説明

低圧力損失シストフィルタ

長寿命、低圧力損失のシスト除去水フィルタは2層の活性層を含んでいる。第1は、公称サブミクロンの細孔を有する不織繊維の層からなり、シストは保持するが流量は良好で、上流側の異なる不織繊維の保護層は、シスト除去層に入りシスト除去層を詰まらせてしまうような粒子を捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は飲料水を浄化するためのフィルタに関し、より詳しくは、各層に異なる繊維媒体を使用している多層フィルタであって、シストを除去でき、しかも、寿命が長く、圧力損失が低い、多層フィルタに関する。
【0002】
飲料水システムにおけるシスト低減(cyst reduction)のNSF認証(NSF certification)を受けるには、NSF規格(NSF Std)53に定められた手順にしたがって試験を行ったときに、フィルタにより、シストの数が少なくとも99.95パーセント低減されなくてはならない。加圧により結合されたカーボン粒子からなる多孔質のカーボンブロックフィルタが、製造され、市販されているが、この多孔質のカーボンブロックフィルタは、NSFのシスト低減要件(the NSF cyst reduction requirements)を満たすことが可能である。しかしながら、シストを除去するためには、カーボンブロック構造を、非常に高密度のものとし、非常に小さいカーボン粒子からなるものとしなくてはならない。したがって、このような多孔質のカーボンブロックフィルタで結果として生じる圧力損失は、それぞれの流量に対して典型的には非常に高い。さらに、高密度のカーボンブロックは、高い濾過効率で、水に存在するあらゆるタイプの微粒子を除去する傾向にある。その結果、早期に目詰まりを起こし、頻繁にフィルタを交換することになる。上記に示したように、主要な課題は、高い圧力損失及び低い流量(low flow rate)である。
【0003】
シストに有能なフィルタはまた、中空コア上に、カーボンが充填された合成繊維の単一の活性層を付着させて造ることができる。しかしながら、シストを除去するために、これらのフィルタの空隙率は、カーボン粒子でできたフィルタと同等の大きな圧力損失と低い流量を招くほど、低くする必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一局面での、長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタは、細孔を有する剛性の円筒形のコア上に形成されている少なくとも2つの繊維層を有し、それぞれの繊維層は明確に異なる繊維構成を備えている。繊維層は、コア上に、約0.5μmから5.0μmの範囲の直径及び約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長(fiber lengths)を有する繊維及びバインダーの第1の活性繊維層を含んでいる。第1の活性層を覆うようにこの第1の活性層上に重ねられた第2の活性繊維層は、約5μmから45μmの範囲の繊維径(fiber diameters)及び約1mmから7mmの範囲の繊維長とバインダーを有している。
【0005】
好ましくは、第1の活性層の繊維は、ガラス繊維からなる。しかしながら、第1の活性層はまた、合成繊維を含んでもよい。合成繊維を使用する場合、合成繊維は直径約5μm、長さ約1mmとすることができる。合成繊維の好ましい種類は、ポリエチレンである。合成繊維は、第2の活性層に使用されるのが好ましい。この繊維は、ポリオレフィン及びアクリル繊維の混合からなることができる。ポスト濾過合成繊維層(post‐filtration synthetic fiber layer)が、コアと第1の活性繊維層の間に介在するのが好ましい。ポスト濾過層(post‐filtration layer)の繊維は、約5μmから40μmの範囲の直径、約1mmから7mmの範囲の長さを有することができる。ポスト濾過層の合成繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの混合の群から選択される。
【0006】
第1及び第2の活性層は、繊維の水性スラリーからコアに付着(deposited)させて形成するのが好ましく、真空蒸着処理の利用による付着がもっとも好ましい。本発明の方法によれば、第1の活性濾過層は、約0.5μmから5.0μmの範囲の直径、約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーから、細孔を有する剛性のコア上に付着させる。第2の活性層は、約5μmから45μmの範囲の繊維径と、約1mmから7mmの範囲の長さを有する繊維とバインダーの水性スラリーから第1の活性層上に付着させる。好ましくは、この方法は、第1の活性層を付着させるステップの前に、約5μmから40μmの直径と、約1mmから7mmの範囲の繊維長を有する繊維の水性スラリーから、コア上にポスト濾過層を付着させて形成するステップ、そして、このポスト濾過層の上に第1の活性層を付着させる変更されたステップを含むことが好ましい。付着させるステップは、真空蒸着からなることが好ましい。この方法は又、水分を除去してバインダーを固めるために、加熱によって、フィルタを硬化させるステップも含む。
【0007】
本発明の好ましい形態での、長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタは、剛性で多孔質の円筒形のコアと、このコア上に付着した、約0.5μmから5μmの範囲の直径と約0.3mmから1mmの範囲の異なる長さ(varying lengths)の繊維及びバインダーの第1の活性繊維層を含んでいる。第1の層は、公称約0.5μmの細孔(nominal porosity of about 0.5μm)を有している。第2の活性繊維層は、この第1の層の上に付着していて、この第2の層は、約5μmから45μmの範囲の直径と約1mmから7mmの範囲の異なる長さの繊維と、そしてバインダーを含んでいる。第2の活性層は、公称約1μmから30μmの範囲の細孔を有している。フィルタは、濾過される水を受け入れ、この水を第2の層、第1の層、そしてコアを径方向に通過するよう向かわせるハウジング内に収められる。好ましくは、フィルタは、第1の活性層の前で、コア上に付着したポスト濾過繊維層を含む。ポスト濾過層は、約5μmから35μmの範囲内の直径、及び約1μmから7μmの範囲内の異なる長さを有する繊維を含む。ポスト濾過層は、公称約5μmから15μmの範囲の細孔を有している。
【0008】
繊維は、ガラス繊維、合成繊維及びセルロース繊維の群から選択される。第1の活性層の繊維は、主にガラス繊維で構成されるのが好ましい。第1の活性層の繊維はまた、合成繊維で構成してもよい。好ましい構造では、ガラス繊維は90重量%であり、合成繊維が10重量%である。好ましくは、ガラス繊維は、65重量%が直径0.6μmの繊維、25重量%が直径2.6μmのガラス繊維で構成される。
【0009】
第2の活性層の繊維は、合成繊維からなるのが好ましいが、ポリエチレン繊維、アクリル繊維及びポリプロピレン繊維の混合がさらに好ましい。
【0010】
ポスト濾過層の繊維は、合成繊維からなるのが好ましいが、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン繊維がさらに好ましい。
【0011】
別の態様での、長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタは、細孔のある剛性の円筒形のコアと、このコア上に、約0.5μmから5.0μmの範囲の繊維径と、約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長を有する繊維及びバインダーの水性スラリー(flurry)から付着させた第1の活性層を含む。このフィルタは、この第1の活性層の上で、約5μmから45μmの範囲の繊維径と、約1mmから7mmの範囲の繊維長を有する繊維及びバインダーの水性スラリーから付着させた第2の活性層を含む。
【0012】
第1及び第2の活性層は、真空蒸着させたものであることが好ましい。第1の活性層の繊維は、ガラス繊維からなることが好ましい。ガラス繊維は、0.6μmから2.6μmの範囲内の直径を有している。ガラス繊維は、約0.3mmから0.5mmの範囲内の長さを有している。好ましくは、ポスト濾過層を、第1の活性層の前に、コア上に、約5ミクロン以上の直径を有する繊維及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させる。繊維のポスト濾過層は、合成繊維及びセルロースの群から選択されることが好ましい。好ましい一形態では、ポスト濾過層の繊維は、ポリオレフィンで構成される。
【0013】
第1の活性層は、合成繊維又はセルロース繊維を含むことができる。第1の活性層のバインダーは、ポリオレフィンで構成される。第2の活性層の繊維は、合成繊維及び/又はセルロースからなることができる。バインダーもまた、ポリオレフィンで構成される。
【0014】
本発明のフィルタの別の形態では、ポスト濾過層は、細孔のある、円筒形のコア上に、公称約5μmから40μmの範囲の直径を有する合成繊維及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させたものである。第1の活性層は、このポスト濾過層の上に、公称約0.5μmから5μmの範囲の直径を有するガラス繊維及び/又は合成繊維及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させたものである。第2の活性層は、この第1の活性層の上に、公称約5μmから45μmの範囲の直径を有する合成繊維、活性炭粒子、及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させたものである。活性炭の代わりに又は活性炭に加えて、他の粉末状の吸着材を加えることができる。好ましくは、繊維の第1の活性層は、約0.5mmから1.0mmの範囲の長さを有する。繊維の第2の活性層は、約1mmから7mmの範囲の長さを有していることが好ましい。好ましくは、第1の活性層のガラス繊維は、約25%の繊維が2.5μmの直径を有し、約75%の繊維が0.6μmの直径を有している。繊維のポスト濾過層は、約1mmから7mmの範囲の長さを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明にしたがって製造されたフィルタカートリッジの軸方向の概略端面図である。
【図2】図2は、図1の2−2線縦断面図である。
【図3】図3は、NSF規格53に従って行われた試験における、従来技術及び本発明のシスト除去可能なフィルタの、流量と圧力損失を比較するグラフである。
【図4】図4は、図3の試験で用いられたものと同じフィルタを使用して行った試験における流量と入水側圧力を比較するグラフである。
【図5】図5は、ファインテストダスト(fine test dust)の1タイプを用いて行われた、図3及び4の試験で用いられたものと同じいくつかのフィルタカートリッジで濾過された全量に対して流量を比較するグラフである。
【図6】図6は、図5と同じフィルタ及び試験レジュメを使用したときに、濾過された全量に対して流量を比較するグラフである。ただし、別の標準テストダストを用いて行った。
【好ましい実施の形態の詳細な説明】
【0016】
図1及び2には、本発明のシスト低減水フィルタ10の好ましい構成が示されている。このフィルタは、細孔のある又は多孔質の剛性のコア11を有し、このコア11上に多層のフィルタ本体12が配置されている。コア11は、円筒管13で構成されるのが好ましく、この内部は完全に開放されているか、あるいは、コア11は、コア支持体によって、その内部を支持することができる。このように、フィルタ10は、従来のカートリッジの形態をしていて、使用時には、ハウジング内に配設され、水がフィルタ10内に入り、フィルタ10を通過して出て行くように向かわせるエンドキャップによって塞がれるが、これらはすべてこの技術分野でよく知られた方法で行われる。特に、流入水は外側から径方向に多層フィルタ本体12を通過してコア管13の内部に流れ込み、一端から軸方向外側に濾過された水が流出していくこととなる。
【0017】
この好ましい形態では、緻密な不織繊維(fine non‐woven fibers)のポスト濾過層(post‐filtration layer)14が、まずコア11の上に形成される。やはり緻密な不織層で構成されている第1の活性繊維層(active fiber layer)15が、次にポスト濾過層14上に形成される。最後に、やはり緻密な不織繊維の第2の活性層16が第1の活性層15の上に形成される。
【0018】
第1の活性層15は、シスト除去機能を有し、その結果、他の2つの層14及び16で使用されている繊維よりかなり小さい直径を典型的には有している繊維を使用している。第1の活性繊維層15の空隙率は、シストを保持できるように十分低くなくてはならない。第2の活性繊維層16は、直径と長さの両方で大きな繊維を典型的には使用し、第1の活性層15よりかなり高い空隙率を有している。ポスト濾過層14は、主に第1の活性層15の支持ベースを提供し、また、製造及び使用時に、第1の活性層15から外れた繊維微粉(fiber fines)を捕捉するよう意図されている。
【0019】
第1の活性繊維層15は、NSF規格53に完全にのっとった、優れたシスト除去、及び空隙率が低くても少なくとも初期には優れた流量をもたらすように形成できることは分かっている。しかしながら、供給水中の、一般的にはシストより大きい他の微粒子は、第1の活性層15内に捕捉されて、最終的に第1の活性層15に溜まる(overwhelm the first active layer 15)。そうすると、濾過層15全体の圧力損失は急速に増大し、十分な流量をもたらすにはますます高い圧力が必要となる。第2の活性層16を追加することにより、微粒子物質の大部分を除去でき、内側の第1の活性シスト層15の目詰まりを防止する。第2の活性層は、塩素低減及び他の既知の用途のため、活性炭粒子を含むことができる。加えて、鉛、ヒ素等の低減のため、重金属吸着材などの他の吸着材もまた、使うことができる。そして、高い流量及び低圧力損失を維持しつつ優れたシスト除去を結果することになる。注水圧力が低くて、従来技術のカーボンシストブロックフィルタを使いづらかったユーザは、今や本発明のフィルタを使用し、低いシステム圧力でも十分な流量をなお確保してシストを良好に除去することができる。
【0020】
上記したように、活性濾過層15及び16、ならびにポスト濾過層14それぞれは、不織繊維でできている。フィルタエレメント10を製造するには、コア11に、層それぞれを順次真空蒸着するといった方法が良好に用いられる。まず、コア11を、繊維とポリオレフィンバインダーの水性スラリーに浸漬する。希望の厚みの繊維の層がコア11上に形成されるまで、コア11のオープンID (open ID)で真空引きされる。ポスト濾過層14には、ポリエチレン及びポリプロピレン繊維の混合であって、繊維の直径が約5μmから40μmの範囲で、約1mmから7mmの範囲の長さを有するものが適切であることがわかった。特に適切な繊維の混合の一例は、5μmから15μmの範囲の直径、0.9mmの長さを有する28重量%のポリエチレン繊維、約21μmから34μmの範囲の直径、約1mmから6.4mmの範囲の長さを有する72重量%のポリプロピレン繊維を含んでいる。ポスト濾過層は活性濾過機能を果たさないので、繊維は、直径及び長さの両方を活性層より長くすることができ、セルロース繊維を合成繊維に代えることもでき、あるいは、それらの組み合わせが使われてもいい。実際、ポスト濾過層を全く無くし、第1の活性層15をコア11上に直接付着させ、次に第2の活性層16を付着させることによってフィルタ10を製造してもよい。ポスト濾過層を使用する場合には、ポスト濾過層14は、厚さ約4mmまでとすることができ、公称約5μmから15μmの範囲の細孔を有することができる。
【0021】
第1の活性層15は、繊維及びバインダーの水性スラリーから、ポスト濾過層14及びコア11の内側上に付着させる。第1の活性層15にはガラス繊維が特に好ましい。その理由は、主として、小さい直径及び短い長さが可能であるというガラスの特性により、優れた流れ特性(flow properties)を維持しつつ、シスト濾過能力が最良になるとみられているからである。しかしながら、ポリエチレン等の合成繊維はまた、層15を厚くするために含ませることもでき、それによって、シスト低減を阻害しないで、その流れ特性を改善することができる。特に適切な一態様(formulation)では、第1の活性繊維層15をガラス繊維とポリエチレン繊維の混合で構成することができ、ガラス繊維は、約0.5μmから3.0μmの範囲の直径、及び約0.5mmの長さを有し、ポリエチレン繊維は、約5μmの直径及び約1mmの長さを有している。より具体的には、直径が異なるが長さはほぼ同じ2つの別のガラス繊維、例えば0.6μmと2.6μmの直径を有するガラス繊維を、既述のポリエチレン繊維と混合することができる。特に適切な混合は、0.6μmのガラス繊維を65重量%、2.6μmのガラス繊維を25重量%と、5μmのポリエチレン繊維10重量%と、を含む。前述の混合のそれぞれの繊維長は、0.46mm、0.47mm及び0.9mmである。本発明ではまた、第1の活性層にすべて、適切に小さい直径を有する合成繊維を使用することも含まれる。
【0022】
第2の活性層16は、全て合成繊維で構成されることが好ましい。特に適切な繊維の混合の一例は、15μmの直径、0.9mmの長さを有する27重量%のポリエチレン繊維、34μmの直径、3.2mmの長さを有する13重量%のポリプロピレン繊維、約5μmから43μmの範囲の直径、3.2mmから6.5mmの範囲の長さを有する60重量%のアクリル繊維である。
【0023】
本発明の好ましい方法で使用される真空蒸着プロセスは、活性層に、その性能を高める有益な、また予想外のいくつかの特徴をもたらしている。繊維が様々な長さを有している(上記例に示すような)繊維のスラリーから第1の活性層15を真空蒸着すると、真空の影響で、より小さい又はより短い繊維が最初にコア上に、あるいはポスト濾過層が使われる場合はポスト濾過層14上に蒸着される傾向がある。その結果、濾過層の密度が段階的になり、全体的な濾過性能を高めることとなる。同様の現象は、第2の活性層16の形成においても生じる。
【0024】
図3では、フィルタエレメントの試験結果がグラフで示されているが、このフィルタエレメントは全てシスト除去能力を有し、流量が増加するときのフィルタでの圧力損失を測定するために同じ寸法(直径2.6インチ×長さ10インチ)となっている。望ましくは、シストフィルタは比較的低圧力損失で、家庭のユーザ又は食品サービス業のユーザであり得る一般的なユーザに十分な流量を提供するものとすべきである。
【0025】
符号17が付された4本のライン(traces)は、本発明の教示に従って製造された、同一の3層フィルタ10のものである。ライン18は、本発明の譲受人により製造されたカーボンブロックシストフィルタの試験のものである。ライン20は、先に述べたカーボンブロックエレメントと同様の、他の製造業者から入手した、2つの同一のフィルタカートリッジの結果を示している。同様に、ライン21は、ライン18及び20に示されたものと同様のものだが、さらに別の製造業者から入手したカーボンブロックシストフィルタからのものである。最後に、ライン22は、シストを除去するのに十分低い空隙率を有する、カーボンが充填された合成繊維を真空蒸着した単一の活性層からなるフィルタカートリッジで得られた試験結果を示している。ライン22の試験は、ライン18及び20の試験に近い成績をあげた。最も重要なのは、本発明のフィルタカートリッジ(ライン17)は、20psiから30psiの比較的低い圧力損失で、10gpmという非常に優れた流量を示したことである。次に優れた試験フィルタは、ライン18で示されているが、80psiを超える圧力損失で、約8gpmを超える流量を達成することができなかった。試験されたフィルタはすべて、NSF規格53に従って試験されればシスト保持能力を有しているものの、この性能ではほとんどの用途に採用されない。
【0026】
図4では、図3で試験されたのと同じフィルタの、入水側圧力を変化させたときの流量が示されている。ラインには、図3のラインと同一の番号が付されている。ここでも、3つのカーボンブロックシストフィルタ(ライン18、20及び21)及びライン22の単層の繊維ブロックフィルタと比較して、まったく低い入水側圧力でかなり高い流量を本発明のフィルタ(ライン17)が明確に示したという点で、非常に劇的な結果が得られた。本発明の多層構造のフィルタカートリッジは、約30psiという非常に低い入水側圧力で、約10gpmの流量をもたらした。ちなみに、従来技術のシストフィルタは、30psiの入水側圧力で、約1gpmから3gpmしかもたらさなかった。高い流量と低い圧力損失でシストを除去する本発明のフィルタの能力によって、従来技術のカーボンブロックシストフィルタが十分な流れを提供できなかった用途、または非常に早く目詰まりを起こした用途で、これらのフィルタを使用することができるようになった。あるいは、本発明のフィルタは、かなり高い流量でシスト除去能力を依然として提供できる状態で、より小さくより便利に製造することもできたであろう。
【0027】
また、フィルタの有効寿命を示すために試験が行なわれ、第2の活性層16のない本発明の変更されたカートリッジだけでなく、従来技術の同一のサイズのカートリッジと本発明のフィルタカートリッジを比較した。図5及び図6のグラフは、ISOファインテストダスト(fine test dust)(1μmから40μm)と公称0から5μmのテストダストが加えられた供給水での試験の結果をそれぞれ示している。図5及び図6両方のライン23は、コンスタントに30psiの入水圧力を加えて濾過された合計ガロンに対する流量(gpm)を比較することにより、本発明に従って製造されたフィルタの性能を示している。ライン24は、第2の活性層16を無くし、従って第1の活性層15及びポスト濾過層14のみを有するフィルタエレメントを備えた、変更されたフィルタの結果を示している。ライン25は、本発明の譲受人によって製造された、カーボンブロックシストフィルタの性能を示している。ライン26は、やはり本発明の譲受人によって製造された、単層の合成繊維シストフィルタカートリッジの性能を示している。最後に、ライン27は、競合するカーボンブロックシスト除去フィルタエレメントの性能を示している。カーボン粒子あるいはカーボン繊維のブロックのどちらかを使用している従来技術のシストフィルタの比較的低い性能を、有効フィルタ寿命の観点から確認することに加えて、ライン24は、本発明の第1の活性層15のカートリッジの性能が、保護用の第2の活性層16によって、どのように維持されているかを示している。図5及び6のグラフはまた、本発明のフィルタが高い流量をもたらすが、従来技術のフィルタよりも非常に長い寿命にわたってその流量を維持する能力を顕著に示している。ライン23及び24の比較は、本発明のフィルタの第1及び第2の活性層15、16が、どのように一緒に作用して目詰まりを防ぎ、フィルタの寿命を長くするか、を顕著に示している。この相乗効果により、従来技術の同等のサイズのシスト除去フィルタよりも、非常に高い流量、非常に低い圧力損失、そして非常に長い有効寿命を有する効果的なシストフィルタがもたらされることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタであって、
細孔を有する剛性の円筒形のコアと、
このコア上の、約0.5μmから3.0μmの範囲の直径及び約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長を有する繊維及びバインダーの第1の活性繊維層と、
前記第1の活性層を覆うようにこの第1の活性層上に重ねられた第2の活性繊維層と、を備え、
前記第2の活性繊維層は、約5μmから45μmの範囲の繊維径及び約1mmから7mmの範囲の繊維長とバインダーを有している、ことを特徴とする水フィルタ。
【請求項2】
前記第1の活性層の繊維はガラス繊維からなる、ことを特徴とする請求項1記載の水フィルタ。
【請求項3】
第1の活性層は合成繊維を含む、ことを特徴とする請求項2記載の水フィルタ。
【請求項4】
前記合成繊維は、約5μmの直径、約1mmの長さを有する繊維からなる、ことを特徴とする請求項3記載の水フィルタ。
【請求項5】
前記合成繊維はポリエチレンからなる、ことを特徴とする請求項4記載の水フィルタ。
【請求項6】
前記第2の層の繊維は合成繊維からなる、ことを特徴とする請求項1記載の水フィルタ。
【請求項7】
前記合成繊維は、ポリオレフィン繊維とアクリル繊維の混合からなる、ことを特徴とする請求項6記載の水フィルタ。
【請求項8】
前記コアと前記第1の活性繊維層の間に、合成繊維のポスト濾過層を含んでいる、ことを特徴とする請求項1記載の水フィルタ。
【請求項9】
前記ポスト濾過層の前記合成繊維は、約5μmから40μmの範囲の繊維径、約1mmから7mmの範囲の長さを有している、ことを特徴とする請求項8記載の水フィルタ。
【請求項10】
前記ポスト濾過層の繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその混合の群から選択される、ことを特徴とする請求項9記載の水フィルタ。
【請求項11】
長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタの製造方法であって、
(1)細孔を有する剛性の円筒形のコアを準備するステップと、
(2)前記コアの上に、約0.5μmから5.0μmの範囲の繊維径と、約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーから第1の活性濾過層を付着させるステップと、
(3)前記第1の活性層の上に、約5μmから45μmの範囲の繊維径と、約1mmから7mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーから第2の活性層を付着させるステップと、
を有することを特徴とする水フィルタの製造方法。
【請求項12】
前記付着させるステップは真空蒸着からなる、ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1の活性層を付着させる前に、前記コア上に、約5μmから40μmの繊維径と、約1mmから7mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーからポスト濾過層を付着させるステップと、
前記ポスト濾過層の上に前記第1の活性層を付着させる変更されたステップと、
を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
加熱によって、水分を除去しバインダーを固めて、前記フィルタを硬化させるステップを含む、ことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタであって、
剛性で多孔質の円筒形のコアと、
前記コアの上に付着した、約0.5μmから5μmの範囲の直径と約0.3mmから1mmの範囲の異なる長さの繊維及びバインダーの第1の活性濾過層と、
前記第1の層の上に付着した、約5μmから45μmの範囲の直径と約1mmから7mmの範囲の異なる長さの繊維及びバインダーの第2の活性繊維層と、
濾過される水を受け入れ、この水を前記第2の層、前記第1の層そして前記コアを径方向に通過するよう向かわせる収容ハウジングと、を備え
前記第1の層は公称約0.5μmの細孔を有し、前記第2の層は公称約1μmから30μmの範囲の細孔を有している、ことを特徴とする水フィルタ。
【請求項16】
前記第1の活性層の前で、前記コアの上に付着したポスト濾過繊維層を含み、前記ポスト濾過層の繊維は、約5μmから40μmの範囲の直径、約1μmから7μmの範囲の異なる長さを有し、前記ポスト濾過層は、公称約5μmから15μmの範囲の細孔を有している、ことを特徴とする請求項15記載の水フィルタ。
【請求項17】
前記ポスト濾過層の繊維がガラス、合成繊維、セルロース、及びそれらの混合の群から選択される、ことを特徴とする請求項16記載の水フィルタ。
【請求項18】
前記第1の活性層は活性炭を含む、ことを特徴とする請求項15記載の水フィルタ。
【請求項19】
前記第1の活性層の繊維はガラス繊維からなる、ことを特徴とする請求項15記載の水フィルタ。
【請求項20】
前記第1の活性層の繊維は、ガラス繊維及び合成繊維からなる、ことを特徴とする請求項19記載の水フィルタ。
【請求項21】
90重量のガラス繊維と10重量%の合成繊維からなる、ことを特徴とする請求項20記載の水フィルタ。
【請求項22】
前記ガラス繊維は、0.6μmの直径を有する65重量%のガラス繊維と、2.6μmの直径を有する25重量%のガラス繊維からなる、ことを特徴とする請求項21記載の水フィルタ。
【請求項23】
前記第2の活性層の繊維が、ポリオレフィン繊維及びアクリル繊維の群から選択される合成繊維からなる、ことを特徴とする請求項15記載の水フィルタ。
【請求項24】
前記第2の活性層の繊維が、ポリエチレン繊維、アクリル繊維及びポリプロピレン繊維からなる、ことを特徴とする請求項23記載の水フィルタ。
【請求項25】
前記第2の活性繊維層は粉末状の吸着材を含む、ことを特徴とする請求項15記載の水フィルタ。
【請求項26】
前記吸着材は活性炭からなる、ことを特徴とする請求項25記載の水フィルタ。
【請求項27】
前記吸着材は重金属を効果的に除去するものである、ことを特徴とする請求項25記載の水フィルタ。
【請求項28】
前記ポスト濾過層の繊維は合成繊維からなる、ことを特徴とする請求項17記載の水フィルタ。
【請求項29】
前記ポスト濾過層の繊維はポリオレフィンからなる、ことを特徴とする請求項28記載の水フィルタ。
【請求項30】
長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタであって、
細孔のある剛性の円筒形のコアと、
このコア上に、約0.5μmから5.0μmの範囲の繊維径と、約0.3mmから1.0mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーから付着させた第1の活性層と、
前記第1の活性層の上に、約5μmから45μmの範囲の繊維径と、約1mmから7mmの範囲の繊維長を有する繊維とバインダーの水性スラリーから付着させた第2の活性層と、を備えていることを特徴とする水フィルタ。
【請求項31】
前記第1及び第2の活性層は真空蒸着させたものである、ことを特徴とする請求項30記載の水フィルタ。
【請求項32】
前記第1の活性層の前記繊維はガラス繊維からなる、ことを特徴とする請求項30記載の水フィルタ。
【請求項33】
前記ガラス繊維は約0.6μmから2.6μmの範囲の直径を有している、ことを特徴とする請求項32記載の水フィルタ。
【請求項34】
前記ガラス繊維は約0.3mmから0.5mmの範囲の長さを有している、ことを特徴とする請求項33記載の水フィルタ
【請求項35】
前記コアの上に、前記第1の活性層の前で、約5μm以上の繊維径を有する繊維とバインダーの水性スラリーから真空蒸着させたポスト濾過層を含む、ことを特徴とする請求項31記載の水フィルタ。
【請求項36】
前記ポスト濾過層の繊維は、合成繊維及びセルロースの群から選択される、ことを特徴とする請求項35記載の水フィルタ。
【請求項37】
前記ポスト濾過層のバインダーはポリオレフィンからなる、ことを特徴とする請求項36記載の水フィルタ。
【請求項38】
前記第1の活性層の繊維は、合成繊維及びセルロースの群から選択される繊維を含む、ことを特徴とする請求項32記載の水フィルタ。
【請求項39】
前記第1の活性層のバインダーはポリオレフィンからなる、ことを特徴とする請求項38記載の水フィルタ。
【請求項40】
前記第2の活性層の繊維は、合成繊維及びセルロースの群から選択される、ことを特徴とする請求項30記載の水フィルタ。
【請求項41】
前記第2の活性層のバインダーはポリオレフィンからなる、ことを特徴とする請求項40記載の水フィルタ。
【請求項42】
前記第2の活性繊維層は粉末状の吸着材を含む、ことを特徴とする請求項30記載の水フィルタ。
【請求項43】
前記吸着材は活性炭からなる、ことを特徴とする請求項42記載の水フィルタ。
【請求項44】
前記吸着材は重金属を効果的に除去するものである、ことを特徴とする請求項42記載の水フィルタ。
【請求項45】
長寿命、低圧力損失のシスト低減水フィルタであって、
細孔のある剛性の円筒形のコアと、
前記コアの上に、公称約5μmから40μmの範囲の直径を有する合成繊維とバインダーの水性スラリーから真空蒸着させたポスト濾過層と、
前記ポスト濾過層の上に、ガラス及び合成繊維の群から選択された、公称約0.5μmから5μmの範囲の直径を有する繊維及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させた第1の活性層と、
前記第1の活性層の上に、公称約5μmから30μmの範囲の直径を有する合成繊維、カーボン粒子及びバインダーの水性スラリーから真空蒸着させた第2の活性層と、を備えていることを特徴とする水フィルタ。
【請求項46】
前記第1の活性層の繊維は、約0.5mmから1.0mmの範囲の長さを有している、ことを特徴とする請求項45記載の水フィルタ。
【請求項47】
前記第2の活性層の繊維は、約1mmから7mmの範囲の長さを有している、ことを特徴とする請求項45記載の水フィルタ。
【請求項48】
前記第1の活性層のガラス繊維は、約25%の2.6μmの直径を有する繊維、約75%の0.6μmの直径を有する繊維からなる、ことを特徴とする請求項45記載の水フィルタ。
【請求項49】
前記ポスト濾過層の繊維は、約1mmから7mmの範囲内の長さを有している、ことを特徴とする請求項45記載の水フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−536542(P2010−536542A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521076(P2010−521076)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071698
【国際公開番号】WO2009/032437
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510041153)ペンテア フィルトレーション インク (1)
【氏名又は名称原語表記】PENTAIR FILTRATION, INC.
【住所又は居所原語表記】502 Indiana Avenue, Sheboygan, WI 53081 (US)
【Fターム(参考)】