説明

位置情報推定装置、位置情報推定方法、および位置情報推定プログラム

【課題】利用者がセンサデバイスを携帯していない場合があっても、利用者の位置を推定することが可能な位置情報推定装置および位置情報推定方法を提供する。
【解決手段】位置情報推定装置2は、利用者1に携帯される利用者端末11の位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、利用者1の位置を推定する。センサ情報取得部21は、センサ情報を取得する。位置推定部20は、利用者1と利用者端末11が別々の位置になりうるとした確率モデルで、利用者1の位置を表現し、その確率モデルと、センサ情報取得部21が取得したセンサ情報と、に基づいて、利用者1の位置を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイスを用いて利用者の位置を推定する位置情報推定方法、位置情報推定装置、及び位置情報推定プログラムに関し、特に、利用者がセンサデバイスを置き忘れている状態が存在しても利用可能な位置情報推定方法、位置情報推定装置、および位置情報推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサデバイスを用いて利用者の位置を検知し、その検出された位置を利用するサービスが提案されている。
【0003】
特許文献1には、利用者の現在位置を示す位置情報をプレゼンス情報として扱った通信サービス方法が記載されている。特許文献1に記載の通信サービス方法において、プレゼンス情報である位置情報は、利用者が携帯する携帯端末に搭載された無線LAN、RFID、あるいは、GPSまたはPHS等の位置検知センサから取得される。
【0004】
また、特許文献2には、利用者がセンサデバイスを携帯していないことを検出するシステムが記載されている。特許文献2に記載のシステムは、複数のセンサが検出した利用者の位置情報が矛盾する場合に、利用者がセンサデバイスを携帯していない異常な状態である判断する。
【0005】
なお、非特許文献1には、プレゼンスサービスに用いるプロトコルであるプレゼンスプロトコルとしてSIPを使用する方法が記載されている。また、非特許文献2には、SIPを用いたセンサ情報取得方法が記載されている。また、非特許文献3には、確率モデルの一例である隠れマルコフモデル(Hidden Markov Models,HMM)が記載されている。
【特許文献1】特開2004−328309号公報(段落0026−0031)
【特許文献2】特開2005−38269号公報(段落0019−0080)
【非特許文献1】J. Rosenberg, "A Presence Event Package for the Session Initiation Protocol (SIP)", RFC 3856, 2004
【非特許文献2】千村保文、村田利文著,「改訂版SIP教科書」,インプレス,2004年,p.205−218
【非特許文献3】L.R. Rabiner, and B.H. Juang, "An Introduction to Hidden Markov Models", IEEE ASSP Magazine, 1986, Vol.3, No.1, pp.4-16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような、位置検知センサ等を搭載した利用者端末(例えば、位置情報を発信する携帯端末またはRFIDタグなどのID送信機)を用いて、利用者の位置を示す位置情報を得る方法では、以下の点で不十分である。
【0007】
この方法では、利用者が位置情報を発信する利用者端末を携帯していることを前提としている。このため、利用者が利用者端末を身に着けていない場合に、利用者の位置を正確に示さない位置情報が提供されてしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載されているような、複数のセンサ(例えば、携帯電話機とICカードと人感センサ)を用いる方法では、以下の点で不十分である。
【0009】
この方法では、単一のセンサでは利用者がセンサデバイスを携帯していないことを検出できない。さらに、利用者がセンサデバイスを携帯しておらず、いずれかのセンサ情報が誤っている場合、どのセンサ情報が信頼できるのかを判断する基準がない。
【0010】
さらに、特許文献1や特許文献2に記載されているような方法では、利用者がセンサデバイスを携帯していないときは、利用者がどこにいるのか検討がつかない。
【0011】
本発明の目的は、利用者がセンサデバイスを携帯していない場合があっても、利用者の位置を推定することが可能な位置情報推定装置、位置情報推定方法、および位置情報推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の位置情報推定装置は、利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定装置であって、前記センサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定手段と、を含む。
【0013】
また、本発明の位置情報推定方法は、利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定装置が行う位置情報推定方法であって、前記センサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと前記センサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定ステップと、を含む。
【0014】
また、本発明の位置情報推定プログラムは、利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定処理を、コンピュータに実行させる位置情報推定プログラムであって、前記センサ情報を取得するセンサ情報取得処理と、前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと前記センサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定処理と、を含む位置情報推定処理を、コンピュータに実行させる。
【0015】
上記発明によれば、利用者とセンサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルと、センサ情報と、に基づいて、利用者の位置が推定される。このため、利用者がセンサデバイスを置き忘れるなどにより、利用者とセンサデバイスが同じ場所にない可能性も考慮して、利用者の位置を推定することができ、利用者の位置を高い精度で推定することが可能になる。
【0016】
前記位置推定手段は、前記センサ情報と前記センサデバイスの位置との相関関係を示すセンサ出力パラメータと、前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置との相関関係を示す置き忘れパラメータを、前記確率モデルに応じた確率モデルパラメータとして記憶するパラメータ記憶手段と、前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置を、外部からは観測できない情報である非可観測変数として、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて導出する非可観測変数導出手段と、を有することが望ましい。
【0017】
前記センサ情報取得手段は、さらに、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、前記パラメータ記憶手段は、さらに、前記可観測変数と前記利用者の位置との相関関係を示す可観測変数出力パラメータを、前記確率モデルパラメータとして記憶し、前記非可観測変数導出手段は、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報および可観測変数と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて、前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置を導出することが望ましい。
【0018】
前記位置推定手段は、推定した前記センサデバイスの位置および推定した前記利用者の位置を、時系列に従って記憶する履歴記憶手段を、さらに備え、前記非可観測変数導出手段は、少なくとも、前記履歴記憶手段に記憶されたセンサデバイスの位置および利用者の位置と、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて、現在の前記センサデバイスの位置および現在の前記利用者の位置を導出することが望ましい。
【0019】
前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報に基づいて推定する隠れマルコフモデルもしくはダイナミックベイジアンネットワークモデルであり、前記パラメータ記憶手段は、各時刻における前記センサデバイスの位置および前記利用者の位置を、前記隠れマルコフモデルまたは前記ダイナミックベイジアンネットワークモデルの各内部状態として定式化するためのパラメータを、前記確率モデルパラメータとして記憶し、前記非可観測変数導出手段は、少なくとも、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶されたパラメータと、に基づいて、現在の前記センサデバイスの位置と現在の前記利用者の位置を導出することが望ましい。
【0020】
前記パラメータ記憶手段は、前記パラメータとして、少なくとも、時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記時刻tに対応する前記内部状態stに遷移する際に前記センサ情報xtが出力される確率を示すセンサ出力確率と、前記利用者が前記センサデバイスを置き忘れる確率である置き忘れ確率と、を記憶し、前記非可観測変数導出手段は、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶されたセンサ出力確率および置き忘れ確率と、に基づいて、現時刻において、前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態にいる確率を求めることによって、前記現在のセンサデバイスの位置および前記現在の利用者の位置を導出することが望ましい。
【0021】
前記置き忘れ確率は、時刻もしくは前記内部状態、または前記センサ情報に関連して決定されることが望ましい。
【0022】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、前記置き忘れ確率は、時刻もしくは前記内部状態、または前記センサ情報、または前記可観測変数に関連して決定されることが望ましい。
【0023】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数yを取得し、前記パラメータ記憶手段は、前記パラメータとして、さらに、最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、前記各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、前記センサデバイスが内部状態stに遷移する際に前記可観測変数ytが出力される確率を示す可観測変数出力確率と、を記憶し、前記非可観測変数導出手段は、前記パラメータ記憶手段に記憶された初期存在確率、状態遷移確率、可観測変数出力確率、センサ出力確率、および、置き忘れ確率に基づいて、現時刻において前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態にいる確率を求めることによって、前記現在のセンサデバイスの位置および前記現在の利用者の位置を導出することが望ましい。
【0024】
前記非可観測変数導出手段は、前記状態遷移確率として、前時刻における内部状態st-1および現時刻における可観測変数ytに対する条件付き確率P(st|st-1,yt)を用いることが望ましい。
【0025】
前記非可観測変数導出手段は、前記確率モデルとして、前記隠れマルコフモデルを用い、前記センサ情報を出力記号とした際に、現時刻tにおいて前記センサ情報xtの列{x1,x2,・・・,xt}が観測された時に前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態siにいる確率を示す事後確率を、条件付き確率P(si|x1,x2,・・・,xt)として、前記隠れマルコフモデルに対する前向きアルゴリズムを用いて求めることが望ましい。
【0026】
前記非可観測変数導出手段は、時刻tにおける、前記利用者の位置を表す確率変数をπt、前記センサデバイスの位置を表す確率変数をλtとした時、前記利用者の位置と前記センサデバイスの位置の組(πt,λt)を一つの変数と見なして計算を行うことが望ましい。
【0027】
前記パラメータ記憶手段は、前記利用者が前記センサデバイスを置き忘れる確率である置き忘れ確率pdropを記憶し、前記非可観測変数導出手段は、時刻tにおける、前記利用者の位置を表す確率変数をπt、前記センサデバイスの位置を表す確率変数をλtとし、前記センサデバイスの位置に関する条件付確率P(λt|λt-1,πt-1,πt)を以下の式で求めることが望ましい。
【0028】
【数6】

【0029】
前記pdropは、定数ではなく、前記πt-1または前記πtまたは他のセンサ情報に依存することが望ましい。
【0030】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、前記pdropは、定数ではなく、前記πt-1または前記πtまたは他のセンサ情報または前記可観測変数に依存することが望ましい。
【0031】
前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報に基づいて推定する隠れマルコフモデルであり、前記パラメータ記憶手段は、時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記時刻tに対応する前記隠れマルコフモデルの内部状態に遷移する際に前記センサ情報が出力される確率を示すセンサ出力確率と、最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、を記憶し、前記非可観測変数導出手段は、時刻0における各状態siの初期存在確率Iiと、状態遷移確率、センサ出力確率、現時刻のセンサ情報、および前時刻における前向き確率の計算結果とから、時刻tにおいて、前記利用者が内部状態si、前記センサデバイスがskにある前向き確率fi,k(t)を以下の式によって求め、
【0032】
【数7】

【0033】
さらに、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいて前記センサ情報の列が観測された時に前記利用者の位置が状態siにあり、前記センサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、前記利用者の位置が状態siにある確率を示す事後確率Pi(t)と、前記センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を以下の式を用いて求めることが望ましい。
【0034】
【数8】

【0035】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数yを取得し、前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報と前記可観測変数yに基づいて推定する隠れマルコフモデルであり、前記パラメータ記憶手段は、時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記隠れマルコフモデルの内部状態stに遷移する際に前記センサ情報が出力される確率を示すセンサ出力確率と、時刻tにおいて前記利用者の位置が前記内部状態stに遷移する際に前記可観測変数が出力される確率を示す可観測変数出力確率と、最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、を記憶し、前記非可観測変数導出手段は、時刻0における各状態siの初期存在確率Iiと、状態遷移確率、センサ出力確率、可観測変数出力確率、現時刻のセンサ情報xと可観測変数y、および前時刻における前向き確率の計算結果とから、時刻tにおいて、前記利用者がsi、前記センサデバイスがskにある前向き確率fi,k(t)を以下の式によって求め、
【0036】
【数9】

【0037】
さらに、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいてセンサ情報の列が観測された時に前記利用者の位置が状態siにあり、前記センサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、前記利用者の位置が状態siにある確率を示す確率を示す事後確率Pi(t)と、前記センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を以下の式を用いて求めることが望ましい。
【0038】
【数10】

【0039】
前記位置推定手段は、前記確率モデルに基づいて推定した前記利用者の位置と前記センサデバイスの位置の確率を用いて、前記利用者が前記センサデバイスを携帯している割合を表す付帯確率を導出する付帯確率導出手段をさらに有することが望ましい。
【0040】
前記付帯確率導出手段は、前記非可観測変数導出手段により時刻tにおける前記利用者の位置の確率πtおよび前記センサデバイスの位置の確率λtが求まった際に、πt=λtである事象の事後確率Pr(πt=λt|x1,x2,・・・,xt)を求めることが望ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、 センサデバイスの置き忘れを考慮した、より正確な利用者位置の推定が可能となる。その理由は、 利用者がセンサデバイスを置き忘れるなどにより、利用者とセンサデバイスが同じ場所にない可能性も考慮した確率モデルに基づいて、利用者位置を推定するからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の位置情報推定装置を含む位置情報推定システムを示したブロック図である。
【0044】
図1において、位置情報推定システムは、利用者1が携帯しておりセンシング対象となる利用者端末11と、利用者端末11の位置(以下「利用者端末位置」または「センサデバイス位置」とも称する。)を検出するセンサシステム211と、センサシステム211が検出した利用者端末11の位置を用いて、利用者1の位置(以下「利用者位置」と称する。)を推定する位置情報推定サーバ2と、位置情報推定サーバ2で推定された利用者位置を用いて情報提供などのサービスを提供するサービス提供サーバ3とを備える。
【0045】
位置情報推定サーバ2は、位置推定部20と、センサ情報取得部21とを備える。位置推定部20は、パラメータ記憶部22と、非可観測変数推定部23と、出力信号記憶部24とを備える。図1には、利用者端末11が1つしか図示されていないが、複数存在してもよい。
【0046】
利用者端末11は、センサデバイスの一例であり、例えば、RFIDタグなどのID送信機、特定の基地局と無線でリンクを張る携帯型端末、またはGPS等を用いて自ら位置情報を発信する携帯端末機であって、センサシステム211に利用者端末11の位置を示すセンサ情報を検出させることが可能な携帯型端末装置である。
【0047】
センサシステム211は、利用者端末11の位置を検出して、検出した位置を示すセンサ情報を位置情報推定サーバ2に出力するシステムであり、具体的にはプログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。
【0048】
センサシステム211は、セッション開始プロトコル(session initiation protocol,SIP)のプレゼンスイベントパッケージに従って情報提供を行うプレゼンスサービスシステムであってもよい。
【0049】
プレゼンスサービスシステムとは、プレゼンス情報を受け入れ、そのプレゼンス情報をウォッチャーに配信するプレゼンスサービスを行うシステムである。
【0050】
プレゼンスサービスに用いるプロトコルであるプレゼンスプロトコルにSIPを使用する方法は、例えば、非特許文献1に記載されている。また、SIPを用いたセンサ情報取得方法については、非特許文献2などにおいて広く知られている方法を利用できる。非特許文献2には、SIPを用いたプレゼンスサーバの実現方法として、プレゼンスサービスの仕組み(構成)や、プレゼンスサービスを実現するための購読/通知メソッドの用法(シーケンス例)、およびその手順について記載されている。
【0051】
このようなプレゼンスサービスを用いてセンサシステム211を実現すれば、例えば、RFIDタグなどのID送信機、特定の基地局と無線でリンクを張る携帯型端末、またはGPSを用いて自ら位置情報を発信する携帯型端末などの利用者端末11を利用者に持たせることによって、利用者端末11に紐つけられた位置を示す情報(センサ情報)を検出することができる。
【0052】
ここで、センサシステム211が検出するセンサ情報(利用者端末11がとりうる位置)は、オフィス環境を例にとると、{会議室1、会議室2、食堂、圏外}などが想定できる。圏外とは、センサシステム211が利用者端末11からセンサ情報を検出できなかった場合のセンサシステム211の出力を意味する。また、センサシステム211は、定期的にセンサ情報を収集し、センサ情報を時系列に沿って記憶しておいてもよい。また、センサシステム211は、位置情報推定サーバ2の内部に備えられてもよい。
【0053】
サービス提供サーバ3は、位置情報推定サーバ2が推定した利用者位置に応じて、情報を提供したり、利用者位置を通知するサーバ装置であって、具体的にはプログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、プログラムに従って動作するCPUによって実現される。また、サービス提供サーバ3は、位置情報推定サーバ2の内部に備えられてもよい。
【0054】
次に、位置情報推定サーバ2の構成について説明する。
【0055】
位置情報推定サーバ2は、位置情報推定装置の一例であり、利用者の位置を推定するサーバ装置であって、具体的にはプログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。
【0056】
センサ情報取得部21は、センサ情報を収集し、そのセンサ情報を、位置推定部20(具体的には、非可観測変数推定部23)に受け渡す。センサ情報取得部21は、例えば、センサシステム211に問い合わせて、利用者端末11の位置を示すセンサ情報を定期的に収集し、収集したセンサ情報を時間軸に従って出力記号記憶部24に記憶してもよい。
【0057】
位置推定部20は、利用者1と利用者端末11が別々の位置になりうるとした確率モデルで、利用者1の位置を表現(定式化)し、その確率モデルと、センサ情報取得部21が取得したセンサ情報と、に基づいて、利用者1の位置および利用者端末11の位置を推定する。
【0058】
パラメータ記憶部22は、推定対象である利用者位置および利用者端末位置と相関関係にあるセンサ情報に基づいて利用者位置および利用者端末位置を導出するために用いるパラメータ(確率モデルパラメータ(例えば、センサ情報と利用者端末11との相関関係を示すセンサ出力パラメータと、利用者端末11の位置と利用者1の位置との相関関係を示す置き忘れパラメータ))を記憶する。なお、パラメータは、予めパラメータ記憶部22に記憶されていてもよいし、実データが入力され、その実データから学習によって求められたパラメータが、パラメータ記憶部22に随時記憶されてもよい。
【0059】
出力記号記憶部24は、HMM(隠れマルコフモデル:Hidden Markov Models)における出力記号であるセンサ情報を、時系列に沿って記憶する。また、出力記号記憶部24は、現在の位置の推定に用いる過去の推定結果(過去の利用者位置および利用者端末位置)、を時系列に記憶してもよいし、さらに、パラメータの学習に用いる実データを記憶してもよい。
【0060】
非可観測変数推定部23は、センサ情報取得部21によって収集されたセンサ情報と、パラメータ記憶部22に記憶されているパラメータと、前回導出した利用者位置および利用者端末の位置とに基づいて、センサ情報の列が観測されたときに利用者1および利用者端末11が各位置(HMMの各内部状態に対応づけられ、利用者端末11が取りうる位置を表す確率変数)にいる確率(事後確率)を、HMM(確率モデル)に対する前向き確率を用いて求める。
【0061】
なお、本実施の形態において、センサ情報取得部21および非可観測変数推定部23は、プログラムに従って動作するCPUによって実現される。また、パラメータ記憶部22および出力記号記憶部24は、記憶装置によって実現される。なお、プログラムは、位置情報推定サーバ2が備える記憶装置に記憶される。
【0062】
ここで、センサデバイス(利用者端末)の置き忘れを考慮した利用者の位置情報推定方法について説明する。
【0063】
位置情報推定サーバ2、具体的には、非可観測変数推定部23は、従来同じであるとして扱われていた、利用者位置とセンサデバイス位置が別々の状態を取りうるとした確率モデルで、利用者位置を表現(定式化)し、その確率モデルに基づいて、利用者位置を推定する。
【0064】
非可観測変数推定部23は、推定対象である利用者位置とセンサデバイス位置を、確率変数として導出する。具体的には、非可観測変数推。定部23は、推定対象の利用者位置とセンサデバイス位置を、センサデバイスがとりうる内容(位置)の集合(例えばオフィスの場合、集合{会議室、居室、食堂、帰宅})の各要素で表す確率変数で導出する。
【0065】
非可観測変数推定部23は、これらの外部からは観測できない情報(以下、非可観測変数という。)である確率変数を、非可観測変数と相関を持つ可観測変数(外部から観測できる変数)、および、利用者位置とセンサデバイス位置が別々の状態を取りうるとした確率モデルに基づいて導出する。
【0066】
なお、可観測変数には、実際のセンサデバイスを検知した情報であるセンサ情報が含まれていてもよい。
【0067】
また、例えば、利用者位置およびセンサデバイス位置が、時間の経過とともに変化する性質を持つような場合には、非可観測変数推定部23は、現在の時刻における利用者位置とセンサデバイス位置が、それ以前の時刻における利用者位置とセンサデバイス位置と相関を持つとして、可観測変数とともに、過去に導出した利用者位置およびセンサデバイス位置を用いて、確率モデルによって現在の利用者位置およびセンサデバイス位置を導出してもよい。
【0068】
図2は、センサデバイスの置き忘れを考慮した利用者位置とセンサデバイス位置を推定するための確率モデルを説明する説明図である。
【0069】
図2では、推定対象である非可観測変数(図中では利用者位置およびセンサデバイス位置)と、それらに相関のある可観測変数(図中ではセンサ情報)を、確率変数として、楕円で示している。また、図2では、確率変数間に相関があることを矢印で示し、それらの相関を条件付き確率で示している。
【0070】
例えば、図2に示す例では、推定対象である非可観測変数は、利用者位置πtとセンサデバイス位置λtである(tは時刻に対応する自然数:1<t)。
【0071】
また、センサデバイス位置と相関を持つ可観測変数として、センサ情報xを示している。
【0072】
また、時刻tにおける利用者位置πtは、直前の利用者位置πt-1と相関を持つとして、条件付き確率P(πt│πt-1)で示している。
【0073】
また、最初のセンサデバイス位置λ1は、利用者位置π1と相関があり、その相関を条件付き確率P(λ1│π1)で示している。
【0074】
また、時刻tにおけるセンサデバイスの位置λtは、利用者位置πtと、直前のセンサデバイス位置λt-1、および、利用者位置πt-1とも相関をもつとして、条件付き確率P(λt│λt-1,πt-1,πt)で示している。
【0075】
また、センサ情報xは、センサデバイスの位置λと相関をもつとして、条件付き確率P(xt│λt)で示している。
【0076】
パラメータ記憶部22は、非可観測変数を導出するために用いるパラメータを、予め記憶しているものとする。ここで言うパラメータとは、例えば、センサ情報とセンサデバイス位置との相関関係を示すセンサ出力パラメータ(条件付き確率)および、センサデバイス位置と利用者位置との相関関係を示す置き忘れパラメータ(条件付き確率)および、非可観測変数と相関関係を持つ確率変数(例えば、可観測変数、過去の利用者位置およびセンサデバイス位置)が非可観測変数とどのような相対関係にあるかを示す情報である。
【0077】
次に、具体的な推定方法について、確率モデルとしてHMMを用いた場合を例にとって説明する。
【0078】
HMMは、有限状態機械に類似した構造をもつ確率モデルであって、外部から観測不可能な、マルコフ過程(ある記号の出現確率が直前のみに依存すると仮定する確率過程)と、その状態に依存する出力記号の組み合わせによって、出力記号の系列を表現するモデルである。なお、HMMは、上記に示した非特許文献3に記載されている。
【0079】
HMMを用いる際には、非可観測変数推定部23は、推定対象である非可観測変数(利用者位置およびセンサデバイス位置)を、HMMの内部状態(以下、単に「状態」という。)として扱う。つまり、利用者位置およびセンサデバイス位置は、状態数をjとした状態の集合体{s1,s2,・・・,sj}(例えば、オフィスの場合、集合体{s1=会議室、s2=居室、s3=食堂、s4=帰宅})のうちのいずれか1つの状態siと対応する(iは各状態に対応する自然数:1<i≦j)。
【0080】
図3は、HMMにおけるパラメータの一例を示す説明図である。図3では、図2で示すような相関関係を持つ場合のパラメータの一例を示している。これらのパラメータは、パラメータ記憶部22に記憶されている。HMMにおけるパラメータは、少なくとも、初期存在確率と、状態遷移確率と、センサデバイスの存在確率と、センサ出力確率とを含む。
【0081】
初期存在確率は、時刻0において利用者とセンサデバイスが各状態siにある確率であって、確率Iiで示される。本実施の形態では、時刻0では利用者とセンサデバイスが同じ状態(位置)にあるとする。
【0082】
状態遷移確率は、利用者が状態st-1から状態stに遷移する確率である。
【0083】
センサデバイスの存在確率は、利用者の状態がπt-1=st-1からπt=stになり且つセンサデバイスの状態がλt-1=st-1の状態からλt=stになる確率であり、利用者がセンサデバイスを置き忘れる確率(置き忘れ確率=置き忘れパラメータ)により与えられる。なお、置き忘れ確率pdropは、パラメータ記憶部22に記憶される。
【0084】
出力確率は、センサ情報を出力記号とした際に、センサデバイスが状態stに遷移したときにセンサ情報xtが出力される確率である。
【0085】
状態遷移確率の位置間移動確率とは、利用者が時刻tにおいて直前の位置πt-1から現在の位置πtへ移動する確率を指し、条件付き確率P(πt|πt-1)で示される。
【0086】
また、センサデバイスの存在確率は、時刻tにおけるセンサデバイス位置λtが、利用者位置πtと直前のセンサデバイス位置λt-1および利用者位置πt-1とも相関をもつとして、条件付き確率P(λt|λt-1,πt-1,πt)で示される。
【0087】
なお、センサデバイスは自発的に移動しないため、非可観測変数推定部23は、センサデバイスの存在確率を、以下の式(数11)を用いて計算してもよい。
【0088】
【数11】

【0089】
また、出力確率は、センサデバイス位置λtに遷移した時にセンサ情報xtが出力される確率を指し、条件付き確率P(xt|λt)で示される。
【0090】
以上をふまえて、センサ情報を出力記号としてみた際に、センサ情報の列{x1,x2,・・・,xt}が観測されたときに、非可観測変数推定部23は、センサ情報の列と、パラメータ記憶部22に記憶されたパラメータと、に基づいて、利用者位置πtの値が状態(位置)siである確率Pi(t)を求めることができる。
【0091】
この確率Pi(t)は、事後確率ともいい、条件付き確率P(πt=si|x1,x2,・・・,xt)で示され、非可観測変数推定部23は、HMMに対する前向きアルゴリズムを用いて再帰的にPi(t−1)を計算することによって、確率Pi(t)を導出可能である。
【0092】
具体的には、非可観測変数推定部23は、まず、時刻0において、利用者とセンサデバイスがどの状態にいるかを初期存在確率に基づいて決定する。この際、利用者位置π1とセンサデバイス位置λ1は同じとする。
【0093】
その上で、非可観測変数推定部23は、HMMの状態遷移確率とセンサデバイスの存在確率とセンサ出力確率、現時刻のセンサ情報、および過去の事後確率から、時刻tにおいて利用者位置が状態siであり、センサデバイス位置が状態skである前向き確率fi,k(t)を以下の式(数12)によって求める。
【0094】
ここで、iは時刻tにおいて利用者がどの状態にいるかを、kはセンサデバイスがどの状態にいるかを表す。また、m、lは、時刻tにおけるi、kと区別するために便宜的につけた記号で、時刻t−1における利用者位置とセンサデバイス位置の状態を表す。
【0095】
【数12】

【0096】
次に、非可観測変数推定部23は、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいてセンサ情報の列が観測された時に利用者位置が状態siにあり、センサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、利用者位置が状態siにある確率を示す事後確率Pi(t)と、センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を、以下の式(数13)を用いて計算する。なお、数13では、Pi,k(t)をpi,k(t)と表し、Pi(t)をpi(t)と表し、Pk(t)をpk(t)と表している。
【0097】
【数13】

【0098】
このような方法を用いることによって、非可観測変数推定部23は、利用者位置とセンサデバイス位置を確率変数という形で導出することができる。
【0099】
さらに、上記の計算により、事後確率Pi,k(t)=P(πt=si,λt=sk|x1,x2,・・・,xt)が得られるため、πt=λtであるという事象の事後確率P(πt=λt|x1,x2,・・・,xt)=Σsi,k(t)を計算することができる。すなわち、利用者とセンサデバイスが同じ位置にある(利用者がセンサデバイスを携帯している)確率である付帯確率を計算できる。
【0100】
なお、パラメータ記憶部22は、パラメータを予め記憶しておくと説明したが、パラメータは、実データを使った学習によって求めることも可能である。例えば、非可観測変数推定部23が、実際のセンサ情報および滞在位置の記録を用い、それに合致するようなパラメータを求め、その求めたパラメータをパラメータ記憶部22に記憶してもよい。
【0101】
具体的には、学習のためのデータとして、出力記号(センサ情報)とそのときの状態(真の滞在位置)が得られる場合には、非可観測変数推定部23は、最尤推論(maximum likelihood estimation)を行う。
【0102】
また、学習のためのデータとして出力記号のみ得られる場合には、非可観測変数推定部23は、Baulm−Welchアルゴリズムを用いて、パラメータを求めてもよい。Baulm−Welchアルゴリズムは、HMMに用いるパラメータの取得方法として知られているEMアルゴリズムと呼ばれる学習法の一種であって、反復的にパラメータの改良を行い、反復ごとにパラメータの尤度が単調増加することが保証されるアルゴリズムである。なお、Baulm−Welchアルゴリズムは、例えば、非特許文献3に記載されている。
【0103】
次に、本実施の形態の動作について図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態の位置情報推定システムによる位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0104】
まず、位置情報推定サーバ2のセンサ情報取得部21は、センサシステム211へ問い合わせ、定期的にセンサ情報を受信し、受信したセンサ情報を出力記号記憶部24に記憶する(ステップS21)。
【0105】
ここで、サービス提供サーバ3が、例えば、利用者1についての位置を要求する要求メッセージを位置情報推定サーバ2へ送信すると(ステップS31)、位置情報推定サーバ2の非可観測変数推定部23は、パラメータ記憶部22からパラメータを読み込む(ステップS24)。
【0106】
そして、非可観測変数推定部23は、時刻tにおいて利用者1と利用者端末11が各状態siにいる確率(事後確率)Pi(t)を、HMMに対する前向きアルゴリズムを用いて再帰的にPi(t−1)を計算しながら求める(ステップS25)。
【0107】
そして、非可観測変数推定部23は、サービス提供サーバ3へ、利用者1が各状態siにいる確率(事後確率)と、必要であれば利用者端末11が各状態skにいる確率(事後確率)を送信し、サービス提供サーバ3は、利用者1が各状態siにいる確率(事後確率)と、必要であれば利用者端末11が各状態skにいる確率(事後確率)を受信する(ステップS32)。
【0108】
以上のように、本実施の形態によれば、利用者端末11の置き忘れを考慮した、より正確な利用者1の位置の推定が可能となる。つまり、より精度の高い利用者1の位置を推定することが可能となる。
【0109】
また、単一センサにより、利用者端末11の位置を推定することが可能となる。
【0110】
また、利用者1の位置を求める際に、過去の状態に基づいて利用者1の位置を導出する隠れマルコフモデル(確率モデル)を用いることで、利用者1がセンサデバイスを携帯していない時でも、利用者1が存在する位置を確率で求めることが可能となる。
【0111】
なお、本実施の形態において、センサ情報取得手段は、センサ情報取得部21によって実現される。位置推定手段は、位置推定部20によって実現される。パラメータ記憶手段は、パラメータ記憶部22によって実現される。非可観測変数導出手段は、非可観測変数推定部23によって実現される。履歴記憶手段は、出力記号記憶部24によって実現される。
【0112】
(第2の実施の形態)
次に、位置情報推定サーバが、さらに、利用者1が利用者端末11を携帯している確率(付帯確率)を推定する位置情報推定システムを説明する。
【0113】
図5は、本発明の第2の実施の形態による位置情報推定システムを示したブロック図である。図5において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。図5において、位置情報推定サーバ2aは、第1の実施の形態の位置情報推定サーバ2の構成要素に加え、付帯確率を推定する付帯確率推定部25をさらに備えている。以下、第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0114】
付帯確率推定部25は、非可観測変数推定部23で求められた、利用者1が状態siにあり、利用者端末11が状態skにある確率(事後確率)Pi,k(t)に基づいて、利用者1が利用者端末11を携帯している確率を導出する。
【0115】
具体的には、付帯確率推定部25は、πt=λtであるという事象の事後確率P(πt=λt|x1,x2,・・・,xt)=Σsi,k(t)を計算する。すなわち、付帯確率推定部25は、利用者1と利用者端末11が同じ位置にある(利用者1が利用者端末11を携帯している)確率である付帯確率を計算する。
【0116】
なお、位置推定部20aは、パラメータ記憶部22と、非可観測変数推定部23と、出力記号記憶部24と、付帯確率推定部25とを含む。
【0117】
図6は、第2の実施の形態における位置情報推定システムの位置推定処理の一例を示すフローチャートである。図6において、図4に示した動作と同一の動作には同一符号を付してある。
【0118】
非可観測変数推定部23が、利用者1が状態siにあり、かつ、利用者端末11が状態skにある確率(事後確率)Pi,k(t)を推定した後(ステップS25)、付帯確率推定部25は、事後確率をもとに、各状態での利用者1と利用者端末11が同じ位置にいる確率を掛け合わせたものを、全状態分合計することで、利用者1が利用者端末11を携帯している付帯確率を導出し、その付帯確率を非可観測変数推定部23に提供する(ステップS26)。
【0119】
そして、非可観測変数推定部23は、サービス提供サーバ3へ、利用者1および利用者端末11が各状態siおよび各状態skにいる確率(事後確率)と付帯確率を送信し、サービス提供サーバ3は、利用者1および利用者端末11が各状態siおよび各状態skにいる確率(事後確率)と付帯確率を受信する(ステップS32)。
【0120】
以上のように、本実施の形態によれば、利用者1が利用者端末11を携帯している割合(付帯確率)を求めることが可能となる。また、本実施の形態によれば、単一のセンサから、付帯確率を導出することが可能となる。
【0121】
なお、本実施の形態において、付帯確率導出手段は、付帯確率推定部25によって実現される。
【0122】
(第3の実施の形態)
次に、利用者位置と相関のある可観測変数として、第2の実施の形態でのセンサ情報に加え、他の可観測変数(例えば、他のセンサ情報、予定表、時間帯などの変数)を利用する位置情報推定システムの一例を説明する。
【0123】
図7は、本発明の第3の実施の形態による位置情報推定システムを示したブロック図である。なお、図7において、図5に示したものと同一のものには同一符号を付してある。以下、第3の実施の形態について、第2の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0124】
図7に示した位置情報推定システムは、センサシステム211に加え、予定表システム211−1と時刻サーバ211−2を備えており、位置情報推定サーバ2aの代わりに位置情報推定サーバ2bを備える。位置情報推定サーバ2bは、センサ情報取得部21aと、出力信号記憶部24aと、パラメータ記憶部22aと、非可観測変数推定部23aと、付帯確率推定部25とを備える。
【0125】
予定表システム211−1は、利用者単位でスケジュール情報を管理し、位置情報推定サーバ2bに、少なくともある利用者の現時刻における予定を出力するシステムである。スケジュール情報とは、利用者の位置に関連する予定を示す情報である。例えば、予定の日付と、開始時刻と、終了時刻と、予定の内容を表す用件と、予定の場所とを含んでいてもよい。
【0126】
予定表システム211−1は、ある利用者の現時刻における予定の問い合わせを受け付けると、該当する利用者のスケジュール情報を参照し、少なくとも予定の内容を示す用件(以下、単に「予定」という。)を問い合わせ元に返してもよい。ここで、予定は、オフィス環境を例にとると、{会議室1で会議、会議室2で会議、食事中}などが想定できる。予定表システム211−1は、位置情報推定サーバ2bの内部に備えられてもよい。
【0127】
時刻サーバ211−2は、現在時刻を検出する時計装置を備え、位置情報推定サーバ2bに検出した現在時刻を出力するサーバ装置であって、具体的にはプログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。
【0128】
また、時刻サーバ211−2は、現在時刻を入力して時間帯を出力するような簡易データベースを備え、位置情報推定サーバ2bからの要求に応じて、現在時刻が属する時間帯を出力してもよい。ここで、時間帯は、オフィス環境を例にとると、{午前中、昼休み、午後、残業時間中}などが想定できる。時刻サーバ211−2は、位置情報推定サーバ2bの内部に備えられてもよい。
【0129】
本実施の形態では、センサシステムとして、センサ情報を出力するセンサシステム211と、予定表システム211−1と、時刻サーバ211−2の場合を説明するが、センサシステムの数はいくつでもよく、また別のセンサシステムであってもよい。
【0130】
センサ情報取得部21aは、第2の実施の形態で用いたセンサ情報に加え、推定対象である非可観測変数と相関のある可観測変数(本例では、予定と時間帯)を、予定表システム211−1および時刻サーバ211−2から収集し、その収集した可観測変数を非可観測変数推定部23aに受け渡す。
【0131】
パラメータ記憶部22aは、推定対象である非可観測変数と相関関係にあるセンサ情報および可観測変数(本例では、予定表と時間帯)に基づいて非可観測変数(利用者位置および利用者端末の位置)を導出するために用いるパラメータを記憶する。
【0132】
なお、パラメータは、予めパラメータ記憶部22aに記憶しておいてもよいし、実データを入力して学習によって求めたものをパラメータ記憶部22aに随時記憶してもよい。
【0133】
また、パラメータ記憶部22aは、パラメータ記憶部22と同様に置き忘れ確率pdropを記憶する。なお、置き忘れ確率pdropは、定数ではなく、利用者位置πt-1または利用者位置πtまたは可観測変数に依存してもよい。
【0134】
出力記号記憶部24aは、第2の実施の形態で述べたHMMにおける出力記号であるセンサ情報に加え、可観測変数(本例では、予定と時間帯)を時系列に沿って記憶する。また、出力記号記憶部24aは、利用者位置の推定に用いる過去の推定結果(過去の利用者位置や利用者端の位置)を時系列で記憶してもよいし、パラメータの学習に用いる実データを記憶してもよい。
【0135】
非可観測変数推定部23aは、センサ情報取得部21aによって収集されたセンサ情報および予定および時間帯と、パラメータ記憶部22aに記憶されているパラメータと、前回導出した利用者位置および利用者端末の位置とに基づいて、センサ情報の列が観測されたときに利用者1および利用者端末11が各状態(位置)にいる確率(事後確率)を、HMMに対する前向き確率を用いて求める。ここで求める確率は、確率変数として導出された利用者1の位置および利用者端末11の位置である。
【0136】
図8は、センサ情報に加え、他の可観測変数(例えば、他のセンサ情報、予定表、時間帯などの変数)を利用して、利用者位置とセンサデバイス位置(利用者端末位置)を推定するための確率モデルを説明する説明図である。
【0137】
図8では、図1に示したモデルに加え、可観測変数であるセンサ情報x1からxnが複数存在する。
【0138】
例えば、図8に示す例では、時刻tにおける利用者位置πtは、直前の位置πt-1と相関を持つとして、条件付き確率P(πt|πt-1,x1t,・・・,xnt)で示している。なお、新たなセンサシステムを追加することで必要となる、非可観測変数を導出するために用いるパラメータは、予めパラメータ記憶部22aに記憶されているものとする。
【0139】
図9は、HMMにおけるパラメータの一例を示す説明図である。図9では、図3で示したパラメータに加え、利用者位置と相関のある可観測変数として、予定表および時間帯の変数を導入し、HMMにおけるパラメータとして、予定別存在確率、時間帯別存在確率などの可観測変数出力確率を含んでいてもよい。
【0140】
例えば、予定別存在確率は、時刻tの予定ytにおいて利用者が位置πtにいる確率を指し、条件付き確率P(πt|yt)で示される。
【0141】
また、時間帯別存在確率は、時刻tにおける時間帯ztに利用者が位置πtにいる確率を指し、条件付き確率P(πt|zt)で示される。
【0142】
図9に示すように、状態遷移確率が複数の可観測変数に応じた確率を含む場合には、非可観測変数推定部23aは、各可観測変数に対する確率を統合して用いてもよい。
【0143】
例えば、非可観測変数推定部23aは、状態間移動確率と予定別存在確率と時間帯別存在確率とを統合して、前時刻における位置、現時刻における予定、および現時刻が属する時間帯に対する条件付き確率P(πt|πt-1,yt,zt)を用いてもよい。
【0144】
さらに、非可観測変数推定部23aは、この状態遷移確率を、各可観測変数に対する確率および各可観測変数に対する確率の重みα,β,1−α−βを用いて、以下の式に示すような重み付き線形和を計算することによって求めてもよい。
【0145】
【数14】

【0146】
以上をふまえて、非可観測変数推定部23aは、センサ情報に加え、他の可観測変数(例えば、他のセンサ情報、予定表、時間帯などの変数)を出力記号としてみた際に、利用者位置πtの値が状態siであり、センサデバイス位置λtの値が状態skである確率Pi,k(t)を求めることができる。
【0147】
具体的には、非可観測変数推定部23aは、まず時刻0において、利用者1および利用者端末11がどの状態にいるかを、初期存在確率に基づいて決定する。この際、利用者位置π1とセンサデバイス位置λ1は同じとする。
【0148】
その上で、非可観測変数推定部23aは、HMMの状態遷移確率とセンサデバイスの存在確率とセンサ出力確率、現時刻のセンサ情報と予定と時間帯、および過去の事後確率から、時刻tにおいて利用者位置が状態siであり、センサデバイス位置が状態skである前向き確率fi,k(t)を以下の式(数15)によって求める。
【0149】
ここで、iは時刻tにおいて利用者がどの状態にいるかを、kはセンサデバイスがどの状態にいるかを表す。また、m、lは、時刻tにおけるi、kと区別するために便宜的につけた記号で、時刻t−1における利用者位置とセンサデバイスの位置の状態を表す。
【0150】
【数15】

【0151】
次に、非可観測変数推定部23aは、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいてセンサ情報の列が観測された時に、利用者位置が状態siにありセンサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、利用者位置が状態siにある確率を示す事後確率Pi(t)と、センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を以下の式(数16)を用いて計算する。なお、数16では、Pi,k(t)をpi,k(t)と表し、Pi(t)をpi(t)と表し、Pk(t)をpk(t)と表している。
【0152】
【数16】

【0153】
このような方法を用いることによって、非可観測変数推定部23aは、利用者位置とセンサデバイス位置を確率変数という形で導出することができる。
【0154】
図10は、本発明の第3の実施の形態における位置情報推定システムの位置推定処理の一例を示すフローチャートである。なお、図10において、図6に示した動作と同一の動作には同一符号を付してある。
【0155】
サービス提供サーバ3から利用者位置の問い合わせがあると(ステップS31)、位置情報推定サーバ2bのセンサ情報取得部21aは、センサ情報に加え、推定対象である非可観測変数と相関のある可観測変数(本例では、予定と時間帯)を収集する(ステップS22、S23)。
【0156】
その後の処理(ステップS24〜S26)は、第2の実施の形態とほぼ同様である。
【0157】
以上のように、本実施の形態によれば、複数のセンサシステムを用いて、より精度の高い利用者位置と利用者端末の位置を推定することが可能となる。
【0158】
(第4の実施の形態)
次に、複数のセンサシステムと複数の位置情報推定サーバを有し、利用者位置と利用者端末の位置を推定する本発明の第4の実施の形態の位置情報推定システムの一例を説明する。
【0159】
図11は、本発明の第4の実施の形態による位置情報推定システムの構成図である。本実施の形態の位置情報推定システムは、第2の実施の形態の構成に加え、他のセンサ情報や予定表、時間帯などの変数を出力するセンサシステム211−1から211−nと、それに対応した位置情報推定サーバ2−1から2−nを備えている。
【0160】
図12は、本発明の第4の実施の形態における位置情報推定システムの位置推定処理の一例を示すフローチャートである。図12において、図6に示した動作と同一の動作には同一符号を付してある。
【0161】
サービス提供サーバ3は、位置情報推定サーバ2および2−1から2−nに、利用者位置および利用者端末の位置および付帯確率の問い合わせを行う(ステップS31)。
【0162】
それぞれの位置情報推定サーバ2および2−1から2−nの動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0163】
サービス提供サーバ3は、位置情報推定サーバ2および2−1から2−nから利用者位置および利用者端末位置および付帯確率をそれぞれ受信し、例えば、付帯確率の高いセンサシステムによる位置情報推定サーバからの利用者位置を信頼してサービスを提供したり、付帯確率の低いセンサシステムによる位置情報推定サーバからの利用者位置を除いた利用者位置を統合して、新たな利用者位置を導出したりしてもよい。
【0164】
以上のように、本実施の形態によれば、複数のセンサシステムを用いて、位置推定を行う際に、付帯確率の低いセンサにより推定した利用者位置は表示しないなど、付帯確率により提供する位置情報を変更することが可能となる。
【0165】
また、複数のセンサシステムを用いている場合に、付帯確率により、各センサデバイスの有効度を算出することが可能なので、有効度の高いセンサデバイスによるセンサ情報だけを用いて、利用者位置を推定することが可能となる。
【0166】
上記各実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
【0167】
第1の効果は、センサデバイスの置き忘れを考慮した、より正確な利用者位置の推定が可能となる。
【0168】
その理由は、 利用者がセンサデバイスを置き忘れるなどにより、利用者とセンサデバイスが同じ場所にない可能性も考慮した確率モデルに基づいて、利用者位置を推定するからである。
【0169】
第2の効果は、利用者がセンサデバイスを携帯している割合(付帯確率)を求める事が可能である。
【0170】
その理由は、利用者位置とセンサデバイスの位置が別の状態をとりうる確率モデルを用いる事により、利用者位置とセンサデバイスの位置が一致する事後確率(付帯確率)を求める事が可能になるからである。
【0171】
第3の効果は、単一のセンサにより、利用者がセンサデバイスを携帯している(もしくは携帯していない)確率を導出することが可能である。
【0172】
その理由は、利用者とセンサデバイスが同じ場所にない可能性も考慮した確率モデルを用いることで、付帯確率を求めることが可能になるからである。
【0173】
第4の効果は、利用者がセンサデバイスを携帯していない時でも、利用者が存在する位置を確率で求める事が可能である。
【0174】
その理由は、利用者位置を求める際に、過去の状態に基づいて導出する確率モデル(例えば、隠れマルコフモデルやダイナミックベイジアンネットワーク)を用いるからである。
【0175】
第5の効果は、複数のセンサを用いている場合はセンサデバイスの有効度を算出可能である。
【0176】
その理由は、付帯確率が高いセンサのセンサ情報は信頼できると考えられるからである。
【0177】
第6の効果は、付帯確率の低いセンサにより推定した利用者位置は表示しないなど、付帯確率によりプレゼンス提示方法を変更する事が可能である。
【0178】
その理由は、付帯確率を導出する事が可能であるからである。
【0179】
以上説明した各実施の形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【0180】
例えば、置き忘れ確率は、時刻もしくは内部状態または可観測変数に関連して決定されてもよい。
[産業上の利用可能性]
本発明は、利用者位置を利用してサービスを提供するサービス提供システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明の第1の実施の形態による、位置情報推定システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による、位置情報を推定するための確率モデルを説明する説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による、HMMにおけるパラメータの一例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による、位置情報推定システムによる位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態による、位置情報推定システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による、位置情報推定システムによる位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態による、位置情報推定システムの構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による、位置情報を推定するための確率モデルを説明する説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による、HMMにおけるパラメータの一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による、位置情報推定システムによる位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施の形態による、位置情報推定システムの構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態による、位置情報推定システムによる位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0182】
1 利用者
11 利用者端末
2 位置情報推定サーバ
20 位置推定部
21 センサ情報取得部
22 パラメータ記憶部
23 非可観測変数推定部
24 出力記号記憶部
25 付帯確率推定部
3 サービス提供サーバ
211 センサシステム
211−1 予定表システム
211−2 時刻サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定装置であって、
前記センサ情報を取得するセンサ情報取得手段と、
前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定手段と、を含む位置情報推定装置。
【請求項2】
前記位置推定手段は、
前記センサ情報と前記センサデバイスの位置との相関関係を示すセンサ出力パラメータと、前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置との相関関係を示す置き忘れパラメータを、前記確率モデルに応じた確率モデルパラメータとして記憶するパラメータ記憶手段と、
前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置を、外部からは観測できない情報である非可観測変数として、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて導出する非可観測変数導出手段と、を有する請求項1に記載の位置情報推定装置。
【請求項3】
前記センサ情報取得手段は、さらに、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、
前記パラメータ記憶手段は、さらに、前記可観測変数と前記利用者の位置との相関関係を示す可観測変数出力パラメータを、前記確率モデルパラメータとして記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報および可観測変数と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて、前記センサデバイスの位置と前記利用者の位置を導出する、請求項2に記載の位置情報推定装置。
【請求項4】
前記位置推定手段は、推定した前記センサデバイスの位置および推定した前記利用者の位置を、時系列に従って記憶する履歴記憶手段を、さらに備え、
前記非可観測変数導出手段は、少なくとも、前記履歴記憶手段に記憶されたセンサデバイスの位置および利用者の位置と、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶された確率モデルパラメータと、に基づいて、現在の前記センサデバイスの位置および現在の前記利用者の位置を導出する、請求項2または3に記載の位置情報推定装置。
【請求項5】
前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報に基づいて推定する隠れマルコフモデルもしくはダイナミックベイジアンネットワークモデルであり、
前記パラメータ記憶手段は、各時刻における前記センサデバイスの位置および前記利用者の位置を、前記隠れマルコフモデルまたは前記ダイナミックベイジアンネットワークモデルの各内部状態として定式化するためのパラメータを、前記確率モデルパラメータとして記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、少なくとも、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶されたパラメータと、に基づいて、現在の前記センサデバイスの位置と現在の前記利用者の位置を導出する、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の位置情報推定装置。
【請求項6】
前記パラメータ記憶手段は、前記パラメータとして、少なくとも、時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記時刻tに対応する前記内部状態stに遷移する際に前記センサ情報xtが出力される確率を示すセンサ出力確率と、前記利用者が前記センサデバイスを置き忘れる確率である置き忘れ確率と、を記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、前記センサ情報取得手段が取得したセンサ情報と、前記パラメータ記憶手段に記憶されたセンサ出力確率および置き忘れ確率と、に基づいて、現時刻において、前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態にいる確率を求めることによって、前記現在のセンサデバイスの位置および前記現在の利用者の位置を導出する、請求項5に記載の位置情報推定装置。
【請求項7】
前記置き忘れ確率は、時刻もしくは前記内部状態、または前記センサ情報に関連して決定される、請求項6に記載の位置情報推定装置。
【請求項8】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、
前記置き忘れ確率は、時刻もしくは前記内部状態、または前記センサ情報、または前記可観測変数に関連して決定される、請求項7に記載の位置情報推定装置。
【請求項9】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数yを取得し、
前記パラメータ記憶手段は、前記パラメータとして、さらに、
最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、前記各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、
前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、
前記センサデバイスが内部状態stに遷移する際に前記可観測変数ytが出力される確率を示す可観測変数出力確率と、を記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、前記パラメータ記憶手段に記憶された初期存在確率、状態遷移確率、可観測変数出力確率、センサ出力確率、および、置き忘れ確率に基づいて、現時刻において前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態にいる確率を求めることによって、前記現在のセンサデバイスの位置および前記現在の利用者の位置を導出する、請求項6または7に記載の位置情報推定装置。
【請求項10】
前記非可観測変数導出手段は、前記状態遷移確率として、前時刻における内部状態st-1および現時刻における可観測変数ytに対する条件付き確率P(st|st-1,yt)を用いる、請求項9に記載の位置情報推定装置。
【請求項11】
前記非可観測変数導出手段は、前記確率モデルとして、前記隠れマルコフモデルを用い、前記センサ情報を出力記号とした際に、現時刻tにおいて前記センサ情報xtの列{x1,x2,・・・,xt}が観測された時に前記センサデバイスと前記利用者のそれぞれが各内部状態siにいる確率を示す事後確率を、条件付き確率P(si|x1,x2,・・・,xt)として、前記隠れマルコフモデルに対する前向きアルゴリズムを用いて求める、請求項5ないし10のいずれか1項に記載の位置情報推定装置。
【請求項12】
前記非可観測変数導出手段は、時刻tにおける、前記利用者の位置を表す確率変数をπt、前記センサデバイスの位置を表す確率変数をλtとした時、前記利用者の位置と前記センサデバイスの位置の組(πt,λt)を一つの変数と見なして計算を行う、請求項2ないし11のいずれか1項に記載の位置情報推定装置。
【請求項13】
前記パラメータ記憶手段は、前記利用者が前記センサデバイスを置き忘れる確率である置き忘れ確率pdropを記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、時刻tにおける、前記利用者の位置を表す確率変数をπt、前記センサデバイスの位置を表す確率変数をλtとし、前記センサデバイスの位置に関する条件付確率P(λt|λt-1,πt-1,πt)を以下の式で求める
【数1】

請求項2ないし12のいずれか1項に記載の位置情報推定装置。
【請求項14】
前記pdropは、定数ではなく、前記πt-1または前記πtまたは他のセンサ情報に依存する、請求項13に記載の位置情報推定装置。
【請求項15】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数を取得し、
前記pdropは、定数ではなく、前記πt-1または前記πtまたは他のセンサ情報、または前記可観測変数に依存する、請求項14に記載の位置情報推定装置。
【請求項16】
前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報に基づいて推定する隠れマルコフモデルであり、
前記パラメータ記憶手段は、
時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記時刻tに対応する前記隠れマルコフモデルの内部状態に遷移する際に前記センサ情報が出力される確率を示すセンサ出力確率と、
最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、
前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、を記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、時刻0における各状態siの初期存在確率Iiと、状態遷移確率、センサ出力確率、現時刻のセンサ情報、および前時刻における前向き確率の計算結果とから、時刻tにおいて、前記利用者が内部状態si、前記センサデバイスがskにある前向き確率fi,k(t)を以下の式によって求め、
【数2】

さらに、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいて前記センサ情報の列が観測された時に前記利用者の位置が状態siにあり、前記センサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、前記利用者の位置が状態siにある確率を示す事後確率Pi(t)と、前記センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を以下の式を用いて求める、
【数3】

請求項13または14に記載の位置情報推定装置。
【請求項17】
前記センサ情報取得手段は、前記利用者の位置と相関を持つ可観測変数yを取得し、
前記確率モデルは、時刻とともに変化する前記非可観測変数を少なくとも前記センサ情報と前記可観測変数yに基づいて推定する隠れマルコフモデルであり、
前記パラメータ記憶手段は、
時刻tにおいて前記センサデバイスの位置が前記隠れマルコフモデルの内部状態stに遷移する際に前記センサ情報が出力される確率を示すセンサ出力確率と、
時刻tにおいて前記利用者の位置が前記内部状態stに遷移する際に前記可観測変数が出力される確率を示す可観測変数出力確率と、
最初に前記センサデバイスおよび前記利用者が内部状態siにいる確率(iは自然数であり、各内部状態が、内部状態s1ないしsjと表された際に、1<i≦jを満たす)を示す初期存在確率と、
前記利用者が内部状態st-1から内部状態stに遷移する確率である状態遷移確率(tは観測した時刻に対応する自然数:1<t)と、を記憶し、
前記非可観測変数導出手段は、時刻0における各状態siの初期存在確率Iiと、状態遷移確率、センサ出力確率、可観測変数出力確率、現時刻のセンサ情報xと可観測変数y、および前時刻における前向き確率の計算結果とから、時刻tにおいて、前記利用者がsi、前記センサデバイスがskにある前向き確率fi,k(t)を以下の式によって求め、
【数4】

さらに、求めた前向き確率fi,k(t)を用いて、時刻tにおいてセンサ情報の列が観測された時に前記利用者の位置が状態siにあり、前記センサデバイスが状態skにある確率を示す事後確率Pi,k(t)と、前記利用者の位置が状態siにある確率を示す確率を示す事後確率Pi(t)と、前記センサデバイスが各状態skにいる確率を示す事後確率Pk(t)を以下の式を用いて求める、
【数5】

請求項13または14に記載の位置情報推定装置。
【請求項18】
前記位置推定手段は、前記確率モデルに基づいて推定した前記利用者の位置と前記センサデバイスの位置の確率を用いて、前記利用者が前記センサデバイスを携帯している割合を表す付帯確率を導出する付帯確率導出手段をさらに有する、請求項2ないし17のいずれか1項に記載の位置情報推定装置。
【請求項19】
前記付帯確率導出手段は、前記非可観測変数導出手段により時刻tにおける前記利用者の位置の確率πtおよび前記センサデバイスの位置の確率λtが求まった際に、πt=λtである事象の事後確率Pr(πt=λt|x1,x2,・・・,xt)を求める、請求項18に記載の位置情報推定装置。
【請求項20】
利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定装置が行う位置情報推定方法であって、
前記センサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと前記センサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定ステップと、を含む位置情報推定方法。
【請求項21】
利用者に携帯されるセンサデバイスの位置と相関を持つセンサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置情報推定処理を、コンピュータに実行させる位置情報推定プログラムであって、
前記センサ情報を取得するセンサ情報取得処理と、
前記利用者と前記センサデバイスが別々の位置になりうるとした確率モデルで、前記利用者の位置を表現し、前記確率モデルと前記センサ情報に基づいて、前記利用者の位置を推定する位置推定処理と、を含む位置情報推定処理を、コンピュータに実行させる位置情報推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−66844(P2008−66844A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240234(P2006−240234)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】