説明

低アセチル化または高アセチル化された髄膜炎菌の莢膜糖類

【課題】莢膜糖類誘導体の提供。
【解決手段】Neisseria meningitidisの血清群W135およびY由来の莢膜糖類は、そのシアリン酸残基の7位および9位における変化したレベルのO−アセチル化を有し、そして免疫原生組成物を作製するのに使用され得る。未改変の天然の糖類に対し、本発明の誘導体は、キャリアタンパク質への結合の間優先的に選択され、その誘導体の結合体は、天然の多糖と比較して改善された免疫原性を示す。1つの実施形態において、改変された血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖類であって、ここで(a)該糖類中のシアリン酸残基の29%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)該糖類中のシアリン酸残基の26%以上は、9位においてO−アセチル化されている、糖類が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、髄膜炎菌の莢膜糖類およびその結合誘導体の分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
多糖は、重要な生物学的分子であり、これらは、疾患の予防および処置のために製薬産業において広く使用されている。例えば、莢膜多糖は、長年にわたって莢膜細菌(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)およびHib(Haemophilus infeuenzaeB型))に対するワクチンにおいて使用されている。
【0004】
莢膜多糖の免疫原性を(主に子供において)増強するために、結合ワクチンが開発された。これらは、キャリアタンパク質に結合した莢膜糖類を含有する(例えば、参考文献1〜3(特許文献1〜3))。結合は、T−非依存性抗原をT−依存性抗原へと転換する。
【0005】
Neisseria meningitidisの血清群W135(「MenW135」)の莢膜糖類は、シアリン酸−ガラクトース二糖単位のポリマー:
→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→
を含有し、ここで「Neu」は、一般にシアリン酸として公知のノイラミン酸を指す。
【0006】
同様に、Neisseria meningitidisの血清群Y(MenY)の莢膜糖類は、シアリン酸−グルコース二糖単位のポリマー:
→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(1→
を含有する。
【0007】
天然においては、これらの莢膜糖類は、シアリン酸残基のいくつかの7位および9位のいくつかにおいて、O−アセチル化されることが見出されている。W135糖類のO−アセチル化は、参考文献4(非特許文献1)において「最初に報告され」、O−7位およびO−9位におけるO−アセチル化が報告された。O−7位およびO−9位におけるアセチル化はまた、血清群Y糖類においても見出されたが、著者らは、以前の研究により、O−7位、O’−3位またはO’−4位においてO−アセチル化を示したことを報告した。糖類のO−アセチルの量に対するさらなる研究が、参考文献5(非特許文献2)に報告された。
【0008】
参考文献5(非特許文献2)は、血清群W135について、「O−アセチル化は、防御抗体応答を誘発するために重要でないという根拠が増加しつつある」ことを報告する。対照的に、参考文献6(非特許文献3)は、「O−アセチル化は、多糖ワクチンの免疫原性に影響を及ぼす根拠がある」ことを報告する。しかし、「CPS(莢膜多糖)のO−アセチル化は、防御免疫の誘発に重要でないかもしれない」という記述に対して、参考文献5(非特許文献2)の著者らは、血清群135およびYにおけるアセチル化を調査した。その結果では、基本的な条件にて室温で9日間保存した後、これらの2つの血清群について、O−アセチル化における変化は見出されなかった。
【0009】
参考文献7(非特許文献4)は、四価の多糖ワクチンにおいて使用される「W135およびY株のO−アセチル化状態」は、以前には「報告されなかった」ことを報告した。著者らは、参考文献8(非特許文献5)において続けて、「血清群W135およびYのO−アセチル化状態について、ほとんど知られていない」ことを報告し、そして著者らは、さらなる研究は、「最適なワクチン処方への有用な視点を提供し得る」ことを提示したが、このようなさらなる研究および可能な視点の性質(nature)は、詳細には記載されなかった。参考文献9(非特許文献6)は、血清群W135について「ワクチン開発に対するO−アセチル化の関連性は、未特定のままである」ことを報告する。参考文献6(非特許文献3)は、血清群W135または血清群Yの免疫原性に対するO−アセチル化の影響について、多糖は、まだ利用できない」というデータに符合する(2004年、1月)。
【0010】
血清群W135およびYについてのこの困惑および情報の不足は、糖類ワクチンが現在使用される2つの他の血清群と対照的である。Neisseria meningitidis血清群C莢膜多糖のO−アセチル化におけるバリエーションは、広く報告されている(10、11)が、MenjugateTMおよびNeisVac−CTMプロダクトは、両方とも有効であることから、免疫原性に対していかなる負の影響も有するようには見られない。対照的に、血清群A多糖の脱O−アセチル化は、「免疫原性の大幅な低下」に関連している(12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,711,779号明細書
【特許文献2】米国特許第4,761,283号明細書
【特許文献3】米国特許第4,882,317号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lemercinierら、Carbohydr Res(1996)296:83−96
【非特許文献2】JonesおよびLemercinier、J Pharm Biomed(2002)30:1233−47
【非特許文献3】Clausら、Mplecular Microbiology(2004)51:227−39
【非特許文献4】Longworthら、13th International Pathogenic Neisseria Conference Abstract(2002)272
【非特許文献5】Longworthら、FEMS Immunol Med Microbiol(2002)32:119−23
【非特許文献6】Pollardら、Emerging Infectious Diseases(2003)9:1503−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、莢膜糖類誘導体を提供することである。この誘導体は、詳細には、キャリアタンパク質と結合する場合に、そして詳細には、髄膜炎菌の血清群W135およびYについて免疫原性組成物を作製するのに使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
髄膜炎菌の血清群W135およびYについてのワクチンにおけるO−アセチル化の役割への不確かな関与にもかかわらず、本発明者らは、O−アセチル化が、詳細には結合ワクチンの調製の間に実際に関与し得ることを見出した。本発明は、シアリン酸残基の7位および9位における改変されたレベルのO−アセチル化を有するMenW135およびMenY由来の改変された莢膜糖類は、免疫原性組成物を作製するのに使用することができるという発見に基づいている。未改変の天然の糖類に対して、本発明の誘導体は、キャリアタンパク質への結合の間、優先的に選択される。さらに、これらの誘導体の結合体は、天然の多糖と比較して改善された免疫原性を示す。
【0015】
(改変された糖類)
従って、本発明は、改変された血清群W135の髄膜炎菌の莢膜糖類を提供し、ここで:(a)糖類中のシアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化される;および/または(b)糖類中のシアリン酸残基のy%以上は、9位においてO−アセチル化される。
【0016】
同様に、本発明は、改変された血清群Yの髄膜炎菌の莢膜糖類を提供し、ここで:(a)糖類中のシアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化される;および/または(b)糖類中のシアリン酸残基のy%以上またはz%以下は、9位においてO−アセチル化される。
【0017】
xの値は、血清群に依存する:血清群W135について、xは、29以下である(例えば、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)であり;血清群Yについて、xは、9以下である(例えば、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)。
【0018】
yの値もまた血清群に依存する:血清群W135について、yは26以上である(例えば、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100);血清群Yについて、yは、29以上である(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100)。
【0019】
zの値は27以下である(例えば、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)。
【0020】
好ましくは、x>mであり、ここで、mは、0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される。
【0021】
好ましくは、z>pであり、ここで、pは0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される。
【0022】
(本発明の糖類)
より一般には、本発明は、必要に応じてキャリアタンパク質に結合された、改変された髄膜炎菌の莢膜糖類を提供し、ここで、この糖類は、二糖単位{[シアリン酸]−[ヘキソース]}のn個以上の繰り返し単位を含有し、ここで、このヘキソースは、ガラクトースまたはグルコースのいずれかであり、そしてnは1〜100の整数であり、そしてここで、(a)上記n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)ヘキソースがガラクトースである場合、上記n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のy%以上は、9位においてO−アセチル化され、およびヘキソースがグルコースである場合、上記n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のy%以上またはz%以下は、9位においてO−アセチル化される。
【0023】
xの値はヘキソースに依存する:ヘキソースがガラクトースである場合、xは29以下である(例えば、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0);ヘキソースがグルコースである場合、xは、9以下である(例えば、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)。
【0024】
yの値は、ヘキソースに依存する:ヘキソースがガラクトースである場合、yは、26以上である(例えば、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100);ヘキソースがグルコースである場合、yは29以上である(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100)。
【0025】
zの値は、27以下である(例えば、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)。
【0026】
好ましくは、上に規定されるとおりにx>mである。好ましくは、上に規定されるとおりにz>pである。
【0027】
好ましくは、シアリン酸は、N−アセチルノイラミン酸である。
【0028】
ヘキソースがガラクトースである場合、{[シアリン酸]−[ヘキソース]}二糖単位は、好ましくは:
→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(1→
である。
【0029】
ヘキソースがグルコースである場合、{[シアリン酸]−[ヘキソース]}二糖単位は、好ましくは:
→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(1→
好ましくは、改変された髄膜炎菌の莢膜糖類は、キャリアタンパク質に結合される。このような結合体において:(i)好ましくは2〜9%の間の、より好ましくは4〜8%の間の、より好ましくは5〜7%の間の、さらにより好ましくは約6%の、シアリン酸残基は、7位においてO−アセチル化され;(ii)好ましくは35〜55%の間の、より好ましくは40〜50%の間の、より好ましくは42〜46%の間の、さらにより好ましくは約43%(ヘキソースが、Galである場合)の、または約45%(ヘキソースが、Glcである場合)の、シアリン酸残基は、9位においてO−アセチル化される。
【0030】
本発明はまた、血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖類のa分子を含有する組成物を提供し、ここで莢膜糖類分子あたりのシアリン酸残基の平均数は、bであり、そしてここで:(a)組成物中のa・b血清群W135シアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)組成物中のa・b血清群W135シアリン酸残基のy%以上は、9位においてO−アセチル化され、そしてここで、xおよびyは、上に規定されたとおりである。
【0031】
本発明はまた、血清群Y髄膜炎菌莢膜糖類のa分子を含有する組成物を提供し、ここで莢膜糖類分子あたりのシアリン酸残基の平均数は、bであり、そしてここで:(a)組成物中のa・b血清群Yシアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)組成物中のa・b血清群Yシアリン酸残基のy%以上またはz%以下は、9位においてO−アセチル化され、そしてここで、x、yおよびzは、上に規定されたとおりである。
【0032】
上記集合における糖類は、タンパク質キャリアに結合され得、そして/または溶液中で遊離であり得る。
【0033】
好ましくは本発明の糖類または結合体は、精製された形態(例えば、実質的に天然の多糖が存在しない)である。
【0034】
(構造の描写)
本発明はまた、必要に応じてキャリアタンパク質に結合された糖類を提供し、この糖類は、以下の二糖単位:
【0035】
【化2】

のn個以上の繰り返しを含有し、ここで:
nは1〜100の整数であり、
XおよびYは、−Hおよび−OHから選択される異なる基であり、
は、−Hおよび−COCHから独立して選択され、および各々の二糖単位において等しくても異なっていてもよく、
は、−Hおよび−COCHから独立して選択され、および各々の二糖単位において等しくても異なっていてもよく、そして
Xが−OHであり、かつYが−Hである場合、(a)Rのx%以下は、−COCHであり、および/または(b)Rのy%以上は、−COCHであり、
Xが−Hであり、かつYが−OHである場合、(a)Rのx%以下は、−COCHであり、および/または(b)Rのy%以上またはz%以下は、−COCHである。
【0036】
Xが−OHであり、かつYが−Hである場合、xは29以下であり(例えば、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)、およびyは、26以上である(例えば27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100)。
【0037】
Xが−Hであり、Yが−OHである場合、xは9以下であり(例えば、8、7、6、5、4、3、2、1または0.5)、yは29以上であり(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100)、そしてzは、27以下である(例えば、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5または0)。
【0038】
好ましくは、x>mであり、ここで、mは上に規定されたとおりである。好ましくは、z>pであり、ここで、pは上に規定されたとおりである。
【0039】
好ましくは、糖類は、キャリアタンパク質に結合される。
【0040】
糖類がキャリアタンパク質に結合され、かつXは−OHであり、かつYが−Hである場合、(a)好ましくは約2〜10%、より好ましくは約4〜8%、より好ましくは約5〜7%、さらにより好ましくは約6%のRは、−COCHであり;および/または(b)好ましくは約35〜55%、より好ましくは約40〜50%、より好ましくは約42〜44%、さらにより好ましくは約43%のRは、−COCHである。
【0041】
糖類がキャリアタンパク質に結合され、かつXは−Hであり、かつYが−OHである場合、(a)好ましくは約2〜9%、より好ましくは約4〜8%、より好ましくは5〜7%、さらにより好ましくは約6%のRは、−COCHであり;および/または(b)好ましくは約35〜55%、より好ましくは約40〜50%、より好ましくは約42〜46%、さらにより好ましくは約45%のRは、−COCHである。
【0042】
本発明の糖類および結合体の7位および9位におけるシアリン酸残基のO−アセチル化状態は、以下に記載されるとおりに1Dおよび2DプロトンNMRを使用して計測され得る。HPAECが使用されて、全体のO−アセチル化を計測し得るが、異なる位置の間を見分けることはできない(234)。イオンスプレーMSは、MenAにおけるO−アセチル化を分析するために使用されている(235)。
【0043】
(改変された糖類を調製するためのプロセス)
本発明はまた、免疫原性結合体を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、(1)出発髄膜炎菌莢膜糖類およびキャリアタンパク質を提供する工程であって、上記糖類およびキャリアタンパク質の一方または両方は、必要に応じて他方に対して反応性であるように、改変されている工程;(2)上記糖類と上記キャリアタンパク質との間に共有結合を形成する工程;(3)得られたグリコ結合体を精製する工程、を包含し、ここで工程(1)と工程(3)との間(例えば、工程(2)の間)、出発糖類におけるシアリン酸残基の9位におけるO−アセチル化の程度は、増加する。
【0044】
髄膜炎菌莢膜糖類は、好ましくは、血清群W135または血清群Y由来である。
【0045】
(莢膜糖類の出発物質)
本発明の改変された莢膜糖類は、N.meningitidisの血清群W135またはYの莢膜において見出される糖類から得ることができる。従って、本発明の糖類は、好ましくは改変されたN.meningitidisの血清群W135糖類と、改変されたN.meningitidisの血清群Y糖類である。
【0046】
髄膜炎菌莢膜多糖は、代表的には、多糖の沈降(例えば、カチオン界面活性剤を使用する)、エタノール分画、(タンパク質を除去するための)冷フェノール抽出および(LPSを除去するための)超遠心の工程を包含するプロセスにより調製される(例えば、参考文献13)。
【0047】
より好ましいプロセス(14)は、多糖の沈降、次に低級アルコールを使用する沈降した多糖の可溶化を包含する。沈降は、カチオン性界面活性剤(例えば、テトラブチルアンモニウム塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、臭化物塩)、または臭化ヘキサジメトリンおよびミリスチルトリメチルアンモニウム塩)を使用して達成され得る。臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)は、特に好ましい(15)。沈降した物質の可溶化は、低級アルコール(例えば、メタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなど)を使用して達成され得るが、CTAB−多糖複合体の可溶化のためには、エタノールが特に適切である。エタノールは、好ましくは、沈降した多糖に添加されて、50%と95%との間の(エタノールと水との全容量に基づく)最終濃度を得る。
【0048】
再可溶化後、多糖は、さらに処理されて、不純物を除去され得る。これは、わずかな汚染も受け入れられない状況(例えば、ヒトワクチンの作製)において、特に重要である。これは、代表的には、1回以上の濾過工程(例えば、デプス濾過(depth filtration)、活性化炭素が使用され得る濾過、サイズ濾過(size filtration)、および/または限外濾過)を包含する。一旦濾過されて、不純物を除去すると、多糖は、さらなる処理および/またはプロセスのために沈降され得る。これは、都合のよいことに、カチオンを交換することにより(例えば、カルシウム塩またはナトリウム塩の添加により)達成され得る。
【0049】
本発明の糖類は、多糖またはオリゴ糖であり得る。オリゴ糖は、細菌中に存在する天然の莢膜多糖で見出されるよりも低い重合度を有する。
【0050】
本発明は、好ましくはオリゴ糖を使用する。これらは、好ましくは、30未満(例えば、15と25との間、好ましくは15〜20あたり)の平均重合度を有する。重合度は、都合のよいことにイオン交換クロマトグラフィーまたは比色定量アッセイにより計測され得る(16)。
【0051】
オリゴ糖は、都合のよいことに、精製した莢膜多糖のフラグメント化により(例えば、加水分解、マイルドな酸での処理、加熱などにより)形成される。このフラグメント化は、通常、所望のサイズの断片の精製に続く。加水分解が実施された場合、加水分解物は一般に短い長さのオリゴ糖を除去するための大きさにされる。これは、イオン交換クロマトグラフィーが続く限外濾過のような種々の手段で達成され得る。約4未満の重合度を有するオリゴ糖は、好ましくは、血清群W135および血清群Yについて除去される。
【0052】
天然の供給源からの精製の代替として、莢膜糖類(および特にオリゴ糖)は、全合成または部分合成(例えば、参考文献17に開示されるHib合成、および参考文献18に開示されるMenA合成)により得ることが出来る。
【0053】
(共有結合)
本発明の改変された糖類は、糖類に適用される任意の通常の下流プロセス(例えば、誘導、結合、フラグメント化など)に供され得る。免疫原性を増強するために、本発明の改変された糖類は、好ましくはキャリアタンパク質に結合される:キャリアタンパク質への結合は、少児ワクチンについて特に有用であり(19)、および周知の技術である(例えば、参考文献20〜28などに概説される)。
【0054】
従って、本発明は、キャリアタンパク質と本発明の糖類との結合体を提供する。
【0055】
好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイドまたは破傷風類トキソイドのような細菌性毒素またはトキソイドである。ジフテリア毒素のCRM197誘導体(29〜31)が特に好ましい。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidisの外膜タンパク質(32)、合成ペプチド(33、34)、熱ショックタンパク質(35、36)、百日咳タンパク質(37、38)、サイトカイン(39)、リンホカイン(39)、ホルモン(39)、成長因子(39)、種々の病原体由来抗原に由来する多数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質(40)(例えば、N19タンパク質(41))、H.influenzaeに由来するタンパク質D(42、43)、肺炎球菌表面タンパク質PspA(44)、ニューモリシン(pneumolysin)(45)、鉄摂取タンパク質(46)、C.difficileに由来する毒素AまたはB(47)、変異体細菌毒素(例えば、Glu−29(48)において置換されているコレラ毒素のようなコレラ毒素「CT」、またはE.coli非耐熱性毒素「LT」)などが挙げられる。好ましいキャリアは、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、H.influenzaeタンパク質D、およびCRM197がある。
【0056】
本発明の組成物内において、例えば、キャリアの抑制のリスクを軽減するために1個を超えるキャリアタンパク質を使用することが可能である。従って、種々のキャリアタンパク質が、種々の血清群について使用され得る。例えば、血清群W135糖類は、CRM197に結合され得、一方血清群Y糖類は、破傷風トキソイドに結合され得る。また、特定の糖類抗原について1種より多いキャリアタンパク質を使用することが可能である。例えば、血清群Y糖類は、2種の群で存在し得、いくつかはCRM197に結合され、残りは破傷風トキソイドに結合される。しかし、一般に、全ての血清群について同じキャリアタンパク質を使用することが好ましく、CRM197は、好ましい選択である。
【0057】
1種類のキャリアタンパク質は、1種を超える糖類抗原を送達し得る(49)。例えば、1種類のキャリアタンパク質は、血清群W135およびY由来の糖類に結合し得る。しかし、一般に、各々の血清群について別個の結合体を有することが好ましい。
【0058】
1:5(すなわち、過剰なタンパク質)と5:1(すなわち過剰な糖類)との間の糖:キャリア比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:2と5:1との間の比が好ましい。同様に、1:1.25と1:2.5との間の比がより好ましい。この比は、MenW135結合体については約1.1であり得、MenY結合体については0.7であり得る。10μg量のMenW135糖類、またはMenY糖類に基づいて、好ましい結合体は、6.6〜20μgのCRM197キャリアを含有する。
【0059】
遊離キャリアタンパク質と結合して、結合体は使用され得る(50)。所与のキャリアタンパク質が、本発明の組成物中に遊離形態と結合形態の両方で存在する場合、非結合形態は、好ましくは、全体として組成物中のキャリアタンパク質の総量の5重量%以下であり、より好ましくは、2重量%未満で存在する。
【0060】
任意の適切な結合反応は、必要な場合、任意の適切なリンカーとともに使用され得る。
【0061】
上記糖類は、代表的に、結合前に活性化されるかまたは官能基化される。活性化は、例えば、シアン化試薬(例えば、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(51、52など)))を含み得る。他の適切な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する;参考文献26のイントロダクションもまた 参照のこと。
【0062】
リンカー基を介した結合が、任意の公知の手順(例えば、参考文献3および参考文献53に記載の手順)を用いて作製され得る。結合の1種のタイプは、多糖の還元的アミノ化、結果として生じるアミノ基とアジピン酸リンカー基の一端とのカップリング、そして、次いで、タンパク質とアジピン酸リンカー基の他端とのカップリングを包含する(24、54、55)。結合の好ましい型は、カルボニルリンカーであり、この結合は、改変された糖類の遊離ヒドロキシル基と、CDIとの反応(56、57)、次にタンパク質との反応により形成され得、カルバメート結合を形成する。結合の別の好ましいタイプは、アジピン酸リンカーであり、この結合は、改変された糖類上の遊離−NH基とアジピン酸とを(例えば、ジイミド活性化を使用して)結合し、次いで、タンパク質を得られた糖類−アジピン酸中間体と結合することにより形成され得る(24、54、58)。結合の別の好ましい型は、糖類の遊離したヒドロキシル基とシアン化試薬(例えば、p−ニトロフェニルシアネート、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)、N−シアノトリエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA))との反応、次にタンパク質上のアミン基と(必要に応じてスペーサー(例えば、ヒドラジン)を解して)反応することにより形成され得る(59、60)。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド(61)、ニトロフェニル−エチルアミン(62)、ハロアシルハライド(63)、グリコシド結合(2、64)、6−アミノカプロン酸(65)、ADH(66)、C〜C12部分(67)などが挙げられる。リンカーの使用に対する代替として、直接的な結合が使用され得る。タンパク質に対する直接的な結合は、例えば、参考文献2および68に記載されるように、多糖の酸化、次にタンパク質の還元的アミノ化を包含し得る。
【0063】
結合は、一級ヒドロキシル基のアノマー末端の還元、一級ヒドロキシル基の任意の保護/脱保護;一級ヒドロキシル基とCDIとの反応によるCDIカルバメート中間体の形成;およびCDIカルバメート中間体とタンパク質上のアミノ基との結合、に関し得る。
【0064】
アミノ基を糖類へ導入し(例えば、末端=O基を−NHで置換する工程)、次にアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)による誘導体化、およびキャリアタンパク質との反応を包含するプロセスが、好ましい。別の好ましい反応は、プロテインDキャリアを使用するCDAP活性化を使用する。
【0065】
結合後、遊離した糖類および結合した糖類は、分離され得る。多くの適切な方法(疎水性クロマトグラフィー、接線(tangential)限外濾過、ダイアフィルトレーションなどが挙げられる)が存在する(参考文献69、および70などを参照のこと)。
【0066】
本発明の組成物は、結合オリゴ糖を含有するという点において、オリゴ糖調製は、結合の前に行われることが好ましい。
【0067】
(薬学的組成物)
本発明は、(a)本発明の改変された莢膜糖類および/または本発明の結合体、および(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含有する免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を提供する。糖類、または糖類タンパク質結合体に基づくワクチンは、当該分野で周知であり、脱O−アセチル化糖類に基づく結合体(NeisVac−CTM)が挙げられる。本発明のワクチンは、予防薬(すなわち、感染を予防する)か、または治療薬(すなわち、感染を処置する)のいずれでもよいが、代表的には、予防薬である。
【0068】
「薬学的に受容可能なキャリア」としては、それ自体は薬学的組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導しない、任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的には、大きく、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース(71)、脂質凝集物(例えば、油小滴またはリポソーム)および不活性ウイルス粒子)である。このようなキャリアは、当業者に周知である。上記ワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)を含有し得る。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)が、存在し得る。薬学的に受容可能な賦刑剤の詳細な議論は、参考文献72において入手可能である。
【0069】
代表的には、薬学的組成物は、注射可能物(溶液または懸濁液)として調製される;注射前に液状ビヒクル中に溶解または懸濁するのに適切な固体形態もまた、調製され得る。調製物はまた、アジュバントの効果を高めるためにリポソーム中で乳化、またはカプセル化され得る。薬学的組成物の直接的な送達は、一般に、非経口である(例えば、経皮的にか、腹腔内か、静脈内かまたは筋肉内か、あるいは組織の間隙の空間に送達されるかのいずれかで注射されることよる)。薬学的組成物はまた、病巣に投与され得る。投与の他の形態としては、経口投与および肺投与、直腸(座剤)、および経皮(transdermal)適用、または経皮(transcutaneous)適用(例えば、参考文献73)、針およびハイポスプレー(hypospray)が挙げられる。
【0070】
この組成物のpHは、好ましくは6と8との間であり、好ましくは約7である。安定なpHは、緩衝液の使用により維持され得る。組成物が、水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することが好ましい(74)。この組成物は、滅菌性であり得、および/または発熱因子を含まない。本発明の組成物は、ヒトに関して等張性であり得る。
【0071】
本発明の組成物は、水性形態(すなわち、溶液または懸濁液)でも乾燥形態(例えば、凍結乾燥粉末)でもよい。液体処方物は、この組成物が、この水性媒体から再構成する必要なく、そのパッケージされた形態から直接投与されることを可能にし、従って、注射のために理想的である。このような組成物は、バイアル中に存在し得るか、またはすでに充填されたシリンジ中に存在し得る。このシリンジは、針付きで供給されても、針なしで供給されてもよい。シリンジは、1回用量の組成物を含有するが、バイアルは、1回用量または複数回用量を含有し得る。
【0072】
本発明の液体組成物はまた、凍結乾燥形態から他のワクチンを再構成する(例えば、凍結乾燥Hib抗原、またはDTP抗原を再構成する)のに適切である。本発明の組成物が、このような即時的再構成に使用される点について、本発明はキットを提供する。このキットは、2つのバイアルを含み得るか、または1つのすでに充填されたシリンジと1つのバイアルとを含み得、このシリンジの内容物は、注射前にバイアルの内容物を反応性にするのに使用され得る。
【0073】
本発明の乾燥組成物は、貯蔵安定性を提供するが、投与前に液体形態に再構成されるなければならない。本発明は、本発明の乾燥組成物を含有する第1のコンテナと、第1のコンテナの内容物を再構成する水性組成物を含有する第2のコンテナとを備えるキットを提供する。第2のコンテナ中の水性組成物は、抗原(例えば、非髄膜炎菌性)を含み得るか、または賦形剤のみを含み得る。第1のコンテナは、一般にはバイアルであり;第2のコンテナもまた、バイアルであり得るか、またはすでに充填されたシリンジであり得る。
【0074】
乾燥組成物を調製するために、安定化剤(stabiliser)(例えば、トレハロースおよびスクロースのような二糖、またはマンニトールのような糖アルコール)が使用され得る。これらの成分は、凍結乾燥前に添加され、再構成された組成物中において現れる。
【0075】
組成物のさらなる成分としては:例えば、約9mg/mlにおける塩化ナトリウム(張度のため);一般に、0.01%未満の低レベルにおける界面活性剤(例えば、Tween80のようなTween(ポリソルベート));および塩類緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)が挙げられる。この組成物は、抗生物質を含み得る。
【0076】
本発明の組成物は、単位用量形態または複数用量形態でパッケージングされ得る。複数用量形態のために、事前に充填されているシリンジよりも、バイアルが好ましい。有効な投薬容量は、慣用的に確立され得るが、注射のための上記組成物の代表的なヒト用量は、0.5mlの容量を有する。
【0077】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効量の抗原、ならびに必要とされる場合、任意の他の成分を含有する。「免疫学的有効量」とは、単回用量または連続の一部としてのどちらかにおける個体への投与量が、処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康条件および身体的条件、年齢、処置される個体の分類学上の群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、その個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される予防の程度、そのワクチンの処方、処置する医師による医学的状態の評価および他の関連因子に依存して変化する。上記量は、慣習的な試験を通して決定され得る比較的広範な範囲にわたることが期待される。
【0078】
用量あたりの各々の髄膜炎糖類抗原の代表的な量は、1μgと20μgとの間である(例えば、約1μg、約2.5μg、約4μg、約5μg、または約10μg(糖類として示される))。
【0079】
各々の糖類は、用量あたり実質的に同じ量で存在し得る。しかし、過剰なMenY糖類が好適であり得る(例えば、1.5:1以上のMenY:MenW135比(w/w))。
【0080】
結合体が存在する場合、組成物はまた、遊離キャリアタンパク質を含有し得る(50)。好ましくは、遊離キャリアタンパク質は、組成物の5重量%未満で存在し;より好ましくは、2重量%未満で存在する。
【0081】
本発明の組成物は、一般に1つ以上のアジュバントを含有する。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
(A.無機質含有組成物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な無機質含有組成物としては、無機塩(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩)が挙げられる。本発明は、無機塩(例えば、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、ホスフェート(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、スルフェートなど)(例えば、参考文献75の第8章および第9章を参照のこと)、または異なる無機化合物の混合物を含み、上記化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)をとり、そして、吸着が好ましい。上記無機質含有組成物はまた、無機塩の粒子として処方され得る(76)。
【0083】
(B.油エマルジョン)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な油エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン(例えば、MF59)が挙げられる(参考文献75の第10章;参考文献77もまた参照のこと)。(5%スクアレン、0.5%Tween 80および0.5%Span 85、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を用いて、サブミクロン粒子に処方される)。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、使用され得る。
【0084】
(C.サポニン処方物[参考文献75の第22章])
サポニン処方物はまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花においてさえ見られる、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの不均一な群である。Quillaia saponaria(モリナの木(Molina tree))の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライドベール(brides veil))およびSaponaria officianalis(サボンソウ(soap root))から市販品として得られ得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物(例えば、QS21)および液体処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販される。
【0085】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。これらの技術を用いて、特定の精製フラクションが同定され、これらのフラクションとしては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、上記サポニンは、QS21である。QS21の生成方法は、参考文献78に開示されている。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール)を含有し得る(79)。
【0086】
サポニンとコレステロールとの組み合わせが、使用され、免疫刺激複合体(immunostimulating complex)(ISCOM)と呼ばれる独特な粒子を形成し得る(参考文献75の第23章)。ISCOMとしてはまた、代表的に、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)が挙げられる。任意の公知のサポニンが、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、上記ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCのうちの1つ以上を含む。ISCOMは、参考文献79〜81にさらに記載されている。必要に応じて、上記ISCOMは、さらなる洗剤を含まなくてもよい(82)。
【0087】
サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、参考文献83および84に見られ得る。
【0088】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)はまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的に、必要に応じてリン脂質と組み合わされるかまたはリン脂質とともに処方されたウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。それらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、そして、一般的に、あらゆる天然ウイルスゲノムを含まない。上記ウイルスタンパク質は、ウイルス全体から、組換え的に生成されるかまたは単離され得る。ビロソームまたはVLPにおける使用のために適切なこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス由来のタンパク質(例えば、コアタンパク質またはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス由来のタンパク質、麻疹ウイルス由来のタンパク質、シンドビスウイルス由来のタンパク質、ロタウイルス由来のタンパク質、口蹄疫ウイルス由来のタンパク質、レトロウイルス由来のタンパク質、ノーウォークウイルス由来のタンパク質、ヒトパピローマウイルス由来のタンパク質、HIV由来のタンパク質、RNAファージ由来のタンパク質、Qβファージ由来のタンパク質(例えば、コートタンパク質)、GAファージ由来のタンパク質、frファージ由来のタンパク質、AP205ファージ由来のタンパク質およびTy由来のタンパク質(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)が挙げられる。VLPは、参考文献85〜90においてさらに議論されている。ビロソームは、例えば、参考文献91においてさらに議論されている。
【0089】
(E.細菌誘導体または微生物誘導体)
本発明における使用のために適切なアジュバントは、細菌誘導体または微生物誘導体(例えば、腸内細菌リポ多糖類(LPS)の無毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドならびにADPリボシル化トキシンおよびそれらの無毒性誘導体)を含む。
【0090】
LPSの無毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3つの脱O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4つ、5つまたは6つのアシル化鎖との混合物である。3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小さい粒子」形態は、参考文献92に開示されている。このような3dMPLの「小さい粒子」は、0.22μmメンブレンを通って滅菌濾過されるために充分小さい(92)。他の無毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、 RC−529))が挙げられる(93、94)。
【0091】
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドA誘導体(例えば、OM−174)が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献95および96に記載されている。
【0092】
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(グアノシンへのホスフェート結合により連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列が挙げられる。二本鎖RNAおよびパリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0093】
CpGは、ヌクレオチド改変体/アナログ(例えば、ホスホロチオエート改変体)を含み得、そして、二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献97、98および99は、可能なアナログ置換(例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換)を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献100〜105において、さらに議論されている。
【0094】
上記CpG配列(例えば、GTCGTTモチーフまたはTTCGTTモチーフ)は、TLR9に関与し得る(106)。上記CpG配列(例えば、CpG−A ODN)は、Th1免疫応答誘導に対して特異的であり得るか、または、上記CpG配列(例えば、CpG−B ODN)は、B細胞応答誘導に対して、より特異的であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献107〜109において議論されている。好ましくは、上記CpGは、CpG−A ODNである。
【0095】
好ましくは、上記CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識のために利用可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、それらの3’末端に結合され、「イムノマー(immunomer)」を形成し得る。例えば、参考文献106および110〜112を参照のこと。
【0096】
細菌ADP−リボシル化トキシンおよびその無毒化誘導体が、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。好ましくは、上記タンパク質は、E.coli由来(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ由来(「CT」)または百日咳由来(「PT」)である。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化トキシンの使用は、参考文献113に記載されており、そして、非経口的アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化トキシンの使用は、参考文献114に記載されている。上記トキシンまたはトキソイドは、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロトキシン(holotoxin)の形態である。好ましくは、上記Aサブユニットは、無毒化変異を含み;好ましくは、上記Bサブユニットは、変異していない。好ましくは、上記アジュバントは、無毒化LT変異体(例えば、LT−K63、LT−R72およびLT−G192)である。アジュバントとしてのADP−リボシル化トキシンおよびその無毒性誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)の使用は、参考文献115〜122において見られ得る。アミノ酸置換についての多くの参考文献は、好ましくは、参考文献123に記載のADP−リボシル化トキシンのAサブユニットおよびBサブユニットの整列に基づき、特に、本明細書中で、その全体が参考として援用される。
【0097】
(F.ヒト免疫調節因子)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なヒト免疫刺激因子としては、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)(124)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子)が挙げられる。
【0098】
(G.生体接着因子および粘膜接着因子)
生体接着因子および粘膜接着因子はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着因子としては、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(125)または粘膜接着因子(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る(126)。
【0099】
(H.微粒子)
微粒子はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。生分解性かつ無毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)と、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とから形成される微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは、直径約200nm〜約30μm、そして、最も好ましくは、直径約500nm〜約10μmの粒子)が、好ましく、必要に応じて、処理されて、(例えば、SDSによる)負に荷電した表面または(例えば、カチオン性洗剤(例えば、CTAB)による)正に荷電した表面を有する。
【0100】
(I.リポソーム(参考文献75の第13章および第14章))
アジュバントとしての使用のために適切なリポソーム処方物の例は、参考文献127〜129に記載されている。
【0101】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用のために適切なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる(130)。このような処方物としては、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(131)および少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤(132)が、さらに挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群より選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0102】
(K.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、参考文献133および134において記載されている。
【0103】
(L.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が挙げられる。
【0104】
(M.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なイミダゾキノロン化合物の例としては、参考文献135および136にさらに記載される、Imiquamodおよびその相同体(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられる。
【0105】
本発明はまた、上に定義されるアジュバントの1つ以上の局面の組み合わせを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:(1)サポニンおよび水中油エマルジョン(137);(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(138):(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(139);(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油エマルジョンとの組み合わせ(140);(6)マイクロフルイダイズされてサブミクロンエマルジョンにされるか、またはボルテックスされてより大きい粒子サイズのエマルジョンを生じるかのいずれかの、10% スクアレン、0.4% Tween 80TM、5% プルロニックブロック(pluronic−block)ポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF;(7)2% スクアレン、0.2% Tween 80、ならびにモノホスホリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1つ以上の細菌細胞壁構成要素を含むRibiTMアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem)(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM));ならびに(8)1つ以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの無毒性誘導体(例えば、3dMPL)。
【0106】
免疫刺激因子として作用する他の物質は、参考文献75の第7章に開示されている。
【0107】
アルミニウム塩およびリン酸カルシウムは、好ましい非経口アジュバントである。変異毒素は、好ましい経粘膜アジュバントである。
【0108】
リン酸アルミニウムアジュバントを含む本発明の組成物が好ましい。水酸化アルミニウムは、好ましくは、存在しない。リン酸アルミニウムアジュバントは、1mlあたり約0.6mg Al3+で含まれ得る。
【0109】
(免疫原の組み合わせ)
本発明の組成物は、本発明の改変された血清群W135髄膜炎菌莢膜糖類および本発明の改変された血清群Y髄膜炎菌莢膜糖類の両方を含有し得る。
【0110】
他の抗原はまた、本発明の組成物に含まれ得る。従って、本発明は、本発明の改変された血清群W135髄膜炎菌莢膜糖類および/または本発明の改変された血清群Y髄膜炎菌莢膜糖類を含み、そして以下のリストから選択される1つ以上の抗原を含む組成物を提供する:
N.meningitidisの血清群A由来の莢膜糖類抗原
N.meningitidisの血清群C由来の莢膜糖類抗原
N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献141〜150に記載される)
N.meningitidisの血清群Bの微小水疱(151)、「天然のOMV」(152)、ブレブ、または外膜水疱(例えば、参考文献153〜158など)。これらは、細菌から調製され得、この細菌は、例えば、免疫原性を増加するため(例えば、免疫原を多量に発現する)、毒性を軽減するため、莢膜多糖の合成を阻害するため、PorA発現をダウンレギュレートするためなどで、遺伝的に操作されている(159〜162)。これらは、過剰水疱化(hyperblebbing)株から調製され得る(163〜166)。非病原性のNeisseria由来の小庖が、含まれ得る(167)。OMVは、界面活性剤を使用することなく調製され得る(168、169)。これらは、その表面上に非ナイセリアタンパク質を発現し得る(170)。これらは、LPSを除去され得る。これらは、組み換え抗原と混合され得る(153、171)。種々のクラスI外膜タンパク質サブタイプを有する、細菌由来の小庖が、使用され得る(例えば、各々3種のサブタイプを示す2種の異なる遺伝的に操作された小胞集団を使用する6種の異なるサブタイプ(172、173)、または各々3種のサブタイプを示す3種の異なる遺伝的に操作された小胞集団を使用する9種の異なるサブタイプなど)。有用なサブタイプとしては、以下が挙げられる:P1.7,16;P1.5−1,2−2;P1.19,15−1;P1.5−2,10;P1.12−1,13;P1.7−2,4;P1.22,14;P1.7−1,1;P1.18−1,3,6。
【0111】
Haemophilus influenzae B由来の糖類抗原(例えば、174)
Streptococcus pneumoniae由来の抗原(例えば、208、209、210)
A型肝炎由来の抗原(例えば、不活性化されたウイルス)(例えば、175、176)
B型肝炎由来の抗原(例えば、表面抗原および/または中心抗原(core antigen)(例えば、176、177)。
【0112】
Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、百日咳ホロトキシン(PT)、およびB.pertussis由来の糸状赤血球凝集素(FHA))であって、必要に応じてペルタクチンおよび/または凝集体2および3と組み合わされる(例えば、参考文献178および179)。細胞百日咳抗原が、使用され得る。
【0113】
ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド(例えば、参考文献180の第3章)(例えば、CRM197変異体)(例えば181)。
【0114】
破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)(例えば、参考文献180の第4章)。
【0115】
ポリオ抗原(例えば、182、183)(例えば、IPV)。
【0116】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合解毒され得る(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による百日咳毒素の解毒)(179)。
【0117】
ジフテリア抗原が、薬学的組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原もまた含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含むことが好ましい。
【0118】
薬学的組成物中の抗原は、代表的には、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘導するのに十分である。
【0119】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩アジュバントに吸着される。
【0120】
本発明の薬学的組成物中のタンパク質抗原の使用の代替として、抗原をコードする核酸が使用され得る(例えば、参考文献184〜192)。従って、本発明の薬学的組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えば、プラスミド形態のDNA)により、置き換えられ得る。同様に、本発明の組成物は、糖類抗原を模倣するタンパク質(例えば、ミモトープ(mimotope)(193)または抗イディオタイプ抗体)を含有する。これらは、個体の糖類成分を置換し得るか、またはそれらを補充し得る。例として、ワクチンは、糖類自体の代わりに、MenG(194)またはMenA(195)の莢膜多糖のペプチド模倣物を含有し得る。
【0121】
(合わされた髄膜炎菌性ワクチン)
本発明の好ましい組成物は、本発明の改変された血清群W135髄膜炎菌莢膜糖類、本発明の改変された血清群Y髄膜炎菌莢膜糖類、および血清群C莢膜糖類を含有し、ここで、莢膜糖類は、キャリアタンパク質に結合される。この組成物はまた、好ましくは、キャリアタンパク質に結合した、血清群Aの莢膜糖類を含有し得る。これらの組成物中の糖類は、好ましくはオリゴ糖である。オリゴ糖結合体は、参考文献14に開示されるように調製され得る。
【0122】
血清群A糖類は、O−アセチル化されるか、または脱O−アセチル化され得る。血清群C糖類は、O−アセチル化されるか、または脱O−アセチル化され得る。
【0123】
好ましいMenC結合体は、10μgの糖類に基づき、12.5〜25μgのCRM197キャリアを含む。好ましいMenA結合体は、10μgの糖類に基づき、12.5〜33μgのCRM197キャリアを含む。
【0124】
MenCおよびMenA結合体についての代表的な用量は、MenW135およびMenYと等しく、すなわち、1μgと20μgの間(例えば、約1μg、約2.5μg、約4μg、約5μg、または約10μg)である。
【0125】
血清群C:W135:Y由来の糖類についての好ましい比(w/w)は、1:1:1;1:1:2;1:1:1;2:1:1;4:2:1;2:1:2;4:1:2;2:2:1;および2:1:1である。血清群A:C:W135:Y由来の糖類についての好ましい比は、1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1である。単回用量あたり各々の糖類の実質的に等しい量を使用することが、好ましい。
【0126】
組成物が、血清群Aの糖類を含む場合、この組成物は、1つ以上の血清群C、W135、および/またはY糖類を含む水性の組成物を使用して、凍結乾燥形態から血清群A糖類を再構成することにより調製され得る。
【0127】
組成物が、血清群Aの糖類を含む場合、この組成物は、改変された糖類であり得、この糖類は、天然の糖類上の1つ以上のヒドロキシル基が、保護基により置換されている(196)。この改変は、加水分解への耐性を改善する。全てのまたは実質的に全ての単糖ユニットが保護基置換を有し得ることが好ましい。
【0128】
血清群Y、W135およびC(ならびに、必要に応じてA)由来の糖類抗原を含むことと同様に、本発明の組成物は、血清群B由来の1つ以上の抗原を含み得る。血清群A、C、W135およびYとは別に、MenBの莢膜糖類は、その自己抗原の類似性により、ヒトの免疫としての使用に適切でない。それゆえに、糖類抗原が、MenBについて使用される場合、改変された糖類を使用することが必要とされ、例えば、糖類のシアリン酸残基中のN−アセチル基は、N−アシル基で置換される。適切なN−アシル基は、C〜Cのアシル基(例えば、N−プロピオニル)である(197)。しかし、糖類抗原を使用するよりも、ポリペプチド抗原を使用することが、好ましい。
【0129】
従って、上記組成物は、MenB感染を防ぐ免疫応答を誘導する1つ以上のポリペプチド抗原を含み得る。より一般的には、上記組成物は、被験体への投与後に、その被験体において抗体応答を誘導し得る。この抗体応答は、N.meningitidis血清群Bの超毒性系統A4、超毒性系統ET−5および系統3のうちの2種以上(例えば、2種または3種)に対して殺菌性である。
【0130】
血清群BのN.meningitilisのゲノム配列は、公開されており(148)、および適切な抗原は、コードポリペプチドから選択され得る(150)。抗原の例は、参考文献141〜150に開示されている。好ましい組成物は、1つ以上の以下の5つの抗原を含む(198):(1)好ましくは、オリゴマー形態(例えば、三量体形態)の「NadA」タンパク質;(2)「741」タンパク質;(3)「936」タンパク質;(4)「953」タンパク質;および(5)「287」タンパク質。
【0131】
これらの5つのタンパク質についての初期配列は、以下のとおりに参考文献143に見られる。
【0132】
【化3】

本発明の組成物中で使用される場合、血清群Bタンパク質は、これらの初期配列の1つのアミノ酸配列を含有し得るか、または以下のアミノ酸配列を含有し得る:(a)初期配列に対して50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)の同一性を有する配列;および/または(b)初期配列の少なくともn個の連続アミノ酸のフラグメントを含み、ここでnは、7以上である配列(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上)。(b)についての好ましいフラグメントは、初期配列のC末端および/またはN末端から1個以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25以上)を欠く。他の好ましいフラグメントは、この配列からのエピトープを含む。
【0133】
これらの5つのMenB抗原は、5種類の別個のタンパク質として組成物中に存在し得るが、少なくとも2種類の抗原は、一本のポリペプチド鎖(「ハイブリッド」タンパク質(参考文献145〜147))として発現される(すなわち、5種類の抗原が5種類未満のポリペプチドを形成する)ことが好ましい。ハイブリッドタンパク質は、2つの主要な利点を提供する:第1に、単独では不安定に発現され得るか、あまり発現し得ないタンパク質は、その問題を克服する適切なハイブリッドパートナーを添加することにより、補助され得る;第2に、2つの別個の有用なタンパク質を産生するために、使用されることが必要とされるのは、たった1回の発現工程および精製工程であることから、商業的な製造工程が、単純化される。本発明の組成物に含まれるハイブリッドタンパク質は、5種類の基本的な抗原の2つ以上(すなわち、2、3、4または5)を含有し得る。5種類の抗原の2つからなるハイブリッドは、例えば、以下が好ましい:NadAおよび741;NadAおよび936;NadAおよび953;NadAおよび287;741および936;741および953;741および287;936および953;936および287;953および287。
【0134】
本発明の組成物中に合わせて含む3つの好ましいMenB抗原は、以下:
C−末端が欠失し、リーダーペプチドがプロセシングされた2996株由来のNadA
【0135】
【化4】

287−953ハイブリッド
【0136】
【化5】

936−741ハイブリッド
【0137】
【化6】

上記のとおりに、MenB抗原を含む本発明の組成物は、好ましくは血清殺菌性抗体応答を誘導し、この応答は、2つまたは3つの超毒性系統A4、超毒性系統ET−5、および系統3に対して有効である。それらは、超毒性系統のサブグループI、サブグループIII、サブグループIV−1またはET−37複合体の1種以上に対する殺菌性抗体応答および他の系統(例えば、超侵襲性系統)に対する殺菌性抗体応答をさらに誘導し得る。これらの抗体応答は、マウスにおいて都合よく測定され、そしてワクチン効力の標準的な指標である(例えば、参考文献150の巻末の注14を参照のこと)。上記組成物は、これらの超毒性系統内の各々および全てのMenB株に対して殺菌性抗体応答を誘導する必要はない;むしろ、特定の超毒素系統内の血清群B髄膜炎菌の4種のさらなる株の任意の所与の群に対して、上記組成物により誘導される抗体は、上記群のうちの少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%以上)に対して殺菌性である。好ましい株群は、以下の国のうちの少なくとも4つにおいて単離された株を含む:GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BRおよびCU。上記血清は、好ましくは、少なくとも1024(例えば、210、211、212、213、214、215、216、217、218以上、好ましくは、少なくとも214)の殺菌性力価を有する。すなわち、上記血清は、参考文献150に記載されるように、1/1024に希釈される場合、特定の株の試験細菌の少なくとも50%を殺傷可能である。好ましい組成物は、血清群B髄膜炎菌の以下の株に対する殺菌応答を誘導し得る:(i)クラスターA4由来、961−5945株(B:2b:P1.21,16)および/またはG2136株(B:−);(ii)ET−5複合体由来、MC58株(B:15:P1.7,16b)および/または44/76株(B:15:P1.7,16);(iii)系統3由来、394/98株(B:4:P1.4)および/またはBZ198株(B:NT:−)。より好ましい組成物は、961−5945株、44/76株および394/98株に対する殺菌応答を誘導し得る。961−5945株およびG2136株は、ともにNeisseria MLST基準株である(参考文献199におけるids 638および1002)。MC58株は、広範に利用可能であり(例えば、ATCC BAA−335)、そして参考文献148において配列決定された株であった。44/76株は、広範に使用され、そして特徴付けられており(例えば、参考文献200)、そしてNeisseria MLST基準株の1つである(参考文献199におけるid 237;参考文献201における表2の32行目)。394/98株は、元々、ニュージーランドにおいて1998年に単離され、そしてこの株を用いたいくつかの研究が公開されている(例えば、参考文献202および203)。BZ198株は、別のMLST基準株である(参考文献199におけるid 409;参考文献201における表2の41行目)。上記組成物は、ET−37複合体由来の血清群W135のLNP17592株(W135:2a:P1.5,2)に対する殺菌性応答を、さらに誘導し得る。これは、フランスにおいて2000年に単離されたHaji株である。
【0138】
本発明の組成物中に含まれ得る他のMenBポリペプチドとしては、以下のアミノ酸、またはポリペプチド配列の1つを含むポリペプチドが挙げられる:参考文献141からの配列番号650;参考文献141からの配列番号878;参考文献141からの配列番号884;参考文献142からの配列番号4;参考文献143からの配列番号598;参考文献143からの配列番号818;参考文献143からの配列番号864;参考文献143からの配列番号866;参考文献143からの配列番号1196;参考文献143からの配列番号1272;参考文献143からの配列番号1274;参考文献143からの配列番号1640;参考文献143からの配列番号1788;参考文献143からの配列番号2288;参考文献143からの配列番号2466;参考文献143からの配列番号2554;参考文献143からの配列番号2576;参考文献143からの配列番号2606;参考文献143からの配列番号2608;参考文献143からの配列番号2616;参考文献143からの配列番号2668;参考文献143からの配列番号2780;参考文献143からの配列番号2932;参考文献143からの配列番号2958;参考文献143からの配列番号2970;参考文献143からの配列番号2988、あるいは(a)上記配列に対して50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)の同一性を有する配列;および/または(b)上記配列の少なくともn個の連続アミノ酸のフラグメントを含み得、ここでnは、7以上である(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上)のアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド。(b)についての好ましいフラグメントは、関係する配列由来のエピトープを含有する。これらのポリペプチドの1つを超えたもの(例えば、2、3、4、5、6)が含まれ得る。
【0139】
(Hib糖類との組み合わせ)
この組成物が、H.influenzae B型抗原を含む場合、代表的にはHib莢膜糖類抗原である。H.influenzae b由来の糖類抗原は、周知である。
【0140】
有利には、上記Hib糖類は、特に子供においてその免疫原性を亢進するために、キャリアタンパク質に共有結合される。一般に、多糖の結合体および詳細にはHib莢膜多糖の調製は、十分に考証されている。本発明は、任意の適切なHib結合体を使用し得る。適切なキャリアタンパク質は、上に記載され、Hib糖類についての好ましいキャリアは、CRM197(「HbOC」)、破傷風トキソイド(「PRP−T」)、およびN.meningitidisの外膜複合体(「PRP−OMP」)である。
【0141】
上記結合体の糖類部分は、多糖(例えば、全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP)、であり得るが、これは、オリゴ糖(例えば、約1〜約5kDaのMW)を形成するために多糖を加水分解するのに好ましい。
【0142】
好ましい結合体は、CRM197にアジピン酸リンカーを介して共有結合したHibオリゴ糖を含有する(16,204)。破傷風トキソイドもまた、好ましいキャリアである。
【0143】
Hib抗原の投与は、好ましくは、0.15μg/ml以上(好ましくは、1μg/以上)の抗PRP抗体の濃度をもたらす。
【0144】
組成物が、Hib糖類抗原を含有する場合、水酸化アルミニウムアジュバントを含有しないことが好ましい。この組成物が、リン酸アルミニウムアジュバントを含有する場合、Hib抗原は、アジュバントに吸着されても(205)、されなくてもよい(206)。吸着の防止は、抗原/アジュバントの混合の間の正確なpH、適切なゼロ電荷の点を有するアジュバント、および組成物中の種々の異なる抗原を混合する適切な順序(207)を選択することにより、達成され得る。
【0145】
本発明の組成物は、1種類を超えるHib抗原を含み得る。Hib抗原は、例えば、本発明の髄膜菌炎の組成物を再形成するために凍結乾燥され得る。
【0146】
(肺炎球菌抗原との組み合わせ)
この組成物が、S.pneumoniae抗原を含有する場合、代表的には、好ましくはキャリアタンパク質に結合された莢膜糖類抗原である(例えば、参考文献208〜210)。1種を超えるS.pneumoniaeの血清群由来の糖類を含有することが好ましい。例えば、23種類の異なる血清群由来の多糖の混合物は、広範に使用されており、5種と11種との間の異なる血清群由来の多糖を有する結合体ワクチンも同様である(211)。例えば、PrevNarTM(212)は、7種の血清群(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)由来の抗原を含有し、各々の糖類は、還元アミノ化により独立してCRM197に結合され、0.5ml用量あたり2μgの各々の糖類を添加しており(血清群6Bは4μg)、結合体をリン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている。本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも血清群6B、14、19F、および23Fを含有する。結合体は、リン酸アルミニウム上に吸着され得る。
【0147】
肺炎球菌由来の糖類抗原の使用の代替として、上記組成物は、1つ以上のポリペプチド抗原を含有し得る。いくつかの肺炎球菌株についてのゲノム配列は入手可能であり(213、214)、そして逆ワクチン学に供されて(215−218)、適切なポリペプチド抗原を提供し得る(219、220)。例えば、上記組成物は、参考文献221に規定されるように1種以上の以下の抗原を含有し得る:PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Spl30およびSpl30。上記組成物は、これらの抗原の1種以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14)を含有し得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、肺炎球菌由来の糖類およびポリペプチド抗原の両方を含有し得る。これらは、単一の混合物として使用され得るか、または肺炎球菌糖類抗原は、肺炎球菌タンパク質に結合され得る。このような実施形態についての適切なキャリアタンパク質は、前述の段落に列挙された抗原を含有する(221)。
【0149】
肺炎球菌抗原は、例えば、Hib抗原とともに凍結乾燥され得る。
【0150】
(処置方法)
本発明はまた、哺乳動物における抗体応答を惹起する方法を提供し、この方法は、本発明の薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0151】
本発明は、哺乳動物において免疫応答を惹起する方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の組成物を投与する工程を包含する。上記免疫応答は、好ましくは、保護的であり、好ましくは抗体に関する。上記方法は、追加応答(booster response)を惹起し得る。
【0152】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ワクチンが、予防用途である場合、ヒトは、好ましくは子供(例えば、幼児または乳児)、またはティーンエージャーである;ワクチンが、治療用途の場合、ヒトは、好ましくは成人である。子供のために企図されるワクチンはまた、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために成人に投与され得る。
【0153】
本発明はまた、医薬としての使用のための本発明の組成物を提供する。医薬は、好ましくは哺乳動物における免疫応答を惹起することができ(すなわち、免疫原性組成物である)、そしてより好ましくはワクチンである。
【0154】
本発明はまた、哺乳動物における免疫応答を惹起するための医薬の製造において、本発明の改変された血清群W135の髄膜炎菌莢膜糖類、および/または本発明の改変された血清群Yの髄膜炎菌莢膜糖類の使用を提供する。上記糖類は、好ましくは結合されている。上記医薬は、好ましくはワクチンである。
【0155】
これらの使用および方法は、好ましくはNeisseriaにより引き起こされる疾患(例えば、髄膜炎、敗血症、菌血、淋病など)の予防および/または処置のためである。細菌性および/または髄膜炎菌性髄膜炎の予防および/または処置が、好ましい。
【0156】
治療処置の効力を確認する1つの手段は、本発明の組成物の投与後にナイセリアの感染をモニタリングする工程を包含する。予防処置の効力を確認する1つの手段は、上記組成物の投与後に5種類のベーシックな抗原に対する免疫応答をモニタリングする工程を包含する。本発明の組成物の免疫原性は、被験体を試験するためにこの組成物を投与し、(12月齢〜16月齢の子供、または動物モデル(222))、次いで血清の殺菌性活性(SBA)および抗莢膜IgGの総結合力および高結合力のELISA力価(GMT)を含む標準的なパラメーターを決定することによって決定され得る。これらの免疫応答は一般に、組成物の投与後およそ4週間で決定され、組成物の投与前に決定された値と比較される。SBAは、補体により媒介される細菌殺傷を測定し、そしてヒトまたはウサギ乳仔の補体を用いてアッセイされ得る。WHO基準は、ワクチンが、レシピエントの90%より多くにおいて、少なくとも4倍のSBA上昇を誘導することを要求している。少なくとも4倍または8倍のSBA増加が好ましい。一よりも多い用量の組成物が、投与される場合、一回よりも多い投与後の判定がなされ得る。
【0157】
本発明の好ましい組成物は、患者において、ヒト被験体の受容可能なパーセンテージに対して各々の抗原成分についての血清防御基準より優れた抗体力価を与え得る。宿主がその力価より上ではその抗原に対してセロコンバージョンされると考えられる関連する抗体力価を有する抗原は、周知であり、そして、このような力価は、WHOのような機関により公開されている。好ましくは、被験体の統計学的に有意なサンプルのうちの80%より多く、より好ましくは、90%より多く、さらにより好ましくは、93%より多く、そして最も好ましくは、96〜100%が、セロコンバージョンされる。
【0158】
本発明の組成物は、一般に患者に直接投与される。直接の送達は、経皮注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質空間(interstitial space))、あるいは直腸、経口、膣内、局所、経皮内、鼻内、目、耳、肺、または他の粘膜投与により、達成され得る。太股または上腕への筋肉内投与は、好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介するものであり得るが、針を使用しない注射が、代替的に使用され得る。代表的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0159】
本発明は、全身免疫および/または粘膜免疫を誘発するのに使用され得る。
【0160】
投薬処置は、単一用量スケジュールでも複数用量スケジュールでもよい。複数用量は、初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールにおいて使用され得る。初回用量スケジュールの後、追加用量スケジュールが行われ得る。初回用量の間(例えば、4〜16週の間)および初回免疫(priming)と追加免疫(boosting)との間の適切なタイミングは、慣用的に決定され得る。
【0161】
ナイセリア感染症は、身体の種々の領域に影響を及ぼすので、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、本発明の組成物は、注射可能物(溶液または懸濁液のどちらか)として調製され得る。注射前に、液状ビヒクル中に溶解または懸濁するのに適切な固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥組成物)。上記組成物は、局所投与(例えば、軟膏、クリームまたは散剤)のために調製され得る。上記組成物は、経口投与(例えば、錠剤、またはカプセル、あるいは(必要に応じて味付けされた)シロップ)のために調製され得る。上記組成物は、微小粉末またはスプレーを使用する、肺投与(例えば、吸入器)のために調製され得る。上記組成物は、座薬またはペッサリーとして調製され得る。上記組成物は、鼻、耳、または目への投与(例えば、スプレー、小滴、ゲルまたは散剤)のために調製され得る(例えば、参考文献223および224)。肺炎球菌糖類(225、226)、肺炎球菌菌ポリペプチド(227)、Hib糖類(228)、MenG糖類(229)、ならびにHibおよびMenC糖類結合体の混合物(230)の鼻投与を用いた結果が、報告されている。
【0162】
(概論)
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」および「なる(consisting)」を意味する(例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなり得るか、またはさらなる何かを含み得る(例えば、X+Y))。
【0163】
単語「実質的に(substantially)」は、「完全に(completely)」を除外しない(例えば、「実質的に」Yを含まない組成物は、完全にYを含まなくてよい)。必要な場合、単語「実質的に」は、本発明の定義から除外され得る。
【0164】
数値xに関する用語「約(about)」とは、例えば、x±10%を意味する。
【0165】
「シアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化されている」のような表現は、組成物中の各々の糖類分子が、7位において必ず同程度のアセチル化を有するべきであるということを意味しない。また、組成物中の各々の糖類分子が、その7位において必ずx%以下のO−アセチル化を有するということも意味しない。むしろ、いくつかは、x%より多くを有し、他はx%未満を有するが、糖類の全ての集合における全てのシアリン酸残基の全ての7位にわたるアセチル化の平均の程度は、x%以下である。「シアリン酸残基のy%以上が、9位においてO−アセチル化される」などのような表現に対しても、同じものを適用する。
【0166】
糖環は、開いた形態か、または閉じた形態であり得、閉じた形態が、本明細書中の構造式で示されるが、開いた形態もまた、本発明に含まれることが理解される。
【0167】
シアリン酸はまた、ノイラミン酸としても公知である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
改変された血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖類であって、ここで(a)該糖類中のシアリン酸残基の29%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)該糖類中のシアリン酸残基の26%以上は、9位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目2)
改変された血清群Y髄膜炎菌の莢膜糖類であって、ここで(a)該糖類中のシアリン酸残基の9%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または(b)該糖類中のシアリン酸残基の29%以上または27%以下は、9位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目3)
項目1または項目2に記載の改変された髄膜炎菌の莢膜糖類であって、該糖類中の0%を超えるシアリン酸残基は、7位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目4)
項目1または項目2に記載の改変された髄膜炎菌の莢膜糖類であって、該糖類中の0%を超えるシアリン酸残基は、9位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目5)
必要に応じてキャリアタンパク質に結合された改変された髄膜炎菌の莢膜糖類であって、該糖類は、二糖類単位のn個以上の繰り返し単位:
[シアリン酸]−[ヘキソース]
を含有し、ここで該ヘキソースは、ガラクトースまたはグルコースのいずれかであり、nは、1〜100の整数であり、そして
(a)該n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のx%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または、
(b)ヘキソースがガラクトースである場合、該n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のy%以上は、9位においてO−アセチル化され、そしてヘキソースがグルコースである場合、該n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基のy%以上もしくはz%以下は、9位においてO−アセチル化され
ヘキソースがガラクトースである場合、xは29であり、かつyは26であり;そして、ヘキソースがグルコースである場合、xは9であり、かつyは29であり、かつzは27である、糖類。
(項目6)
項目5に記載の糖類であって、ヘキソースがガラクトースであり、前記n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基の約6%は、7位においてO−アセチル化され、かつ該n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基の約43%は、9位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目7)
項目5に記載の糖類であって、ヘキソースがグルコースであり、前記n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基の約6%は、7位においてO−アセチル化され、かつ該n個以上の繰り返し単位におけるシアリン酸残基の約45%は、9位においてO−アセチル化されている、糖類。
(項目8)
血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖類のa個の分子を含有する組成物であって、莢膜糖類分子あたりのシアリン酸残基の平均数は、bであり、そしてここで:
(a)該組成物中のa・b血清群W135シアリン酸残基の29%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または
(b)該組成物中のa・b血清群W135シアリン酸残基の26%以上は、9位においてO−アセチル化されている、組成物。
(項目9)
血清群Y髄膜炎菌の莢膜糖類のa個の分子を含有する組成物であって、莢膜糖類分子あたりのシアリン酸残基の平均数は、bであり、そしてここで、
(a)該組成物中のa・b血清群Yシアリン酸残基の9%以下は、7位においてO−アセチル化され;および/または
(b)該組成物中のa・b血清群Yシアリン酸残基の29%以上または27%以下は、9位においてO−アセチル化されている、組成物。
(項目10)
項目8または項目9に記載の組成物であって、前記莢膜糖類は、タンパク質キャリアに結合されている、組成物。
(項目11)
以下の二糖単位:
【化1】


のn個以上の繰り返しを含む糖類であって、ここで
nは1〜100の整数であり、
XおよびYは、−Hおよび−OHから選択される別個の基であり、
は、−Hおよび−COCHから独立して選択され、そして各々の二糖単位において等しくても異なっていてもよく、
は、−Hおよび−COCHから独立して選択され、そして各々の二糖単位において等しくても異なっていてもよく、
Xが−OHであり、かつYが−Hである場合、(a)Rの29%以下は、−COCHであり、および/または(b)Rの26%以上は、−COCHであり、
Xが−Hであり、かつYが−OHである場合、(a)Rの9%以下は、−COCHであり、および/または(b)Rの29%以上または27%以下は、−COCHである、糖類。
(項目12)
項目1〜11のいずれかに記載の糖類であって、該糖類は、30未満の平均重合度を有する、糖類。
(項目13)
以下:
(i)項目1〜12のいずれかに記載の糖類;および
(ii)ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、H.influenzaeタンパク質D、およびCRM197からなる群から選択されるキャリアタンパク質、
の結合体産物。
(項目14)
以下:
(a)項目1〜13のいずれかに記載の改変された莢膜糖類または結合体、および
(b)薬学的に受容可能なキャリア、
を含有する、免疫原性組成物。
(項目15)
水性形態である、項目14に記載の組成物。
(項目16)
凍結乾燥形態である、項目14に記載の組成物。
(項目17)
N.meningitidisの血清群C由来の莢膜糖類抗原をさらに含有する、項目14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
(項目18)
N.meningitidisの血清群A由来の莢膜糖類抗原をさらに含有する、項目14〜17のいずれか1項に記載の組成物。
(項目19)
血清群A抗原である、項目18に記載の組成物。
(項目20)
N.meningitidisの血清群B由来の抗原をさらに含有する、項目14〜19のいずれか1項に記載の組成物。
(項目21)
Haemophilus influenzaeB型由来の糖類抗原をさらに含有する、項目14〜20のいずれか1項に記載の組成物。
(項目22)
Streptococcus pneumoniae由来の抗原をさらに含有する、項目14〜21のいずれか1項に記載の組成物。
(項目23)
A型肝炎由来の抗原;B型肝炎由来の抗原;Bordetella pertussis由来の抗原;ジフテリアトキソイド;破傷風トキソイド;および/またはポリオウイルス抗原の1つ以上をさらに含有する項目14〜22のいずれか1項に記載の組成物。
(項目24)
医薬としての使用のための、項目14〜23のいずれか1項に記載の組成物。
(項目25)
哺乳動物において抗体の応答を惹起する方法であって、項目14〜23のいずれか1項に記載の組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
髄膜炎菌性髄膜炎を防御するための医薬の製造において、項目1〜13のいずれか1項に記載の、改変された血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖類および/または改変された血清群Y髄膜炎菌の莢膜糖類の使用。
(項目27)
以下の工程:
(1)出発血清群W135または血清群Yの髄膜菌の莢膜糖類、およびキャリアタンパク質を提供する工程であって、ここで該糖類およびキャリアタンパク質の一方または両方は、必要に応じてその他方に対して反応性であるように改変されている、工程、
(2)該糖類と該キャリアタンパク質との間で共有結合を形成する工程、および
(3)得られたグリコ結合体を精製する工程、
を包含する、免疫原性結合体を調製するためのプロセスであって、ここで工程(1)と工程(3)との間で、出発糖類におけるシアリン酸残基の9位におけるO−アセチル化の程度が増加する、プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、加水分解したMenW135の注釈をつけたNMRスペクトルを示す。
【図2】図2は、加水分解したMenYの注釈をつけたNMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、MenW135−CRM197結合体の調製の間、7位および9位におけるシアリン酸残基のO−アセチル化状態を示す。
【図4】図4は、MenY−CRM197結合体の調製の間、7位および9位におけるシアリン酸残基のO−アセチル化状態を示す。
【図5】図5は、MenW135を使用して、マウスにおいてオリゴ糖に対して得られたIgG力価を示す。
【図6】図6は、MenYを使用して、マウスにおいてオリゴ糖に対して得られたIgG力価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0169】
(本発明を実施するための形態)
(A.髄膜炎菌性多糖の産生および精製)
参考文献14に記載されるとおりに、莢膜多糖を、MenW135およびMenYから精製した。
【0170】
(B.改変された血清群W135G多糖結合体および血清群Y多糖結合体の調製)
精製した多糖を、50mM酢酸ナトリウム緩衝液中pH4.7で、3時間80℃にて加水分解した。これにより、シアリン酸(SA)と還元末端SAとの間の比により決定されるように、約15〜20の平均DPのオリゴ糖を得た。
【0171】
この加水分解物30kDaのカットオフ膜を通して限外濾過した(5mM酢酸緩衝液/15〜30mM NaCl pH6.5の12〜20ダイアフィルトレーション容量)。その残留物(高MW種を含有する)を、除去し、その透過物を、5mM酢酸緩衝液/15mM NaCl pH6.5で平衡化したQ−Sepharose Fast Flowカラムに充填した。次いで、そのカラムを、10CV平衡化緩衝液で洗浄し、3〜4以下のDPを有するオリゴ糖を取り除き、そして3CV 5mM酢酸緩衝液/500mM NaCl pH6.5で溶出させた。
【0172】
塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムを、同じ大きさの(sized)オリゴ糖溶液に添加して、300g/Lの最終濃度にし、次いで、ナトリウムシアノ−ボロヒドリドを添加して、49g/Lまたは73g/Lの最終濃度にした。この混合物を、50℃で3日間インキュベートし、アミノ−オリゴ糖を生成し、次いで、この糖を、0.5M NaClの13のダイアフィルトレーション容量、次に20mM NaClの7のダイアフィルトレーション容量を使用して1kDaまたは3kDaのカットオフ膜を使用する接線限外濾過により、精製した。次いで、精製したオリゴ糖を、回転エバポレーターで遠心して水を除去した。
【0173】
乾燥したアミノオリゴ糖を、希釈用の水に、40mMのアミノ基濃度で可溶化し、次いで、9容量のDMSOを添加し、次にトリエチルアミンを200mMの最終濃度で添加した。得られた溶液に、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、480mMの最終濃度で添加した。この反応物を、室温で2時間攪拌しつづけ、次いで、活性化オリゴ糖を、アセトンで沈殿させた(最終濃度80% v/v)。この沈殿物を、遠心により回収し、アセトンで数回洗浄して未反応のアジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルおよび副生成物を取り除いた。最終的に、活性化したオリゴ糖を、真空化で乾燥した。オリゴ糖構造に導入された活性エステル基の量を、参考文献231に記載されるとおりに、比色法により決定した。
【0174】
乾燥した活性化オリゴ糖を、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)中の45mg/ml CRM197溶液に、12:1の活性エステル/タンパク質(モル/モル)比で添加した。この反応物を、室温で一晩攪拌し続けた。この期間の後に、この結合体を、30kDa膜を用いたダイアフィルトレーション(10mMリン酸緩衝液 pH7.2の50のダイアフィルとレーション容量)により精製した。精製した結合体を、滅菌濾過し、そしてワクチン処方まで−20℃または−60℃にて貯蔵した。
【0175】
(C.結合の間の多糖のO−アセチル化状態)
MenW135およびMenY由来の改変された糖類の集団においてシアリン酸残基のC7位およびC9位のO−アセチル化状態を、NMR分析により測定した。
【0176】
結合プロセス(天然の多糖、加水分解後、アミノ化する前、活性化後、および結合後)中の多糖およびオリゴ糖の中間体を、1DプロトンNMR実験および2DプロトンNMR実験を使用して特徴付けた。凍結乾燥したオリゴ糖を0.75mLの99.9%の重水素を含むO(AldrichTM)に溶解し、10〜15mMの濃縮溶液を得ることで、H NMRサンプルを調製した。全ての実験において、5mm Wilmad NMRチューブを使用した。
【0177】
BGUユニットを備えたBruker NMR Spectrometer Avance DRX 600MHzで、標準的なBruker pulse programを使用して、H NMRスペクトルを記録した。z軸グラジエントでセルフシールド化(self−shield)された5mm TBIトリプル共鳴プローブ(triple resonance probe)を、使用した。データの加工のために、Bruker
XWINNMR 3.0ソフトウェアを使用した。
【0178】
プロトン標準スペクトルの獲得条件は、4回のスキャンで6000Hzのスペクトルウインドウ上で32kのデータ点を回収することである。H NMRスペクトルを、0.1Hz線広域化(line broarding)関数を適用後、フーリエ解析を行い、4.72ppmにおいて1個の重水素を含む水(HDO)に対して参照した。
【0179】
共鳴の割り当て、そして分子構造の決定を、文献のデータに基づいておこなった(232、4)。
【0180】
ピークの割り当てを示すために、加水分解したMenW135および加水分解したMenYの注釈付きのNMRデータを、それぞれ図1および図2に示す。
【0181】
以下の表は、結合体調製の間にO−アセチル化されたことが見出されたMenW135由来の糖類の集合において、全てのシアリン酸(N−アセチル−ノイラミン酸)のC7位およびC9位の比率を提供する。
【0182】
【化7】

従って、結合体の調製の間、7位におけるシアリン酸のO−アセチル化の全体のパーセンテージは、約30%から約6%に低下した。同時に、9位におけるO−アセチル化のパーセンテージは、約25%から約43%に増加した(図3)。最終工程において9位に見られる劇的な変化は、結合が、9位においてO−アセチル化された結合糖類を優先的に選択することを示す。
【0183】
同様に、結合プロセスの各々の工程後に、MenY由来の改変された糖類の集団において、シアリン酸残基のO−アセチル化状態を、以下の表に提供する。
【0184】
【化8】

従って、7位におけるシアリン酸のO−アセチル化のパーセンテージは、本発明の結合体の調製の間に約10%から約2%に低下し、その後、結合反応の間、最終的に約6%に増加した。同時に、9位におけるO−アセチル化のパーセンテージは、約28%から約21%に低下し、その後、結合反応の間、最終的に約45%に増加した(図4)。最終工程において9位において見られる劇的な変化は、結合は、9位においてO−アセチル化される結合糖類を優先的に選択することを示す。
【0185】
(D.結合体の免疫原性)
凍結した大量の結合体を融解した。各々を、攪拌しながら希釈して、20μg 糖類/ml、5mMリン酸、9mg/ml NaCl、リン酸アルミニウム(0.6mg/mlのAl3+濃度を提供する)、pH7.2の最終濃度にした。次いで、この混合物を2〜
8℃で一晩攪拌せずに静地し、マウスの免疫化のために、生理食塩水を用いて4μg 糖類/mlにさらに希釈した。
【0186】
ワクチンの第2のセットを同じ手段で両方の血清群について調製したが、リン酸アルミニウムの添加を、等量の水で置き換えた。
【0187】
各々の免疫化群について10匹のBalb/cマウスに、0週および4週において0.5mlのワクチンを2回s.c.注射した。免疫化前(2回目の投薬前、および2回目の投薬後2週間)に、瀉血した。(a)アラムを有するかまたは有さない、結合体ワクチン、(b)生理食塩水コントロール、(c)結合していない多糖コントロールを使用して、免疫化を実施した。
【0188】
本質的に参考文献233に記載されるとおりに、特定の抗多糖IgG抗体を、免疫化動物の血清において定量した。各々個別のマウスの血清を、滴定曲線により二連で分析し、各々の免疫化群についてGMTを計算した。「Titerun]ソフトウェア(FDA)を使用して、Mouse Elisa Units(MET)における力価を計算した。抗多糖の力価の特異性を、関連する多糖を競合剤として使用する競合ELISA(competitive ELISA)により決定した。
【0189】
図5に示すように、MenW135結合体は、動物において、高い抗体力価を誘導した。予測どおりに、結合しない多糖は、免疫原性ではなかった。アジュバントとしてのリン酸アルミニウムとの結合体の処方は、結合体のみにより得られた力価と比較して、より高いレベルの抗体を誘導した。同様の結果が、MenYについても見られた(図6)。
【0190】
補体に媒介される細菌溶解を測定するために、ポスト−II血清を、インビトロアッセイを使用して殺菌活性について試験した。アッセイにおいて使用する前に、ポスト−II(post−II)血清を、30分間56℃にて不活性化し、25%ウサギ胎仔補体を、補体の供給源として使用した。殺菌力価を、相反血清希釈(reciprocal serum dilution)として表し、以下の株に対して50%細菌殺傷を得た:MenWl35,5554(OAc+);MenY,242975(OAc+)。
【0191】
MenW135由来の莢膜多糖は、GMT値を得られず、わずか4の細菌活性を提供した。対照的に、脱O−アセチル化した本発明の結合体は、14と565との間のGMT値、64と2048との間の殺菌力価を示した。
【0192】
MenY由来の莢膜多糖は、GMT値を得られず、わずか256の殺菌活性を提供した。対照的に、脱O−アセチル化した本発明の結合体は、253と1618との間のGMT値、256と16384との間の殺菌力価を提供した。
【0193】
本発明は、単なる例として記載し、かつ本発明の精神および範囲内に維持された改変がなされ得ることが理解される。特に、本発明の莢膜糖類の免疫原性に影響を及ぼさないわずかな改変もまた、包含される。
【0194】
【化9】

【0195】
【化10】

【0196】
【化11】

【0197】
【化12】

【0198】
【化13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97284(P2012−97284A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−28524(P2012−28524)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2006−530760(P2006−530760)の分割
【原出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】