説明

低品位鉄スクラップの原料化方法

【課題】銅線などの非鉄分が混入した低品位鉄スクラップから、銅線などの非鉄分を除去して、高級鋼材用の製鉄原料として再利用可能な高純度鉄スクラップを的確に得ることができる低品位鉄スクラップの原料化方法を提供する。
【解決手段】銅線2が混入した低品位鉄スクラップ11を破砕機21によって破砕し、その破砕混合物12に対して、揺動反発式選別機22によって、鉄分1と絡み合っている銅線2をほぐした後、磁力選別機24によって磁性物14と非磁性物15に選別し、磁性物14として選別されたものを高品位鉄スクラップとして回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅線などの非鉄分が混入した低品位の鉄スクラップ(低品位鉄スクラップ)から、銅線などの非鉄分を除去して、高級鋼材用の製鉄原料として再利用可能な高純度の鉄スクラップ(高純度鉄スクラップ)を得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃自動車や建築廃材に由来する鉄スクラップは、電炉製鉄法において、電炉での製鉄原料(鉄源)として利用されている。その際は、スクラップ工場で、廃自動車などを破砕し、磁力選別機で鉄主体のスクラップ(鉄スクラップ)を選別回収した後、貯蔵や搬送に都合のよいように、所定の形状にプレス成形されたり、裁断して結束されたりして、出荷されている。電炉工場では、入荷した鉄スクラップを解して、電炉に投入し、鉄源として利用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、後述する[発明を実施するための形態]において、下記の特許文献2を引用するので、ここに併せて記載しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−195516号公報
【特許文献2】特開平10−225930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、鉄スクラップの利用拡大の観点から、高炉製鉄法においても、高炉溶銑に鉄スクラップを混合し、転炉やトピードカーなどの精錬設備に投入して、製鉄原料(鉄源)として活用するようになってきた。
【0006】
しかし、その際に、高級鋼材用の製鉄原料とするためには、従来は問題とならなかった鉄スクラップ中の銅線やプラスチック類などの非鉄混入物を十分に分離・除去して、高純度の鉄スクラップとする必要がでてきた。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、銅線などの非鉄分が混入した低品位鉄スクラップから、銅線などの非鉄分を除去して、高級鋼材用の製鉄原料として再利用可能な高純度鉄スクラップを的確に得ることができる低品位鉄スクラップの原料化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0009】
[1]銅線が混入した低品位鉄スクラップを破砕機によって破砕し、その破砕混合物に対して、揺動反発式選別機によって、鉄分と絡み合っている銅線をほぐした後、磁力選別機によって磁性物と非磁性物に選別し、磁性物として選別されたものを高品位鉄スクラップとして回収することを特徴とする低品位鉄スクラップの原料化方法。
【0010】
[2]揺動反発式選別機のスクリーンが無孔状であることを特徴とする前記[1]に記載の低品位鉄スクラップの原料化方法。
【0011】
[3]回収した高品位鉄スクラップを製鉄原料として利用することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の低品位鉄スクラップの原料化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、低品位鉄スクラップから、銅線などの非鉄分を除去して、高級鋼材用の製鉄原料として再利用可能な高純度鉄スクラップを的確に得ることができる。これにより、従来、自動車外板などの高級鋼材製造の鉄源としては利用できなかった低品位鉄スクラップを大量利用して高級鋼材を効率よく製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における処理フロー図である。
【図2】本発明の一実施形態における処理手順の模式図である。
【図3】本発明の実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態における処理フロー図であり、図2は処理手順の模式図である。
【0016】
まず、銅線等の非鉄分が混入した低品位鉄スクラッップ11を、破砕機21によって、大よそ150mm程度の大きさの塊(中塊)に破砕する。
【0017】
この後、この破砕混合物(鉄分1と銅線2が混合)12から鉄分1を磁力選別することで、高純度鉄スクラップを得ることができればよいが、破砕混合物12では銅線2が鉄分1に絡み付いており、そのままの状態では適切に磁力選別を行うことが難しい。
【0018】
そこで、揺動反発式選別機(揺動回転式選別機)22によって破砕混合物12をほぐし、鉄分1への銅線2の絡み付きを無くしてから、破砕混合物12の磁力選別を行う。
【0019】
ちなみに、揺動反発式選別機は、前記特許文献2にも記載されているように、クランク軸の回転により搭載物を傾斜上方に送るような揺動運動(振幅は30mm以上)をする傾斜スクリーン上に被選別物を投入し、被選別物を構成する物体の重量、形状および硬度の差により傾斜スクリーン上で反発する弾道が異なることを利用して、被選別混合物を選別する形態選別装置である。なお、ここでは、揺動反発式選別機の傾斜スクリーンは無孔状であることが好ましい。
【0020】
このような揺動反発式選別機22に、鉄分1と銅線2とが混合した破砕混合物12を投入すると、反発の強い鉄分1は大きく跳ねる搬送挙動を示し、反発の小さい銅線2はスクリーン上を傾斜下方向に向かって移動する。
【0021】
これにより、鉄分1と絡み合っていた銅線2がほぐされ、次の振動コンベア23に移送されたときには、搬送物13(破砕混合物12)の上層に鉄分1があり、下層に銅線2があるようになる。
【0022】
その結果、次の磁力選別機(ドラム式磁選機または吊り下げ磁選機)24での磁性物14(鉄分1)と非磁性物15(銅線2)との選別が容易になる。
【0023】
そして、磁力選別機24で磁性物14として選別された破砕物(鉄分1)は、高純度な鉄スクラップ(高品位鉄スクラップ)となっており、高級鋼材用の製鉄原料として再利用することができる。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例を述べる。
【0025】
本発明例として、上記の本発明の一実施形態に基づいて低品位鉄スクラップの原料化を行った。すなわち、図1に示した処理フローによって低品位鉄スクラップ11から鉄分1を回収した。なお、使用した低品位鉄スクラップ11は、等級H2のスクラップであり、銅線を0.1〜0.8wt%含んでいた。
【0026】
そして、本発明例では、図1に示した処理フローにおいて、各工程の詳細を以下のようにした。
・破砕機21はハンマークラッシャを用いた。
・揺動反発式選別機22の振幅は45mm、回転数は160rpmであった。
・振動コンベア23の振幅は5mm、周波数は1200Hzであった。
・磁力選別機24は永久磁石式吊り下げ磁力選別機を用い、磁力は1200Gであった。
【0027】
処理量は、13t/hであった。
【0028】
これに対して、比較例として、図1に示した処理フローにおいて、揺動反発式選別機22を用いずに、低品位鉄スクラップ11から鉄分1を回収した。
【0029】
図3に、本発明例と比較例のそれぞれにおいて、磁力選別機24により回収された回収物(磁選回収物)1に含まれていた銅線の割合wt%を示す。
【0030】
図3に示すように、本発明例では、磁選回収物1に含まれていた銅線の割合(銅含有率)が比較例に比べて大幅に下がっており、本発明によって低品位鉄スクラップから鉄分を高純度で回収できることが確認された。
【符号の説明】
【0031】
1 鉄分
2 銅線
11 低品位鉄スクラップ
12 破砕混合物
13 搬送物
14 磁性物
15 非磁性物
21 破砕機
22 揺動反発式選別機
23 振動コンベア
24 磁力選別機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅線が混入した低品位鉄スクラップを破砕機によって破砕し、その破砕混合物に対して、揺動反発式選別機によって、鉄分と絡み合っている銅線をほぐした後、磁力選別機によって磁性物と非磁性物に選別し、磁性物として選別されたものを高品位鉄スクラップとして回収することを特徴とする低品位鉄スクラップの原料化方法。
【請求項2】
揺動反発式選別機のスクリーンが無孔状であることを特徴とする請求項1に記載の低品位鉄スクラップの原料化方法。
【請求項3】
回収した高品位鉄スクラップを製鉄原料として利用することを特徴とする請求項1または2に記載の低品位鉄スクラップの原料化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236086(P2010−236086A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4609(P2010−4609)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】