説明

低ホルムアルデヒド放出量の熱成形性メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材

【課題】熱成形性があり、低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材の製造方法を提供する。
【解決手段】メラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物、硬化剤及び発泡剤、加熱前に加えられるホルムアルデヒド捕捉剤を含む混合物の発泡及び架橋とともに加熱することによるフォーム材の製造方法、及び低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒド樹脂に基づくフォーム材、及びそれらの熱成形による成形品の製造への使用方法により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒド樹脂に基づくフォーム材の製造方法、及び熱成形による成形品の製造への使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン/ホルムアルデヒド樹脂に基づく連続気泡弾性フォーム、及び発泡剤を含むメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物の溶液又は分散液の発泡及び架橋とともに、熱風、蒸気またはマイクロ波放射で加熱することによるそれらの製造方法は知られており、例えば、EP−A 17672及びEP−A 37470に記載されている。
【0003】
ホルムアルデヒド樹脂に基づくフォーム材は少量のホルムアルデヒドを放出する。ホルムアルデヒドの放出量は温度及び湿度の増加に伴い増加する。従って、WO 01/94436には低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒド縮合物に基づくフォーム材の製造方法、使用されるメラミンのホルムアルデヒドに対するモル比が1:2を超える比を有するメラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物(precondensate)について記載されている。非常に低いホルムアルデヒドの放出量を達成するため、フォーム材は乾燥後、220℃で30分以上加熱されなければならない。しかしながら、加熱後、フォーム材は硬化し、もはや熱成形性はない。
【0004】
従って、EP−A 1 505 105は低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材から成形品の製造方法であって、フォームが製造後、熱成形の前に100℃〜160℃の温度で加熱されることを特徴とする方法を記載する。
【0005】
【特許文献1】EP−A 17672
【特許文献2】EP−A 37470
【特許文献3】WO 01/94436
【特許文献4】EP−A 1 505 105
【特許文献5】EP−B 37470
【特許文献6】EP−B 17671
【非特許文献1】Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie, 14/2巻、1963年319〜402頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱成形性があり、同時に成形品を得るための熱成形の前でさえ、低ホルムアルデヒド放出量のメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、メラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物、硬化剤および発泡剤、加熱前に加えられるホルムアルデヒド捕捉剤(scavenger)を含む混合物の発泡及び架橋とともに加熱することによるフォーム材の製造方法が見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
適切なホルムアルデヒド捕捉剤は、例えば、尿素、置換尿素、アルキル−又はアリール−置換メラミン、ウレタン、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン、グリコールまたはフェノールである。ホルムアルデヒド捕捉剤は一般に、メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物に基づいて2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の量が添加される。
【0009】
本発明による方法はメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物から開始する。メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物はメラミンに加えて他の熱硬化性プラスチックの前駆体の50質量%、好ましくは20質量%以下、そして、ホルムアルデヒドに加えて他のアルデヒド類の50質量%以下、好ましくは20質量%以下を、縮合単位として組み込んで含むことができる。修飾されていないメラミン/ホルムアルデヒド縮合物が特に好ましい。適切な熱硬化性プラスチックの前駆体の例として:アルキル−及びアリールアルキル置換メラミン、尿素、ウレタン、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン、グリコール、フェノール、及びそれらの誘導体が挙げられる。使用できるアルデヒドは、例えば、アセトアルデヒド、トリメチロールアセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフロール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒドである。メラミン/ホルムアルデヒド縮合物に関するさらなる詳細は、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie, 14/2巻、1963年319〜402頁に認められる。
【0010】
メラミンのホルムアルデヒドに対するモル比は通例として1:1.0未満であり、好ましくは1:1.2〜1:4.0、特に1:1.3〜1:1.8である。EP−B 37470によると、メラミン樹脂は縮合単位として組み込まれる亜硫酸基を含むことが有利であり、それは例えば、樹脂の縮合中に亜硫酸水素ナトリウムの1〜20質量%を添加することによって生じさせることができる。現在、一定のメラミン対−ホルムアルデヒド比における比較的高いスルフィド基含有率は、より高いホルムアルデヒド放出量をもたらすことが見出されている。従って、使用される予備縮合物は実質的に亜硫酸基を含むべきではなく、即ち、亜硫酸基含有率は1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0質量%である。
【0011】
乳化剤又は乳化剤混合物の添加は発泡剤の乳化及びフォーム材の安定化に必要である。アニオン性、カチオン性および非イオン性の界面活性剤及びそれらの混合物が乳化剤として使用できる。
【0012】
適切なアニオン性界面活性剤はジフェニレンオキシドスルホン酸塩、アルカン−及びアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、脂肪アルコール硫酸エステル塩、エーテル硫酸塩、アルファ−スルホ脂肪酸エステル、アクリルアミノアルカンスルホン酸塩、アシルイソチオネート、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシネート、アルキルリン酸塩及びアルキルエーテルリン酸塩である。使用できる非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、EO/POブロック共重合体、アミンオキシド、グリセリル脂肪酸エステル、ソルビタンエステル及びアルキルポリグルコシドである。使用できるカチオン性乳化剤はアルキルトリアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩及びアルキルピリジン塩である。乳化剤は好ましくは樹脂量を基準として0.2〜5質量%で添加される。
【0013】
メラミン樹脂溶液からフォーム材を製造するため、その溶液は目的とするフォーム密度に応じた量の発泡剤を含まなければならない。原則として、物理的及び化学的発泡剤のどちらについても本発明による方法に使用できる。使用できる物理的発泡剤の例としては:液状又はガスとして空気または二酸化炭素中の炭化水素、ハロゲン化、特にフッ素化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン及びエステルが挙げられる。適切な化学的発泡剤は、例えば、効果的な発泡剤として二酸化炭素を遊離する水との混合物としてイソシアネート、さらに同様に二酸化炭素を生成する、酸との混合物としての炭酸塩及び重炭酸塩、及びアゾジカーボンアミドのようなアゾ化合物である。本発明の好ましい実施の形態において、樹脂量を基準として1〜40質量%の0〜80℃の沸点を有する物理的な発泡剤(ペンタンの場合は好ましくは5〜15質量%)が水溶液または分散液に添加される。
【0014】
使用される硬化剤はメラミン樹脂のさらなる縮合を触媒する酸性化合物である。添加量は樹脂量を基準として0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。無機及び有機酸が適切であり、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸、アミドスルホン酸及び無水酸である。
【0015】
水溶液又は分散液は他の添加剤を含んでいないことが好ましい。しかしながら、種々の目的のため、樹脂量を基準として20質量%以下、好ましくは10質量%以下の染料、防炎剤、紫外線安定剤、燃焼ガス毒性低減剤又は炭化促進剤の様な通常の添加剤を有効に添加することができる。フォーム材は一般に連続気泡フォーム材であり、水を吸収するので、いくつかの使用目的のためには、0.2〜5質量%の撥水剤の添加が必要になる。例えば、シリコン、パラフィン、シリコン及びフッ素界面活性剤、疎水性炭化水素界面活性剤、シリコン及びフッ化炭素乳剤が適切である。
【0016】
予備縮合物及び溶剤の混合物中のメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物の濃度は55〜85質量%、好ましくは63〜80質量%の広い制限範囲で変更することができる。予備縮合物と溶剤の混合物の好ましい粘度は1〜3000dPas、好ましくは5〜2000dPasである。
【0017】
添加剤はメラミン樹脂の水溶液又は分散液に均一に混合し、必要に応じて、発泡剤を加圧下で強制混合することもできる。しかしながら、例えば、噴霧乾燥されたメラミン樹脂などの固体から開始し、それから乳化剤、硬化剤及び発泡剤の水溶液と混合することもできる。化合物の混合は、例えば、エクストルーダー中で行うことができる。混合後、溶液又は分散液はノズルから放出され、その後直ちに加熱され、それによって発泡される。
【0018】
発泡剤を含む溶液又は分散液の加熱は原則として、EP−B 17671に記載されるように、高温気体又は高周波放射によって行うことができる。しかしながら、必要な加熱はEP−B 37470による超高周波(ultra-high-frequency)放射により行われるのが好ましい。この誘電放射の場合、原則として、0.2GHz〜100GHzの範囲のマイクロ波を使用することができる。0.915、2.45及び5.8GHzは工業的実施周波数であり、特に2.45GHzが好ましい。誘導放射用の放射源はマグネトロンであり、複数個のマグネトロンで同時に放射することもできる。放射中は、できる限り電界分布が均一になるよう確保すべきである。
【0019】
放射量については、溶液又は分散液を処理する消費電力として溶液又は分散液中の水1kgを基準として、5〜200kW、好ましくは9〜120kWであるような方式で実施すると都合が良い。吸収電力がより低い場合、もはや発泡は起らず、混合物はただ単に硬化する。手順が好ましい範囲で行われる場合は消費電力が大きいほど、混合物はいっそう急速に発泡する。約200kW/kg−水を超えると、発泡速度はもはや実質的に増加しない。
【0020】
混合物を発泡させるための放射は発泡生成ノズル(foam-generating nozzle)から出た後、すぐに行われる。温度上昇及び発泡剤の蒸発の結果として発泡する混合物はフォーム材を成形する矩形流路(rectangular channel)を形成する回転ベルトに塗布される。
【0021】
それらの製造の後、本発明によるフォーム材は熱処理される。それらは一般に、1〜180分、好ましくは5〜60分、100〜300℃、特に好ましくは150〜250℃の温度で加熱され、水、発泡剤及びホルムアルデヒドが実質的に除去される。
【0022】
本発明により製造された弾性フォーム材は、好ましくは実質的に亜硫酸基を含まず、5〜50g/Lの密度を有する。
【0023】
EP−B 37470に記載されたように、フォーム材をそれらの性能特性を改良するため、加熱し、及び成形することができる。
【0024】
フォーム材は2m以下の高さを有する圧板又はウェブ(web)、又は数mmの厚さを有する発泡シートとして製造することができる。2.45GHz周波数が使用される場合、好ましいフォーム材の高さは(発泡の方向に)50cm〜150cmである。全ての所望の厚板又はシートの厚さは発泡ウェブから切り取ることができる。フォーム材は、一方又は両方の側面にカバーシート、例えば、紙、板、ガラス、表面マット、木、石こうボード、金属シート又は金属ホイル、又は必要に応じて発泡されている、プラスチックフィルムが付いているか、又は積層されていても良い。
【0025】
本発明により製造されるフォーム材の用途の主な分野は建物及び建物の部分、特に仕切り壁、または屋根、壁面、ドア、床の断熱及び防音;さらには車及び航空機のエンジンルーム及び室内の断熱及び防音、及び例えばコールドルーム、オイルタンク及び液化ガス容器などの低温用断熱である。
さらなる利用分野として断熱壁の被覆加工、及び機材の絶縁及び衝撃吸収梱包としての用途がある。架橋メラミン樹脂の高い硬度のため、フォーム材は研磨クリーニング、研磨及び磨き様スポンジ用としても利用できる。スポンジは特別なクリーニング作業のために疎水及び疎油処理を施すこともできる。今まで、市場に提供されたメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材と比較して、特に低いホルムアルデヒド放出量のため、本発明によるフォーム材は衛生部門、例えば薄い不織布の形態で外傷用包帯、おしめ及び失禁用製品の一部として利用することもできる。
【0026】
実施例中で定められた部及びパーセントは質量に基づいている。
【実施例1】
【0027】
70重量部の噴霧乾燥されたメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物(モル比1:1.6)及び5.25重量部の尿素を水に溶解する。それぞれ樹脂を基準として、3質量%の蟻酸、2質量%の脂肪アルコールポリグリコールエーテル及び10質量%のペンタンを、この樹脂溶液に加える。激しく攪拌し、その後、ポリプロピレン製発泡用金型中で2.54GHzでのマイクロ波の放射エネルギーの導入によって発泡を行う。
【0028】
ホルムアルデヒド補足剤は100℃〜160℃の範囲の温度での加熱中は最も大きな効果を有する。この温度では、フォーム材は、熱成形性を残すように、まだ完全に硬化されず、及びそれにもかかわらず、ホルムアルデヒド放出量は、DIN55666による測定で0.1ppm以下である。従って、本発明によるフォーム材のホルムアルデヒド放出量は禁止化学物質の規制1に規定された0.1ppmの制限値を下回る。
【0029】
(実施例)
110℃での加熱の後、フォーム材はDIN55666による測定で、0.08ppmのホルムアルデヒドを放出する。フォーム材は熱成形性であり、ホルムアルデヒド放出量は禁止化学物質の規制制限値を下回る。
【実施例2】
【0030】
実施例1を、加熱を220℃で行った以外は、同様に繰り返した。ホルムアルデヒド放出量はDIN55666による測定で0.3ppmであった。フォーム材には熱成形性はない。
【0031】
(比較実験)
実施例1を、尿素を加えないで、繰り返した。110℃での加熱の後、フォーム材はDIN55666による測定で0.42ppmのホルムアルデヒドを放出する。フォーム材は熱成形性であるが、ホルムアルデヒド放出量は禁止化学物質の規制制限値を上回る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物、硬化剤および発泡剤を含む混合物の発泡及び架橋とともに加熱することによるフォーム材の製造方法であって、加熱前にホルムアルデヒド捕捉剤を添加することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒド捕捉剤として、尿素及び置換尿素、アルキル又はアリール置換メラミン、ウレタン、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン、グリコール又はフェノールをメラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物を基準として2〜10質量%で添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物を、55〜85質量%のメラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物を含む水溶液又は分散液の形態で使用することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
予備縮合物のメラミン/ホルムアルデヒドのモル比が1:1.3〜1:4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
硬化剤をメラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物を基準として0.01〜20質量%で使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
0〜80℃の沸点を有する物理的発泡剤をメラミン/ホルムアルデヒド(MF)予備縮合物を基準として1〜40質量%で使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
発泡及び架橋の後、フォーム材を100〜160℃の範囲の温度で加熱することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって得られる、メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物を主成分とするフォーム材。
【請求項9】
ホルムアルデヒド放出量が、DIN55666による測定で、0.1ppm以下であることを特徴とする請求項8に記載のフォーム材。
【請求項10】
請求項8または9に記載のフォーム材を熱成形することによる成形品の製造方法。

【公表番号】特表2008−544005(P2008−544005A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516292(P2008−516292)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063082
【国際公開番号】WO2006/134083
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】