説明

低日射透過率ガラス

【課題】優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能(断熱性能)を有し、かつ適度な透視性を併せ持つ低日射透過率を持ち、人的や物的に優しい建築用、車両用など各種ガラス物品など広い分野に適用できるようなガラスが求められている。
【解決手段】ソーダ石灰シリカ系ガラスを基礎組成とし、着色成分として質量%表示で、Fe(3価鉄換算した全鉄)が0.70〜1.70、FeO(2価鉄)が0.15〜0.45、TiOが0〜0.8、ppm表示で、CoOが100〜350、Seが0〜60、Crが100〜700、MnOが3〜150を含有し、3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)が0.20〜0.80であることを特徴とする低日射透過率ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能(断熱性能)を有し、かつ適度な透視性を併せ持つ低日射透過率ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の脱色・劣化あるいは肌焼け等の人的・物的な悪影響、また冷房負荷低減等の省エネルギーの観点から、建築物用ではもちろん自動車用窓ガラス等において、熱線の反射吸収に加えて、例えば紫外線反射吸収等を兼ね備えるなど多機能化をガラス自体またはガラス表面に付与することにより、人的にも物的にもより高居住性、より安全性に繋がる板ガラス物品のニーズが急激に高まってきている。そのなかでも、自動車用窓ガラスとしては冷房負荷の低減など省エネルギー化や車内内装材の劣化防止、さらに搭乗者の快適性の観点から、優れた紫外線あるいは赤外線の遮蔽性能を有するガラス、またさらにプライバシー保護の見地から比較的可視光透過率が低いガラスが望まれている。
【0003】
このようなガラスとして、例えば、重量%表示で0.45〜0.75のFe(全鉄)、0〜0.7のTiO、0.014〜0.025のCoO、0〜0.035のNiO、0〜0.0035のCr、0.001〜0.006のSeからなる着色成分を含有し、板厚3mmでの可視光透過率が50%以下、日射透過率が55%以下、紫外線透過率が25%以下等である、中性灰色系色調ガラスが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また例えば、ソ−ダ石灰シリカ系ガラスを基礎組成とし、着色成分として重量%表示で、Fe(全鉄)が0.75〜1.5、ならびにppm表示で、CoOが70〜250、Seが10〜50、NiOまたは/およびCrが0〜330を基本的にそれぞれ含有し、3.5mmの厚さでD65光源測定において、可視光透過率(TV)が50%以下、日射透過率(TS)が45%以下ならびに紫外線透過率(TUV)が15%以下であるものが開示され、しかも波長350nmにおける紫外線透過率TUV350が8%以下かつ波長370nmにおける紫外線透過率TUV370が35%以下である、濃色グレー系ガラスが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また例えば、重量%で、65〜80%のSiO、0〜5%のAl、0〜10%のMgO、5〜15%のCaO(MgO+CaO=5〜15%)、10〜18%のNaO、0〜5%のKO(NaO+KO=10〜20%)、及び0〜5%Bからなる基礎ガラス組成と、及び1.0〜1.6%のFe(全鉄)、0.0019〜0.05%のCoO、0.0008〜0.003%のSe、0.05〜0.1%のNiOからなる着色剤を含有しており、1.8〜5mmの厚さで5〜25%の可視光透過率(YA)、5〜25%の日射透過率(TG)および15%以下の紫外線透過率(TUV)を有している、紫外線赤外線吸収低透過ガラスが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また例えば、重量%で表示して、65〜80%のSiO、0〜5%のAl、0〜10%のMgO、5〜15%のCaO、5〜15%のMgO+CaO、10〜20%のNaO、0〜5%のKO、10〜20%のNaO+KO及び0〜5%のB からなる基礎ガラス組成と、着色成分として、0.7〜0.95%のFeに換算した全酸化鉄(T−Fe)、1.1〜2.3%のTiO、0〜2.0%CeO、0.013〜0.025%のCoO、0〜0.0008%のSe及び0.01〜0.07%のNiOからなり、3.1mm〜5mmの厚みにおけるガラスの可視光透過率が25〜45%、太陽光透過率が10〜40%である、紫外線赤外線吸収低透過ガラスが提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
さらに例えば、中間色に着色されたソーダ石灰シリカガラス組成物であって、68〜75重量%のSiO、10〜18重量%のNaO、5〜15重量%のCaO、0〜5重量%のMgO、0〜5重量%のAl、0〜5重量%のKO、及び0〜5重量%のBaO及び着色剤として約1.2〜2重量%のFe(Feの重量%値に換算した鉄の総量)、約0.01〜0.05重量%のNiO、約0.02〜0.04重量%のCo、約0.09〜3重量%のTiO、及び0.0002〜0.005重量%のSeからなり、厚さ4mmにおいて、可視光線透過率(標準光源A)が40〜50%の範囲にあるとき、全太陽エネルギー透過率が前記可視光線透過率より少なくとも15%低いレベルであり、前記可視光線透過率が40%未満であるとき、全太陽エネルギー透過率が25%未満である、中間色で放射線透過率の低いガラスが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2740103号公報
【特許文献2】特開平10−72236号公報
【特許文献3】特開2001−206731号公報
【特許文献4】特開平10−139475号公報
【特許文献5】特表平11−512694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように特許第2740103号公報に記載の中性灰色系色調ガラス、あるいは特開平10−72236号公報記載の濃色グレー系ガラスは、いずれも紫外線吸収性能は優れているが、必ずしも優れた赤外線吸収性能を充分に有しているとは言い難い。
【0010】
また特開2001−206731号公報に記載の紫外線赤外線吸収低透過ガラス、あるいは特開平10−139475号公報に記載の紫外線赤外線吸収低透過ガラス、またさらに特表平11−512694号公報に記載の中間色で放射線透過率の低いガラスは、いずれも紫外線および赤外線の吸収性能は優れているが、着色成分としてNiO成分を含み、またその量が100ppm以上と多いため、ガラス製造時にガラスの自然破損に繋がる硫化ニッケルを形成する恐れが多大にあり、製品品質の保証上あるいは安全性の観点から、建築用や車両用などの窓ガラスに好適とは言い難いガラスである。
【0011】
硫化ニッケルは製造過程で発見することは不可能に近いため、ヒートソーク試験(熱処理試験)により再加熱を行なって硫化ニッケルによって自然破損するガラスを予め人工的に破壊させる方法もあるが、完全に無くすことは難しく、またその熱処理試験には非常に手間が掛かる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、従来のかかる欠点に鑑みてなしたものであって、着色成分がFe−CoO−Se−Cr−MnO系であり、適宜種々に成分組成を組み合わせることにより、優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能(断熱性能)、を有し、かつさらに適度な透視性を併せ持つことにより、居住性と安全性を高め、しかも種々の形状で軽量化をもでき得る低日射透過率ガラスを、より簡便に効率よく提供するものである。
【0013】
すなわち、ソーダ石灰シリカ系ガラスを基礎組成とし、着色成分として質量%表示で、Fe(3価鉄換算した全鉄)が0.70〜1.70、FeO(2価鉄)が0.15〜0.45、TiOが0〜0.8、ppm表示で、CoOが100〜350、Seが0〜60、Crが100〜700、及びMnOを3〜150含有し、3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)が0.20〜0.80であり、4mm厚みに換算したときのA光源を用いて測定した日射透過率が30%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が30%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.50以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が1.25以下であることを特徴とする低日射透過率ガラスである。
【0014】
また、CeOが2.0質量%以下であることを特徴とする、上記の低日射透過率ガラスである。
【0015】
また、NiOが100ppm以下であることを特徴とする、上記の低日射透過率ガラスである。
【0016】
さらに、4mm厚みに換算したときのD65光源で測定した透過光の主波長が480〜580nmであることを特徴とする、上記の低日射透過率ガラスである。
【0017】
さらにまた、ソーダ石灰シリカ系ガラスの基礎組成が、質量%表示で、SiOが65〜80%、Alが0〜5%、MgOが0〜10%、CaOが5〜15%、MgO+CaOが5〜15%、NaOが10〜18%、KOが0〜5%、NaO+KOが10〜20%、SOが0.05〜0.50であることを特徴とする、上記の低日射透過率ガラスである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能(断熱性能)を有し、かつ適度な透視性を併せ持つ低日射透過率ガラスを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ここで、前記着色成分として、質量%表示で、Fe(3価鉄換算した全鉄)が0.70〜1.70、FeO(2価鉄)が0.15〜0.45、3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)が0.20〜0.80、TiOが0〜0.8、ppm表示で、CoOが100〜350、Seが0〜60、Crが100〜700、MnOが3〜150を基本的にそれぞれ含有せしめることとしたのは、紫外線吸収のためのFeやTiOの成分組成、ならびに赤外線吸収のためのFeOの成分組成、またさらに色調および可視光透過率の低下のためのCoO、Se、Cr、MnOの成分組成を基本的にバランスさせて優れた紫外線と赤外線の吸収性能と、かつ適度な透視性を確保するために必要であるからである。
【0020】
質量%表示で、Fe(3価鉄換算した全鉄)は0.70〜1.70、FeO(2価鉄)は0.15〜0.45、かつ3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)を0.20〜0.80としたのは、必要とする紫外線および赤外線吸収性能を、Feによる紫外線吸収性能ならびにFeOによる赤外線吸収性能の両者で、ガラスに同時にバランスよく持たせ、めざす所望の光学特性を満足するものとするために必要なFe(全鉄)の量、FeO(2価の鉄)の量および3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)である。
【0021】
Fe(全鉄)は質量%表示で0.70%未満ではその紫外線および赤外線吸収性能が不十分となり、他方1.70%を超えるとガラス溶融窯で連続的に生産を行う場合、異組成ガラス素地との組成変更に時間を要するなどの不都合を生じるので望ましくない。
【0022】
従って、質量%表示で0.70〜1.70、好ましくは0.70〜1.50、より好ましくは0.70〜1.30とする。
【0023】
また、FeO(2価鉄)は質量%表示で0.15未満ではその赤外線吸収性能が不十分となり、他方0.45を超えるとその赤外線吸収性能により、その輻射熱で溶融時に熔解槽天井部の温度が耐熱温度以上になる恐れがあり、さらにガラス溶融窯で連続的に生産を行う場合、異組成ガラス素地との組成変更に時間を要するなどの不都合を生じるので望ましくない。
【0024】
従って、質量%表示で0.15〜0.45、好ましくは0.20〜0.45、より好ましくは0.20〜0.40とする。
【0025】
さらに、3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)は0.20未満、あるいは0.80を超えるとその紫外線吸収性能あるいは赤外線吸収性能のバランスが悪くなり、しかもフロート法等の製板工程並びに強化ガラスあるいは曲げ板ガラス等の熱処理工程においてより色調変化が起こりやすくなるので望ましくない。
【0026】
従って、0.20〜0.80、好ましくは0.20〜0.70、より好ましくは0.20〜0.60とする。
【0027】
3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)の調整としては、カ−ボン、芒硝等原料および燃焼状態等操炉によって行うものである。なお、例えばガラス溶融窯の調整域における雰囲気に酸素ガスまたは酸素ガスを含む混合ガス、空気あるいは酸素ガス濃度高めた燃焼排ガス等、もしくはこれらの複合ガスを導入することも場合によっては色調安定に寄与するものである。
【0028】
質量%表示で、TiOは0〜0.8としたのは、通常FeOとの相互作用により紫外線吸収性能を高める成分であるが可視域も吸収する成分であるため、0.8を超えるとその可視域の吸収が大きくなるのでガラス素地中のFe(全鉄)の量を低下させなければならなくなり、総合的にマイナスとなるので望ましくない。
【0029】
従って、質量%表示で、0〜0.8、好ましくは0〜0.5とする。
【0030】
ppm表示で、CoOが100〜350、Seが0〜60、Crが100〜700、MnOが3〜150としたのは、すなわち、鉄(黄色、青色)、コバルト(青色)、セレン(ピンク、また鉄と化合し褐色)、クロム(緑色、淡黄色)、マンガン(紫色、淡橙色)がそれぞれ発現するなかで、Fe−CoO−Se−Cr−MnO系の成分組成を上記範囲内で適宜調整することにより所望の色調あるいは透過率などの光学特性が得られるものである。
【0031】
ことにMnOは、ガラス溶融時に高揮発性の有毒なSeの保持を助けるとともに、そのSeのピンク色の代替となりえ、さらにはFeによる紫外線吸収性能を高めるため成分であるため本発明においては重要な役割を果たす必須成分である。3ppm未満ではその効果が不十分となり、他方150ppmを超えるとソラリゼーションを起こしやすくなるため望ましくない。従って、3〜150ppm、好ましくは5〜150ppm、より好ましくは10〜100ppmとする。
【0032】
CeOはガラス中ではCe3+またはCe4+の形で存在し、紫外線吸収性能を高める成分であり、適宜添加しても構わない。CeO単独の場合、とりわけCe3+が可視域に吸収が少なく紫外線吸収に有効であるが、ガラス中にTiOと共存させることでTi4+との相互作用による紫外線吸収の効果も得られる。しかし、高価なCeOの使用によるコスト高を避けるために2.0質量%以下が好ましい。
【0033】
NiOは、ガラス中で硫化ニッケルの形成をもたらすので含有は望ましくない。硫化ニッケルは、目視ではほとんど確認できず、通常の状態ではガラスに害を与えないが、熱膨張係数が大きいので熱強化時などにその体積膨張により応力バランスが崩れて、ガラス全面が一瞬にして割れて粉々になることがある。
【0034】
従って、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは実質的に含有しないとする。
【0035】
また硫化ニッケルの発生を抑制するために、ZnOを0.5質量%以下までの範囲で添加しても良いが、これを超えると高価なZnO原料の使用のためコスト高になるので望ましくない。従って、0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
【0036】
またさらに、本発明の組成範囲のガラスに、色調や還元度の調整その他の目的で、V、MoO、CuO、SnO等を1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、本発明の機能を損なわない範囲で添加しても構わない。
【0037】
該ガラスの4mm厚みに換算したときのA光源を用いて測定した日射透過率が30%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が30%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.50以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が1.25以下、ならびにD65光源で測定した透過光の主波長が480〜580nmであることとしたのは、各種プライバシー保護用ガラスとして適度な投資性を持ちながら、かつ優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能を有し、例えば紫外線による物品の脱色・劣化あるいは肌焼け等人的・物的な悪影響を減じ、例えば冷暖房効果を高めて車内・室内での居住性を高め、車・室外の環境に優しいものとするためである。
【0038】
好ましくは、板厚4mmでの日射透過率が25%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が20%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.65以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が1.0以下、さらに好ましくは、日射透過率が20%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が15%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.80以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が0.8以下である。
【0039】
さらに、前記ソーダ石灰シリカ系ガラスの基礎組成が、質量%表示で、65〜80のSiO、0〜5のAl、0〜10%のMgO、5〜15%のCaO(ただし、MgO+CaOとの合量は5〜15)、10〜18のNaO、0〜5のKO(ただし、NaOとKOとの合量は10〜20%)及び0.05〜0.5%のSOである基本的に板ガラス組成物であることとした。
【0040】
SiO成分を質量%で65〜80としたのは、65未満では表面にヤケ等が発生しやすく耐候性が下がり実用上の問題が生じてくるものであり、80を超えるとその易強化性が下がり、溶融も難しくなるからである。
【0041】
Al成分を質量%で0〜5としたのは、5を超えると失透が生じやすくなり成形温度範囲が狭くなり製造が難しくなるからである。
【0042】
MgO成分を質量%で0〜10としたのは、10を超えると易強化性が下がるものである。
【0043】
CaO成分を質量%で5〜15としたのは、5未満では易強化性が下がり、また融剤として不足気味となり溶融温度も高くなりまた流動温度を低くしないので製造しにくくなり、15を超えると失透し易くなり、成形作業範囲が狭くなり製造が難しくなるからである。
【0044】
MgOとCaOとの合量を質量%で5〜15としたのは、MgOおよびCaO成分は溶融温度を下げるために用いられるとともに、5未満では易強化性が下がり、15を超えると失透しやすくなり製造上難しくなるからである。
【0045】
NaO成分を質量%で10〜18としたのは、10未満では易強化性が下がり、成形性が難しくなり、失透も生じ易くなるので操作範囲が狭まり製造しにくくなり、18を超えると耐候性が下がり、表面にヤケ等が発生しやすくなり実用上の問題が生じてくるからである。
【0046】
O成分を質量%で0〜5としたのは、5を超えると耐候性が下がりかつコストも高くなるからである。
【0047】
NaOとKOとの合量を質量%で10〜20としたのは、10未満では易強化性が下がり、失透も生じやすくなって成形において作業温度範囲が狭くなり、製造が難しくなり、20を超えると耐候性が下がり実用上の問題を生じるものであるとともにコスト的にも高くなるからである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づき、説明する。
【0049】
ガラス原料として二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムあるいは酸化マグネシウムを用い、着色剤として酸化第2鉄、酸化チタン、酸化セリウム、酸化コバルト、セレン(亜セレン酸ナトリウムで添加)、酸化クロム及び酸化マンガンを所定量添加すると共に、さらに硫酸ナトリウムや炭素系還元剤(具体的にはカーボン粉末)をガラス原料に対して前記着色成分の範囲内で加えて混合し、この原料を電気炉中で1480℃に加熱、溶融した。
【0050】
1480℃で5時間溶融後、1420℃まで1時間で降温し、さらに30分保持した後、グラファイト製型枠上にガラス素地を流し出して板ガラス状とし、室温まで充分徐冷して厚さ約10mmのガラス板を得た。次いで、このガラス板を厚さが4mm程度になるまで光学研磨して、大きさ100mm×100mmのガラス成分組成分析および各種光学特性等の測定用サンプルとした。
【0051】
ガラスの成分組成分析としては、Fe、TiO、CeO、CoO、Se、CrおよびMnOについて行い、不純物等からくるppmオーダーの微量成分組成はNiOのみについて分析した。また3価鉄に対する2価鉄の比(Fe2+/Fe3+)については、板厚4mmで測定した分光透過率曲線において、FeO量を赤外域波長約1100nmでの透過率から求め、上述した分析値の全鉄量(Fe)とから計算した。
【0052】
光学特性は自記分光光度計U4000型(日立製作所製)にて評価し、(A光源にて、4mm厚みにおける)としては、日射透過率(%)と紫外線透過率(%)は国際標準化機構ISO13837のA法に準じて、可視光透過率(%)はJIS R3106−1998に準じて、さらに主波長(nm)はJIS Z8701−1995に準じてそれぞれ求めた。
【0053】
本発明の実施例(試料No.1〜13)を表1及び表2に、比較例(試料No.1、2)を表3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0054】
表から明らかなように、実施例1〜13の各試料は、各組成が適切な範囲であるため、いずれも厚さ4mmで日射透過率が30%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が30%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.50以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が1.25以下の光学特性を有するガラスである。従って、これら実施例のガラスは、優れた紫外線赤外線吸収性能と適度な透視性を併せ持つガラスである。
【0055】
これらに対して、比較例1、2の試料は、組成範囲が適当でないために、紫外線赤外線吸収性能と適度な透視性を併せ持つような、低日射透過率ガラスとして適用し得ない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、優れた紫外線吸収性能ならびに赤外線吸収性能(断熱性能)を有し、かつ適度な透視性を併せ持つ低日射透過率ガラスを得るものであり、人的や物的に優しい建築用、車両用のみならず、船舶用または航空機の窓ガラスや各種ガラス物品など広い分野に適用できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダ石灰シリカ系ガラスを基礎組成とし、着色成分として質量表示で、
Fe(3価鉄換算した全鉄) 0.70%〜1.70%、
FeO(2価鉄) 0.15%〜0.45%、
TiO 0%〜0.8%、
CoO 100ppm〜350ppm、
Se 0ppm〜60ppm、
Cr 100ppm〜700ppm、
及び
MnO 3ppm〜150ppmを含有し、
Fe2+/Fe3+(3価鉄に対する2価鉄の比) 0.20〜0.80であり、4mm厚みに換算したときのA光源を用いて測定した日射透過率が30%以下、可視光線透過率が5〜30%、紫外線透過率が30%以下で、かつ日射透過率に対する可視光線透過率の比(可視光線透過率/日射透過率)が0.50以上および日射透過率に対する紫外線透過率の比(紫外線透過率/日射透過率)が1.25以下であることを特徴とする低日射透過率ガラス。
【請求項2】
さらにCeOが2.0質量%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の低日射透過率ガラス。
【請求項3】
NiOが100ppm以下を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の低日射透過率ガラス。
【請求項4】
4mm厚みに換算したときのD65光源で測定した透過光の主波長が480〜580nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の低日射透過率ガラス。
【請求項5】
ソーダ石灰シリカ系ガラスの基礎組成が、質量%表示で、SiOが65〜80%、Alが0〜5%、MgOが0〜10%、CaOが5〜15%、MgO+CaOが5〜15%、NaOが10〜18%、KOが0〜5%、NaO+KOが10〜20%、SOが0.05〜0.50であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の低日射透過率ガラス。


【公開番号】特開2011−251882(P2011−251882A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127945(P2010−127945)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】