説明

低広帯域ノイズの磁気記録媒体

【課題】低広帯域ノイズの磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】前面と裏面を有する非磁気基材と、前面に形成された下部支持層と、下部支持層に形成された、平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層と、を含み、93kfciでのBBノイズが−91dB未満である二重層磁気記録テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープのような磁気記録媒体に関し、特に、平均粒子長さが約35nm以下の磁気金属顔料粒子を含む磁気層を有する磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体は、データ記録テープ、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープ、ディスク等に広く用いられている。磁気テープは、記録層として薄い金属層を用いたり、記録層として磁性粒子を含有するコーティングを含む。記録媒体の後者の種類は、バインダー中に分散され基材にコートされた強磁性体酸化鉄、酸化クロム、強磁性体合金粉末等のような微粒子材料を用いるものである。一般的に、磁気記録媒体は、非磁気基材(例えば、磁気記録テープ用途のフィルム)の少なくとも片面にコートされた磁気層を含む。
【0003】
ある設計において、磁気コーティング(または「フロントコーティング」)は、非磁気基材上に直接単一層として形成される。他のやり方では、基材上に下部支持層と、支持層または下層に直接形成された薄い磁気記録層とを含む二重層構造がよく用いられている。これらの層は、同時または逐次に形成することができる。この種の構造だと、下部支持層は、通常、磁気層より厚い。支持層は、一般的に非磁性であり、通常は、バインダー中に分散された非磁性粉末から構成されている。逆に、上層は、バインダー系に分散された1種類以上の磁気金属粒子粉末または顔料を含んでいる。磁気層用処方を最適化させて、信号対雑音比、パルス幅等、かかる領域における磁気記録媒体の性能を最大にする。
【0004】
磁気テープは、媒体の耐久性、導電性およびトラッキング特性を改善するために、非磁気基材の逆面に適用された裏面コーティングも有している。フロントコーティングのように、裏面コーティングは、一般的に、好適な溶剤と組み合わせて、均一な混合物を作成し、これを基材にコートした後、コーティングを乾燥し、所望であればカレンダ加工してから乾燥する。裏面コーティングまたは層用の処方は顔料とバインダー系も含む。
【0005】
磁気記録媒体は、非磁気基材上に形成されている。従来用いられている基材材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの混合物、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、セルロース誘導体、ポリアミドおよびポリイミドのようなポリエステルが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から用いられているよりも小さな磁気粒子を有する磁気記録テープが望まれている。
【0007】
平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層を含む磁気記録媒体の帯域(BB)ノイズは93kfciで−91dB未満であるということを知見した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前面と裏面を有する非磁気基材と、前面に形成された下部支持層と、下部支持層に形成された、平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層と、を含み、93kfciでのBBノイズが−91dB未満である二重層磁気記録テープを提供する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、前面および裏面と、前面に形成された下部支持層と、下部支持層に形成された、平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層とを有し、131kfciでのBBノイズが−92dB未満である磁気記録媒体を提供する。
【0010】
基材は、前面にコートされた磁気コーティングを有しており、基材の逆面に裏面コーティングを有している。磁気層は、1種類以上の金属微粒子顔料とそのためのバインダー系とを含有している。強磁性磁気記録層と共に、基材に直接コートされた任意の支持層または副層を有していてもよく、その場合は、磁気記録層は副層の上にコートされている。磁気記録層はまた磁気薄フィルムを含んでいてもよい。バインダー中に分散されたカーボンブラックを含む任意のバックコーティングを、基材の逆表面に形成してもよい。
【0011】
一実施形態において、本発明は、前面と裏面を有する非磁気基材と、前面に形成された下部支持層と、下部支持層に形成された、平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層と、を含み、131kfciでのBBノイズが−92dB未満である磁気記録媒体を提供する。
【0012】
ここで用いる場合、以下の用語は次のような意味である。
1.「コーティング組成物」とは、基材のコーティングに好適な組成物のことを意味する。
2.「層」と「コーティング」という用語はコートされた組成物を指すのに区別なく用いられる。
3.「バックコーティング」および「裏面コーティング」という用語は同義であり、磁気層から基材の逆面のコーティングのことを指す。
4.ポリマー材料に適用したときの「ビニル」という用語は、その材料がビニルモノマーから誘導される繰り返し単位を含むことを意味する。モノマー材料に適用したとき、「ビニル」という用語は、そのモノマーが、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有する部分を含むことを意味する。
5.「固有抵抗」という用語は、オーム/スクエアで測定した表面電気抵抗のことを意味する。
6.「Tg」という用語はガラス転移温度を意味する。
7.「保磁力」という用語は、10,000エルステッドの飽和磁界強度でとられた、飽和に達した後に強磁性材料の磁化を0まで減じるのに必要な磁界の強度を意味する。
8.Oeと略記される「エルステッド」という用語は、1/μに等しい誘電性材料における磁界の単位を指す。μは透磁率である。
9.通常、「BBノイズ」と略される「広帯域ノイズ」という用語は、デシベル(dB)で表される平均積分広ノイズ出力である。
10.通常、「BBSNR」と略される「広帯域信号対ノイズ」という用語は、デシベル(dB)で表される、密度TRD2で明らかに書き込まれたテープの平均信号出力対平均積分広ノイズ出力の比率である。BBSNRは、4.5KHz〜15.8MHzの周波数曲線で面積を測定する。この値は、ECMA国際規格319に従って得られる。
11.Rとは平均粗さのことを意味し、原子間力顕微鏡により測定する。値はナノメートルで記録する。
12.「テープ」という用語は、ある種類の磁気記録媒体のことを指すのに用い、基材の前面が少なくとも磁気コーティングでコートされた基材のことを意味する。
13.「dB」という用語はデシベルを意味する。この用語には単数と複数の両方が含まれる。
【0013】
特に断りのない限り、重量、量および比率はすべて重量基準である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の詳細な説明に特定の実施形態を記載するが、これに限られるものではない。本発明の範囲は添付の請求の範囲により定義される。
【0015】
磁気記録媒体、基材、磁気層、任意で、副層および裏面層を含む。様々なコンポーネントについて以下に詳述する。しかしながら、一般的に、磁気層は、少なくとも1種類の磁気金属顔料とその顔料のためのバインダー系とを含む。
【0016】
一実施形態において、基材の前面にコートされた支持層を含む磁気記録媒体は二重層磁気記録媒体であり、磁気層は支持層の上にコートされている。
【0017】
磁気記録層
本発明によれば、磁気記録層は磁気粒子顔料を含有する薄層である。この層の厚さは好ましくは約0.025μm〜約0.25μm、好ましくは約0.025μm〜0.20μmである。
【0018】
本発明の磁気記録媒体はまた、大きな粒子を用いた同様の微粒子磁気記録媒体よりも平滑、すなわち、粗さ値の低い磁気面または前面を有している。磁気面の磁気面平均粗さ(R)は約6nm以下である。
【0019】
本発明の磁気記録テープは、平均粒子長さが約35nm未満の少なくとも1種類の微粒子磁気顔料を含んでいる。有用な粒子の保磁力は少なくとも1800Oe、好ましくは少なくとも約2000Oeである。磁気金属粒子顔料は、これらに限られるものではないが、金属鉄および/またはコバルトおよび/またはニッケルと鉄の合金、および鉄の磁気または非磁気酸化物、その他元素またはこれらの混合物を含む組成を有している。あるいは、磁気粒子は、バリウムフェライトのような六角フェライトから構成することができる。必要な特性を改善するために、好ましい磁気粉末は、Al、Nd、Si、Co、Y、Ca、Mg、Mn、Na等といった半金属または非金属元素およびその塩または酸化物のような様々な添加物を含有していてもよい。選択した磁気粉末は、バインダー系に分散させる前に様々な助剤で処理して、主要磁気金属粒子顔料としてもよい。本発明による有用な顔料の平均粒子長さは約35ナノメートル(nm)以下である。これらの顔料を二重層磁気記録テープの磁気記録層に用いると、ECMA規格319に従って測定したときに、優れたBBノイズ特性を有するテープが得られる。
【0020】
このECMA規格は、ドライブ間でカートリッジを物理的に交換するために、幅12.65mmの磁気テープを用いて磁気テープカートリッジの物理的および磁気的特性を特定する。記録された信号、記録方法および記録フォーマットの品質も特定して、かかるカートリッジによるドライブ間のデータ交換を可能とする。かかる規格の別添Bには、広帯域ノイズ値が規定されており、測定手順が記載されている。3.5オンスの張力下で磁気テープをサータンス(Certance)Gen 2LTOヘッド上で3メートル/秒で走行させる。0〜15.5MHzの21周波数で1ミリメートル当たり2593の磁束遷移(ftpmm)の存在下でノイズを測定する。標準テープ振幅は5187ftpmmおよび7.78MHzで測定される。
【0021】
本発明のテープのBBSNR比は93kfciで試験すると−91未満である。一実施形態において、本発明の二重層磁気記録テープのBBSNR比は131kfciで試験すると−92未満である。
【0022】
上述した好ましい主要磁気金属粒子顔料に加えて、磁気層は軟質球状粒子を更に含んでいる。最も一般的にはこれらの粒子はカーボンブラックから構成されている。好ましくは球状カーボン粒子を含む、少量、好ましくは約3%未満の少なくとも1種類の大きな粒子カーボン材料が含まれていてもよい。大粒子カーボン材料の粒度は約50〜約500nm、より好ましくは約70〜約300nmである。球状大カーボン粒子材料は公知であり、市販されている。市販のものには、性能を改善するために硫黄のような様々な添加剤が含まれている。上層に存在する残りのカーボン粒子は小カーボン粒子であり、粒度は約100nm未満、好ましくは約50nm未満である。
【0023】
磁気層はまた、研磨剤またはヘッドクリーニング剤(HCA)成分も含む。ある好ましいHCA成分は酸化アルミニウムである。シリカ、ZrO、Cr等といったその他の研磨粒子もまた単独で、または酸化アルミニウムまたは互いの混合物で用いることができる。
【0024】
磁気層に対応するバインダー系は、HCAを分散させるのに用いるバインダーおよび界面活性剤、界面活性剤(または湿潤剤)および1種類以上の硬化剤のような他の樹脂成分と組み合わせて熱可塑性樹脂のような少なくとも1種類のバインダー樹脂を組み込むのが好ましい。好ましい一実施形態において、磁気層のバインダー系は、少なくとも1種類の樹脂成分と、少なくとも1種類の軟質樹脂成分とを、他のバインダー成分と組み合わせて含む。硬質樹脂成分のガラス転移温度(Tg)は一般的に少なくとも約70℃、軟質樹脂成分のガラス転移温度は一般的に約68℃未満である。
【0025】
一実施形態において、バインダー系は、HCAを分散するのに用いるバインダーおよび界面活性剤、界面活性剤(または湿潤剤)および1種類以上の硬化剤のような他の樹脂成分と組み合わせて熱可塑性樹脂のような少なくとも1種類のバインダー樹脂を含有している。好ましい一実施形態において、磁気記録層のバインダー系は、主要ポリウレタン樹脂と塩化ビニル樹脂の組み合わせを含む。ポリウレタンとしては、ポリエステル−ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリウレタン、ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンおよびポリカプロラクトン−ポリウレタンが例示される。塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコールコポリマー、および塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸のようなその他の許容される塩化ビニル樹脂もまた主要ポリウレタンバインダーに用いることができる。ビス−フェニル−A−エポキシ、スチレン−アクリロニトリルおよびニトロセルロースのような樹脂もまた許容可能である。
【0026】
バインダー系は、更に、ポリウレタンペースト樹脂のような選択したHCA材料を分散させるのに用いるHCAバインダー(事前分散またはペーストHCAと組み合わせて)を含むのが好ましい。あるいは、選択したHCAの形態(例えば、粉末HCA)と相容性のあるその他のHCAバインダーも許容される。その他の成分と同様に、HCAは、主分散体に別個に添加してもよいし、またはバインダー系に分散させてから主分散体に添加してもよい。
【0027】
磁気層は更に、脂肪酸および/または脂肪酸エステルのような1種類以上の潤滑剤を含有していてもよい。組み込まれた潤滑剤は、フロントコーティング全体に、そして重要なのは、磁気層の表面に存在している。潤滑剤は、摩擦を減じて低い空気抵抗により平滑な接触を維持し、媒体表面を摩耗から保護する。二重層媒体において、潤滑剤は、上層と下層の両方に与えられ、組み合わせて選択および処方されるのが好ましい。
【0028】
好ましい脂肪酸潤滑剤は、少なくとも90パーセントの純粋なステアリン酸を含んでいる。技術的等級の酸および/または酸エステルも潤滑剤成分に用いることができるが、高純度潤滑剤材料の組み込みにより、得られる媒体の強固な性能が確保される。その他の許容可能な脂肪酸としては、1種類以上のミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等およびこれらの混合物が挙げられる。磁気層処方は更に、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ヘキサデシルおよびオレイン酸オレイルのような1種類以上の脂肪酸エステルを含むことができる。
【0029】
好ましい実施形態において、潤滑剤は、主要顔料100重量部に基づいて、約1〜約10重量部、好ましくは約1〜約5重量部の量で磁気層へ組み込まれる。
【0030】
バインダー系はまた従来の界面活性剤または湿潤剤を含有していてもよい。公知の界面活性剤、例えば、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸およびカルボン酸の付加物も許容される。
【0031】
コーティング組成物はまた、イソシアネートやポリイソシアネートのような硬化剤を含有していてもよい。好ましい実施形態において、硬化剤成分は、主要磁気顔料100重量部に基づいて、約1〜約5重量部、好ましくは約1〜約3重量部の量で上層へ組み込まれる。
【0032】
磁気層の材料は主要顔料と混合されて、下層上にコートされる。上層コーティング材料に対応する有用な溶剤としては、好ましくは約5%〜約50%の濃度のシクロヘキサノン(CHO)、約40%〜約90%の濃度のメチルエチルケトン(MEK)、および約0%〜約40%のトルエン(Tol)が挙げられる。あるいは、その他の比率を用いることができ、更には、例えば、キシレン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフランおよびメチルアミルケトンをはじめとする他の溶剤または溶剤の組み合わせも許容される。
【0033】
薄フィルム磁気層が望ましい場合には、コバルト、コバルトクロム、コバルトニッケル、コバルトクロム白金およびその他コバルト合金のような金属を、スパッタリングおよび真空蒸着のような方法により基材に形成する。
【0034】
下部支持層
本発明の二重層磁気テープの下部支持層は、実質的に非磁気であり、非磁気粉末と樹脂バインダー系とを含む。1層以上の実質的に非磁気の下層を形成することにより、磁気層の電磁特性は悪影響を受けない。
【0035】
本発明の磁気記録媒体の下層としては、少なくとも主要顔料とそのためのバインダー系とを含む。かかる支持層を上部磁気層と組み合わせて用いて、高品質記録特性と良好な機械的および取扱い特性を有する磁気記録媒体を形成する。
【0036】
主要下層顔料材料は、主に、酸化鉄、二酸化チタン、アルミナ、酸化錫、炭化チタン、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のような非磁気粒子からなる。
【0037】
好ましい実施形態において、酸性または塩基性の性質とすることのできる主要下層顔料材料はヘマタイト材料(α−酸化鉄)である。一実施形態において、アルファ酸化鉄は実質的に均一な粒度であり、アニールしてポアの数を減じる。アニール後、顔料は表面処理する準備が整い、カーボンブラック等といった他の層材料と混合する前にこれを行うのが一般的である。アルファ−酸化鉄も周知であり、同和鉱業株式会社(Dowa Mining Company)、戸田工業(Toda Kogyo)、堺工業株式会社(Sakai Chemical Industry Co)等から市販されている。
【0038】
導電性カーボンブラック材料は、あるレベルの導電性を与えて、処方を静電気の帯電から保護する。導電性カーボンブラック材料は、従来の種類で広く市販されているものであるのが好ましい。ある好ましい実施形態において、導電性カーボンブラック材料の平均粒度は20nm未満、より好ましくは約15nmである。
【0039】
支持または下層はまた、アルミナ含有顔料を含んでいてもよい。一実施形態において、かかる顔料は酸化アルミニウム顔料である。シリカ、ZrO、Cr等といったその他の研磨粒子もまた単独で、または酸化アルミニウムとの混合物で用いることができる。かかる顔料は、顔料の研磨性のためにヘッドクリーニング剤(HCA)と呼ばれることが多い。
【0040】
下層に対応するバインダー系または樹脂は、その他の成分と組み合わせて熱可塑性樹脂のような少なくとも1種類のバインダー樹脂を組み込むのが好ましい。追加の成分としては、HCAを分散させるのに用いるバインダーおよび界面活性剤、界面活性剤(または湿潤剤)および1種類以上の硬化剤が挙げられる。支持層のバインダー系は軟質樹脂と共に硬質樹脂を含有している。軟質樹脂のTgは約68℃未満である。硬質樹脂のTgは少なくとも約70℃である。
【0041】
コーティング組成物は更に、ポリウレタンペーストバインダーのような分散剤として用いる追加のバインダーを含んでいてもよい。
【0042】
バインダー系はまた従来の界面活性剤または湿潤剤を含有していてもよい。公知の界面活性剤、例えば、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸およびカルボン酸の付加物も許容される。
【0043】
バインダー系はまた、イソシアネートやポリイソシアネートのような硬化剤を含有していてもよい。好ましい実施形態において、硬化剤成分は、主要下層顔料100重量部に基づいて、2〜5重量部、好ましくは3〜4重量部の量で下層へ組み込まれる。
【0044】
支持層は更に、脂肪酸および/または脂肪酸エステルのような1種類以上の潤滑剤を含有していてもよい。磁気層と同様に、支持層も少なくとも約90%純粋なステアリン酸を含有している。その他の許容可能な脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等およびこれらの混合物が挙げられる。支持層処方は更に、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ヘキサデシルおよびオレイン酸オレイルのような脂肪酸エステルを含むことができる。脂肪酸および脂肪酸エステルは単体または組み合わせて用いてよい。潤滑剤は、主要下層顔料の組み合わせ100重量部に基づいて、約1〜約10重量部、好ましくは約1〜約5重量部の量で下層へ組み込まれる。
【0045】
下層の材料は主要顔料と混合され、下層は基材にコートされる。下層コーティング材料に対応する有用な溶剤としては、好ましくは約5%〜約50%の濃度のシクロヘキサノン(CHO)、約40%〜約90%の濃度のメチルエチルケトン(MEK)、および0%〜約40%のトルエン(Tol)が挙げられる。あるいは、その他の比率を用いることができ、更には、例えば、キシレン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフランおよびメチルアミルケトンをはじめとする他の溶剤または溶剤の組み合わせも許容される。
【0046】
基材
本発明の磁気記録媒体は、磁気顔料粒子と、そのためのバインダー系とを含む前面に形成された磁気層を有する基材を含む磁気記録ヘッドと共に用いる磁気記録媒体であって、磁気記録媒体の磁気記録ヘッドからのクロスウェブ寸法差が35度の温度範囲および70%の相対湿度範囲、例えば、10%〜80%の相対湿度で900μm/m未満である磁気記録媒体を含む。
【0047】
本発明の磁気記録媒体に用いるのに好ましい基材としては、金属、金属合金およびガラスフィルムが挙げられる。磁気層が形成された基材を含む少なくとも一実施形態において、磁気記録媒体の磁気記録ヘッドからのクロスウェブ寸法差は70%の相対湿度範囲、例えば、10%〜80%の相対湿度で500ミクロン/メートル未満である
【0048】
バックコート
バックコートは、主に、カーボンブラックや二酸化ケイ素粒子のような軟質非磁気粒子材料からなる。一実施形態において、バックコート層は、適切なバインダー樹脂と組み合わせて小カーボンブラック主成分と、大きなテクスチャのカーボンブラック副成分とを含む2種類のカーボンブラックの組み合わせを含む。小カーボンブラック主成分の平均粒度は約10〜約50nmであるのが好ましく、大カーボン副成分の平均粒度は約50〜約300nmであるのが好ましい。本発明の磁気記録媒体のバックコートは、組成物総量に基づいて約25〜約50パーセント、好ましくは組成物総量に基づいて約35〜約50パーセントの小粒子カーボン粒子を含有している。
【0049】
バックコート顔料は、適切なバインダー、界面活性剤、補助粒子および溶剤と共にインクとして分散される。バックコートバインダーは、適宜、コーティング剛性を修正するために適切にブレンドされたポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂およびニトロセルロールのうち少なくとも1種類を含むのが好ましい。
【0050】
本発明の分散体を作成するのに有用な溶剤としては、メチルエチルケトン、トルエンおよびシクロヘキサノンおよびこれらの混合物が挙げられ、同様に、例えば、キシレン、メチルイソブチルケトンおよびメチルアミルケトンをはじめとするその他溶剤または溶剤の組み合わせが許容される。
【0051】
製造プロセス
微粒子磁気記録層を用いる磁気記録媒体において、上層、下層、およびある場合にはバックコートのコーティング材料は、対応の粉末または顔料およびバインダーを溶剤に分散することにより調製される。例えば、上層のコーティング材料に関して、主要磁気粒子粉末または顔料および大きな粒子カーボン材料を、特定の樹脂(例えば、ポリウレタンバインダー、非ハロゲン化ビニルバインダーおよび界面活性剤)および溶剤と共に高固体混合装置に入れて約1〜約4時間にわたって処理する。得られた材料を、追加量の溶剤と共に約30〜約90分にわたって高速インペラ溶解機で処理する。このレットダウン処理の後、得られた組成物にサンドミリングまたは研磨操作を行う。続いて、HCAおよび関連バインダー成分を添加し、組成物を約30〜約90分間放置する。このレットダウン手順の後、組成物をろ過操作により処理して、硬化剤成分および潤滑剤を添加する混合タンクに保存する。得られた上層コーティング材料はこれでコーティングする準備が整った。
【0052】
副層コーティングを用いるとき、かかる層の調製には、バインダーおよび溶剤と共に、主要下層顔料、導電性カーボンブラック材料およびHCAを含む顔料の組み合わせの高固体混合を含む約2〜4時間にわたる同様の処理が必要である。
【0053】
最後に、バックコートコーティング材料の調製は、好ましくは、遊星ミキサーまたは同様の装置における溶剤を含めた様々な成分の混合と、分散体へのサンドミリング操作を必要とする。その後、材料を数多くのフィルタに通過させるろ過操作により材料を処理する。
【0054】
この種の磁気記録媒体の製造プロセスには、インライン部分と1つ以上のオフライン部分とが含まれていてもよい。インライン部分には、基材またはその他材料のスプールまたは供給部からの巻き戻しが含まれる。基材の片面をバックコーティングによりコートし、次に、裏面コーティングを、一般的なオーブンを用いて乾燥する。フロントコーティングを基材に適用する。本発明の二重層磁気記録媒体については、副層または支持層を最初に基材に直接適用し、磁気コーティングを支持層の上にコートする。単一層磁気記録媒体については、磁気層を基材の上に直接コートする。あるいは、フロントコーティングをバックコーティングの前に行うことができる。コートした基材を磁気的に配向し、乾燥して、インラインカレンダ加工ステーションに進める。一実施形態によって、インラインカレンダ加工は、コンプライアント・オン・スチール(COS)と呼ばれる1つ以上のインラインニップステーションを用いる。それぞれにおいて、鋼またはその他略ノンコンプライアントなロール接触部その他が、基材の磁気コート面に適用され、ゴム化またはその他略コンプライアントなロール接触部その他がバックコート面に適用される。略ノンコンプライアントなロールは、基材の磁気コート面に所望の程度の平滑度を与える。交互に、インラインカレンダ加工は「スチール・オン・スチール」(SOS)であり、対向する両ロールが鋼である。このプロセスでは、それぞれ略ノンコンプライアントなロールを有する1つ以上のニップステーションを用いてもよい。インラインカレンダ加工後、基材またはその他材料を曲げる。プロセスを、精密な単独機で行われるオフライン部分に進める。コートされた基材を巻き戻してカレンダ加工する。オフラインカレンダ加工には、コートされた基材を、一連の略ノンコンプライアントなローラ、すなわち多数の鋼ローラに通過させることが含まれる。ただし鋼以外の材料を用いてもよい。コートされ、カレンダ加工された基材を2回目に巻く。業界に公知の方法に従って、巻いたロールにスリットを入れ、研磨し、欠陥試験を行った。
【0055】
薄金属磁気記録層を用いるときは、スパッタリングまたは蒸発プロセスにより基材上に金属を形成する。ある蒸発プロセスにおいては、基材(および中間層)を蒸着装置を通して搬送し、コバルト、コバルトクロム、コバルトニッケル、コバルトクロム白金またはその他コバルト合金および/またはそれらの酸化物を含む磁気層を基材上に連続的に付着させる。蒸着装置は、スパッタリング装置、真空蒸着装置または電子ビーム蒸着装置をはじめとする業界に公知の装置とすることができる。好ましい蒸着方法としては、真空蒸着チャンバ内で実施される真空蒸着が挙げられる。金属蒸気は、基材表面に対して広い入射角範囲にわたって導入することができるが、一般的に、約30度〜約60度の平均角度で導入される。
【0056】
好ましい実施形態を説明するために特定の実施形態について例証し説明してきたが、当業者であれば、同じ目的を達成するための様々な変形および/または等価物は、本発明の範囲から逸脱することなく、示され説明された特定の実施形態の代替とすることができることが分かるであろう。化学、機械、電気機械、電気およびコンピュータの当業者であれば、本発明を様々な実施形態で行えることが容易に理解されるであろう。本出願では、本明細書に記載した好ましい実施形態の応用例や変形例も含むことを意図している。従って、本発明は、請求の範囲およびこの等価物によってのみ限定されるものとする。
【実施例】
【0057】
以下の表に、磁気テープについて93kfciで測定したBBノイズ結果と共に物理的属性をリストしてある。
【0058】
実施例1〜3
表1の実施例1〜3は、PEN基材にコートされた磁気上層と非磁気下層とを含む二重層テープである。更に、各テープは、磁気層に対して基材の逆面にバックコートを有している。磁気層と非磁気副層は両方ともPVCビニルコポリマー(MR104)と市販のポリウレタン(UR−4122)ポリマーを含むバインダー系を用いている。バインダーに加えて、この処方は、潤滑剤として脂肪酸(ステアリン酸)と脂肪酸エステル(ステアリン酸およびパルミチン酸ブチル)混合物と、ヘッドクリーニング剤としてアルミナと、カーボン粒子とを含有している。これらの実施例に用いる磁気粒子は、表1に示してある通り、長い軸長さと保持力を備えた針状金属粒子である。従来の方法で、コートしたテープを10本の磁気巻線に通し、磁気および副層コーティングを乾燥することにより磁気配向を実施した。
【0059】
乾燥後、テープをインラインスチール・オン・スチールカレンダ加工した後、オフラインスチール・オン・スチールカレンダ加工した。
【0060】
実施例1〜3に、比較例C1に比べた、MP長さを減じた効果と、BBSNRの改善について示してある。比較例C5は、更に、比較例C4に対して、MP粒子長さを減じた効果と、BBSNRの改善を示している。実施例3および比較例C6を用いて、BBSNRが試験毎に異なり、BBノイズは同じままに留まることを示した。実施例3と比較例C6を同日にコートした。実施例2を比較例C5と対にし、実施例1を比較例C4と対にする。
【0061】
比較例C4〜C6
表1の比較例C4〜C6は、表1に示した通り、35nmより長い上磁気記録層に磁気顔料粒子を用いる以外は、実施例1〜3のテープと同様にコートされた二重層磁気記録テープである。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と裏面を有する非磁気基材と、前記前面に形成された下部支持層と、前記下部支持層に形成された、平均粒子長さが約35nm以下、保磁力が少なくとも約2000エルステッドの磁気金属顔料粒子を含む磁気記録層と、を含み、93kfciでのBBノイズが−91dB未満である二重層磁気記録テープ。
【請求項2】
131kfciでのBBノイズが約−92dB未満である、請求項1に記載のテープ。
【請求項3】
93kfciでのBBSNRが少なくとも約27dBである、請求項1に記載のテープ。
【請求項4】
原子間力顕微鏡により測定した際の前記テープの平均磁気面表面粗さR値が約6nm以下である、請求項1に記載のテープ。
【請求項5】
前記磁気記録層が、磁気顔料粒子のための、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル樹脂とを含むバインダー系を更に含む、請求項1に記載のテープ。
【請求項6】
前記磁気記録層が、主要強磁性顔料、酸化アルミニウム、平均粒度が約50nm〜約500nmの球状の大きな粒子のカーボン材料、硬化剤、脂肪酸エステル潤滑剤、および脂肪酸潤滑剤を更に含む、請求項5に記載のテープ。

【公開番号】特開2006−196165(P2006−196165A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−6965(P2006−6965)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(596099398)イメイション・コーポレイション (37)
【氏名又は名称原語表記】Imation Corp.
【Fターム(参考)】