説明

位置計測用反射装置

【課題】被着体に対して着脱が容易であるとともに、計測精度を向上させることができる位置計測用反射装置を提供する。
【解決手段】複数の剛体プレート9を折りたたみ可能に連結した帯状のベース部8と、これら剛体プレート9の裏面に取付けられた磁石11とを有し、このベース部8の表面側にプリズム3を備えた複数のプリズムユニット2を、帯状長手方向に間隔をあけて設置し、この複数のプリズムユニット2を磁石11の磁力によって杭15の表面に直接取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置計測用反射装置に関し、さらに詳しくは、被着体に対して着脱が容易であるとともに、計測精度を向上させることができる位置計測用反射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底地盤への杭打ち作業で打設する杭の高さ位置を計測する場合や、水底地盤に敷設した捨石をタンピング(地均し)する際の仕上げ高さを計測する場合などに、プリズムを有した反射装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の発明では、反射装置はタンピングハンマーにボルトによって固定されている。このように反射装置は、一般にボルト等によって取付けられている。
【0003】
杭打ち作業では、計測精度を上げるには、打設する杭に反射装置を直接取付けることが好ましい。しかしながら、直接、杭に反射装置を取付けると、杭打ち作業によって反射装置の位置が次第に下方移動することになる。それ故、反射装置を適宜、杭から取外して上方の別の位置に取付け直さなければならないので、この取付け直しの作業に多大な時間を要するという問題がある。そこで、杭打ち機のリーダや杭打ち機を搭載した船体などに反射装置を取付けて、反射装置を別の位置に取付け直す作業を無くすようにしているのが現状である。リーダや船体に反射装置を取付けた場合は、杭とリーダ、船体との間に多少のずれが生じるため、計測精度を向上させるには限界がある。
【0004】
また、タンピング作業では、タンピングハンマーに取付けられた反射装置が、杭打ち作業に比して大きく下方移動することがないので、反射装置を別の位置に取付け直す必要はない。しかしながら、タンピングハンマーに最初に反射装置を取付ける時や、損傷した反射装置を交換する時には、多数のボルトを締付けたり、緩めたりしなければならないため、多大な作業時間が必要になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−319883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被着体に対して着脱が容易であるとともに、計測精度を向上させることができる位置計測用反射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の位置計測用反射装置は、複数のプリズムユニットと、これらプリズムユニットを被着体に取付ける取付け手段とを備えた位置計測用反射装置において、前記取付け手段が、複数の剛体プレートを折りたたみ可能に連結した帯状のベース部と、これら剛体プレートの裏面に取付けられた磁石とを有し、このベース部の表面側に前記複数のプリズムユニットが、帯状長手方向に間隔をあけて設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取付け手段を構成する磁石の磁力を用いてプリズムユニットを被着体に取付けることができるので、着脱作業が迅速になる。それ故、従来多大な時間を要していた反射装置(プリズムユニット)の着脱時間が大幅に短縮できる。これに伴い着脱時間によるデメリットがなくなり、プリズムユニットを直接、杭やヤットコに取付けることができるので、計測精度の向上には有利になる。また、ベース部は複数の剛体プレートを折りたたみ可能に連結した構造なので、様々な表面形状の被着体に取付けることが可能になる。
【0009】
ここで、前記磁石の磁力によりベース部を被着体の外周面に環状に取付けた際に、被着体の外周長さの半分以上の範囲に前記複数のプリズムユニットが配置される構成にするとよい。これにより、杭などの被着体が長手方向を回転軸として回転しても所定位置に設置された位置計測装置によって、プリズムユニットのプリズムで反射された光を検知することができる。
【0010】
前記磁石が弾性部材を介在させて剛体プレートの裏面に取付けられている仕様にすることもできる。この仕様により、磁石を被着体の表面形状にさらに追従させ易くなり、様々な表面形状の被着体に一段と安定して取付け易くなる。
【0011】
前記ベース部を被着体に係止する係止ベルトを設けることもできる。これにより、ベース部が被着体の表面から外れて落下する不測の事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の位置計測用反射装置を用いて杭を水底地盤に打設する状態を例示する説明図である。
【図2】図1の杭に取付けられた位置計測用反射装置の一部を例示する平面図である。
【図3】図2のプリズムユニットを例示する側面図である。
【図4】図2のプリズムユニットを例示する平面図である。
【図5】図2のプリズムユニットを例示する背面図である。
【図6】プリズムユニットの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の位置計測用反射装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1、図2に例示するように、本発明の位置計測用反射装置1(以下、反射装置1という)は、杭15などの被着体に取付けられ、陸上の所定位置に設置された位置計測装置14からの光を反射させるものである。この実施形態では、作業船18に搭載されたクレーン17により吊下げられた杭打ち機16によって打設される杭15の外周面に反射装置1が固定されている。
【0015】
位置計測装置14は、反射光を検知することにより、反射装置1が取付けられた杭15の位置を把握する。位置計測装置14としては例えば、自動追尾型トータルステーションが使用され、反射光のうち最も明るさが強い反射光を反射させているプリズムユニット2(プリズム3)の位置を、被着体の位置として把握する。
【0016】
反射装置1は、複数のプリズムユニット2と、これらプリズムユニット2を杭15などの被着体に取付ける取付け手段7とを備えている。プリズムユニット2は図3〜図5に例示するように、プリズム3と、プリズム3が固定されるプリズム支持体4と、フレーム6とを有している。プリズム支持体4の上面および下面と、コ字状のフレーム6とはスプリング5を介して接続されている。
【0017】
取付手段7は、複数の剛体プレート9が、連結部10を介して連結された帯状のベース部8を有している。ベース部8は、連結部10で屈曲し、複数の剛体プレート9が折りたたみ可能に連結された構造になっている。剛体プレート9としては、鋼板等の金属板や硬質樹脂板等を用いる。連結部10としては、蝶番などのヒンジ機構、ゴムなどの可撓性部材を用いることができる。剛体プレート9は、被着体の外周長さに応じて任意の数を連結することができる。
【0018】
この実施形態では、剛体プレート9には突状に形成された部分があり、この部分に貫通孔9aを有している。この貫通孔9aには、係止ベルト13が挿通されている。係止ベルト13としては、例えば、繊維で形成された帯状体、紐状体が使用される。
【0019】
それぞれの剛体プレート9の裏面には磁石11が取付けられている。磁石11としては、磁力が強いネオジムマグネットを用いることが好ましい。1つの剛体プレート9に取付ける磁石11の数、大きさは適宜決定される。
【0020】
プリズムユニット2を構成するフレーム6の背面が剛体プレート9の表面にボルト等によって固定されることにより、ベース部8の表面側に複数のプリズムユニット2が設置されている。それぞれのプリズムユニット2は、ベース部8の帯状長手方向に等間隔で設置されている。例えば、3枚〜6枚程度の剛体プレート9に対して1つのプリズムユニット2が設置される。
【0021】
反射装置1を打設する杭15に取付ける場合は、図2に例示するように、磁石11を杭15の外周面に当接させ、ベース部8を杭15の外周面に沿うように変形させて磁力によって固定する。剛体プレート9の貫通孔9aには係止ベルト13を挿通させて、係止ベルト13を杭15の外周に巻き付けるようにして、バックル等の固定機構によって係止ベルト13を締付けてベース部8を杭15に係止する。杭15の外周面に係止ベルト13を引掛ける突部などを設けるとよい。係止ベルト13は、反射装置1が杭15の表面から不用意に脱落することを防止する命綱として機能する。そのため、係止ベルト13を強固に締付ける必要はない。
【0022】
反射装置1は磁石11の磁力によって杭15などの被着体に取付けられるので、従来のボルトを使用した取付け作業に比して、格段に短時間で取付け作業を行なうことができる。図1に例示するように、杭15を水底地盤に打設する際に反射装置1を杭15に直接取付けると、杭打ち作業によって反射装置1の位置が次第に下方移動する。そのため、反射装置1のプリズム3で反射した反射光を位置計測装置14によって検知し難くなり、その位置に取付けたままではプリズム3が水中に沈んで、計測が不能になってしまう。
【0023】
そこで、反射装置1を適宜、杭15から取外して上方の別の位置に取付け直す。杭15を継ぎ足す場合は、順次継ぎ足す杭15に反射装置1を取付け直す。別の杭15を打設する際には、その杭15に反射装置1を取付けることになる。
【0024】
本発明では上記したように、迅速に反射装置1の着脱ができるので、プリズムユニット2を直接、杭15に取付けても、打設作業の時間を長期化させることがない。従来のようにボルトによって取付ける反射装置に比較して、取付け時間が大幅に短縮できる。
【0025】
そして、反射装置1を杭15に直接取付けるので、杭打ち機のリーダや船体に取付ける場合に比して、杭15の位置を計測する際の精度を向上させるには有利になる。また、反射装置1を取付けるために杭15に特別な加工をする必要もない。反射装置1は、打設する杭15の上端部を把持するヤットコに取り付けることもできる。
【0026】
また、ベース部8は、連結部10で屈曲するので、杭15などの被着体の表面形状に沿うように変形することができ、磁石11を被着体の表面に当接させ易くなる。例えば、被着体の表面が凹凸状や平面状であっても磁石11を当接させることが可能になる。そのため、様々な表面形状の被着体に対しても反射装置1を着脱することができる。
【0027】
磁石11の磁力によりベース部8を被着体の外周面に環状に取付けた際に、被着体の外周長さの半分以上の範囲に複数のプリズムユニット2が配置される構成にするとよい。これにより、杭15などの被着体が長手方向(図1では上下方向)を回転軸として回転しても所定位置に設置された位置計測装置14によって、プリズムユニット2のプリズム3で反射された光を検知することができる。例えば、被着体の外周長さ全長に均等の間隔で多数(12個〜48個程度)のプリズムユニット2を配置する。
【0028】
図6に例示するように、弾性部材12を介在させて磁石11を剛体プレート9の裏面に取付けることもできる。弾性部材12としては、スプリングやゴム等を用いることができる。この仕様では、それぞれの磁石11が被着体の表面形状に応じて弾性部材12によって押圧されるので、磁石11を被着体の表面形状にさらに追従させ易くなる。そのため、様々な表面形状の被着体に一段と安定して反射装置1を取付け易くなる。
【0029】
本発明の反射装置1は、水底地盤をタンピングする際に、タンピングハンマーの表面に対しても迅速に着脱できる。
【符号の説明】
【0030】
1 反射装置
2 プリズムユニット
3 プリズム
4 プリズム支持体
5 スプリング
6 フレーム
7 取付け手段
8 ベース部
9 剛体プレート
9a 貫通孔
10 連結部
11 磁石
12 弾性部材
13 係止ベルト
14 位置計測装置
15 杭(被着体)
16 杭打ち機
17 クレーン
18 作業船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプリズムユニットと、これらプリズムユニットを被着体に取付ける取付け手段とを備えた位置計測用反射装置において、前記取付け手段が、複数の剛体プレートを折りたたみ可能に連結した帯状のベース部と、これら剛体プレートの裏面に取付けられた磁石とを有し、このベース部の表面側に前記複数のプリズムユニットが、帯状長手方向に間隔をあけて設置されたことを特徴とする位置計測用反射装置。
【請求項2】
前記磁石の磁力によりベース部を被着体の外周面に環状に取付けた際に、被着体の外周長さの半分以上の範囲に前記複数のプリズムユニットが配置される構成にした請求項1に記載の位置計測用反射装置。
【請求項3】
前記磁石が弾性部材を介在させて剛体プレートの裏面に取付けられている請求項1または2に記載の計測用反射御装置。
【請求項4】
前記ベース部を被着体に係止する係止ベルトが設けられた請求項1〜3のいずれかに記載の計測用反射御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−92590(P2012−92590A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241658(P2010−241658)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(500038891)信幸建設株式会社 (16)
【Fターム(参考)】