説明

位置決め機構、及び画像形成装置

【課題】部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を抑制する。
【解決手段】可動部材7の取付部36,37及び固定部材11の支持部16,17のいずれか一方の部位に設けられ、他方の部位との対向面から略垂直に突出する第1及び第2ポスト22,23と、第1及び第2ポストに対向して他方の部位に設けられ、対向する第1及び第2ポストがそれぞれ遊嵌する第1及び第2遊嵌穴24,25と、他方の部位に設けられ、対向面に対して平行でかつ第1及び第2遊嵌穴の配置方向に対して略垂直な方向を摺動方向として摺動する摺動部材26と、他方の部位に設けられ、摺動部材を摺動方向に付勢する付勢部材27とを有し、摺動部材は、摺動方向に対して内側と外側とに分岐した2つの傾斜面26a,26bを先端に備え、内側の傾斜面及び外側の傾斜面のいずれか一方又は双方で、第2遊嵌穴に遊嵌されている第2ポストの外周に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材に対する可動部材の位置を決める位置決め機構、及び当該位置決め機構を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定部材に対する可動部材の位置を決める位置決め機構として、ポストと孔とを用いる構成が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された位置決め機構(位置決め手段)は、可動部材を露光ユニットとし、固定部材を画像形成装置本体のベース部材とし、露光ユニットのポスト(位置決めピン)と、ベース部材の孔(位置決め穴)とにより構成されている。また、特許文献1に開示された位置決め機構は、露光ユニットの長手方向両端部側面に嵌合用穴を設けるとともに、ベース部材の長手方向両端部側面にこの嵌合用穴に嵌合する弾性変形可能な爪部材を設けている。
【0003】
特許文献1に開示された位置決め機構は、露光ユニットの位置決めピンがベース部材の位置決め穴に嵌合するとともに、ベース部材の爪部材が露光ユニットの嵌合用穴に嵌合することによって、露光ユニットを位置決めし、露光ユニットをその位置に固定する。
これにより、特許文献1に開示された位置決め機構は、露光ユニットの交換時に、潜像担持体に対する新しい露光ユニットの位置決め作業を簡易化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−177824号公報(段落10〜段落13、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された位置決め機構は、可動部材の交換時に、固定部材及び可動部材に寸法のバラツキがあると、取り付けガタが発生し、その取り付けガタの発生を抑制することが困難である、という課題があった。
特に、特許文献1に開示された位置決め機構は、取り付けガタの発生を抑制するために、固定部材及び可動部材の寸法精度を向上させると、コストを上昇させるため、コストを上昇させることなく、取り付けガタの発生を抑制することが困難であった。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、固定部材及び可動部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を抑制する位置決め機構、及び当該位置決め機構を用いる画像形成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、第1発明は、固定部材に対する可動部材の位置を決める位置決め機構であって、前記固定部材に設けられ、前記可動部材を支持する支持部と、前記可動部材に設けられ、前記支持部に取り付けられる取付部と、前記支持部及び前記取付部のいずれか一方の部位に設けられ、当該一方の部位の他方の部位との対向面から略垂直に突出する第1ポストと、前記一方の部位に設けられ、前記一方の部位の前記他方の部位との対向面から略垂直に突出する第2ポストと、前記第1ポストに対向して前記他方の部位に設けられ、前記第1ポストが遊嵌する第1遊嵌穴と、前記第2ポストに対向して前記他方の部位に設けられ、前記第2ポストが遊嵌する第2遊嵌穴と、前記他方の部位に設けられ、前記対向面に対して平行でかつ前記第1遊嵌穴及び前記第2遊嵌穴の配置方向に対して略垂直な方向を、摺動方向として、摺動する摺動部材と、前記他方の部位に設けられ、前記摺動部材を前記摺動方向に付勢する付勢部材とを有し、前記摺動部材は、前記摺動方向に対して内側と外側とに分岐した2つの傾斜面を先端に備え、内側の当該傾斜面及び外側の当該傾斜面のいずれか一方又は双方で、前記第2遊嵌穴に遊嵌される前記第2ポストの外周に当接する構成とする。
【0008】
この位置決め機構は、摺動部材の先端が内側の傾斜面及び外側の傾斜面のいずれか一方又は双方で可動部材に設けられた第2ポストの外周に当接し、付勢部材がその摺動部材を第1及び第2遊嵌穴の配置方向に対して略垂直に付勢する。このとき、付勢部材の付勢力が、摺動部材の傾斜面によって可動部材を横方向に移動させるように作用する。そのため、可動部材は、横方向に移動する。
【0009】
その結果、第2ポスト、又は、第1ポスト及び第2ポストが、摺動部材の2つの傾斜面、第1遊嵌穴の内径面、及び、第2遊嵌穴の内径面のいずれかと、3点で接触した状態となる。
【0010】
具体的には、第2ポスト、又は、第1ポスト及び第2ポストは、以下の(1)〜(3)の状態の中のいずれか1つの状態となる。
(1)第2ポストの外周が、摺動部材の内側の傾斜面、摺動部材の外側の傾斜面、及び、第2遊嵌穴の内径面の摺動部材の先端に対向する対向部分(以下、「突き当て面」と称する)と接触した状態。
(2)第1ポストの外周が、第1遊嵌穴の内径面の外側部分と接触し、第2ポストの外周が、摺動部材の外側の傾斜面、及び、突き当て面と接触した状態。
(3)第1ポストの外周が、第1遊嵌穴の内径面の内側部分と接触し、第2ポストの外周が、摺動部材の内側の傾斜面、及び、突き当て面と接触した状態。
【0011】
可動部材は、第2ポスト、又は、第1ポスト及び第2ポストが、摺動部材の2つの傾斜面、第1遊嵌穴の内径面、及び、第2遊嵌穴の内径面のいずれかと、3点で接触した状態となり、その状態で、付勢部材からの付勢力によって、固定される。
そのため、この位置決め機構は、固定部材及び可動部材に寸法のバラツキがあっても、そのバラツキに影響されずに、可動部材を位置決めし、可動部材をその位置に固定することができる。したがって、この位置決め機構は、固定部材及び可動部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を抑制することができる。
【0012】
なお、この位置決め機構では、摺動部材の先端が第2ポストに当接する構成となっている。そのため、摺動部材の「内側」の傾斜面は、第1ポストに近い側の傾斜面となり、摺動部材の「外側」の傾斜面は、第1ポストから遠い側の傾斜面となる。また、第1遊嵌穴の内径面の「外側部分」は、第2遊嵌穴から遠い側の部分となり、第1遊嵌穴の内径面の「内側部分」は、第2遊嵌穴に近い側の部分となる。
【0013】
また、第2発明は、画像形成装置であって、第1発明の位置決め機構と、画像を形成する画像形成機構とを有する構成とする。
この画像形成装置は、第1発明の位置決め機構を用いる構成となっている。そのため、この画像形成装置は、第1発明の位置決め機構による機能(すなわち、固定部材及び可動部材に寸法のバラツキがあっても、そのバラツキに影響されずに、可動部材を位置決めし、可動部材をその位置に固定する機能)を果たすことができる。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、固定部材及び可動部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を防止する位置決め機構を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明に係る位置決め機構を用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る位置決め機構を用いる画像形成装置の構成を示す図(1)である。
【図2】実施形態1に係る位置決め機構を用いる画像形成装置の構成を示す図(2)である。
【図3】実施形態1に係る位置決め機構の構成を示す図である。
【図4】実施形態1に係る位置決め機構の動作を示す図である。
【図5】実施形態2に係る位置決め機構の構成を示す図である。
【図6】実施形態2に係る位置決め機構の動作を示す図(1)である。
【図7】実施形態2に係る位置決め機構の動作を示す図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0017】
[実施形態1]
以下、まず、本実施形態1に係る位置決め機構20を用いる画像形成装置1の構成につき説明し、次に、本実施形態1に係る位置決め機構20の構成につき説明する。ここでは、画像成形装置1は、電子写真方式のプリンタとして構成されているものとする。なお、電子写真方式のプリンタの構成は、公知である。そのため、ここでは、画像形成装置1の構成の概要のみを説明する。また、ここでは、位置決め機構20の固定部材を画像成形装置1本体のベース部材13(図3(a)参照)とし、位置決め機構20の可動部材を転写ユニット7として説明する。
【0018】
<画像形成装置の構成>
以下、図1及び図2を参照して、画像形成装置1の構成につき説明する。図1及び図2は、それぞれ、実施形態1に係る位置決め機構を用いる画像形成装置の構成を示す図である。図1は、画像成形装置1の断面構成を示している。また、図2(a)及び図2(b)は、可動部材(ここでは、転写ユニット7)の交換時における画像成形装置1の状態を示している。
【0019】
図1に示すように、画像成形装置1は、用紙トレイ2、画像形成機構3、定着器8、及び、スタッカ9を有している。これらの構成要素は、画像成形装置1本体を構成する筐体11の内部に収容され、カバー12によって覆われている。
【0020】
用紙トレイ2は、図示せぬ記録用媒体を収容する収容部である。用紙トレイ2は、画像形成機構3の下側に設けられている。画像形成装置1は、画像形成時に、用紙トレイ2から記録用媒体を繰り出して、画像形成機構3に供給する。
【0021】
画像形成機構3は、画像を形成して記録用媒体に転写する機構である。
画像形成機構3は、感光体ドラム4、図示せぬ帯電ローラ、露光装置5、現像装置6、転写ユニット7等の構成要素を備えている。ここでは、画像形成機構3は、LED(Light Emitting Diode)タンデムカラー方式により画像を形成する構成となっているものとして説明する。そのため、画像形成機構3は、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に対応して、4つの感光体ドラム4、4つの図示せぬ帯電ローラ、4つの露光装置5、及び、4つの現像装置6を備えており、各色の画像を感光体ドラム4の表面に形成する。
【0022】
感光体ドラム4は、静電潜像及びトナー像を担持する像担持体となる部材である。
図示せぬ帯電ローラは、感光体ドラム4を一様に帯電させる部材である。
露光装置5は、画像データに基づいて、帯電ローラによって帯電された感光体ドラム4に光を照射して、感光体ドラム4の表面に静電潜像を形成する装置である。ここでは、露光装置5は、LEDアレイによって構成されているものとして説明する。しかしながら、露光装置5は、例えば、有機ELアレイやレーザ素子アレイ等の様々な光照射手段によって構成されていてもよい。
【0023】
現像装置6は、感光体ドラム4の表面にトナー像を形成する装置である。現像装置6は、静電潜像が形成された感光体ドラム4に、現像剤であるトナーを供給して、トナーを静電潜像に付着させる。これにより、現像装置6は、静電潜像をトナー像として顕像化(現像)させる。
【0024】
転写ユニット7は、感光体ドラム4の表面に形成されたトナー像を記録用媒体に転写させる機構である。転写ユニット7は、記録用媒体を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトを介して各感光体ドラム4に対向する4つの転写ローラとを備えている。転写ユニット7は、搬送ベルトによって記録用媒体を搬送しながら、各転写ローラによって各感光体ドラム4の表面に形成されたトナー像を引き寄せる。これにより、転写ユニット7は、各感光体ドラム4の表面に形成されたトナー像を記録用媒体に転写させる。
【0025】
定着器8は、記録用媒体に転写されたトナー像を記録用媒体に定着させる装置である。定着器8は、トナー像が転写された記録用媒体を加熱及び加圧して、トナー像を溶融させる。これにより、定着器8は、トナー像を記録用媒体に定着させる。
スタッカ9は、トナー像が定着された記録用媒体を集積する集積部である。
【0026】
画像成形装置1は、転写ユニット7が、略中央部に配置されている。この転写ユニット7は、記録用媒体の搬送精度や、記録用媒体に転写される各トナー像の色ずれに多大な影響を与える。したがって、転写ユニット7は、例えば、傾いて画像形成装置1本体に取り付けられたり、又は、取り付け後に、寸法のバラツキによる取り付けガタの発生で、取り付け位置がずれてしまったりすると、画像形成装置1の印字性能を低下させる。
【0027】
そのため、画像形成装置1は、転写ユニット7の周囲に、位置決め機構20を有しており、この位置決め機構20によって、転写ユニット7を位置決めしている。この位置決め機構20の詳細については、「位置決め機構の構成」の章で説明する。
【0028】
画像成形装置1は、例えば、転写ユニット7が交換される場合に、まず、図2(a)に示す状態となり、次に、図2(b)に示す状態となる。
すなわち、まず、図2(a)に示すように、画像成形装置1は、カバー12が開放されて、筐体11の内部に収容されている4つの現像装置6が順次取り外される。転写ユニット7は、その4つの現像装置6の下に配置されている。そのため、転写ユニット7は、4つの現像装置6が取り外されることにより、露出する。転写ユニット7は、図2(b)に示すロックレバー30によって画像成形装置1本体のベース部材13(図3(a)参照)に固定されている。なお、ロックレバー30は、転写ユニット7をベース部材13に固定するための部材である。ロックレバー30は、転写ユニット7の交換が容易に行えるように、媒体搬送方向(図3(a)に示す矢印方向)に対して垂直に設けられている。また、ベース部材13は、画像成形装置1本体を構成する筐体11の内部に設けられ、転写ユニット7を筐体11に取り付けるための部材である。
【0029】
次に、図2(b)に示すように、画像成形装置1は、ロックレバー30が矢印方向に回転させられる。これによって、画像成形装置1は、転写ユニット7が取り外し可能な状態となる。その結果、ユーザは、画像成形装置1から古い転写ユニット7を取り外して、新しい転写ユニット7を画像成形装置1に取り付けることができるようになる。
【0030】
なお、ここでは、ロックレバー30は、時計回り及び反時計回りのいずれか一方の方向に選択的に回転させられることにより、ロック及びリリースのいずれか一方の状態となる。このようなロックレバー30の構成は、既に公知である。ロックレバー30は、例えば、以下のような構成となっている。
【0031】
例えば、ロックレバー30は、ロックレバー30を回転させるために把持される把持部と、把持部の延伸方向に設けられた回転軸と、把持部と回転軸とを区切る平板状の区切り部と、回転軸を中心にして扇形に突出する部位が設けられた先端部とを備えた構成となっている(図3(a)参照)。
【0032】
ロックレバー30は、可動部材の取付部及び固定部材の支持部のそれぞれに設けられた孔に挿入される。図3(a)に示す例では、2つのロックレバー30を用いて、一方のロックレバー30が、可動部材である転写ユニット7の取付部38及び固定部材であるベース部材13の支持部18のそれぞれに設けられた図示せぬ孔を貫通するように挿入され、他方のロックレバー30が、転写ユニット7の取付部39及びベース部材13の支持部19のそれぞれに設けられた図示せぬ孔を貫通するように挿入された状態を示している。
【0033】
転写ユニット7の取付部38に設けられた孔と取付部39に設けられた孔とは、媒体搬送方向(図3(a)参照)に対して略直交するように、対向して設けられている。同様に、ベース部材13の支持部18に設けられた孔と支持部19に設けられた孔とは、媒体搬送方向に対して略直交するように、対向して設けられている。転写ユニット7の取付部38に設けられた孔と取付部39に設けられた孔とは、ロックレバー30の先端部が通過し、ロックレバー30の区切り部が通過しない形状及び大きさに形成されている。一方、ベース部材13の支持部18に設けられた孔と支持部19に設けられた孔とは、ロックレバー30の先端部が通過した後、回転させられることにより、ロックレバー30の先端部と係止する形状(具体的には、ロックレバー30の形状に合わせて、回転軸を中心にして扇形に切り欠きされた形状)及び大きさに形成されている。
【0034】
ロックレバー30は、可動部材の取付部と固定部材の支持部とが位置合わせされた状態で、先端部が可動部材の取付部に設けられた孔及び固定部材の支持部に設けられた孔を貫通するように挿入された後、回転させられる。これによって、ロックレバー30は、先端部が固定部材の支持部に設けられた孔に係止し、可動部材を固定部材に強固に固定する。
【0035】
<位置決め機構の構成>
以下、図3を参照して、本実施形態1に係る位置決め機構20の構成につき説明する。図3は、実施形態1に係る位置決め機構の構成を示す図である。図3(a)は、下側から見た位置決め機構20の全体構成を示しており、図3(b)は、図3(a)に示すAa部分の構成を拡大して示しており、図3(c)は、図3(a)に示すAb部分の構成を拡大して示している。なお、ここでは、後記するポスト22,23が後記する取付部36,37に設けられ、後記する嵌合孔24,25、後記する摺動部材26、後記する付勢部材27が、後記する支持部16,17に設けられているものとして説明するが、これらは、逆に設けられていてもよい。
【0036】
図3は、可動部材である転写ユニット7が、固定部材である画像成形装置1本体のベース部材13に固定された状態を示している。図3中、斜線部分は、ベース部材13側の構成要素(すなわち、ベース部材13及びベース部材13に設けられた部材)を示している。ただし、図3(c)は、ベース部材13側の構成要素であるVブロック26及び圧縮ばね27に対して、Vブロック26及び圧縮ばね27の構造を明確にするために、斜線を付さずに示している。
【0037】
図3(a)に示すように、位置決め機構20は、支持部16,17,18,19が固定部材であるベース部材13に設けられており、取付部36,37,38,39が可動部材である転写ユニット7に設けられている。
【0038】
支持部16,17,18,19は、それぞれ、転写ユニット7の取付部36,37,38,39と対向して、転写ユニット7を支持する部位である。
一方、取付部36,37,38,39は、それぞれ、ベース部材13の支持部16,17,18,19と対向して、ベース部材13に取り付けられる部位である。
【0039】
支持部16,17,18,19は、それぞれ、少なくとも、取付部36,37,38,39との対向面が、略平坦面として形成されている。ただし、支持部16は、嵌合孔24(図3(b)参照)が設けられており、支持部17は、嵌合孔25(図3(c)参照)が設けられている。また、支持部18,19は、それぞれ、ロックレバー30の先端部が貫通した状態で、ロックレバー30が回転させられることにより、ロックレバー30をロック状態にする図示せぬ孔が設けられている。
【0040】
嵌合孔24は、取付部36に設けられたポスト22(図3(b)参照)が遊嵌する遊嵌穴である。嵌合孔24は、支持部16の取付部36との対向面に、ポスト22と対向して設けられている。嵌合孔24は、ポスト22が嵌合するように、ポスト22よりも若干大きな寸法で形成されている。嵌合孔24は、ポスト22を固定的に支持するように、好ましくは、真円形に形成されているとよい。ここでは、ポスト22が径をφ8mmとする真円形に形成されており、嵌合孔24が径をφ8.1mmとする真円形に形成されているものとして説明する。
【0041】
嵌合孔25は、取付部37に設けられたポスト23(図3(c)参照)が遊嵌する遊嵌穴である。嵌合孔25は、支持部17の取付部37との対向面に、ポスト23と対向して設けられている。嵌合孔25は、ポスト23が嵌合するように、ポスト23よりも若干大きな寸法で形成されている。嵌合孔25は、ポスト23を横方向に移動させることができるように、好ましくは、長円形に形成されているとよい。ここでは、ポスト23が径をφ8mmとする真円形に形成されており、嵌合孔25が、短径を8.1mmとし、長径を10.0mmとする長円形に形成されているものとして説明する。
【0042】
以下、嵌合孔24と嵌合孔25とを区別する場合に、嵌合孔24を「第1遊嵌穴24」と称し、嵌合孔25を「第2遊嵌穴25」と称する。
なお、図3(b)に示す例では、第1遊嵌穴24は、貫通孔となっているが、未貫通な穴として構成することも可能である。
同様に、図3(c)に示す例では、第2遊嵌穴25は、貫通孔となっているが、未貫通な穴として構成することも可能である。ただし、第2遊嵌穴25が未貫通な穴として構成されている場合に、支持部17は、取付部37との対向面に、媒体搬送方向(図3(a)参照)に沿って第2遊嵌穴25と連結された溝を備え、その溝の内部に後記するVブロック26及び後記する圧縮ばね27を収容するとともに、Vブロック26をその溝に沿って摺動させる構成となる。
【0043】
一方、取付部36,37,38,39は、それぞれ、少なくとも、支持部16,17,18,19との対向面が、略平坦面として形成されている。ただし、取付部36,37は、それぞれ、対向面から略垂直に突出するポスト22,23が設けられている。また、取付部38,39は、それぞれ、ロックレバー30の先端部が貫通する図示せぬ孔が設けられている。
【0044】
ポスト22は、第1遊嵌穴24(図3(b)参照)に遊嵌する位置決め用の突起である。ポスト23は、第2遊嵌穴25(図3(c)参照)に遊嵌する位置決め用の突起である。ポスト22,23は、それぞれ、図3(a)に示す媒体搬送方向に対して、略直交するように、設けられている。
【0045】
以下、ポスト22とポスト23とを区別する場合に、ポスト22を「第1ポスト22」と称し、ポスト23を「第2ポスト23」と称する。
第1ポスト22は、円柱状に形成されており、支持部16に固定的に支持されている。同様に、第2ポスト23は、円柱状に形成されており、支持部17に固定的に支持されている。
【0046】
支持部17は、図3(c)に示すように、取付部37との対向面の反対面に、摺動部材26、付勢部材27、及び、ばね固定面29が設けられている。
摺動部材26は、先端が第2ポスト23の外周に当接するように、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直に摺動するブロック材である。なお、図3(a)に示す例では、摺動部材26は、第2ポスト23の下流側に設けられており、媒体搬送方向に対して逆方向に摺動する構成となっている。しかしながら、摺動部材26は、第2ポスト23の上流側に設けられ、媒体搬送方向に摺動する構成にすることも可能である。
【0047】
摺動部材26は、先端に、摺動方向(ここでは、媒体搬送方向の逆方向)に対して内側と外側とに分岐した2つの傾斜面26a,26bを備えている。以下、摺動部材26を「Vブロック26」と称する。なお、ここでは、2つの傾斜面26a,26bは、Vブロック26の摺動方向に対して、それぞれ、45度の角度に傾斜して設けられているものとして説明する。ただし、傾斜面26a,26bの傾斜角度は、Vブロック26の摺動方向に対して線対称となる関係であれば、45度以外の角度であってもよい。
【0048】
Vブロック26は、内側(ここでは、第1遊嵌穴24に近い側)の傾斜面26a及び外側(ここでは、第1遊嵌穴24から遠い側)の傾斜面26bのいずれか一方又は双方で、第2遊嵌穴25に遊嵌される第2ポスト23の外周に当接する。
【0049】
付勢部材27は、Vブロック26を第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直に付勢する部材である。ここでは、付勢部材27は、圧縮ばねによって構成されているものとして説明する。以下、付勢部材27を「圧縮ばね27」と称する。
ばね固定面29は、圧縮ばね27の後端を固定的に支持する部位である。
【0050】
<位置決め機構の動作>
以下、図4を参照して、位置決め機構20の動作につき説明する。図4は、実施形態1に係る位置決め機構の動作を示す図である。本実施形態1では、Vブロック26は、先端の内側の傾斜面26aと外側の傾斜面26bとの分岐箇所(以下、「先端の分岐箇所」と称する)の軌道が、第2遊嵌穴25の中心点の上を通過するように設定されている。
【0051】
なお、ここでは、前記した通り、第1ポスト22が径をφ8mmとする真円形に形成されており、第1遊嵌穴24が径をφ8.1mmとする真円形に形成されており、第2ポスト23が径をφ8mmとする真円形に形成されており、第2遊嵌穴25が、短径を8.1mmとし、長径を10.0mmとする長円形に形成されているものとして説明する。また、ここでは、付勢部材27は、樹脂で形成された数グラム程度のVブロック26を、0.8kgf程度の付勢力で付勢するものとして説明する。なお、第1ポスト22及び第1遊嵌穴24の嵌合は、第2ポスト23及び第1遊嵌穴25の嵌合に比べて、真円形に形成された部材同士の嵌合であるため、ガタが小さい。
【0052】
また、ここでは、第1ポスト22の中心点と第2ポスト23の中心点との間の寸法(以下、「ポスト間寸法」と称する)Lが、第1遊嵌穴24の中心点と第2遊嵌穴25の中心点との間の寸法(以下、「孔間寸法」と称する)Hと略等しく設定されているものとして説明する。
【0053】
位置決め機構20は、転写ユニット7の取付部36,37に設けられたポスト22,23がベース部材13の支持部16,17に設けられた嵌合孔24,25に嵌合することによって、転写ユニット7を大まかな位置に位置決めする。
【0054】
ここで、転写ユニット7及びベース部材13に寸法のバラツキがない場合に、位置決め機構20は、圧縮ばね27がVブロック26を第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直な方向に付勢して、Vブロック26を摺動させる。以下、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直な方向を「摺動方向」と称する。これにより、位置決め機構20は、Vブロック26の傾斜面26a,26bの双方と第2ポスト23の外周とを当接させる。
【0055】
位置決め機構20は、その状態で、さらに、圧縮ばね27がVブロック26を摺動方向に付勢する。これにより、転写ユニット7の第2ポスト23は、図4に示すように、第2遊嵌穴25の内径面のVブロック26の先端に対向する部分(以下、「突き当て面」と称する)に存在する接触点c、Vブロック26の内側の傾斜面26aに存在する接触点d、及び、Vブロック26の外側の傾斜面26bに存在する接触点eの3点で、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20は、接触点cと接触点dと接触点eとの3点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20は、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0056】
その結果、転写ユニット7は、所定の位置に位置決めされる。転写ユニット7は、この状態で、第2ポスト23がVブロック26の2つの傾斜面26a,26bから圧縮ばね27の付勢力を受けるため、ベース部材13に固定される。
【0057】
一方、転写ユニット7及びベース部材13に寸法のバラツキがある場合に、位置決め機構20は、圧縮ばね27がVブロック26を摺動方向に付勢して、Vブロック26を摺動させる。これにより、位置決め機構20は、接触点d及び接触点eのいずれか一方の点で、Vブロック26の傾斜面26a,26bのいずれか一方と第2ポスト23の外周とを当接させる。
【0058】
圧縮ばね27の付勢力は、接触点d及び接触点eのいずれか一方の点で、摺動方向(すなわち、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して垂直な方向)の分力と第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向(以下、「横方向」と称する)の分力とに分岐する。
【0059】
摺動方向の分力は、第2ポスト23を摺動方向に摺動させる。これにより、転写ユニット7の第2ポスト23の外周は、第2遊嵌穴25の内径面の突き当て面(すなわち、Vブロック26の先端に対向する部分)に存在する接触点cと、接触点d及び接触点eのいずれか一方の点との2点で、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。
【0060】
一方、横方向の分力は、第2ポスト23を横方向に移動させる。その結果、転写ユニット7が、横方向に微小に移動する。これにより、転写ユニット7の第2ポスト23は、接触点cと、接触点dと、接触点eとの3点で、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20は、接触点cと接触点dと接触点eとの3点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20は、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0061】
その結果、転写ユニット7は、所定の位置に位置決めされる。転写ユニット7は、この状態で、第2ポスト23がVブロック26の2つの傾斜面26a,26bから圧縮ばね27の付勢力を受けるため、ベース部材13に固定される。
【0062】
この後、転写ユニット7は、図3(a)に示すように、ロックレバー30が、転写ユニット7の取付部38,39及びベース部材13の支持部18,19のそれぞれに設けられた図示せぬ孔に挿入され回転させられてロック状態になることによって、ベース部材13に強固に固定される。
【0063】
このような位置決め機構20は、第2遊嵌穴25の突き当て面に存在する接触点cと、Vブロック26の内側の傾斜面26aに存在する接触点dと、Vブロック26の外側の傾斜面26bに存在する接触点eとの3点で、転写ユニット7をガタ寄せする。そのため、位置決め機構20は、固定部材(ここでは、ベース部材13)及び可動部材(ここでは、転写ユニット7)に寸法のバラツキ(例えば、第2ポスト23の径寸法や第2遊嵌孔25の径寸法等のバラツキ)があっても、そのバラツキに影響されずに、可動部材を位置決めし、可動部材をその位置に固定することができる。
【0064】
この位置決め機構20は、第2ポスト23の径寸法や第2遊嵌孔25の径寸法等のバラツキを吸収することができる。そのため、位置決め機構20は、特に、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにすることができる。したがって、位置決め機構20は、可動部材の位置決め精度を向上させることができる。なお、画像成形装置1は、取り付けガタをゼロにすれば、印字性能が向上する。したがって、位置決め機構20は、画像成形装置1の印字性能を向上させることができる。しかも、位置決め機構20は、画像成形装置1の媒体搬送性能を低下させる要因がないため、画像成形装置1の印字性能を良好に保つことができる。
【0065】
また、位置決め機構20は、転写ユニット7の第2ポスト23が圧縮ばね27の付勢力によって第2遊嵌孔25の突き当て面に押さえ付けられるため、従来の位置決め機構と異なり、取り付けガタによって発生する振動音を低減することができる。
【0066】
なお、取り付けガタの発生は、転写ユニット7の第2ポスト23とベース部材13の第2遊嵌穴25との寸法関係を圧入寸法(隙間なく密封される寸法)にすることによっても、抑制することができる。しかしながら、第2ポスト23と第2遊嵌穴25との寸法関係を圧入寸法にすると、コストが上昇するとともに、ユーザが転写ユニット7をベース部材13に取り付ける際に負荷となるため、画像形成装置1の操作性が低下する。そのため、第2ポスト23と第2遊嵌穴25との寸法関係を圧入寸法にすることは、好ましくない。
これに対して、位置決め機構20は、固定部材及び可動部材の寸法の精度を向上させる必要がないため、コストの上昇を抑制するとともに、画像形成装置1の操作性の低下を抑制することができる。
【0067】
以上の通り、本実施形態1に係る位置決め機構20によれば、固定部材及び可動部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を抑制することができる。
しかも、位置決め機構20によれば、固定部材及び可動部材の寸法精度を向上させることなく、固定部材及び可動部材の取り付けガタの発生を抑制することができる。
【0068】
[実施形態2]
実施形態1に係る位置決め機構20は、転写ユニット7の第2ポスト23をVブロック26の2つの傾斜面26a,26b及びベース部材13の第2遊嵌穴25と当接させることにより、転写ユニット7を位置決めする構成となっている。このような位置決め機構20は、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにすることができるが、第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタをゼロにすることはできない。
【0069】
これに対して、本実施形態2に係る位置決め機構20aは、転写ユニット7の第2ポスト23を2つの傾斜面26a,26bのいずれか一方及びベース部材13の第2遊嵌穴25と当接させるとともに、転写ユニット7の第1ポスト22をベース部材13の第1遊嵌穴24と当接させることにより、転写ユニット7を位置決めする構成とする。このような位置決め機構20aは、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタ及び第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタをゼロにすることができる。
【0070】
<位置決め機構の構成>
以下、図5を参照して、本実施形態2に係る位置決め機構20aの構成につき説明する。図5は、実施形態2に係る位置決め機構の構成を示す図である。
【0071】
図5に示すように、本実施形態2に係る位置決め機構20aは、Vブロック26の先端の内側の傾斜面26aと外側の傾斜面26bとの分岐箇所(以下、「先端の分岐箇所」と称する)の軌道が、第2遊嵌穴25の中心点から位置ずらし量Sだけずれた位置を通過するように設定されている。
【0072】
Vブロック26の先端の分岐箇所の軌道は、ベース部材13の支持部17に設けられた長孔32によって規定される。この長孔32は、Vブロック26の摺動方向に沿って、第2遊嵌穴25の中心点から位置ずらし量Sだけずれた位置に、延伸して設けられている。Vブロック26は、両サイドからの略中央となる位置に孔31が設けられており、ビス33が長孔32及び孔31を貫通してVブロック26に固定されることにより、支持部17に摺動自在に取り付けられる。
【0073】
本実施形態2では、Vブロック26の先端の分岐箇所の軌道が、第2遊嵌穴25の中心点から位置ずらし量Sだけずれた位置を通過する。そのため、Vブロック26の先端は、2つの傾斜面26a,26bのいずれか一方で第2ポスト23と当接する。したがって、本実施形態2では、圧縮ばね27(図3(c)参照)の付勢力が、2つの傾斜面26a,26bのうち、第2ポスト23と当接する側の傾斜面にのみかかる。そのため、Vブロック26の摺動が、不安定になり易い。
そこで、本実施形態2では、Vブロック26の摺動を安定させるためのスライド矯正ガイド28が、位置決め機構20aに設けられている。
【0074】
スライド矯正ガイド28は、Vブロック26の両サイドを支持して、Vブロック26の摺動を矯正する部材である。スライド矯正ガイド28は、ベース部材13の支持部17上の、Vブロック26の両サイドに相当する位置に設けられている。スライド矯正ガイド28は、Vブロック26の摺動方向に沿って、Vブロック26と当接し、これにより、Vブロック26の摺動を安定させる。
【0075】
なお、Vブロック26の位置ずれ量Sは、第1ポスト22と第1遊嵌孔24との間の最大ガタ以上に設定する必要がある。Vブロック26の位置ずれ量Sは、具体的には、以下のようになる。
【0076】
例えば、第1ポスト22が径をφ8mmとする真円形に形成されており、第1遊嵌穴24が径をφ8.1mmとする真円形に形成されており、第2ポスト23が径をφ8mmとする真円形に形成されており、第2遊嵌穴25が、短径を8.1mmとし、長径を10.0mmとする長円形に形成されているものとする。第1ポスト22と第1遊嵌孔24との間のガタは、ガタを例えば部材の寸法±0.05mmとする場合に、(8.1±0.05)−(8±0.05)となる。したがって、第1ポスト22と第1遊嵌孔24との間の最大ガタは、(8.1+0.05)−(8−0.05)=(8.15)−(7.95)=0.2mmとなる。ここで、マージンを例えば0.2mmとすると、Vブロック26の位置ずれ量Sは、(最大ガタ+マージン)=(0.2+0.2)=0.4mmとなる。
【0077】
<位置決め機構の動作>
以下、図6及び図7を参照して、位置決め機構20aの動作につき説明する。図6及び図7は、それぞれ、実施形態2に係る位置決め機構の動作を示す図である。ここでは、第1ポスト22の中心点と第2ポスト23の中心点との間の寸法(以下、「ポスト間寸法L」と称する)の許容誤差を「±0.3mm」とし、ポスト間寸法Lの最小値を「最小ポスト間寸法Lmin」と称して説明する。
【0078】
図6は、Vブロック26の先端の分岐箇所の軌道を内側(第1遊嵌穴24に近い側)の位置にずらして設定した場合の位置決め機構20aの動作を示している。図6は、ポスト間寸法Lを最小ポスト間寸法Lminとする転写ユニット7を、接触点fと接触点gと接触点hとの3点で、ガタ寄せした状態を示している。
【0079】
図6に示すように、位置決め機構20aは、圧縮ばね27がVブロック26を摺動方向(すなわち、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直な方向)に付勢して、Vブロック26を摺動させる。これにより、位置決め機構20aは、接触点hで、Vブロック26の外側の傾斜面26bと第2ポスト23の外周とを当接させる。
【0080】
圧縮ばね27の付勢力は、接触点hで、摺動方向(すなわち、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して垂直な方向)の分力(以下、「分力T1」と称する)と内側方向(ここでは、第2遊嵌穴25側から第1遊嵌穴24側に向かう方向)の分力(以下、「分力F1」と称する)とに分岐する。
【0081】
分力T1は、第2ポスト23を摺動方向に摺動させる。これにより、転写ユニット7の第2ポスト23の外周は、第2遊嵌穴25の内径面の突き当て面(すなわち、Vブロック26の先端に対向する部分)に存在する接触点gと、接触点hとの2点で、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20aは、接触点gと接触点hとの2点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20aは、第1の動作として、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0082】
一方、分力F1は、第2ポスト23を内側方向に移動させる。ここで、Vブロック26の位置ずらし量Sは、第1ポスト22と第1遊嵌孔24との間の最大ガタ以上に設定されている。そのため、転写ユニット7は、第1ポスト22の外周が第1遊嵌穴24の内径面の外側部分と当接するまで、内側方向に移動する。なお、「第1遊嵌穴24の内径面の外側部分」とは、第1遊嵌穴24の内径面の、第2遊嵌穴25から遠い側の部分を意味する。これにより、転写ユニット7の第1ポスト22の外周は、第1遊嵌穴24の内径面の外側部分に存在する接触点fで、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。したがって、転写ユニット7は、第2ポスト23が接触点gと接触点hとでベース部材13側の構成要素に当接した状態となり、第1ポスト22が接触点fでベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20aは、接触点fと接触点gと接触点hとの3点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20aは、第2の動作として、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタ及び第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0083】
その結果、転写ユニット7は、所定の位置に位置決めされる。転写ユニット7は、この状態で、第2ポスト23がVブロック26の外側の傾斜面26bから圧縮ばね27の付勢力を受けるため、ベース部材13に固定される。
【0084】
この後、転写ユニット7は、図3(a)に示すように、ロックレバー30が、転写ユニット7の取付部38,39及びベース部材13の支持部18,19のそれぞれに設けられた図示せぬ孔に挿入され回転させられてロック状態になることによって、ベース部材13に強固に固定される。
【0085】
一方、図7は、Vブロック26の先端の分岐箇所の軌道を外側(第1遊嵌穴24から遠い側)の位置にずらして設定した場合の位置決め機構20aの動作を示している。図7は、ポスト間寸法Lを最小ポスト間寸法Lminとする転写ユニット7を、接触点iと接触点jと接触点kとの3点で、ガタ寄せした状態を示している。
【0086】
図7に示すように、位置決め機構20aは、圧縮ばね27がVブロック26を摺動方向(すなわち、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して略垂直な方向)に付勢して、Vブロック26を摺動させる。これにより、位置決め機構20aは、接触点kで、Vブロック26の内側の傾斜面26aと第2ポスト23の外周とを当接させる。
【0087】
圧縮ばね27の付勢力は、接触点kで、摺動方向(すなわち、第1遊嵌穴24及び第2遊嵌穴25の配置方向に対して垂直な方向)の分力(以下、「分力T2」と称する)と外側方向(ここでは、第1遊嵌穴24側から第2遊嵌穴25側に向かう方向)の分力(以下、「分力F2」と称する)とに分岐する。
【0088】
分力T2は、第2ポスト23を摺動方向に摺動させる。これにより、転写ユニット7の第2ポスト23の外周は、第2遊嵌穴25の内径面の突き当て面(すなわち、Vブロック26の先端に対向する部分)に存在する接触点jと、接触点kとの2点で、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20aは、接触点jと接触点kとの2点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20aは、第1の動作として、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0089】
一方、分力F2は、第2ポスト23を外側方向に移動させる。ここで、Vブロック26の位置ずらし量Sは、第1ポスト22と第1遊嵌孔24との間の最大ガタ以上に設定されている。そのため、転写ユニット7は、第1ポスト22の外周が第1遊嵌穴24の内径面の内側部分と当接するまで、外側方向に移動する。なお、「第1遊嵌穴24の内径面の内側部分」とは、第1遊嵌穴24の内径面の、第2遊嵌穴25から近い側の部分を意味する。これにより、転写ユニット7の第1ポスト22の外周は、第1遊嵌穴24の内径面の内側部分に存在する接触点iで、ベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。したがって、転写ユニット7は、第2ポスト23が接触点jと接触点kとでベース部材13側の構成要素に当接した状態となり、第1ポスト22が接触点iでベース部材13側の構成要素に当接した状態となる。このとき、位置決め機構20aは、接触点iと接触点jと接触点kとの3点で転写ユニット7をガタ寄せした状態となる。したがって、位置決め機構20aは、第2の動作として、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタ及び第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタをゼロにした状態となる。
【0090】
その結果、転写ユニット7は、所定の位置に位置決めされる。転写ユニット7は、この状態で、第2ポスト23がVブロック26の外側の傾斜面26bから圧縮ばね27の付勢力を受けるため、ベース部材13に固定される。
【0091】
この後、転写ユニット7は、図3(a)に示すように、ロックレバー30が、転写ユニット7の取付部38,39及びベース部材13の支持部18,19のそれぞれに設けられた図示せぬ孔に挿入され回転させられてロック状態になることによって、ベース部材13に強固に固定される。
【0092】
このような位置決め機構20aは、第1遊嵌穴24の内径面の外側部分に存在する接触点fと、第2遊嵌穴25の突き当て面に存在する接触点gと、Vブロック26の外側の傾斜面26bに存在する接触点hとの3点、又は、第1遊嵌穴24の内径面の内側部分に存在する接触点iと、第2遊嵌穴25の突き当て面に存在する接触点jと、Vブロック26の内側の傾斜面26aに存在する接触点kとの3点で、転写ユニット7をガタ寄せする。そのため、位置決め機構20は、固定部材(ここでは、ベース部材13)及び可動部材(ここでは、転写ユニット7)に寸法のバラツキ(例えば、転写ユニット7のポスト間寸法Lや、ベース部材13の孔間寸法H、第2ポスト23の径寸法、第2遊嵌孔25の径寸法等のバラツキ)があっても、そのバラツキに影響されずに、可動部材を位置決めし、可動部材をその位置に固定することができる。したがって、位置決め機構20aは、可動部材の位置決め精度を向上させることができる。
【0093】
このような位置決め機構20aは、実施形態1に係る位置決め機構20と同樣な効果を得ることができる。しかも、この位置決め機構20aは、第2ポスト23の径寸法や第2遊嵌孔25の径寸法等のバラツキだけでなく、転写ユニット7のポスト間寸法Lやベース部材13の孔間寸法H等のバラツキも吸収することができる。そのため、位置決め位置決め機構20aは、特に、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタだけでなく、第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタもゼロにすることができる。そのため、位置決め機構20aは、実施形態1に係る位置決め機構20よりもさらに可動部材の位置決め精度を向上させることができる。これにより、位置決め機構20aは、画像成形装置1の印字性能を向上させることができる。しかも、位置決め機構20aは、画像成形装置1の媒体搬送性能を低下させる要因がないため、画像成形装置1の印字性能を良好に保つことができる。
【0094】
また、位置決め機構20aは、転写ユニット7の第2ポスト23が圧縮ばね27の付勢力によって第2遊嵌孔25の突き当て面に押さえ付けられるとともに、転写ユニット7の第1ポスト22が圧縮ばね27の付勢力によって第1遊嵌孔24の突き当て面に押さえ付けられるため、実施形態1に係る位置決め機構20よりも、さらに、取り付けガタによって発生する振動音を低減することができる。
【0095】
以上の通り、本実施形態2に係る位置決め機構20aによれば、本実施形態1に係る位置決め機構20と同様に、固定部材及び可動部材の寸法のバラツキによる取り付けガタの発生を抑制することができる。
しかも、位置決め機構20aによれば、本実施形態1に係る位置決め機構20と同様に、固定部材及び可動部材の寸法精度を向上させることなく、固定部材及び可動部材の取り付けガタの発生を抑制することができる。
さらに、位置決め機構20aによれば、第2遊嵌穴25の周囲の取り付けガタだけでなく、第1遊嵌穴24の周囲の取り付けガタもゼロにすることができるため、実施形態1に係る位置決め機構20よりもさらに可動部材の位置決め精度を向上させることができる。
【0096】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、実施形態1及び実施形態2では、支持部16,17は、二つの部位に分離された構成となっているが、一つの部位に統合することが可能である。同様に、取付部36,37も、二つの部位に分離された構成となっているが、一つの部位に統合することが可能である。
【0097】
また、例えば、本発明に係る位置決め機構は、転写ユニットに限らず、他のユニット(例えば、現像装置等)の位置決めに用いることができる。
また、例えば、本発明に係る位置決め機構を用いる画像形成装置は、電子写真方式のプリンタに限らず、インクジェット方式、ドットマトリクスインパクト方式等により画像を形成する構成であってもよい。
さらに、例えば、本発明に係る位置決め機構を用いる画像形成装置は、プリンタに限らず、複写機、ファクシミリ装置、MFP等の画像形成装置に用いることができる。なお、「MFP」とは、Multi Function Peripheralの略称で、プリンタにファクシミリ機能やスキャナ機能、コピー機能等を付加した装置である。
【符号の説明】
【0098】
1 画像形成装置
2 用紙トレイ
3 画像形成機構
4 感光体ドラム
5 露光装置
6 現像装置
7 転写ユニット(可動部材)
8 定着器
9 スタッカ
11 筐体
12 カバー
13 ベース部材(固定部材)
16,17,18,19 支持部
20,20a 位置決め機構
22 ポスト(第1ポスト)
23 ポスト(第2ポスト)
24 嵌合孔(第1遊嵌穴)
25 嵌合孔(第2遊嵌穴)
26 Vブロック(摺動部材)
26a,26b 傾斜面
27 圧縮ばね(付勢部材)
28 スライド矯正ガイド
29 ばね固定面
30 ロックレバー
31 孔
32 長孔
33 ビス
36,37,38,39 取付部
F1,F2 分力
H 孔間寸法
L ポスト間寸法
Lmin 最小ポスト間寸法
S 位置ずらし量
T1,T2 分力
c,d,e,f,g,h,i,j,k 接触点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対する可動部材の位置を決める位置決め機構であって、
前記固定部材に設けられ、前記可動部材を支持する支持部と、
前記可動部材に設けられ、前記支持部に取り付けられる取付部と、
前記支持部及び前記取付部のいずれか一方の部位に設けられ、当該一方の部位の他方の部位との対向面から略垂直に突出する第1ポストと、
前記一方の部位に設けられ、前記一方の部位の前記他方の部位との対向面から略垂直に突出する第2ポストと、
前記第1ポストに対向して前記他方の部位に設けられ、前記第1ポストが遊嵌する第1遊嵌穴と、
前記第2ポストに対向して前記他方の部位に設けられ、前記第2ポストが遊嵌する第2遊嵌穴と、
前記他方の部位に設けられ、前記対向面に対して平行でかつ前記第1遊嵌穴及び前記第2遊嵌穴の配置方向に対して略垂直な方向を、摺動方向として、摺動する摺動部材と、
前記他方の部位に設けられ、前記摺動部材を前記摺動方向に付勢する付勢部材とを有し、
前記摺動部材は、前記摺動方向に対して内側と外側とに分岐した2つの傾斜面を先端に備え、内側の当該傾斜面及び外側の当該傾斜面のいずれか一方又は双方で、前記第2遊嵌穴に遊嵌される前記第2ポストの外周に当接する
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め機構において、
前記他方の部位は、前記第1遊嵌穴が設けられた部位と前記第2遊嵌穴が設けられた部位とに分離して前記固定部材に設けられている
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位置決め機構において、
前記一方の部位は、前記第1ポストが設けられた部位と前記第2ポストが設けられた部位とに分離して前記可動部材に設けられている
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の位置決め機構において、
前記第1遊嵌穴は、真円孔として形成され、
前記第2遊嵌穴は、前記摺動方向に延伸する長円孔として形成されている
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の位置決め機構において、
さらに、前記摺動部材の摺動方向を矯正するスライド矯正ガイドを有し、
前記スライド矯正ガイドは、前記摺動部材の摺動方向に沿って前記摺動部材の両側部と当接するように、前記他方の部位に設けられている
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の位置決め機構において、
前記摺動部材は、先端の内側の前記傾斜面と外側の前記傾斜面との分岐箇所の軌道が、前記第2遊嵌穴の中心点の上を通過するように設定されており、
前記固定部材は、前記摺動部材の内側の前記傾斜面及び外側の前記傾斜面の双方と前記第2遊嵌穴の内径面の前記摺動部材の先端に対向する対向部分とが前記第2ポストの外周に当接することによって、前記可動部材を位置決めする
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の位置決め機構において、
前記摺動部材は、先端の内側の前記傾斜面と外側の前記傾斜面との分岐箇所の軌道が、前記第2遊嵌穴の中心点よりも内側の位置を通過するように設定されており、
前記固定部材は、前記第1遊嵌穴の内径面の外側部分が前記第1ポストの外周と当接するとともに、前記摺動部材の外側の前記傾斜面と前記第2遊嵌穴の内径面の前記摺動部材の先端に対向する対向部分とが前記第2ポストの外周に当接することによって、前記可動部材を位置決めする
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の位置決め機構において、
前記摺動部材は、先端の内側の前記傾斜面と外側の前記傾斜面との分岐箇所の軌道が、前記第2遊嵌穴の中心点よりも外側の位置を通過するように設定されており、
前記固定部材は、前記第1遊嵌穴の内径面の内側部分が前記第1ポストの外周と当接するとともに、前記摺動部材の内側の前記傾斜面と前記第2遊嵌穴の内径面の前記摺動部材の先端に対向する対向部分とが前記第2ポストの外周に当接することによって、前記可動部材を位置決めする
ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の位置決め機構と、
画像を形成する画像形成機構とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置において、
前記固定部材は、前記画像形成機構の主要部を収容する筐体の内部に設けられたベース部材として構成されており、
前記可動部材は、転写ユニットとして構成されており、
前記摺動部材の前記摺動方向は、前記転写ユニットの媒体搬送方向と一致している
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112830(P2011−112830A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268477(P2009−268477)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】