説明

低圧大容量送水用ホース

【課題】複数本の送水用ホースがそれぞれの両端部にある連結部により連結がされている場合であっても、該連結部が可撓性を有し、該連結をしたままで巻回して回収することができ、かつ連結部付近で摩耗、損傷を受けることも少なく、通水に伴って大きな負荷が局部的に加わるような状況での使用の際にも連結部が破壊されたりすることがなく、高い耐久性と安定性をもって長距離に及ぶ大量の送水を可能とする低圧大容量送水ホースを提供すること。
【解決手段】送水用ホースであって、流入側端部および流出側端部に、それぞれスライドファスナーエレメント列からなる連結部を有することを特徴とする低圧大容量送水用ホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧で大容量の水を送水するのに使用されるホースに関し、例えば、水害などで冠水した地域から迅速に排水をするためのホース、あるいは大規模火災が発生したときに消火用の水を大量に迅速に消火現場近くにまで移送するためなどとして用いられる低圧大容量送水用ホースに関する。
【0002】
更に詳しくは、一般に、呼び径(内径)が150mm以上400mm以下、かつ送水量が1分当たり三千リットル〜数万リットルなどに達するもので、上述した大規模な災害対策などの用途で使用される低圧大容量の送水ホースに関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、消防や防災用送水の分野などで使用されている各種ホースについて説明をすると、消火栓用ホースや消防用ホースなどでは必要長さが20m程度であり、一本の連続したホースが用いられており、連結部を有するホースは不要であった。
【0004】
このこともあって、送水用ホースの分野では、その必要な長さからホース本体同士を連結する連結部に関する技術が必須であるものの、十分な研究開発がなされていなかったのが現状である。
【0005】
また、消防用ホースなどに用いられるホースとポンプとを接続するための金属金具を、ホース同士を連結する連結具として用いた長距離ホースは、巻回して回収しようとすると、そのままでは強硬な連結部で嵩張りが生じて巻き取ることができないという問題があった。このため、巻くのではなくホースを折り畳んで、または連結部を解除して回収していた。
【0006】
一方で、上記のような大量の水を移送する際に用いられる低圧大容量型の送水ホースは、長さが約150mなどのホース本体と、長距離に及ぶ使用を可能にするためにその両端に設けられた連結部とから主に構成されている。
【0007】
そのホース本体は、移送する水の量は多いものの高圧の水ではないため、それほど耐圧構造とされるものではなく、例えば、ポリエステル繊維糸を筒状に製織して得た筒状織物等の内外周面に、塩化ビニルなどの樹脂を含浸、コーティングまたはライニングしてホース本体を構成している。したがって、低圧大容量型の送水ホースのホース本体は、ホースの不使用・不通水時には、一般にぺしゃんこな状態のものである。
【0008】
一方で、そのようなぺしゃんこな状態でも連結すべきホース同士の接合をスムーズに行って、確実に連結させることは重要であり、かつ、通水された状態である程度長時間にわたって使用されることがあるため、その際、水の重さや移動時に加わる高い負荷によって、地面に接する一部の突出した部分等に大きな負荷が加わり、そのことによる破壊や損傷の発生防止も重要である。
【0009】
例えば、図6は、従来使用されている連結法の一つの例を示したものである。この連結法は、連結されるべき送水用ホース1Aと1Bのそれぞれの端部に、それらを連結させるために、送水用ホース1Aのホース本体にはその先端付近の全周にわたり複数個の留め孔部2を設けている。送水用ホース1Bの先端付近には、その全周にわたり送水用ホース1Aの留め孔部2の設置ピッチと同一のピッチで複数の突出留め具3を設けている。そして、ホース本体1Aの先端付近の内部に、送水用ホース1Bの先端付近を挿入し、送水用ホース1Bの突出留め具3の一個一個を、送水用ホース1Aの留め孔部2を通して突出させ、その突出留め具3の一個一個に締結ベルト(図示せず)を通して、該締結ベルトの両端を締め付けることにより、両送水用ホース1A、1Bを連結させるものである。突出留め具3は、例えば、全周にわたり約10〜12個程度設けられていて、ベルト通し孔を形成しているものであり、金属製や比較的強度の高い合成樹脂製などで楕円環状型や、O型などに成型されたものが送水用ホース1Bのホース本体に半分程度埋設されて固定されている。
【0010】
この方法によるものは、連結をする機構上、突出留め具3はホース本体の外周に露出しているものであるため、大量の水を通水させて使用している際、上述したように、水の重さや移動時に加わる負荷により、地面に接する一部の突出留め具に大きな負荷が加わってそれが原因で破壊されてしまうことがあった。
【0011】
特にこうした送水用ホースでは、永年にわたって、いつ突然使用されることになっても特に変わることなく使用できることが要求され、高い耐久性と強度が要求される。
【0012】
先行する特許文献としては、可撓性ホースと金属チューブとを接続させた接続部の外周に装着される低圧ホース用の板バネクランプの提案があるが(特許文献1)、この提案のような当初から円形に成形されているようなクランプは、いずれもぺしゃんこなホース本体どうしの接合のために使用することには無意味であり使用することができない。
【0013】
また、地下鉄工事や鉱山等の坑内の通気、換気のために用いられる可撓風管であって、スライドファスナー等よりなる係合部材を用いた可撓風管の接続装置が提案されている(特許文献2)。しかし、一般に、風管ダクトは、トンネルの天井部などの比較的上部に設けられ、ダクト本体が傷付くことが少ないため、より軽く薄いものが用いられている。それに対して、送水用ホースは、屋外地面などに置かれ、引きずられることもあり、比較的摩耗損傷しやすい環境で使用されるため、より丈夫な重厚なものが求められてきた。このような事情から、送水用ホースの分野へ風管ダクトの分野の技術が用いられることはなく、風管ダクトの分野で用いられるようなフレキシブル性(可撓性)を有する連結部材を用いた送水用ホースは実現されていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−4776号公報
【特許文献2】実開平2−140000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、複数本の送水用ホースがそれぞれの両端部にある連結部により連結がされている場合であっても、該連結部が可撓性を有し、該連結をしたままで巻回して回収することができ、かつ連結部付近で摩耗、損傷を受けることも少なく、通水に伴って大きな負荷が局部的に加わるような状況での使用の際にも連結部が破壊されたりすることがなく、高い耐久性と安定性をもって長距離に及ぶ大量の送水を可能とする低圧大容量送水ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成する本発明の低圧大容量送水用ホースは、以下の(1)の構成を有する。
(1)送水用ホースであって、流入側端部および流出側端部に、それぞれスライドファスナーエレメント列からなる連結部を有することを特長とする低圧大容量送水用ホース。
【0017】
また、かかる本発明の低圧大容量送水用ホースにおいて、以下の(2)〜(4)のいずれかの構成からなることが好ましい。
(2)前記流出側端部において、ホース本体の内側に、該流出側端部を超えて突出した導出部を有することを特徴とする上記(1)記載の低圧大容量送水用ホース。
(3)前記流入側端部において、ホース本体の外側に、該流出側端部を超えて突出した保護部を有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の低圧大容量送水用ホース。
(4)ホース本体の呼び径が、150〜400mmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の低圧大容量送水用ホース。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる本発明によれば、複数本の送水用ホースがそれぞれの両端部にある連結部により連結がされている場合であっても、該連結部が可撓性を有し、該連結をしたままで巻回して回収することができ、かつ連結部付近で摩耗、損傷を受けることも少なく、通水に伴って大きな負荷が局部的に加わるような状況での使用の際にも連結部が破壊されたりすることがなく、高い耐久性と安定性をもって長距離に及ぶ大量の送水を可能とする低圧大容量送水ホースが提供される。
【0019】
請求項2〜請求項4のいずれかにかかる本発明によれば、連結の確実さ、連結の作業性、ホース連結部の耐摩耗・損傷性の点でより優れた低圧大容量送水ホースが提供され、より大量の水を長期にわたり送水できる低圧大容量送水ホースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の低圧大容量ホースの1実施態様例を示した概略断面図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも本発明の低圧大容量ホースの他の1実施態様例を示した概略断面図である。
【図3】(a)、(b)は、いずれも本発明の低圧大容量ホースの他の1実施態様例を示した概略断面図である。
【図4】本発明の低圧大容量ホースが連結される状態の1例を説明する概略図であり、導出部を有する送水用ホースの下流に他の送水用ホースが連結される場合を示しており、(a)は連結前の状態、(b)は連結語の状態を示している。
【図5】本発明の低圧大容量ホースを連結した態様例を示した概略断面図である。
【図6】従来使用されている低圧大容量ホースの連結法の1例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、更に詳しく本発明の低圧大容量送水用ホースについて、説明する。
【0022】
図1に示したように、本発明の低圧大容量送水用ホース1は、流入側端部4および流出側端部5に、それぞれスライドファスナーエレメント列7A、7Bからなる連結部6を有することを特徴とする。
【0023】
該連結部6は、該低圧大容量送水用ホースの複数を相互に連結して、より長いホースラインを構成し、大量の送水をより長距離にわたって行うことを可能にするためのものである。連結部6はスライドファスナーエレメント列からなるため、該連結部においても優れたフレキシビリティ(可撓性)を有する。このため、送水ホースラインの連結部を解除せずに巻き回して回収することができ、次回の使用時にもその巻き回して回収されたホースを繰り出して使用することができるので、送水用ホースの準備、回収が容易である。また、一時的にホース直径よりも狭い間隙内にホースを通過させて用いるような場合でも、連結部が変形可能であるため、連結状態を解除することなく、間隙内にホースを通すことができる。例えば、大雨により土砂崩れが発生したトンネル内の排水作業などにも利用できる。
【0024】
送水用ホースのホース本体は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の繊維糸からなる織物、編物、不織布、メッシュ、ネット等の布帛に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどのポリオレフィン、ポリウレタン等の合成樹脂をディッピング、コーティング、ラミネートまたはライニングしたシートを、筒状に縫製、接着または熱溶着して用いることができる。該シートを構成する布帛は、破断強度に優れたシートを得る観点から織物であることが好ましい。布帛が織物である場合、面積当たりの経緯糸数が多い高密度の織物を用いると、より破断強度に優れた構成となる。例えば、中でも、経糸が10本/インチ〜30本/インチであり、緯糸が10本/インチ〜30本/インチである織物を用いると破断強度に優れたホース本体を得ることができる。
【0025】
合成樹脂は、布帛の両面にラミネートされてなることが好ましい。合成樹脂は、ホース本体の内側に防水性を付与し、ホース本体の外側に耐摩耗性を付与する。かかる効果を顕著に得る観点から、合成樹脂層の厚みは0.05mm〜0.8mmであることが好ましい。
【0026】
例えば、ホース本体に用いるシートは、ポリエステル糸からなる平織織物の両面にポリ塩化ビニルをラミネートしたシートを使用することができる。かかる構成のシートは、防水性と破断強度に優れ、更に地面上に置かれたホース本体を引きずって使用しても摩耗し難いので好ましい。
【0027】
ホース本体を構成する前記シートの厚みは、0.3mm〜3mmであることが好ましく、0.8mm〜2mmであることがより好ましい。該シートの厚みが0.3mm以上であると、耐摩耗性に優れ、地面上に置かれたホース本体を引きずっても摩耗し難く、シートの厚みが3mm以下であると、ホース本体の重量が重くなりすぎず、取り扱い性に優れる。
【0028】
本発明でいうスライドファスナーエレメント列とは、複数のスライドファスナ―のエレメントが列をなした状態をいう。スライドファスナーとは、一方のエレメント列と同様の構成を有する相手方のエレメント列とをスライダーを操作することにより、開閉および脱着することができるものをいう。
【0029】
すなわち、本発明の送水用ホースは、例えば、プラスチック製、または金属製のスライドファスナーエレメント列が該送水用ホースの本体の端部に取り付けられてなる。ここでいうホース本体の端部とは、ホース本体どうしが連結される部分をいう。本発明で用いられるスライドファスナーは、オープンファスナー(開製品)であり、本発明では送水用ホースの一方の端部に、例えば、テープ状に設けたエレメント列、下端部の箱、スライダー本体、スライダー本体に取り付けたスライダー引き手、及び上端部の上止を有し、送水用ホースの他の端部に、例えば、テープ状に設けたエレメント列、下端部のちょう棒、および上端部の上止を有する構成とすることができる。
【0030】
スライドファスナーエレメント列は、ホース本体の円周方向に沿って該円周の一部または全部に、連続または不連続に設けられてよい。中でも、エレメント列はホース本体の円周方向の全部に連続的に配置されてなると、連結部に隙間がなくなり、2本以上の送水ホースを強固に連結することができるので好ましい。スライドファスナーエレメント列は、ホース本体の長さ方向に互いに多少離れて、2列以上設けられていてもよい。特にホース本体の端部にスライドファスナーエレメント列を2列以上設けると、一つのスライドファスナーが破断した場合であっても、他のスライドファスナーにより連結状態を維持することができるので好ましい。
【0031】
スライドファスナーエレメント列は、ホースの円周方向またはホース本体の長さ方向に一部または全部が重なって配置されてもよい。スライドファスナーエレメント列が互いに重なる構成であると、2以上の送水用ホースを連結した際に、スライドファスナーの始点と終点との間をなくすことができ、ホースの円周方向と垂直方向に作用する水圧に対して破断し難くなる。
【0032】
本発明の送水用ホースは、シートを筒状に加工してホース本体を得て、該ホース本体に例えば、テープにスライドファスナーエレメント列を有するストリンガを縫製、接着または溶着することにより得ることができる。
【0033】
さらに、本発明の送水用ホース1は、図2(a)、(b)に示したように、流出側端部5において、ホース本体の内側に該流出側端部5を超えて突出した導出部8を有することが好ましい。該構成とすると、2以上の送水用ホースを連結して用いる際に、他方の送水用ホースの流出側端部の内側に該送水用ホースの導出部を挿入して用いることができ、送水時には導出部と連結部とが密着することにより、連結部からの漏水を抑制することができる。また、送水時に導出部が水の逆流を防ぐ役割、すなわち、弁の役割を担う。かかる効果をより顕著に得る観点から、導出部はホース本体の筒形状が延長された形態であることが好ましい。図2(a)、(b)の相違は、基本構成は上記のとおりであるが、(a)は送水用ホース1の本体の流出側端部5付近において該ホース本体の径を多少大きくし、導出部8の径を送水用ホース1の本体の径と同程度として構成したものであり、これに対して、(b)は送水用ホース1の本体の流出側端部5付近においてホース本体の径は端部までほぼ同一とし、ホース本体の径よりも小さい径を有する導出部8を設けたものである。
【0034】
導出部8は、連結部6が横引破断することを防ぐ効果もある。これは、送水時に導出部8が水圧によりホース本体(導出部が設けられているホース1と連結された下流のホースの双方の本体)と密着することにより、導出部8とホース本体との間にホース本体から導出部8が抜けにくくなる方向へ摩擦抵抗が生じることによって連結部6にかかる横引応力を軽減するからであると考えられる。
【0035】
導出部8の長さ(連結部から突出している長さ)は、ホース本体の呼び径(内径)の4分の1の長さ以上かつホース本体の呼び径(内径)の4倍の長さ以下であるように形成することが好ましい。具体的には、導出部の長さは、連結部から5cm〜100cmであることが好ましく、10cm〜80cmであることがより好ましく、さらに50cm〜80cmであることが最も好ましい。導出部の長さが5cm以上であると、送水時に水の逆流を有効に防ぐことができ、導出部の長さが100cm以下であると導出部を他の下流側の送水用ホースの内側に挿入しやすい。
【0036】
また、本発明の送水ホースは、そのホース本体直径をその長さ方向において変化さたものとして構成してもよい。すなわち、本発明にかかる送水用ホースは、端部におけるホース断面の直径と任意の箇所におけるホース断面の直径とが相違していてもよい。例えば、ホース本体の一方の端部を、他方の端部の直径よりも大きくしてもよく、または、小さくしてもよい。このような構成とすると、ホース本体を他のホース本体の内側に挿入して連結することがより迅速かつ確実にできるようになる。
【0037】
導出部は、前述のホース本体と同じシートを用いて形成することができ、その形成は、例えば、導出部をホース本体の内側に挿入して縫製、接着または熱溶着して設けることができる(図2(b))。あるいは、特に、図2(a)に示したような構造のときは、シートを筒状に加工してホース本体となるべき筒状物を得て後、その端部よりも内側に、本発明でいう連結部6と流出側端部5を構成する拡径シート部を被せるようにしてその頂部をホース本体に縫製、接着または熱溶着して設けることができる。
【0038】
また、本発明の送水用ホース1は、図3(a)、(b)に示したように、流入側端部4において、ホース本体の外側に該流入側端部4を超えて突出した保護部9を設けることが好ましい。かかる構成であると、2以上の送水用ホースを連結して用いる際に、該保護具9がファスナーエレメント列からなる連結部6の外側に位置する構成となり、連結部6やそのファスナーエレメント列さらにその周辺等が外力の影響により、損傷や摩耗することを抑制できる。また、地面に置かれたり、地面で引きずられたりしたときにも、ファスナーのエレメント列に土砂や、異物、汚れが詰まったりすることを抑制でき、ファスナーのスライダーの摺動性やファスナーの係合性が損なわれることを防止できる。保護部9は、ホース本体の円周方向に連続した筒状をなすものであってよく、またはホース本体の円周方向に部分的あるいは一部に設けられてもよい。保護部9の長さ(ホース長さ方向に連結部から突出している長さ)は、ホース本体の呼び径(内径)の4分の1の長さ以上かつホース本体の呼び径(内径)と等しい長さ以下であることが好ましい。具体的には、保護部の長さは、連結部から1cm〜100cmであることが好ましく、10cm〜60cmであることがより好ましい。保護部の長さが1cm以上であると、連結部が損傷や摩耗することを抑制することができ、保護部の長さが100cm以下であると連結作業の妨げになり難い。
【0039】
保護部は、前述のホース本体と同じシートを用いることができ、例えば、その形成も、導出部の場合とほぼ同様にできる。すなわち、ホース本体の内周側に連結部6と導入側端部7Aを構成する端部が小径に形成された連結部をホース本体に縫製、接着または熱溶着して設けることができる(図3(b))。あるいは、ホース本体の外側に本体の径よりも大きく形成された保護部9を被せて、ホース本体に縫製、接着または熱溶着して設けることができる。
【0040】
スライドファスナーエレメント列どうしを噛み合わせるための箱およびスライダーは、ホース本体の流入側端部または流出側端部のいずれのエレメント列に設けられてもよい。例えば、流入側端部に保護部を設ける場合には、ホース本体の流入側端部にスライダーを設けると、ホース本体どうしの連結作業が比較的容易になり、ホース本体の流入側端部にスライダーを設けると、スライダーが傷付き難くなる。
【0041】
図4は、本発明の低圧大容量ホースが連結される状態の1例を説明する概略図であり、導出部を有する送水用ホースの下流に他の送水用ホースが連結される場合を示しており、
(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態を示している。
【0042】
本発明に用いられるスライドファスナーは、JIS S3015 7.2(JIS2007)に準じて測定されるチェーン横引強度が200N以上であることが好ましく、250〜800Nであることがさらに好ましい。このようなチェーン横引強度を有するスライドファスナーを用いた送水用ホースは、送水時の圧力により連結部が破断し難い。
【0043】
また、本発明に用いられるスライドファスナーは、JIS S3015 7.2(JIS2007)に準じて測定される開部横引強度が80N以上であることが好ましく、120N〜300Nであることがより好ましい。このような開部横引強度を有するスライドファスナーを用いた送水用ホースは、スライドファスナーが開具部分で破壊することを抑制できる。
【0044】
このようなスライドファスナーは、チェーン幅が4mm〜20mmであるスライドファスナーとして市販されており、本発明では、例えば、YKK株式会社が販売する商品名「ビスロンファスナー8VS」、同「ビスロンファスナー10VF」、同「ビスロンファスナー15VF」などの市販のスライドファスナーを用いることができる。
【0045】
本発明の送水用ホースは、スライドファスナーの他に連結補助具を用いることができる。連結補助具は、例えば、面ファスナー、ジャンパーホック、スナップボタンなどを用いることができる。このような連結補助具を用いると、ホース本体同士の連結力が高くなり、連結部が破断し難くなる。
【0046】
なお、スライドファスナーではなく、面ファスナーを使用してホースを連結させるということも考えられるが、面ファスナーの場合には、連結するに際して、必ずしも所望する相対的連結位置で連結をすることができない場合があり、そのことが、連結作業のやり直しや隙間からの水漏れなどの不都合・不手際を招くことも想定され、連結作業や送水に緊急性が要請される場合などでは不向きである。したがって、本発明では、一定以上の確実さで連結ができるスライドファスナー方式を採用するものである。
【0047】
ホース本体の呼び径(内径)は、1万リットル〜2万リットル/分程度の送水量を想定した場合、150〜500mmであることが好ましく、より好ましくは250〜400mmの範囲内であることが好ましい。ホース本体の呼び径がかかる範囲であると、大量送水することが容易となる。また、ホースの呼び径が大きいほど、収納時に連結部が嵩張るため、嵩張りを抑える効果を受けやすい。なお、本発明の送水用ホースは、ホース呼び径が小さくても支障がない場合には、ホース呼び径は50mm〜800mmであってもよい。
【0048】
ホース本体の長さは、2m〜150mであることが好ましく、5m〜30mであることがより好ましい。ホース本体の長さが2m以上であると、さらには5m以上などであると、複数の送水用ホースを連結して一定の長さを有するホースとして用いる際に、連結部の数を減らす効果が大きくなり好ましい。また、150m以下であると、重量が重くなりすぎず取り扱い性に優れる。
【0049】
本発明の送水用ホースは、ホース本体の長さ方向の形状が直管または曲管であってもよい。曲管である場合、その傾斜は、曲線状に曲がっていてもよく、あるいは一定の角度をなして曲がっていてもよい。通常、送水用ホースは、直管形状のホース本体を用いることができるが、ホース本体の呼び径が大きいと、通水時に流水圧に逆らって屈曲させることが困難になる場合がある。このような場合には、U字形状、L字形状、またはV字形状などの曲管形状のホース本体を用いることにより、連結ホースを容易に屈曲させることができる。
【0050】
曲管形状のホース本体の形成は、例えば、前述のホース本体と同じシートを用いて、このシートを所定形状に裁断して多数の裁断片を作製し、この裁断片を縫製、接着または熱溶着して形成することができる。あるいは、一つのホース本体の側面に穴を開けて、他のホース本体を縫製、接着または熱溶着して形成することができる。
【0051】
また、本発明の送水用ホースは、ホース本体の形状が直鎖管または分岐管であってよい。すなわち、本発明の送水用ホースは、1または2以上の流入側端部を有してよく、また、1または2以上の流出側端部を有してよい。流入側端部と流出側端部のうち少なくとも一方が2以上の端部を有する形状としては、例えば、T字管、Y字管、K字管またはX字管などの形状が挙げられる。送水用ホースを2以上に分岐させると、2以上の水源あるいは水害地から、または、2以上の供給先あるいは排水先へ水を送水することができる。
【0052】
本発明者らの知見によれば、本発明の送水用ホースの最良の実施形態は、ホース内径(呼び径)で300mm前後、長さは10m前後であり、連結数は2本〜20本、中でも10本〜15本程度として使用するのがよい。
【0053】
次に、本発明の送水用ホースの使用形態について、一例を挙げて説明する。
【0054】
まず、本発明の送水用ホース1と、一方の端部に送水口と連結するための結合金具が設けられた送水口結合ホースとを連結し、送水口結合ホースを送水口またはポンプに接続する。
【0055】
次に、図5に示したように、本発明の低圧大容量送水用ホース1Aの導出部8Aを送水用ホース1Bの流入側端部4Bに挿入し、送水用ホース1Aのスライドファスナーエレメント列7Aと、送水用ホース1Bのスライドファスナーエレメント列7Bとをスライダーで連結することにより、送水用ホース1Aと送水用ホース1Bを連結する。同様の手順で、例えば、5〜200個の送水用ホースを連結し、例えば10m〜5000mの長さの連結ホースを得る。なお、必要に応じて、末端ホースには放水口を取り付けてもよい。
【0056】
スライダーを使用して連結をした後は、該スライダー部分を面ファスナー等で覆うなどして、係合したファスナーが解かれにくくすることも好ましい。
【0057】
本発明の低圧大容量送水用ホースは、2以上の該送水用ホースを連結して長距離送水用ホースとして用いることができる。例えば、豪雨や洪水、津波などの水災害時などに、被災地から水をより短時間で大量に排水するホースとして好適に使用することができる。また、火災時に海、河川などの自然水源や、遠方の貯水池などから被災地へ消防用水を大量に送水するためのホースとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1A、1B:低圧大容量送水用ホース
2:止め孔部
3:突出留め具
4:流入側端部
5:流出側端部
6:連結部
7A、7B:スライドファスナーエレメント列
8:導出部
9:保護部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水用ホースであって、流入側端部および流出側端部に、それぞれスライドファスナーエレメント列からなる連結部を有することを特徴とする低圧大容量送水用ホース。
【請求項2】
前記流出側端部において、ホース本体の内側に、該流出側端部を超えて突出した導出部を有することを特徴とする請求項1記載の低圧大容量送水用ホース。
【請求項3】
前記流入側端部において、ホース本体の外側に、該流入側端部を超えて突出した保護部を有することを特徴とする請求項1記載の低圧大容量送水用ホース。
【請求項4】
ホース本体の呼び径が、150〜400mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低圧大容量送水用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193763(P2012−193763A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56529(P2011−56529)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【出願人】(000104412)カンボウプラス株式会社 (15)
【Fターム(参考)】