説明

低シリカX型ゼオライト含有成形体及びその製造方法並びにその用途

【課題】吸着容量及び特性が高く、細孔容積が大きく、また耐圧強度に代表される強度物性を満足したゼオライト成形体及びその製造方法並びにそのガス分離・精製法を提供する。
【解決手段】SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトの含有量が90%以上で、残部が繊維状一次元構造の粘土鉱物からなるバインダーである低シリカX型ゼオライト含有成形体、及び、SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトに繊維状一次元構造のセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土、さらにカオリン型粘土からなるバインダー混合物を混練・捏和した後、成形して乾燥、焼成し、次いで水酸化ナトリウムと珪酸ナトリウムの混合溶液に接触させ、該混合物中のカオリン型粘土を低シリカX型ゼオライトに転化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、SiO2/Al23モル比が1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライト(以後LSX型ゼオライトと呼ぶ)を主成分とする成形体及びその製造方法に関するものである。更に、この成形体は吸着分離剤として広く用いられ、イオン交換法によってLSX型ゼオライト中のナトリウム、カリウムイオンを目的に応じて種々のイオンにイオン交換することにより、例えば窒素ガスと酸素ガスとを主成分とする混合ガスから吸着法によって選択的に窒素ガスを吸着させ、酸素ガスを分離濃縮するなどの吸着分離を目的とする酸素PSA(プレッシャー・スイング・アドソープション)、あるいは水素PSA、二酸化炭素PSA等の分野において有用となる低シリカX型ゼオライト成形体及びその製造方法並びにそのガス分離精製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来よりゼオライト成形体は、ゼオライト粉末と粘土系バインダー、及び水、また目的によって有機系、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等の成形助剤を添加して柱状(ペレット)、球状(ビーズ)、顆粒状、細粒状等に成形されている。また特殊な例としてシリカゾル、アルミナゾル等をバインダーとしたものもある。
【0003】ゼオライト結晶と大きさの異なるバインダーを用いて製造される吸着剤において動的吸着特性に重要な細孔を巧く形成し、如何にポーラスな成形体にするかが要素になるが、物理的強度を高くしたいが故にバインダー量を多くすることが一般的であって、ゼオライト含有量が減少して吸着容量を低下させることになる。
【0004】又、通常使用されるバインダーは、ゼオライト結晶に比して極めて微細であることからバインダー添加量が多くなるに比例して、ゼオライト表面を被覆しやすく、又、成形体内部まで詰ったものになりやすく細孔容積、特に直径1000オングストローム以下の小さい細孔(以後メソポアーと呼ぶ)が形成され難く、細孔容積が小さい成形体になりがちである。
【0005】従って、ガス拡散に難が有り、吸着あるいは脱着速度が遅く、例えば短時間サイクルのPSA法によるガス分離・濃縮等では成形体内部まで有効に利用されないことが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このようなゼオライト成形体における従来の課題を克服し、吸着容量及び特性が高く、細孔容積が大きく、また耐圧強度に代表される強度物性を満足したゼオライト成形体及びその製造方法並びにそのガス分離・精製法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、添加したアルミノシリケートであるカオリン型粘土を低シリカX型ゼオライトに転化させることで吸着容量及び特性が高く、細孔容積が大きく、更に成形体としても優れた強度物性を有した低シリカX型ゼオライト成形体を容易に得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明の低シリカX型ゼオライト含有成形体は、SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトの含有量が90%以上で、残部が繊維状一次元構造の粘土鉱物からなるバインダーである低シリカX型ゼオライト含有成形体である。更に、細孔容積が0.2cc/g以上であり、木屋式硬度計によって測定される成形体強度が1.5kgf以上である低シリカX型ゼオライト含有成形体である。
【0010】本発明は、バインダーとして含まれるカオリン型粘土を低シリカX型ゼオライトに転化することによってゼオライト純分を増加させて吸着量を高め、又、繊維状一次元構造の粘土バインダーを用いることでメソポアーを巧く形成し、ガス拡散速度すなわち吸脱着速度を向上させることを要旨とする。従って、ゼオライト含有量が90%未満の場合、カオリン型粘土が残存することになり吸着容量が低下するため好ましくない。又、細孔容積についても同様に0.2cc/g未満になるとガス拡散速度に影響し、好ましくない。更に、成形体強度が1.5kgf未満になると剤の破砕、剥離、欠け等が生じ、実用面において好ましくなく、例えばPSAシステムでは弁、バルブ等のトラブルの原因になる。
【0011】一方、成形体の形状については特に限定されるものではなく、使用用途によって決めれば良いが、特筆すべきは、成形法により細孔制御の容易さが異なることである。
【0012】ペレット剤のように機械的圧力で押出し成形される場合、表面細孔が潰れやすいため有機系の成形助剤を添加して、後に焼成により燃焼させて細孔を制御する方法が一般的である。それに対し、ビーズ剤では細孔制御が比較的容易であり、特に造粒成形機を選択することでポーラスな剤が容易に得られ、本発明にとって最適な方法であることを見いだした。従って、以後撹拌造粒機によるビーズ成形体について説明する。
【0013】次に本発明の低シリカX型ゼオライトビーズ成形体の製造方法について説明する。
【0014】その製造方法としては、SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトに繊維状一次元構造のセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土バインダー、更にカオリン型粘土バインダーからなる混合物を嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルになるように混練・捏和した後、成形して乾燥、焼成し、次いで水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液に接触させ、該混合物中のカオリン型粘土バインダーを低シリカX型ゼオライトに転化させることで低シリカX型ゼオライト含有成形体中のゼオライト含有量を90%以上にすることを特徴とする製造方法であり、特に、繊維状一次元構造のセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土バインダーとカオリン型粘土のバインダー添加量が低シリカゼオライト粉末の無水基準100重量部に対して20〜25重量部であることが好ましい。
【0015】例えば、LSX型ゼオライト無水基準100重量部に対して10重量部のセピオライト型あるいはアタパルジャイト型粘土、更に10〜15重量部のカオリン型粘土からなる混合物を嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルになるよう混練・捏和した後、羽根攪拌式の攪拌造粒機によってビーズ形状に成形し、乾燥し、焼成して粘土を焼結して成形体に強度を付与した後、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液に接触させアルミノシリケートであるカオリン型粘土バインダーを低シリカX型ゼオライトに転化させることにより、本発明の低シリカX型ゼオライト含有成形体が得られる。
【0016】ここで、添加するバインダーであるセピオライト型粘土およびアタパルジャイト型粘土とではSi,Al,Mg,Fe等の成分含有量が多少異なるだけで、基本的には繊維状構造を有する類似の含水マグネシウムケイ酸塩であり、何れの粘土においても造粒成形性、成形体の物理的性質は同等であった。従って、以下の説明では特に限定することはなく繊維状バインダーと記述する。又、該繊維状バインダーは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液に一定温度条件下で接触せさても化学的変化を伴もなわず、成形体強度を維持できるものである。
【0017】本発明の低シリカX型ゼオライトビーズ成形体の製造方法は、合成LSX型ゼオライト粉末と繊維状バインダー及びカオリン型粘土と水とを混合混練する工程、混練物をビーズ状に成形する工程、成形体を乾燥し、焼成する工程、焼成した成形体中のカオリン型粘土をアルカリ水溶液中と接触させ低シリカX型ゼオライトに転化させる工程、用途に応じてリチウム、カルシウム、等のそれぞれの塩水溶液と接触させイオン交換する工程、成形体を焼成して活性化する工程から構成されており、容易に製造できるものである。
【0018】<混合混練工程>本発明の低シリカX型ゼオライトビーズ成形体に用いられる合成LSX型ゼオライト粉末は、アルミン酸ナトリウムとケイ酸ナトリウムおよび水酸化カリウムとから合成されたNa/K型のLSX型ゼオライトを出発原料とし、特願平9−231910号明細書に記載の方法に準じて合成されたものである。
【0019】Na/K型のLSX型ゼオライトのSiO2/Al23モル比は理論的には2.0であるが、化学組成分析の測定上のバラツキ等を考慮して1.9〜2.1の範囲とした。
【0020】この合成LSX型ゼオライト粉末と繊維状バインダー及びカオリン型粘土とを水分の調整をしながらすべてが均一となるよう混練混合した後、嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルになるよう充分捏和する。添加する繊維状バインダー量としては、吸着容量を高くし、更に成形体の物理的強度を維持し、且つ細孔容積を形成するために10重量部程度が好ましい。それよりも少ないと物理的強度が低下し、多いと吸着容量が低下するため好ましくない。一方、カオリン型粘土の添加量は10〜15重量部の範囲で問題なく本発明を達成できるが、成形体中のLSX含有量を高めるためには10重量部程度が好ましい。
【0021】ゼオライト粉末と繊維状バインダー及びカオリン型粘土とを混合混練する際に調整のために添加される水分の量としては、原料であるゼオライト粉末あるいは繊維状バインダー及びカオリン型粘土の性状、量比によって左右されるが、通常、ゼオライト粉末100重量部に対して60〜65重量部の範囲の量が好ましい。
【0022】<成形工程>このようにして、充分捏和して嵩密度を0.8〜1.0kg/リットルにした混合物を羽根攪拌式の攪拌造粒によってビーズ形状に成形する。通常の転動造粒に比して羽根攪拌することで強い剪断力が与えられ、添加された繊維状バインダー及びカオリン型粘土の凝集物が解砕され均一に分散されてゼオライト粒子に付着し、ゼオライト粒子間に存在することで細孔を形成することになる。繊維状バインダー及びカオリン型粘土を均一に分散することで次いで行なう焼成工程で成形体に強度を付与でき、アルカリ処理工程でカオリン型粘土を効率良く低シリカX型ゼオライトへ転化できる。
【0023】成形物の形状については本発明のゼオライトビーズ成形体の特徴を具備してさえおれば何等限定されるものではなく、球状、楕円状等に成形された物でよく、例えば9〜14メッシュの大きさのビーズ成形体とすることができる。しかしながら、吸着剤としての用途において物理的強度を要求される場合、真球度の高いビーズ成形体であることが望ましく、成形した球状品を公知の方法、例えばマルメライザー成形機を用いて整粒し、成形体表面を滑らかにすることが一般的に行なわれる方法である。
【0024】成形、整粒されるビーズの径は用途によって大きさをかえることが容易であり、篩いによる分級で大きさを揃えればよい。
【0025】<焼成工程>成形体を乾燥した後、焼成して添加した繊維状バインダー及びカオリン型粘土を焼結させる。乾燥、焼成の方法としては、公知の方法を用い実施することができ、例えば、熱風乾燥機、マッフル炉、管状炉、回転炉等がある。焼成の温度としては得られる成形体の形状を安定に保持するためにバインダーの焼結温度である600℃以上の温度で実施すればよく、600〜650℃の温度条件が好ましい。又、繊維状バインダー及びカオリン型粘土中に微量に含まれる有機物の除去、あるいはLSX型ゼオライトへの影響を考慮すれば低露点の空気流通下での焼成が好ましい。焼成した、成形体を冷却し、水分が25%程度になるように加湿する。加湿操作は必須の条件ではないが、次の工程であるアルカリ処理の際に水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液との接触で急激な発熱により成形体のヒビ割れ、剥離等の破損を防止するのに有効である。又、成形体内部から吸着された窒素等のガスを追い出し、アルカリ混合溶液との拡散を効率化するために有効な手段である。
【0026】<アルカリ処理工程>このようにして得たビーズ成形体を水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液に浸漬してアルカリ処理を実施する。ここで、使用される混合溶液の水酸化ナトリウムの濃度は3.5〜4モル/リットルの範囲が好ましく、水酸化カリウムの濃度は1.0〜1.5モル/リットルの範囲が好ましい。この理由としては、成形体内部のカオリン型粘土を均一にLSX型ゼオライトに転化させることができ、優れた吸着量を有する成形体が得られ、A型ゼオライト等の他相の不純物の生成を抑制できるためである。
【0027】このものを所定温度、所定時間にて熟成した後、昇温して結晶化し、カオリン型粘土をLSX型ゼオライトに転化させる。熟成の条件としては、40℃以下、1時間以上であれば良い。昇温結晶化の条件としてはLSX型ゼオライトが生成する条件であれば問題なく、90〜95℃の温度範囲で10時間以上であることが好ましい。この様にして添加したカオリン型粘土が実質的にLSX型ゼオライトに転化でき得るすべてを結晶化させる。
【0028】ここで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液でアルカリ熱処理する際、成形体を占める母ゼオライトであるLSX型ゼオライトは、なんら変化しないものである。
【0029】結晶化の方法としては、回分接触法やカラム流通法が通常用いられ、効率良く結晶化処理を行なうにはカラム流通法で流通速度を調整して行なうのが好ましい。この方法によれば結晶化終了後にカラムに水あるいは温水を通液して成形体を十分洗浄した後、イオン交換処理を引続いて行なうことができ、より効率的である。
【0030】<イオン交換工程>以上の工程により添加したカオリン型粘土をLSX型ゼオライトに転化させたビーズ成形体を所望のイオンを含むイオン交換液と一定温度条件下で接触させイオン交換する。
【0031】各々のイオンとの交換に用いる化合物としては水溶液として容易に提供できるものであれば特に制限はないが、通常、塩化物水溶液が好ましく用いられる。交換の方法としては、回分接触法やカラム流通法等があり、一様に交換するには回分接触法が適しているが、前述の理由からカラム流通法で流通速度を調整して行なうのが効率的である。これらイオン交換を実施する場合の交換温度はイオン交換平衡到達速度を考慮して決められるが、通常70℃程度が好ましく用いられる。しかしながら、例えばリチウムイオン等のように交換が非常に困難な場合では交換温度を高めることで交換効率を向上させ、任意の交換率に制御することができる。
【0032】このようにしてイオン交換した後、成形体をイオン交換水溶液から取り出し、水あるいは温水で充分洗浄し、通常の温度80〜100℃程度で乾燥する。
【0033】<活性化工程>以上のようにして得られた成形体を更に焼成して活性化することで、吸着性能に優れた吸着分離剤が得られる。焼成の条件としては、その目的が成形体中の水分を脱着することに有り、それにより成形体が活性化される条件であればどの様な条件をも用いることができる。ゼオライトの耐熱性を考慮すればできるだけ低温で素速く水分を脱着させることが望ましく、通常600℃以下の温度条件、例えば、500℃で1時間程度、低露点の空気流通下での焼成することによって達成できる。
【0034】本発明の方法により得られる低シリカX型ゼオライトビーズ成形体は、混合ガス、例えば、空気中の主成分である窒素ガスを吸着法によって選択的に吸着させて酸素ガスを分離濃縮するなどの吸着分離剤分野の用途に有用である。
【0035】本発明の低シリカX型ゼオライトビーズ成形体が吸着分離剤に必須の細孔構造を損なわずして得られる理由は、バインダーとして繊維状一次元構造のセピオライト型粘土あるいはアタパルジャイト型粘土を用いる点、および羽根攪拌造粒機を用いて造粒することによって強い剪断力を与えてこれらバインダーを均一に分散する点にある。すなわち、成形時にゼオライト表面に1μm以下の微細な粘土粒子が付着することによってゼオライト粒子間に無数の細孔が形成できるものと考えられる。従って、吸着されるガス等の拡散が早められ、例えば一定短時間サイクルで吸着、再生を繰り返すPSA法によるガス分離・濃縮等では成形体内部まで有効に利用される優れた吸着剤となり、目的とする成分を高収率で回収できる。
【0036】更に添加したカオリン型粘土を低シリカX型ゼオライトに転化させることで吸着量が高く、低シリカX型ゼオライトが持つ吸着特性とLSX型ゼオライトとの相乗効果によって温度特性が向上した吸着剤となり得る。
【0037】又、窒素ガスと酸素ガスとを吸着分離する酸素PSA法、水素PSA法、あるいは二酸化炭素PSA法においてイオン交換率依存性が大きいリチウムイオンで、80%以上にイオン交換することで選択性に優れた吸着剤となる。
【0038】耐圧強度に優れる点は、均一に混合混練された繊維状バインダー及びカオリン型粘土が焼成により強く焼結することに起因するものと考えられる。
【0039】カオリン型粘土はその結晶骨格を失うことなく低シリカX型ゼオライトに転化するものと考えられ、その結果、耐圧強度を維持できるものと推測する。
【0040】しかしながら、このような推測はなんら本発明を拘束するものではない。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各評価は以下に示した方法によって実施した。
【0042】(1)結晶率アルカリ処理したビーズ成形体を洗浄、乾燥し、350℃で1時間マッフル炉で加熱処理し、冷却後、温度25℃、相対湿度80%のデシケーター中で16時間放置して完全に水和した。
【0043】次いで、900℃で1時間マッフル炉で焼成し、成形体に吸着された平衡水分吸着量を測定した。
【0044】平衡水分吸着量をQとし、成形体中の結晶率を以下の数式1で算出した。
【0045】
【数1】

【0046】
A:LSX型ゼオライトの平衡水分吸着量(%)
B:繊維状バインダーの平衡水分吸着量(%)
W:カオリン型粘土の添加量(g)
(2)窒素吸着量カーン式電子天秤を用いて測定した。前処理条件として10-3torr以下の真空度で350℃、2時間活性化を行なった。吸着温度は−10℃に保ち、窒素ガス導入後充分平衡に達した後の重量変化から吸着容量(単位:Ncc/g)を算出した。
【0047】実施例および比較例における窒素吸着量は平衡圧700torrでの測定値を示す。
【0048】(3)細孔容積焼成活性化したビーズ成形体を水銀圧入式ポロシメーター(マイクロメリティクス社製、型式:ポアサイザー9310)を用い1〜30,000psiの圧力範囲で測定した。
【0049】(4)耐圧強度焼成活性化したビーズ成形体25個を硬度計(木屋製作所製、型式:KHT−20)で測定した。
【0050】測定は、直径5mmの圧子によって一定速度で成形体に加重を加える方式によるもので、成形体が破砕された時の加重量を耐圧強度(kgf)とした。
【0051】実施例1合成LSX型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製)100重量部に対してセピオライト型粘土10重量部とカオリン型粘土(ジョージアカオリン)をミックスマーラー造粒機(新東工業社製、型式:MSG−05S)で混合混練し、水を適宜加えながら最終的にLSX型ゼオライト粉末100重量部に対して65重量部の水を加えて調整した後、充分に捏和した。
【0052】この捏和物を羽根攪拌式造粒機ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、型式:FM/I−750)で直径1.4mm〜2.0mmのビーズ形状に攪拌造粒成形し、マルメライザー成形機(不二パウダル社製、型式:Q−1000)を用いて整粒した後、乾燥した。ついでマッフル炉(アドバンテック社製、型式:KM−600)を用いて空気流通下において600℃雰囲気中2時間焼成してセピオライト型粘土及びジョージアカオリンを焼結させた後、大気中で冷却して水分が25%程度になるように加湿した。
【0053】この成形体を長さ70cmのカラムに充填し、濃度3.5モル/リットルの水酸化ナトリウムと1.0モル/リットルの水酸化カリウムを含む混合溶液を40℃に加温してカラム上部からオーバーフローするまで流通した後、1時間放置した。次いで、90℃に昇温しながら混合溶液を流通循環し、カラム最上部の剤温度が90℃に到達した時点から10時間結晶化処理した。結晶化を完結させた後、70℃の温水で十分流通洗浄した。結晶化終了後の剤をカラム上部から採取し、前記の方法で結晶率を算出した結果、91.3%であった。
【0054】次いで、予めリチウム濃度が3モル/リットル、pH=11程度になるように塩化リチウムと水酸化リチウムで調整した水溶液を70℃で流通接触させてリチウムイオン交換し、水で充分洗浄した後、100℃で16時間乾燥した。この後、管状炉(アドバンテック社製)で露点−30℃の空気流通下において500℃、1時間活性化処理した。得られたLSX型ゼオライトビーズ成形体の窒素吸着量、細孔容積、耐圧強度を前記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0055】実施例2〜8表1に示した粘土の種類、添加量あるいはアルカリ溶液の組成以外は、実施例1と同様な操作によってLSX型ゼオライトビーズ成形体を調製した。それらの結晶率、窒素吸着量、細孔容積、耐圧強度について前記の方法で測定した結果を表1に示す。
【0056】比較例1〜6表1に示した粘土の種類、添加量あるいはアルカリ溶液の組成以外は、実施例1と同様な操作によってLSX型ゼオライトビーズ成形体を調製した。それらの結晶率、窒素吸着量、細孔容積、耐圧強度について前記の方法で測定した結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【0058】表中の繊維状バインダーはセピオライトを『セピ』、アタパルジャイトを『アタ』で示し、粘土はベントナイトを『ベン』、モンモリナイトを『モン』で示し、カオリン型粘土はジョージアカオリンのフラットDを『F』、DBコートを『D』で示し、添加量はLSX型ゼオライト100重量部に対する量(重量部)を示す。
【0059】又、アルカリ液濃度は水酸化ナトリウムを『A』、水酸化カリウムを『B』で示し、数字は夫々の濃度を示す。
【0060】実施例9実施例1と同じ方法で得られたLSX型ゼオライトビーズ成型体を使用して、水素ガス回収の原料であるコークス炉オフガス、製油所オフガス等に含まれる不純物ガスの二酸化炭素、一酸化炭素及びメタンの吸着量を25℃、700torrで測定した。その結果を表2に示す。
【0061】比較例7実施例1において、リチウムとイオン交換しないLSX型ゼオライトビーズ成形体を使用して、実施例9と同じ方法で二酸化炭素、一酸化炭素及びメタンの吸着量を25℃、700torrで測定した。その結果を表2に示す。
【0062】
【表2】


【0063】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の低シリカX型ゼオライト含有成形体は、吸着量が高く細孔容積が大きいことで、動的吸着特性に優れ、又、高い強度物性を有した成形体である。又、本発明の製造方法によれば低シリカX型ゼオライトビーズ成形体を容易に得ることができる。この成形体は酸素PSA、水素PSAあるいは二酸化炭素PSA等の分野での使用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトの含有量が90%以上で、残部が繊維状一次元構造の粘土鉱物からなるバインダーである低シリカX型ゼオライト含有成形体。
【請求項2】請求項1に記載の低シリカX型ゼオライト含有成形体において、繊維状一次元構造の粘土がセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土であることを特徴とする低シリカX型ゼオライト含有成形体。
【請求項3】請求項1及び請求項2に記載の低シリカX型ゼオライト含有成形体において、細孔容積が0.2cc/g以上であり、木屋式硬度計によって測定される成形体強度が1.5kgf以上であることを特徴とする低シリカX型ゼオライト含有成形体。
【請求項4】SiO2/Al23モル比1.9〜2.1の低シリカX型ゼオライトの低シリカX型ゼオライトに繊維状一次元構造のセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土、さらにカオリン型粘土からなるバインダー混合物を混練・捏和した後、成形して乾燥、焼成し、次いで水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液に接触させ、該混合物中のカオリン型粘土を低シリカX型ゼオライトに転化させることで低シリカX型ゼオライト含有成形体中の低シリカX型ゼオライト含有量を90%以上にすることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の低シリカX型ゼオライト含有成形体の製造方法。
【請求項5】請求項4に記載のX型ゼオライト含有成形体の製造方法において、繊維状一次元構造のセピオライト型粘土及び/又はアタパルジャイト型粘土とカオリン型粘土のバインダー添加量が低シリカゼオライト粉末の無水基準100重量部に対して20〜25重量部であることを特徴とする低シリカX型ゼオライト含有成形体の製造方法。
【請求項6】請求項1〜請求項3に記載の低シリカX型ゼオライト含有成形体のナトリウム、カリウムイオンを目的に応じて種々の他のイオンにイオン交換することにより得られる低シリカX型ゼオライト含有成形体を焼成して得られた低シリカX型ゼオライト含有成形体を使用して、混合ガスから、選択的に一方の成分ガスを吸着して、当該成分ガス又は他の成分ガスを分離濃縮する方法。
【請求項7】請求項6に記載のガス分離濃縮する方法において、混合ガスが主に窒素ガスと酸素ガスから構成され、窒素ガスを選択的に吸着し、窒素ガス及び酸素ガスを分離濃縮する方法。
【請求項8】請求項6に記載のガス分離濃縮する方法において、混合ガス中に水素ガスが含有され、その水素ガス以外のガスを選択的に吸着し、水素ガスを分離濃縮する方法。
【請求項9】請求項6に記載のガス分離濃縮する方法において、混合ガス中に二酸化炭素ガスが含有され、その二酸化炭素ガスを選択的に吸着し、二酸化炭素ガスを分離濃縮する方法。

【公開番号】特開2000−211915(P2000−211915A)
【公開日】平成12年8月2日(2000.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−110567
【出願日】平成11年4月19日(1999.4.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)