説明

位相差板の製造方法及びそれを用いた位相差板並びに液晶表示装置

【課題】フィルム基板上への位相差層の形成方法において、熱によるフィルム基板の伸縮に基づくアライメント精度の低下を招くことなく安定したアライメント精度を有する位相差板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第一の基板の一方の面に、剥離層、アライメントマーク層、配向膜層、位相差層を順次形成する工程と、第二の基板の一方の面に粘着層を形成する工程と、前記第一の基板の最上層である位相差層と前記第二の基板の粘着層とを積層する工程と、前記積層された積層体を前記第一の基板の剥離層から剥離する工程からなることを特徴とする位相差板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に利用される位相差板のフィルム上への製造方法および前記方法により製造された位相差板を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3D表示装置の開発が進んでいる。3D表示方法としては数種あるが、3D用メガネを用いた方法では、右目用と左目用の映像を交互に表示させ、それに合わせてメガネの右目、左目のシャッター開閉タイミングを同期させたアクティブ方式と、右目用、左目用画像を位相差板を用いることによりそれぞれ表示し、偏光メガネを用いる偏光方式の開発が進められている。アクティブ方式は、メガネが重く、高コストであることから、安価に作製可能な偏光メガネを用いる偏光方式の開発が進められている。
【0003】
詳しくは、偏光方式について、右目用、左目用として光の入射を制御する位相差層がパターニングされた位相差板を液晶表示装置上に配置し、左目用の映像を偏光メガネにより左目のみ映像としてとらえ、右目用も同様に右目のみでとらえることにより視差を与え、3D画像としてとらえることを可能にしている。
【0004】
その位相差板の構成としては、基板上に配向膜層、位相差層が形成されている。前記配向膜層の形成方法としては、従来から液晶表示装置で用いられているラビング法により配向膜を形成した位相差層をパターニング露光する方法、また、特許文献1に示されているような光配向膜を用い、偏光UV露光にて配向膜のパターニング、その後の位相差層を形成することによりパターニングされた位相差層を形成する方法が提案されている。
【0005】
上記提案はガラス基板やフィルム基板上への位相差層の形成方法であるが、フィルム基板への形成では、熱によるフィルム基板自体の伸縮、また、用いられる各種材料の耐熱性により、各層の形成に必要な焼成温度が制約されるなどの問題がある。特に、熱によるフィルム基材の伸縮によるアライメント精度が低下してしまうという大きな問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4515984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を鑑みたものであり、フィルム基板上への位相差層の形成方法において、熱によるフィルム基板の伸縮に基づくアライメント精度の低下を招くことなく安定したアライメント精度を有する位相差板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、第一の基板の一方の面に、剥離層、アライメントマーク層、配向膜層、位相差層を順次形成する工程と、第二の基板の一方の面に粘着層を形成する工程と、前記第一の基板の最上層である位相差層と前記第二の基板の粘着層とを積層する工程と、前記積層された積層体を前記第一の基板の剥離層から剥離する工程からなることを特徴とする位相差板の製造方法である。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、第一の基板の一方の面に、剥離層、アライメントマーク層、配向膜層、位相差層および粘着層を順次形成する工程と、前記第一の基板の
最上層である粘着層と前記第二の基板とを積層する工程と、前記積層された積層体を前記第一の基板の剥離層から剥離する工程からなることを特徴とする位相差板の製造方法である。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記第一の基板がガラス基板、前記第二の基板がフィルム基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差板の製造方法である。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記アライメントマーク層を構成する感光性樹脂組成物を用いて、前記アライメントマーク層と同時に位相差性の異なる位相差層境界部に遮光層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相差板の製造方法である。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の位相差板の製造方法で製造されたことを特徴とする位相差板である。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る発明は、請求項5に記載の位相差板を具備したことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伸縮、各層形成のための焼成温度の制限が少ない位相差板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施形態の製造フロー及び断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態の製造フロー及び断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態の製造フロー及び断面図である。
【図4】本発明の第四の実施形態の遮光層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の具体的な説明を上記図に示す実施形態より詳述する。
【0017】
図1は、本発明の位相差板の製造方法である第一の実施形態の製造フロー及び断面図を示す。まず、本発明は図1(a)に示すように、第一の基板1に剥離層組成物を塗布(a−1)して剥離層2を形成する。次に、図1(b)に示すように、前記剥離層2の上面に、黒色顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤及び重合禁止剤などからなるアライメントマーク層形成用の感光性樹脂組成物3´を塗布(b−1)し、UV露光、現像、水洗、焼成処理工程(b−2)を経て、アライメントマーク層3を形成する。
【0018】
次に、図1(c)に示すように、前記アライメントマーク層3が形成されていない領域の剥離層2面上に、光配向膜層形成用の組成物4´を塗布、ベーキング後、+1/4λの位相差板を用いて偏光露光(c−1)して+1/4λ層をパターン形成し、さらに−1/4λの位相差板を用いて偏光露光(c−2)して−1/4λ層をパターン形成し、その後焼成処理工程(c−3)を経て、光配向膜層4を形成する。
【0019】
次に、図1(d)に示すように、前記光配向膜層4の上に位相差層形成用の組成物5´を塗布、ベーキング後、UV(紫外線)を前面露光(d−1)し、その後さらに焼成処理工程(d−2)を経て、位相差層5を形成する。
【0020】
次に、図1(e)に示すように、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)に粘着剤を塗布(e−1)して、粘着層7を形成する。
【0021】
次に、前記第一の基板1に形成された最上層の前記位相差層5の面と、前記第二の基板6に形成された粘着層7の面を積層(f−1)し、その後、前記第一の基板1の剥離層2と前記光配向膜層4の間で剥離して、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)上に第一の実施形態の位相差板10を作製する製造方法である。
【0022】
図2は、本発明の位相差板の製造方法である第二の実施形態の製造フロー及び断面図を示す。図2に示す第二の実施形態の特徴は、ラビングによる光配向膜層4の形成である。すなわち、図1(a)、(b)で形成した前記アライメントマーク層3が形成されていない領域の剥離層2面上に、図2(c)に示すように、光配向膜層形成用の組成物4´を塗布(c−1)、ベーキング(c−2)後、ラビングによる配向処理(c−3)により光配向膜層4を形成する。
【0023】
次に、図2(d)に示すように、前記光配向膜層4の上に位相差層形成用の組成物5´を塗布(d−1)し、ベーキング後、1/2λの位相差板を用いて偏光露光(d−2)してパターニングを行い、位相差層5を形成する。
【0024】
次に、図2(e)に示すように、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)に粘着剤を塗布(e−1)して、粘着層7を形成する。
【0025】
次に、前記第一の基板1に形成された最上層の前記位相差層5の面と、前記第二の基板6に形成された粘着層7の面を積層(f−1)し、その後、前記第一の基板1の剥離層2と前記光配向膜層4の間で剥離して、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)上に第二の実施形態の位相差板20を作製する製造方法である。
【0026】
図3は、本発明の第三の実施形態の製造フロー及び断面図を示す。すなわち、図1及び図2で形成された第一の基板1の最上層である位相差層5の上に、直接、粘着層7を塗布することを特徴とするものである。
【0027】
図3(a)に示すように、前記図1(d)で形成された第一の基板1の最上層である位相差層5の上に、直接、粘着層7を塗布(a−1)し、次に、前記粘着層7の上に第二の基板(高分子フィルムまたはシート)を積層(a−2)し、その後、前記第一の基板1の剥離層2と前記光配向膜層4の間で剥離して、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)上に第二の実施形態の位相差板10を作製する製造方法である。
【0028】
また、図3(b)に示すように、前記図2(d)で形成された第一の基板1の最上層である位相差層5の上に、直接、粘着層7を塗布(b−1)し、次に、前記粘着層7の上に第二の基板(高分子フィルムまたはシート)を積層(b−2)し、その後、前記第一の基板1の剥離層2と前記光配向膜層4の間で剥離して、第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)上に第二の実施形態の位相差板20を作製する製造方法である。
【0029】
図4は、本発明の第四の実施形態の遮光層の平面図を示す。本発明は第一の基板1に黒色顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤及び重合禁止剤からなる感光性樹脂組成物を用いてアライメントマーク層3、光配向膜層4及び位相差層5を形成し、その後、粘着剤7を介して第二の基板6(高分子フィルムまたはシート)上に転写してなる位相差板の製造方法である。また、本発明は上述の位相差板の構成以外にも図4に示すように、剥離層2を形成した第一の基板上に、前記アライメントマーク層3を形成する際に、同時に前記感光性樹脂組成物を用いて遮光層8を形成することが
できる。
【0030】
前記遮光層とは、クロストーク(左右の画像の他方への混入)を減少させる目的で、前記位相差板の位相差の異なる位相差層のパターン境界領域に形成されるものである。例えば、本発明の第一の実施形態で説明すると、+1/4λ層5aと−1/4λ層5bの位相差の異なる位相差層のパターン境界領域に遮光層8が形成されることで、クロストーク(左右の画像の他方への混入)を減少させることができる位相差板を作製することができる。
【0031】
本発明により、従来ガラス基板上にしか形成できなかったアライメント精度の高い位相差層を、高分子フィルムやシート基板上に形成することができ、軽量で低コストの位相差板を製造することができる。また、本発明により、右目用、左目用として光の入射を制御する位相差層がパターニングされた位相差板を用いることにより、軽量でシャープな3D画像を供する液晶表示装置が得られる。
【符号の説明】
【0032】
1 第一の基板
2 剥離層
3 アライメントマーク層
3´ アライメントマーク層形成用の感光性樹脂組成物
4 光配向膜層
4´ 光配向膜層形成用の組成物
5 位相差層
5´ 位相差層形成用の組成物
5a +1/4λ層
5b −1/4λ層
6 第二の基板
7 粘着層
8 遮光層
10 第一の実施形態の位相差板
20 第二の実施形態の位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板の一方の面に、剥離層、アライメントマーク層、配向膜層、位相差層を順次形成する工程と、第二の基板の一方の面に粘着層を形成する工程と、前記第一の基板の最上層である位相差層と前記第二の基板の粘着層とを積層する工程と、前記積層された積層体を前記第一の基板の剥離層から剥離する工程からなることを特徴とする位相差板の製造方法。
【請求項2】
第一の基板の一方の面に、剥離層、アライメントマーク層、配向膜層、位相差層および粘着層を順次形成する工程と、前記第一の基板の最上層である粘着層と前記第二の基板とを積層する工程と、前記積層された積層体を前記第一の基板の剥離層から剥離する工程からなることを特徴とする位相差板の製造方法。
【請求項3】
前記第一の基板がガラス基板、前記第二の基板がフィルム基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差板の製造方法。
【請求項4】
前記アライメントマーク層を構成する感光性樹脂組成物を用いて、前記アライメントマーク層と同時に位相差性の異なる位相差層境界部に遮光層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相差板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の位相差板の製造方法で製造されたことを特徴とする位相差板。
【請求項6】
請求項5に記載の位相差板を具備したことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255864(P2012−255864A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128091(P2011−128091)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】