伸縮機構
【課題】破損しにくい伸縮機構を提供する。
【解決手段】前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた係止段6a,6bに前記爪部4aが係止され、両スライダ1,2が停止した状態が維持されるものとしている。
【解決手段】前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた係止段6a,6bに前記爪部4aが係止され、両スライダ1,2が停止した状態が維持されるものとしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給気装置や換気装置などの通気装置に設けられる通気路形成用の開閉蓋の開閉調整機構や、その他適宜の用途で利用される伸縮機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給気装置や換気装置などの通気装置に設けられる通気路形成用の開閉蓋の開閉調整機構に利用される伸縮機構に関し、特許文献1に記載のものがある。この従来の伸縮機構は、一方のスライダと、このスライダに伸縮自在に組み合わされる他方のスライダと、これら双方のスライダを伸び方向又は縮み方向の何れかのスライド方向へ付勢して相対的にスライドさせる付勢手段と、を備えてなり、前記一方のスライダにはその長手方向で凹状の伸縮路を設け、前記他方のスライダには凹状の該伸縮路に係入される爪部を有する係止部材を取り付けてあり、さらに前記伸縮路には、前記爪部と係止して双方のスライダのスライドを停止させる係止部と、この係止部から前記スライド方向と逆方向へ伸設した係止解除路と、この係止解除路の終端から前記スライド方向へ伸設され双方のスライダに相対的なスライド長を与えるスライド路と、が形成されたものとなっている(請求項1)。
【0003】
この従来の伸縮機構は、「係止動作が確実であるから信頼性が高く、また従来の『カム機構』のように回転するような動作要素がなく動作がシンプルであるから耐久性にも優れた伸縮機構とすることができる」(発明の効果欄)とされているが、係止部材6の爪部6aが伸縮路5の係止部7に位置するときに、無理に一方のスライダ2を他方のスライダ3に押し込もうとすると、係止部材6が破損する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2930936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、破損しにくい伸縮機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0007】
この発明の伸縮機構は、前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた係止段6a,6bに前記爪部4aが係止され、両スライダ1,2が停止した状態が維持されるものとしている。
【0008】
案内路5は溝状で、その後部から前部に至る略直線状部分5cに複数の係止段6a,6bが設けられたものとすることができる。
【0009】
また、通気装置本体に対し開閉蓋が前進した開位置で通気路を形成し、該開閉蓋が後退した閉位置で通気路を閉塞する通気装置において、開閉蓋の進退機構として前記伸縮機構を利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の伸縮機構は、上述のような構成を有しており、係止部材4の爪部4aが、略直線状部分5cを段階的に移動する際に、高低差の変化はあるが、ほとんど幅方向への移動がないため、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって、爪部4aに無理な力が加わって係止部材4が破損することを防止できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態の伸縮機構の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の伸縮機構の平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】スライダ(可動スライダ)の斜視図である。
【図5】スライダ(可動スライダ)の斜視図である。
【図6】スライダ(可動スライダ)の平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】伸縮機構の説明図(最短状態)である。
【図10】伸縮機構の説明図(第1伸長状態)である。
【図11】伸縮機構の説明図(第2伸長状態)である。
【図12】伸縮機構の説明図(最長状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
この伸縮機構は、前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた、係止段6a,6bに前記爪部4aが係止することによって両スライダ1,2が停止した状態が維持されるようにしたものである。
【0014】
図1〜3に示したように、一方のスライダ1は筒状部1aを有する固定スライダ1で、他方のスライダ2は固定スライダ1の内側に挿脱される態様で前後方向にスライド可能な可動スライダ2としている。付勢手段3はコイルばねであり、固定スライダ1の筒状部1a内に設けられており、固定スライダ1に可動スライダ2を押し込むと、縮んだ状態から元の状態に復帰しようとして可動スライダ2を後方(固定スライダ1から離れる方向)に付勢する。
【0015】
この伸縮機構を構成する各部材の材質は、スライダ1,2はプラスチック製、係止部材4と付勢手段3は金属製とすることができるが、特にこれに限定されない。
【0016】
固定スライダ1の筒状部1aは四角筒状で、前端側(図1、図2では右側)の開口の大部分が壁で覆われ、後端側が開口している。筒状部1aの内部の前端側には、周壁の1つの面(図3では上側)寄りの位置に付勢手段保持部7が設けられている。付勢手段保持部7は棒状であり、付勢手段3の内側に挿入された状態となっている。
【0017】
また、付勢手段保持部7の反対側の周壁の面(図3では下側)寄りの位置に係止部材4が設けられている。係止部材4は、金属製等の棒であり、両端が略直角に曲がっており、その後端部を、後述の案内路5に案内される爪部4aとし、その前端部を付勢手段保持部7と一体に形成された壁8に設けた穴に差し込んで回動可能に支持されるようにしている。
【0018】
また、前記筒状部1aの前端付近には、内部に通じる開口部9と、当該開口部9から先端が内部に入り込むようにした押さえ片10が設けられている。この押さえ片10は、係止部材4の前端側寄りの位置を押さえ、爪部4a側が持ち上がった状態を維持するためのものである。さらに、前記筒状部1aの後端には、前端側に延びる切欠き11が設けられている。
【0019】
図4〜8に示したように、可動スライダ2は、固定スライダ1の筒状部1aに挿脱可能な四角筒状で、後端側には、前記切欠き11の位置と対応する周壁の面に、外方に突出するストッパー12が設けられており、可動スライダ2の必要以上の前方向への移動が規制されるようにしている。また、前記面の前端側には、後端と両側の壁を残して前後方向に延びる窪んだ領域13が存在し、当該領域13の表面に案内路5が形成されている。
【0020】
案内路5は、爪部4aよりやや大きい幅の溝状であり、図5等にあらわれているように、前記領域13の幅方向の一端側(図5では左側)の後端付近で屈曲し、中央でその反対側に屈曲し、さらに他端側で屈曲して前方に向かうM字状部分5a、M字状部分5aから連続して緩やかに幅方向中央へ曲がって前方に延びる斜行部分5b、斜行部分5bから連続して幅方向中央において前方に延びる略直線状部分5c、略直線状部分5cの前端付近から幅方向の一端側へ曲がって後方に延び、M字状部分5aに接続する復帰路部分5dからなる。
【0021】
前記略直線状部分5cには、その中間に図7等にあらわれているように、案内路5の溝の深さ方向に段差を有する2つの係止段6a,6bが設けられている。係止段の個数は1つでも3つ以上でもよい。前記略直線状部分5cの後方から前方の係止段6a,6bに向かう過程は、それぞれ緩やかな下り勾配となっている。前記M字状部分5aには段差14a〜14cが形成され、前記復帰路部分5dの後端からM字状部分5aを経て略直線状部分5cに至る過程は、昇り階段状となっており、前記略直線状部分5cの前端付近と復帰路部分5dとの間にも段差14dが形成され、略直線状部分5cから復帰路部分5dに至る過程が、昇り階段状となっている。
【0022】
また、可動スライダ2は付勢手段収容部15を有している。付勢手段収容部15は、前記案内路5の反対側に形成された、後端と両側の壁を残して前後方向に延びる窪んだ領域としている。
【0023】
係止部材4は筒状部1aの内部にあり、その爪部4aが案内路5から外れないようになっている。付勢手段3は、その両端が固定スライダ1と可動スライダ2の各壁面に当接しており、常時伸長しようとして可動スライダ2を固定スライダ1から離れる方向(後方)に付勢している状態にある。そのため、案内路5の前記略直線状部分5cにおいては、係止部材4の爪部4aが後方から前方の各係止段6a,6bに当接すると、その状態のまま維持されるようになっている。
【0024】
そして、この状態から前記付勢に抗して可動スライダ2を前方に押し込むと、爪部4aが係止段6a,6bから離れるとともに、当該箇所の案内路5が押爪部4aの進行方向(後方)に向かって上り勾配となっているため、係止部材4の爪部4a側が持ち上がり、この状態が前記押さえ片10によって維持されたままになり、可動スライダ2を押し込む力を弱めると、再び爪部4aが付勢手段3に付勢された可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが係止段6a,6bを乗り越えて案内路5の前端側に向かって進むことができるようになっている。
【0025】
このような構成により、案内路5の略直線状部分5cを爪部4aが進む過程において、可動スライダ2が段階的に停止した状態を維持できるようになっている。また、この過程では、爪部4aは高低差の変化はあるが、ほとんど幅方向への移動がないため、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって、爪部4aに無理な力が加わって係止部材4が破損することを防止することができる。
【0026】
なお、略直線状部分5cは、ほぼ直線状であることが望ましいが、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって爪部4aに無理な力が加わらない程度に、曲がっていてもよい。
【0027】
爪部4aは、前記M字状部分5aから斜行部分5bを経て略直線状部分5cに進み、さらに復帰路部分5dを経由して再びM字状部分5aに復帰することができる。
【0028】
次に、図9〜図12に基づいて、この伸縮機構の具体的な動作について説明する。なお、図9〜図12においては、各図の(a)が可動スライダ2の案内路5側の面、(b)が断面を示しており、固定スライダ1は図示を省略している。また、付勢手段3は、部分的に省略して図示しているが、その両端が固定スライダ1と可動スライダ2の各壁面に当接するようにしている。各図において左側が前方、右側が後方である。
【0029】
図9に示した最短状態では、係止部材4の爪部4aは案内路5のM字状部分5aの中央の前記屈曲箇所に位置しており、この状態で可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、爪部4aは前記斜行部分5bを経由して略直線状部分5cに入り、1段目の係止段6aに後方から当接した状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から1段目の係止段6aまでの距離分、伸長した状態となる(図10、第1伸長状態)。
【0030】
この第1伸長状態で、可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、前述のように、爪部4aが可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが1段目の係止段6aを乗り越えて案内路5の前端側に向かって進み、2段目の係止段6bに後方から当接した状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から2段目の係止段6bまでの距離分、伸長した状態となる(図11、第2伸長状態)。
【0031】
この第2伸長状態で、可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、前述と同様に、爪部4aが可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが2段目の係止段6bを乗り越えて案内路5の前端にまで到達してその状態が維持された状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から案内路5の前端までの距離分、伸長した状態となる(図12、最長状態)。
【0032】
この最長状態で、可動スライダ2を前方に押し込んでいくと、爪部4aは、前記略直線状部分5cの前端付近と復帰路部分5dとの間の段差14dにより、復帰路部分5dの方に案内され、再びM字状部分5aに復帰し、図9に示した最短状態に戻すことができる。
【0033】
この伸縮機構図は、特許文献1記載のものと同様に、段階的な伸縮機構を必要とする様々な装置に適用することができるが、その一例として給気用ないし換気用の通気装置に上記伸縮機構を適用することができる。
【0034】
すなわち、ここでは図示しないが、筒状の装置本体とその前面側に設けられた開閉蓋を有する通気装置において、装置本体内にこの伸縮機構を配置し、可動スライダ2を開閉蓋に取り付けて、開閉蓋の位置を段階的に調整可能とすることができる(特許文献1の図9参照)。
【0035】
以上がこの発明の好適な実施形態であるが、この考案は上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、形状、寸法、材質等を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1,2 スライダ
3 付勢手段
4 係止部材
4a 爪部
5 案内路
5c 略直線状部分
6a,6b 係止段
【技術分野】
【0001】
この発明は、給気装置や換気装置などの通気装置に設けられる通気路形成用の開閉蓋の開閉調整機構や、その他適宜の用途で利用される伸縮機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給気装置や換気装置などの通気装置に設けられる通気路形成用の開閉蓋の開閉調整機構に利用される伸縮機構に関し、特許文献1に記載のものがある。この従来の伸縮機構は、一方のスライダと、このスライダに伸縮自在に組み合わされる他方のスライダと、これら双方のスライダを伸び方向又は縮み方向の何れかのスライド方向へ付勢して相対的にスライドさせる付勢手段と、を備えてなり、前記一方のスライダにはその長手方向で凹状の伸縮路を設け、前記他方のスライダには凹状の該伸縮路に係入される爪部を有する係止部材を取り付けてあり、さらに前記伸縮路には、前記爪部と係止して双方のスライダのスライドを停止させる係止部と、この係止部から前記スライド方向と逆方向へ伸設した係止解除路と、この係止解除路の終端から前記スライド方向へ伸設され双方のスライダに相対的なスライド長を与えるスライド路と、が形成されたものとなっている(請求項1)。
【0003】
この従来の伸縮機構は、「係止動作が確実であるから信頼性が高く、また従来の『カム機構』のように回転するような動作要素がなく動作がシンプルであるから耐久性にも優れた伸縮機構とすることができる」(発明の効果欄)とされているが、係止部材6の爪部6aが伸縮路5の係止部7に位置するときに、無理に一方のスライダ2を他方のスライダ3に押し込もうとすると、係止部材6が破損する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2930936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、破損しにくい伸縮機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0007】
この発明の伸縮機構は、前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた係止段6a,6bに前記爪部4aが係止され、両スライダ1,2が停止した状態が維持されるものとしている。
【0008】
案内路5は溝状で、その後部から前部に至る略直線状部分5cに複数の係止段6a,6bが設けられたものとすることができる。
【0009】
また、通気装置本体に対し開閉蓋が前進した開位置で通気路を形成し、該開閉蓋が後退した閉位置で通気路を閉塞する通気装置において、開閉蓋の進退機構として前記伸縮機構を利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の伸縮機構は、上述のような構成を有しており、係止部材4の爪部4aが、略直線状部分5cを段階的に移動する際に、高低差の変化はあるが、ほとんど幅方向への移動がないため、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって、爪部4aに無理な力が加わって係止部材4が破損することを防止できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態の伸縮機構の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の伸縮機構の平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】スライダ(可動スライダ)の斜視図である。
【図5】スライダ(可動スライダ)の斜視図である。
【図6】スライダ(可動スライダ)の平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】伸縮機構の説明図(最短状態)である。
【図10】伸縮機構の説明図(第1伸長状態)である。
【図11】伸縮機構の説明図(第2伸長状態)である。
【図12】伸縮機構の説明図(最長状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
この伸縮機構は、前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ1,2と、両スライダ1,2を離反する方向に付勢する付勢手段3を備え、一方のスライダ1には爪部4aを有する係止部材4を取り付け、他方のスライダ2には前記爪部4aを案内する案内路5を設けてあり、前記案内路5は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分5cを有しており、この略直線状部分5cに設けられた、係止段6a,6bに前記爪部4aが係止することによって両スライダ1,2が停止した状態が維持されるようにしたものである。
【0014】
図1〜3に示したように、一方のスライダ1は筒状部1aを有する固定スライダ1で、他方のスライダ2は固定スライダ1の内側に挿脱される態様で前後方向にスライド可能な可動スライダ2としている。付勢手段3はコイルばねであり、固定スライダ1の筒状部1a内に設けられており、固定スライダ1に可動スライダ2を押し込むと、縮んだ状態から元の状態に復帰しようとして可動スライダ2を後方(固定スライダ1から離れる方向)に付勢する。
【0015】
この伸縮機構を構成する各部材の材質は、スライダ1,2はプラスチック製、係止部材4と付勢手段3は金属製とすることができるが、特にこれに限定されない。
【0016】
固定スライダ1の筒状部1aは四角筒状で、前端側(図1、図2では右側)の開口の大部分が壁で覆われ、後端側が開口している。筒状部1aの内部の前端側には、周壁の1つの面(図3では上側)寄りの位置に付勢手段保持部7が設けられている。付勢手段保持部7は棒状であり、付勢手段3の内側に挿入された状態となっている。
【0017】
また、付勢手段保持部7の反対側の周壁の面(図3では下側)寄りの位置に係止部材4が設けられている。係止部材4は、金属製等の棒であり、両端が略直角に曲がっており、その後端部を、後述の案内路5に案内される爪部4aとし、その前端部を付勢手段保持部7と一体に形成された壁8に設けた穴に差し込んで回動可能に支持されるようにしている。
【0018】
また、前記筒状部1aの前端付近には、内部に通じる開口部9と、当該開口部9から先端が内部に入り込むようにした押さえ片10が設けられている。この押さえ片10は、係止部材4の前端側寄りの位置を押さえ、爪部4a側が持ち上がった状態を維持するためのものである。さらに、前記筒状部1aの後端には、前端側に延びる切欠き11が設けられている。
【0019】
図4〜8に示したように、可動スライダ2は、固定スライダ1の筒状部1aに挿脱可能な四角筒状で、後端側には、前記切欠き11の位置と対応する周壁の面に、外方に突出するストッパー12が設けられており、可動スライダ2の必要以上の前方向への移動が規制されるようにしている。また、前記面の前端側には、後端と両側の壁を残して前後方向に延びる窪んだ領域13が存在し、当該領域13の表面に案内路5が形成されている。
【0020】
案内路5は、爪部4aよりやや大きい幅の溝状であり、図5等にあらわれているように、前記領域13の幅方向の一端側(図5では左側)の後端付近で屈曲し、中央でその反対側に屈曲し、さらに他端側で屈曲して前方に向かうM字状部分5a、M字状部分5aから連続して緩やかに幅方向中央へ曲がって前方に延びる斜行部分5b、斜行部分5bから連続して幅方向中央において前方に延びる略直線状部分5c、略直線状部分5cの前端付近から幅方向の一端側へ曲がって後方に延び、M字状部分5aに接続する復帰路部分5dからなる。
【0021】
前記略直線状部分5cには、その中間に図7等にあらわれているように、案内路5の溝の深さ方向に段差を有する2つの係止段6a,6bが設けられている。係止段の個数は1つでも3つ以上でもよい。前記略直線状部分5cの後方から前方の係止段6a,6bに向かう過程は、それぞれ緩やかな下り勾配となっている。前記M字状部分5aには段差14a〜14cが形成され、前記復帰路部分5dの後端からM字状部分5aを経て略直線状部分5cに至る過程は、昇り階段状となっており、前記略直線状部分5cの前端付近と復帰路部分5dとの間にも段差14dが形成され、略直線状部分5cから復帰路部分5dに至る過程が、昇り階段状となっている。
【0022】
また、可動スライダ2は付勢手段収容部15を有している。付勢手段収容部15は、前記案内路5の反対側に形成された、後端と両側の壁を残して前後方向に延びる窪んだ領域としている。
【0023】
係止部材4は筒状部1aの内部にあり、その爪部4aが案内路5から外れないようになっている。付勢手段3は、その両端が固定スライダ1と可動スライダ2の各壁面に当接しており、常時伸長しようとして可動スライダ2を固定スライダ1から離れる方向(後方)に付勢している状態にある。そのため、案内路5の前記略直線状部分5cにおいては、係止部材4の爪部4aが後方から前方の各係止段6a,6bに当接すると、その状態のまま維持されるようになっている。
【0024】
そして、この状態から前記付勢に抗して可動スライダ2を前方に押し込むと、爪部4aが係止段6a,6bから離れるとともに、当該箇所の案内路5が押爪部4aの進行方向(後方)に向かって上り勾配となっているため、係止部材4の爪部4a側が持ち上がり、この状態が前記押さえ片10によって維持されたままになり、可動スライダ2を押し込む力を弱めると、再び爪部4aが付勢手段3に付勢された可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが係止段6a,6bを乗り越えて案内路5の前端側に向かって進むことができるようになっている。
【0025】
このような構成により、案内路5の略直線状部分5cを爪部4aが進む過程において、可動スライダ2が段階的に停止した状態を維持できるようになっている。また、この過程では、爪部4aは高低差の変化はあるが、ほとんど幅方向への移動がないため、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって、爪部4aに無理な力が加わって係止部材4が破損することを防止することができる。
【0026】
なお、略直線状部分5cは、ほぼ直線状であることが望ましいが、可動スライダ2の前方への押し込み操作によって爪部4aに無理な力が加わらない程度に、曲がっていてもよい。
【0027】
爪部4aは、前記M字状部分5aから斜行部分5bを経て略直線状部分5cに進み、さらに復帰路部分5dを経由して再びM字状部分5aに復帰することができる。
【0028】
次に、図9〜図12に基づいて、この伸縮機構の具体的な動作について説明する。なお、図9〜図12においては、各図の(a)が可動スライダ2の案内路5側の面、(b)が断面を示しており、固定スライダ1は図示を省略している。また、付勢手段3は、部分的に省略して図示しているが、その両端が固定スライダ1と可動スライダ2の各壁面に当接するようにしている。各図において左側が前方、右側が後方である。
【0029】
図9に示した最短状態では、係止部材4の爪部4aは案内路5のM字状部分5aの中央の前記屈曲箇所に位置しており、この状態で可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、爪部4aは前記斜行部分5bを経由して略直線状部分5cに入り、1段目の係止段6aに後方から当接した状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から1段目の係止段6aまでの距離分、伸長した状態となる(図10、第1伸長状態)。
【0030】
この第1伸長状態で、可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、前述のように、爪部4aが可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが1段目の係止段6aを乗り越えて案内路5の前端側に向かって進み、2段目の係止段6bに後方から当接した状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から2段目の係止段6bまでの距離分、伸長した状態となる(図11、第2伸長状態)。
【0031】
この第2伸長状態で、可動スライダ2を前方に押し込み、そして押し込む力を弱めると、前述と同様に、爪部4aが可動スライダ2に対して前方に相対的に移動し、爪部4aが2段目の係止段6bを乗り越えて案内路5の前端にまで到達してその状態が維持された状態になる。このとき、伸縮機構はM字状部分5aの前記屈曲箇所から案内路5の前端までの距離分、伸長した状態となる(図12、最長状態)。
【0032】
この最長状態で、可動スライダ2を前方に押し込んでいくと、爪部4aは、前記略直線状部分5cの前端付近と復帰路部分5dとの間の段差14dにより、復帰路部分5dの方に案内され、再びM字状部分5aに復帰し、図9に示した最短状態に戻すことができる。
【0033】
この伸縮機構図は、特許文献1記載のものと同様に、段階的な伸縮機構を必要とする様々な装置に適用することができるが、その一例として給気用ないし換気用の通気装置に上記伸縮機構を適用することができる。
【0034】
すなわち、ここでは図示しないが、筒状の装置本体とその前面側に設けられた開閉蓋を有する通気装置において、装置本体内にこの伸縮機構を配置し、可動スライダ2を開閉蓋に取り付けて、開閉蓋の位置を段階的に調整可能とすることができる(特許文献1の図9参照)。
【0035】
以上がこの発明の好適な実施形態であるが、この考案は上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、形状、寸法、材質等を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1,2 スライダ
3 付勢手段
4 係止部材
4a 爪部
5 案内路
5c 略直線状部分
6a,6b 係止段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ(1)(2)と、両スライダ(1)(2)を離反する方向に付勢する付勢手段(3)を備え、一方のスライダ(1)には爪部(4a)を有する係止部材(4)を取り付け、他方のスライダ(2)には前記爪部(4a)を案内する案内路(5)を設けてあり、前記案内路(5)は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分(5c)を有しており、この略直線状部分(5c)に設けられた係止段(6a)(6b)に前記爪部(4a)が係止され、両スライダ(1)(2)が停止した状態が維持されるようにしていることを特徴とする伸縮機構。
【請求項2】
案内路(5)は溝状で、その後部から前部に至る略直線状部分(5c)に複数の係止段(6a)(6b)が設けられている請求項1記載の伸縮機構。
【請求項3】
通気装置本体に対し開閉蓋が前進した開位置で通気路を形成し、該開閉蓋が後退した閉位置で通気路を閉塞する通気装置において、開閉蓋の進退機構として請求項1又は2記載の伸縮機構を利用したことを特徴とする通気装置。
【請求項1】
前後方向にスライド可能に組み合わされる2つのスライダ(1)(2)と、両スライダ(1)(2)を離反する方向に付勢する付勢手段(3)を備え、一方のスライダ(1)には爪部(4a)を有する係止部材(4)を取り付け、他方のスライダ(2)には前記爪部(4a)を案内する案内路(5)を設けてあり、前記案内路(5)は後部から前部を経て再び後部に至るループ状で、後部から前部に至る過程に略直線状部分(5c)を有しており、この略直線状部分(5c)に設けられた係止段(6a)(6b)に前記爪部(4a)が係止され、両スライダ(1)(2)が停止した状態が維持されるようにしていることを特徴とする伸縮機構。
【請求項2】
案内路(5)は溝状で、その後部から前部に至る略直線状部分(5c)に複数の係止段(6a)(6b)が設けられている請求項1記載の伸縮機構。
【請求項3】
通気装置本体に対し開閉蓋が前進した開位置で通気路を形成し、該開閉蓋が後退した閉位置で通気路を閉塞する通気装置において、開閉蓋の進退機構として請求項1又は2記載の伸縮機構を利用したことを特徴とする通気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−92898(P2012−92898A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240404(P2010−240404)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(591003127)大建プラスチックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(591003127)大建プラスチックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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