低侵襲医療ツール及びその製造方法
【課題】細径かつ広い内腔を確保した高機能部品が作成可能であり、らせん加工により可撓性を付加することで硬性部を最適限の短さに最適化でき、さらに細径を保ったまま集積回路やマイクロセンサなどの各種微小部品を容易に実装できる高機能な低侵襲医療ツールを提供すること。
【解決手段】カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加した。
【解決手段】カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般的に使われている内視鏡や,一部の屈曲機構付きカテーテルの屈曲機構は体外からワイヤを牽引することにより駆動されている。そのため,内視鏡のシャフトは,屈曲動作時に座屈しないように硬くなっている。また,内視鏡シャフトが複雑に蛇行したり,ループを形成するとワイヤによる牽引力や,回転トルクを内視鏡先端まで正確に伝えることができないため,操作が難しくなる。さらに,腸のようなやわらかい組織内部を観察する場合,腸壁が内視鏡に比べて薄くやわらかいため,内視鏡を腸内部に挿入しても腸が伸張するため内視鏡先端部を進めることが難しく,深部まで挿入し観察することが難しい。
【0003】
ワイヤ牽引に代わる屈曲機構としてNi-Ti 形状記憶合金(Shape Memory Alloy SMA)コイルアクチュエータを用いた内視鏡を作製した。これまでにもSMA アクチュエータを用いた内視鏡やカテーテルを作製する試み(非特許文献1)(非特許文献2)が行われてきた。我々は,これまでに屈曲機構のアクチュエータをコイル状やジグザグばね形状にすることで動作時でもやわらかい状態を保つことができる医療用能動カテーテルやガイドワイヤーの開発を行ってきた(非特許文献3) (非特許文献4) (非特許文献5) (非特許文献6)。本機構では,先端の屈曲動作に電気エネルギーを用いているため,シャフト内部はワイヤに代わり,やわらかい電気配線が通るため内視鏡全体をやわらかくできる。そのため,これまで挿入の難しかった腸などのようにやわらかく,複雑に入り組んだ部位に挿入し,先端を自由に屈曲させて観察を行うことができ,さらに貫通穴(ワーキングチャネル)を通して生検・治療を行うことが可能となる(図1)。
【0004】
体内に挿入するカテーテルや内視鏡は,外径が細く,また,硬く曲がらない硬性部が短い方が挿入性・操作性に優れる。これらの細径化および多機能化を行う場合,電子部品など機能付加のための微小部品を実装すると,カテーテルや内視鏡の機能として重要な内腔を埋めてしまったり,硬性部が長くなり挿入性が損なわれてしまう。本発明は非平面への微細加工技術を用いることにより,内腔の空間を保ちながら硬性部を短くする低侵襲医療ツールの高機能化、多機能化に関する。
【0005】
【非特許文献1】K Ikuta, M Tsukamoto, S Hirose. “Shape Memory Alloy Servo Actuator System with Electric Resistance Feedback and Application for Active Endoscope”, Proceedings of 1988 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, April 24-29, Philadelphia, USA, pp. 427-430 (1988)
【非特許文献2】S Guo, T Fukuda, F Arai, M Negoro, K Oguro. “A Study on Active Catheter System”, JRSJ, Vol. 14, No. 6, pp. 820-835, (1996) (in Japanese) 郭 書祥,福田 敏男,新井 史人,根来 真,小黒 啓介.「能動カテーテルに関する研究」,日本ロボット学会誌,Vol. 14, No. 6, pp. 820-835 (1996)
【非特許文献3】Y Haga, M Esashi. “Small Diameter Active Catheter Using Shape Memory Alloy Coils”, T.IEE Japan, Vol. 120-E, No. 11, pp. 509-514 (2000) (in Japanese) 芳賀 洋一,江刺 正喜.「形状記憶合金コイルを用いた細径能動カテーテル」,電気学会論文誌E,Vol. 120-E, No. 11, pp. 509-514, (2000)
【非特許文献4】T Mineta, T Mitsui, Y Watanabe, S Kobayashi, Y Haga, M Esashi. “An Active Guide Wire with Shape Memory Alloy Bending Actuator Fabricated by Room Temperature Process”, Sensors and ActuatorsA, Vol. 97-98, pp. 632-637 (2002)
【非特許文献5】M Mizushima, Y Haga, K Totsu, M Esashi. “Active Catheter Using Shape Memory Alloy for Treatment of Intestinal Obstruction”, J JSCAS, Vol. 6, pp. 23−29 (2004) (in Japanese)水島 昌徳,芳賀 洋一,戸津 健太郎,江刺 正喜.「形状記憶合金を用いた腸閉塞治療用能動カテーテル」,J JSCAS,Vol.6,pp. 23−29 (2004)
【非特許文献6】W Makishi, T Matsunaga, M Esashi, Y Haga. “Active Bending Electric Endoscope Using Shape Memory Alloy Coil Actuators”, T. IEE Japan, Vol.127-E, No.2, pp. 75-81 (2007) 牧志 渉, 松永忠雄, 江刺正喜, 芳賀洋一.「形状記憶合金を用いた能動屈曲電子内視鏡」,電気学会論文誌E, 127 巻 2 号 (2007), pp. 75-81
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細径かつ広い内腔を確保した高機能部品が作成可能であり、らせん加工により可撓性を付加することで硬性部を最適限の短さに最適化でき、さらに細径を保ったまま集積回路やマイクロセンサなどの各種微小部品を容易に実装できる高機能な低侵襲医療ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の低侵襲医療ツールは、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1に記載の低侵襲医療ツールであって、前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3に記載の低侵襲医療ツールは、請求項2に記載の低侵襲医療ツールであって、前記らせん体の長さ方向の伸縮に伴う外径寸法変化を用い、らせん体の外径寸法を制御することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1ないし3のいずれかに記載の低侵襲医療ツールであって、前記らせん体の上に微小部品が実装されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1ないし4のいずれかに記載の低侵襲医療ツールであって、前記チューブ形状絶縁基板がポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンで構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法は、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールの製造方法において、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項7に記載の低侵襲医療ツールの製造方法は、請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法であって、前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば、細径かつ広い内腔を確保した高機能部品が作成可能であり、らせん加工により可撓性を付加することで硬性部を最適限の短さに最適化でき、さらに細径を保ったまま集積回路やマイクロセンサなどの各種微小部品を容易に実装できることから、より良い低侵襲医療が可能になる。1体の高機能部品であることから高機能な低侵襲医療ツールが容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る低侵襲医療ツールを実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
光学イメージャの小型実装:内視鏡先端部の光学イメージャ実装部は,光学イメージャや周辺回路部品を実装するための基板から構成されるため,硬く曲がらない硬性部となる。内視鏡の硬性部はできるだけ短い方が挿入性,操作性が良い。しかし,内視鏡の細径化を行った場合,通常のプリント基板による実装では,硬性部が長くなり,また,内視鏡の内腔を埋める必要がある。本実施例では,図2 に示すように,円筒面基板の表面に微細加工行うことで回路の実装面積を増やし内腔の確保を行い,また,硬性部を短くする実装方法用いた。
【0017】
硬性部となる周辺回路の実装部分の回路は,図3 のようになっており長さは5.5mm である。これをポリイミドチューブ基板上に作製を行うことで,円筒面基板を実現する。
【0018】
光学イメージャを駆動するための配線は,光学イメージャ実装部分の根元側に配置された屈曲機構内部を通す必要がある。これまで試作した内視鏡では,被覆配線をインナーチューブ周囲にらせん状に配置することで柔らかくし,屈曲機構の動作へ影響を少なくしていた。しかし,多数ある配線を手作業でチューブ上へ配置するのが煩雑であり,また,組立時に光学イメージャと被服配線との対応関係を把握することが難しいといった問題があった。
【0019】
図4 に示すように光学イメージャ実装基板と,屈曲機構の配線部の一体化を行うことで組み立てが容易になり,また,より細径化を行うことが可能となる。基板には,ポリイミドチューブ基板(外径1.92mm/内径1.8mm,肉厚0.6mm)を用い、回路形成後,レーザー加工により基板をらせん状に貫通加工することで,屈曲部分を柔らかくすることが可能になる。このような設計とすることで,外径5mm 以下,硬性部長さ10mm 以下の内視鏡を実現することができる。微小部品の実装は貫通加工の前でも後でも良い。また微小部品の実装は硬性部上でも,らせん加工された基板上でも良い。
【0020】
図5 に細径内視鏡の作製プロセスを示す。作製プロセスは,以下のようになっている。今回,以下の作製プロセス(2)のポリイミドチューブ基板上への回路作製まで行い,また,屈曲部分を柔らかくするためのポリイミドチューブ基板のレーザー加工を別途行い以下のプロセス(3)の実証を行った。
【0021】
(1)銅層(シードレイヤー)成膜:基板であるポリイミドチューブ基板上へ電解めっきのシード層となる銅をスパッタにより厚さ300nm 程度成膜を行う。この銅薄膜は円筒面上へ均一に成膜する必要があるため,成膜には,基板の回転機構を持つ円筒面成膜装置を用いた。
【0022】
(2)フォトレジスト塗布・パターニング,銅電解めっき:基板上に均一な厚さの回路作製するためには,銅薄膜の上にフォトレジストを均一に塗布する必要がある。ポリイミドチューブ基板は円筒形状をしているため,フォトレジストをスピンコーティングで塗布することはできず,また,ディップコーティングでは,均一に塗布することは難しい。今回は,スプレーコーティング装置を用いることで均一にフォトレジストの塗布を行った(図6)。このスプレーコーティング装置は,1 軸θ(回転)と2 軸XZ の精密自動ステージを備えており,コンピュータで座標データを処理することによりステージを制御し正確にレジストを塗布することができる。
【0023】
配線の厚さを10μm とするため,塗布するフォトレジストの膜厚を12〜15μm とした。フォトレジストは,一度に厚くスプレーコーティングを行うと,液だれなどにより均一に成膜ができないため,1 回のコーティングを3μm 程度とし,スプレーコートとベークを4 回繰り返すことにより目的の膜厚を実現した。
【0024】
円筒面基板への露光を行う方法として,レーザー光源と多軸精密自動ステージを組み合わせたマスクレス露光方法を用いた。この露光システムは,1 軸θステージ(回転)と2 軸XZ ステージと露光用レーザー光源にはYAG レーザーを用いている。
【0025】
上記の露光システムを用いて露光・現像を行ったポリイミドチューブ基板が図7 である。らせん配線の形状は,配線幅130μm 程度,らせん状部分の長さが55mm となっている。露光・現像を行いフォトレジストの型を作製した後,銅スパッタ薄膜をシード層にして銅の電解めっきを行うことで,厚膜の配線を形成することができる。
【0026】
円筒面基板上へ電界めっきを行うためには,一様な電界を発生させるために,円筒基板を囲むようにアノード銅電極を配置する必要がある。また,電界めっき中は円筒基板を回転させることにより,電極と基板の距離による偏りをなくし均一な銅の成膜を行うようにした。
【0027】
銅電解めっき後のポリイミドチューブ基板を図8,フォトレジストの除去及び,銅シード層のエッチング後の基板を図9 に示す。
【0028】
(3)チューブ基板のレーザー加工:回路基板の作製後,屈曲機構部を柔らかくするために,基板をらせん状に加工する必要がある。今回ポリイミドチューブ基板の加工には,Nd-YAG レーザー装置を用いた。このYAG レーザー装置は,第一から四高調波を用いることができるが,今回は,ポリマーの加工が可能で,装置の出力が一番大きい第2高調波(532nm)の波長を用いて加工を行った。加工は,3 軸の精密自動ステージをコンピュータで用いて制御することで行った。図10 に加工を行ったポリイミドチューブ基板を示す。今回は,回路作製を行った基板での加工を行っていないが,レーザー加工を行うことで,屈曲機構に組み込むのに基板を十分柔らかくできることを確認した。
【0029】
屈曲機構の構造を図11 に示す。屈曲部には,等間隔でリンクが配置されており,そこへ屈曲を行うためのSMA コイルアクチュエータを自然長より引き伸ばした状態で円周上に120°毎に計3 本固定する。この3 本のSMA コイルアクチュエータへ供給する電力量を変えることにより,任意の角度と方向へ屈曲することが可能となる。屈曲した内視鏡は,インナーチューブ,SMA コイルの外側に配置されたステンレスコイルおよび防水と漏電防止のためのアウターチューブなどの剛性により元の直線形状に戻る。前述の各部品の剛性が不十分だとSMAコイルの収縮に伴い全体が座屈する可能性があるが,らせん状に加工したチューブ基板の形状と材質を最適化することで適当な剛性を達成できる。
【0030】
今回作製した細径内視鏡用の屈曲機構は,外径5.4mm,長さ45mm となっている。SMA コイルは,素線径75μm, 外径300μm の形状のものを用い,絶縁と防水用の外装パッケージングには,厚さ200μm のシリコーンゴムチューブを用いた。このシリコーンゴムチューブは,生体適合性・絶縁性・防水性を持ち,長軸方向への十分な引っ張り強度も兼ね備えているものを用いた。この屈曲機構を動作させたところ,任意の方向と角度への屈曲が可能であり,最大屈曲角度は90°(曲率半径28mm)であった。
【0031】
結果:基板の回転機構を持つ,スパッタ装置・スプレーコーティング装置・露光装置を組み合わせた,非平面微細加工技術を用いることで,外径1.92mm のポリイミドチューブ基板上へ電子回路の作製を行い,また,回路実装部の長さを5.5mm とすることができた。このような設計とすることで,内腔埋めることなく光学イメージャを小型実装することができ,また,硬性部を短くすることが可能となる。図12は屈曲動作の様子である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】能動屈曲電子内視鏡
【図2】円筒面基板への微細加工
【図3】ポリイミドチューブ状の回路パターン
【図4】細径内視鏡の構造
【図5】細径内視鏡の作製プロセス
【図6】スプレーコーター装置
【図7】パターニング後のポリイミドチューブ基板
【図8】電解めっき後のチューブ基板
【図9】レジスト層・シード層除去後のチューブ基板
【図10】らせん状に加工したポリイミドチューブ基板
【図11】屈曲機構の構造
【図12】屈曲動作の様子
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般的に使われている内視鏡や,一部の屈曲機構付きカテーテルの屈曲機構は体外からワイヤを牽引することにより駆動されている。そのため,内視鏡のシャフトは,屈曲動作時に座屈しないように硬くなっている。また,内視鏡シャフトが複雑に蛇行したり,ループを形成するとワイヤによる牽引力や,回転トルクを内視鏡先端まで正確に伝えることができないため,操作が難しくなる。さらに,腸のようなやわらかい組織内部を観察する場合,腸壁が内視鏡に比べて薄くやわらかいため,内視鏡を腸内部に挿入しても腸が伸張するため内視鏡先端部を進めることが難しく,深部まで挿入し観察することが難しい。
【0003】
ワイヤ牽引に代わる屈曲機構としてNi-Ti 形状記憶合金(Shape Memory Alloy SMA)コイルアクチュエータを用いた内視鏡を作製した。これまでにもSMA アクチュエータを用いた内視鏡やカテーテルを作製する試み(非特許文献1)(非特許文献2)が行われてきた。我々は,これまでに屈曲機構のアクチュエータをコイル状やジグザグばね形状にすることで動作時でもやわらかい状態を保つことができる医療用能動カテーテルやガイドワイヤーの開発を行ってきた(非特許文献3) (非特許文献4) (非特許文献5) (非特許文献6)。本機構では,先端の屈曲動作に電気エネルギーを用いているため,シャフト内部はワイヤに代わり,やわらかい電気配線が通るため内視鏡全体をやわらかくできる。そのため,これまで挿入の難しかった腸などのようにやわらかく,複雑に入り組んだ部位に挿入し,先端を自由に屈曲させて観察を行うことができ,さらに貫通穴(ワーキングチャネル)を通して生検・治療を行うことが可能となる(図1)。
【0004】
体内に挿入するカテーテルや内視鏡は,外径が細く,また,硬く曲がらない硬性部が短い方が挿入性・操作性に優れる。これらの細径化および多機能化を行う場合,電子部品など機能付加のための微小部品を実装すると,カテーテルや内視鏡の機能として重要な内腔を埋めてしまったり,硬性部が長くなり挿入性が損なわれてしまう。本発明は非平面への微細加工技術を用いることにより,内腔の空間を保ちながら硬性部を短くする低侵襲医療ツールの高機能化、多機能化に関する。
【0005】
【非特許文献1】K Ikuta, M Tsukamoto, S Hirose. “Shape Memory Alloy Servo Actuator System with Electric Resistance Feedback and Application for Active Endoscope”, Proceedings of 1988 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, April 24-29, Philadelphia, USA, pp. 427-430 (1988)
【非特許文献2】S Guo, T Fukuda, F Arai, M Negoro, K Oguro. “A Study on Active Catheter System”, JRSJ, Vol. 14, No. 6, pp. 820-835, (1996) (in Japanese) 郭 書祥,福田 敏男,新井 史人,根来 真,小黒 啓介.「能動カテーテルに関する研究」,日本ロボット学会誌,Vol. 14, No. 6, pp. 820-835 (1996)
【非特許文献3】Y Haga, M Esashi. “Small Diameter Active Catheter Using Shape Memory Alloy Coils”, T.IEE Japan, Vol. 120-E, No. 11, pp. 509-514 (2000) (in Japanese) 芳賀 洋一,江刺 正喜.「形状記憶合金コイルを用いた細径能動カテーテル」,電気学会論文誌E,Vol. 120-E, No. 11, pp. 509-514, (2000)
【非特許文献4】T Mineta, T Mitsui, Y Watanabe, S Kobayashi, Y Haga, M Esashi. “An Active Guide Wire with Shape Memory Alloy Bending Actuator Fabricated by Room Temperature Process”, Sensors and ActuatorsA, Vol. 97-98, pp. 632-637 (2002)
【非特許文献5】M Mizushima, Y Haga, K Totsu, M Esashi. “Active Catheter Using Shape Memory Alloy for Treatment of Intestinal Obstruction”, J JSCAS, Vol. 6, pp. 23−29 (2004) (in Japanese)水島 昌徳,芳賀 洋一,戸津 健太郎,江刺 正喜.「形状記憶合金を用いた腸閉塞治療用能動カテーテル」,J JSCAS,Vol.6,pp. 23−29 (2004)
【非特許文献6】W Makishi, T Matsunaga, M Esashi, Y Haga. “Active Bending Electric Endoscope Using Shape Memory Alloy Coil Actuators”, T. IEE Japan, Vol.127-E, No.2, pp. 75-81 (2007) 牧志 渉, 松永忠雄, 江刺正喜, 芳賀洋一.「形状記憶合金を用いた能動屈曲電子内視鏡」,電気学会論文誌E, 127 巻 2 号 (2007), pp. 75-81
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細径かつ広い内腔を確保した高機能部品が作成可能であり、らせん加工により可撓性を付加することで硬性部を最適限の短さに最適化でき、さらに細径を保ったまま集積回路やマイクロセンサなどの各種微小部品を容易に実装できる高機能な低侵襲医療ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の低侵襲医療ツールは、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1に記載の低侵襲医療ツールであって、前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3に記載の低侵襲医療ツールは、請求項2に記載の低侵襲医療ツールであって、前記らせん体の長さ方向の伸縮に伴う外径寸法変化を用い、らせん体の外径寸法を制御することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1ないし3のいずれかに記載の低侵襲医療ツールであって、前記らせん体の上に微小部品が実装されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5に記載の低侵襲医療ツールは、請求項1ないし4のいずれかに記載の低侵襲医療ツールであって、前記チューブ形状絶縁基板がポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンで構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法は、カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールの製造方法において、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項7に記載の低侵襲医療ツールの製造方法は、請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法であって、前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば、細径かつ広い内腔を確保した高機能部品が作成可能であり、らせん加工により可撓性を付加することで硬性部を最適限の短さに最適化でき、さらに細径を保ったまま集積回路やマイクロセンサなどの各種微小部品を容易に実装できることから、より良い低侵襲医療が可能になる。1体の高機能部品であることから高機能な低侵襲医療ツールが容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る低侵襲医療ツールを実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
光学イメージャの小型実装:内視鏡先端部の光学イメージャ実装部は,光学イメージャや周辺回路部品を実装するための基板から構成されるため,硬く曲がらない硬性部となる。内視鏡の硬性部はできるだけ短い方が挿入性,操作性が良い。しかし,内視鏡の細径化を行った場合,通常のプリント基板による実装では,硬性部が長くなり,また,内視鏡の内腔を埋める必要がある。本実施例では,図2 に示すように,円筒面基板の表面に微細加工行うことで回路の実装面積を増やし内腔の確保を行い,また,硬性部を短くする実装方法用いた。
【0017】
硬性部となる周辺回路の実装部分の回路は,図3 のようになっており長さは5.5mm である。これをポリイミドチューブ基板上に作製を行うことで,円筒面基板を実現する。
【0018】
光学イメージャを駆動するための配線は,光学イメージャ実装部分の根元側に配置された屈曲機構内部を通す必要がある。これまで試作した内視鏡では,被覆配線をインナーチューブ周囲にらせん状に配置することで柔らかくし,屈曲機構の動作へ影響を少なくしていた。しかし,多数ある配線を手作業でチューブ上へ配置するのが煩雑であり,また,組立時に光学イメージャと被服配線との対応関係を把握することが難しいといった問題があった。
【0019】
図4 に示すように光学イメージャ実装基板と,屈曲機構の配線部の一体化を行うことで組み立てが容易になり,また,より細径化を行うことが可能となる。基板には,ポリイミドチューブ基板(外径1.92mm/内径1.8mm,肉厚0.6mm)を用い、回路形成後,レーザー加工により基板をらせん状に貫通加工することで,屈曲部分を柔らかくすることが可能になる。このような設計とすることで,外径5mm 以下,硬性部長さ10mm 以下の内視鏡を実現することができる。微小部品の実装は貫通加工の前でも後でも良い。また微小部品の実装は硬性部上でも,らせん加工された基板上でも良い。
【0020】
図5 に細径内視鏡の作製プロセスを示す。作製プロセスは,以下のようになっている。今回,以下の作製プロセス(2)のポリイミドチューブ基板上への回路作製まで行い,また,屈曲部分を柔らかくするためのポリイミドチューブ基板のレーザー加工を別途行い以下のプロセス(3)の実証を行った。
【0021】
(1)銅層(シードレイヤー)成膜:基板であるポリイミドチューブ基板上へ電解めっきのシード層となる銅をスパッタにより厚さ300nm 程度成膜を行う。この銅薄膜は円筒面上へ均一に成膜する必要があるため,成膜には,基板の回転機構を持つ円筒面成膜装置を用いた。
【0022】
(2)フォトレジスト塗布・パターニング,銅電解めっき:基板上に均一な厚さの回路作製するためには,銅薄膜の上にフォトレジストを均一に塗布する必要がある。ポリイミドチューブ基板は円筒形状をしているため,フォトレジストをスピンコーティングで塗布することはできず,また,ディップコーティングでは,均一に塗布することは難しい。今回は,スプレーコーティング装置を用いることで均一にフォトレジストの塗布を行った(図6)。このスプレーコーティング装置は,1 軸θ(回転)と2 軸XZ の精密自動ステージを備えており,コンピュータで座標データを処理することによりステージを制御し正確にレジストを塗布することができる。
【0023】
配線の厚さを10μm とするため,塗布するフォトレジストの膜厚を12〜15μm とした。フォトレジストは,一度に厚くスプレーコーティングを行うと,液だれなどにより均一に成膜ができないため,1 回のコーティングを3μm 程度とし,スプレーコートとベークを4 回繰り返すことにより目的の膜厚を実現した。
【0024】
円筒面基板への露光を行う方法として,レーザー光源と多軸精密自動ステージを組み合わせたマスクレス露光方法を用いた。この露光システムは,1 軸θステージ(回転)と2 軸XZ ステージと露光用レーザー光源にはYAG レーザーを用いている。
【0025】
上記の露光システムを用いて露光・現像を行ったポリイミドチューブ基板が図7 である。らせん配線の形状は,配線幅130μm 程度,らせん状部分の長さが55mm となっている。露光・現像を行いフォトレジストの型を作製した後,銅スパッタ薄膜をシード層にして銅の電解めっきを行うことで,厚膜の配線を形成することができる。
【0026】
円筒面基板上へ電界めっきを行うためには,一様な電界を発生させるために,円筒基板を囲むようにアノード銅電極を配置する必要がある。また,電界めっき中は円筒基板を回転させることにより,電極と基板の距離による偏りをなくし均一な銅の成膜を行うようにした。
【0027】
銅電解めっき後のポリイミドチューブ基板を図8,フォトレジストの除去及び,銅シード層のエッチング後の基板を図9 に示す。
【0028】
(3)チューブ基板のレーザー加工:回路基板の作製後,屈曲機構部を柔らかくするために,基板をらせん状に加工する必要がある。今回ポリイミドチューブ基板の加工には,Nd-YAG レーザー装置を用いた。このYAG レーザー装置は,第一から四高調波を用いることができるが,今回は,ポリマーの加工が可能で,装置の出力が一番大きい第2高調波(532nm)の波長を用いて加工を行った。加工は,3 軸の精密自動ステージをコンピュータで用いて制御することで行った。図10 に加工を行ったポリイミドチューブ基板を示す。今回は,回路作製を行った基板での加工を行っていないが,レーザー加工を行うことで,屈曲機構に組み込むのに基板を十分柔らかくできることを確認した。
【0029】
屈曲機構の構造を図11 に示す。屈曲部には,等間隔でリンクが配置されており,そこへ屈曲を行うためのSMA コイルアクチュエータを自然長より引き伸ばした状態で円周上に120°毎に計3 本固定する。この3 本のSMA コイルアクチュエータへ供給する電力量を変えることにより,任意の角度と方向へ屈曲することが可能となる。屈曲した内視鏡は,インナーチューブ,SMA コイルの外側に配置されたステンレスコイルおよび防水と漏電防止のためのアウターチューブなどの剛性により元の直線形状に戻る。前述の各部品の剛性が不十分だとSMAコイルの収縮に伴い全体が座屈する可能性があるが,らせん状に加工したチューブ基板の形状と材質を最適化することで適当な剛性を達成できる。
【0030】
今回作製した細径内視鏡用の屈曲機構は,外径5.4mm,長さ45mm となっている。SMA コイルは,素線径75μm, 外径300μm の形状のものを用い,絶縁と防水用の外装パッケージングには,厚さ200μm のシリコーンゴムチューブを用いた。このシリコーンゴムチューブは,生体適合性・絶縁性・防水性を持ち,長軸方向への十分な引っ張り強度も兼ね備えているものを用いた。この屈曲機構を動作させたところ,任意の方向と角度への屈曲が可能であり,最大屈曲角度は90°(曲率半径28mm)であった。
【0031】
結果:基板の回転機構を持つ,スパッタ装置・スプレーコーティング装置・露光装置を組み合わせた,非平面微細加工技術を用いることで,外径1.92mm のポリイミドチューブ基板上へ電子回路の作製を行い,また,回路実装部の長さを5.5mm とすることができた。このような設計とすることで,内腔埋めることなく光学イメージャを小型実装することができ,また,硬性部を短くすることが可能となる。図12は屈曲動作の様子である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】能動屈曲電子内視鏡
【図2】円筒面基板への微細加工
【図3】ポリイミドチューブ状の回路パターン
【図4】細径内視鏡の構造
【図5】細径内視鏡の作製プロセス
【図6】スプレーコーター装置
【図7】パターニング後のポリイミドチューブ基板
【図8】電解めっき後のチューブ基板
【図9】レジスト層・シード層除去後のチューブ基板
【図10】らせん状に加工したポリイミドチューブ基板
【図11】屈曲機構の構造
【図12】屈曲動作の様子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴とする低侵襲医療ツール。
【請求項2】
前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴とする請求項1に記載の低侵襲医療ツール。
【請求項3】
前記らせん体の長さ方向の伸縮に伴う外径寸法変化を用い、らせん体の外径寸法を制御することを特徴とする請求項2に記載の低侵襲医療ツール。
【請求項4】
前記らせん体の上に微小部品が実装されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の低侵襲医療ツール。
【請求項5】
前記チューブ形状絶縁基板がポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の低侵襲医療ツール。
【請求項6】
カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールの製造方法において、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴とする低侵襲医療ツールの製造方法。
【請求項7】
前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴とする請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法。
【請求項1】
カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールにおいて、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴とする低侵襲医療ツール。
【請求項2】
前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴とする請求項1に記載の低侵襲医療ツール。
【請求項3】
前記らせん体の長さ方向の伸縮に伴う外径寸法変化を用い、らせん体の外径寸法を制御することを特徴とする請求項2に記載の低侵襲医療ツール。
【請求項4】
前記らせん体の上に微小部品が実装されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の低侵襲医療ツール。
【請求項5】
前記チューブ形状絶縁基板がポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の低侵襲医療ツール。
【請求項6】
カテーテルや内視鏡等の低侵襲医療ツールの製造方法において、外周面に回路パターンを有するチューブ形状絶縁基板を貫通加工し機械的な機能を付加したことを特徴とする低侵襲医療ツールの製造方法。
【請求項7】
前記チューブ形状絶縁基板をらせん状に加工し、可撓性を付加したことを特徴とする請求項6に記載の低侵襲医療ツールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−297116(P2009−297116A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152460(P2008−152460)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(508175282)メムザス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(508175282)メムザス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]