説明

低圧蒸気による加熱装置

【課題】 ボイラーを用いない低圧蒸気による加熱装置を提供する。
【解決手段】 被加熱物を収容する熱交換器1と、蒸発器7、圧縮機8、凝縮器9、スチームトラップ10による閉ループ内に熱媒体を充填したヒートポンプ6の凝縮器9からの加熱用の蒸気を熱交換器1のジャケット部2に供給する蒸気供給管3を接続するとともに、熱交換器のジャケット部2にジャケット部2内の流体を吸引する吸引手段4を接続し、吸引手段4でジャケット部2内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより被加熱物を低圧蒸気により加熱する。ヒートポンプ6の凝縮器9からの加熱用の蒸気を熱交換器1のジャケット部2に供給し、ジャケット部2内の流体を吸引手段4で吸引してジャケット部2内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより、ボイラーを用いない低圧蒸気による加熱装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器内の被加熱物を熱交換器の加熱部からの低圧蒸気で加熱するものに関し、特にその低圧蒸気温度が100度C程度の比較的低温の場合に適した低圧蒸気による加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低圧蒸気による加熱装置は、例えば特許文献1に示されている。これは、被加熱物を収容する熱交換器の加熱部に、ボイラーからの加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管を接続するとともに、加熱部内の流体を吸引する吸引手段を接続し、吸引手段で加熱部内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより被加熱物を低圧蒸気により加熱するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の低圧蒸気による加熱装置は、加熱用の蒸気としてボイラーからの蒸気を利用するものであるので、ボイラー設備のない大学等の実験室においては、この低圧蒸気による加熱装置を利用できない問題点があった。
【0005】
解決しようとする課題は、ボイラーを用いない低圧蒸気による加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加熱物を収容する熱交換器の加熱部に、蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張機による閉ループ内に熱媒体を充填したヒートポンプの凝縮器からの加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管を接続するとともに、加熱部内の流体を吸引する吸引手段を接続し、吸引手段で加熱部内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより被加熱物を低圧蒸気により加熱することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ヒートポンプの凝縮器からの加熱用の蒸気を熱交換器の加熱部に供給し、加熱部内の流体を吸引手段で吸引して加熱部内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより、ボイラーを用いない低圧蒸気による加熱装置を提供できるという優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係わる低圧蒸気による加熱装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。被加熱物を収容する熱交換器1の外周に一体に熱交換器の加熱部としてのジャケット部2を設け、このジャケット部2へ加熱用の蒸気供給管3と吸引手段4を接続する。熱交換器1は円筒タンク状で内部に図示しない被加熱物を収容し、側方外周の全周を覆うジャケット部2を一体に設けたものである。ジャケット部2の上方に蒸気供給管3を接続し、蒸気供給管3に圧力制御弁5を配置する。蒸気供給管3はヒートポンプ6の凝縮器9からの加熱用の蒸気を熱交換器1のジャケット部2に供給する。
【0010】
ヒートポンプ6は、熱媒体を高温熱源と熱交換させ熱媒体を蒸発させる蒸発器7と、蒸発器7で蒸発させた熱媒体を圧縮する圧縮機8と、圧縮機8で圧縮された熱媒体を低温熱源と熱交換させ熱媒体を凝縮させる凝縮器9と、凝縮器9で凝縮させた熱媒体を膨張させて蒸発器7に供給する膨張機としてのスチームトラップ10から構成する。蒸発器7には蒸発器7に高温熱源を供給する高温熱源供給管11が接続され、凝縮器9には凝縮器9に低温熱源を供給する低温熱源供給管12が接続される。低温熱源供給管12は吸引手段4の循環路21から分岐している。ヒートポンプ6では、蒸発器7にて熱媒体が蒸発し、気相となった熱媒体が圧縮機8を通して凝縮器9に移動する。凝縮器9に移動した気相の熱媒体は凝縮器9にて液相に凝縮され、液相の熱媒体がスチームトラップ10を通して蒸発器6に戻る。高温熱源供給管11から蒸発器7に供給された高温熱源は、蒸発器7にて液相の熱媒体と熱交換され低温熱源として低温熱源導出管13から導出され、吸引手段4の循環路21を分岐して低温熱源供給管12から凝縮器9に供給された低温熱源は、凝縮器9にて気相の熱媒体と熱交換され蒸気として蒸気供給管3からジャケット部2に供給される。
【0011】
ジャケット部2の下方に連通管14を介して、吸引手段4のエゼクタ15と接続する。連通管14にはスチームトラップ16と、そのバイパス弁17を並列に取り付ける。連通管14はその下端がエゼクタ15の吸引室18と接続する。吸引手段4はエゼクタ15とタンク19と循環ポンプ20を循環路21で接続して組み合わせたエゼクタ式組み合わせポンプで構成する。タンク19内に循環流体としての温水を所定量溜め置き、この温水を循環ホンプ20でエゼクタ15からタンク19へと循環させ、エゼクタ15の吸引作用により吸引室18に吸引力を発生させ、熱交換器1のジャケット部2内を所定の圧力状態としての大気圧や大気圧以下の負圧状態に維持する。タンク19には循環流体補給管22をバルブ23を介して接続し、循環流体排出管24をバルブ25を介して接続する。
【0012】
エゼクタ15で生じる吸引力は、エゼクタ15内を流下する流体の温度に相当する飽和圧力となることから、循環流体補給管22から流体を補給して流体温度を適宜調節することにより、エゼクタ15の吸引力を任意に制御することができる。例えば、ジャケット部2内に80度Cの低温蒸気を供給して被加熱物を加熱する場合、エゼクタ15の吸引力が80度Cより僅かに低い温度における蒸気の飽和圧力に相当する圧力の吸引力となるように、循環流体の温度を調節することにより、所定の温度状態を維持することができる。熱交換器1内の被加熱物を加熱する場合、先ず、バイパス弁17を開弁すると共に、エゼクタ式組み合わせポンプ4を駆動してエゼクタ15の吸引力によってジャケット部2内を所定の低圧力状態とし、圧力制御弁5を通して所定圧力に制御された加熱用蒸気を蒸気供給管3からジャケット部2内に供給する。被加熱物を加熱して熱を奪われた蒸気は凝縮して復水となり、連通管14のスチームトラップ16又はバイパス弁17からエゼクタ15に吸引されタンク19に至る。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、熱交換器内の被加熱物を熱交換器の加熱部からの低圧蒸気で加熱する低圧蒸気による加熱装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 熱交換器
2 ジャケット部
3 蒸気供給管
4 吸引手段
5 圧力制御弁
6 ヒートポンプ
7 蒸発器
8 圧縮機
9 凝縮器
10 スチームトラップ
11 高温熱源供給管
12 低温熱源供給管
13 低温熱源導出管
14 連通管
15 エゼクタ
16 スチームトラップ
17 バイパス弁
18 吸引室
19 タンク
20 循環ホンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する熱交換器と、蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張機による閉ループ内に熱媒体を充填したヒートポンプの凝縮器からの加熱用の蒸気を熱交換器の加熱部に供給する蒸気供給管を接続するとともに、熱交換器の加熱部に加熱部内の流体を吸引する吸引手段を接続し、吸引手段で加熱部内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持することにより被加熱物を低圧蒸気により加熱することを特徴とする低圧蒸気による加熱装置。

【図1】
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