説明

低比重シリコーンゴム接着剤組成物

【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)珪素原子と結合する水素原子を0.009mol/g以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)平均粒子径が200μm以下、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、
(D)接着助剤:0.1〜20質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を必須成分とする低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【効果】本発明の低比重シリコーンゴム接着剤組成物によれば、金属、ガラス、有機樹脂などと良好な接着性を有し、硬化後は軽量で、かつ断熱性及びクッション性(衝撃吸収性)を有するという優れた性能を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気・電子部品や、自動車部品、更にはPCや携帯端末などの各種コンピュータ関連部品などに使用される接着性を有するシリコーンゴムスポンジを与える低比重シリコーンゴム接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱硬化型液状シリコーンゴム組成物は、成形性に優れ、成形後は耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性に優れるシリコーンゴムを与えることから、電気・電子、自動車部品、PC、携帯端末やゲーム機などのコンピュータ関連部品など種々の分野で使用されている。特に、シリコーンゴム接着剤は、これら精密部品同士を接着固定させるだけでなく、厳しい環境で使用されるこれら部品の保護剤としても重要な役割を担ってきた。一方でシリコーンゴムスポンジは、シリコーンゴムの耐熱性、耐候性、電気絶縁性等の優れた性能を持ちながら軽量化が可能であるばかりか、成形物中に気体を含むことからその体積収縮を利用した衝撃吸収材(クッション材)としての性能、更には気体を内包することによる低熱伝導性を利用した断熱あるいは蓄熱材料としての用途など、多方面での利用が可能である。
【0003】
このような材料としてシリコーンゴム発泡体があり、熱分解型発泡剤を添加する方法や硬化時に副生する水素ガスを成形する方法などがあるが、熱分解型発泡剤を添加する方法は、その分解ガスの毒性や臭いが問題点とされており、また硬化触媒に白金触媒を使用するものでは発泡剤による硬化阻害が問題とされていた。また、硬化時に副生する水素ガスを利用する方法においては、水素ガスの爆発性、未硬化物の保存時の取り扱いに注意を要するなどの問題があった。更にガスを発生する方法では、特にシリコーンゴムが液状の組成物である際に、均一にコントロールされた気泡を得るのが難しいという問題点があった。いずれの場合においても、発泡のコントロールが難しく、更にこれらに接着性を付与するというのは至難の業であった。
【0004】
このような点を改良する方法としては、ガラス、セラミックス等の無機物の中空粉体をゴム中に含有したものが知られている(特開昭63−11310号公報:特許文献1)が、比重が大きいため軽量化には十分に寄与せず、また無機材質であるがために熱伝導率の低下やクッション性なども不十分であった。
【0005】
特開平9−137063号公報(特許文献2)では、合成樹脂中空フィラーを含有する付加硬化型及び縮合硬化型の材料が紹介されているが、接着については全く記されていない。これとは別に、特開2003−226774号公報(特許文献3)では、水をオルガノポリシロキサンに含有させて、硬化後に水を揮発させることにより、スポンジを得る方法が開示されているが、水を配合するため取り扱いが非常に困難であるという問題点があった。また、特開2007−63388号公報(特許文献4)には、ガラス製中空微小粉末とアルコキシシリル基を含有するポリシロキサンを組み合わせる組成物が例示されているが、接着については全く記されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−11310号公報
【特許文献2】特開平9−137063号公報
【特許文献3】特開2003−226774号公報
【特許文献4】特開2007−63388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属や樹脂などの基材に対して良好な接着性を有し、かつ硬化後は比重が低く軽量で、更にクッション性や断熱性などの特徴を有する付加硬化型の低比重シリコーンゴム接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、有機樹脂製中空フィラーを含有したシリコーンゴム組成物に、更に適切な接着助剤を添加することにより、低比重でクッション性や断熱性を有する接着剤が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記低比重シリコーンゴム接着剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)珪素原子と結合する水素原子を0.009mol/g以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)平均粒子径が200μm以下、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、
(D)接着助剤:0.1〜20質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を必須成分とすることを特徴とする低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項2:
(C)成分の中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの各重合物並びにこれらのうち2種類以上の共重合物から選ばれる有機樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項3:
(C)成分の中空フィラーの真比重が0.2以下である請求項1又は2記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項4:
(B)成分の1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、下記式(1)
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。mは、4以上の整数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項5:
(A)成分及び(D)成分に含まれるアルケニル基の合計と(B)成分及び(D)成分に含まれる珪素原子結合水素原子の合計のモル比が、
Si−H/アルケニル基=2.0〜20の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項6:
(D)成分の接着助剤が、エポキシ基、芳香族基、珪素原子結合水素原子(Si−H基)、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シラノール基のいずれか2種以上を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項7:
25℃でのブルックフィールドタイプ粘度計(BH型、ローター7番、20rpm)による粘度が、200Pa・s以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
請求項8:
硬化物の比重が0.7以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低比重シリコーンゴム接着剤組成物によれば、金属、ガラス、有機樹脂などと良好な接着性を有し、硬化後は軽量で、かつ断熱性及びクッション性(衝撃吸収性)を有するという優れた性能を保持している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の低比重シリコーンゴム接着剤組成物は、
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)珪素原子と結合する水素原子を0.009mol/g以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)平均粒子径が200μm以下、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、
(D)接着助剤:0.1〜20質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を必須成分とするものである。
【0012】
(A)成分の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
【0013】
3aSiO(4-a)/2 (2)
(式中、R3は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0014】
ここで、上記R3で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0015】
この場合、R3のうち少なくとも2個、好ましくは2〜40個、より好ましくは2〜10個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、R3の有機基中0.001〜20モル%、特に0.01〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0016】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましいが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。分子量については特に限定されず、粘度の低い液状のものから、粘度の高い生ゴム状のものまで使用できるが、硬化してゴム状弾性体になるためには、25℃における粘度が、100mPa・s以上、通常100〜1,000,000mPa・s、特に500〜100,000mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計等により25℃における値を測定したものである。
【0017】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用するものであり、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜100個)、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜50個の珪素原子結合水素原子(即ち、Si−H基)を有することが必要であり、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれのものであってもよいが、好適には、下記平均組成式(3)で示されるものを用いることができる。
【0018】
bcSiO(4-b-c)/2 (3)
(式中、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、特にアルキル基である。またbは、0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
【0019】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。この(B)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンの25℃における粘度は、0.1〜1,000mPa・s、特に1〜500mPa・sであることが好ましい。また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中の珪素原子数(又は重合度)が2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものを使用することができる。
【0020】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの珪素原子結合水素原子(Si−H基)含有量は、0.009mol/g以上であることが必須であり、好ましくは0.010mol/g以上である。より好ましくは(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、次の構造式(1)
【0021】
【化2】

(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。mは、4以上の整数であり、好ましくは4〜200、より好ましくは4〜100の整数である。)
を有するものである。Si−H基含有量が、0.009mol/gより少ないと、十分な接着性が得られない。Si−H基含有量の上限には特に制限はないが、通常、0.020mol/g以下、好ましくは0.018mol/g以下、より好ましくは0.017mol/g以下であればよい。
【0022】
なお、(B)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であり、好ましくは0.3〜20質量部である。配合量が少なすぎると硬化(架橋)が不十分でゲル状の硬化物となり、十分なゴム弾性が得られず、多すぎると硬化物が脆くなったり、ゴム物性が低下したりしてしまう。
【0023】
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分中のSi−H基がモル比で2.0〜20、好ましくは2.5〜8となるように配合するとよい。このモル比が2.0未満では、十分な接着性が得られない場合があり、10を超えるとゴム物性が著しく低下してしまう場合がある。
【0024】
(C)成分の有機樹脂製中空フィラーは、硬化物内に気体部分を有し、かつ樹脂製であるため変形・収縮が容易な材料で、フェノールバルーン、アクリロニトリルバルーン、塩化ビニリデンバルーンなどいかなるものでも構わないが、特にゴム弾性を維持しながら、軽量化・断熱性・クッション性という点から、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの各重合物並びにこれらのうち2種類以上の共重合物から選ばれる有機樹脂製であるものが好ましい。
また、中空フィラーの強度を持たせるため等の理由で、これら有機樹脂製中空フィラーの表面に無機フィラーなどを付着させたものでもよい。
【0025】
但し、シリコーンゴム接着剤の十分な軽量化、熱伝導性の低下及びクッション性を得るには、中空フィラーの真比重が0.5以下、好ましくは0.01〜0.4、より好ましくは0.01〜0.2とすることが必要である。比重が0.01より小さいと、配合・取り扱いが難しいばかりか中空フィラーの耐圧強度が不十分で成形時に破壊してしまうおそれがある。また比重が0.5より大きいと、軽量化やクッション性が得られない。なお、ここでの真比重は、粒子密度測定法(イソプロピルアルコール中での体積より算出する)による値である。
【0026】
また、有機樹脂製中空フィラーの平均粒子径は200μm以下、好ましくは150μm以下である。200μmを超えると配合や成形時の圧力などで中空フィラーが破壊されてしまう場合がある。なお、平均粒子径の下限値としては、5μm、特に10μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置における累積重量平均値(D50)又はメジアン径として測定した値とすることができる。
【0027】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜40質量部、より好ましくは1.0〜30質量部である。0.1質量部未満では軽量化や熱伝導率の低下が不十分であり、また50質量部を超える量では成形、配合が難しいだけでなく、成形物もゴム弾性のない脆いものとなってしまう。
【0028】
(D)成分の接着助剤としては、通常付加硬化型シリコーンゴム組成物に使用できるものであればいかなるものでもかまわないが、特には、1分子中にエポキシ基、芳香族基、珪素原子結合水素原子(Si−H基)、アルコキシシリル基、アルケニル基、シラノール基のうちの2種以上を有する化合物、特には有機珪素化合物が好ましい。このようなものとしては、これら2種以上の官能基を有するシラン、珪素原子数が2〜30個、好ましくは4〜20個程度の直鎖状又は環状のシロキサン等の有機珪素化合物、特には上記官能性基(芳香族基を含む)のうち、アルコキシ基を必須に有し、他の官能性基の1種以上を有するオルガノアルコキシシランや、上記官能性基のうち、Si−H基を必須に含有し、他の官能性基の1種又は2種以上を含有するオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0029】
また、分子中にフェニレン基又はビフェニレン基を1〜4個、好ましくは1〜2個と、アルケニル基を1個以上、好ましくは2〜4個有し、珪素原子を有さない有機化合物、分子中に上記官能基を2個有するベンゼンジカルボン酸エステル、分子中に上記官能基を4個有するベンゼンテトラカルボン酸エステル等を挙げることができる。更には、これら化合物とSi−H官能基含有シロキサン化合物とが反応したものなどを挙げることができる。
【0030】
これらの接着助剤の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部程度とすることができる。
このような接着助剤の具体例として、次のような化合物を挙げることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
なお、Si−H基を1分子中に2個以上有し、更に他の官能基(特に、アルキル基以外の基、とりわけエポキシ基、芳香族基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シラノール基)を有するものは、(B)成分としてではなく、(D)成分としてカウントされる。但し、(D)成分としてSi−H官能基やアルケニル基を有する化合物が配合される場合、組成物全体としての、Si−H官能基とアルケニル基のモル比(即ち、(A)、(D)成分に含まれるアルケニル基の合計と、(B)、(D)成分に含まれるSi−H基の合計とのモル比[Si−H基/アルケニル基])は、2.0〜20の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.5〜10の範囲であり、更に好ましくは2.5〜8の範囲である。
【0036】
(E)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。
【0037】
なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)、(B)成分の合計質量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0038】
このような低比重シリコーンゴム接着剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、ヒュームドシリカ、沈殿シリカなどの補強性シリカ、石英粉、珪藻土、酸化チタン、炭酸カルシウムのような充填剤、補強剤となるシリコーン系のレジン、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、チクソ性付与剤等を配合することは任意とされる。
【0039】
また、このような低比重シリコーンゴム接着剤組成物の粘度は、液状であれば特に限定されないが、室温(25℃)で、ブルックフィールド式粘度計のBH型、ローター7番、20rpmの条件で、200Pa・s以下がポッティングやコーティングに好適である。より好ましくは10〜150Pa・sの範囲である。200Pa・sを超えると、電子部品の隙間などに流し込んで使用するポッティング材やコーティング材としては使用が困難である。10Pa・s未満では、硬化した接着剤が脆く、弱くなりすぎてしまう場合がある。
また、このような低比重シリコーンゴム接着剤組成物は、公知の方法により調製することができる。
【0040】
本発明の低比重シリコーンゴム接着剤組成物は、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルなどの金属、ガラスやセラミックス、PC,PBT,PET,ポリアミド、PPO,PPS,ポリイミド、ウレタン等の有機樹脂などに加熱硬化により接着が可能である。硬化方法も自由に選択が可能で、被着体に接着剤を流し込むポッティング、被着体上に塗布するコーティング、スクリーン印刷、被着体と共に金型内で成形する注入成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形など、被着体や接着剤粘度などに応じて適宜選択し得る。この際、シリコーンゴム接着剤組成物を硬化させる温度条件は、好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜160℃であるが、含有する有機樹脂製中空フィラーの軟化点より低いことが好ましい。硬化時間は、好ましくは1分〜12時間、より好ましくは1分〜3時間、更に好ましくは3分〜2時間である。また、接着を強固にする、揮発分を除去するなどの目的で2次キュアを実施してもよく、その場合、温度条件としては、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上230℃以下で、硬化時間は、好ましくは10分〜48時間、より好ましくは30分〜24時間である。
【0041】
なお、硬化物の比重は、0.7以下であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.6の範囲である。比重が、0.7を超えると、軽量化や断熱性、クッション性の効果が不十分で、逆に0.1未満の硬化物を得るのは困難である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%を示す。
【0043】
[実施例1]
両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300、ビニル価0.0089mol/100g)80質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された側鎖にビニル基を有するジメチルポリシロキサン(重合度180、ビニル価0.012mol/100g)20質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)5質量部、比重0.02、平均粒子径90μmの熱可塑性樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製、マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として下記式(1−1)で示される側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H基量;0.014mol/g)1.5質量部、接着助剤として下記式(1−2)で示されるオルガノシラン1.0質量部、下記式(1−3)で示されるシロキサン化合物2.0質量部、及び反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(1)とした。この組成物の25℃での粘度(BH型、ローター7番、20rpm)は、95Pa・sであった。このシリコーンゴム組成物(1)に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、120℃/10分の条件でプレスキュアし、2mmシートより比重、硬さを測定した結果を表1に記した。更に、PBT樹脂及びアルミニウムのテストピース上に材料を流し込んで、150℃×15分間オーブン内で放置後、接着性を確認した結果を同じく表1に記した。
なお、シートの比重は、水中置換法により測定し、硬さはJIS K 6249により測定した。
【0044】
【化7】

【0045】
[実施例2]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度250、ビニル価0.0094mol/100g)50質量部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された実施例1のジメチルポリシロキサン(重合度300、ビニル価0.0089mol/100g)50質量部、比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、アエロジル200)2質量部、比重0.13、平均粒子径100μmの表面に炭酸カルシウムがコーティングされた樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製、マイクロスフィアーMFL100CA)15質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として下記式(2−1)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H基量;0.016mol/g)2.0質量部、接着助剤として下記式(2−2)で示されるオルガノシラン1.0質量部、下記式(2−3)で示されるオルガノポリシロキサン1.5質量部及び反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(2)としたこの組成物の25℃での粘度(BH型、ローター7番、20rpm)は、59Pa・sであった。このシリコーンゴム組成物(2)に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、実施例1と同様に、比重、硬さ、及び接着試験を実施し、結果を表1に記した。
【0046】
【化8】

【0047】
[比較例1]
両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300、ビニル価0.0089mol/100g)80質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された側鎖にビニル基を有するジメチルポリシロキサン(重合度180、ビニル価0.012mol/100g)20質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)5質量部、比重0.02、平均粒子径90μmの熱可塑性樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製、マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として上記式(1−1)で示される側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン1.5質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(3)とした。この組成物の25℃での粘度(BH型、ローター7番、20rpm)は、118Pa・sであった。このシリコーンゴム組成物(3)に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、実施例1と同様に、比重、硬さ、及び接着試験を実施し、結果を表1に記した。
【0048】
[比較例2]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度250、ビニル価0.0094mol/100g)50質量部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された実施例1のジメチルポリシロキサン(重合度300、ビニル価0.0089mol/100g)50質量部、比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、アエロジル200)2質量部、比重0.13、平均粒子径100μmの表面に炭酸カルシウムがコーティングされた樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製、マイクロスフィアーMFL100CA)15質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として下記式(2−4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H基量;0.002mol/g)6.5質量部、接着助剤として上記式(2−2)で示されるオルガノシラン1.0質量部、上記式(2−3)で示されるオルガノポリシロキサン1.5質量部及び反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(4)とした。この組成物の25℃での粘度(BH型、ローター7番、20rpm)は、55Pa・sであった。このシリコーンゴム組成物(4)に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、実施例1と同様に、比重、硬さ、及び接着試験を実施し、結果を表1に記した。
【0049】
【化9】

【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)珪素原子と結合する水素原子を0.009mol/g以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)平均粒子径が200μm以下、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、
(D)接着助剤:0.1〜20質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を必須成分とすることを特徴とする低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項2】
(C)成分の中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの各重合物並びにこれらのうち2種類以上の共重合物から選ばれる有機樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項3】
(C)成分の中空フィラーの真比重が0.2以下である請求項1又は2記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項4】
(B)成分の1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、下記式(1)
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。mは、4以上の整数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項5】
(A)成分及び(D)成分に含まれるアルケニル基の合計と(B)成分及び(D)成分に含まれる珪素原子結合水素原子の合計のモル比が、
Si−H/アルケニル基=2.0〜20の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項6】
(D)成分の接着助剤が、エポキシ基、芳香族基、珪素原子結合水素原子(Si−H基)、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シラノール基のいずれか2種以上を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項7】
25℃でのブルックフィールドタイプ粘度計(BH型、ローター7番、20rpm)による粘度が、200Pa・s以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。
【請求項8】
硬化物の比重が0.7以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の低比重シリコーンゴム接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−227758(P2009−227758A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72960(P2008−72960)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】