説明

位相差検出装置

【課題】 同一画素内に遠近競合の物体像があった場合でも、位相差検出する。
【解決手段】 物体像が一対の結像光学系によって結像される一対のセンサを、第1の一対のラインセンサと、第1の一対のラインセンサと隣接している第2の一対のラインセンサとで構成する位相差検出装置であって、第1の一対のラインセンサおよび第2の一対のラインセンサから得られた像信号を用いてそれぞれ第1の相関度および第2の相関度を算出する相関度算出手段(306、308)と、第1の相関度および第2の相関度のうちいずれか一方の相関度が所定の閾値よりも低い時(309)には相関度の高い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を用いて相関度の低い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を補正する像信号補正手段(312)と、像信号補正手段によって生成された補正像信号を用いて再度相関演算する補正相関演算手段(312)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動焦点調節などを行うための位相差検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に搭載されるオートフォーカス(AF)方式として、位相差AFがある。位相差AFは、一対のラインセンサから得られる信号に基づいて三角測距の原理を用いて被写体までの距離を検出し、その検出距離に基づいてフォーカスレンズの位置を制御するものである。撮像するための撮像素子に光を導く主レンズを通した後にこのラインセンサが配置されている形式(いわゆるTTL方式)のものと、主レンズを通さず別の個所にラインセンサが配置される形式(いわゆる外付けの外測AF方式)の2種類が知られている。前者は位相差に基づいてデフォーカス量が測定でき、後者は被写体距離が測定可能である。この外測AF方式においては、主撮像系と、測距系が異なる位置に配置されるため、撮像エリアと測距エリアが異なるという視差(パララクス)が発生する。このパララクスによって、撮像エリアの被写体の測距を行うにあたり、使用できるセンサの測距エリアに制限が設けられるのが一般的である。
【0003】
さて一方で、近年ではこの位相差AFの精度向上のために、一対のラインセンサをいわゆる千鳥配列化したものが提案されている。千鳥配列とは、ラインセンサを隣接させ、かつ、画素を0.5画素ずらして配置したものである。特許文献1などの関連文献では、この半画素ずらしたラインセンサを用いて、画素データまたは検出結果を合成して、測距精度を向上させている。
【0004】
さて、三角測距原理に基づいて2つのラインセンサ像から測距するにあたり、測距精度を得られない状況の課題として、遠近競合の問題がある。ラインセンサに対して同距離の被写体像がすべての画素に入っていれば精度のよい測距が行えるが、たとえばラインセンサの半分には2mの被写体像が入り、残りの半分には5mの被写体像が入ることになれば、測距精度が得られない。これを遠近競合の問題と呼んでいる。遠近複数の被写体がラインセンサのうちどこの画素に入っているか判断できれば、その複数の被写体像を画素単位で分離してしまえば、測距は可能である。例えば上述の例であれば、半分ずつにわけてしまえば、測距結果も片側での計算は2m、もう一方では5mという結果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−133515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、同一画素内に遠近競合被写体が存在する場合、演算するための画素を分離して使用することはできない。よって、このような被写体像の場合には、測距不能としてあきらめるしかなかった。
【0007】
(発明の目的)
本発明の目的は、同一画素内に遠近競合の物体像があった場合でも、位相差検出することができる位相差検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の位相差検出装置は、物体像を基線長離れた一対の結像光学系によって一対のセンサ上に結像し、得られる像の位相差を検出し、前記センサを、第1の一対のラインセンサと、前記第1の一対のラインセンサと隣接している第2の一対のラインセンサとで構成する位相差検出装置であって、前記第1の一対のラインセンサおよび前記第2の一対のラインセンサから得られた像信号を用いてそれぞれ第1の相関度および第2の相関度を算出する相関度算出手段と、前記相関度算出手段によって得られた前記第1の相関度および第2の相関度のうちいずれか一方の相関度が所定の閾値よりも低い時には相関度の高い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を用いて相関度の低い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を補正する像信号補正手段と、前記像信号補正手段によって生成された補正像信号を用いて再度相関演算する補正相関演算手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同一画素内に遠近競合の物体像があった場合でも、位相差検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1である外測方式の位相差検出装置を備えたビデオカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】外測AFセンサユニットの詳細を示す図である。
【図3】実施例1の相関演算動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例1の位相差検出精度向上モードでの動作を示すフローチャートである。
【図5】外測AFセンサユニットの視野範囲と2つのチャートの位置関係を示す図である。
【図6】図5の位置関係時の像信号を示す図である。
【図7】実施例1による補正後の像信号を示す図である。
【図8】実施例2の位相差検出精度向上モードでの動作を示すフローチャートである。
【図9】実施例2による補正処理中の像信号を示す図である。
【図10】実施例2による補正後の像信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例1および2に記載される通りである。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1である外測方式の位相差検出装置を備えたビデオカメラの構成を示す。同図において、点線内で示される100はレンズユニットであり、被写体側(光側)から順に配置された、固定レンズ101、変倍レンズ102、絞り103、固定レンズ104及びフォーカスレンズ105により構成される撮像光学系を収容している。
【0013】
108は変倍レンズ102、絞り103(絞り羽根)及びフォーカスレンズ105の位置を検出する位置エンコーダである。
【0014】
変倍レンズ102はズームモータ106により光軸方向に駆動され、フォーカスレンズ105はフォーカスモータ107により光軸方向に駆動される。これらズームモータ106及びフォーカスモータ107はそれぞれ、ズーム駆動回路120及びフォーカス駆動回路121からの駆動信号を受けて動作する。
【0015】
109はCMOSセンサ等により構成された撮像素子である。該撮像素子109は、撮像光学系に入射した光によって形成された、撮像範囲内の物体の像を光電変換する。撮像信号処理回路119は、撮像素子109からの出力信号に対して、増幅処理、ガンマ補正処理、ホワイトバランス処理等の各種信号処理を施し、所定の映像フォーマットの映像信号に変換する。
【0016】
映像信号は、モニタディスプレイ114に出力されたり、半導体メモリ、光ディスク、ハードディスク等の画像記録用メディア115に記録されたりなどする。
【0017】
110は各種制御手段としてのCPUである。CPU110は、本ビデオカメラの各種動作や機能をソフトウェアを通して制御する。操作スイッチ群111には、電源スイッチや、録画動作や再生動作を開始及び停止させるスイッチ、該ビデオカメラの動作モードを選択するためのスイッチ、撮像光学系のズーム状態を変化させるズームスイッチ等が設けられている。これらのスイッチのうち、電源スイッチが操作されると、フラッシュメモリ113に格納されていたコンピュータプログラムの一部がRAM112にロードされ、CPU110はRAM112にロードされたプログラムに従って各部の動作を制御する。130は外測AFセンサユニットである。その内部構成の132は外測AF用のラインセンサであり、複数の受光素子が一列に並べられて構成されており、その詳細については図2において説明する。このラインセンサ132には、被写体からの光が撮像光学系とは別に設けられた焦点距離がfである外測用結像レンズ131を通って、すなわち撮像光学系を通らずに到達する。到達した被写体像は、ラインセンサ132において光電変換されて、図示しないA/D変換器によってデジタル化される。この像信号を用いて、CPU110において各種のデジタル処理を行い被写体距離、相関量、信頼度などを算出する。これらの計算結果に基づいて、フォーカスモータ107を介してフォーカスレンズ105を駆動することで、外測AFを実現する。
【0018】
さて、図2を用いて外測AFセンサユニット130の詳細について述べる。図2(a)において、201は位相差検出対象(撮影対象)の被写体であるとしている。202Aは焦点距離fの結像レンズ、203Aは結像レンズ202Aを通した光が結像されて像信号として検出する検出部であり、被写体201のA像取得用となる。また、202Bは基線長離れて設置された同じく焦点距離fのB像用の結像レンズ、203BはB像用の検出部である。これら検出部203Aおよび203Bから得られる2つの像信号を用いて、三角測距原理に基づいて被写体距離Lを測定する。なお、結像レンズ202は図1に示した結像レンズ131に、検出部203は図1に示したラインセンサ132にそれぞれ相当する。また、図2(b)に示すのは、検出部203Aをさらに詳細に示したものである。すなわち検出部203Aは、ラインセンサ204Aと、少しずれた配置のラインセンサ205Aの2段の構成となっており、それぞれ画素ピッチがpとなる長方画素が30個並んだ画素配列となっている。これと同様に、検出部203Bの画素配列も、それぞれラインセンサ204Bおよび205Bとして画素配列を有する構成となっている。本位相差検出装置ではこのような隣接した画素配列を持つセンサを用いて、ここでは図示しない画素読み出し装置から得られる画素情報をもとに以下に示すような処理演算をCPU110によって行い、高精度位相差検出を実現する。つまり、結像レンズ202A、202Bからなる一対の結像光学系によって被写体201の像である物体像を一対のセンサ上(204Aと204B、もしくは205Aと205B)に結像し、得られる像の位相差を検出する。そして、204Aと204Bは第1の一対のラインセンサを構成し、205Aと205Bは第2の一対のラインセンサを構成する。なお以下の説明において、ラインセンサ204Aを読み出した信号をA像上段信号、ラインセンサ205Aを読み出した信号をA像下段信号、ラインセンサ204Bを読み出した信号をB像上段信号、ラインセンサ205Bを読み出した信号をB像下段信号と呼んで説明する。
【0019】
図3は、相関演算して位相差検出するときの基本フローを説明するためのフローチャートである。ステップ301においては、外測AFセンサユニット130の検出部203に対してリセット信号を送り、被写体からの光の蓄積を行い、所定以上になったところで蓄積を止めて、像信号を生成する。次のステップ302においては検出部203Aから全画素分を順次読み出して、A像の信号を取得する。このときのA像上段信号をUaとし、またA像下段信号をLaとし、それぞれ30画素のデータから成るものである。同様に次のステップ303ではB像の信号を取得し、それぞれB像上段信号をUb、B像下段信号をLbとしている。読み出しが終わると、次のステップ304においては、これまでに読み出された各像信号のオフセットずれやゲインずれを調整する信号の前処理を行う。
【0020】
次のステップ305では、上段信号のUaとUbの信号を用いてそのUaとUbの位相差を求める相関演算を行い、その位相差から被写体距離を算出するための測距演算を行う。次のステップ306では、ステップ305で行った相関演算においてUaとUbの像信号の相関が高いものであったか、低いものであったのかを示す相関度P1(第1の相関度)を算出する。この相関度P1が高いものであれば像信号から算出した測距結果の信頼度も高く、被写体距離を正常に測定できたと判断できる指標となる。上段信号のUa、Ubを用いて相関演算が終わると次のステップ307では、下段信号LaとLbの信号を用いて、そのLaとLbの位相差を求める相関演算を行い、その位相差から被写体距離を算出するための測距演算を行う。次のステップ308においては上段の時と同様に、ステップ307で行った下段分の相関演算においてLaとLbの像信号の相関が高いものであったか、低いものであったのかを示す相関度P2(第2の相関度)を算出しておく。ステップ306および308を実行するCPU110は、本発明の相関度算出手段に相当する。
【0021】
次のステップ309においては、ステップ306およびステップ308で算出された相関度P1およびP2を所定の閾値と比較し、その状況に応じて次のステップが切り替えられる。すなわち、相関度P1およびP2がともに所定の閾値よりも高い場合には、上段の相関演算、下段の相関演算ともによい結果が得られたと判断して、ステップ310へ移り、位相差検出結果も正常に行われた、よいものとして位相差検出正常終了とする。また一方で相関度P1、P2がともに所定の閾値よりも低い場合には、上段の相関演算、下段の相関演算ともに精度が得られていない結果であると判断して、ステップ311へ移行してエラーとして終了する。さてステップ309にて最後の分岐要因として、相関度P1またはP2のどちらか一方は高くて、他方は低い場合については、ステップ312へ移行して、位相差検出精度向上モードに入る。
【0022】
この位相差検出精度向上モードは、相関度が低い演算結果が得られた信号をさらに処理を加えて補正相関演算を行い、相関度が高いよい位相差検出結果を得るためのモードである。これについての処理内容および動作は図4を用いて詳細に説明する。ここでは説明のため図3におけるステップ309において、P1は所定の閾値以上の相関度であり、P2が所定の閾値未満の相関度であった前提で説明する。すなわち、上段の信号UaおよびUbを用いた相関演算は良好な結果が得られて、また下段の信号LaおよびLbを用いた相関演算では相関度が低く精度のない位相差検出結果となった場合とする。
【0023】
そのような状況において位相差検出精度向上モードにはいると(図4における400)、ステップ401ではまず補正係数αの初期値αを算出する。補正係数αとは、0.5から1.5の間の値をとる変数であり、このαはここでは0.5と定義している。ステップ402では、このαを用いて精度が得られていない下段信号Laを、精度が得られた上段の信号Uaの信号と補正係数αを用いて下記の式(1)を用いてLa’信号(補正像信号)を生成する。同様に式(2)を用いてLb’信号(補正像信号)を生成する。なお、添え字のnは画素番号であり、30個の画素からなる下段の像信号を、対応する上段の画素信号を用いて再生成している。
La’(n)=La(n)−α×Ua(n) ・・・式(1)
Lb’(n)=Lb(n)−α×Ub(n) ・・・式(2)
このLa’信号とLb’信号を用いて、ステップ403では再度の相関演算を行い、測距値と相関度P3を計算する。つまり、式(1)および式(2)は、相関度の高い結果が得られた像信号Ua(もしくはUb)に所定の補正係数αを乗じたものと、相関度の低い結果が得られた像信号La(もしくはLb)との差分を演算するものである。
【0024】
次のステップ404において、算出された相関度P3が所定以上になり、相関度が高く信頼度があると判定される場合には、ステップ407に移行して下段信号による位相差検出結果として位相差検出OKということで終了する。また、ステップ404において信頼度が低いと判定される場合、すなわち相関度P3が所定未満であれば、ステップ405に移行する。このステップ405では、補正係数αの値を所定の閾値Ath、例えば1.5と比較して、これよりも大きければステップ408へ移行して位相差検出NGとして終了する。また補正係数αが1.5よりも小さければステップ406へ移行する。ステップ406では補正係数αの値を0.1インクリメントして再度上述の計算式にのっとりLa’およびLb’信号を生成して更新する。その後ステップ403へ戻り、再度繰り返し処理を行う。これにより補正係数αを0.5から1.5までの間0.1ずつ相関度が高くなるまで更新しながら計算し、位相差検出処理を行うことができることになる。なお補正係数αの範囲は0.9〜1.1の間の数値としてさらに0.05ずつインクリメントするなどしてもよい。ステップ402および406を実行するCPU110は、本発明の像信号補正手段に相当する。また、ステップ403を実行するCPU110は、本発明の補正相関演算手段に相当する。そして、ステップ404を実行するCPU110は、本発明の判定手段に相当する。
【0025】
以上のような処理を行い、当初位相差検出NGであった信号を、再加工して位相差検出OKとすることが可能である。この原理と信号の様子について次の図5〜図7を用いてさらに処理の説明を加える。図5は、外測AFセンサユニット130中のA像の視野範囲と2つのチャートの位置関係を示した図である。501は近距離側にあるチャートであり、白に比べて輝度の落ちるややグレーな色の二本の棒状のライン501A、501Bが入っている。また、502はチャート501よりもやや遠距離側にあるチャートであり、同じく二本の白い棒状のライン502A、502Bが入っている。503は外測AFセンサユニット130のA像側の視野を模式的に記しており、各画素の出力はこのチャートの色のかかり方に起因した出力が得られてくる。
【0026】
この時の画素出力を次の図6に示す。図6(a)は、上段信号であるUaおよびUbを示しており、図6(b)は下段信号であるLaおよびLbの信号を横軸にラインセンサの数30個を並べた状態で示されている。これは図5において、外測AFセンサユニット130の上段には二本の白いライン502A、502Bがかかっていることから、2つのピークが見える形で信号が得られている。上段のB像Ub信号は、チャート502までの距離に応じてA像と位相がずれた形で検出されている様子となる。一方で、外測AFセンサユニット130の下段La信号としては、上段でも検出されている白いライン502A、502Bの部分と、下段のみのグレーの二本のライン501A、501Bの信号を検出されている。B像Lbも図のように検出されている。下段では、近距離にある二本のグレーライン501A、501Bおよびやや遠距離にある二本の白ライン502A、502Bの両方の信号が入っている遠近競合状態となっている。
【0027】
このような状態で図3のフローチャートに従って演算を進めると、上段の信号では一意に決まる測距値が得られて、相関度も高い状態と言える。すなわちここでは、上段のB像を右へ8画素分シフトすると相関量が非常に高くなることは一目でわかる。一方で下段の信号LaとLbは相関演算を行うと、像の崩れ方が激しく、相関演算の結果としてわからないものとなっている。
【0028】
このような信号に対して図4のフローチャートに基づいて信号を再生成していく。これの一部を示しているのが図7である。図7(a)は、上述の式(1)および式(2)において補正係数αを0.5とした時にLa’、Lb’を計算した結果を示している。また、図7(b)は、上述の式(1)および式(2)において補正係数αを0.9とした時にLa’、Lb’を計算した結果を示している。図7(a)のものであると、相関量が計算しきれず、位相差検出NGであるが、図7(b)のようになり、上段側の信号の成分をほぼ消去できてくると、下段のみで捉えた信号成分が残り、相関量を計算できるようになる。これにより下段La’、Lb’で計算されるシフト量は約10シフトとなり、位相差検出OKの状況となる。このように上段で得られた信号成分を除去することで、下段の位相差検出結果として使用可能となり一回の位相差検出が終了する。
【実施例2】
【0029】
実施例1で示したように補正時La’、Lb’の信号を生成するための他の方法を実施例2として、図8〜図12を用いて説明を行う。なお位相差検出のフローとしては、図3と同様であり、図3のステップ312で示す位相差検出精度向上モードの動作が実施例1とは異なる。実施例2としてこのステップ312の位相差検出精度向上モードに入ってからのフローを図8に示す。ここでは実施例1と同様に、図3においてP1が所定値以上の相関度であり、P2が所定値未満の相関度であった前提で説明する。すなわち、上段の信号UaおよびUbを用いた相関演算は良好な結果が得られて、また下段の信号LaおよびLbを用いた相関演算では相関度が低く、精度のない結果となった場合とする。
【0030】
そのような状況において位相差検出精度向上モードにはいる(801)と、ステップ801では、UaおよびUbの像信号においてコントラストの高い領域を検出する。これはUa、Ub信号を構成する30画素のうち、所定の数画素幅の差が所定以上ある場合を走査しておき、コントラストが大きい領域として検出しておく。ここで図9の像信号を用いて説明を加える。図9は実施例1で示した図5の状態、図6の画素信号と同等であり、ステップ801で走査した結果の領域を、Ua像信号のうちコントラストの大きい領域をDa(=Ua(1)〜Ua(11))、Ub像信号のコントラストの大きい領域をDb(=Ub(1)〜Ub(19))で示している。次のステップ802ではDa、およびDbの領域に基づいて、LaおよびLbの信号のうち削除するエリアを決定する。図9(b)においてDa’、Db’として図示している。具体的にはDa,Dbの幅に基づいて、以下の条件でDa’Db’の範囲が設定される。
【0031】
[1]演算に必要な画素数を10画素分として、削除後の残りエリアがこれよりも少なくならない。
[2]残り画素が15以上であれば、Da、Dbの幅よりも1多くする。
よって、Da’はLa(1)〜La(12)、Db’はLb(1)〜Lb(19))の範囲として決定される。ステップ801および802を実行するCPU110は、本発明の領域検出手段に相当する。
【0032】
図8に戻り、次のステップ803では削除領域Da’、Db’で決定されている範囲においてLa,Lbからそれぞれ削除して像信号を生成する。これによって得られた像信号を図10に示す。図10に示されている新たなLaおよびLbの信号を用いて次のステップ804で再度相関演算を行い、測距および信頼度P4を算出する。次のステップ805では算出された信頼度P4の信頼度が高ければ位相差検出OKとしてステップ807へ進み、信頼度が無ければ位相差検出NGと判断し、一回の位相差検出結果として終了する。
【0033】
上述のようにひとたび位相差検出NGと判断される場合でも、隣接信号を用いて像信号に補正を行った上で再度計算すれば正しい位相差検出結果を得ることが可能となり、信頼度の高い良好な位相差検出結果を得ることができるようになった。これにより再度センサへの蓄積等の最初からの処理をやることなく位相差検出できることで、フォーカススピードの向上などのメリットを得ることができた。また、遠近競合した場合の切り離しの効果も得られ、遠距離側、および近距離側の被写体距離を両方とも把握することが可能となり、遠距離および近距離の交互にすばやくフォーカスを移動するなどのアプリケーションとしての可能性を広げることができた。
【0034】
なお本実施例1および実施例2では一対のラインセンサを2つ並べた状態での説明としたが、さらに3つ4つなど隣接した複数ラインとなっても同様の原理で実施可能である。
【0035】
また、本発明は、実施例1および2で説明した外測AF方式に係る位相差検出装置のみならず、TTLAF方式に係る位相差検出装置にも適用できるものである。また、本発明は、距離を測定する一般的な測距装置にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0036】
110 CPU
130 外測AFセンサユニット
202A、202B 結像レンズ
204A、204B 第1の一対のラインセンサ
205A、205B 第2の一対のラインセンサ
Da、Db コントラストの大きい領域
Da’、Db’ 削除するエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体像を基線長離れた一対の結像光学系によって一対のセンサ上に結像し、得られる像の位相差を検出し、前記センサを、第1の一対のラインセンサと、前記第1の一対のラインセンサと隣接している第2の一対のラインセンサとで構成する位相差検出装置であって、
前記第1の一対のラインセンサおよび前記第2の一対のラインセンサから得られた像信号を用いてそれぞれ第1の相関度および第2の相関度を算出する相関度算出手段と、
前記相関度算出手段によって得られた前記第1の相関度および第2の相関度のうちいずれか一方の相関度が所定の閾値よりも低い時には相関度の高い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を用いて相関度の低い結果が得られた一対のラインセンサの像信号を補正する像信号補正手段と、
前記像信号補正手段によって生成された補正像信号を用いて再度相関演算する補正相関演算手段とを有することを特徴とする位相差検出装置。
【請求項2】
前記補正相関演算手段によって相関演算した結果の相関度が所定の閾値を越えたかを判定する判定手段を有し、
前記像信号補正手段および前記補正相関演算手段は、前記判定手段が前記所定の閾値を越えていないと判定した場合には、更なる像信号の補正と、更なる補正が行われた補正像信号の相関演算を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の位相差検出装置。
【請求項3】
前記像信号補正手段は、相関度の高い結果が得られた像信号に所定の補正係数を乗じたものと相関度の低い結果が得られた像信号との差分を演算することを特徴とする請求項2に記載のフォーカス装置。
【請求項4】
相関度の高い結果が得られた像信号から高い相関度が得られた領域を検出する領域検出手段を有し、
前記像信号補正手段は、相関度の低い結果が得られた像信号から前記領域検出手段によって検出された領域での像信号を削除することを特徴とする請求項2に記載の位相差検出装置。
【請求項5】
前記領域検出手段は、コントラストの高い領域を検出することを特徴とする請求項4に記載の位相差検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25229(P2013−25229A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161970(P2011−161970)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】