説明

低下した塩化物を有する二酸化チタン粒子の製造方法

本開示は、a)四ハロゲン化チタン蒸気、ルチル形成剤および少なくとも化学量論量の酸素を反応器中で反応させて二酸化チタン粒子を含むガス状懸濁物を形成する工程と、(b)四ハロゲン化チタン、ルチル形成剤および酸素の接触のポイントの下流の、かつ、四ハロゲン化チタンの少なくとも97%が二酸化チタンに転化された少なくとも1つのポイントで四ハロゲン化ケイ素を反応器へ導入して二酸化チタン上に火成SiO2の実質的に均一な被包を提供する工程と、c)ガス状懸濁物を冷却導管に通す工程と、d)カ焼二酸化チタンおよび圧縮二酸化チタン、ならびにそれらの混合物の群から典型的に選択された研磨材料であって、その粒子が約0.25mm〜約12.7mmの範囲の直径を有する研磨材料を冷却導管へ導入し、そして固相および気相を有する冷却生成物を形成する工程と、e)気相を冷却生成物から分離して二酸化チタン粒子、および約500〜約3000ppmの範囲であるオキシ塩化物含有率の塩素含有物質、および研磨材料を含む粉末を形成する工程と、f)粉末を水分の存在下に、約200℃〜約600℃の温度で実質的に均一な加熱にかけて、塩素含有物質の含有率を約60ppm未満のオキシ塩化物に低下させる工程であって、存在する水分がオキシ塩化物と少なくとも化学量論量にある工程とを含む、低下した塩化物を有する二酸化チタン顔料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化チタン顔料の改良された製造方法に、および特に低下した塩化物を有する二酸化チタン顔料を製造するための改良された仕上げプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ルチル形態の顔料二酸化チタン(TiO2)の製造においては、三塩化アルミニウム(AlCl3)などのルチル形成剤と一緒に四塩化チタン(TiCl4)などの四ハロゲン化チタンが約900℃〜1600℃の範囲の温度で、反応器中で酸素含有ガスと気相で反応させられてTiO2固体微粒子および遊離塩素の高温のガス状懸濁物を生成する。この高温のガス状懸濁物は、反応器からの懸濁物の排出後約1〜60秒内に600℃未満に急冷されなければならない。この冷却は、望ましくないTiO2粒径成長が防がれ、かつ、粒子凝集が最小限にされるように、流水で外部冷却される、導管、例えば煙道で行われる。粒径および粒子凝集は、重要なTiO2顔料特性である。
【0003】
二酸化チタン顔料の製造は、TiCl4と酸素含有ガスとが核剤の存在下に反応させられるときに改良されることが知られている。この方法は、改良された粒径均一性、色、およびイン−プロセス嵩密度を有するTiO2顔料を提供する。
【0004】
開示された製造方法においては、TiO2粒子は、冷却導管の内壁上に沈着する強い傾向を有する。冷却TiO2粒子は、内壁上に付着層を形成する傾向があり、導管の閉塞を引き起こし得る。さらに、TiO2沈着物は不十分な熱導体であり、冷却導管の内面は断熱状態になり得るし、それは導管の熱交換性を抑制する。現行方式は、粒状研磨粒子(スクラブとして知られ;例は、NaCl、KCl、CsClのような水溶性塩またはTiO2もしくはSiO2などの不溶性酸化物である)を注入することである。
【0005】
形成された二酸化チタンは次に、湿式処理、濾過、および乾燥にかけられ、その後粒子は超微粉砕プロセスにかけられる。スクラブが水溶性であるとき、それらは、これらの処理工程中に溶解し、顔料から除去される。それらが不溶性であるとき、それらは、湿式スクリーニングによってまたは他の技法によって分離される。
【0006】
湿式処理、濾過、および乾燥工程の必要性をなくし、かつ、低下した塩化物を有する二酸化チタン粒子をもたらす、合理化された仕上げプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
a)四ハロゲン化チタン蒸気、ハロゲン化アルミニウムなどの、ルチル形成剤および少なくとも化学量論量の酸素を反応器中で反応させて二酸化チタン粒子を含むガス状懸濁物を形成する工程と、
b)四ハロゲン化チタン、ルチル形成剤および酸素の接触のポイントの下流の、かつ、四ハロゲン化チタンの少なくとも97%が二酸化チタンに転化された少なくとも1つのポイントで四ハロゲン化ケイ素を反応器へ導入する工程と、
c)ガス状懸濁物を冷却導管に通す工程と、
d)カ焼二酸化チタンおよび圧縮二酸化チタン、ならびにそれらの混合物の群から典型的に選択された研磨材料であって、その粒子が約0.25mm〜約12.7mmの範囲の直径を有する研磨材料を冷却導管へ導入し、そして固相および気相を有する冷却生成物を形成する工程と、
e)気相を冷却生成物から分離して二酸化チタン粒子、約500〜約3000ppmのオキシ塩化物、および研磨材料を含む粉末を形成する工程と、
f)粉末を水分の存在下に、約200℃〜約600℃の温度で実質的に均一な加熱にかけて、塩素含有物質の含有率を約60ppm未満、より典型的には約30〜約40ppmに低下させる工程であって、存在する水分がオキシ塩化物と少なくとも化学量論量にある工程と
を含む、塩素含有物質の低下した含有率を有する二酸化チタン顔料の製造方法を提供する。
【0008】
第1態様では、本開示は、工程(f)において粉末の少なくとも二酸化チタン粒子のサイズが約50nm〜約1000nmの平均粒径に低減される方法をさらに提供する。
【0009】
本開示の塩素含有物質は、粉末を脱塩素するまたは脱塩化物することができる均一な加熱工程によって粉末から除去される1つまたは複数の生成物である。塩素含有物質は、約500〜約3000ppmの1つまたは複数のオキシ塩化物、より具体的には、遊離塩素(Cl2)およびオキシ塩化物ならびにそれらの混合物を含むことができる。オキシ塩化物は、二酸化チタンの製造において四塩化チタン、三塩化アルミニウム、四塩化ケイ素などの、塩化物含有反応体、および酸素を接触させることから生じる。粉末の塩素含有物質の含有率を測定するための分析方法は、粉末中の残存塩化物の含有率を測定する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
核剤の存在下に、四ハロゲン化物、特にTiCl2の気相酸化によるTiO2顔料の製造は公知であり、それらの開示が参照により本明細書に援用される、Lewisらの米国特許第3,208,866号明細書およびAllenらの米国特許第5,201,949号明細書に開示されている。本開示は前述の方法の改良に関する。
【0011】
四ハロゲン化チタンの気相酸化によるTiO2顔料の製造では、四塩化チタン、四臭化チタン、および/または四ヨウ化チタンなどの様々な四ハロゲン化チタンが使用されてもよいが、TiCl4を使用することが好ましい。先ず、TiCl4は蒸発させられ、約300℃〜約650℃の温度に予熱され、反応容器の反応ゾーンへ導入される。酸化反応で形成される総固形分を基準として、約0.5〜約10重量%、典型的には約0.5〜約5重量%、より典型的には約0.5〜約2重量%のAl23を提供するのに十分な量で存在する、AlCl3、AlBr3および/またはAlI3の群から選択された、ハロゲン化アルミニウムなどのルチル形成剤を、反応容器の反応ゾーンへのその導入前に、TiCl4と十分に混合する。典型的には、AlCl3が本開示の方法に使用される。しかしながら、他の共酸化剤およびルチル促進剤がこのポイントかまたは本プロセスでのさらなる下流で加えられてもよいこともまた理解される。
【0012】
酸素含有ガスは、少なくとも1200℃に予熱され、TiCl4フィード流れ用の注入口とは別個の注入口を通して反応ゾーンへ連続的に導入される。「反応ゾーン」とは、反応体の実質的な反応が起こる反応器の長さを意味する。気相でのO2とTiCl4との反応は極めて速く、短期間の粒子成長がそれに続く。反応ゾーンへ導入される酸素含有ガスは核剤を含有する。「核剤」とは、金属、酸化物、塩、またはナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物の他の化合物などの、顔料の粒度を下げることができる任意の物質を意味する。塩、CsCl、およびKClが本開示での使用に典型的である。
【0013】
酸化反応を実施するための圧力は、少なくとも、平方インチ当たり10ポンド・ゲージ(psig)であってもよい。より典型的には、圧力は少なくとも20psigであってもよい。圧力上限は本プロセスの実際の上限、例えば、典型的には約200psigであってもよい。反応器の混合ゾーンでの反応体の滞留時間は、少なくとも1ミリ秒、典型的には少なくとも3ミリ秒であってもよい。最大滞留時間は約25ミリ秒であってもよい。典型的には、滞留時間は約1〜約25ミリ秒の範囲にある。「混合ゾーン」とは、反応体の実質的な混合が行われる反応器の長さを意味する。反応温度は少なくとも800℃、典型的には約800℃〜約1800℃の範囲にあってもよい。典型的には、反応は水蒸気の存在下に起こる。
【0014】
本開示に従った四塩化ケイ素の添加は、二酸化チタンへの四塩化チタンの転化がほぼ完了したときに行われる。例えば、四塩化チタンの少なくとも97%が二酸化チタンに転化されてしまっている。すなわち、四塩化チタンの3%以下が未反応で残っているポイントである。本発明者らはその研究から、四塩化チタンの約3%が未反応である反応器におけるポイントでは、表面処理による十分で完全なカバレージを有する粒子の率が約85%であることを見いだした。四塩化チタンの約2%が未反応である反応器におけるポイントでは、表面処理による十分で完全なカバレージを有する粒子の率は約95%である。四塩化チタンの約1%が未反応である反応器におけるポイントでは、表面処理による十分で完全なカバレージを有する粒子の率は約98%超である。これらのポイントでの二酸化チタンに転化された四塩化チタンの相当する量は、それぞれ、少なくとも97%、少なくとも98%および少なくとも99%である。
【0015】
本方法が、少なくとも化学量論量の酸素で、好ましくは行われるとき、四塩化ケイ素についての添加ポイントは、次の式によって計算されてもよい:
【0016】
【数1】

【0017】
Kは本方法の反応:
TiCl4+O2→TiO2+2Cl2
についての平衡定数である。
【0018】
この式を用いて、四塩化ケイ素がフィード物から最初に導入されて反応器へ入るポイントを計算してもよい。過剰の酸素、βは、反応器中へフィードされる四塩化チタンと三塩化チタンとの混合物をそれらのそれぞれの酸化物へ転化するために必要とされるもの(化学量論量)を上回る酸素である。フィード塩素モル比、φは、固定期間にわたって、例えば、時間当たり反応器にフィードされる四塩化チタンのモルで割られたフィードされる塩素のモルの比である。パーセント未反応の四塩化チタン、uTiCl4は、本開示によって必要とされるように3%以下である。計算された平衡定数、Kを用いて、次に、四塩化ケイ素が本開示に従って最初に導入されるポイントでの温度を求めることができる。この導入が本開示に従って行われる反応器におけるポイントは、特定の反応器の温度プロフィールを用いて決定されてもよい。この計算は、反応器サイズおよび圧力とは無関係であり、フィード組成(時間当たりモル単位での酸素、塩素および四塩化チタン)ならびに反応器の温度プロフィールについての知識のみを必要とする。所与の反応器の温度プロフィールは、周知の熱力学および伝熱原理から決定されてもよい。
【0019】
添加ポイントを計算するこの方法は、特定の顔料最終使用用途に役立つように製品特徴をデザインする際に重要であり得るフィード混合物に基づいて、幾らかの柔軟性を提供する。この方法は、米国特許第6,852,306号明細書に開示されているように二酸化チタン上への火成SiO2の実質的に均一な被包をもたらすかもしれない。「実質的に均一な被包」とは、二酸化チタン粒子の表面が主に火成金属酸化物の層で覆われていることを意味する。
【0020】
TiO2微粒子の高温のガス状懸濁物は次に、望ましくない粒子成長を防ぐために急冷されてもよい。本開示に従って、高温のガス状懸濁物の冷却は、当該技術で公知の方法によって行われてもよい。これらの方法は典型的には、高温のガス状懸濁物を、ガス状懸濁物と比較して比較的冷たい壁を有する冷却導管に送る工程を含む。導管の壁は典型的には、壁一面に外部に冷たい流体を送ることによって冷却されてもよい。例えば、導管は冷水に浸けられてもよい。水によって外部を典型的に冷却される様々な形態の導管または送気管が本開示の方法に用いられてもよい。例には、通常の丸パイプと米国特許第2,721,626号明細書、米国特許第3,511,308号明細書、米国特許第4,462,979号明細書、米国特許第4,569,387号明細書および米国特許第4,937,064号明細書により詳細に記載されている導管(フィン付き送気管)とが挙げられるが、それらに限定されない。この開示の方法によって提供される利点は、導管の直径が大きくなるにつれて特に明白になり得る。高温のTiO2粒子が内壁の比較的より冷たい表面と接触するときに、粒子は壁上に沈着し、冷えて付着層を形成する。これらの沈着物およびスケールは、反応マスの冷却速度を低下させ、それによって形成される顔料の品質に影響を及ぼすかもしれない。
【0021】
顆粒の研磨粒子が、TiO2沈着物を除去しそして形成される顔料の品質を実質的に向上させるために、導管中へ導入されてもよい。典型的には、本開示において有用な粒状研磨粒子には、カ焼または圧縮TiO2が含まれるかもしれない。カ焼TiO2スクラブは、米国特許第5,728,205号明細書および米国特許第4,784,841号明細書に開示されている。圧縮TiO2スクラブは、米国特許第5,266,108号明細書に開示されている。水溶性塩は、それらを顔料中に残すことができず、容易に分離されないのでそれほど有用ではない。チタニア以外の不溶性物質についても同様である。しかしながら、ドライアイスなどの消失する物質、またはここで製品の一部になる材料をもたらすAlCl3もしくはPCl3などの酸化性の揮発性固体塩化物が使用されてもよい。本方法が研磨粒子除去工程を含まない場合、少量の他の研磨粒子が、製造される二酸化チタンの品質に有害な影響を及ぼさない限り存在してもよい。
【0022】
本開示において、研磨粒子は典型的には、約60メッシュ(0.0098インチもしくは0.250mm)〜約0.5インチ(12.7mm)の範囲の直径(サイズ分布)を有する。典型的には、少なくとも80重量%の粒子は、サイズ10メッシュ(0.0787インチもしくは2.00mm)以上のものであろう。より典型的には、少なくとも90%の粒子は、サイズ10メッシュ以上のものであろう。適切なサイズの使用が洗浄作用を提供するのに不可欠であるので、研磨粒子の粒度分布は非常に重要である。粒径が小さ過ぎる場合、粒子は、衝撃で壁スケールを除去するための運動エネルギーをほとんど有さないため、それらは壁に付着し、そして固体状態焼結によって壁スケールの一部になる可能性が高い。粒径が大き過ぎる場合、これは供給問題および必要とされる洗浄を提供するのに不十分な表面積をもたらす。
【0023】
使用される研磨粒子の量は可変であり、特定のニーズに依存するであろう。典型的には、全TiO2懸濁固形分を基準として、約0.5〜約20重量%研磨粒子、典型的には約3〜10重量%の範囲の量の研磨粒子の添加が、蓄積した顔料沈着物の所望の除去を達成するのに十分であることが分かるであろうし、生成物流れからの除熱の比較的高い均一な速度を可能にするであろう。反応マスを、導管の終わりにサイクロン、フィルター、スクリューコンベヤーなどのような下流プロセス設備に適合する温度にするのに十分な研磨粒子が添加されなければならないことは当業者によって理解されるであろう。かかる温度は約100℃〜約600℃の範囲にあってもよい。
【0024】
研磨粒子は、任意の好適な方法によって導管に添加されてもよい。例えば、研磨粒子は、ホッパー(またはビン)から固形分計量供給バルブを通って送気管へ重力によって間欠的にまたは連続的に添加されてもよい。処理中のTiO2懸濁物への連続フィーディングが典型的である。研磨粒子は、システムにおける任意の好都合なポイントで添加されてもよいが、最も好都合には生成物流れが反応器から排出するときに導管の前端で添加される。さらに、研磨粒子は、複数の添加ポイントで、特に、システムに用いられる曲がりの返しまたは他の形態でなどの、装置の形状のために比較的激しい沈着が起こるところに隣接したポイントで添加されてもよい。
【0025】
典型的には、本開示において使用される研磨粒子は、TiO2顔料から除去される必要がなく、それらは顔料と共に残り、工程(e)において顔料と一緒に、必要とされるサイズに低減される。顔料と一緒に所望の粒径に低減することができる任意の他の研磨粒子、消失する研磨粒子および、上述した乾式分離可能であるものもまた本開示において有用である。
【0026】
本開示では、圧力、反応温度、核剤レベルおよびスクラブの速度などのプロセス変数は、広範囲の生産速度にわたってCBUまたは凝集度などの所望の顔料特性を達成するために調節することができる。
【0027】
研磨粒子と一緒に二酸化チタン粒子およびオキシ塩化物粒子は次に、当業者に公知の技法によって気相から分離される。特定の実施形態では、サイクロンがこの分離を達成するために用いられてもよい。ここで得られた二酸化チタン粒子、オキシ塩化物粒子および研磨粒子は粉末形態にある。
【0028】
粉末形態にある二酸化チタン粒子、オキシ塩化物粒子および研磨粒子は次に、工程f)において脱塩素/脱塩化物にかけられてもよい。脱塩素は、遊離塩素(Cl2)をガス−ストリッピングするプロセスと定義され、脱塩化物は、顔料表面から塩化物を脱着させ、そして、顔料表面への親和力を有する、生じた生成物、すなわち塩酸(HCl)をガス−ストリッピングするプロセスと定義される。塩化物含有率は、約60ppm未満、より典型的には約30〜約40ppm未満に低下させられる。二酸化チタン粒子および研磨粒子は次に、約50nm〜約1000nm、より典型的には約100nm〜約250nmの粒径をもたらす公知の技法を用いて粒径低減にかけられてもよい。
【0029】
あるいはまた、粉末形態にある二酸化チタン粒子、オキシ塩化物粒子および研磨粒子は次に、工程f)における脱塩素/脱塩化物、および粒径低減に同時にかけられ、そして二酸化チタン粒子、オキシ塩化物粒子および研磨粒子は典型的には、約50nm〜約1000nm、より典型的には約100nm〜約250nmの粒径に低減される。これはまた、塩化物含有率を約60ppm未満、より典型的には約30〜40ppm未満に低下させる。これは、約200℃〜約600℃、より典型的には約250℃〜約400℃、最も典型的には約250℃〜約300℃の温度での実質的に均一な加熱によって達成されてもよい。工程(f)に入る粉末の温度が高い場合、より少ないエネルギーが粒径低減のために、および粉末の塩化物含有率を低下させるために工程(f)において必要とされる。典型的には、それが工程(f)に入るときに粉末の温度は20℃〜約375℃、より典型的には100℃〜約250℃である。より高い温度は、より少ない研磨粒子が工程(d)において使用されていることの結果であり、それは、必要とされる粒径に磨砕されなければならない粒子がより少ないという結果になり、それによって必要とされるエネルギー消費がより少なくて済むであろう。典型的な実施形態では、工程f)における同時脱塩素/脱塩化物および粒径低減は、超微粉砕機などの流体エネルギーミルで達成されてもよい。約300℃〜約700℃、より典型的には約350℃〜約500℃、最も典型的には約350℃〜約400℃の必要とされる流体温度は、スチーム、空気、アルゴン、ヘリウム、窒素およびそれらの混合物の群から選択された加熱流体を用いることによって達成されてもよい。幾つかの好適な流体エネルギーミルは米国特許第3,726,484号明細書(Schurr)および米国特許第6,145,765号明細書(Capelle)に開示されている。幾つかの好適な流体エネルギーミルは、Fluid Energy Processing & Equipment Company(Hatfield,PA)から、またはHosokawa Micron Powder Systems(Summit,NJ)から、またはSturtevant,Inc.(Hanover,MA)から入手されてもよい。TMP(トリメチロールプロパン)、化学構造=C25C(CH2OH)3およびTEA(トリエタノールアミン)、化学構造=(HOCH2CH23Nなどの粉砕助剤が粉砕効率を向上させるために使用されてもよい。
【0030】
工程(f)は通常、蒸気空間および顔料空間を有する空間で実施され、蒸気空間中の遊離塩素の量は約1ppm未満であり、蒸気空間は顔料空間の上にある。
【0031】
工程(f)で形成された粉末は、当業者に公知の任意のやり方で使用されてもよい。例えば、スラリーが、本開示の方法を用いて製造された二酸化チタン粉末を使用して調製されてもよい。表面処理がまた、そのように製造された粉末の特性を高めるために提供されてもよい。
【0032】
本開示は以下の実施例によってさらに例示されるが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0033】
試験方法
塩化物レベルの測定
10.0±0.1gの乾燥サンプル(顔料)を量り取り、50〜75mlの蒸留H2Oを含有する250mLビ−カーに加えた。顔料をスラリー化し、約100mL標線まで蒸留水で希釈し、希釈スラリーサンプルのpHをチェックした。硝酸(20%溶液)をスラリーに滴下で加えてpHを3.0±0.5に調整した。スラリーを滴加の間磁気撹拌した。スラリーを次に、ミリボルト読み取り値が250±10ミリボルト(240〜260ミリボルト)に達するまでAgNO3(0.1規定)で滴定した。顔料中の塩化物レベルは次の通り計算した:
塩化物(ppm)=1NのAgNO3のmL×354.5
【0034】
カーボンブラック・アンダートーン
TiO2顔料サンプルのカーボンブラック・アンダートーン(CBU)は、それらの開示が参照により本明細書によって援用される、米国特許第2,488,439号明細書および米国特許第2,488,440号明細書に記載されている方法に従って、該特許に用いられているように100よりもむしろ10のベンチマーク値を用いて測定した。CBUは、淡色オイルなどの好適な液体、TiO2顔料サンプル、およびカーボンブラックを一緒に粉砕することによって測定した。混合物をパネル上に広げ、灰色混合物の相対的な青色度を観察した。より小さいサイズの粒子を含有する顔料は、比較的高いCBUおよびより青いアンダートーンを有する。より大きいサイズの粒子の顔料は、比較的低いCBUを有し、より黄色がかったアンダートーンを有する。
【実施例】
【0035】
実施例1
TiCl4を、酸化反応で形成される全固形分を基準として1重量パーセントのAl23を得るのに十分なAlCl3と十分にプレミックスした。TiCl4を蒸発させ、予熱し、反応ゾーンへ導入した。同時に、予熱した酸素を、別の入口を通して反応ゾーンに連続的に導入した。水に溶解させた微量のKClを、Lewisら、米国特許第3,208,866号明細書の実施例1に開示されているように酸素流れに加えた。反応体流れを迅速に混合した。約900℃〜1600℃の範囲の温度で反応器中で形成された二酸化チタン顔料のガス状懸濁物を冷却導管(煙道)に排出し、急冷した。伝熱を可能にして反応体流れを冷却するための洗浄媒体として役立つカ焼二酸化チタンを、米国特許第2,899,278号明細書の実施例1におよび米国特許第4,784,841号明細書の実施例1に開示されているように導管中の全固形分を基準として約1重量%の量で、導管の前端でガス状懸濁物へ導入した。四塩化ケイ素を、TiO2顔料表面上への3重量%の火成SiO2の実質的に均一な被包を提供するために米国特許第6,852,306号明細書に開示されているように導管に沿って注入した。TiO2顔料を、従来の手段によって冷却ガス状生成物から分離した。上記のように測定された、生じたTiO2顔料のカーボンブラック・アンダートーン(CBU)は約12であり、顔料表面上の吸着塩化物レベルは約1200ppmと測定された。
【0036】
得られたTiO2顔料を次に、市販の流体エネルギーミルおよび高圧スチームを用いて磨砕した。ミルへのスチーム供給温度は約275℃〜350℃で変わり、圧力は約450psigであった。トリメチルホスフェート(TMP)を、流体エネルギーミルでの粉砕助剤として使用した。
【0037】
流体エネルギーミルの下流温度は175℃〜250℃の範囲であった。スチームはまた、粉末中に存在するオキシ塩化物を反応させて、ガス状HClを放出するのに役立った。
【0038】
スチームおよびHClを、TiO2工業で用いられる従来のガス/固形分分離技術である、バグ濾過を用いてミルド粉末から分離した。ミルドTiO2粉末をサンプリングし、塩化物について測定した。50ppm未満の塩化物濃度が、200℃より高い流体エネルギーミル下流温度で達成された。約150ppmの塩化物濃度が、約175℃の流体エネルギーミル下流温度で達成された。
【0039】
実施例2
比較例1の方法を以下のことを除いて繰り返した。CBUを増加させ、火成SiO2被包の重量%を低下させた。
【0040】
1重量%未満のカ焼TiO2スクラブを含有し、約1重量%の火成SiO2で均一に被包され、そして1,800ppmの塩化物を含有する、約18−CBUの二酸化チタン乾燥粉末を、同じ市販の流体エネルギーミルによって処理した。スチーム供給温度を変えて、ミルの下流温度を約185℃〜220℃の範囲で調節した。スチームはまた、粉末中に存在するオキシ塩化物と反応して、ガス状HClを放出するのに役立った。スチームおよびHClを、TiO2工業で用いられる従来のガス/固形分分離技術である、バグ濾過を用いてミルド粉末から分離した。ミルド粉末をサンプリングし、塩化物について測定した。60ppm未満の塩化物濃度が、220℃より高い流体エネルギーミル下流温度で達成された。約90ppmの塩化物濃度が、約185℃の流体エネルギーミル下流温度で達成された。
【0041】
実施例3
比較例1の方法を以下のことを除いて繰り返した。火成SiO2被包の重量%を低下させ、8インチ流体エネルギーミルを用いた。
【0042】
1重量%未満のカ焼TiO2スクラブを含有し、約0.7重量%の火成SiO2で均一に被包され、そして約1,000ppmの塩化物を含有する、約12−CBUの二酸化チタン乾燥粉末を、8インチ流体エネルギーミルによって処理した。スチーム供給温度は、ミルの下流温度をおおよそ300℃に調節するために400℃であった。スチームはまた、粉末中に存在するオキシ塩化物と反応し、ガス状HClを放出するのに役立った。スチームおよびHClをミルド粉末から分離した。ミルド粉末をサンプリングし、塩化物について測定した。30〜40ppmの塩化物濃度が、約300℃の流体エネルギーミル下流温度で達成された。
【0043】
実施例4(対照)
比較例1の方法を以下のことを除いて繰り返した。火成SiO2被包を本実施例では全く用いなかった。
【0044】
1重量%未満のカ焼TiO2スクラブを含有し、そして1,800ppmの塩化物を含有する、約18−CBUの二酸化チタン乾燥粉末を、同じ市販の流体エネルギーミルによって処理した。スチーム供給温度を変えて、ミルの下流温度をおおよそ250℃〜265℃の範囲に調節した。スチームはまた、粉末中に存在するオキシ塩化物と反応し、ガス状HClを放出するのに役立った。スチームおよびHClを、TiO2工業で用いられる従来のガス/固形分分離技術である、バグ濾過を用いてミルド粉末から分離した。ミルド粉末をサンプリングし、塩化物について測定した。塩化物濃度は、260℃の流体エネルギーミル下流温度で152ppm以上であった。
【0045】
要約すれば、ミルドTiO2粉末中の約60ppm未満の塩化物濃度は、火成SiO2の実質的に均一な被包がTiO2粉末の表面上に存在するとき200℃〜約600℃の流体エネルギーミル下流温度で測定される。
【0046】
下表のデータは実施例1〜4をまとめる。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)四ハロゲン化チタン蒸気、ルチル形成剤および少なくとも化学量論量の酸素を反応器中で反応させて二酸化チタン粒子を含むガス状懸濁物を形成する工程と、
b)四ハロゲン化チタン、ルチル形成剤および酸素の接触のポイントの下流の、かつ、四ハロゲン化チタンの少なくとも97%が二酸化チタンに転化された少なくとも1つのポイントで四ハロゲン化ケイ素を反応器へ導入する工程と、
c)ガス状懸濁物を冷却導管に通す工程と、
d)カ焼二酸化チタンおよび圧縮二酸化チタン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択された研磨材料粒子であって、約0.25mm〜約12.7mmの範囲の直径を有する研磨材料粒子を冷却導管へ導入し、そして固相および気相を有する冷却生成物を形成する工程と、
e)気相を冷却生成物から分離して二酸化チタン粒子、約500〜約3000ppmの1つまたは複数のオキシ塩化物を含む塩素含有物質、および研磨材料を含む粉末を形成する工程と、
f)粉末を水分の存在下に、約200℃〜約600℃の温度で実質的に均一な加熱にかけて、塩素含有物質の含有率を約60ppm未満のオキシ塩化物含有率に低下させる工程であって、存在する水分がオキシ塩化物と少なくとも化学量論量にある工程と
を含む、二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項2】
前記塩素含有物質が約30〜約40ppmの1つまたは複数のオキシ塩化物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(f)が前記粉末をミルにかけて約50nm〜約1000nmの平均粒径を有する粒子を含むミルド粉末を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(f)が前記粉末をミルにかけて約100nm〜約250nmの平均粒径を有する粒子を含むミルド粉末を形成することをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が約250℃〜約400℃である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が約200℃〜約600℃であり、そして流体エネルギーミルで達成される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ミリングおよび約200℃〜約600℃の温度への実質的に均一な加熱が流体エネルギーミルで達成される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記流体エネルギーミルがスチーム、空気、アルゴン、ヘリウム、窒素およびそれらの混合物の群から選択された加熱流体を含む請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱流体がスチームである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体エネルギーミルが超微粉砕機である請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記超微粉砕機がスチーム、空気、アルゴン、ヘリウム、窒素およびそれらの混合物の群から選択された加熱流体を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱流体がスチームである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粉末が約250℃〜約400℃の温度で実質的に均一に加熱される請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記粉末が約250℃〜約300℃の温度で実質的に均一に加熱される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(f)が、蒸気空間を有する空間で実施され、そして蒸気空間における遊離塩素の量が約1ppm未満である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ルチル形成剤がハロゲン化アルミニウムである請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−509163(P2010−509163A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535305(P2009−535305)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/022990
【国際公開番号】WO2008/057354
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】