説明

位相差測定装置

【課題】二つの外歯車の位相差を簡素な装置によって測定することのできる位相差測定装置を提供する。
【解決手段】この装置は、前面サンギア及び背面サンギアの位相差を測定する。背面サンギアに噛み合う歯を有して同歯が背面サンギアに噛み合うように回転直線運動変換機構1に固定される背面側治具7を備える。背面側治具7には上記機構1に固定された状態で同機構1の外方に向けて延びる基準アーム71が設けられる。前面サンギアに噛み合う歯を有して同歯が前面サンギアに噛み合うように上記機構1に固定される前面側治具6を備える。前面側治具6には上記機構1に固定された状態で同機構1の外方に向けて延びる測定アーム61が設けられる。上記機構1が載置される基台5を備える。基台5には、上記機構1が載置された状態で基準アーム71が当接する当接部54と測定アーム61の位置を検出する位置センサ55とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一軸に設けられた二つの外歯車の位相差を測定する位相差測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転運動を直線運動に変換するための変換機構(回転直線運動変換機構)がある。そうした回転直線運動変換機構としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の回転直線運動変換機構は、軸方向へ延びる空間を内部に有する円環軸と円環軸の内部に配置される太陽軸と太陽軸の周囲に配置される複数の遊星軸との組み合わせにより構成されている。また、円環軸の雌ねじ及び太陽軸の雄ねじと遊星軸の雄ねじとがそれぞれ噛み合わされている。こうした構造の回転直線運動変換機構においては、円環軸を回転運動させたとき、円環軸から伝達された力を通じて遊星軸が太陽軸のまわりで遊星運動することにより、太陽軸が直線運動するようになる。すなわち、円環軸の回転運動を太陽軸の直線運動に変換することが可能となっている。
【0003】
また、特許文献1に記載の回転直線運動変換機構は、太陽軸の雄ねじを挟むように同太陽軸に設けられた二つの外歯車と、遊星軸の雄ねじを挟むように同遊星軸に設けられた二つの外歯車とを備えている。そして、それら歯車の噛み合いにより、太陽軸と遊星軸との相対位置が規制される構造になっている。
【特許文献1】特開2007−24248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記回転直線運動変換機構では、太陽軸及び遊星軸が互いに平行になるように、同太陽軸に設けられた二つの外歯車の位相がそれぞれ設定される。しかしながら、そのように二つの外歯車の位相を設定するようにしても、それら外歯車が太陽軸本体と別の部材によって構成される場合にはその組み付けに際して、また外歯車が一体に形成される場合には同外歯車の形成に際して、各外歯車の位相に誤差が生じることが避けられない。
【0005】
そして、そうした誤差によって二つの外歯車の位相の関係が所望の関係からずれると、太陽軸に対して遊星軸が傾いた状態になり、回転直線運動変換機構の作動抵抗が不要に大きくなることによる作動効率の低下や、太陽軸と遊星軸との相対位置が変化することによる作動精度の低下など、回転直線運動変換機構の品質の低下を招くおそれがある。
【0006】
回転直線運動変換機構の品質を高く維持するためには、太陽軸に設けられた二つの外歯車の位相差を測定し、同位相差が所望の範囲に収まっていることを確認した上で使用することが望ましい。
【0007】
二つの外歯車の位相差は、例えば平行光線の照射により生じる影を受光素子によって読み込むことにより被測定物の形状を測定する装置(いわゆる形状測定器)を用いて測定することが可能である。ただし、形状測定器を用いた測定方法は、例えば形状測定器への太陽軸の着脱にかかる作業など、上記位相差の測定にかかる作業が煩雑であり、好ましくない。また、形状測定器が非常に高価であるといった不都合もある。
【0008】
なお、回転直線運動変換機構の太陽軸に設けられた二つの外歯車の位相差を測定する装置に限らず、同一の軸に設けられた二つの外歯車の位相差を測定する装置であれば、上述した実情は共通している。
【0009】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二つの外歯車の位相差を簡素な装置によって測定することのできる位相差測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、を置いて一体に設けられた二つの外歯車を有する軸にあってそれら外歯車の位相差を測定する位相差測定装置であって、前記二つの外歯車のうちの一方に噛み合う歯を有して同歯が前記一方の外歯車に噛み合うように前記軸に固定されるものであり、前記軸に固定された状態で同軸の外方に向けて延びる第1アームが設けられてなる第1治具と、前記二つの外歯車のうちの他方に噛み合う歯を有して同歯が前記他方の外歯車に噛み合うように前記軸に固定されるものであり、前記軸に固定された状態で同軸の外方に向けて延びる第2アームが設けられてなる第2治具と、前記第1治具及び前記第2治具が取り付けられた状態の前記軸が予め定められた測定位置に載置されるものであり、前記軸が載置された状態で前記第1アームが当接する当接部を有する基台と、前記当接部に前記第1アームが当接するように前記基台に前記軸が載置された状態での前記第2アームの位置を検出する位置センサとを備えることをその要旨とする。
【0011】
上記構成では、第1治具及び第2治具を軸に取り付けることにより、第1治具の第1アームと第2治具の第2アームとの位置関係が軸に一体に設けられた二つの外歯車の位相差に対応する関係になる。
【0012】
上記構成によれば、第1治具及び第2治具を取り付けた軸を第1アームが当接部に当接するように基台に載置し、このときの第2アームの位置を位置センサによって検出することにより、第1アームと第2アームとの位置関係、ひいては二つの外歯車の位相差を測定することができる。したがって、二つの治具、基台、及び位置センサからなる簡素な装置によって、同一軸に設けられた二つの外歯車の位相差を測定することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の位相差測定装置において、前記第1治具及び前記第2治具は、共に二つの分割体からなり、それら分割体が前記軸を挟み込んだ状態で互いに締結固定されて同軸に取り付けられることをその要旨とする。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の位相差測定装置において、前記第1治具及び前記第2治具は、共に複数の分割体からなり、前記軸の周囲を覆った状態で各分割体が互いに締結固定されることによって同軸に取り付けられることをその要旨とする。
【0015】
前記第1治具及び第2治具を軸に取り付けるためには、各治具の歯と軸の外歯車の歯との間に若干の間隙を設定する必要がある。この間隙は、軸への各治具の取り付けに際して軸の位相に対する治具の位相にばらつきを生じさせるために、これが前記位相差の測定についての精度を低下させる一因となる。
【0016】
請求項2または3に記載の構成によれば、複数の分割体によって構成された各治具を、各分割体(詳しくは、外歯車に噛み合う歯)を上記軸(詳しくは、外歯車の歯)に押し付けた状態で取り付けることができる。そのため各分割体の少なくとも一箇所において、歯先を歯溝に押し込むことによって各治具の歯と外歯車の歯との間隙を小さくすることができる。したがって、各治具の取り付けに際して生じる上記軸の位相に対する治具の位相のばらつきを極力小さくすることができ、二つの外歯車の位相差を精度良く測定することができる。
【0017】
なお請求項4によるように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相差測定装置は、内部に空間が設けられる円環軸と、円環軸内に配置される太陽軸と、円環軸内において太陽軸の周囲に配置される複数の遊星軸とを備え、円環軸に設けられる雌ねじを円環ねじとし、円環軸の円環ねじを間に挟む位置に設けられる二つの内歯車を第1円環歯車及び第2円環歯車とし、太陽軸に設けられる雄ねじを太陽ねじとし、太陽軸の太陽ねじを間に挟む位置に設けられる二つの外歯車を第1太陽歯車及び第2太陽歯車とし、遊星軸に設けられる雄ねじを遊星ねじとし、遊星軸の遊星ねじを間に挟む位置に設けられる二つの外歯車を第1遊星歯車及び第2遊星歯車とすると、円環ねじ及び太陽ねじと遊星ねじとが噛み合わされることと、第1円環歯車及び第1太陽歯車と第1遊星歯車とが噛み合わされることと、第2円環歯車及び第2太陽歯車と第2遊星歯車とが噛み合わされることと、円環軸及び太陽軸の一方の回転運動にともなう遊星軸の遊星運動を通じて円環軸及び太陽軸の他方の直線運動が得られることとの条件を満たしてなる回転直線運動変換機構の太陽軸についての位相差を測定する位相差測定装置に適用することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の位相差測定装置において、前記第1治具は、前記第1太陽歯車に係合する歯を有して前記回転直線運動変換機構における前記第1円環歯車及び前記第1太陽歯車及び前記第1遊星歯車により囲繞される部分から前記回転直線運動変換機構の外方まで延びる複数の係合部と、それら係合部を連結する基部とを有してなり、前記第2治具は、前記第2太陽歯車に係合する歯を有して前記回転直線運動変換機構における前記第2円環歯車及び前記第2太陽歯車及び前記第2遊星歯車により囲繞される部分から前記回転直線運動変換機構の外方まで延びる複数の係合部と、それら係合部を連結する基部とを有してなることをその要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、各治具の係合部を太陽軸に沿うように回転直線運動変換機構の内部に挿入するといった手順で、第1治具及び第2治具を遊星軸及び円環軸が取り付けられた状態の太陽軸に取り付けることが可能になる。そのため、遊星軸及び円環軸が取り付けられていない太陽軸についての前記位相差を測定することができることに加えて、遊星軸及び円環軸が取り付けられた状態の太陽軸についての前記位相差を測定することができるようになり、同位相差を高い自由度をもって測定することができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の位相差測定装置において、前記遊星軸は前記遊星ねじ及び第1遊星歯車を有する遊星軸本体と前記第2遊星歯車を有する遊星歯車部とからなり、前記第1治具及び第2治具は、前記遊星歯車部が前記遊星軸本体に設けられていない状態の前記回転直線運動変換機構の前記太陽軸に取り付けられることをその要旨とする。
【0021】
上記回転直線運動変換機構では、第1遊星歯車の公転位置(詳しくは、太陽軸の軸心周りにおける位相)に応じて第2遊星歯車の公転位置が定まるため、第1治具及び第2治具のうちの一方を取り付けると、他方を取り付けることの可能な位置が自ずと定まる。そのため、第1遊星歯車の公転位置と第2遊星歯車の公転位置との関係によっては、第1遊星歯車によって係合部が押圧された状態で第1治具が回転直線運動変換機構に取り付けられたり、第2遊星歯車によって係合部が押圧された状態で第2治具が回転直線運動変換機構に取り付けられたりする。この場合、各治具が、前記位相差を精度良く測定することのできる位置からずれた位置に取り付けられてしまうといった不都合を招くおそれがある。
【0022】
この点、上記構成によれば、各治具の取り付けが第2遊星歯車の設けられていない回転直線運動変換機構に対して行われるために、第2遊星歯車が設けられた回転直線運動変換機構に対して行われる装置と比較して、第2治具の係合部と各遊星軸との間隙を大きくすることができ、第1治具及び第2治具のうちの一方が取り付けられた場合において他方を取り付け可能な位置の範囲を大きくすることができる。したがって、第1遊星歯車による第1治具の押圧や第2遊星歯車による第2治具の押圧による上記不都合の発生を抑制することができ、前記位相差の測定についての精度低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明にかかる位相差測定装置を具体化した一実施の形態について説明する。
ここでは先ず、本実施の形態にかかる位相差測定装置の被測定物である回転直線運動変換機構の構造について説明する。
【0024】
図1に上記回転直線運動変換機構の斜視構造を示し、図2に同回転直線運動変換機構の部分断面構造を示す。
図1及び図2に示すように、回転直線運動変換機構1は、内部に空間が設けられたリングシャフト2と、リングシャフト2の内部に配置されるサンシャフト3と、リングシャフト2内においてサンシャフト3の周囲に配置される複数のプラネタリシャフト4との組み合わせにより構成されている。また、サンシャフト3を支持するための要素として前面カラー11及び背面カラー12が設けられている。各プラネタリシャフト4は、サンシャフト3のまわりにおいて等間隔に配置されている。なお、本実施形態では9本のプラネタリシャフト4が備えられている構造の回転直線運動変換機構1を想定しているが、プラネタリシャフト4の配置数は適宜変更することができる。
【0025】
回転直線運動変換機構1においては、リングシャフト2に設けられたねじ及びギアと各プラネタリシャフト4に設けられたねじ及びギアとの噛み合いにより、リングシャフト2及び各プラネタリシャフト4の一方の構成要素から他方の構成要素に力が伝達される。また、サンシャフト3に設けられたねじ及びギアと各プラネタリシャフト4に設けられたねじ及びギアとの噛み合いにより、サンシャフト3及び各プラネタリシャフト4の一方の構成要素から他方の構成要素に力が伝達される。
【0026】
回転直線運動変換機構1は、こうした各構成要素の組み合わせに基づいて次のように動作する。すなわち、リングシャフト2及びサンシャフト3の一方の構成要素が回転運動するとき、同構成要素から伝達された力を通じて各プラネタリシャフト4がサンシャフト3のまわりで遊星運動する。これにより、各プラネタリシャフト4からリングシャフト2及びサンシャフト3の他方の構成要素に伝達された力を通じて同構成要素が各プラネタリシャフト4に対して軸方向へ移動する。
【0027】
このように、回転直線運動変換機構1は、リングシャフト2及びサンシャフト3の一方の回転運動をリングシャフト2及びサンシャフト3の他方の直線運動に変換する運動変換機構として構成されている。なお、本実施形態においては、サンシャフト3の軸方向について、サンシャフト3がリングシャフト2から押し出される方向を前面方向FRとし、サンシャフト3がリングシャフト2内に引き込まれる方向を背面方向RRとしている。また、回転直線運動変換機構1の任意の位置を基準としたときに、この基準位置よりも前面方向FR側の範囲を前面側とし、同基準位置よりも背面方向RR側の範囲を背面側としている。
【0028】
前面カラー11は、サンシャフト3を支持するためのすべり軸受11Aと、リングシャフト2の前面側の開口部をシールするためのOリング11Bとを有する要素として構成されている。この前面カラー11はリングシャフト2の前面側の開口部に固定されている。また、背面カラー12は、サンシャフト3を支持するためのすべり軸受12Aと、リングシャフト2の背面側の開口部をシールするためのOリング12Bとを有する要素として構成されている。背面カラー12はリングシャフト2の背面側の開口部に固定されている。前面カラー11には、リングシャフト2の内部(リングシャフト2、サンシャフト3及び各プラネタリシャフト4のねじ及びギアが噛み合わされている箇所)に潤滑油を供給するための油孔11Hが複数設けられている。
【0029】
各すべり軸受11A,12Aは、サンシャフト3の中心線をリングシャフト2及び各プラネタリシャフト4の中心線に対して傾ける力がサンシャフト3に加えられた場合において、この力によりサンシャフト3のねじ及びギアと各プラネタリシャフト4のねじ及びギアとが干渉する前にサンシャフト3の傾きを規制するための要素として設けられている。すなわち、サンシャフト3に上記傾ける力が作用したとき、サンシャフト3のねじ及びギアと各プラネタリシャフト4のねじ及びギアとが干渉する前にサンシャフト3と各すべり軸受11A,12Aとが接触することにより、そうした力が回転直線運動変換機構1の内部に伝達されることが抑制されるようになる。
【0030】
回転直線運動変換機構1においては、上述のようにサンシャフト3が前面カラー11及び背面カラー12を通じて支持されている一方で、各プラネタリシャフト4は前面カラー11及び背面カラー12のいずれによっても支持されていない。すなわち、サンシャフト3の径方向の位置がねじ及びギアの噛み合いと前面カラー11及び背面カラー12とにより拘束されている一方で、各プラネタリシャフト4の径方向の位置がねじ及びギアの噛み合いのみにより拘束されている。
【0031】
以下、回転直線運動変換機構1の各構成(具体的には、リングシャフト2、サンシャフト3、及びプラネタリシャフト4)についてその具体構造を各別に説明する。
先ず、図3及び図4を参照して、リングシャフト2の構造について説明する。なお、図3(A)はリングシャフト2の平面構造を、図3(B)はリングシャフト2の側面構造をそれぞれ示している。また、図4(A)は中心線に沿うリングシャフト2の断面構造を、図4(B)はリングシャフト2の一部を分解した状態の断面構造をそれぞれ示している。
【0032】
図3及び図4に示すように、リングシャフト2は、その本体となるリングシャフト本体21に雌ねじ(円環ねじ22)、前面リングギア23及び背面リングギア24が設けられた要素として構成されている。上記前面リングギア23及び背面リングギア24としては、同一形状の平歯の内歯車が設けられている。すなわち、前面リングギア23及び背面リングギア24の諸元(基準ピッチ円直径や歯数等)は、互いに等しい値に設定されている。
【0033】
リングシャフト本体21は、円環ねじ22が形成された本体ねじ部21Aと、前面リングギア23が組み付けられる本体ギア部21Bと、背面リングギア24が組み付けられる本体ギア部21Cとを含めて構成されている。
【0034】
前面リングギア23はリングシャフト本体21とは各別に形成されており、同リングシャフト本体21の前面側の端部に組み付けられている。また前面リングギア23は、リングシャフト本体21に組み付けられたときに自身の中心線がリングシャフト本体21の中心線と整合するように構成されている。リングシャフト本体21に対する前面リングギア23の組み付け態様について、本実施の形態では圧入により前面リングギア23をリングシャフト本体21に固定するようにしている。
【0035】
背面リングギア24はリングシャフト本体21とは各別に形成されており、同リングシャフト本体21の背面側の端部に組み付けられている。また背面リングギア24は、リングシャフト本体21に組み付けられたときに自身の中心線がリングシャフト本体21の中心線と整合するように構成されている。リングシャフト本体21に対する背面リングギア24の組み付け態様について、本実施形態では圧入により背面リングギア24をリングシャフト本体21に固定するようにしている。
【0036】
次に、図5を参照して、サンシャフト3の構造について説明する。なお、図5(A)はサンシャフト3の平面構造を、図5(B)は中心線に沿うサンシャフト3の断面構造をそれぞれ示している。
【0037】
図5に示すように、サンシャフト3は、サンシャフト本体31(太陽軸本体)と背面サンギア34との組み合わせにより構成されている。
サンシャフト本体31は、外周面に雄ねじ(太陽ねじ32)が形成された本体ねじ部31Aと、平歯の外歯車(前面サンギア33)が形成された本体ギア部31Bと、背面サンギア34が組み付けられる本体ギア部31Cとを含めて構成されている。
【0038】
背面サンギア34は、平歯の外歯車としてサンシャフト本体31とは各別に形成されている。また、サンシャフト本体31に組み付けられたときに自身の中心線がサンシャフト本体31の中心線と整合するように構成されている。サンシャフト本体31に対する背面サンギア34の組み付け態様について、本実施の形態では圧入により背面サンギア34をサンシャフト本体31に固定するようにしている。なお、圧入以外の方法により背面サンギア34をサンシャフト本体31に固定することもできる。
【0039】
このようにサンシャフト3において、前面サンギア33及び背面サンギア34は太陽ねじ32を間に挟む位置にそれぞれ形成されている。またサンシャフト3において、前面サンギア33及び背面サンギア34は同一形状の歯車として構成されている。すなわち、前面サンギア33及び背面サンギア34の諸元(基準ピッチ円直径や歯数等)が互いに等しい値に設定されている。
【0040】
次に、図6を参照して、プラネタリシャフト4の構造について説明する。なお、図6(A)はプラネタリシャフト4の平面構造を、図6(B)は中心線に沿うプラネタリシャフト4の断面構造をそれぞれ示している。
【0041】
図6に示すように、プラネタリシャフト4は、その本体となるプラネタリシャフト本体41に雄ねじ(遊星ねじ42)、前面プラネタリギア43及び背面プラネタリギア44が設けられた要素として構成されている。前面プラネタリギア43及び背面プラネタリギア44としては、同一形状の平歯の外歯車が設けられている。すなわち、前面プラネタリギア43及び背面プラネタリギア44の諸元(基準ピッチ円直径や歯数等)は、互いに等しい値に設定されている。
【0042】
プラネタリシャフト本体41は、外周面に遊星ねじ42が形成された本体ねじ部41Aと、前面プラネタリギア43が形成された本体ギア部41Bと、背面プラネタリギア44が組み付けられる背面側シャフト41Cとを含めて構成されている。
【0043】
前面プラネタリギア43はプラネタリシャフト本体41の前面側の端部に一体に形成されている。
背面プラネタリギア44はプラネタリシャフト本体41とは各別に形成されており、同プラネタリシャフト本体41の背面側の端部に設けられている。この背面プラネタリギア44は、詳しくは、その軸受孔44Hに上記プラネタリシャフト本体41の背面側シャフト41Cが挿入されることにより、プラネタリシャフト本体41に組み付けられる。また背面プラネタリギア44は、一方の端面がプラネタリシャフト本体41と接触した状態でプラネタリシャフト本体41に組み付けられる。さらに背面プラネタリギア44は、プラネタリシャフト本体41に組み付けられた状態において、自身の中心線がプラネタリシャフト本体41の中心線と整合するように構成されている。プラネタリシャフト本体41に対する背面プラネタリギア44の組み付け態様について、本実施の形態では背面プラネタリギア44がプラネタリシャフト本体41に対して回転できるようにすきまばめを採用している。なお、プラネタリシャフト本体41と背面プラネタリギア44との相対的な回転を得るための組み付け態様として、すきまばめ以外の組み付け態様を採用することもできる。
【0044】
以下、図7〜図10を参照して、回転直線運動変換機構1における各構成要素の関係について説明する。なお、図7はサンシャフト3の中心線に沿う回転直線運動変換機構1の断面構造を示している。また、図8は図7のDA−DA線に沿う回転直線運動変換機構1の断面構造を、図9は図7のDB−DB線に沿う回転直線運動変換機構1の断面構造を、図10は図7のDC−DC線に沿う回転直線運動変換機構1の断面構造をそれぞれ示している。
【0045】
図7〜図10に示すように、回転直線運動変換機構1においては、各構成要素の動作が次のように許容または制限されている。
(a)リングシャフト2について、リングシャフト本体21と前面リングギア23及び背面リングギア24との相対的な回転が不能にされている。また、リングシャフト本体21と前面カラー11及び背面カラー12との相対的な回転が不能にされている。
(b)プラネタリシャフト4について、プラネタリシャフト本体41と背面プラネタリギア44との相対的な回転が許容されている。
【0046】
そして回転直線運動変換機構1においては、リングシャフト2及びサンシャフト3と各プラネタリシャフト4とのねじ及びギアの噛み合いを通じて、これら各構成要素の間で次のように力の伝達が行われる。
【0047】
リングシャフト2及び各プラネタリシャフト4においては、リングシャフト本体21の円環ねじ22と各プラネタリシャフト本体41の遊星ねじ42とが噛み合わされる。また、リングシャフト本体21の前面リングギア23と各プラネタリシャフト本体41の前面プラネタリギア43とが噛み合わされる。また、リングシャフト本体21の背面リングギア24と各プラネタリシャフト本体41の背面プラネタリギア44とが噛み合わされる。これにより、リングシャフト2及び各プラネタリシャフト4の一方に回転運動が入力されたとき、円環ねじ22と遊星ねじ42との噛み合い、前面リングギア23と前面プラネタリギア43との噛み合い、及び背面リングギア24と背面プラネタリギア44との噛み合いを通じて、リングシャフト2及び各プラネタリシャフト4の他方に力が伝達される。
【0048】
サンシャフト3及び各プラネタリシャフト4においては、サンシャフト本体31の太陽ねじ32と各プラネタリシャフト本体41の遊星ねじ42とが噛み合わされる。また、サンシャフト本体31の前面サンギア33と各プラネタリシャフト本体41の前面プラネタリギア43とが噛み合わされる。また、サンシャフト本体31の背面サンギア34と各プラネタリシャフト本体41の背面プラネタリギア44とが噛み合わされる。これにより、サンシャフト3及び各プラネタリシャフト4の一方に回転運動が入力されたとき、太陽ねじ32と遊星ねじ42との噛み合い、前面サンギア33と前面プラネタリギア43との噛み合い、及び背面サンギア34と背面プラネタリギア44との噛み合いを通じて、サンシャフト3及び各プラネタリシャフト4の他方に力が伝達される。
【0049】
このように、回転直線運動変換機構1は、リングシャフト2の円環ねじ22とサンシャフト3の太陽ねじ32と各プラネタリシャフト4の遊星ねじ42とにより構成される減速機構、前面リングギア23と前面サンギア33と各前面プラネタリギア43とにより構成される減速機構、及び背面リングギア24と背面サンギア34と各背面プラネタリギア44とにより構成される減速機構とを備えて構成されている。
【0050】
以下、回転直線運動変換機構1の動作態様について説明する。
回転直線運動変換機構1においては、各ギアの歯数及び各ねじの条数の設定態様に基づいて、回転運動を直線運動に変換するための動作方式(運動変換方式)が決定される。すなわち、運動変換方式として、リングシャフト2の回転運動によりサンシャフト3を直線運動させる太陽軸変位方式と、サンシャフト3の回転運動によりリングシャフト2を直線運動させる円環軸変位方式とのいずれかを選択することができる。以下、各運動変換方式における回転直線運動変換機構1の動作態様について説明する。
【0051】
(A)運動変換方式として太陽軸変位方式が採用されている場合においては、次のように回転運動から直線運動への変換が行われる。すなわち、リングシャフト2に回転運動が入力されたとき、前面リングギア23と各前面プラネタリギア43との噛み合い、背面リングギア24と各背面プラネタリギア44との噛み合い、及び円環ねじ22と各遊星ねじ42との噛み合いを通じて、リングシャフト2から各プラネタリシャフト4に力が伝達されることにより、各プラネタリシャフト4がサンシャフト3のまわりにおいて自転しつつ公転する。そして、このプラネタリシャフト4の遊星運動にともない、各前面プラネタリギア43と前面サンギア33との噛み合い、各背面プラネタリギア44と背面サンギア34との噛み合い、及び各遊星ねじ42と太陽ねじ32との噛み合いを通じて、各プラネタリシャフト4からサンシャフト3に力が伝達されることにより、サンシャフト3が軸方向へ変位する。
【0052】
(B)運動変換方式として円環軸変位方式が採用されている場合においては、次のように回転運動から直線運動への変換が行われる。すなわち、サンシャフト3に回転運動が入力されたとき、前面サンギア33と各前面プラネタリギア43との噛み合い、背面サンギア34と各背面プラネタリギア44との噛み合い、及び太陽ねじ32と各遊星ねじ42との噛み合いを通じて、サンシャフト3から各プラネタリシャフト4に力が伝達されることにより、各プラネタリシャフト4がサンシャフト3のまわりにおいて自転しつつ公転する。そして、このプラネタリシャフト4の遊星運動にともない、各前面プラネタリギア43と前面リングギア23との噛み合い、各背面プラネタリギア44と背面リングギア24との噛み合い、及び各遊星ねじ42と円環ねじ22との噛み合いを通じて、各プラネタリシャフト4からリングシャフト2に力が伝達されることにより、リングシャフト2が軸方向へ変位する。
【0053】
また、回転直線運動変換機構1にあっては、リングシャフト2の前面リングギア23が各プラネタリシャフト4の前面プラネタリギア43と噛み合うとともに、同前面プラネタリギア43がサンシャフト3の前面サンギア33と噛み合うようになっている。また回転直線運動変換機構1にあっては、リングシャフト2の背面リングギア24が各プラネタリシャフト4の背面プラネタリギア44と噛み合うとともに、同背面プラネタリギア44がサンシャフト3の背面サンギア34と噛み合うようになっている。
【0054】
そのため、回転直線運動変換機構1の減速比は、前面リングギア23と前面サンギア33と前面プラネタリギア43との噛み合いや、背面リングギア24と背面サンギア34と背面プラネタリギア44との噛み合いによって決定される。したがって、リングシャフト2の円環ねじ22や、サンシャフト3の太陽ねじ32並びにプラネタリシャフト4の遊星ねじ42の有効径がねじの加工精度に起因してばらついたり、螺合するねじ同士の接触面の摩耗等によって変化したりする場合であっても、そのようなねじの有効径の影響を受けることなく、回転直線運動変換機構1の減速比が安定した一定の値に維持されて、回転直線運動変換機構1のリードの設定精度も高く維持される。
【0055】
ここで回転直線運動変換機構1は、リングシャフト2の回転中心とサンシャフト3の回転中心とプラネタリシャフト4の回転中心とが互いに平行になるように設計されている。そして、この回転直線運動変換機構1は、サンシャフト3の前面サンギア33及び背面サンギア34の位相(詳しくは、サンシャフト3の回転中心周りにおける各歯の形成位置)が一致するように背面サンギア34がサンシャフト本体31に組み付けられることを一条件に、上記各回転中心が平行になるようになっている。
【0056】
そのため、前面サンギア33及び背面サンギア34の間に位相差が生じた状態で、背面サンギア34がサンシャフト本体31に組み付けられてしまうと、プラネタリシャフト4がサンシャフト3に対して傾いた状態になってしまう。この場合、上述したリード精度の低下や、サンシャフト3と各プラネタリシャフト4との摺動抵抗が不要に大きくなることによる回転直線運動変換機構1の作動効率の低下などといった不都合を招くおそれがある。
【0057】
したがって、回転直線運動変換機構1の品質を高く維持するためには、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定し、同位相差が所望の範囲に収まっていることを確認することが望ましい。
【0058】
以下、そうした位相差を測定するための装置(位相差測定装置)について説明する。
図11に上記位相差測定装置の正面構造を示し、図12に同位相差測定装置の平面構造を示す。
【0059】
図11及び図12に示すように、本実施の形態にかかる位相差測定装置は、基台5、前面側治具6、及び背面側治具7を備えて構成される。そして、上記位相差の測定に際しては、前面側治具6及び背面側治具7が取り付けられた状態の回転直線運動変換機構1が基台5に載置される。
【0060】
先ず、基台5の構造について詳細に説明する。
基台5の上部(図11中における上方)には、回転直線運動変換機構1に沿うように延びる形状であり、且つ下方に向かうほど幅が狭くなる形状の載置溝51(図12)が形成されている。回転直線運動変換機構1は、その下部が載置溝51と係合するように基台5に載置される。また基台5の上部には、載置溝51を遮る形状の壁部52が形成されている。この壁部52に回転直線運動変換機構1のサンシャフト3の先端が当接するように、同回転直線運動変換機構1が載置される。
【0061】
また基台5には、二本の位置決めピン53(図11)が上方に延びるようにそれぞれ突設されている。それら位置決めピン53は、基台5における上記回転直線運動変換機構1の配設位置に対応する位置であって、同回転直線運動変換機構1の軸線方向において間隔を置いた位置にそれぞれ配設されている。そして、回転直線運動変換機構1を基台5に載置する際には、前面側治具6の端面が一方(図12における右側)の位置決めピン53に当接するように同前面側治具6の位置が調節され、背面側治具7の端面が他方(図12における左側)の位置決めピン53に当接するように同背面側治具7の位置が調節される。
【0062】
なお、背面側治具7には、回転直線運動変換機構1に取り付けられた状態で同回転直線運動変換機構1の外方に向けて延びる形状の基準アーム71が設けられている。上記基台5には、回転直線運動変換機構1が載置された状態で、上記基準アーム71が当接する当接部54(具体的にはボルト)が設けられている。
【0063】
また、前面側治具6には、回転直線運動変換機構1に取り付けられた状態で同回転直線運動変換機構1の外方に向けて延びる形状の測定アーム61が設けられている。上記基台5には測定アーム61の位置を検出するための位置センサ55が設けられている。この位置センサ55は、センサ本体55aと同センサ本体に出没可能に設けられた検出部55bとを備えており、同センサ本体55aが基台5に固定されるとともに、検出部55bが、上記回転直線運動変換機構1が基台5に載置された状態において上記測定アーム61が当接するように配設されている。なお本実施の形態では、位置センサ55としてダイヤルゲージが用いられる。ダイヤルゲージ以外のものを位置センサとして用いることも可能である。
【0064】
次に、前面側治具6の構造について詳細に説明する。
図13に前面側治具6の正面構造を示し、図14に同前面側治具6を図13の矢印A方向から見た側面構造を示す。
【0065】
図13及び図14に示すように、前面側治具6は、略円筒形状に形成された基部62と、同基部62の軸方向における一方(図13における左側)の端部から突出する形状の複数(本実施の形態では9本)の係合部63と、同基部62の外周面を始点にその外方に向けて延びる前記測定アーム61とを備えている。
【0066】
上記基部62と各係合部63とは一体に形成されており、各係合部63は上記基部62の周方向において略等間隔おきに且つ平行に延びるように形成されている。各係合部63の先端部分は、回転直線運動変換機構1の内部における前面リングギア23(図8参照)、前面サンギア33、及び前面プラネタリギア43によって囲繞された部分に対応する形状に形成されている。それら先端部分は、詳しくは、前面リングギア23の歯先を繋いだ面と前面サンギア33と前面プラネタリギア43の歯先を繋いだ面とによって囲繞された部分と同形状、あるいは同部分よりも若干小さい形状に形成されている。また、各係合部63の先端部分の内側面には平歯64が形成されており、それら平歯64は、前面サンギア33(図8参照)に各別に噛み合う形状にそれぞれ形成されている。
【0067】
前面側治具6は、第1分割体81、第2分割体82、及びアーム部65の三つの部材に分割された構造になっている。
図15(A)に第1分割体81の正面形状を示し、図15(B)に第1分割体81の側面構造を示す。図15(A),(B)に示すように、第1分割体81は、基部62の係合部63側の部分の半周分と四本の係合部63とが一体に形成されたものである。
【0068】
図16(A)に第2分割体82の正面形状を示し、図16(B)に第2分割体82の側面構造を示す。図16(A),(B)に示すように、第2分割体82は、上記基部62の係合部63側の部分の上記第1分割体81を除く部分と、同基部62の軸方向における中央部分と、五本の係合部63とが一体に形成されたものである。
【0069】
図17にアーム部65の斜視構造を示す。同図17に示すように、アーム部65は、上記基部62の係合部63(図13参照)とは反対側の部分と、測定アーム61とが一体に形成されたものである。
【0070】
図13及び図14に示すように、前面側治具6には、第1分割体81及び第2分割体82を貫通する二本の貫通孔66が形成されている。また第2分割体82には、各貫通孔66に対応して、一部が上記貫通孔66の内部に露出する形状の締結部67がそれぞれ取り付けられている。各締結部67において上記貫通孔66の内部に露出する部分には雌ねじ(図示略)が形成されている。そして、各貫通孔66に第1分割体81側からボルトSが挿入されるとともに、同ボルトSが上記第2分割体82の締結部67の雌ねじに螺入されることによって、第1分割体81及び第2分割体82が一体に形成されている。なお上記アーム部65は第2分割体82に固定される。
【0071】
次に、背面側治具7の構造について詳細に説明する。
図18に背面側治具7の側面構造を示す。
図18に示すように、背面側治具7は、前面側治具6と基本構造は同一である。ただし、背面側治具7には、前面側治具6における測定アーム61に代えて、前記基準アーム71が設けられている。この基準アーム71は、上記測定アーム61と同様に基部72の外周面を始点にその外方に向けて延設されるものであるものの、上記測定アーム61とその延設方向が異なる(図12及び図14参照)。
【0072】
背面側治具7は、第1分割体81、第2分割体82、及びアーム部75の三つの部材に分割された構造になっている。なお、第1分割体81及び第2分割体82としては、背面側治具7と前面側治具6とで共通のものが用いられる(図15及び図16参照)。背面側治具7において、第1分割体81は基部72の係合部73側の部分の半周分と四本の係合部73とを構成し、第2分割体82は、上記基部72の係合部73側の部分の上記第1分割体81を除く部分と、同基部72の軸方向における中央部分と、五本の係合部73とを構成する。
【0073】
背面側治具7にあっては、各貫通孔76に第1分割体81側からボルトSが挿入されるとともに、同ボルトSが上記第2分割体82の締結部77の雌ねじ(図示略)に螺入されることによって、第1分割体81及び第2分割体82が一体に形成される。
【0074】
図19にアーム部75の斜視構造を示す。同図19に示すように、アーム部75は、上記基部72の係合部73とは反対側の部分と、基準アーム71とが一体に形成されたものである。このアーム部75は第2分割体82に固定される。
【0075】
以下、上述した位相差測定装置を用いて回転直線運動変換機構1の前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定する際の測定手順について説明する。
上記位相差の測定に際しては先ず、図20に示すように、回転直線運動変換機構1に前面側治具6及び背面側治具7が取り付けられる。詳しくは、前面側治具6の係合部63の平歯64が前面サンギア33と噛み合うように、且つ同係合部63が前面リングギア23、前面サンギア33、及び前面プラネタリギア43によって囲繞される部分から回転直線運動変換機構1の外方まで延びるように、前面側治具6が回転直線運動変換機構1に取り付けられる。また、背面側治具7の係合部73の平歯74が背面サンギア34と噛み合うように、且つ同係合部73が背面リングギア24、背面サンギア34、及び背面プラネタリギア44によって囲繞される部分から回転直線運動変換機構1の外方まで延びるように、背面側治具7が回転直線運動変換機構1に取り付けられる。なお、ここでは前面側治具6や背面側治具7の第1分割体81と第2分割体82とを締結固定することはせず、それら第1分割体81と第2分割体82とが仮止めされる。
【0076】
ここで上記回転直線運動変換機構1は次のように組み立てられる。すなわち先ず、リングシャフト2、サンシャフト3、及び各プラネタリシャフト本体41が一体に組み付けられる。次に、これに前面リングギア23、背面リングギア24、背面サンギア34、及び背面プラネタリギア44が組み付けられる。その後、前面カラー11及び背面カラー12が取り付けられて回転直線運動変換機構1が完成される。
【0077】
このように上記回転直線運動変換機構1では、その組み立て過程において背面サンギア34がサンシャフト3に取り付けられる。そのため、サンシャフト3単体の状態で、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができない。また、回転直線運動変換機構1はその内部に前面サンギア33及び背面サンギア34が配設される構造であるために、それら前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差の測定を行い難い構造であると云える。
【0078】
本実施の形態では、上述した前面側治具6及び背面側治具7の取り付けが、前面カラー11、背面カラー12、及び背面プラネタリギア44が設けられていない状態の回転直線運動変換機構1に対して行われる。具体的には、前面側治具6の係合部63や背面側治具7の係合部73をサンシャフト3に沿うように回転直線運動変換機構1の内部に挿入するといった手順で、リングシャフト2及びプラネタリシャフト本体41が取り付けられた状態のサンシャフト3に各治具が取り付けられる。これにより、リングシャフト2、サンシャフト3、及びプラネタリシャフト本体41が一体に組み付けられた状態の回転直線運動変換機構1についての上記位相差を測定することができるようになり、同位相差を高い自由度をもって測定することができるようになる。なお、こうした前面側治具6及び背面側治具7の上記回転直線運動変換機構1への取り付けは、上述した構造の前面側治具6及び背面側治具7を用いることにより可能になる。
【0079】
次に、前面側治具6及び背面側治具7が取り付けられた状態の回転直線運動変換機構1が基台5(図11及び図12)の載置溝51に載置される。
その後、基台5の壁部52にサンシャフト3の先端が当接する位置まで、回転直線運動変換機構1が移動される。これにより、上記サンシャフト3の軸方向における回転直線運動変換機構1の位置であって、基台5に対する回転直線運動変換機構1の位置が定められる。
【0080】
次に、基台5の二本の位置決めピン53のうちの一方に前面側治具6が当接するように、他方に背面側治具7が当接するように、前面側治具6及び背面側治具7が移動される。これにより、前面側治具6及び背面側治具の上記基台5に対する位置が定められる。なお、各位置決めピン53の配設位置は、このとき前面側治具6の係合部63の平歯64が前面サンギア33における上記サンシャフト3の軸方向の中央部分で噛み合うように、また背面側治具7の係合部73の平歯74が背面サンギア34における上記サンシャフト3の軸方向の中央部分で噛み合うように、それぞれ設定されている。
【0081】
その後、各治具のボルトSが雌ねじに螺入されて第1分割体81(図15参照)と第2分割体82(図16参照)とが互いに締結固定される。これにより、前面側治具6が、その第1分割体81と第2分割体82とによって前面サンギア33を挟み込んだ状態で回転直線運動変換機構1に固定される。また背面側治具7が、その第1分割体81と第2分割体82とによって背面サンギア34を挟み込んだ状態で回転直線運動変換機構1に固定される。
【0082】
なお第1分割体81及び第2分割体82は、それらが前面サンギア33や背面サンギア34を挟み込んだ状態で締結固定された場合に、それら第1分割体81及び第2分割体82の対向面間に若干の間隙が設けられる形状に形成されている。そのため、このとき第1分割体81及び第2分割体82が前面サンギア33に押し付けられた状態で前面側治具6が取り付けられ、また第1分割体81及び第2分割体82が背面サンギア34に押し付けられた状態で背面側治具7が取り付けられる。
【0083】
そして、このように前面側治具6及び背面側治具7を取り付けることにより、前面側治具6の基準アーム71と背面側治具7の測定アーム61との位置関係(具体的には、基準アーム71と測定アーム61とのなす角度)が前面サンギア33と背面サンギア34との位相差に対応する関係になる。
【0084】
次に、図21に示すように、背面側治具7の基準アーム71が基台5の当接部54に当接する位置まで回転直線運動変換機構1が基台5上において回転される。これにより、図22に示すように、前面側治具6の測定アーム61が位置センサ55の検出部55bが押し下げられる。なお図21は図11の位相差測定装置を矢印B方向から見た構造を示しており、図22は図11のC−C線に沿った断面構造を示している。本実施の形態では、このときの回転直線運動変換機構1の載置位置(図11及び図12に示す位置)が予め定められた測定位置に相当する。
【0085】
その後、前面サンギア33と背面サンギア34との位相差に相当する値として、前記位置センサ55の表示値が読み取られる。なお、上記表示値は、以下の関係式を通じて上記位相差に近似する値に変換することが可能である。
【0086】

「位相差」
=「計測値」×「ピッチ円の直径」×「円周率」/「360°」/「アーム比R」

上記関係式における「ピッチ円の直径」は前面サンギア33および後面サンギア34のピッチ円の直径である。また、「アーム比R」は、測定アーム61が位置センサ55の検出部55bに接触している部分とサンシャフト3の中心線との距離Lをピッチ円の半径Cによって商算した値(=L/C)である。
【0087】
このように、本実施の形態では、前面側治具6及び背面側治具7を取り付けた回転直線運動変換機構1を基準アーム71が当接部54に当接するように基台5に載置し、このときの測定アーム61の位置を位置センサ55によって検出することにより、基準アーム71と測定アーム61との位置関係、ひいては前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。したがって本実施の形態によれば、二つの治具(前面側治具6及び背面側治具7)、基台5、及び位置センサ55からなる簡素な装置によって、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。
【0088】
ここで本実施の形態では、前面側治具6及び背面側治具7が二つの分割体(第1分割体81及び第2分割体82)によって構成されている。以下、これによる作用について説明する。
【0089】
前面側治具6及び背面側治具7を回転直線運動変換機構1に取り付けるためには、前面側治具6の係合部63の平歯64と前面サンギア33との間や、背面側治具7の係合部73の平歯74と背面サンギア34との間に若干の間隙を設定する必要がある。この間隙は、回転直線運動変換機構1(詳しくは、サンシャフト3)への前面側治具6及び背面側治具7の取り付けに際して、サンシャフト3の位相に対する前面側治具6の位相や背面側治具7の位相にばらつきを生じさせるために、これが前記位相差の測定についての精度を低下させる一因となる。
【0090】
本実施の形態では、前面側治具6及び背面側治具7を第1分割体81及び第2分割体82によって構成したために、第1分割体81及び第2分割体82を前面サンギア33に押し付けた状態で前面側治具6を取り付けることができ、また第1分割体81及び第2分割体82を背面サンギア34に押し付けた状態で背面側治具7を取り付けることができる。これにより第1分割体81や第2分割体82の少なくとも一箇所において歯先が歯溝に押し込まれるようになり、前面側治具6の係合部63の平歯64と前面サンギア33との間隙を小さくすることができ、また背面側治具7の係合部73の平歯74と背面サンギア34との間隙を小さくすることができる。そのため、図23(A)に示すように、第1分割体81及び第2分割体82を締結固定する前において前面サンギア33と係合部63の平歯64との相対位相や背面サンギア34と係合部73の平歯74との相対位相が所望の関係からずれていた場合であっても、それら第1分割体81及び第2分割体82を締結固定することにより、図23(B)に示すように、上記相対位相が矯正されて略一定の関係(所望の関係)になる。
【0091】
このように本実施の形態では、上記サンシャフト3の位相に対する各治具の取り付け位相のばらつきを極力小さくすることができ、上記位相差を精度良く測定することができる。
【0092】
また本実施の形態では、前面カラー11、背面カラー12、及び背面プラネタリギア44が設けられていない状態の回転直線運動変換機構1に、前面側治具6及び背面側治具7が取り付けられる。以下、これによる作用について説明する。
【0093】
上記回転直線運動変換機構1(図7)は、各前面プラネタリギア43の公転位置(詳しくは、サンシャフト3の軸心周りにおける位相)に応じて各背面プラネタリギア44の公転位置が定まる構造である。そのため、前面側治具6及び背面側治具7のうちの一方を回転直線運動変換機構1に取り付けると、他方を取り付けることの可能な位置が自ずと定まる。
【0094】
そのため、仮に背面プラネタリギア44が取り付けられた状態の回転直線運動変換機構1に前面側治具6及び背面側治具7を取り付けるようにすると、各前面プラネタリギア43の公転位置と各背面プラネタリギア44の公転位置との関係によっては、前面プラネタリギア43によって係合部63が押圧された状態で前面側治具6が取り付けられたり、背面プラネタリギア44によって係合部73が押圧された状態で背面側治具7が取り付けられたりする。そして、この場合には、前面側治具6や背面側治具7が、前記位相差を精度良く測定することのできる位置からずれた位置に取り付けられてしまうといった不都合を招くおそれがある。
【0095】
本実施の形態では、背面プラネタリギア44が設けられていない回転直線運動変換機構1(図20)に前面側治具6及び背面側治具7が取り付けられるために、背面プラネタリギア44が設けられた回転直線運動変換機構に対して取り付けられる装置と比較して、背面側治具7の係合部73と各プラネタリシャフト4との間隙を大きくすることができる。そのため、前面側治具6及び背面側治具7のうちの一方が取り付けられた場合において他方を取り付け可能な位置の範囲を大きくすることができる。したがって、前面プラネタリギア43による前面側治具6の押圧や背面プラネタリギア44による背面側治具7の押圧による上記不都合の発生を抑制することができ、前記位相差の測定についての精度低下を抑制することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)前面側治具6及び背面側治具7を回転直線運動変換機構1に取り付けることにより、前面側治具6の測定アーム61と背面側治具7の基準アーム71との位置関係が前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差に対応する関係になる。そして、前面側治具6及び背面側治具7を取り付けた回転直線運動変換機構1を基準アーム71が当接部54に当接するように基台5に載置し、このときの測定アーム61の位置を位置センサ55によって検出することにより、基準アーム71と測定アーム61との位置関係、ひいては前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。したがって、二つの治具(前面側治具6及び背面側治具7)、基台5、及び位置センサ55からなる簡素な装置によって、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。
【0097】
(2)前面側治具6及び背面側治具7を共に二つの分割体(第1分割体81及び第2分割体82)によって構成した。そして、前面サンギア33を挟み込んだ状態で前面側治具6の第1分割体81と第2分割体82とを互いに締結固定して回転直線運動変換機構1に取り付けるとともに、背面サンギア34を挟み込んだ状態で背面側治具7の第1分割体81と第2分割体82とを互いに締結固定して回転直線運動変換機構1に取り付けるようにした。そのため、上記サンシャフト3の位相に対する各治具(前面側治具6及び背面側治具7)の取り付け位相のばらつきを極力小さくすることができ、上記位相差を精度良く測定することができる。
【0098】
(3)前面側治具6を、前面サンギア33に係合する平歯64を有して前面リングギア23、前面サンギア33、及び前面プラネタリギア43により囲繞される部分から回転直線運動変換機構1の外方まで延びる複数の係合部63と、それら係合部63を連結する基部62とを備えるものとした。また、背面側治具7を、背面サンギア34に係合する平歯74を有して背面リングギア24、背面サンギア34、及び背面プラネタリギア44により囲繞される部分から回転直線運動変換機構1の外方まで延びる複数の係合部73と、それら係合部73を連結する基部72とを備えるものとした。そのため、リングシャフト2、サンシャフト3、及びプラネタリシャフト4が一体に組み付けられた状態の回転直線運動変換機構1についての上記位相差を測定することができるようになり、同位相差を高い自由度をもって測定することができるようになる。
【0099】
(4)前面カラー11、背面カラー12、及び背面プラネタリギア44が設けられていない状態の回転直線運動変換機構1に前面側治具6及び背面側治具7を取り付けるようにした。そのため、前面側治具6及び背面側治具7のうちの一方が回転直線運動変換機構1に取り付けられた場合において他方を取り付け可能な位置の範囲を大きくすることができる。したがって、前面プラネタリギア43による前面側治具6の押圧や背面プラネタリギア44による背面側治具7の押圧による前記不都合(前面側治具6や背面側治具7が前記位相差を精度良く測定することのできる位置からずれた位置に取り付けられてしまうといった不都合)の発生を抑制することができ、前記位相差の測定についての精度低下を抑制することができる。
【0100】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・前面側治具6に代えて、三つ以上の分割体からなる前面側治具を用いるようにしてもよい。また背面側治具7に代えて、三つ以上の分割体からなる背面側治具を用いることもできる。この場合には、前面サンギア33の周囲を覆った状態で(あるいは背面サンギア34の周囲を覆った状態で)各分割体を互いに締結固定することによって前面側治具(あるいは背面側治具)を回転直線運動変換機構1に取り付けるようにすればよい。これにより、各分割体を前面サンギア33に押し付けた状態で前面側治具を取り付けることや、各分割体を背面サンギア34に押し付けた状態で背面側治具を取り付けることが可能になる。そのため、各分割体の少なくとも一箇所において歯先を歯溝に押し込むことができ、前面側治具の係合部63の平歯64と前面サンギア33との間隙を小さくすることや、背面側治具7の係合部73の平歯74と背面サンギア34との間隙を小さくすることができる。
【0101】
・前面側治具6の形状や構造は、前面サンギア33に噛み合うように回転直線運動変換機構1に固定され、固定状態で同回転直線運動変換機構1の外方に向けて延びる測定アーム61が設けられるのであれば、任意に変更可能である。また、背面側治具7の形状や構造は、背面サンギア34に噛み合うように回転直線運動変換機構1に固定され、固定状態で同回転直線運動変換機構1の外方に向けて延びる基準アーム71が設けられるのであれば、任意に変更可能である。そうした治具の具体例としては、以下の(イ)及び(ロ)に記載のものなどが挙げられる。
(イ)上記実施の形態では、9本のプラネタリシャフト4を有する回転直線運動変換機構1についての前記位相差を測定するための治具として9本の係合部63を有するものを用いるようにしたが、これに代えて8本以下の係合部63を有する治具を用いるようにしてもよい。
(ロ)前面側治具6や背面側治具7に代えて、第1分割体81にあたる部分と第2分割体82にあたる部分とが一体に形成された治具を用いるようにしてもよい。
【0102】
・サンシャフト本体31に背面サンギア34が取り付けられた状態のサンシャフト3単体に前面側治具6及び背面側治具7を取り付けて、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。
【0103】
・背面サンギア34が一体形成されたサンシャフトを有する回転直線運動変換機構1についての上記位相差を測定することもできる。また、背面サンギア34が一体形成されたサンシャフト単体に前面側治具6及び背面側治具7を取り付けて、前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。こうした構成によれば、前面サンギア33及び背面サンギア34の形成位置の誤差に起因するそれら前面サンギア33及び背面サンギア34の位相差を測定することができる。
【0104】
・本発明は、間隔を置いて一体に設けられた二つの外歯車を有する軸にあってそれら外歯車の位相差を測定する位相差測定装置であれば、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態にかかる位相差測定装置が適用される回転直線運動変換機構の斜視構造を示す斜視図。
【図2】同回転直線運動変換機構の内部構造を示す斜視図。
【図3】(A)同回転直線運動変換機構のリングシャフトについてその平面構造を示す平面図。(B)同リングシャフトについてその側面構造を示す側面図。
【図4】(A)同回転直線運動変換機構のリングシャフトについてその中心線に沿う断面構造を示す断面図。(B)同リングシャフトについてその一部を分解した状態の断面構造を示す断面図。
【図5】(A)同回転直線運動変換機構のサンシャフトについてその平面構造を示す平面図。(B)同サンシャフトについて分解した状態の平面構造を示す平面図。
【図6】(A)同回転直線運動変換機構のプラネタリシャフトについてその平面構造を示す平面図。(B)同プラネタリシャフトについてその中心線に沿う断面構造を示す断面図。
【図7】同回転直線運動変換機構についてその中心線に沿う断面構造を示す断面図。
【図8】同回転直線運動変換機構について図7のDA−DA線に沿う断面構造を示す断面図。
【図9】同回転直線運動変換機構について図7のDB−DB線に沿う断面構造を示す断面図。
【図10】同回転直線運動変換機構について図7のDC−DC線に沿う断面構造を示す断面図。
【図11】位相差測定装置の正面構造を示す正面図。
【図12】位相差測定装置の平面構造を示す平面図。
【図13】前面側治具の正面構造を示す正面図。
【図14】前面側治具を図13の矢印A方向から見た側面構造を示す側面図。
【図15】(A)第1分割体の正面構造を示す正面図。(B)第1分割体の側面構造を示す側面図。
【図16】(A)第2分割体の正面構造を示す正面図。(B)第2分割体の側面構造を示す側面図。
【図17】前面側治具のアーム部の斜視構造を示す斜視図。
【図18】背面側治具の側面構造を示す側面図。
【図19】背面側治具のアーム部の斜視構造を示す斜視図。
【図20】前面側治具及び背面側治具が取り付けられた状態の回転直線運動変換機構の断面構造を示す断面図。
【図21】位相差測定装置を図11の矢印B方向から見た側面構造を示す側面図。
【図22】図11のC−C線に沿った位相差測定装置の断面構造を示す断面図。
【図23】(A)締結固定前における治具の係合部の平歯とサンギアとの係合状態を示す略図。(B)締結固定後における同係合状態を示す略図。
【符号の説明】
【0106】
1…回転直線運動変換機構、11…前面カラー、11A…すべり軸受、11B…Oリング、11H…油孔、12…背面カラー、12A…すべり軸受、12B…Oリング、2…リングシャフト(円環軸)、21…リングシャフト本体(円環軸本体)、21A…本体ねじ部、21B…本体ギア部、21C…本体ギア部、22…円環ねじ、23…前面リングギア(第1円環歯車部)、24…背面リングギア(第2円環歯車部)、3…サンシャフト(太陽軸)、31…サンシャフト本体、31A…本体ねじ部、31B…本体ギア部、31C…本体ギア部、32…太陽ねじ、33…前面サンギア、34…背面サンギア、4…プラネタリシャフト(遊星軸)、41…プラネタリシャフト本体(遊星軸本体)、41A…本体ねじ部、41B…本体ギア部、41C…背面側シャフト、42…遊星ねじ、43…前面プラネタリギア、44…背面プラネタリギア(遊星歯車部)、44H…軸受孔、5…基台、51…載置溝、52…壁部、53…位置決めピン、54…当接部、55…位置センサ、55a…センサ本体、55b…検出部、6…前面側治具(第2治具)、61…測定アーム(第2アーム)、62,72…基部、63,73…係合部、64,65…平歯、65,75…アーム部、66,76…貫通孔、67,77…締結部、7…背面側治具(第1治具)、71…基準アーム(第1アーム)、81…第1分割体、82…第2分割体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて一体に設けられた二つの外歯車を有する軸にあってそれら外歯車の位相差を測定する位相差測定装置であって、
前記二つの外歯車のうちの一方に噛み合う歯を有して同歯が前記一方の外歯車に噛み合うように前記軸に固定されるものであり、前記軸に固定された状態で同軸の外方に向けて延びる第1アームが設けられてなる第1治具と、
前記二つの外歯車のうちの他方に噛み合う歯を有して同歯が前記他方の外歯車に噛み合うように前記軸に固定されるものであり、前記軸に固定された状態で同軸の外方に向けて延びる第2アームが設けられてなる第2治具と、
前記第1治具及び前記第2治具が取り付けられた状態の前記軸が予め定められた測定位置に載置されるものであり、前記軸が載置された状態で前記第1アームが当接する当接部を有する基台と、
前記当接部に前記第1アームが当接するように前記基台に前記軸が載置された状態での前記第2アームの位置を検出する位置センサと
を備えることを特徴とする位相差測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位相差測定装置において、
前記第1治具及び前記第2治具は、共に二つの分割体からなり、それら分割体が前記軸を挟み込んだ状態で互いに締結固定されて同軸に取り付けられる
ことを特徴とする位相差測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位相差測定装置において、
前記第1治具及び前記第2治具は、共に複数の分割体からなり、前記軸の周囲を覆った状態で各分割体が互いに締結固定されることによって同軸に取り付けられる
ことを特徴とする位相差測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相差測定装置において、
前記二つの外歯車を有する軸は、内部に空間が設けられる円環軸と、該円環軸内に配置される太陽軸と、前記円環軸内において該太陽軸の周囲に配置される複数の遊星軸とを備えた回転直線運動変換機構における前記太陽軸であり、
前記回転直線運動変換機構は、前記円環軸に設けられる雌ねじを円環ねじとし、前記円環軸の前記円環ねじを間に挟む位置に設けられる二つの内歯車を第1円環歯車及び第2円環歯車とし、前記太陽軸に設けられる雄ねじを太陽ねじとし、前記太陽軸の前記太陽ねじを間に挟む位置に設けられる二つの外歯車を第1太陽歯車及び第2太陽歯車とし、前記遊星軸に設けられる雄ねじを遊星ねじとし、前記遊星軸の前記遊星ねじを間に挟む位置に設けられる二つの外歯車を第1遊星歯車及び第2遊星歯車とすると、前記円環ねじ及び前記太陽ねじと前記遊星ねじとが噛み合わされることと、前記第1円環歯車及び前記第1太陽歯車と前記第1遊星歯車とが噛み合わされることと、前記第2円環歯車及び前記第2太陽歯車と前記第2遊星歯車とが噛み合わされることと、前記円環軸及び前記太陽軸の一方の回転運動にともなう前記遊星軸の遊星運動を通じて前記円環軸及び前記太陽軸の他方の直線運動が得られることとの条件を満たしてなる
ことを特徴とする位相差測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位相差測定装置において、
前記第1治具は、前記第1太陽歯車に係合する歯を有して前記回転直線運動変換機構における前記第1円環歯車及び前記第1太陽歯車及び前記第1遊星歯車により囲繞される部分から前記回転直線運動変換機構の外方まで延びる複数の係合部と、それら係合部を連結する基部とを有してなり、
前記第2治具は、前記第2太陽歯車に係合する歯を有して前記回転直線運動変換機構における前記第2円環歯車及び前記第2太陽歯車及び前記第2遊星歯車により囲繞される部分から前記回転直線運動変換機構の外方まで延びる複数の係合部と、それら係合部を連結する基部とを有してなる
ことを特徴とする位相差測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の位相差測定装置において、
前記遊星軸は前記遊星ねじ及び第1遊星歯車を有する遊星軸本体と前記第2遊星歯車を有する遊星歯車部とからなり、
前記第1治具及び第2治具は、前記遊星歯車部が前記遊星軸本体に設けられていない状態の前記回転直線運動変換機構の前記太陽軸に取り付けられる
ことを特徴とする位相差測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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