説明

位相変調光変調器及び位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法

本発明は、位相変調光変調器及び位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法に関するものである。位相変調光変調器は、少なくとも1つの光学活性ボリューム領域及び複数の境界面を有する光学活性レイヤを具備する。光学活性レイヤは、固定屈折率楕円体を含む少なくとも1つの複屈折材料から成る少なくとも1つの透明補償ボリューム領域を割り当てられる。位相変調光変調器は、出力側に配置された偏光子を更に有する。本目的は、観察角領域(L‐S‐R)における平均振幅変調の角度依存性の低減を実現することである。本目的は、光学活性レイヤ及び補償レイヤの屈折率楕円体の互いに関する向きをシミュレーションによって最適化することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光学活性バルク領域及び複数の境界面を有する光学活性レイヤを具備し、光学活性レイヤの固定された向きを生成する手段が境界面に配置され、光学活性レイヤが予め配向された屈折率楕円体を含む液晶を具備し、液晶の固定された向きを生成する手段によって予め配向された屈折率楕円体の向きを画素ごとに個別に制御でき、かつ、光学活性レイヤが固定屈折率楕円体を含む少なくとも1つの複屈折材料から成る少なくとも1つの透明補償バルク領域と関連するような位相変調光変調器及びそのような位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばホログラフィに適用される空間光変調器(SLM)は、特定の可視光を反射又は透過し、かつ、光学体積特性を一時的に変更できる光学素子である。光学体積特性は画素ごとに別個に変更可能である。
【0003】
例えば電界を印加することにより、光学体積特性を一時的に変更できる。狭い表面領域で電界を個別に制御できるため、ホログラフィの多くの用途に対して、光学的特性を画素ごとに個別に十分な精密さで制御可能である。例えば、観察者の距離から見て実在の物体により放射された波面に似るように、光変調器を通過する間の入射波面を修正、すなわち変調するために、光学的特性が個別に制御可能であるという利点を利用できる。光変調器が適切に制御されれば、観察の時点で現実に物体を存在させる必要なくホログラフィによって物体を再構成することが可能になる。
【0004】
光変調器の機能原理は、光学体積特性が外部から制御可能な少なくとも1つの物理的パラメータに依存し、かつ、特にそのパラメータを変化させることにより影響を受ける光学活性レイヤに基づく。それらの物理的パラメータは電界強度であってもよい。しかし、光学活性レイヤの光学体積特性に特定の変更を加えるために、例えば音圧などの他の物理的パラメータが既に正常に使用されている。
【0005】
透過型光変調器は、通常、入射偏光子及び射出偏光子を有する。これに対し、反射型光変調器は、入射偏光子と射出偏光子とが組み合わされた偏光子を具備できる。
【0006】
光変調器の最も一般的な機能原理は、複屈折材料から製造された層を利用する。この層は電気的に制御可能な境界面の間、特にガラス板の間に埋め込まれ、向きを制御できる液晶(LC)の形態をとる。複屈折材料層は画素ごとに体積単位で個別にアドレス指定可能であり、以下の説明中、それらの体積単位は液晶セルと呼ばれる。制御は、個別の液晶セルにおいて液晶の屈折率楕円体に影響を及ぼす。通過する光の方向に対する屈折率楕円体の形態又は向きの変化は、複屈折層内の光の光路長及び複屈折層を通過する光の偏光に複屈折層が与える効果の双方を変化させる。従って、屈折率楕円体は、光の入射角に応じて光との相互作用の中である特定のボリュームの複屈折物質により示される有効屈折率の方向依存性を表すマクロモデルである。屈折率楕円体の位置及び形態は、主に、考慮すべきボリュームに埋め込まれた液晶の向き及び特性によって決まる。しかし、個々のケースで、屈折率楕円体は液晶の向きと同一であるとは限らない。それにも関わらず、以下の説明中、複屈折ボリューム内の液晶の向きに応じて変化する明白な状態を特徴付けるために屈折率楕円体が使用される。波面が光変調器を通過する場合、画素ごとの別個の振幅変調及び/又は位相変調によって波面は変化する。ある特定の透過角範囲においてそれら2種類の変調を互いに完全に無関係に実現できる光変調器は存在しないため、少なくとも1種類の変調を可能な限り効率よく実現できるように光変調器は設計される。
【0007】
特に位相変調光変調器に関連する1つの問題は、光の透過角に応じて種々の形で現れる副次効果によって妨害が起こる可能性があることである。大きな副次効果の1つは、光変調器の透過率の角度依存性であり、従来の光変調器が使用される場合、この副次効果は十分に補償されない。その結果、位相変調光変調器に望ましくない角度依存振幅変調が起こる。
【0008】
種々の光振幅変調光変調器が周知であり、2次元(2D)表示装置において広く使用されている。従って、振幅変調光変調器は広い波長範囲及び広い視野角範囲で動作するように既に設計されている。透過率の波長依存性は、異なる波長(赤R、緑G、青B)における校正によって補償される。R、G又はBで所定の透過率を実現するために、R、G及びBに対して液晶セルにそれぞれ異なる電圧が供給されなければならない。
【0009】
視野角範囲内で観察者が斜めに光変調器を見る場合、異なる角度で液晶層を通過し、それにより、屈折率楕円体の中で異なる屈折率と相互に作用する光のみを観察者が認知することによって、角度依存性が発生する。従って、光は射出偏光子で異なる偏光状態を示し、光変調器は異なる角度依存透過率を示すことになる。
【0010】
欧州特許第0,793,133号公報及び米国特許第6,141,075号公報は、角度依存性を補償するために、複屈折1軸性材料又は複屈折2軸性材料から成る補償膜が振幅変調光変調器の境界面又はガラス板に配置された液晶表示装置を説明する。複屈折材料の向きは、複屈折材料の屈折率楕円体が液晶層の屈折率楕円体に対して相補形であるように規定される。従って、ある特定の角度範囲内において、光は視野角とは無関係な有効屈折率を示す。液晶層の屈折率及び補償膜の屈折率の角度依存性は、互いにほぼ補償しあう。
【0011】
1つの問題は、この補償方法が液晶のある特定の角度に対してのみ可能であり、従って、ある特定の透過率に対してのみ可能であることである。液晶角度が異なれば、それに関連する透過率も異なるので、補償膜はその透過率に適合しない。光変調器の高いコントラストを実現するために、光変調器は良好な黒色条件、すなわち透過率が0の条件に対して補償される。
【0012】
このように、例えば一方のガラス板又は双方のガラス板に1つ以上の補償膜を塗布することにより、あるいはLC層に隣接して補償膜を配置することにより、振幅変調光変調器の角度依存性を少なくとも部分的に低減できる。補償膜は1軸性複屈折材料又は2軸性複屈折材料から形成される。屈折率及び向きは、振幅変調光変調器のある特定の条件に適合される。光の入射角に関わらず、液晶及び補償膜の屈折率の和が常に同一であるように屈折率及び向きが設定されるのが理想的である。例えば液晶の屈折率楕円体が長めの葉巻に似た形状である場合及び楕円体の半長軸がガラス板に対して垂直な向きである場合、補償膜の屈折率楕円体は、パンケーキのように平坦であり、かつ、ガラス板と平行な向きを有していなければならない。その場合、光変調器の面法線は常に補償膜の屈折率楕円体の対称軸又は長軸を表す。
【0013】
通常、振幅変調光変調器は、広い角度範囲で高いコントラストを示すように最適化される。このために、補償膜は、黒色条件に対応する液晶の向きに適合される。その際、振幅変調光変調器の角度依存性を補償するために、補償膜が液晶がある特定の方向への配向で光変調器のある特定の条件に適合されるということに注意すべきである。
【0014】
上述の方法の1つの欠点は、常に1つの特定の透過率値しか補償できないために、広範囲にわたる急速に変化する透過率値には適さないことである。
【0015】
更に、種々の波長(R、G、B)で位相変調光変調器を校正することによって位相変調光変調器の波長依存性を補償することも周知である。しかし、この校正は位相変調光変調器の透過率の角度依存性を考慮に入れない。
【0016】
S. Somalingam「Verbesserung der Schaltdynamik nematischer Fluessigkristalle fur adaptive optische Anwendungen」(博士論文、Darmstadt University of Technology、2006年3月)は、液晶セルの形態をとる位相変調光変調器を説明する。液晶の当初の向きに従って、液晶セルはフレデリックセル、歪み配向位相(DAP)セル及びツイストネマティック(TN)セルに分類される。それらのセルは、電界の作用によって入射光の位相を変調する能力を共通して有する。
【0017】
フレデリックセルの場合、液晶は正の誘電異方性を有するため、液晶は電極と平行な方向に配向する。そのため、2つの偏光の間の最大位相遅れは、電界が印加されていない場合に実現する。
【0018】
DAPセルの場合、液晶は負の誘電異方性を有するので、液晶は電極に対して垂直な方向に配向する。そのため、液晶が最大偏向を有する場合に最大位相遅れが実現する。
【0019】
TNセルの場合、液晶は互いに対して90°の角度でねじれるように配向するため、直線偏光された入射光の偏光はセルの厚さに沿って回転される。電界が印加されると、液晶のねじれ配向は破壊されるので、偏光のねじれを維持できない。
【0020】
以上の説明を例示するために、図1は、画素関連フレデリックセルに基づく位相変調光変調器10を示す概略図であり、特に3つの画素1、2、3を含む詳細構造を示す。光変調器10は、複数の液晶9を含む複屈折層8を具備する。電極4、5、6及び7の間に電界を印加することによって複屈折層8の光学的特性を制御できる。電極4、5及び6には変調電圧UM1、UM2及びUM3がそれぞれ供給され、電極7には接地電位が供給される。軸の比と、主要な軸、すなわち長軸及び長軸に対して垂直な2つの短軸の向きとにより特徴付けられる屈折率楕円体を利用して、電界の制御によって達成される光学的特性の条件を説明する。複屈折層8は、電極4、5、6及び7を配置できる平行な境界面17、18により限定される。画素ごとに個別に、最大の選択性で液晶9の制御を可能にするために、電極4、5、6及び7は、複屈折層8の境界面17、18に少なくともごく近接して配置される。図1に示されるように、複屈折層8の一方の境界面18に配置された電極7に供給される共通電位に対して画素ごとに特定の変調電圧UM1〜UM3を印加することにより、複屈折層8の他方の境界面17に画素を形成するように構成された電極4、5及び6を利用して、電界は画素ごとに個別に制御される。図示されるように、共通電位は共通接地電位Gである。変調電圧UM1〜UM3はそれぞれ異なる値を有し、電極7の共通接地電位Gと組み合わされて異なる電界強度を発生する。電界強度が異なることによって、液晶9の向き、すなわち複屈折層8における液晶分子の向き91、92及び93に差異が生じる。その結果、異なる電界強度にさらされる複屈折層8の個々のバルク領域11、12及び13における屈折率楕円体は異なる位置をとるようになり、屈折率楕円体の長軸に対する向きの相違により、これを例示できる。
【0021】
図2A、図2B及び図2Cは、位相変調光変調器10の画素1、2及び3の横断面図を示す。図をわかりやすくするために、液晶9、91、92及び93並びに下部ガラス板19及び上部ガラス板20のみを示す。
【0022】
画素1、2及び3は、ねじれのない、すなわち螺旋構造のない複屈折液晶9、91、92及び93を具備する。上部ガラス板19及び下部ガラス板20にそれぞれ隣接する周縁領域14、15と異なり、液晶9がガラス板19、20と同一の向きを有する場合、バルク領域11、12及び13に含まれる液晶91、92及び93は互いにほぼ平行な向きを有する。「平行な向き」という用語は、互いに同一の軸の比を有し、かつ、平行に配する向屈折率楕円体を利用して、画素サイズより小さい寸法を有するバルク領域11、12及び13の光学的特性を説明できるという効果が少なくとも得られるように複屈折層8の光学的特性を均質化する構成であると理解されるべきである。説明を簡単にするため、以下の説明中、「液晶9、91、92、93’の向き」という用語のみを使用する。
【0023】
位相変調を実現するために、電界は、液晶91、92、93とガラス板19、20とが成す極角αを変化させ、従って、複屈折層8の有効屈折率を変化させる。その結果、複屈折層8を通過するある特定の偏光の光に対して、複屈折層8を通る光路の長さが変化する。これにより、それぞれ異なる制御による画素1、2及び3を射出する光がそれぞれ異なる位相状態を示すという効果が得られる。
【0024】
図2A〜図2Cは、複屈折層8の上下に配置された電極(図示せず)の間で発生される異なる電界に対する液晶9、91、92及び93の向き並びに屈折率楕円体の向きを示す。図示される屈折率楕円体により、液晶9、91、92及び93を表現できる。長軸61(楕円体のz軸)の方向に異常屈折率nが適用され、1軸性液晶において垂直な短軸62(楕円体のx軸及びy軸)の方向には通常屈折率nが適用される。2つの異なる短軸を有する2軸性液晶の場合、通常屈折率nではなく、x及びyの2つの軸62に関連する2つの値n及びnが使用される。n>nである1軸性液晶の場合、屈折率楕円体は液晶9、91、92、93と同一の向きを有する。
【0025】
図2Aは、電界が印加されていない状態(UM1=G)の画素1を示す。液晶9、91はガラス板19、20の面法線16に対して90°の極角αを成す向き、すなわち上部ガラス板19及び下部ガラス板20と平行な向きを有する。
【0026】
図2Bは、最大電界を印加された状態の画素2を示す。この場合、液晶92は、周縁領域14、15を除いて約0°の極角αを成す向きを有する。周縁領域14、15において、ガラス板19、20付近の境界面効果により、液晶9は電界強度に関係なくガラス板19、20とほぼ平行に配向する。しかし、ガラス板19、20に沿って平行に配向した液晶9を含む周縁領域14、15は非常に薄いため、光変調器10の光学的特性を説明する際、それらの領域の影響を無視してもよい。
【0027】
図2Cは、中程度の電界にさらされた画素3を示す。液晶93はガラス板19、20に対して斜角、特に約45°の極角α3を成す方向に配向する。
【0028】
図2A〜図2C中の矢印は、斜角を成して光変調器10を透過した光を観察者が見た場合の効果を示す。矢印Sは直角に透過した光を表し、矢印L及びRは、左側及び右側からそれぞれ斜めに透過した光を表す。光はそれぞれ異なる角度で光変調器10を通過し、従って、屈折率楕円体に関して異なる向きで通過するため、光はその都度異なる遅延を生じ、偏光状態も変化する。
【0029】
光が斜角L、Rを成して透過した場合、入射偏光子を通過した後に光変調器10に入射した時点で直線偏光されていた光は、光変調器10から射出する時点では、通常、直線偏光ではなくなっている。射出偏光子が使用される場合、この非直線偏光状態は、位相変調光変調器10の作用を乱す振幅変調として表される。
【0030】
図2Cは、中程度の電界が印加され、液晶93が斜角を成す方向に配向した画素3を示す。この画素において、透過角範囲又は視野角範囲L‐S‐Rの中で透過される光を観察者が認知する時点で偏光状態の変化、従って振幅変調の程度は最大になる。液晶93に対する光の相対的な向きは、図2A及び図2Bに示される液晶91、92の向きと比較して更に大幅に変化する。
【0031】
液晶91、92及び93の向き並びに図2A〜図2Cに示される屈折率楕円体の向きは、位相変調光変調器10において液晶及び屈折率楕円体がとりうる向きの単なる例である。
【0032】
特に照明に使用される光源が変位される場合又は複数の光源が同時に使用される場合、位相変調光変調器の振幅変調の角度依存性が補償されなければならない。例えばホログラフィックディスプレイ装置において、視野角範囲L‐S‐Rの中で移動する観察者に対して観察者ウィンドウを追跡しなければならない場合に変位自在の光源は必要である。その意味で、観察者ウィンドウは観察者平面にある仮想ウィンドウであり、観察者は、その仮想ウィンドウを通して物体の再構成ホログラムを見ることになる。このような状況下で、光は種々の斜角を成して位相変調光変調器を通過し、視野角範囲L‐S‐R内で透過角を変化させることによってのみ光の偏光状態は変化する。望ましくない偏光状態を阻止するために偏光フィルタが使用される場合、偏光状態の変化によって更に別の振幅変調が起こり、その結果、角度に依存する低品質の再構成ホログラムしか得られなくなってしまう。
【0033】
光学活性レイヤと関連して振幅変調光変調器に使用される補償膜及び補償バルク領域は、下記の非特許文献1、2及び特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0155997A1号明細書
【特許文献2】独国特許第68917914T2号明細書
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】De Bougrenet de la Tocnaye他「Complex amplitude modulation by use of liquid-crystal spatial light modulators」、Appl. Optics 36、No. 8、1997年、1730ページ
【非特許文献2】Ernst Lueder「Liquid crystal displays」、Chichester(他)、Wiley、2001年(2005年再版)(Wiley-SiD series in display technology)、ISBN: 0-471-49029-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
1つの問題は、位相変調光変調器の視野角範囲L‐S‐Rが広い場合、上述の補償膜及び補償バルク領域の使用によって透過率又は反射率の角度依存性、従って振幅変調の角度依存性を大きく低減できないことである。
【0037】
従って、本発明の目的は、透過率又は反射率の角度依存性が所定の視野角範囲内で透過角を変化させることにより位相変調光変調器を通過する光の偏光状態の変化を表す場合、視野角範囲内で透過率又は反射率の角度依存性の低減が実現されるように設計された位相変調光変調器及び位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法を提供することである。本発明の位相変調器が例えばホログラフィックディスプレイ装置に使用される場合、大きな視野角でカラーシーンを再構成する時に再構成画質が改善される。この画質向上は、小さな観察者ウィンドウが実現される場合に特に保証される。
【0038】
従って、本発明の目的は、透過率又は反射率の角度依存性が所定の視野角範囲内で透過角を変化させることにより位相変調光変調器を通過する光の偏光状態の変化を表す場合、視野角範囲内で透過率又は反射率の角度依存性の低減が実現されるように設計された位相変調光変調器及び位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法を提供することである。本発明の位相変調器が例えばホログラフィックディスプレイ装置に使用される場合、大きな視野角でカラーシーンを再構成する時に再構成画質が改善される。この画質向上は、小さな観察者ウィンドウが実現される場合に特に保証される。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記の目的は請求項1及び12の特徴により達成される。
【0040】
ホログラフィックディスプレイ装置に使用するための位相変調光変調器は、少なくとも1つの光学活性バルク領域と光学活性レイヤの固定された向きを生成する手段が配置される複数の境界面とを有する光学活性レイヤであり、予め配向された屈折率楕円体を含む液晶を具備し、液晶の固定された向きを生成する手段によって屈折率楕円体の向きを画素ごとに個別に制御でき、かつ、固定屈折率楕円体を含む少なくとも1つの複屈折材料から成る少なくとも1つの透明補償バルク領域と関連する光学活性レイヤと、
射出側に配置された偏光子とを具備し、
請求項1の特徴記載部分によれば、
所定の視野角範囲L‐S‐R内において平均振幅変調が最小値を示すように、補償バルク領域の屈折率楕円体は、所定の視野角範囲L‐S‐R内の光学活性レイヤの制御可能な屈折率楕円体の向きに応じて光学活性レイヤの屈折率楕円体に対して向きを規定される。
【0041】
光学活性レイヤの隣にすぐ隣接した又は複数のガラス板の1つに隣接した境界面のうち1つに配置された透明複屈折補償膜により補償バルク領域が形成されてもよい。
【0042】
光学活性レイヤの両側の境界面に配置された2つの透明複屈折補償膜により補償バルク領域が形成されてもよい。
【0043】
複屈折補償膜は固定液晶から構成されてもよい。2つの補償膜は、均一の補償角θで配向した固定液晶を含んでもよく、それらの液晶の補償角θは、光学活性レイヤ中の液晶の極角αの対角である。
【0044】
あるいは、2つの補償膜は、液晶の一定の負の補償角θ及び一定の正の補償角θを成して互いに交差する向きを有してもよい。
【0045】
光学活性レイヤは、固定された方向に配向した液晶を更に具備してもよく、個別の閉鎖スペース領域及び画素関連領域を有する透明複屈折マトリクスが光学活性レイヤに埋め込まれる。それらの領域は向きを規定できる制御可能な液晶を含み、それらの領域の中で、液晶の静止状態を生成する手段によって液晶の向きを制御できる。
【0046】
通常、光学活性レイヤの画素に割り当てられる電極は、液晶の静止状態を生成する手段として設けられる。
【0047】
位相変調光変調器はフレデリックセル及び/又はDAPセル及び/又はTNセルを具備してもよい。
【0048】
所定の視野角範囲L‐S‐R内において、光変調器の被制御位相変調中に起こる光学活性レイヤの屈折率楕円体及び透明補償バルク領域の屈折率楕円体の全ての向きに対して光変調器の振幅変調の平均化が実行される場合に光変調器の平均振幅変調が最小値を示すように、補償バルク領域内の一定の向きの液晶が配向する。
【0049】
更に、所定の視野角範囲L‐S‐R内において、光変調器の被制御位相変調中に起こる光学活性レイヤの屈折率楕円体及び補償バルク領域の屈折率楕円体の全ての向きに対して所定の重み付け係数で光変調器の振幅変調の平均化が実行される場合に光変調器の平均振幅変調が最小限値を示すように、補償バルク領域内の一定の向きの液晶を配向してもよい。
【0050】
画素ごとに個別に制御できる屈折率楕円体を含む少なくとも1つの透明光学活性バルク領域と、固定屈折率楕円体を含む少なくとも1つの複屈折材料から成る少なくとも1つの透明光学活性補償バルク領域とを具備し、透明光学活性バルク領域及び透明光学活性補償バルク領域が観察者により認知される光が双方のバルク領域を通過するように配置される位相変調光変調器における振幅変調を最小限に抑える方法は、位相変調光変調器で使用するために提供される。請求項12の特徴記載部分によれば、所定の視野角範囲L‐S‐R内において、光変調器の被制御位相変調中に起こる透明補償バルク領域を含む光学活性バルク領域の屈折率楕円体の全ての向きに対して光変調器の振幅変調の平均化が実行される場合に視野角範囲L‐S‐R内における光変調器の平均振幅変調が最小値を示すように、透明補償バルク領域内の固定屈率楕円体を含む複屈折材料の向きが選択される。
【0051】
詳細には、方法は、
−平均振幅変調が最小値を示す視野角範囲L‐S‐Rを定義するステップと、
−光変調器に外側から供給され、かつ、光学活性レイヤの屈折率楕円体に影響を及ぼすパラメータUM1、UM2、UM3が変調中に変化する変化範囲を定義するステップと、
−透明補償バルク領域内の固定屈折率楕円体を含む複屈折材料の第1の向きを定義するステップと;
−光変調器の透過率又は反射率の数値シミュレーションを経て平均振幅変調を計算するとともに、全視野角範囲L‐S‐Rにわたり視野角を変化させ、かつ、光変調器に外側から供給されるパラメータを全変化範囲にわたり変化させることにより、透明補償バルク領域内の固定屈折率楕円体を含む複屈折材料の第1の向きに対する透過率変化範囲又は反射率変化範囲を導出するステップと、
−透明補償バルク領域内の固定屈折率楕円体を含む複屈折材料の別の向きを定義し、透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す透明補償バルク領域内の固定屈折率楕円体を含む複屈折材料の向きが導出されるまで数値シミュレーションを繰り返すステップと、
−透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す固定屈折率楕円体の向きで複屈折材料が配置されている補償バルク領域を選択し、かつ、定義するステップとを含む。
【0052】
振幅変調の最小値を判定する場合、種々の視野角L、S、Rに対して、数値シミュレーションにおいて導出される光変調器の透過率又は反射率にそれぞれ異なる重み付け係数で重み付けしてもよい。
【0053】
透明補償バルク領域内の固定屈折率楕円体を含む複屈折材料は、固定屈折率楕円体を含む液晶がそれぞれの向きで埋め込まれている少なくとも1つの複屈折透明補償膜を使用することにより透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す向きで配置されてもよい。
【0054】
平均振幅変調の最小値を判定する場合、透過型位相変調光変調器の場合は透過角範囲、また、反射型位相変調光変調器の場合は反射角範囲で、視野角範囲L‐S‐Rが考慮されてもよい。
【0055】
ホログラフィックディスプレイ装置に使用するための光変調器は、液晶から成る少なくとも1つの複屈折層を具備してもよい。屈折率楕円体は、電界を印加することにより画素ごとに個別に制御されてもよい。屈折率楕円体は、複屈折層の面法線に対して非対称である少なくとも1つの補償バルク領域を具備し、補償バルク領域は、複屈折層の少なくとも1つの波長依存光学効果及び/又は角度依存光学効果に対抗する。
【0056】
本発明は、固定複屈折液晶を含む少なくとも1つの補償膜が複屈折層の外側に配置される位相変調光変調器を提供することを可能にした。固定複屈折液晶を含む少なくとも1つの補償膜は、複屈折層の外側の両側に配置されてもよい。いずれの場合にも、光変調器の各制御状態において、補償バルク領域内の固定複屈折液晶の屈折率楕円体の向きが光変調器の複屈折層内の向きを規定可能な液晶の屈折率楕円体の向きと異なるように、補償バルク領域内の固定複屈折液晶は配向する。そのため、光変調器の複屈折層の面法線は、複屈折層中の液晶の屈折率楕円体の対称軸にはならない。従って、1軸性複屈折材料又は2軸性複屈折材料から成る少なくとも1つの複屈折補償膜が位相変調光変調器に配置された場合、光変調器の振幅変調の角度依存性は少なくとも部分的に補償される。補償膜を形成する1軸性複屈折材料又は2軸性複屈折材料は、光変調器を透過する光又は光変調器から反射される光の角度依存振幅変調が光の広い視野角範囲L‐S‐Rで大幅に阻止されるように向きを規定され、かつ、そのような屈折率を示す。
【0057】
以下に、いくつかの実施形態及び添付の図面を利用して本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来の位相変調光変調器の3つの画素を含む詳細構造を示す概略図である。
【図2A】図1に示される画素の異なる制御状態を示す概略図であり、電界が印加されておらず、液晶が電極と平行になるように事前に向きを規定されている場合の画素を示す図である。
【図2B】図1に示される画素の異なる制御状態を示す概略図であり、最大電界が印加されており、液晶が電極に対してほぼ垂直な向きに配向する場合の画素を示す図である。
【図2C】図1に示される画素の異なる制御状態を示す概略図であり、中程度の電界が印加されており、液晶が電極に対して斜角を成す向きに配向する場合の画素を示す図である。
【図3】補償膜が配置された位相変調光変調器の3つの画素を含む詳細構造を示す概略図である。
【図4A】境界面に補償膜が配置された光変調器の位相変調画素を示す概略図であり、2つの補償膜が互いに交差する長軸を含む屈折率楕円体を有する場合を示す図である。
【図4B】境界面に補償膜が配置された光変調器の位相変調画素を示す概略図であり、2つの補償膜が互いに平行な長軸を含む屈折率楕円体を有する場合を示す図である。
【図5】向きを制御できる液晶を含み、かつ、補償レイヤとして作用する領域が光学活性レイヤに埋め込まれている光変調器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図3は、従来の光学活性レイヤ8とほぼ同一である光学活性レイヤ8を有する位相変調光変調器30の3つの画素1、2、3を含む詳細構造を示す概略図である。従って、光変調器30は、電極4、5、6及び7の間に電界を印加することによって向きを制御できる液晶9、91、92、93を含む複屈折層8を具備する。電極4、5及び6には変調電圧UM1、UM2及びUM3がそれぞれ供給され、電極7には接地電位Gが供給される。光変調器は、射出側に偏光子(図示せず)を更に具備する。
【0060】
屈折率楕円体61を利用して、電界を制御することによって実現される光学的特性の条件を説明できる。図2Cに示されるように、屈折率楕円体61は軸の比と、主軸、すなわち長軸62及び2つの短軸63の向きとにより特徴付けられる。複屈折層8は、電極4、5、6及び7を配置できる平行な境界層17、18により限定される。画素ごとに、最大の選択性で液晶91、92、93を個別に回転させることを可能にするために、電極4、5、6及び7は少なくとも複屈折層8の境界面17、18にすぐ隣接して配置される。図3に示されるように、複屈折層8の一方の境界面18に配置された電極7に供給される共通電位に対して、画素ごとに別個に変調電圧UM1〜UM3を印加することによって複屈折層8の他方の境界面17に画素を形成するように構成された電極7、8及び9を使用して、電界は画素ごとに別個に制御される。共通電位は共通接地電位Gとして示される。変調電圧UM1〜UM3はそれぞれ異なる値を有し、電極7の共通接地電位Gと組み合わされて異なる電界強度を発生する。電界強度の相違により複屈折層8内の液晶91、92、93はそれぞれ異なる向きに配向し、その結果、複屈折層8の個々のバルク領域11、12及び13がそれぞれ異なる電界強度にさらされるため、バルク領域11、12及び13の光学的特性はそれぞれ異なる制御を受ける。複屈折楕円体の主軸、特に長軸61の向きの相違により、光学的特性の制御の相違を例示できる。
【0061】
図3に示されるように、位相変調を実現するために、電界は液晶91、92、93とガラス板19、20とが成す極角α、α、αを変化させ、それにより複屈折層8の有効屈折率を変化させる。その結果、複屈折層8を通過する光に対して、複屈折層8を通る光路の長さが変化する。これにより、それぞれ異なる電圧で制御された画素1、2、3から射出する光が異なる位相条件を示すという効果が得られる。
【0062】
図3を参照すると、境界面18と接地電位Gを搬送する電極7との間に補償膜24が配置される。補償膜21の固定液晶94の向きは境界面17、18の面法線16に対して負の補償角θを成すので、液晶9、91、92、93の向きと交差する。
【0063】
本発明によれば、図2に示されるような透過光又は反射光の所定の視野角範囲L‐S‐Rの中で平均振幅変調が最小値を示すように、補償バルク領域24の屈折率楕円体94は、所定の視野角範囲L‐S‐R内における光学活性レイヤ8の制御可能な屈折率楕円体9、91、92、93に対して、光学活性レイヤ8の屈折率楕円体9、91、92、93の向きに応じた向きに配向する。
【0064】
振幅変調光変調器において振幅変調を最小限に抑える方法によって、液晶9、91、92、93のあらゆる向きに対して振幅変調は可能な限り小さく保持される。これは、液晶9、91、92、93の全ての向きが平均処理において考慮されるからである。
【0065】
従って、本発明に従って位相変調光変調器30の平均振幅変調は最小限に抑えられる。所定の視野角範囲L‐S‐R内における平均処理は、位相変調のために光変調器30が必要とする液晶9、91、92、93、94の全ての向きに対して実行される。図3に示されるような1つの複屈折補償膜24の中の屈折率楕円体の向き、従ってそれらの屈折率楕円体の屈折率を互いに適合させるか、あるいは図4Aに示されるような複数の複屈折補償膜21、22又は図4Bに示されるような複数の複屈折補償膜221、222の屈折率楕円体の向き、従ってそれらの屈折率楕円体の屈折率を互いに適合させることにより、振幅変調は最小限に抑えられる。これは、例えば制御装置(図示せず)において、液晶9、91、92、93、94の向きに関するパラメータを含むソフトウェア手段を利用して実行可能である。その場合、制御装置と電極4、5、6及び7とは、信号線及び電力線により接続される。
【0066】
また、平均処理において、透過光又は反射光の角度L、S、R、あるいは液晶9、91、92、93、94の向きを異なる重み付け係数によって重み付けすることも可能である。例えば、バルク領域11、12、13の中央領域において特定の低い残留振幅変調を実現するように、中央領域により大きな重みを割り当てることができる。
【0067】
振幅変調光変調器の場合の向き制御との主な相違点は、位相変調光変調器30においては必要とされる全ての液晶の向きに対して向き制御が実行されることである。一般に、その結果、複屈折補償膜24、21、22、221及び222の屈折率楕円体が光変調器30、40、50、60のガラス板19、20と平行な向き又はガラス板に対して垂直な向きに配向せず、そのため、光変調器30、40、50、60の面法線16が対称軸を形成しないという効果が得られる。そのような複屈折補償膜24、21、22、221及び222は非対称補償要素であるが、実際の制御可能な複屈折層8の非対称性と相互に作用しあって、中程度の電圧による制御状態において優れた補償効果を示す。これは、正の角度を成す液晶93が中程度の電圧により制御されている状態において、それに対応する負の角度を有する補償膜24、21、22、221及び222の構造によって非対称性が少なくとも部分的に補償され、角度の正負の関係が逆になっても同様の補償効果が得られるからである。
【0068】
画素3に対して上述のように振幅変調を平均し、最小限に抑えることにより得られる結果の1つが図3及び図4Bに示される。補償膜24及び221の屈折率楕円体は、面法線16に対して負の補償角θを有し、補償膜222は、ガラス板19、20の面法線に対して負の補償角θを有し、かつ、中程度の電界を印加されている場合の液晶93の平均極角αに対してほぼ垂直である。図3に示されるように上部ガラス板19又は下部ガラス板20に配置された唯1つの補償膜24によって、あるいは図4Bに示されるように上部ガラス板19及び下部ガラス板20の双方に配置された2つの補償膜221、222によって補償が可能である。
【0069】
図4Aを参照すると、補償膜21及び22は光変調器40の電極6及び7にそれぞれ配置される。この場合、補償膜の固定液晶94、95は異なる補償角θ(負)及びθ(正)を有するので、それに対応して、補償膜21及び22における向き、すなわち長軸は互いに交差する。
【0070】
図5は、本発明に係る別の光変調器50の詳細構造を示す。この場合、画素ごとに別個に制御可能である複屈折層81は、固定液晶99を含むポリマー材料から製造されるのが好ましい透明補償マトリクス82を具備する。マトリクスの中には、ほぼ移動自在の状態で複屈折液晶96、97、98を含む封じ込め領域231、232、233が配置される。それらの封じ込め領域231、232、233の外側においては、複屈折材料99は透明な層81の中に固定して埋め込まれており、少なくとも1つの向きに配向する。電界が印加された場合、位相変調光変調器50において所望の変調効果を得るために要求されるある特定の角度範囲内で移動自在の複屈折液晶96、97、98が回転できるように、移動自在の液晶96、97、98は常に含まれる。制御不可能な不動の複屈折材料99を配向する向きが移動自在の複屈折液晶96、97、98を配向できる方向と異なるように、複屈折材料99は透明補償マトリクス82の中に埋め込まれる。
【0071】
このように、固定して埋め込まれた複屈折材料99を含む透明補償マトリクス82は、上述した補償膜24、21、22、221、222の補償効果と同一の又は少なくともそれに類似する補償効果を発揮できる。移動自在の複屈折液晶96、97、98の規定及び埋め込みのための封じ込め領域231、232、233を含めて、最小限の範囲内で変化する平均振幅変調を得るために光変調器50を構成した場合、複屈折補償マトリクス82の外側の電極構造が支持され、かつ、光変調器50が高い選択性を示すように光変調器50を制御できる。
【0072】
複屈折層8、81に固定して埋め込まれた封じ込め領域231、232、233は、フレデリックセル、DAPセル及び/又はTNセルに含まれるのと同一の種類の事前配向済み液晶を含むボリュームであってもよい。
【0073】
位相変調光変調器30、40、50、60を例示する実施形態において、波長依存性及び角度依存性を広範囲にわたり補償するための液晶の向きの制御を説明する。本発明は、反射型の位相変調光変調器にも同様に適用可能である。
【0074】
本発明に係る方法は、位相変調光変調器30、40、50、60の向き制御に使用される。特定の一実施形態によれば、光変調器30、40、50又は60はフレデリックセルの形態で設計されてもよい。すなわち、液晶はねじれておらず、ガラス板19、20に対して垂直な方向に配向する。従って、光が光変調器30、40、50又は60を透過し、従って、液晶91、92、93と平行な直線偏光を伴って入射側に配置された偏光子(図示せず)を直角に透過した場合、光は単なる位相変調のみを受ける。すなわち、偏光状態に変化はなく、かつ、振幅変調も起こらない。
【0075】
フレデリックセルの場合、観察者に対する振幅変調、従って、光変調器30、40、50又は60を透過した光に対する振幅変調を最小限に抑えて向きの制御を実行するために、20°の極角α及び無作為の方位角が使用される。20°の極角αは、ガラス板19、20の面法線16に対して光が20°の角度を成すことを意味する。液晶91、92、93は0°の方位角と、印加される電界の強度に従って0°〜90°の範囲で変化する極角αとを有する。液晶層8は4.3μmの厚さを有する。
【0076】
図4Bを参照すると、光変調器60は、例えば上部ガラス板19に配置された補償膜221及び下部ガラス板20に配置された補償膜222を具備する。各補償膜221、222は約2.15μmの厚さを有し、液晶のパラメータ、すなわちn=1.6727及びn=1.501を有する複屈折材料から形成される。好適な向きは20°の極角α及び180°の方位角であることがわかっている。図4Bに示されるように、光変調器60の横断面において、これは負の補償角θ=20°に相当する。
【0077】
本発明に係るこのような向きに関連する選択可能な適応補償膜24、21、22、221、222の効果は、補償されない光変調器及び振幅変調光変調器と同様に補償される光変調器と比較することにより明らかになる。
【0078】
一例として方位角を60°とすると、電界を印加することにより液晶9、91、92、93;96、97、98が90°の最大極角まで回転された場合、次のような障害となる振幅変調が残留する。
【0079】
−補償なしの場合:振幅変調は約25%
−振幅変調光変調器と同様の補償の場合:振幅変調は約15%
−本発明に従った補償の場合:振幅変調は約4%
画素ごとに個別に屈折率楕円体を制御できる少なくとも1つの透明光学活性バルク領域11、12、13と、固定屈折率楕円体94、95、96を含む少なくとも1つの複屈折材料から形成された少なくとも1つの透明光学活性補償バルク領域24、21、22、221、222、82とを具備し、光変調器30、40、50、60を透過する光が双方のバルク領域11、12、13;24、21、22、221、222、82を通過するように、透明光学活性バルク領域11、12、13及び透明光学活性補償バルク領域24、21、22、221、222、82が配置される位相変調光変調器において振幅変調を最小限に抑える方法は、主に、光変調器30、40、50、60において補償バルク領域24、21、22、221、222、82を選択し、かつ、規定するために使用される。
【0080】
本発明によれば、光変調器30、40、50、60の被制御変調中に起こる透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82を含めた光学活性バルク領域11、12、13の屈折率楕円体のあらゆる向きに対して所定の視野角範囲L‐S‐R内で平均化が実行される場合に光変調器30、40、50、60の平均振幅変調が最小値を示すように、透明バルク領域24、21、22、221、222、82の中の固定屈折率楕円体94、95、96を含む複屈折率材料の向きが選択される。
【0081】
方法は、
−振幅変調が最小限に抑えられる視野角範囲L‐S‐Rを定義するステップと、
−外部から光変調器30、40、50、60に供給され、かつ、光学活性レイヤ8、81の屈折率楕円体に影響を及ぼすパラメータである電圧UM1、UM2、UM3が変調中に変化する変化範囲を定義するステップと、
−透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82の中の固定屈折率楕円体94、95、96を含む複屈折材料の第1の向きを定義するステップと、
−光変調器30、40、50、60の透過率の数値シミュレーションを経て平均振幅変調を計算するとともに、全視野角範囲L‐S‐Rにわたり透過角を変化させ、かつ、外部から光変調器30、40、50、60に供給されるパラメータUM1、UM2、UM3を全変化範囲にわたり変化させることにより、透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82内の固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折材料の第1の向きに対する透過率変化範囲を導出するステップと、
−透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82内の固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折材料の別の向きを定義し、透過率の平均振幅変調が最小値を示す透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82内の固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折材料の向きが導出されるまで数値シミュレーションを繰り返すステップと、
−透過率の平均振幅変調が最小値を示す固定屈折率楕円体94、95、99の向きで透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82内の固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折材料が配向する透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82を選択し、かつ、定義するステップとを含む。
【0082】
振幅変調の最小値を判定する場合、異なる視野角又は異なる観察方向L、S、Rに対して、数値シミュレーションにおいて導出される光変調器30、40、50、60の透過率はそれぞれ異なる重み付け係数で重み付けされてもよい。
【0083】
固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折液晶がそれぞれ対応する向きで埋め込まれている少なくとも1つの複屈折透明補償膜を使用することにより、透過率の平均振幅変調が最小値を示す向きで、透明補償バルク領域24、21、22、221、222、82内の固定屈折率楕円体94、95、99を含む複屈折材料は配向してもよい。
【0084】
平均振幅変調を導出するとき、視野角範囲L‐S‐Rは、透過型位相変調光変調器の場合は透過角範囲、また、反射型位相変調光変調器の場合は反射角範囲で考慮されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:第1の画素
2:第2の画素
3:第3の画素
4:第1の電極
5:第2の電極
6:第3の電極
7:接地電位電極
8、81:レイヤ
82:補償マトリクス
9、91、92、93、94、95、96、97、98、99:液晶
10:第1の光変調器
11:第1のバルク領域
12:第2のバルク領域
13:第3のバルク領域
14:第1の周縁領域
15:第2の周縁領域
16:面法線
17:第1の境界面
18:第2の境界面
19:第1のガラス板
20:第2のガラス板
21:第1の補償膜
22:第2の補償膜
221、222:補償膜
231:第1の領域
232:第2の領域
233:第3の領域
24:第3の補償膜
30:第3の光変調器
40:第4の光変調器
50:第5の光変調器
60:第6の光変調器
61:屈折率楕円体
62:長軸
63:短軸
M1:第1の変調電圧
M2:第2の変調電圧
M3:第3の変調電圧
G:接地電位
S:光変調器に直角に向けられた光
R:右から斜めに光変調器に向けられた光
L:左から斜めに光変調器に向けられた光
θ、θ:補償角
α、α、α:極角
L‐S‐R:視野角範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調光変調器であって、
少なくとも1つの光学活性バルク領域と光学活性レイヤの固定された向きを生成する手段が配置される複数の境界面とを有する光学活性レイヤであって、予め配向された屈折率楕円体を含む液晶を備え、前記屈折率楕円体の向きが前記液晶の固定された向きを生成する手段を用いて画素ごとに個別に制御され、かつ、固定屈折率楕円体を含む少なくとも1つの複屈折率材料から成る少なくとも1つの透明補償バルク領域と関連する前記光学活性レイヤと、
射出側に配置された偏光子と
を備え、
前記補償バルク領域(24、21、22、221、222;82)の前記屈折率楕円体では、所定の視野角範囲(L−S−R)内において平均振幅変調が最小値を示すように、前記所定の視野角範囲(L−S−R)内の前記光学活性レイヤの制御可能な前記屈折率楕円体(9、91、92、93、96、97、98)の向きに応じて前記光学活性レイヤの前記屈折率楕円体(9、91、92、93、96、97、98)に対する向きが規定されることを特徴とする位相変調光変調器。
【請求項2】
前記補償バルク領域(24)は、前記光学活性レイヤ(8)の一方の側に並行して配置される透明複屈折補償膜によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の位相変調光変調器。
【請求項3】
前記補償バルク領域(21、22、221、222)は、前記光学活性レイヤ(8)の両側にそれぞれ配置され、かつ、前記光学活性レイヤ(8)に並行して配置される2つの透明複屈折補償膜によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の位相変調光変調器。
【請求項4】
前記透明複屈折補償膜(21、22、221、222、24)は、方向が固定された液晶(94、95)を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の位相変調光変調器。
【請求項5】
前記2つの透明複屈折補償膜(221、222)は、均一の補償角(θ)で配向した固定液晶(94)を備え、それらの前記補償角(θ)は、前記光学活性レイヤ(8)の液晶(93)の極角(α)の対角であることを特徴とする請求項4に記載の位相変調光変調器。
【請求項6】
前記2つの透明複屈折補償膜(21、22)は、前記液晶(94、95)の一定の負の補償角(θ)及び一定の正の補償角(θ)を成して互いに交差する向きを有することを特徴とする請求項4に記載の位相変調光変調器。
【請求項7】
前記光学活性レイヤ(81)は、固定された方向に配向した液晶(99)を有する補償バルク領域(82)を備え、
前記液晶(99)には、個別の閉鎖スペース領域及び画素関連領域(231、232、233)が組み込まれ、
前記閉鎖スペース領域及び画素関連領域(231、232、233)は、向きを規定できる制御可能な液晶(96、97、98)を備え、
前記液晶(96、97、98)の向きは、前記閉鎖スペース領域及び画素関連領域(231、232、233)の中で、前記液晶(96、97、98)の静止状態を生成する前記手段を用いて制御されることを特徴とする請求項1に記載の位相変調光変調器。
【請求項8】
前記液晶(9、91、92、93、94、95、96、97、98)の静止状態を生成する前記手段は、前記光学活性レイヤ(8、81)の前記画素(1、2、3)に割り当てられる電極(4、5、6、7)であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の位相変調光変調器。
【請求項9】
前記位相変調光変調器(30、40、50、60)は、フレデリックセル、DAPセル、及び、TNセルの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項8に記載の位相変調光変調器。
【請求項10】
前記透明補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)における固定された方向に配向した前記液晶(94、95、99)は、所定の視野角範囲(L−S−R)内において、前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の被制御位相変調中に起こる前記光学活性レイヤ(8、81)の屈折率楕円体(9、91、92、93;94、95、96、97、98、99)及び前記透明補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)の全ての向きに対して前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の振幅変調の平均化が実行される場合に前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の平均振幅変調が最小値を示すように、配置されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の位相変調光変調器。
【請求項11】
前記透明補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)における固定された方向に配向した前記液晶(94、95、99)は、所定の視野角範囲(L−S−R)内において、前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の被制御振幅変調中に起こる前記光学活性レイヤ(8、81)の屈折率楕円体(9、91、92、93;94、95、96、97、98、99)及び前記透明補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)の全ての向きに対して所定の重み付けで前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の振幅変調の平均化が実行される場合に前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の平均振幅変調が最小値を示すように、配置されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の位相変調光変調器。
【請求項12】
画素ごとに個別に制御できる屈折率楕円体を含む少なくとも1つの透明光学活性バルク領域(11、12、13)と、固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む少なくとも1つの複屈折材料から成る少なくとも1つの透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)とを備え、前記透明光学活性バルク領域(11、12、13)及び透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)が観察者によって認知される光が双方のバルク領域(11、12、13;24,21、22、221、222、82)を通過するように配置され、請求項1乃至11の何れか1項に記載の位相変調光変調器(30、40、50、60)で使用される振幅変調を最小限に抑える方法であって、
所定の視野角範囲(L‐S‐R)内において、前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の被制御位相変調中に起こる前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)を含む前記透明光学活性バルク領域(11、12、13)の前記屈折率楕円体の全ての向きに対して前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の振幅変調の平均化が実行される場合に、前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の平均振幅変調が最小値を示すように、前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の固定屈率楕円体(94、95、99)を含む複屈折材料の向きが選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
−平均振幅変調が最小値を示す視野角範囲(L‐S‐R)を定義するステップと、
−前記位相変調光変調器(30、40、50、60)に外側から供給され、かつ、光学活性レイヤ(8、81)の前記屈折率楕円体に影響を及ぼすパラメータ(UM1、UM2、UM3)が変調中に変化する変化範囲を定義するステップと、
−前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む前記複屈折材料の第1の向きを定義するステップと、
−前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の透過率又は反射率の数値シミュレーションを経て平均振幅変調を計算するとともに、全視野角範囲(L‐S‐R)にわたり視野角を変化させ、かつ、前記位相変調光変調器(30、40、50、60)に外側から供給されるパラメータを全変化範囲にわたり変化させることにより、前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む前記複屈折材料の第1の向きに対する透過率変化範囲又は反射率変化範囲を導出するステップと、
−前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む前記複屈折材料の別の向きを定義し、透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む複屈折材料の向きが導出されるまで数値シミュレーションを繰り返すステップと、
−前記透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す前記固定屈折率楕円体(94、95、99)の向きで複屈折材料が配置されている前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)を選択し、かつ、定義するステップと
を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記振幅変調の最小値を判定する場合、種々の視野角(L、S、R)に対して、前記数値シミュレーションにおいて導出される前記位相変調光変調器(30、40、50、60)の前記透過率又は反射率の平均振幅変調がそれぞれ異なる重み付け係数で重み付けされることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記透明光学活性補償バルク領域(24、21、22、221、222、82)内の前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む前記複屈折材料は、前記固定屈折率楕円体(94、95、99)を含む液晶がそれぞれの向きで埋め込まれている少なくとも1つの複屈折透明補償膜を使用することによって前記透過率又は反射率の平均振幅変調が最小値を示す向きで配置されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記透過率又は反射率の平均振幅変調の最小値を導出する場合、透過型位相変調光変調器の場合は透過角範囲で前記視野角範囲(L‐S‐R)が考慮され、反射型位相変調光変調器の場合は反射角範囲で前記視野角範囲(L‐S‐R)が考慮されることを特徴とする請求項12乃至15の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−517105(P2010−517105A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547660(P2009−547660)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051001
【国際公開番号】WO2008/092839
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】