位置指示器
【課題】静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器として、簡単な構成により、位置検出センサとの高い親和性と、高い汎用性を備え、さらには入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性を確保でき、高感度の位置検出が可能となるものを提供する。
【解決手段】位置検出センサ2からの交流信号を受信するための第1の電極と、この第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路4と、この信号増強処理回路4から出力された信号が供給される、第1の電極とは異なる第2の電極とを備える。第1の電極を介して受信された位置検出センサ2からの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に、信号増強された信号を第2の電極を介して位置検出センサ2に送出する。
【解決手段】位置検出センサ2からの交流信号を受信するための第1の電極と、この第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路4と、この信号増強処理回路4から出力された信号が供給される、第1の電極とは異なる第2の電極とを備える。第1の電極を介して受信された位置検出センサ2からの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に、信号増強された信号を第2の電極を介して位置検出センサ2に送出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用する位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる静電容量式の位置検出センサでは、位置指示器の位置を精度良く検出するためには、位置検出センサと位置指示器との間に発生する静電容量が、ある程度以上(通常1pF程度)必要であった。このため、位置検出センサに対する入力操作は、指先あるいは接触時の面積が比較的大きい専用の静電ペンにより行っている。つまり、先の細いスタイラス形状の静電ペンにより細かい入力位置を、位置検出センサに対して行うことは検出感度の観点から困難であった。
【0003】
この問題を解決する技術が従来から種々提案されている。例えば、特許文献1(特開平7−295722号公報)や特許文献2(特開平8−272509号公報)には、位置指示器内に交流信号の発生器を備え、この位置指示器から送出される交流信号に応じた信号を位置検出センサが検出することで、位置指示器の位置を検出する座標入力装置が開示されている。そして、これら特許文献1,2においては、位置指示器から位置検出センサに送出する交流信号を大振幅とすることで、先の細い静電ペンからなる位置指示器であっても位置検出ができるようにしている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、信号ペン5の内部に信号発振器1を備え、信号発振器1によって大振幅の交流信号を生成し、その生成した交流信号を、信号ペン5の先端部のスタイラス導体3およびリング状導体4との間に印加する構成が示されている。また、特許文献2には、スタイラス6に正弦波発生器を備え、変圧器を用いて正弦波交流信号を昇圧してスタイラスの先端2に供給する構成が示されている。
【0005】
また、特許文献3(特開2007−183809号公報)には、次の構成が示されている。すなわち、スタイラス入力装置1の先端部2が静電容量式タッチパネル51の表面に触れると、スイッチング回路3の可動接点が固定接点3a側に切り替えられて、位相比較器5が動作状態となる。この結果、静電容量検出型の座標入力装置50の基準信号源54で発生している周波数Foの交流基準信号Viが先端部2を介して受信され、スイッチング回路3の固定接点3aを経由して位相比較器5の一方の入力に供給される。この構成によって、位相比較器5を含むPLL回路は、交流基準信号Viに位相同期し、交流基準信号Viと同一周波数の信号を出力する。スイッチング回路3の可動接点が固定接点3bに切り替えられると、位相比較器5は非動作状態になるものの、スタイラス入力装置1は、PLL回路のフライホイール効果により、静電容量検出型の座標入力装置50の基準信号源54で発生している交流基準信号Viに位相同期した同一周波数の信号を出力する。この出力信号と逆位相、かつ電源電圧Vccを越えた振幅Vnegの信号がスタイラス入力装置1の先端部2を介して出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−295722号公報
【特許文献2】特開平8−272509号公報
【特許文献3】特開2007−183809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の位置指示器は、交流信号の発生器を備え、当該発生器で生成した交流信号を位置検出センサに送信する一方向信号送信の構成を備えるものである。このため、位置指示器は、位置検出センサが使用する交流信号に適合させた交流信号発生器を備える必要があり、その分、コスト高となると共に、それぞれの位置検出センサに対応した位置指示器を用意する必要があり、位置指示器としての汎用性が損なわれるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3の技術が適用された位置指示器は、ペン先の導体で位置検出センサからの交流信号を受信して、これに同期した交流信号を生成し、その生成した交流信号を同じペン先の導体から位置検出センサに送出する、いわゆる半二重通信の構成を備える。すなわち、特許文献3の位置指示器においては、ペン先の導体は交流信号の受信と送信とで兼用されているため受信と送信を同時に行うことはできず、ペン先を、信号受信期間と信号送信期間とで切り替えるためのスイッチ回路を設ける必要がある。
【0009】
また、特許文献3の位置指示器では、信号受信期間でのみ、PLL回路により受信した交流信号に同期した逆相の出力交流信号が生成される。そして、信号送信期間では、PLL回路からの信号が前記出力交流信号として出力されるため、受信した交流信号と出力交流信号との間の信号の連続性あるいは位相関係が必ずしも保証されないおそれがある。
【0010】
以上のように、特許文献3の位置指示器では、PLL回路を使用することで受信した交流信号に対応した新たな信号を生成した後に、スイッチ回路を切り替えることで同じペン先の導体を使用して、PLL回路で生成された信号を送出する構成を備えている。したがって、特許文献3の位置指示器では、スイッチ回路を備えることで、出力交流信号の連続性あるいはリアルタイム性を損なうおそれがある。また、PLL回路によって新たな信号を生成するために、入力信号の信号波形と出力信号の信号波形との間の波形相関性が必ずしも保証されないおそれがある。
【0011】
この発明は、以上の点にかんがみ、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器として、信号の入力チャンネルと出力チャンネルが独立して存在する、いわゆる全二重通信の構成を備えることで、位置検出センサと親和性が高く、また、汎用性が高く、さらには入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性を確保できる位置指示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明による位置指示器は、
静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサからの交流信号を受信するための第1の電極と、
前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、
前記信号増強処理回路から出力された信号が供給される、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
を備えることで、前記第1の電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に前記信号増強された信号を前記第2の電極を介して前記位置検出センサに送出するようにした
ことを特徴とする。
【0013】
位置検出センサにおいては、この発明の位置指示器により指示されている位置における交流信号の受信信号の変化を検出することにより、位置指示器による指示位置を検出する。上述の構成のこの発明による位置指示器は、位置検出センサから第1の電極を介して受信した交流信号を、信号増強処理回路により信号増強処理し、第2の電極を介して位置検出センサに帰還する。
【0014】
このため、位置検出センサにおいては、この発明の位置指示器により位置指示されている位置における交流信号の受信信号の変化が大きくなり、位置検出センサにおける位置指示器の検出感度が向上する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器として、簡単な構成を備えると共に、位置検出センサとの高い親和性と、高い汎用性を備え、さらには入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性を確保できる、高感度にて位置検出が可能な位置指示器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による位置指示器の第1の実施形態の概念的構成およびその処理動作を概括的に説明するための図である。
【図2】この発明による位置指示器の第1の実施形態の構成例を示す図である。
【図3】この発明による位置指示器の第1の実施形態における信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図4】この発明による位置指示器が使用される位置検出センサの一例を説明するための図である。
【図5】この発明による位置指示器が使用される位置検出センサの他の例を説明するための図である。
【図6】この発明による位置指示器の第2の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図7】この発明による位置指示器の第3の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図8】この発明による位置指示器の第4の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図9】この発明による位置指示器の第5の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図10】この発明による位置指示器の第6の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図およびその説明のための波形図である。
【図11】この発明による位置指示器の実施形態における第1の電極と第2の電極との間に介在するシールド部材の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、この発明による位置指示器の実施形態を、図を参照しながら説明する。図1は、この発明の第1の実施形態の位置指示器1の概念的構成およびその処理動作を概括的に説明するための図であり、位置指示器1が、静電容量式の位置検出センサ2の板面上に位置されている状態を示す図である。また、図2は、位置指示器1の詳細構成例を説明するための図で、図2(A)は、その一部縦断面図であり、図2(B)は、その一部拡大図であり、図2(C)は、その外観の一部を示す図である。この実施形態では、位置指示器1は外観が棒状のスタイラス形状を有するものとして形成されている。
【0018】
この実施形態の位置指示器1は、棒状の筐体3を備える。この筐体3は、絶縁材料例えば合成樹脂からなる中空の円筒状形状の絶縁体部31により構成されている。そして、この実施形態では、筐体3の絶縁体部31の外表周面の少なくとも操作者が当該位置指示器1を把持する部分は、例えば金属からなる導電体部32で覆われている。
【0019】
筐体3内には、プリント配線基板41が配設されている。筐体3の外表周面を覆う導電体部32は、このプリント配線基板41のアース導体に電気的に接続されている。
【0020】
プリント配線基板41上には、信号処理回路4が形成されている。図2に示すように、プリント配線基板41上には、抵抗やコンデンサ、IC(Integrated Circuit)などからなる複数個の電子部品と、導電パターン42aや42bなどの配線パターンと、後述するトランス43などの他、この例では、電源スイッチ44およびLED(Light Emitting Diode)45なども備えて、信号処理回路4が構成されている。
【0021】
また、この実施形態では、筐体3内に、バッテリー5が収納可能に構成されており、信号処理回路4の電源電圧は、このバッテリー5にて生成される。図2(A)において、端子52は、プリント配線基板41上の信号処理回路4に含まれる電源回路に電気的に接続されている端子である。バッテリー5の正極側電極51は、この端子52に接触して電気的に接続されている。図示は省略するが、バッテリー5の負極側電極は、プリント配線基板41のアース導体に直接に接続され、あるいは筐体3の導電体部32を経由してプリント配線基板41のアース導体に接続されている弾性変位する端子に押圧接触するようにされている。
【0022】
プリント配線基板41上に配置されている電源スイッチ44の操作子44aは、図2(C)に示すように、筐体3に設けられた開口部を介して、外部から操作可能に設けられている。使用者が、この操作子44aをスライド移動させることにより、電源スイッチ44をオン・オフさせることができる。
【0023】
そして、位置指示器1は、操作子44aの操作により電源スイッチ44がオンとされて、電源が投入されると、LED45が点灯し、また、電源スイッチ44がオフとされて電源がオフとされると、LED45が消灯するように構成されている。LED45の位置に対応する筐体3の外周表面には透光部材45Lが設けられており、使用者は、LED45の点灯、消灯を、この透光部材45Lを通じて確認することができる。
【0024】
また、筐体3の外周表面には、信号処理回路4に設けられる後述する可変抵抗器422の抵抗値を手動で可変するためのスライド操作部46も設けられている。
【0025】
筐体3を構成する中空の円筒状形状の絶縁体部31の中心線方向の一方の端部側は、徐々に先細となるテーパー部33とされている。このテーパー部33の外周側には、例えば環状の導電金属からなる周辺電極6が取り付けられる。なお、周辺電極6と筐体3の外周表面の導電体部32とは、両者の間に絶縁体部31が介在することにより、絶縁されている。
【0026】
周辺電極6は、この例では第1の電極を構成するもので、絶縁体部31を貫通するリード導体部材61により、プリント配線基板41の導体パターン42aに電気的に接続されている。この導体パターン42aは、この例では、信号処理回路4の入力端に接続されている。
【0027】
また、この実施形態では、テーパー部33の中空部から外部に突出するように中心電極7が設けられる。この中心電極7は、例えば導電性の金属からなる棒状導体71と、この棒状導体71の先端に設けられる弾性保護導体72とからなる。棒状導体71は、筐体3内のプリント配線基板41の位置からテーパー部33の中空部を貫通して外部に突出するように設けられている。弾性保護導体72は、位置指示器1が位置検出センサ2に接触したときに、位置検出センサ2の指示入力面を傷付けないようにすると共に、指示入力面との接触面積をおおきくするための部材であり、この例では、導電性の弾性ゴムで構成されている。なお、この弾性保護導体72は省略しても良い。その場合には、棒状導体71を、例えば導電性の弾性部材で構成すると良い。
【0028】
この中心電極7は、この例では第2の電極を構成するもので、棒状導体71の、弾性保護導体72が設けられている側とは反対側の端部は、プリント配線基板41に対して固定されると共に、導電パターン42bに電気的に接続されている。この導電パターン42bは、この例では信号処理回路4の出力端に接続されている。
【0029】
また、周辺電極6と中心電極7との間には、互いの電気的干渉を、効果的に防止するためのシールド部材8が設けられる。この実施形態では、シールド部材8は、中心電極7を取り囲むように設けられ、これにより、シールド部材8が周辺電極6と中心電極7との間に介在して、周辺電極6と中心電極7との間の結合容量をできるだけ小さくするようにしている。
【0030】
図2(A)の一部拡大図である図2(B)に示すように、シールド部材8は、内壁面に絶縁層82が形成された導電金属からなる筒状導体81で構成される。筒状導体81は、プリント配線基板41のアース導体に電気的に接続されている。
【0031】
そして、中心電極7の棒状導体71を、内壁面が絶縁層82とされた筒状導体81の中空部内に収納することにより、中心電極7をシールド部材8で取り囲むように構成している。図2の例では、中心電極7の弾性保護導体72の一部も、シールド部材8の筒状導体81により取り囲むように構成している。
【0032】
周辺電極6とシールド部材8の筒状導体81とは、両者の間に絶縁体部31のテーパー部33が介在することにより絶縁され、中心電極7とシールド部材8の筒状導体81とは、両者の間にシールド部材8の筒状導体81の内壁面の絶縁層82が介在することにより絶縁されている。
【0033】
なお、図2の例では、中心電極7に対してのみシールドを施すようにしたが、周辺電極71に対してシールドを施すようにしても良い。あるいは、周辺電極6と中心電極7との両方にシールドを施すようにしても良い。
【0034】
また、図2の例では、中心電極7の棒状導体71の全体をシールド部材8により取り囲むことによりシールドを施すようにしたが、少なくとも周辺電極6と中心電極7との近接部分に対してシールド部材を介在させるようにすれば良い。
【0035】
次に、信号処理回路4の構成例を説明する。図3は、信号処理回路4の回路構成例を示す図である。この例では、信号処理回路4は、電源回路部40aと、信号処理部40bとからなる。電源回路部40aは、DC/DCコンバータ401を備え、バッテリー5の電圧から電源電圧+Vccを生成して、信号処理部40bに供給する。
【0036】
そして、電源回路40aにおいては、DC/DCコンバータ401とバッテリー5との間に電源スイッチ44が設けられている。また、DC/DCコンバータ401の出力端とアース導体との間には、抵抗402およびLED45の直列回路が接続されている。さらに、DC/DCコンバータ401の出力端は抵抗403および抵抗404の直列接続を通じてアース導体に接続され、抵抗403および抵抗404の接続点から基準電圧Vref(=Vcc/2)が出力される。
【0037】
前述したように、筐体3に設けられている操作子44aが操作されて電源スイッチ44がオンとされると、DC/DCコンバータ401にバッテリー5の電圧が供給されて、電源電圧Vccが発生すると同時に、LED45が点灯して、電源オンが使用者に知らされる。また、操作子44aが操作されて電源スイッチ44がオフとされると、DC/DCコンバータ401へのバッテリー5の電圧の供給が停止されて、電源電圧Vccの発生が停止し、LED45が消灯して、電源オフが使用者に知らされる。
【0038】
信号処理部40bは、信号増強処理回路を構成するもので、この実施形態では、センスアンプ410と、信号増幅率可変回路420と、トランス43とからなる。
【0039】
ところで、この発明における信号増強処理回路で行われる信号増強処理には、入力信号の信号レベルを所定の信号レベルに増幅する処理の他に、入力信号の波形を変形させる処理、あるいは入力信号の位相を制御する処理も含まれる。例えば、入力信号が正弦波のような信号波形を有する信号である場合には、その信号レベルの変化率をその信号レベルが小さい領域においては大きくし、信号波形が極大値あるいは極小値となる領域ではその変化率を小さくすることが含まれる。また、矩形波のような信号波形を有する入力信号である場合には、その信号波形の立ち上がり領域、あるいは立ち下がり領域において、その信号レベルの変化率を増強することで急峻な信号波形と成し、あるいはこの領域における振幅レベルを増大させることが含まれる。更には、入力信号に対する位相差を補償し、あるいは所定の位相差を保持するような位相制御を行うことも適用し得る。信号増強処理回路では、このようなそれぞれの信号処理が、上述の信号レベルの増幅処理と組み合わされ、あるいは信号レベルの増幅処理とは独立して適用されることで信号増強処理が行われる。
【0040】
この例では、センスアンプ410は、オペアンプ411と、このオペアンプ411の反転入力端子と出力端子との間に接続されるコンデンサ412とからなる。オペアンプ411の反転入力端子は、周辺電極6に接続されている接続端子413に接続されている。また、オペアンプ411の非反転入力端子には、前述した基準電圧Vrefが供給される。
【0041】
位置指示器1が位置検出センサ2上にあるときには、図1に示すように、位置指示器1の周辺電極6と位置検出センサ2とは、静電容量C1を介して結合している。後述するように、位置検出センサ2には、交流信号が流れているので、この交流信号が静電容量C1および周辺電極6を介して電流信号として接続端子413に供給され、センサアンプ410に入力される。コンデンサ412は、静電容量C1を介して入力される電流信号を検出するためのものである。ここで、この発明においては、交流信号としては、その波形は問わない。矩形波信号や正弦波信号など、どのような波形の交流信号であっても入力可能である。
【0042】
そして、センスアンプ410は、接続端子413を通じて電流信号として入力された交流信号を位相反転して、信号増幅率可変回路420に出力する。
【0043】
信号増幅率可変回路420は、オペアンプ421と、当該オペアンプ421の反転入力端子と出力端子との間に接続される可変抵抗器422とからなる。この可変抵抗器422の抵抗値は、図2(C)に示したスライド操作部46を使用者がスライド移動することにより手動で可変制御される。そして、この可変抵抗器422の抵抗値を手動で可変設定することにより、この信号増幅率可変回路420の増幅率が可変設定され、その結果として位置指示器の信号検出感度が制御される。
【0044】
この信号増幅率可変回路420で増幅された交流信号は、トランス43の一次巻線43aに供給される。このトランス43の一次巻線43aの巻線数n1と、二次巻線43bの巻線数n2との比は、例えば、n1:n2=1:10のように二次巻線43b側の巻線数が大きく(n1<n2)設定されている。したがって、トランス43の二次巻線43b側には、信号増幅率可変回路420の出力信号の振幅が巻線数比に応じて逓倍されて、大振幅とされた交流信号(電圧信号)が得られる。
【0045】
トランス43の二次巻線43bの一端は、シールド部材8によりシールドされた中心導体7の棒状導体71に接続されている接続端子423に接続され、トランス43の二次巻線43bの他端は、プリント配線基板41のアース導体に接続される。したがって、信号処理部40bにより大振幅の交流信号電圧とされた出力信号は、接続端子423を通じて中心導体7に供給される。
【0046】
位置指示器1が位置検出センサ2上にあるときには、位置指示器1の中心導体7と位置検出センサ2とは静電容量を介して結合されているため、位置指示器1の中心導体7を介して位置指示器1から位置検出センサ2に交流信号が帰還される。
【0047】
次に、この例の静電容量式の位置検出センサ2について説明する。この例の静電容量式の位置検出センサ2は、センサ電極が入力電極と出力電極から構成されており、位置指示器1が接触したタッチポイントの結合容量の変化を検出する相互容量方式の位置検出センサの構成である。
【0048】
すなわち、図4に示すように、この例の位置検出センサ2は、センサ部20と、送信部21と、受信部22とからなる。センサ部20は、指示入力面の横方向(X軸方向)に延伸する直線状の複数個、この例では64個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64と、この送信導体23Y1〜23Y2と直交する、指示入力面の縦方向(Y軸方向)に延伸する複数個、この例では64個の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64とを備える。複数個の送信導体23Y1〜23Y64はY軸方向に等間隔に配置され、送信部21に接続されている。また、複数個の受信導体24X1〜24X64はX軸方向に等間隔に配置され、受信部22に接続されている。
【0049】
なお、この明細書中で送信導体の説明において、64本の送信導体23Y1〜23Y64のいずれであるかを区別する必要のないときには、送信導体23Yと称することにする。同様に、受信導体の説明において、64本の受信導体24X1〜24X64のいずれであるかを区別する必要のないときには、受信導体24Xと称することにする。
【0050】
複数個の送信導体23Yは、例えば基板の下側の面に形成される。複数個の受信導体24Xは、基板の下側の面に形成される。したがって、複数個の送信導体23Yと複数個の受信導体24Xとは、所定の厚みに対応した所定の間隔を隔てて配置され、互いに直交した配置関係を備えて、複数個の交点(クロスポイント)を形成する。そして、各クロスポイントでは、送信導体23Yと受信導体24Xとは、所定の静電容量を介して結合していると見なせる。
【0051】
送信部21は、送信導体23Yに所定の交流信号を供給する。この場合、送信部21は、同一の交流信号を複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64を順次に1本ずつ切り替えながら供給してもよいし、互いに異なる複数個の交流信号を複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64に同時に供給するようにしても良い。また、複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64を複数個のグループに分け、グループ毎に異なる交流信号を用いるようにしても良い。
【0052】
受信部22は、受信導体24X1,24X2,・・・,24X64のそれぞれに、送信導体23Yに供給された交流信号が前記所定の静電容量を介して伝達される信号成分を検出する。送信導体23Yと受信導体24Xとの間の結合静電容量が全クロスポイントにおいて等しいとすれば、位置指示器1が、センサ部20上に存在していないときには、センサ部20の全ての受信導体24X1,24X2,・・・,24X64からは所定レベルの受信信号が受信部22において検出される。
【0053】
これに対して、位置指示器1がセンサ部20に接触すると、その接触位置のクロスポイントを構成する送信導体23Yと受信導体24X、および当該位置指示器1とは静電容量を通じて結合する。すなわち、当該位置指示器1によって静電容量が変化することになり、位置指示器1が存在するクロスポイントの受信導体24Xから得られる受信信号レベルが他のクロスポイントとは変化することとなる。
【0054】
受信部22は、複数の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64のうち、その受信信号のレベルの変化があった受信導体24Xを検知することで、位置指示器1の位置を検出する。そして、図示を省略した位置検出センサ2の制御部は、送信部21から交流信号を供給している送信導体23Yと、受信部22で受信信号レベルの変化のあった受信導体24Xとを検出することにより、位置指示器1が接触しているクロスポイントを検出する。
【0055】
位置指示器1ではなく、指がセンサ部20上に接近または接触したときにも、位置検出センサ2は、同様の原理により、その指が接近または接触したクロスポイントを検出する。その場合、送信導体23Yに供給された交流信号の一部が指を通じ、また、使用者の人体を通じてグラウンドに流れる。そのため、指が存在するクロスポイントを構成する受信導体24Xの受信信号レベルが変化する。受信部22は、この受信信号レベルの変化を検出することにより、指が存在するロスポイントを構成する受信導体24Xを検出する。
【0056】
スタイラス形状の位置指示器の場合にも、指の位置検出の原理と同様にして、位置検出センサは、センサ部20における指示位置の検出を行うことができる。しかし、冒頭でも述べたように、スタイラス形状の位置指示器の場合には、指の場合のように位置検出センサとの間の接触面積が大きくないため、結合容量が小さく、位置検出センサは検出感度が低い。
【0057】
これに対して、この実施形態の位置指示器1の場合には、以下に説明するようにして、位置検出センサ2との親和性が高く、しかも汎用性が高く、更には入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性が確保されて、高感度に、センサ部20上における位置検出が可能となる。
【0058】
すなわち、図1に示すように、位置検出センサ2のセンサ部20上に、この実施形態の位置指示器1を接近または接触させた場合、周辺電極6とセンサ部20とは、静電容量C1を介して結合する。そして、送信導体23Yに供給された交流信号は、この静電容量C1を介し、また、周辺電極6を介して、電流信号として接続端子413を通じて信号処理回路4に入力される。
【0059】
信号処理回路4に入力された交流信号(電流信号)は、信号処理部40bのセンスアンプ410で位相反転された後、信号増幅率可変回路420において増幅されるとともに、トランス43により昇圧(逓倍)されて信号増強されて、電圧信号として接続端子423を通じて中心電極7に供給される。すなわち、周辺導体6を介してセンサ部20から信号処理回路4に入力された交流信号は、信号処理部40bにおいて、逆相とされ、また大振幅の信号とされて中心電極7を通じて、センサ部20に帰還される。
【0060】
この場合に、位置指示器1の中心電極7から位置検出センサ2のセンサ部20に帰還される交流信号は、送信導体23Yに供給される交流信号とは逆相の増強された信号であるので、位置指示器1は、受信導体24Xの受信信号における交流信号の変化を、より増大させるように機能する。このため、位置検出センサ2は、位置指示器1の接触位置を高感度で検出することが可能となる。なお、位置指示器1のグラウンドが人体と接続されることで検出動作が一層安定化される。すなわち、この実施形態では、位置指示器1の筐体3は、信号処理回路4が形成されているプリント配線基板のアース導体に接続されている導電体部32で覆われている。このため、位置検出センサ2において送信導体23Yに供給された交流信号は、位置指示器1を通じ、使用者の人体を通じてグラウンドに流れることで、信号検出動作の一層の安定化を図ることができる。
【0061】
また、位置検出センサ2のセンサ部20の送信導体23Yでの電圧をVとし、この実施形態の位置指示器1の中心導体7の電圧をeとし、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量をC2(図1参照)とすると、
e≦C1/C2・V
なる関係がある。このため、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量C2は、できるだけ小さい方が、中心電極7の電位eを高くするのに有利である。
【0062】
このために、この実施形態の位置指示器1においては、周辺電極6と中心電極7との間にはシールド部材8を介在させることで、両者の結合をできるだけ小さくするようにしている。したがって、この実施形態の位置指示器1では、シールド部材8を介在させることによって、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量C2は小さくなり、電圧eを大きくすることができ、効率よく感度を高めることができる。
【0063】
また、この実施形態の位置指示器1においては、使用者がスライド操作部46を手動で調整して、可変抵抗器422の抵抗値を可変させ、信号増幅率可変回路420の増幅率を可変設定することにより、位置検出センサ2における位置指示器1の指示位置の検出感度を調整することができる。
【0064】
すなわち、位置指示器1の中心導体7を位置検出センサ2のセンサ部20の表面に軽くタッチさせる状態では、中心導体7の先端の弾性保護部材72とセンサ部20の接触面積が小さくなるが、スライド操作部46を手動調整して、信号増幅率可変回路420の増幅率を大きくすることにより、当該軽いタッチであっても、位置検出センサ2は、位置指示器1を高感度で検出することができる。
【0065】
また、逆に、位置指示器1の中心導体7を位置検出センサ2のセンサ部20の表面に強くタッチさせる状態では、中心導体7の先端の弾性保護導体72とセンサ部20の接触面積が大きくなるが、スライド操作部46を手動調整して、信号増幅率可変回路420の増幅率を小さくすることにより、当該強いタッチにおいても、位置検出センサ2は、位置指示器1が適切な程度でタッチされたものとして、安定して検出することができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、信号増強処理回路の信号増幅率可変回路420は、可変抵抗器422により増幅率を連続的に可変することができるように構成したが、スライドスイッチにより、抵抗値の異なる複数個の抵抗器を切り替えることにより、段階的に増幅率を可変にするように構成してもよい。
【0067】
上述した第1の実施形態の位置指示器1は、周辺電極6を第1の電極として、位置検出センサ2からの交流信号を受信し、中心電極7を第2の電極として、信号増強した出力交流信号を位置検出センサ2に帰還させる構成である。しかし、位置検出センサ2からの交流信号を受信するための第1の電極を中心電極7とし、信号増強した交流信号を位置検出センサ2に帰還させるための第2の電極を周辺電極6としても良い。
【0068】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態の位置指示器1は、第1の電極が周辺電極6であり、第2の電極が中心電極7とした構成であったが、この構成の場合、位置検出センサ2の構成によっては、以下のような不具合が生じる場合があることが判明した。
【0069】
すなわち、第1の実施形態で用いた位置検出センサ2は、送信導体23Yおよび受信導体24Xがいずれも線状の導体であった。これに対して、図5の例の位置検出センサ2Aのセンサ部20Aは、線状ではなく幅広の送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64を備える。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、センサ部20Aの受信導体は、第1の実施形態と同じように線状の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64である。また、この例のセンサ部20Aにおいては、複数個の送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64が送信部21に接続され、複数個の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64が受信部22に接続される。
【0070】
このような構成の位置検出センサ2Aにおいて、位置指示器1を、図5において点線矢印で示す斜め方向に移動したとき、交流信号を位置検出センサ2Aに帰還させるための第2の電極が中心電極7であるため、この中心電極7の位置が、隣接する2本の受信導体24Xiおよび24Xi+1間にあるときに、中心電極7がより近い方の受信導体24Xiまたは24Xi+1に対して、より多くの交流信号を帰還させるように働く。
【0071】
このため、斜め方向の直線状に位置指示器1を移動させたとしても、位置検出センサ2Aでは、位置指示器1の移動軌跡を、蛇行したような軌跡として、位置検出してしまうという不具合がある。
【0072】
この不具合を改善するためには、位置指示器は、位置検出センサ2Aからの交流信号を受信するための第1の電極を中心電極7とし、信号増強した交流信号を位置検出センサ2Aに帰還させるための第2の電極を周辺電極6とすれば良い。
【0073】
すなわち、送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64が幅広の導体であるため、中心電極7を、交流信号を受信するための第1の電極としても交流信号は均一に受信できる。一方、周辺電極6を、信号増強した交流信号を位置検出センサ2に帰還させるための第2の電極とすると、周辺電極6は中心電極7に比べて位置検出センサ2と電気的に係合する領域が広くなるために、位置指示器が、隣接する2本の受信導体(iは1以上の整数)24Xi(i=1,2,・・・,63である。以下同じ)および24Xi+1間にあるときにも、当該周辺電極6とそれら隣接する2本の受信導体24Xiおよび24Xi+1とはほぼ同様の静電結合関係とすることができる。このため、図5の点線矢印のような斜め方向に位置指示器を移動したときにも、その移動軌跡の蛇行が防止され、直線状の軌跡として位置検出センサ2Aが検知することができる。
【0074】
以上のことを考慮して、この第2の実施形態では、位置指示器1の周辺電極6と中心電極7とを、第1の電極と第2の電極とに、切り替え可能な構成とする。図6は、この第2の実施形態の位置指示器1Aの信号処理回路4Aの信号処理部40bAの構成を示す図である。この図6において、図2に示した第1の実施形態の信号処理回路4の信号処理部40bと同一部分については同一の参照符号を付してある。
【0075】
すなわち、信号処理部40bAにおいては、周辺電極6が接続される接続端子413は、スイッチ481の一方の入力端子481aに接続されるとともに、スイッチ482の他方の入力端子482bに接続される。また、中心電極7が接続される接続端子423は、スイッチ481の他方の入力端子481bに接続されるとともに、スイッチ482の一方の入力端子482cに接続される。
【0076】
そして、スイッチ481の可動接点481cはオペアンプ411の反転入力端子に接続される。また、スイッチ482の可動接点482cはトランス43の2次巻線43bの一端に接続される。その他は、前述した信号処理部40bと全く同様に構成される。
【0077】
また、図6の接続端子413の近傍に示すように、第2の実施形態の位置指示器1Aの筐体3の一部には、互いが連動して動作するスイッチ481および482を手動で切り替えるための切り替え操作子48が、外部に露呈して設けられている。
【0078】
使用者が切り替え操作子48を、矢印方向にスライド移動させて、a側に位置させたときには、スイッチ481および482は、連動して一方の入力端子481a,482a側に切り替えられる。すると、周辺電極6が接続される接続端子413がオペアンプ411の反転入力端子に接続されるとともに、中心電極7が接続される接続端子423がトランス43の二次巻線43bの一端に接続され、位置指示器1Aは、第1の実施形態と全く同様の動作をする。
【0079】
一方、使用者が、切り替え操作子48をb側に位置させたときには、スイッチ481および482は、連動して他方の入力端子481b,482b側に切り替えられる。すると、中心電極7が接続される接続端子423がオペアンプ411の反転入力端子に接続されるとともに、周辺電極6が接続される接続端子413がトランス43の二次巻線43bの一端に接続される。
【0080】
したがって、中心電極7を介して位置検出センサ2Aからの交流信号の一部が位置指示器1Aの信号処理回路4Aに入力される。そして、信号処理部40bAで逆相にされ、増強された交流信号が周辺電極6を介して位置検出センサ2Aに帰還される。これにより、第1の実施形態と同様にして、位置検出センサ2Aでは、位置指示器1Aの指示位置を高感度で検出することができる。
【0081】
以上の例に限らず、位置検出センサの送信導体および受信導体については、受信導体側を幅広とするもの、送信導体および受信導体の両方ともに幅広とするものも想定される。この第2の実施形態によれば、使用者は、それらの位置検出センサの構成の違いに応じて、スイッチ操作子48により、周辺電極6と中心電極7とを、第1の電極とするか、第2の電極とするかを切り替えることができる。したがって、この第2の実施形態による位置指示器を用いれば、送信導体、受信導体の構成の違いがある種々の位置検出センサにおいても、その構成の違いに応じた不具合を回避して、位置検出センサへの依存度が軽減された、汎用性が高く、さらに高い感度で位置指示器を検出できる。
【0082】
[第3の実施形態]
以上の第1および第2の実施形態では、信号処理回路4および4Aの信号処理部40bおよび40bAは、センサアンプ410の後段に信号増幅率可変回路420を設けることにより、信号増強処理回路を構成するようにした。しかし、信号増強処理回路は、他の構成とすることもできる。
【0083】
第3の実施形態は、信号増強処理回路が出力電圧を増強(エンハンス)させる回路の場合の第1の例である。図7は、この第3の実施形態の位置指示器の場合における信号処理回路4Bの信号処理部40bBの構成例を示す回路図である。
【0084】
図7に示すように、信号処理部40bBは、センスアンプ410とエンハンス回路430とからなる。そして、エンハンス回路430は、トランス43と反転増幅回路431とからなり、センスアンプ410の出力がそのままの極性でトランス43の1次巻線43aの一端側に供給されるとともに、センスアンプ410の出力が反転増幅回路431により極性反転されてトランス43の1次巻線43aの一端側に供給される。
【0085】
すなわち、トランス43の1次巻線43aの一端および他端に、センスアンプ410の出力信号が、互いに逆相で供給されるため、トランス43の2次巻線43bには、センスアンプ410の出力信号の振幅が増幅された信号が得られる。なお、オペアンプ411と反転増幅回路431のそれぞれの非反転入力端子には基準電圧Vrefが供給される。
【0086】
こうして、この第3の実施形態の信号処理部40bBによれば、トランス43を用いたエンハンス回路430により、より低い電源電圧であっても、その入力信号を増強した信号を出力することができる。
【0087】
なお、図7においては、参考のため、処理すべき信号が矩形波信号である場合の位相および振幅関係を示したが、この信号処理部40bBで処理する対象となる信号の波形は、矩形波に限られるものではなく、交流信号であれば、正弦波などのような波形を有する信号であっても良い。
【0088】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、信号増幅率可変回路420を用いずに信号増強処理回路を実現する場合の第2の例である。図8は、この第4の実施形態の位置指示器の場合における信号処理回路4Cの信号処理部40bCの構成例を示す回路図である。
【0089】
図8に示すように、信号処理部40bCは、センスアンプ410と波形変換回路440とからなる。図8の例では、波形変換回路440は、比較回路441で構成されている。この第4の実施形態においては、センスアンプ410は、増幅率が大きいものとされ、例えば出力電圧値が飽和するような増幅率であっても良い。
【0090】
比較回路441は、センスアンプ410により大振幅に増幅された交流信号と、基準電圧Vrefとを比較して、当該基準電圧Vref以上の信号レベル区間ではハイレベル、それ以外の信号レベル区間ではローレベルとなるような、矩形波信号を生成する波形変換回路である。
【0091】
そして、この比較回路441からの矩形波信号がトランス43により、さらに逓倍(昇圧)されて、信号処理部40bCの出力信号として出力される。
【0092】
こうして、この第4の実施形態の信号処理部40bCによれば、入力信号を矩形波信号に変換することで、信号増強した出力を提供することができる。
【0093】
なお、入力信号を矩形波信号にする変換する方法は、図8に示した方法に限られるものではないことは言うまでもない。
【0094】
[第5の実施形態]
以上の第1および第2の実施形態の信号処理部40bおよび40bAでは、センサアンプ410の後段の信号増幅率可変回路420は、使用者が手動で増幅率を可変することができるように構成した。しかし、信号増幅率可変回路420は、増幅率を自動制御するように構成することもできる。第5の実施形態は、その場合の実施形態である。図9に、第5の実施形態の場合における信号処理部40bDの構成例を示す回路図を示す。
【0095】
図9に示すように、信号処理部40bDは、センスアンプ410と自動ゲイン調整回路450とからなる。自動ゲイン調整回路450は、この例では電圧制御型のゲイン制御アンプ451と、出力レベル検出回路452とからなる。
【0096】
センスアンプ410の出力信号は、ゲイン制御アンプ451に供給される。そして、出力レベル検出回路452は、このゲイン制御アンプ451の出力信号レベルを検出して、ゲイン制御アンプ451のゲイン調整電圧を生成して、ゲイン制御アンプ451の制御端子に供給する。この出力レベル検出回路452からのゲイン調整電圧により、ゲイン制御アンプ451は、その出力信号レベルが常に一定となるようにゲイン調整される。そして、ゲイン制御アンプ451の出力信号は、トランス43により昇圧されて、信号処理部40bDの出力信号として出力される。
【0097】
位置指示器1を位置検出センサ2に対して接触させて位置を指示する際、使用者は、位置指示器1を位置検出センサ2に強く接触させる、軽く接触させるなど、好みなどに応じた指示操作をするが、この第5の実施形態によれば、使用者の指示操作の仕方の違いに関係なく、常に、最適の感度で位置指示器1が位置検出センサ2で検出されるようにすることができる。
【0098】
[第6の実施形態]
上述の第1〜第5の実施形態では、センスアンプ410では、位置指示器1と位置検出センサ2との間に生じる結合容量を通じた電流が入力信号であるため、この種の回路として一般的であるオペアンプ411の入出力端間にコンデンサ412を接続した構成を用いるようにした。
【0099】
しかしながら、この構成の場合、センスアンプ410の出力信号としては、センスアンプ410の入力信号が鈍った波形となるとともに、位相遅延が発生してしまう。このため、位置検出センサ2の受信部22において、受信導体に得られる受信信号から送信導体に供給された交流信号を同期検波や相関演算により検出して、受信信号の変化を検出する場合に、精度良く当該変化を検出することが困難になるおそれがあった。
【0100】
第6の実施形態は、この問題を回避することができるように信号処理回路を構成した例である。図10(A)は、この第6の実施形態における信号処理回路4Eの信号処理部40bEの構成例を示す回路図である。
【0101】
この第6の実施形態における信号処理回路4Eの信号処理部40bEは、第1の実施形態の信号処理部40bと同様に、センスアンプ460と、信号増強処理回路としての信号増幅率可変回路420とからなる。しかし、この第6の実施形態においては、センスアンプ460は、オペアンプ461と、このオペアンプ461の反転入力端子と出力端子との間に接続される抵抗462とからなる。すなわち、第1の実施形態におけるオペアンプ411の反転入力端子と出力端子との間に接続されるコンデンサ412に代えて、抵抗462が接続された回路構成に等しい。その他は、第1の実施形態の信号処理部40bと同様である。
【0102】
この第6の実施形態の信号処理部40bEの構成によれば、位置指示器1と位置検出センサ2との間の結合容量と、センスアンプ460のオペアンプ461の入出力端間に接続された抵抗462とにより、位置検出センサ2から位置指示器1に入力される交流信号は、センスアンプ461において高域強調(エンファシス)された信号となる。例えば、位置検出センサ2の送信部21から供給される交流信号が図10(B)に示すような矩形波信号であったときには、センスアンプ461の出力信号の波形は、図10(C)に示すように、立ち上がりおよび立ち下がりが強調された微分波形となる。
【0103】
しかも、このとき、コンデンサ412に代えて、抵抗462がオペアンプ461の入出力端間に接続されているので、図10(B)および図10(C)に示すように、センスアンプ460の出力信号は、その入力信号に対して位相遅れが生じていない位相補償された信号となっており、抵抗462を備えたオペアンプ461を備えたセンスアンプ460は位相補償回路あるいは位相制御回路としての機能もまた果たす。
【0104】
このセンスアンプ460の出力信号は、第1の実施形態の場合と同様にして、信号増幅率可変回路420に供給されて、さらに信号増強される。そして、この増強された交流信号は、位置指示器1から位置検出センサ2に帰還される。
【0105】
以上の説明から判るように、この第6の実施形態におけるセンスアンプは、高域強調回路を構成するとともに、位相遅延の生じない位相補償回路を構成するものとなる。したがって、この第6の実施形態によれば、位置検出センサ2の受信部22において、受信導体に得られる受信信号から送信導体に供給された交流信号を同期検波や相関演算により検出して、受信信号の変化を検出する場合においても、精度良く当該変化を検出することができる。
【0106】
なお、図10では、位置検出センサ2で用いられる交流信号が矩形波信号の場合について説明したが、交流信号としては、その波形は問わず、正弦波信号など、どのような波形の交流信号であっても良い。
【0107】
また、図10の例は、第6の実施形態を第1の実施形態の信号処理部40bのセンスアンプに適用した場合であるが、第6の実施形態は、第2〜第5の実施形態の信号処理部のセンスアンプにも適用することができる。
【0108】
[周辺電極6と中心電極7との間のシールドについての他の例]
第1の実施形態において説明したように、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量が小さい方が、位置指示器1の感度向上のためには良好となる。そのため、第1の実施形態では、中心電極7をシールド部材8により取り囲むことにより、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量をできるだけ小さくなるようにした。
【0109】
そして、第1の実施形態においては図2に示したように、シールド部材8は、周辺電極6を貫通して、中心電極7を覆うように構成した。つまり、シールド部材8は、周辺電極6を貫通する中心電極7側の部分にも施すようにした。しかし、シールド部材8は、少なくとも、周辺部材6と中心電極7とが近接する部分に対してシールド効果を発揮させるようにすれば良いので、図11(A)に示すように、シールド部材8は、周辺電極6の中心電極7側の端部あるいはその近傍までの位置にて、中心電極7を覆うように構成しても良い。
【0110】
また、よりシールド効果を高めて、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量を、さらに小さくするために、周辺電極6を貫通させたシールド部材8の先端部に、図11(B)および図11(C)に示すように、ツバ部8aおよび8bを形成するようにしても良い。そして、ツバ部8aを、図11(B)に示すように、周辺電極6の先端部を覆うように折り返したり、ツバ部8bを、図11(C)に示すように、中心電極7を囲むように折り返したりすることにより、さらに、両者の間のシールド効果を向上させることができる。
【0111】
また、図11(B)および(C)の例の場合には、ツバ部8aおよび8bと、周辺電極6および絶縁材料からなるテーパー部33との間には、空隙部を設けて空気層9を介在させるようにしている。このため、周辺電極6と中心電極7との間のシールド効果を、より向上させることができる。なお、空気層9の代わりに、所定の誘電体を介在させるようにしても良い。例えば、合成樹脂からなるテーパー部33をツバ部8a,8bまで延長するようにしても良い。
【0112】
[その他の実施形態または変形例]
以上の実施形態では、交流信号を入力する送信導体と、交流信号を受信する受信導体とを分離することで、タッチポイントの結合容量部分(XY座標)のみを検出する相互容量方式の静電容量式検出センサの場合について説明したが、この発明は、交流信号の入出力を、同一の導体で行う自己容量方式の静電容量式検出センサについても、同様に適用可能である。
【0113】
また、位置指示器の電源は、バッテリーを用いる場合を説明したが、バッテリーを備えずに、例えば静電容量式検出センサ側からワイヤレス方式にて電力の供給を受けるように構成しても良い。例えば、特開2007−164356号公報に記載されているように、位置指示器に、静電容量式検出センサとの間で電磁結合を生じる共振回路と電気二重層コンデンサなどのコンデンサを設け、コンデンサに充電された電圧から駆動電圧を生成して使用する構成とすることもできる。
【0114】
また、上述の実施形態では、信号増強処理回路の出力側には信号レベルを増大させるためのトランスを設けるようにしたが、トランスの代わりに、半導体回路からなる信号増強回路を設けるようにしても良いことは言うまでもない。
【0115】
なお、上述の実施形態では、位置指示器の筐体内の信号処理回路が形成されるプリント配線基板のアース導体に、位置指示器の筐体3の外周の導電体部32が直接的(直流的)に接続されているが、内部回路のアース導体と導電体部32との間は、コンデンサを介して交流的に結合される構成であっても良い。
【0116】
また、上述の実施形態では、導電体部32は、周辺導体との絶縁部を除き、位置指示器の筐体3の外周のほぼ全体を覆うように構成したが、使用者が位置指示器を操作する際に把持して人体を接触させる筐体3の所定部分にのみ、内部回路のアース導体と接続された金属板などの導電性部材を配置するようにしても良い。
【0117】
また、筐体3が例えばプラスチックで構成される場合に、導電性を有するプラスチックを使用して、それを直流的にあるいは交流的に内部回路のアース導体に接続する構成とすることにより、導電体部32を省略することもできる。
【0118】
なお、この発明の位置指示器が使用される位置検出センサは、タブレットに限らず、パッド型端末などの種々の携帯端末、その他の据え置き型装置の位置検出装置に利用される種々のものが対象となる。
【符号の説明】
【0119】
1…位置指示器、2…位置検出センサ、3…位置指示器1の筐体、4…信号処理回路、5…バッテリー、6…周辺電極、7…中心電極、8…シールド部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用する位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる静電容量式の位置検出センサでは、位置指示器の位置を精度良く検出するためには、位置検出センサと位置指示器との間に発生する静電容量が、ある程度以上(通常1pF程度)必要であった。このため、位置検出センサに対する入力操作は、指先あるいは接触時の面積が比較的大きい専用の静電ペンにより行っている。つまり、先の細いスタイラス形状の静電ペンにより細かい入力位置を、位置検出センサに対して行うことは検出感度の観点から困難であった。
【0003】
この問題を解決する技術が従来から種々提案されている。例えば、特許文献1(特開平7−295722号公報)や特許文献2(特開平8−272509号公報)には、位置指示器内に交流信号の発生器を備え、この位置指示器から送出される交流信号に応じた信号を位置検出センサが検出することで、位置指示器の位置を検出する座標入力装置が開示されている。そして、これら特許文献1,2においては、位置指示器から位置検出センサに送出する交流信号を大振幅とすることで、先の細い静電ペンからなる位置指示器であっても位置検出ができるようにしている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、信号ペン5の内部に信号発振器1を備え、信号発振器1によって大振幅の交流信号を生成し、その生成した交流信号を、信号ペン5の先端部のスタイラス導体3およびリング状導体4との間に印加する構成が示されている。また、特許文献2には、スタイラス6に正弦波発生器を備え、変圧器を用いて正弦波交流信号を昇圧してスタイラスの先端2に供給する構成が示されている。
【0005】
また、特許文献3(特開2007−183809号公報)には、次の構成が示されている。すなわち、スタイラス入力装置1の先端部2が静電容量式タッチパネル51の表面に触れると、スイッチング回路3の可動接点が固定接点3a側に切り替えられて、位相比較器5が動作状態となる。この結果、静電容量検出型の座標入力装置50の基準信号源54で発生している周波数Foの交流基準信号Viが先端部2を介して受信され、スイッチング回路3の固定接点3aを経由して位相比較器5の一方の入力に供給される。この構成によって、位相比較器5を含むPLL回路は、交流基準信号Viに位相同期し、交流基準信号Viと同一周波数の信号を出力する。スイッチング回路3の可動接点が固定接点3bに切り替えられると、位相比較器5は非動作状態になるものの、スタイラス入力装置1は、PLL回路のフライホイール効果により、静電容量検出型の座標入力装置50の基準信号源54で発生している交流基準信号Viに位相同期した同一周波数の信号を出力する。この出力信号と逆位相、かつ電源電圧Vccを越えた振幅Vnegの信号がスタイラス入力装置1の先端部2を介して出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−295722号公報
【特許文献2】特開平8−272509号公報
【特許文献3】特開2007−183809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の位置指示器は、交流信号の発生器を備え、当該発生器で生成した交流信号を位置検出センサに送信する一方向信号送信の構成を備えるものである。このため、位置指示器は、位置検出センサが使用する交流信号に適合させた交流信号発生器を備える必要があり、その分、コスト高となると共に、それぞれの位置検出センサに対応した位置指示器を用意する必要があり、位置指示器としての汎用性が損なわれるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3の技術が適用された位置指示器は、ペン先の導体で位置検出センサからの交流信号を受信して、これに同期した交流信号を生成し、その生成した交流信号を同じペン先の導体から位置検出センサに送出する、いわゆる半二重通信の構成を備える。すなわち、特許文献3の位置指示器においては、ペン先の導体は交流信号の受信と送信とで兼用されているため受信と送信を同時に行うことはできず、ペン先を、信号受信期間と信号送信期間とで切り替えるためのスイッチ回路を設ける必要がある。
【0009】
また、特許文献3の位置指示器では、信号受信期間でのみ、PLL回路により受信した交流信号に同期した逆相の出力交流信号が生成される。そして、信号送信期間では、PLL回路からの信号が前記出力交流信号として出力されるため、受信した交流信号と出力交流信号との間の信号の連続性あるいは位相関係が必ずしも保証されないおそれがある。
【0010】
以上のように、特許文献3の位置指示器では、PLL回路を使用することで受信した交流信号に対応した新たな信号を生成した後に、スイッチ回路を切り替えることで同じペン先の導体を使用して、PLL回路で生成された信号を送出する構成を備えている。したがって、特許文献3の位置指示器では、スイッチ回路を備えることで、出力交流信号の連続性あるいはリアルタイム性を損なうおそれがある。また、PLL回路によって新たな信号を生成するために、入力信号の信号波形と出力信号の信号波形との間の波形相関性が必ずしも保証されないおそれがある。
【0011】
この発明は、以上の点にかんがみ、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器として、信号の入力チャンネルと出力チャンネルが独立して存在する、いわゆる全二重通信の構成を備えることで、位置検出センサと親和性が高く、また、汎用性が高く、さらには入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性を確保できる位置指示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明による位置指示器は、
静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサからの交流信号を受信するための第1の電極と、
前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、
前記信号増強処理回路から出力された信号が供給される、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
を備えることで、前記第1の電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に前記信号増強された信号を前記第2の電極を介して前記位置検出センサに送出するようにした
ことを特徴とする。
【0013】
位置検出センサにおいては、この発明の位置指示器により指示されている位置における交流信号の受信信号の変化を検出することにより、位置指示器による指示位置を検出する。上述の構成のこの発明による位置指示器は、位置検出センサから第1の電極を介して受信した交流信号を、信号増強処理回路により信号増強処理し、第2の電極を介して位置検出センサに帰還する。
【0014】
このため、位置検出センサにおいては、この発明の位置指示器により位置指示されている位置における交流信号の受信信号の変化が大きくなり、位置検出センサにおける位置指示器の検出感度が向上する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器として、簡単な構成を備えると共に、位置検出センサとの高い親和性と、高い汎用性を備え、さらには入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性を確保できる、高感度にて位置検出が可能な位置指示器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による位置指示器の第1の実施形態の概念的構成およびその処理動作を概括的に説明するための図である。
【図2】この発明による位置指示器の第1の実施形態の構成例を示す図である。
【図3】この発明による位置指示器の第1の実施形態における信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図4】この発明による位置指示器が使用される位置検出センサの一例を説明するための図である。
【図5】この発明による位置指示器が使用される位置検出センサの他の例を説明するための図である。
【図6】この発明による位置指示器の第2の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図7】この発明による位置指示器の第3の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図8】この発明による位置指示器の第4の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図9】この発明による位置指示器の第5の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図である。
【図10】この発明による位置指示器の第6の実施形態における信号処理回路の一部の一例を示す回路図およびその説明のための波形図である。
【図11】この発明による位置指示器の実施形態における第1の電極と第2の電極との間に介在するシールド部材の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、この発明による位置指示器の実施形態を、図を参照しながら説明する。図1は、この発明の第1の実施形態の位置指示器1の概念的構成およびその処理動作を概括的に説明するための図であり、位置指示器1が、静電容量式の位置検出センサ2の板面上に位置されている状態を示す図である。また、図2は、位置指示器1の詳細構成例を説明するための図で、図2(A)は、その一部縦断面図であり、図2(B)は、その一部拡大図であり、図2(C)は、その外観の一部を示す図である。この実施形態では、位置指示器1は外観が棒状のスタイラス形状を有するものとして形成されている。
【0018】
この実施形態の位置指示器1は、棒状の筐体3を備える。この筐体3は、絶縁材料例えば合成樹脂からなる中空の円筒状形状の絶縁体部31により構成されている。そして、この実施形態では、筐体3の絶縁体部31の外表周面の少なくとも操作者が当該位置指示器1を把持する部分は、例えば金属からなる導電体部32で覆われている。
【0019】
筐体3内には、プリント配線基板41が配設されている。筐体3の外表周面を覆う導電体部32は、このプリント配線基板41のアース導体に電気的に接続されている。
【0020】
プリント配線基板41上には、信号処理回路4が形成されている。図2に示すように、プリント配線基板41上には、抵抗やコンデンサ、IC(Integrated Circuit)などからなる複数個の電子部品と、導電パターン42aや42bなどの配線パターンと、後述するトランス43などの他、この例では、電源スイッチ44およびLED(Light Emitting Diode)45なども備えて、信号処理回路4が構成されている。
【0021】
また、この実施形態では、筐体3内に、バッテリー5が収納可能に構成されており、信号処理回路4の電源電圧は、このバッテリー5にて生成される。図2(A)において、端子52は、プリント配線基板41上の信号処理回路4に含まれる電源回路に電気的に接続されている端子である。バッテリー5の正極側電極51は、この端子52に接触して電気的に接続されている。図示は省略するが、バッテリー5の負極側電極は、プリント配線基板41のアース導体に直接に接続され、あるいは筐体3の導電体部32を経由してプリント配線基板41のアース導体に接続されている弾性変位する端子に押圧接触するようにされている。
【0022】
プリント配線基板41上に配置されている電源スイッチ44の操作子44aは、図2(C)に示すように、筐体3に設けられた開口部を介して、外部から操作可能に設けられている。使用者が、この操作子44aをスライド移動させることにより、電源スイッチ44をオン・オフさせることができる。
【0023】
そして、位置指示器1は、操作子44aの操作により電源スイッチ44がオンとされて、電源が投入されると、LED45が点灯し、また、電源スイッチ44がオフとされて電源がオフとされると、LED45が消灯するように構成されている。LED45の位置に対応する筐体3の外周表面には透光部材45Lが設けられており、使用者は、LED45の点灯、消灯を、この透光部材45Lを通じて確認することができる。
【0024】
また、筐体3の外周表面には、信号処理回路4に設けられる後述する可変抵抗器422の抵抗値を手動で可変するためのスライド操作部46も設けられている。
【0025】
筐体3を構成する中空の円筒状形状の絶縁体部31の中心線方向の一方の端部側は、徐々に先細となるテーパー部33とされている。このテーパー部33の外周側には、例えば環状の導電金属からなる周辺電極6が取り付けられる。なお、周辺電極6と筐体3の外周表面の導電体部32とは、両者の間に絶縁体部31が介在することにより、絶縁されている。
【0026】
周辺電極6は、この例では第1の電極を構成するもので、絶縁体部31を貫通するリード導体部材61により、プリント配線基板41の導体パターン42aに電気的に接続されている。この導体パターン42aは、この例では、信号処理回路4の入力端に接続されている。
【0027】
また、この実施形態では、テーパー部33の中空部から外部に突出するように中心電極7が設けられる。この中心電極7は、例えば導電性の金属からなる棒状導体71と、この棒状導体71の先端に設けられる弾性保護導体72とからなる。棒状導体71は、筐体3内のプリント配線基板41の位置からテーパー部33の中空部を貫通して外部に突出するように設けられている。弾性保護導体72は、位置指示器1が位置検出センサ2に接触したときに、位置検出センサ2の指示入力面を傷付けないようにすると共に、指示入力面との接触面積をおおきくするための部材であり、この例では、導電性の弾性ゴムで構成されている。なお、この弾性保護導体72は省略しても良い。その場合には、棒状導体71を、例えば導電性の弾性部材で構成すると良い。
【0028】
この中心電極7は、この例では第2の電極を構成するもので、棒状導体71の、弾性保護導体72が設けられている側とは反対側の端部は、プリント配線基板41に対して固定されると共に、導電パターン42bに電気的に接続されている。この導電パターン42bは、この例では信号処理回路4の出力端に接続されている。
【0029】
また、周辺電極6と中心電極7との間には、互いの電気的干渉を、効果的に防止するためのシールド部材8が設けられる。この実施形態では、シールド部材8は、中心電極7を取り囲むように設けられ、これにより、シールド部材8が周辺電極6と中心電極7との間に介在して、周辺電極6と中心電極7との間の結合容量をできるだけ小さくするようにしている。
【0030】
図2(A)の一部拡大図である図2(B)に示すように、シールド部材8は、内壁面に絶縁層82が形成された導電金属からなる筒状導体81で構成される。筒状導体81は、プリント配線基板41のアース導体に電気的に接続されている。
【0031】
そして、中心電極7の棒状導体71を、内壁面が絶縁層82とされた筒状導体81の中空部内に収納することにより、中心電極7をシールド部材8で取り囲むように構成している。図2の例では、中心電極7の弾性保護導体72の一部も、シールド部材8の筒状導体81により取り囲むように構成している。
【0032】
周辺電極6とシールド部材8の筒状導体81とは、両者の間に絶縁体部31のテーパー部33が介在することにより絶縁され、中心電極7とシールド部材8の筒状導体81とは、両者の間にシールド部材8の筒状導体81の内壁面の絶縁層82が介在することにより絶縁されている。
【0033】
なお、図2の例では、中心電極7に対してのみシールドを施すようにしたが、周辺電極71に対してシールドを施すようにしても良い。あるいは、周辺電極6と中心電極7との両方にシールドを施すようにしても良い。
【0034】
また、図2の例では、中心電極7の棒状導体71の全体をシールド部材8により取り囲むことによりシールドを施すようにしたが、少なくとも周辺電極6と中心電極7との近接部分に対してシールド部材を介在させるようにすれば良い。
【0035】
次に、信号処理回路4の構成例を説明する。図3は、信号処理回路4の回路構成例を示す図である。この例では、信号処理回路4は、電源回路部40aと、信号処理部40bとからなる。電源回路部40aは、DC/DCコンバータ401を備え、バッテリー5の電圧から電源電圧+Vccを生成して、信号処理部40bに供給する。
【0036】
そして、電源回路40aにおいては、DC/DCコンバータ401とバッテリー5との間に電源スイッチ44が設けられている。また、DC/DCコンバータ401の出力端とアース導体との間には、抵抗402およびLED45の直列回路が接続されている。さらに、DC/DCコンバータ401の出力端は抵抗403および抵抗404の直列接続を通じてアース導体に接続され、抵抗403および抵抗404の接続点から基準電圧Vref(=Vcc/2)が出力される。
【0037】
前述したように、筐体3に設けられている操作子44aが操作されて電源スイッチ44がオンとされると、DC/DCコンバータ401にバッテリー5の電圧が供給されて、電源電圧Vccが発生すると同時に、LED45が点灯して、電源オンが使用者に知らされる。また、操作子44aが操作されて電源スイッチ44がオフとされると、DC/DCコンバータ401へのバッテリー5の電圧の供給が停止されて、電源電圧Vccの発生が停止し、LED45が消灯して、電源オフが使用者に知らされる。
【0038】
信号処理部40bは、信号増強処理回路を構成するもので、この実施形態では、センスアンプ410と、信号増幅率可変回路420と、トランス43とからなる。
【0039】
ところで、この発明における信号増強処理回路で行われる信号増強処理には、入力信号の信号レベルを所定の信号レベルに増幅する処理の他に、入力信号の波形を変形させる処理、あるいは入力信号の位相を制御する処理も含まれる。例えば、入力信号が正弦波のような信号波形を有する信号である場合には、その信号レベルの変化率をその信号レベルが小さい領域においては大きくし、信号波形が極大値あるいは極小値となる領域ではその変化率を小さくすることが含まれる。また、矩形波のような信号波形を有する入力信号である場合には、その信号波形の立ち上がり領域、あるいは立ち下がり領域において、その信号レベルの変化率を増強することで急峻な信号波形と成し、あるいはこの領域における振幅レベルを増大させることが含まれる。更には、入力信号に対する位相差を補償し、あるいは所定の位相差を保持するような位相制御を行うことも適用し得る。信号増強処理回路では、このようなそれぞれの信号処理が、上述の信号レベルの増幅処理と組み合わされ、あるいは信号レベルの増幅処理とは独立して適用されることで信号増強処理が行われる。
【0040】
この例では、センスアンプ410は、オペアンプ411と、このオペアンプ411の反転入力端子と出力端子との間に接続されるコンデンサ412とからなる。オペアンプ411の反転入力端子は、周辺電極6に接続されている接続端子413に接続されている。また、オペアンプ411の非反転入力端子には、前述した基準電圧Vrefが供給される。
【0041】
位置指示器1が位置検出センサ2上にあるときには、図1に示すように、位置指示器1の周辺電極6と位置検出センサ2とは、静電容量C1を介して結合している。後述するように、位置検出センサ2には、交流信号が流れているので、この交流信号が静電容量C1および周辺電極6を介して電流信号として接続端子413に供給され、センサアンプ410に入力される。コンデンサ412は、静電容量C1を介して入力される電流信号を検出するためのものである。ここで、この発明においては、交流信号としては、その波形は問わない。矩形波信号や正弦波信号など、どのような波形の交流信号であっても入力可能である。
【0042】
そして、センスアンプ410は、接続端子413を通じて電流信号として入力された交流信号を位相反転して、信号増幅率可変回路420に出力する。
【0043】
信号増幅率可変回路420は、オペアンプ421と、当該オペアンプ421の反転入力端子と出力端子との間に接続される可変抵抗器422とからなる。この可変抵抗器422の抵抗値は、図2(C)に示したスライド操作部46を使用者がスライド移動することにより手動で可変制御される。そして、この可変抵抗器422の抵抗値を手動で可変設定することにより、この信号増幅率可変回路420の増幅率が可変設定され、その結果として位置指示器の信号検出感度が制御される。
【0044】
この信号増幅率可変回路420で増幅された交流信号は、トランス43の一次巻線43aに供給される。このトランス43の一次巻線43aの巻線数n1と、二次巻線43bの巻線数n2との比は、例えば、n1:n2=1:10のように二次巻線43b側の巻線数が大きく(n1<n2)設定されている。したがって、トランス43の二次巻線43b側には、信号増幅率可変回路420の出力信号の振幅が巻線数比に応じて逓倍されて、大振幅とされた交流信号(電圧信号)が得られる。
【0045】
トランス43の二次巻線43bの一端は、シールド部材8によりシールドされた中心導体7の棒状導体71に接続されている接続端子423に接続され、トランス43の二次巻線43bの他端は、プリント配線基板41のアース導体に接続される。したがって、信号処理部40bにより大振幅の交流信号電圧とされた出力信号は、接続端子423を通じて中心導体7に供給される。
【0046】
位置指示器1が位置検出センサ2上にあるときには、位置指示器1の中心導体7と位置検出センサ2とは静電容量を介して結合されているため、位置指示器1の中心導体7を介して位置指示器1から位置検出センサ2に交流信号が帰還される。
【0047】
次に、この例の静電容量式の位置検出センサ2について説明する。この例の静電容量式の位置検出センサ2は、センサ電極が入力電極と出力電極から構成されており、位置指示器1が接触したタッチポイントの結合容量の変化を検出する相互容量方式の位置検出センサの構成である。
【0048】
すなわち、図4に示すように、この例の位置検出センサ2は、センサ部20と、送信部21と、受信部22とからなる。センサ部20は、指示入力面の横方向(X軸方向)に延伸する直線状の複数個、この例では64個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64と、この送信導体23Y1〜23Y2と直交する、指示入力面の縦方向(Y軸方向)に延伸する複数個、この例では64個の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64とを備える。複数個の送信導体23Y1〜23Y64はY軸方向に等間隔に配置され、送信部21に接続されている。また、複数個の受信導体24X1〜24X64はX軸方向に等間隔に配置され、受信部22に接続されている。
【0049】
なお、この明細書中で送信導体の説明において、64本の送信導体23Y1〜23Y64のいずれであるかを区別する必要のないときには、送信導体23Yと称することにする。同様に、受信導体の説明において、64本の受信導体24X1〜24X64のいずれであるかを区別する必要のないときには、受信導体24Xと称することにする。
【0050】
複数個の送信導体23Yは、例えば基板の下側の面に形成される。複数個の受信導体24Xは、基板の下側の面に形成される。したがって、複数個の送信導体23Yと複数個の受信導体24Xとは、所定の厚みに対応した所定の間隔を隔てて配置され、互いに直交した配置関係を備えて、複数個の交点(クロスポイント)を形成する。そして、各クロスポイントでは、送信導体23Yと受信導体24Xとは、所定の静電容量を介して結合していると見なせる。
【0051】
送信部21は、送信導体23Yに所定の交流信号を供給する。この場合、送信部21は、同一の交流信号を複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64を順次に1本ずつ切り替えながら供給してもよいし、互いに異なる複数個の交流信号を複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64に同時に供給するようにしても良い。また、複数個の送信導体23Y1,23Y2,・・・,23Y64を複数個のグループに分け、グループ毎に異なる交流信号を用いるようにしても良い。
【0052】
受信部22は、受信導体24X1,24X2,・・・,24X64のそれぞれに、送信導体23Yに供給された交流信号が前記所定の静電容量を介して伝達される信号成分を検出する。送信導体23Yと受信導体24Xとの間の結合静電容量が全クロスポイントにおいて等しいとすれば、位置指示器1が、センサ部20上に存在していないときには、センサ部20の全ての受信導体24X1,24X2,・・・,24X64からは所定レベルの受信信号が受信部22において検出される。
【0053】
これに対して、位置指示器1がセンサ部20に接触すると、その接触位置のクロスポイントを構成する送信導体23Yと受信導体24X、および当該位置指示器1とは静電容量を通じて結合する。すなわち、当該位置指示器1によって静電容量が変化することになり、位置指示器1が存在するクロスポイントの受信導体24Xから得られる受信信号レベルが他のクロスポイントとは変化することとなる。
【0054】
受信部22は、複数の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64のうち、その受信信号のレベルの変化があった受信導体24Xを検知することで、位置指示器1の位置を検出する。そして、図示を省略した位置検出センサ2の制御部は、送信部21から交流信号を供給している送信導体23Yと、受信部22で受信信号レベルの変化のあった受信導体24Xとを検出することにより、位置指示器1が接触しているクロスポイントを検出する。
【0055】
位置指示器1ではなく、指がセンサ部20上に接近または接触したときにも、位置検出センサ2は、同様の原理により、その指が接近または接触したクロスポイントを検出する。その場合、送信導体23Yに供給された交流信号の一部が指を通じ、また、使用者の人体を通じてグラウンドに流れる。そのため、指が存在するクロスポイントを構成する受信導体24Xの受信信号レベルが変化する。受信部22は、この受信信号レベルの変化を検出することにより、指が存在するロスポイントを構成する受信導体24Xを検出する。
【0056】
スタイラス形状の位置指示器の場合にも、指の位置検出の原理と同様にして、位置検出センサは、センサ部20における指示位置の検出を行うことができる。しかし、冒頭でも述べたように、スタイラス形状の位置指示器の場合には、指の場合のように位置検出センサとの間の接触面積が大きくないため、結合容量が小さく、位置検出センサは検出感度が低い。
【0057】
これに対して、この実施形態の位置指示器1の場合には、以下に説明するようにして、位置検出センサ2との親和性が高く、しかも汎用性が高く、更には入力信号と出力信号との間で所定の波形相関性が確保されて、高感度に、センサ部20上における位置検出が可能となる。
【0058】
すなわち、図1に示すように、位置検出センサ2のセンサ部20上に、この実施形態の位置指示器1を接近または接触させた場合、周辺電極6とセンサ部20とは、静電容量C1を介して結合する。そして、送信導体23Yに供給された交流信号は、この静電容量C1を介し、また、周辺電極6を介して、電流信号として接続端子413を通じて信号処理回路4に入力される。
【0059】
信号処理回路4に入力された交流信号(電流信号)は、信号処理部40bのセンスアンプ410で位相反転された後、信号増幅率可変回路420において増幅されるとともに、トランス43により昇圧(逓倍)されて信号増強されて、電圧信号として接続端子423を通じて中心電極7に供給される。すなわち、周辺導体6を介してセンサ部20から信号処理回路4に入力された交流信号は、信号処理部40bにおいて、逆相とされ、また大振幅の信号とされて中心電極7を通じて、センサ部20に帰還される。
【0060】
この場合に、位置指示器1の中心電極7から位置検出センサ2のセンサ部20に帰還される交流信号は、送信導体23Yに供給される交流信号とは逆相の増強された信号であるので、位置指示器1は、受信導体24Xの受信信号における交流信号の変化を、より増大させるように機能する。このため、位置検出センサ2は、位置指示器1の接触位置を高感度で検出することが可能となる。なお、位置指示器1のグラウンドが人体と接続されることで検出動作が一層安定化される。すなわち、この実施形態では、位置指示器1の筐体3は、信号処理回路4が形成されているプリント配線基板のアース導体に接続されている導電体部32で覆われている。このため、位置検出センサ2において送信導体23Yに供給された交流信号は、位置指示器1を通じ、使用者の人体を通じてグラウンドに流れることで、信号検出動作の一層の安定化を図ることができる。
【0061】
また、位置検出センサ2のセンサ部20の送信導体23Yでの電圧をVとし、この実施形態の位置指示器1の中心導体7の電圧をeとし、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量をC2(図1参照)とすると、
e≦C1/C2・V
なる関係がある。このため、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量C2は、できるだけ小さい方が、中心電極7の電位eを高くするのに有利である。
【0062】
このために、この実施形態の位置指示器1においては、周辺電極6と中心電極7との間にはシールド部材8を介在させることで、両者の結合をできるだけ小さくするようにしている。したがって、この実施形態の位置指示器1では、シールド部材8を介在させることによって、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量C2は小さくなり、電圧eを大きくすることができ、効率よく感度を高めることができる。
【0063】
また、この実施形態の位置指示器1においては、使用者がスライド操作部46を手動で調整して、可変抵抗器422の抵抗値を可変させ、信号増幅率可変回路420の増幅率を可変設定することにより、位置検出センサ2における位置指示器1の指示位置の検出感度を調整することができる。
【0064】
すなわち、位置指示器1の中心導体7を位置検出センサ2のセンサ部20の表面に軽くタッチさせる状態では、中心導体7の先端の弾性保護部材72とセンサ部20の接触面積が小さくなるが、スライド操作部46を手動調整して、信号増幅率可変回路420の増幅率を大きくすることにより、当該軽いタッチであっても、位置検出センサ2は、位置指示器1を高感度で検出することができる。
【0065】
また、逆に、位置指示器1の中心導体7を位置検出センサ2のセンサ部20の表面に強くタッチさせる状態では、中心導体7の先端の弾性保護導体72とセンサ部20の接触面積が大きくなるが、スライド操作部46を手動調整して、信号増幅率可変回路420の増幅率を小さくすることにより、当該強いタッチにおいても、位置検出センサ2は、位置指示器1が適切な程度でタッチされたものとして、安定して検出することができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、信号増強処理回路の信号増幅率可変回路420は、可変抵抗器422により増幅率を連続的に可変することができるように構成したが、スライドスイッチにより、抵抗値の異なる複数個の抵抗器を切り替えることにより、段階的に増幅率を可変にするように構成してもよい。
【0067】
上述した第1の実施形態の位置指示器1は、周辺電極6を第1の電極として、位置検出センサ2からの交流信号を受信し、中心電極7を第2の電極として、信号増強した出力交流信号を位置検出センサ2に帰還させる構成である。しかし、位置検出センサ2からの交流信号を受信するための第1の電極を中心電極7とし、信号増強した交流信号を位置検出センサ2に帰還させるための第2の電極を周辺電極6としても良い。
【0068】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態の位置指示器1は、第1の電極が周辺電極6であり、第2の電極が中心電極7とした構成であったが、この構成の場合、位置検出センサ2の構成によっては、以下のような不具合が生じる場合があることが判明した。
【0069】
すなわち、第1の実施形態で用いた位置検出センサ2は、送信導体23Yおよび受信導体24Xがいずれも線状の導体であった。これに対して、図5の例の位置検出センサ2Aのセンサ部20Aは、線状ではなく幅広の送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64を備える。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、センサ部20Aの受信導体は、第1の実施形態と同じように線状の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64である。また、この例のセンサ部20Aにおいては、複数個の送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64が送信部21に接続され、複数個の受信導体24X1,24X2,・・・,24X64が受信部22に接続される。
【0070】
このような構成の位置検出センサ2Aにおいて、位置指示器1を、図5において点線矢印で示す斜め方向に移動したとき、交流信号を位置検出センサ2Aに帰還させるための第2の電極が中心電極7であるため、この中心電極7の位置が、隣接する2本の受信導体24Xiおよび24Xi+1間にあるときに、中心電極7がより近い方の受信導体24Xiまたは24Xi+1に対して、より多くの交流信号を帰還させるように働く。
【0071】
このため、斜め方向の直線状に位置指示器1を移動させたとしても、位置検出センサ2Aでは、位置指示器1の移動軌跡を、蛇行したような軌跡として、位置検出してしまうという不具合がある。
【0072】
この不具合を改善するためには、位置指示器は、位置検出センサ2Aからの交流信号を受信するための第1の電極を中心電極7とし、信号増強した交流信号を位置検出センサ2Aに帰還させるための第2の電極を周辺電極6とすれば良い。
【0073】
すなわち、送信導体230Y1,230Y2,・・・,230Y64が幅広の導体であるため、中心電極7を、交流信号を受信するための第1の電極としても交流信号は均一に受信できる。一方、周辺電極6を、信号増強した交流信号を位置検出センサ2に帰還させるための第2の電極とすると、周辺電極6は中心電極7に比べて位置検出センサ2と電気的に係合する領域が広くなるために、位置指示器が、隣接する2本の受信導体(iは1以上の整数)24Xi(i=1,2,・・・,63である。以下同じ)および24Xi+1間にあるときにも、当該周辺電極6とそれら隣接する2本の受信導体24Xiおよび24Xi+1とはほぼ同様の静電結合関係とすることができる。このため、図5の点線矢印のような斜め方向に位置指示器を移動したときにも、その移動軌跡の蛇行が防止され、直線状の軌跡として位置検出センサ2Aが検知することができる。
【0074】
以上のことを考慮して、この第2の実施形態では、位置指示器1の周辺電極6と中心電極7とを、第1の電極と第2の電極とに、切り替え可能な構成とする。図6は、この第2の実施形態の位置指示器1Aの信号処理回路4Aの信号処理部40bAの構成を示す図である。この図6において、図2に示した第1の実施形態の信号処理回路4の信号処理部40bと同一部分については同一の参照符号を付してある。
【0075】
すなわち、信号処理部40bAにおいては、周辺電極6が接続される接続端子413は、スイッチ481の一方の入力端子481aに接続されるとともに、スイッチ482の他方の入力端子482bに接続される。また、中心電極7が接続される接続端子423は、スイッチ481の他方の入力端子481bに接続されるとともに、スイッチ482の一方の入力端子482cに接続される。
【0076】
そして、スイッチ481の可動接点481cはオペアンプ411の反転入力端子に接続される。また、スイッチ482の可動接点482cはトランス43の2次巻線43bの一端に接続される。その他は、前述した信号処理部40bと全く同様に構成される。
【0077】
また、図6の接続端子413の近傍に示すように、第2の実施形態の位置指示器1Aの筐体3の一部には、互いが連動して動作するスイッチ481および482を手動で切り替えるための切り替え操作子48が、外部に露呈して設けられている。
【0078】
使用者が切り替え操作子48を、矢印方向にスライド移動させて、a側に位置させたときには、スイッチ481および482は、連動して一方の入力端子481a,482a側に切り替えられる。すると、周辺電極6が接続される接続端子413がオペアンプ411の反転入力端子に接続されるとともに、中心電極7が接続される接続端子423がトランス43の二次巻線43bの一端に接続され、位置指示器1Aは、第1の実施形態と全く同様の動作をする。
【0079】
一方、使用者が、切り替え操作子48をb側に位置させたときには、スイッチ481および482は、連動して他方の入力端子481b,482b側に切り替えられる。すると、中心電極7が接続される接続端子423がオペアンプ411の反転入力端子に接続されるとともに、周辺電極6が接続される接続端子413がトランス43の二次巻線43bの一端に接続される。
【0080】
したがって、中心電極7を介して位置検出センサ2Aからの交流信号の一部が位置指示器1Aの信号処理回路4Aに入力される。そして、信号処理部40bAで逆相にされ、増強された交流信号が周辺電極6を介して位置検出センサ2Aに帰還される。これにより、第1の実施形態と同様にして、位置検出センサ2Aでは、位置指示器1Aの指示位置を高感度で検出することができる。
【0081】
以上の例に限らず、位置検出センサの送信導体および受信導体については、受信導体側を幅広とするもの、送信導体および受信導体の両方ともに幅広とするものも想定される。この第2の実施形態によれば、使用者は、それらの位置検出センサの構成の違いに応じて、スイッチ操作子48により、周辺電極6と中心電極7とを、第1の電極とするか、第2の電極とするかを切り替えることができる。したがって、この第2の実施形態による位置指示器を用いれば、送信導体、受信導体の構成の違いがある種々の位置検出センサにおいても、その構成の違いに応じた不具合を回避して、位置検出センサへの依存度が軽減された、汎用性が高く、さらに高い感度で位置指示器を検出できる。
【0082】
[第3の実施形態]
以上の第1および第2の実施形態では、信号処理回路4および4Aの信号処理部40bおよび40bAは、センサアンプ410の後段に信号増幅率可変回路420を設けることにより、信号増強処理回路を構成するようにした。しかし、信号増強処理回路は、他の構成とすることもできる。
【0083】
第3の実施形態は、信号増強処理回路が出力電圧を増強(エンハンス)させる回路の場合の第1の例である。図7は、この第3の実施形態の位置指示器の場合における信号処理回路4Bの信号処理部40bBの構成例を示す回路図である。
【0084】
図7に示すように、信号処理部40bBは、センスアンプ410とエンハンス回路430とからなる。そして、エンハンス回路430は、トランス43と反転増幅回路431とからなり、センスアンプ410の出力がそのままの極性でトランス43の1次巻線43aの一端側に供給されるとともに、センスアンプ410の出力が反転増幅回路431により極性反転されてトランス43の1次巻線43aの一端側に供給される。
【0085】
すなわち、トランス43の1次巻線43aの一端および他端に、センスアンプ410の出力信号が、互いに逆相で供給されるため、トランス43の2次巻線43bには、センスアンプ410の出力信号の振幅が増幅された信号が得られる。なお、オペアンプ411と反転増幅回路431のそれぞれの非反転入力端子には基準電圧Vrefが供給される。
【0086】
こうして、この第3の実施形態の信号処理部40bBによれば、トランス43を用いたエンハンス回路430により、より低い電源電圧であっても、その入力信号を増強した信号を出力することができる。
【0087】
なお、図7においては、参考のため、処理すべき信号が矩形波信号である場合の位相および振幅関係を示したが、この信号処理部40bBで処理する対象となる信号の波形は、矩形波に限られるものではなく、交流信号であれば、正弦波などのような波形を有する信号であっても良い。
【0088】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、信号増幅率可変回路420を用いずに信号増強処理回路を実現する場合の第2の例である。図8は、この第4の実施形態の位置指示器の場合における信号処理回路4Cの信号処理部40bCの構成例を示す回路図である。
【0089】
図8に示すように、信号処理部40bCは、センスアンプ410と波形変換回路440とからなる。図8の例では、波形変換回路440は、比較回路441で構成されている。この第4の実施形態においては、センスアンプ410は、増幅率が大きいものとされ、例えば出力電圧値が飽和するような増幅率であっても良い。
【0090】
比較回路441は、センスアンプ410により大振幅に増幅された交流信号と、基準電圧Vrefとを比較して、当該基準電圧Vref以上の信号レベル区間ではハイレベル、それ以外の信号レベル区間ではローレベルとなるような、矩形波信号を生成する波形変換回路である。
【0091】
そして、この比較回路441からの矩形波信号がトランス43により、さらに逓倍(昇圧)されて、信号処理部40bCの出力信号として出力される。
【0092】
こうして、この第4の実施形態の信号処理部40bCによれば、入力信号を矩形波信号に変換することで、信号増強した出力を提供することができる。
【0093】
なお、入力信号を矩形波信号にする変換する方法は、図8に示した方法に限られるものではないことは言うまでもない。
【0094】
[第5の実施形態]
以上の第1および第2の実施形態の信号処理部40bおよび40bAでは、センサアンプ410の後段の信号増幅率可変回路420は、使用者が手動で増幅率を可変することができるように構成した。しかし、信号増幅率可変回路420は、増幅率を自動制御するように構成することもできる。第5の実施形態は、その場合の実施形態である。図9に、第5の実施形態の場合における信号処理部40bDの構成例を示す回路図を示す。
【0095】
図9に示すように、信号処理部40bDは、センスアンプ410と自動ゲイン調整回路450とからなる。自動ゲイン調整回路450は、この例では電圧制御型のゲイン制御アンプ451と、出力レベル検出回路452とからなる。
【0096】
センスアンプ410の出力信号は、ゲイン制御アンプ451に供給される。そして、出力レベル検出回路452は、このゲイン制御アンプ451の出力信号レベルを検出して、ゲイン制御アンプ451のゲイン調整電圧を生成して、ゲイン制御アンプ451の制御端子に供給する。この出力レベル検出回路452からのゲイン調整電圧により、ゲイン制御アンプ451は、その出力信号レベルが常に一定となるようにゲイン調整される。そして、ゲイン制御アンプ451の出力信号は、トランス43により昇圧されて、信号処理部40bDの出力信号として出力される。
【0097】
位置指示器1を位置検出センサ2に対して接触させて位置を指示する際、使用者は、位置指示器1を位置検出センサ2に強く接触させる、軽く接触させるなど、好みなどに応じた指示操作をするが、この第5の実施形態によれば、使用者の指示操作の仕方の違いに関係なく、常に、最適の感度で位置指示器1が位置検出センサ2で検出されるようにすることができる。
【0098】
[第6の実施形態]
上述の第1〜第5の実施形態では、センスアンプ410では、位置指示器1と位置検出センサ2との間に生じる結合容量を通じた電流が入力信号であるため、この種の回路として一般的であるオペアンプ411の入出力端間にコンデンサ412を接続した構成を用いるようにした。
【0099】
しかしながら、この構成の場合、センスアンプ410の出力信号としては、センスアンプ410の入力信号が鈍った波形となるとともに、位相遅延が発生してしまう。このため、位置検出センサ2の受信部22において、受信導体に得られる受信信号から送信導体に供給された交流信号を同期検波や相関演算により検出して、受信信号の変化を検出する場合に、精度良く当該変化を検出することが困難になるおそれがあった。
【0100】
第6の実施形態は、この問題を回避することができるように信号処理回路を構成した例である。図10(A)は、この第6の実施形態における信号処理回路4Eの信号処理部40bEの構成例を示す回路図である。
【0101】
この第6の実施形態における信号処理回路4Eの信号処理部40bEは、第1の実施形態の信号処理部40bと同様に、センスアンプ460と、信号増強処理回路としての信号増幅率可変回路420とからなる。しかし、この第6の実施形態においては、センスアンプ460は、オペアンプ461と、このオペアンプ461の反転入力端子と出力端子との間に接続される抵抗462とからなる。すなわち、第1の実施形態におけるオペアンプ411の反転入力端子と出力端子との間に接続されるコンデンサ412に代えて、抵抗462が接続された回路構成に等しい。その他は、第1の実施形態の信号処理部40bと同様である。
【0102】
この第6の実施形態の信号処理部40bEの構成によれば、位置指示器1と位置検出センサ2との間の結合容量と、センスアンプ460のオペアンプ461の入出力端間に接続された抵抗462とにより、位置検出センサ2から位置指示器1に入力される交流信号は、センスアンプ461において高域強調(エンファシス)された信号となる。例えば、位置検出センサ2の送信部21から供給される交流信号が図10(B)に示すような矩形波信号であったときには、センスアンプ461の出力信号の波形は、図10(C)に示すように、立ち上がりおよび立ち下がりが強調された微分波形となる。
【0103】
しかも、このとき、コンデンサ412に代えて、抵抗462がオペアンプ461の入出力端間に接続されているので、図10(B)および図10(C)に示すように、センスアンプ460の出力信号は、その入力信号に対して位相遅れが生じていない位相補償された信号となっており、抵抗462を備えたオペアンプ461を備えたセンスアンプ460は位相補償回路あるいは位相制御回路としての機能もまた果たす。
【0104】
このセンスアンプ460の出力信号は、第1の実施形態の場合と同様にして、信号増幅率可変回路420に供給されて、さらに信号増強される。そして、この増強された交流信号は、位置指示器1から位置検出センサ2に帰還される。
【0105】
以上の説明から判るように、この第6の実施形態におけるセンスアンプは、高域強調回路を構成するとともに、位相遅延の生じない位相補償回路を構成するものとなる。したがって、この第6の実施形態によれば、位置検出センサ2の受信部22において、受信導体に得られる受信信号から送信導体に供給された交流信号を同期検波や相関演算により検出して、受信信号の変化を検出する場合においても、精度良く当該変化を検出することができる。
【0106】
なお、図10では、位置検出センサ2で用いられる交流信号が矩形波信号の場合について説明したが、交流信号としては、その波形は問わず、正弦波信号など、どのような波形の交流信号であっても良い。
【0107】
また、図10の例は、第6の実施形態を第1の実施形態の信号処理部40bのセンスアンプに適用した場合であるが、第6の実施形態は、第2〜第5の実施形態の信号処理部のセンスアンプにも適用することができる。
【0108】
[周辺電極6と中心電極7との間のシールドについての他の例]
第1の実施形態において説明したように、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量が小さい方が、位置指示器1の感度向上のためには良好となる。そのため、第1の実施形態では、中心電極7をシールド部材8により取り囲むことにより、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量をできるだけ小さくなるようにした。
【0109】
そして、第1の実施形態においては図2に示したように、シールド部材8は、周辺電極6を貫通して、中心電極7を覆うように構成した。つまり、シールド部材8は、周辺電極6を貫通する中心電極7側の部分にも施すようにした。しかし、シールド部材8は、少なくとも、周辺部材6と中心電極7とが近接する部分に対してシールド効果を発揮させるようにすれば良いので、図11(A)に示すように、シールド部材8は、周辺電極6の中心電極7側の端部あるいはその近傍までの位置にて、中心電極7を覆うように構成しても良い。
【0110】
また、よりシールド効果を高めて、周辺電極6と中心電極7との間の静電容量を、さらに小さくするために、周辺電極6を貫通させたシールド部材8の先端部に、図11(B)および図11(C)に示すように、ツバ部8aおよび8bを形成するようにしても良い。そして、ツバ部8aを、図11(B)に示すように、周辺電極6の先端部を覆うように折り返したり、ツバ部8bを、図11(C)に示すように、中心電極7を囲むように折り返したりすることにより、さらに、両者の間のシールド効果を向上させることができる。
【0111】
また、図11(B)および(C)の例の場合には、ツバ部8aおよび8bと、周辺電極6および絶縁材料からなるテーパー部33との間には、空隙部を設けて空気層9を介在させるようにしている。このため、周辺電極6と中心電極7との間のシールド効果を、より向上させることができる。なお、空気層9の代わりに、所定の誘電体を介在させるようにしても良い。例えば、合成樹脂からなるテーパー部33をツバ部8a,8bまで延長するようにしても良い。
【0112】
[その他の実施形態または変形例]
以上の実施形態では、交流信号を入力する送信導体と、交流信号を受信する受信導体とを分離することで、タッチポイントの結合容量部分(XY座標)のみを検出する相互容量方式の静電容量式検出センサの場合について説明したが、この発明は、交流信号の入出力を、同一の導体で行う自己容量方式の静電容量式検出センサについても、同様に適用可能である。
【0113】
また、位置指示器の電源は、バッテリーを用いる場合を説明したが、バッテリーを備えずに、例えば静電容量式検出センサ側からワイヤレス方式にて電力の供給を受けるように構成しても良い。例えば、特開2007−164356号公報に記載されているように、位置指示器に、静電容量式検出センサとの間で電磁結合を生じる共振回路と電気二重層コンデンサなどのコンデンサを設け、コンデンサに充電された電圧から駆動電圧を生成して使用する構成とすることもできる。
【0114】
また、上述の実施形態では、信号増強処理回路の出力側には信号レベルを増大させるためのトランスを設けるようにしたが、トランスの代わりに、半導体回路からなる信号増強回路を設けるようにしても良いことは言うまでもない。
【0115】
なお、上述の実施形態では、位置指示器の筐体内の信号処理回路が形成されるプリント配線基板のアース導体に、位置指示器の筐体3の外周の導電体部32が直接的(直流的)に接続されているが、内部回路のアース導体と導電体部32との間は、コンデンサを介して交流的に結合される構成であっても良い。
【0116】
また、上述の実施形態では、導電体部32は、周辺導体との絶縁部を除き、位置指示器の筐体3の外周のほぼ全体を覆うように構成したが、使用者が位置指示器を操作する際に把持して人体を接触させる筐体3の所定部分にのみ、内部回路のアース導体と接続された金属板などの導電性部材を配置するようにしても良い。
【0117】
また、筐体3が例えばプラスチックで構成される場合に、導電性を有するプラスチックを使用して、それを直流的にあるいは交流的に内部回路のアース導体に接続する構成とすることにより、導電体部32を省略することもできる。
【0118】
なお、この発明の位置指示器が使用される位置検出センサは、タブレットに限らず、パッド型端末などの種々の携帯端末、その他の据え置き型装置の位置検出装置に利用される種々のものが対象となる。
【符号の説明】
【0119】
1…位置指示器、2…位置検出センサ、3…位置指示器1の筐体、4…信号処理回路、5…バッテリー、6…周辺電極、7…中心電極、8…シールド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサからの交流信号を受信するための第1の電極と、
前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、
前記信号増強処理回路から出力された信号が供給される、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
を備えることで、前記第1の電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に前記信号増強された信号を前記第2の電極を介して前記位置検出センサに送出するようにした
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルよりも大きな信号レベルの信号を生成する
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項3】
前記信号増強処理回路で生成される信号は、その信号波形の立ち上がり領域及び立ち下がり領域の少なくとも一方の領域について信号レベルが増強されている
ことを特徴とする請求項2の位置指示器。
【請求項4】
前記信号増強処理回路で生成される信号は、前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の位相制御が行われている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項5】
前記所定の位相制御とは、前記第1の電極を介して受信された交流信号の位相の補償である
ことを特徴とする請求項4の位置指示器。
【請求項6】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号波形を波形変換する
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項7】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号波形を矩形波形に変換する
ことを特徴とする請求項6の位置指示器。
【請求項8】
前記信号増強処理回路には、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルを制御するための信号増幅率可変回路を備えている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項9】
前記信号増幅率可変回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルの変動に対して一定の信号レベルの信号を出力するための自動ゲイン調整回路である
ことを特徴とする請求項8の位置指示器。
【請求項10】
前記信号増幅率可変回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルを所定の増幅率で増強するための手動による増幅率可変回路である
ことを特徴とする請求項9の位置指示器。
【請求項11】
前記第1の電極および前記第2の電極は前記位置指示器の同一の端部に配置されており、前記第1の電極と前記第2の電極との間には互いの電気的干渉を防止するためのシールド部材が配置されている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項12】
前記シールド部材は、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方の電極を取り囲むと共に電気的に接地されている
ことを特徴とする請求項11の位置指示器。
【請求項13】
前記位置指示器はスタイラス形状を有すると共に前記第1の電極を取り囲んで前記第2の電極が配置されており、前記シールド部材は、前記第1の電極を取り囲むと共に前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置されている
ことを特徴とする請求項11の位置指示器。
【請求項14】
前記シールド部材の一端部は、前記位置指示器の長手方向に前記第2の電極から突出して配置されていると共に前記一端部にツバ部が形成されている
ことを特徴とする請求項13の位置指示器。
【請求項15】
前記第1の電極と前記第2の電極とを、信号受信用電極と信号送信用電極として、互いに入れ替えるための接続切替回路を備える
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項1】
静電容量の変化を検出することで位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサからの交流信号を受信するための第1の電極と、
前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、
前記信号増強処理回路から出力された信号が供給される、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
を備えることで、前記第1の電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に前記信号増強された信号を前記第2の電極を介して前記位置検出センサに送出するようにした
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルよりも大きな信号レベルの信号を生成する
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項3】
前記信号増強処理回路で生成される信号は、その信号波形の立ち上がり領域及び立ち下がり領域の少なくとも一方の領域について信号レベルが増強されている
ことを特徴とする請求項2の位置指示器。
【請求項4】
前記信号増強処理回路で生成される信号は、前記第1の電極を介して受信された交流信号に対して所定の位相制御が行われている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項5】
前記所定の位相制御とは、前記第1の電極を介して受信された交流信号の位相の補償である
ことを特徴とする請求項4の位置指示器。
【請求項6】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号波形を波形変換する
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項7】
前記信号増強処理回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号波形を矩形波形に変換する
ことを特徴とする請求項6の位置指示器。
【請求項8】
前記信号増強処理回路には、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルを制御するための信号増幅率可変回路を備えている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項9】
前記信号増幅率可変回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルの変動に対して一定の信号レベルの信号を出力するための自動ゲイン調整回路である
ことを特徴とする請求項8の位置指示器。
【請求項10】
前記信号増幅率可変回路は、前記第1の電極を介して受信された交流信号の信号レベルを所定の増幅率で増強するための手動による増幅率可変回路である
ことを特徴とする請求項9の位置指示器。
【請求項11】
前記第1の電極および前記第2の電極は前記位置指示器の同一の端部に配置されており、前記第1の電極と前記第2の電極との間には互いの電気的干渉を防止するためのシールド部材が配置されている
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【請求項12】
前記シールド部材は、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方の電極を取り囲むと共に電気的に接地されている
ことを特徴とする請求項11の位置指示器。
【請求項13】
前記位置指示器はスタイラス形状を有すると共に前記第1の電極を取り囲んで前記第2の電極が配置されており、前記シールド部材は、前記第1の電極を取り囲むと共に前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置されている
ことを特徴とする請求項11の位置指示器。
【請求項14】
前記シールド部材の一端部は、前記位置指示器の長手方向に前記第2の電極から突出して配置されていると共に前記一端部にツバ部が形成されている
ことを特徴とする請求項13の位置指示器。
【請求項15】
前記第1の電極と前記第2の電極とを、信号受信用電極と信号送信用電極として、互いに入れ替えるための接続切替回路を備える
ことを特徴とする請求項1の位置指示器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−128556(P2012−128556A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278002(P2010−278002)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【特許番号】特許第4683505号(P4683505)
【特許公報発行日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【特許番号】特許第4683505号(P4683505)
【特許公報発行日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
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