示した結果より、実施例1〜5で得られた伸縮性部材においては、40℃および高温(70℃)における引張応力緩和率、25℃および高温(70℃)における引張永久伸びが、比較例1〜5で得られた部材に比べて小さく、優れた伸縮性を有することがわかる。
【0062】
〈実施例6〜9、比較例6〜7〉
参考例1〜3で得られたブロック共重合体(I−1)、ブロック共重合体(I−2)、ブロック共重合体(1)、架橋助剤(II−2)、光重合開始剤(III−1)、熱可塑性樹脂(IV−1)および酸化防止剤を表3に示す割合(すべて質量部)で、二軸押出機にて170℃で溶融混練して熱可塑性重合体組成物を得た。得られた熱可塑性重合体組成物より、プレス成形(成形温度170℃、プレス圧力10MPa、プレス時間1分)によって縦15cm×横15cm×厚さ0.1cmのシートを作製した後、両面に紫外線(UV)を500mJ/cm照射した。このようにして得られたシート状の伸縮性部材を用いて、上記した各種性能を評価した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示した結果より、実施例6〜9で得られた伸縮性部材においては、40℃および高温(70℃)における引張応力緩和率、25℃および高温(70℃)における引張永久伸びが、比較例6〜7で得られた部材に比べて小さく、優れた伸縮性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の伸縮性部材は、優れた伸縮性を有することから、その特徴を活かして、例えば、紙おむつ、トイレットトレーニングパンツ、生理用品、下着等の衛生用途;湿布剤の基材、伸縮性テープ、包帯、手術着、サポーター、矯正着等の医療用途;ヘアーバンド、リストバンド、時計バンド、眼鏡バンド等のバンド用途;輪ゴム、トレーニングチューブ等の雑貨などの幅広い用途に有効に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜8のアルキル基がベンゼン環に結合したアルキルスチレンから誘導される構造単位(a)を1質量%以上有する芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを有し、少なくとも重合体ブロックA部分が活性エネルギー線によって架橋可能なブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)を含有する熱可塑性重合体組成物を成形し、引き続き活性エネルギー線照射処理を行うことにより得られる伸縮性部材。
【請求項2】
熱可塑性重合体組成物が、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して架橋助剤(II)を10質量%以下の割合で含有する組成物であり、活性エネルギー線が電子線であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性部材。
【請求項3】
熱可塑性重合体組成物が、該熱可塑性重合体組成物の全量に対して架橋助剤(II)を0.1〜10質量%、光重合開始剤(III)を0.05〜5質量%含有する組成物であり、活性エネルギー線が紫外線であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性部材。
【請求項4】
熱可塑性重合体組成物が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して熱可塑性樹脂(IV)を100質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮性部材。
【請求項5】
構造単位(a)がp−メチルスチレン単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸縮性部材。
【請求項6】
繊維、フィルム、シート、ストランド、帯状体または不織布の形態である請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸縮性部材。


【公開番号】特開2006−257296(P2006−257296A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77789(P2005−77789)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】