説明

低カロリービール風味アルコール飲料及びその製造方法

【課題】低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することにより、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造する。本発明におけるビール風味アルコール飲料には、ビール、発泡酒、或いは麦芽を使用しないビール風発酵飲料等が包含される。本発明において用いられる特に好ましい水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースが、また、本発明において用いられる非発酵性糖質としては、糖アルコール及び非発酵性オリゴ糖が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料、特に、ビール、発泡酒、或いは麦芽を使用しないビール風発酵飲料等のビール風味アルコール飲料において、その製造に際して、副原料として、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を添加することにより製造された香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒などのビール風味アルコール飲料は年々多様化してきており、生活スタイルに合わせた様々な商品が上市されている。一方、メタボリックシンドロームに象徴される生活習慣病に対する認識の高まりから、その予防や改善に寄与する食品への関心はますます高まってきている。このような背景の中、ビール風味アルコール飲料においてもカロリーや糖分の摂取を抑える、いわゆる低カロリー商品や糖質オフ商品が多く市販されている。
【0003】
低カロリーや低糖質のビール風味アルコール飲料は、一般的には、(1)麦汁濃度を低くして発酵させる方法、(2)高度に糖化させて麦汁中の糖質のほとんどを資化性糖質に変える方法、(3)高度に発酵した発酵液を水で希釈する方法、などの方法で製造されている。その結果、飲料中のエキス成分は極めて低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けた、いわゆる「まずいビール」と呼ばれるものがほとんどであった。
【0004】
このような欠点の改善のために、ビール風味アルコール飲料にコク味やボディ感を付与し、味質を改善する方法として種々の方法が開示されている。例えば、特開平11−127839号公報、特開2003−47453号公報には、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどのノンカロリー、低カロリー素材を添加して、風味やボディ感のある低カロリーの酒類、醸造酒の製造方法が開示されている。また、特開平5−68529号公報、特開平7−51045号公報には、ビール等酒類にコク味やボディ感を付与する方法として、イソマルトオリゴ糖を添加する方法や、仕込み工程でα-グルコシダーゼを添加して発酵性糖質を非発酵性糖質であるイソマルトオリゴ糖に変換させる方法が開示されている。
【0005】
特開平8−9953号公報には、焙焼デキストリンを原料にして製造された難消化性成分を含む糖類を副原料として醸造された低カロリービールの製造方法が、特開2005−261425号公報、特開2006−6342号公報、特開2007−6872号公報には、難消化性デキストリンやポリデキストロース等の水溶性食物繊維を添加した低糖質発泡アルコール飲料、及び低糖質、低カロリー発酵飲料の製造方法が開示されている。
【0006】
これらのビール風味アルコール飲料の製造方法は、低カロリーや、低アルコールアルコール飲料の製造に際して、糖アルコールや非発酵性のオリゴ糖を用いて、コク味や旨味を増強させたり、或いは、すっきりとした味を付与しようとするものであるが、しかしながら、特開平11−127839号公報や、特開2003−47453号公報に記載の高甘味度甘味料や糖アルコールの添加では、ボディ感が得られにくく、また、ボディ感を得られるような添加量では甘味が強調され過ぎるという問題点がある。また、特開平5−68529号公報や、特開平7−51045号公報に記載のイソマルトオリゴ糖を添加する方法は、イソマルトオリゴ糖が、栄養表示基準制度では4kcal/gの糖質として位置づけられているため、低カロリーや低糖質という点で問題がある。
【0007】
更に、特開平8−9953号公報や、特開2005−261425号公報、或いは、特開2006−6342号公報や、特開2007−6872号公報に記載された方法は、ビール風味アルコール飲料の製造に際して、食物繊維を添加して、芳醇さや濃厚さ、後味の切れを狙ったものであるが、該水溶性食物繊維を添加する方法によって製造されたものは、低カロリー、低糖質でボディ感は付与できるが、その代わりにキレ等の味質に欠け、したがって、低糖質でボディ感があり、しかもキレ等の味質を有する、飲料全体の味質、風味のバランスを具備するビール風味アルコール飲料を製造するという点では充分なものではない。したがって、ビール風味アルコール飲料にコク味やボディ感を付与し、味質を改善する方法として開示されている従来の方法は、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造する方法として満足のいく方法ではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平5−68529号公報。
【特許文献2】特開平7−51045号公報。
【特許文献3】特開平8−9953号公報。
【特許文献4】特開平11−127839号公報。
【特許文献5】特開2003−47453号公報。
【特許文献6】特開2005−261425号公報。
【特許文献7】特開2006−6342号公報。
【特許文献8】特開2007−6872号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来のビール風味アルコール飲料と比較して、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法について鋭意検討する中で、ビールや発泡酒などのビール風味アルコール飲料の製造工程において、副原料として、水溶性食物繊維と非発酵性糖質を添加することにより、ボディ感の付与と同時に、風味やキレ(味質)等の香味の賦与を行うことができることを見い出し、低カロリー、低糖質でありながら、風味やボディ感のバランスが格別に優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造する方法を開発し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することを特徴とする香味ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法からなる。
本発明におけるビール風味アルコール飲料には、ビール、発泡酒、或いは麦芽を使用しないビール風発酵飲料等が包含される。本発明において用いられる特に好ましい水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースが挙げられる。また、本発明において用いられる非発酵性糖質としては、糖アルコール及び非発酵性オリゴ糖が用いられ、該非発酵性糖質として、特に好ましい非発酵性オリゴ糖としては、イソマルトオリゴ糖を挙げることができる。
【0012】
本発明の低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法において、水溶性食物繊維を含有する副原料は、製品中の水溶性食物繊維の含量が0.5〜1.5質量%であるように添加される。また、非発酵性糖質を含有する副原料は、製品中の非発酵性糖質の含量が0.1〜1.5質量%であるように添加される。また、本発明の低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法において、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料は、副原料中の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を合わせた甘味度が10〜80であるように添加することが好ましい。本発明の低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法において、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料の添加は、仕込み工程、発酵工程及び発酵終了後の工程のいずれかで行なうことができる。
【0013】
すなわち具体的には本発明は、(1)ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することを特徴とする香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(2)水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースであることを特徴とする前記(1)記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(3)非発酵性糖質が、糖アルコール及び非発酵性オリゴ糖からなる群より選択される1又は2以上の非発酵性糖質であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(4)非発酵性オリゴ糖が、イソマルトオリゴ糖であることを特徴とする前記(3)記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(5)水溶性食物繊維を含有する副原料を、製品中の水溶性食物繊維の含量が0.5〜1.5質量%であるように添加することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(6)非発酵性糖質を含有する副原料を、製品中の非発酵性糖質の含量が0.1〜1.5質量%であるように添加することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(7)水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を、副原料中の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を合わせた甘味度が10〜80であるように添加することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法や、(8)水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料の添加が、仕込み工程、発酵工程及び発酵終了後の工程のいずれかであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法からなる。
【0014】
また本発明は、(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のビール風味アルコール飲料の製造方法によって製造された香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料からなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のビール風味アルコール飲料の製造方法により、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味を有し、しかもボディ感があり、これらの香味とボディ感のバランスが格別に優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造することができる。本発明は、該香味バランスに優れた、健康と嗜好性が両立する低カロリービール風味アルコール飲料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することにより香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造する方法からなる。
【0017】
本発明において、「ビール風味アルコール飲料」とは、ビール、発泡酒、麦芽を使用しないビール風発酵飲料(いわゆる第3ビール)又はその他のビール様アルコール飲料を包含する。また、本発明における「非発酵性糖質」とは、醸造用酵母で資化されない糖質のことであり、具体的には糖アルコール又は非発酵性オリゴ糖のことをいう。
【0018】
本発明において、「糖アルコール」とは、糖類がもつカルボニル基を還元して得られる鎖状多価アルコールのことを指し、例えば単糖アルコールであるエリスリトール、キシリトール、ソルビトールや、二糖アルコールであるマルチトール、ラクチトール、パラチニット、イソマルチトールの他、オリゴ糖アルコールなどを挙げることができる(ただし、グリセロールは含まない)。衛新第13号(“栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について”:「新開発食品ハンドブック」、p374−488、中央法規出版(株)、平成11年9月発行)に記載の難消化性糖質のエネルギー換算係数によれば、糖アルコールのエネルギー値は、エリスリトールが0kcal/g、キシリトール及びソルビトールが3kcal/g、マルチトール、ラクチトール、パラチニット及びイソマルチトールが2kcal/gであり、糖質の4kcal/gと比較して低い値を示す。
【0019】
本発明において、「非発酵性オリゴ糖」とは、醸造酵母によって資化されない、重合度が2〜9のオリゴ糖を意味し、例えば、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖などを挙げることができる。好ましくは、イソマルトオリゴ糖を挙げることができる。イソマルトオリゴ糖には、イソマルトース、ニゲロース、コージビオース、パノース、イソマルトトリオース、イソマルトシルマルトース、イソマルトテトラオース等が含まれる。
【0020】
本発明における「水溶性食物繊維」は、醸造酵母で資化されない低粘性の水溶性食物繊維であって、前記非発酵性オリゴ糖に該当しないものをいい、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、イヌリン、グアーガム分解物などが例示される。好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロース又はそれらの組み合わせを挙げることができる。また、本発明における「難消化性デキストリン」とは、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素処理したもので、衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリン、好ましくは85〜95質量%の難消化性成分を含むデキストリンのことをいう。更に、水素添加により製造されるその還元物も含む。食新発0217001号及び0217002号に記載の食物繊維のエネルギー換算係数によれば、難消化性デキストリンのエネルギー値は1kcal/gである。
【0021】
本発明における「ポリデキストロース」とは、ブドウ糖、ソルビトール及びクエン酸を、減圧下で熱処理して得られるもので、主成分はブドウ糖のβ−1,6 結合を主とした重合物であって、この重合物を好ましくは90質量%以上含むものをいい、更に、水素添加により製造されるその還元物も含む。食新発0217001号及び0217002号に記載の食物繊維のエネルギー換算係数によれば、ポリデキストロースのエネルギー値は0kcal/gである。
【0022】
本発明における「甘味度」とは、砂糖を100としたときの比較値を意味し、試料溶液と甘味的に近い砂糖溶液を1%間隔で4段階用意して、飲み比べにより相当する砂糖濃度を求め、次式により甘味度を計算する。
甘味度=相当する砂糖濃度/試料濃度×100
【0023】
本発明の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を添加したビール風味アルコール飲料は、製品中に少なくとも水溶性食物繊維及び非発酵性糖質の両者が適量含まれていることを要件とする。水溶性食物繊維は、好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロース又はそれらの組み合わせであり、好ましい含量は水溶性食物繊維として0.5〜1.5質量%である。
【0024】
また、本発明において、「非発酵性糖質」としては、好ましくはエリスリトール、キシリトール、ソルビトール マルチトール、ラクチトール、パラチニット、イソマルチトール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される糖アルコールを挙げることができ、好ましくはイソマルトース、ニゲロース、コージビオース、パノース、イソマルトトリオース、イソマルトシルマルトース、イソマルトテトラオース及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるイソマルトオリゴ糖又はそれらの組み合わせを挙げることができる。製品中の非発酵性糖質の好ましい含量は、非発酵性糖質の総和として0.1〜1.5質量%である。
【0025】
本発明の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を添加したビール風味アルコール飲料は、製品中に少なくとも両者を適量含んでいることを要件とするが、品質に悪影響を及ぼさない限り、更に、その他の糖質を含んでいても良い。本発明の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を添加したビール風味アルコール飲料は、水溶性食物繊維、非発酵性糖質又はそれらの両方を含む食品素材(製剤)を副原料として、それぞれを単独あるいは組み合わせて、仕込み工程、発酵工程或いは発酵工程後に添加することによって製造することができる。
【0026】
糖アルコール製剤は、対応する糖類の還元、発酵、あるいは天然物からの抽出によって製造することもできるが、本発明に使用する糖アルコール製剤は市販されており、例えばソルビトール及びマルチトールは、それぞれソルビットD−70及びアマルティシロップの商品名で東和化成(株)から購入することができる。また、エリスリトールは日研化成(株)から購入することが出来る。また、イソマルトオリゴ糖製剤は、澱粉にα−アミラーゼを作用させて液化した後、β−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼを作用させることによって調製することができる。市販のイソマルトオリゴ糖製剤(例えば日研化成(株)のイソマルト)を購入して使用しても良い。
【0027】
水溶性食物繊維製剤も市販されており、例えば、難消化性デキストリン及びその還元型(還元難消化性デキストリン)は松谷化学工業(株)から、又、ポリデキストロースはダニスコ社からそれぞれ購入することができる。非発酵性糖質製剤及び水溶性食物繊維製剤は、別々に、あるいは組み合わせて本発明における副原料として使用することができる。使用に当たっては、水溶性食物繊維と非発酵性糖質を組み合わせたときの甘味度が10〜80となるように調整するのが好ましい。
【0028】
水溶性食物繊維及び糖アルコールを含む食品素材(組成物)は、例えば難消化性デキストリンの原料である焙焼デキストリンを加水分解した後に水素添加(還元)することによって調製することができる。例えば、焙焼デキストリンをα−アミラーゼとグルコアミラーゼで処理して難消化性成分とグルコースに加水分解した後、還元することによって難消化性デキストリンの還元物とソルビトールを含む所望の素材(組成物)を調製することができる(この素材をソルビトールタイプファイバーシラップともいう)。
【0029】
同様に焙焼デキストリンをα−アミラーゼと枝切り酵素、β−アミラーゼで処理した後に還元すれば難消化性デキストリンの還元物とマルチトールからなる素材(組成物)に変換することができる。なお、β−アミラーゼによる加水分解は、非還元末端側からマルトース単位で切断するが、分岐部分の手前の1又は2グルコースユニットは切断しないので、消化性部分が残り、素材中の難消化性デキストリンの純度が低くなってしまう。そこで、還元産物をグルコアミラーゼで処理することにより、残存する分岐部分のグルコースユニットを切断して資化性糖質である遊離のグルコースに変換し、組成物中の難消化性デキストリンの純度を高めておくことが好ましい(この素材をマルチトールタイプファイバーシラップともいう)。
【0030】
また、水溶性食物繊維及び非発酵性オリゴ糖を含む食品素材(組成物)は、例えば、焙焼デキストリンにα−アミラーゼを作用させて液化した後、β−アミラーゼとα−グルコシダーゼを作用させ、α−グルコシダーゼの糖転移反応を利用して、生成したオリゴ糖をイソマルトオリゴ糖に変換することにより、難消化性デキストリンとイソマルトオリゴ糖を含む食品素材とすることができる。この素材に、さらにグルコアミラーゼを作用させることで、難消化性デキストリンに残存する消化性グルコース残基を除去することも出来る(この素材をイソマルトースタイプファイバーシラップともいう)。
【0031】
難消化性デキストリン、糖アルコール及びイソマルトオリゴ糖を同時に含有する食品素材を調製することもできる。例えば前述の焙焼デキストリンをα−アミラーゼで加水分解した後に水素添加(還元)し、β−アミラーゼとα−グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼ)を作用させた後にさらにグルコアミラーゼで処理することにより、難消化性デキストリンの還元物、糖アルコール、イソマルトースを主成分とするイソマルトオリゴ糖、及びグルコースを含む組成物を調製することができる。これら水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含む食品素材を、本発明における副原料として使用するに当たっては、両者を組み合わせたときの甘味度が10〜80となるように調整するのが好ましい。
【0032】
本発明のビール風味アルコール飲料は、ビール、発泡酒、あるいは麦芽を使用しないビール風発酵飲料(いわゆる第3ビール)等で一般的に用いられる方法で製造することができる。麦芽、糖類等の副原料と温水を混合し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を加えて糖化後ろ過して麦汁を調製する。ここで、低カロリー、低糖質とするためには、麦汁調製過程において、原料由来の高分子糖質を可能な限り発酵性糖質に変換しておくことが好ましい。得られた麦汁に、ホップを添加し、煮沸後濾過して発酵用液を調製し、酵母を添加して常法により発酵・熟成を行う。水溶性食物繊維及び非発酵性糖質の添加タイミングは特に限定されず、前述の麦汁調製前(仕込み工程)に他の副原料と一緒に添加しても良いし、発酵前の液(発酵工程)、もしくは発酵後の液(発酵後の工程)等、どこで添加しても問題ない。
【0033】
水溶性食物繊維及び非発酵性糖質は酵母によって分解も資化もされないので、その添加量は、製品中に含有させる水溶性食物繊維及び非発酵性糖質の濃度から予め計算によって求めることができる。すなわち、従来のビール風味アルコール飲料に含まれる原料由来の水溶性食物繊維は最高で0.1%程度(キリンビール(株)の公開資料による)、又、非発酵性糖質としてのイソマルトオリゴ糖は0.2%未満(特許文献4)であり、いずれも外部から添加しない限りほとんど含まれないので、添加した水溶性食物繊維及び非発酵性糖質の濃度がそのまま製品中の濃度に反映されることになる。
【0034】
本発明においては、製品中の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質の含量がそれぞれ0.5〜1.5質量%及び0.1〜1.5質量%となるように、前記素材を前記いずれかの工程に添加すればよい。この添加量よりも少なくても多くてもボディ感と風味のバランスが損なわれてしまい、目的とするビール風味アルコール飲料を得ることはできない。
【0035】
このようにして得られるビール風味アルコール飲料は、水溶性食物繊維の持つボディ感、味質改善作用と、非発酵性糖質の持つ爽やかな甘味質が相乗効果により見事に融合した結果、低カロリー、低糖質でありながら、ボディ感と風味のバランスに優れた、従来にないビール風味アルコール飲料を得ることができる。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
[分析方法と材料の調製]
以下の実施例で用いられた、分析方法及び材料の調製は以下のとおりである。
【0038】
<分析方法>
1.糖組成の分析
糖組成の分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の方法で行い、単純面積%を組成として表示する。
(単糖、糖アルコールを主とした分析)
カラム:MCI GEL CK08EC(三菱化学(株)社製)
検出器:示差屈折計
カラム温度:80℃
流速:0.4ml/分
移動相:蒸留水
サンプル注入量:5質量%、溶液10μl
(オリゴ糖を主とした分析)
カラム:MCI GEL CK04SS(三菱化学(株)社製)
検出器:示差屈折計
カラム温度:80℃
流速:0.3ml/分
移動相:蒸留水
サンプル注入量:5質量%溶液、10μl
【0039】
2.食物繊維の分析
衛新13号(栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について)に記載されている高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により測定する。
【0040】
[実験例1]
(ソルビトールタイプファイバーシラップの調製):
市販のコーンスターチに1質量%濃度の塩酸を500ppmとなるようにスプレー、混合し、粉砕機を通して均一化した後、パドルドライヤー(奈良機械製作所(株)社製)中で2時間常温にて攪拌して熟成した。その後、パドルドライヤーのジャケット温度を110℃に設定して水分が約4質量%になるまで予備乾燥した後、ジャケット温度を160℃として30分間加熱して焙焼デキストリンを得た(食物繊維51.5%)。この焙焼デキストリンを水に溶解して35質量%濃度の溶液とし、α−アミラーゼ(ターマミル120L、ノボザイムズジャパン社製)を固形分に対して0.1質量%を添加し、95℃で30分間加水分解した後、加圧失活した(130℃、10分間)。次に、pHを4.5に調整し、グルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.2、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.4質量%を添加し、55℃で15時間反応した後、80℃まで昇温して反応を停止した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂により脱塩処理した後、真空濃縮して濃度65質量%とした。
【0041】
次に、その1.0kgを2.0L容量のオートクレーブ(ナックオートクレーブ社製)に入れ、20gのラネーニッケル(R239、日興リカ社製)を添加し、7.2%リン酸二ナトリウム水溶液と21%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.6とした後、水素ガスを100kg/cmで導入し、130℃、2時間の水素添加反応を行った。反応後、ラネーニッケルを除去し、活性炭、イオン交換樹脂で精製した後、濃度70質量%に濃縮して、難消化性デキストリンの還元物とソルビトールからなる組成物約780gを得た。この組成物の固形分あたりの分析値は、難消化性デキストリンの還元物(3糖類以上):54.6%、マルチトール:3.0%、ソルビトール:42.4%であり、高速液体クロマトグラフ法で測定した食物繊維量は51.7%、又、甘味度は33であった。
【0042】
[実験例2]
(マルチトールタイプファイバーシラップの調製):
市販の焙焼デキストリン(食物繊維:45.2%)を水に溶解して35質量%濃度の溶液とし、α−アミラーゼ(ターマミル120L、ノボザイムズジャパン社製)0.1質量%を添加し、95℃で30分間加水分解した後、加圧失活した(130℃、10分間)。その後、pHを5.5に調整し、マルトース生成酵素(ビオザイムL、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.3質量%と、枝切り酵素(クライスターゼPL45、大和化成(株)社製)を固形分に対して0.13質量%を添加し、55℃で15時間反応した後、80℃まで昇温して反応を停止した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂により脱塩処理をしてから真空濃縮して濃度65質量%とした。次に、実験例1と同じ方法で水素添加反応を行った後、さらにpHを4.5に調整してグルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.2、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.4質量%を添加し、55℃で15時間反応した後、80℃まで昇温して反応を停止した。活性炭、イオン交換樹脂で精製した後、濃度70質量%に濃縮して、難消化性デキストリンの還元物、マルチトール、及びグルコースからなる組成物約710gを得た。
【0043】
この組成物の固形分あたりの分析値は、難消化性デキストリンの還元物(3糖類以上):49.7%、マルチトール:29.1%、ソルビトール:7.2%、グルコース:14.0%であり、高速液体クロマトグラフ法で測定した食物繊維量は44.0%、又、グルコースの甘味度を次式(補正甘味度=(甘味度−グルコース%×0.7)÷(100−グルコース%)×100)により除いて補正した、補正甘味度は38であった。
【0044】
[実験例3]
(イソマルトースタイプファイバーシラップの調製):
実験例1で得られた焙焼デキストリンを水に溶解して45質量%濃度の溶液とし、α−アミラーゼ(ターマミル120L、ノボザイムズジャパン社製)0.1質量%を添加して、95℃で30分間加水分解した後、加圧失活した(130℃、10分間)。その後、pHを5.5に調整しマルトース生成酵素(ビオザイムL、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.03質量%と、α−グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.17重量%添加し、55℃で15時間反応した後、80℃まで昇温して反応を停止した。続いて、濃度を35質量%まで下げ、pHを4.5に調整しグルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.2、天野エンザイム(株)社製)を固形分に対して0.4質量%添加し、55℃で15時間反応した後、80℃まで昇温して反応を停止した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂により脱塩処理した後、濃度70質量%に濃縮し、難消化性デキストリン、イソマルトオリゴ糖、及びグルコースからなる組成物を得た。
【0045】
この組成物の固形分あたりの分析値は、難消化性デキストリン(4糖類以上):56.0%、イソマルトオリゴ糖(2糖類、3糖類):16.6%、グルコース:27.4%であり、高速液体クロマトグラフ法で測定した食物繊維量は53.2%、またグルコースの甘味度を除いて補正した、補正甘味度は20であった。
【0046】
以下の実施例で使用した水溶性食物繊維、糖類、糖質、糖アルコール、イソマルトオリゴ糖は、実験例で製造したものを除き、全て商業的に入手が可能である。
【実施例2】
【0047】
(水溶性食物繊維及び糖アルコールが添加されている発泡酒の製造):
表1の処方により、水溶性食物繊維及び糖アルコールが添加されている発泡酒を製造した。表中、「還元難消化性デキストリン」として、水溶性食物繊維含量が90%の製品(松谷化学)を使用した。また、「イソマルチトール含有液糖**」として、東和化成(株)のPO−500(固形含量70%:全糖アルコール中の20%がイソマルチトール)を使用した。
【0048】
【表1】

【0049】
コントロール1は水溶性食物繊維、糖アルコールのいずれも添加しないものとし、コントロール2は水溶性食物繊維のみを添加したもの、コントロール3は糖アルコールのみを添加したもの、複合添加1〜3は、水溶性食物繊維及び3種の糖アルコールをそれぞれ添加したものとした。添加する水溶性食物繊維は、酵素−HPLC法で定量した際に、100g当り1.5g、添加する糖アルコール (コントロール3、複合添加1〜3)は、100g当り1〜1.3gになるように調整した。
【0050】
上記配合により、7日間、酵母による発酵を行った。発酵液は熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して発酵液から酵母を取り除き、発泡酒を得た。得られた発泡酒の分析結果及び官能評価結果を表2に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。水溶性食物繊維を添加した発泡酒の食物繊維含量を酵素−HPLC法によって分析した結果、100g当り1.5gの水溶性食物繊維が含まれており、予想通りの結果であった。また、糖組成分析カラム(CK08EC)を用いて、糖アルコール成分の分析を行ったところ、コントロール3、複合添加1〜3では、投入した糖アルコールのほぼ全量が資化されずに残留していた。
【0051】
なお、製品中の各成分の分析値から、複合添加1〜3のエネルギー値を算出したところ、それぞれ39、38及び38kcal/100mlとなり、市販ビール類の一般的なエネルギー値、38〜48kcal/100ml(キリンビール(株)の公開試料から算出)の最低レベルに位置していた。これは、いわゆる低カロリービールのエネルギー値(通常35kcal/100ml以下)に近いレベルである。
【0052】
また、5名のパネラーによる官能評価を実施した。評価方法は、表2に示す各評価項目について、コントロール1を基準とし、1(弱い)−3−5(強い)の5段階評価とし、評価点の平均値を求めた。また、総合評価は、コントロール1を基準とし、1(悪い)−3−5(良い)の5段階評価とし、評価点の平均値を求めた。その結果、複合添加1〜3では、風味及び総合評価においていずれもコントロールと比較して顕著な差が認められ、添加した水溶性食物繊維と非発酵性糖質としての糖アルコールによる相乗効果で、味質が大幅に改善されることが明らかとなった。
【0053】
【表2】

【実施例3】
【0054】
(糖アルコールの添加量を調整した発泡酒の製造):
表3及び表4に示す処方により、水溶性食物繊維添加量を固定し、糖アルコール濃度レベルを変化させた発泡酒を製造した。なお、糖アルコール量は、実施例2のコントロール3におけるマルチトールの添加量を基準に、添加レベルを0.1〜2%とした。本実施例では、糖アルコールとしてマルチトール(表3)とソルビトール(表4)を使用した。両者の甘味度に大差が無いので添加レベルは同じとした。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
上記成分を用いて、7日間、酵母による発酵を行った。結果を、表5及び表6に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。発酵液は熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して酵母を取り除き、発泡酒を得た。この発泡酒の食物繊維量を酵素−HPLC法によって分析した結果、予想通り、いずれの場合も、100gあたり約1.5gの水溶性食物繊維が含まれていた(表5及び表6)。また、糖組成分析カラム(CK08EC)を用いて、糖アルコール成分の分析を行ったところ、投入した糖アルコールのほぼ全量が資化されずに残留していた(表5及び表6)。
【0058】
なお、添加濃度0.1%〜1.0%のエネルギー値は35〜38kcal/100mlであり(表5及び表6)、市販のビール類のエネルギー値の最低レベルに位置していた。更に、得られた発泡酒の官能評価を、実施例2と同様の方法により実施した。その結果、甘味度の違いが認識され、甘味度に対応して風味および総合評価が顕著に高まり、実施例2の結果とも併せて、食物繊維と糖アルコールによる相乗効果が認められた(表5及び表6)。一方で、糖アルコール濃度2.0%のものは、甘味が強すぎるために、低い評価結果となった。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【実施例4】
【0061】
(水溶性食物繊維及びイソマルトオリゴ糖を添加した発泡酒の製造):
表7の処方により、水溶性食物繊維及びイソマルトオリゴ糖を添加した発泡酒を製造した。表中、「イソマルトオリゴ糖液糖」として、市販のイソマルトオリゴ糖含有液糖として林原商事のパノラップ(固形分含量70%を使用した。この液糖は、イソマルトオリゴ糖が固形分濃度の半分を占める。
【0062】
【表7】

【0063】
コントロール1は何も添加せず、コントロール2には水溶性食物繊維のみ、コントロール4にはイソマルトオリゴ糖のみ、複合添加4及び5には水溶性食物繊維とイソマルトオリゴ糖の双方をそれぞれ添加した。コントロール2、複合添加4及び複合添加5は、酵素−HPLC法で定量した際の食物繊維含量が、100g当り1.5gになるようにそれぞれ調整した。コントロール4及び複合添加4では、それぞれイソマルトオリゴ糖が100gあたり1g、又、複合添加5では100gあたり0.6g含まれるように調整した。上記配合により、7日間、酵母による発酵を行った。発酵液は珪藻土を利用して酵母を取り除き、発泡酒を得た。結果を、表8に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。
【0064】
この発泡酒の食物繊維含量を酵素−HPLC法によって分析した結果、水溶性食物繊維を添加したサンプルでは、予想通り100g当り約1.5gの水溶性食物繊維が含まれていた(表8)。また、糖組成分析カラム(CK08EC)を用いて、イソマルトオリゴ糖成分の分析を行ったところ、コントロール4、複合添加4および5では、投入したイソマルトオリゴ糖のほぼ全量が資化されずに残留していた。なお、複合添加4および5のエネルギー値は、それぞれ39及び37kcal/100mlであり、市販のビール類のエネルギー値の最低レベルに位置していた。
【0065】
更に、得られた発泡酒の官能評価を、実施例2と同様の方法で実施した。その結果、食物繊維単独(コントロール2)、あるいはイソマルトオリゴ糖単独(コントロール4)に比べて、両者を添加したサンプル(複合添加4及び5)では、水溶性食物繊維と非発酵性糖のイソマルトオリゴ糖の相乗効果が認められ、味質が大幅に改善されることが明らかとなった(表8)。
【0066】
【表8】

【実施例5】
【0067】
(イソマルトオリゴ糖の添加量を調整した発泡酒の製造):
表9に示す処方により、水溶性食物繊維添加量を固定し、イソマルトオリゴ糖濃度を増減させた発泡酒を製造した。なお、イソマルトオリゴ糖量は、実施例3のコントロール4におけるイソマルトオリゴ糖の添加量を基準に、添加レベルを0.1〜2%とした。本実施例では、イソマルトオリゴ糖としてイソマルト900P(昭和産業)を使用した。
【0068】
【表9】

【0069】
上記成分を用いて、7日間、酵母による発酵を行った。発酵液は熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して酵母を取り除き、発泡酒を得た。結果を、表10に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。この発泡酒の食物繊維量を酵素−HPLC法によって分析した結果、予想通り、100gあたり約1.5gの水溶性食物繊維が含まれていた(表10)。また、糖組成分析カラム(CK08EC)を用いて、イソマルトオリゴ糖成分の分析を行ったところ、投入したイソマルトオリゴ糖のほぼ全量が資化されずに残留していた。
【0070】
なお、添加濃度0.1%〜1.0%のエネルギー値は35〜39kcal/100mlであり、市販のビール類のエネルギー値の最低レベルに位置していた。更に、得られた発泡酒の官能評価を、実施例2と同様の方法により実施した。その結果、甘味度の違いが認識され、甘味度に対応して風味および総合評価が顕著に高まり、実施例2の結果とも併せて、食物繊維とイソマルトオリゴ糖による相乗効果が認められた(表10)。一方で、イソマルトオリゴ糖濃度2.0%のものは、甘味が強すぎるために、低い評価結果となった。
【0071】
【表10】

【実施例6】
【0072】
(難消化性デキストリンの添加量を調整した発泡酒の製造):
表11に示す処方により、糖アルコール(マルチトール)量を固定し、難消化性デキストリン濃度を増減させた発泡酒を製造した。なお、糖アルコール量は、実施例2で最も味質が改善された0.5%とし、難消化性デキストリンは、食品栄養表示基準で「食物繊維入り」と表示できる1.5g/100mlを基準に、添加レベルを0〜3%とした。
【0073】
【表11】

【0074】
上記成分を用いて、7日間、酵母による発酵を行った。発酵液は熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して酵母を取り除き、発泡酒を得た。結果を、表12に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。この発泡酒の食物繊維量を酵素−HPLC法によって分析した結果、添加量に見合った水溶性食物繊維が含まれていた(表12)。また、糖組成分析カラム(CK04SS)を用いて、難消化性デキストリンの分析を行ったところ、投入した難消化性デキストリンのほぼ全量が資化されずに残留していた。なお、添加濃度0%〜3%のエネルギー値は35〜37kcal/100mlであり、市販のビール類のエネルギー値の最低レベルに位置していた。
【0075】
更に、得られた発泡酒の官能評価を、実施例2と同様の方法により実施した。その結果、糖アルコールと難消化性デキストリンを同時に添加することによる味質の改善が認識され、難消化性デキストリンの投入量が0.5〜1.5%の範囲において風味および総合評価が顕著に高まり、実施例2の結果とも併せて、食物繊維と糖アルコールによる相乗効果が認められた(表12)。一方で、難消化性デキストリン濃度2.0%以上のものは、風味やキレを打ち消してしまうため、低い評価となった。
【0076】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することを特徴とする香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースであることを特徴とする請求項1記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
非発酵性糖質が、糖アルコール及び非発酵性オリゴ糖からなる群より選択される1又は2以上の非発酵性糖質であることを特徴とする請求項1又は2記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
非発酵性オリゴ糖が、イソマルトオリゴ糖であることを特徴とする請求項3記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
水溶性食物繊維を含有する副原料を、製品中の水溶性食物繊維の含量が0.5〜1.5質量%であるように添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
非発酵性糖質を含有する副原料を、製品中の非発酵性糖質の含量が0.1〜1.5質量%であるように添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を、副原料中の水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を合わせた甘味度が10〜80であるように添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料の添加が、仕込み工程、発酵工程及び発酵終了後の工程のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のビール風味アルコール飲料の製造方法によって製造された香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料。

【公開番号】特開2009−142233(P2009−142233A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325196(P2007−325196)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【Fターム(参考)】