説明

低減されたタックを有するヒートセットオフセット印刷インキとして配合されるインキ組成物

本発明は少なくとも1つの顔料、および200から270℃の範囲の沸点を有する少なくとも2つの溶剤の混合物を含む、低減されたタックを有するヒートセットオフセット印刷インキとして配合された印刷インキ組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さいタックを有するヒートセットオフセット印刷インキ組成物として配合された印刷インキ組成物に関する。好ましくは、印刷インキ組成物内のワニスは小さいタックを有し、印刷インキにも小さいタックを提供する。
【0002】
本発明はさらにヒートセットオフセット印刷プロセスに関し、このプロセスはヒートセットウエブオフセット(HSWO)印刷プロセスを含むが、これに限定される者ではない。このプロセスは得られる印刷基体のフルーティング(fluting)を顕著に低減するために、本明細書に記載された低減されたタックを有する印刷インキを使用する。
【0003】
本発明は、さらに本明細書に記載された印刷インキのヒートセットウエブオフセット印刷(HSWO)プロセスを包含するが、これには限定されないヒートセットオフセット印刷プロセスにおける使用に関し、低減されたフルーティングの印刷された基体を達成する。
【0004】
「低減されたフルーティング、非フルーティングまたは顕著に低減されたフルーティング」の用語は、本発明においては同義的に使用され、印刷された、紙を包含するがそれには限定されない基体のAFT値の低下として理解される。該AFT値は少なくとも30%、標準的なヒートセットオフセット印刷インキで印刷された紙と比較して小さい。AFT値の決定のために適用された分析手法と装置は以下に記載される。好ましくは、印刷された基体のAFT値は0.05%未満であり、より好ましくは0.03%未満である。表現「ヒートセットウエブオフセット印刷」は、本発明の文脈においては水性の湿し水を使用した印刷工程をいう。
【0005】
表現「ヒートセット(ウエブ)オフセット印刷」は、本発明の文脈においては水性の湿し水を使用した印刷工程をいう。
【0006】
本発明における用語「低減されたタック」は、たとえばEP1602696のような従来技術からの公知のヒートセットオフセット印刷として配合された印刷インキのタックと比較して、少なくとも10%、好ましくは15%以上、より好ましくは20%低いことをいう。
【0007】
本明細書に記載される印刷インキは特に、特定のポロシティを有する表面を有する基体上に印刷するために好適である。かかる基体としては紙が包含されるがこれに限定されない。好ましい実施態様によれば、水銀ポロシメトリー法によって決定される、基体の表面のポロシティは0.07ml/g以下である基体、および基体のGurley−Hill空気浸透値が7000s/100ml以上であるような表面のポロシティを有する基体が、特に適した基体である。
【0008】
理論により拘束されるものではないが、ヒートセット印刷プロセス中に、印刷インキは通常高温オーブン中で乾燥される。印刷プロセスの乾燥プロセスの初期段階では、コート紙に含まれていた水分は、非イメージ化領域から急速に蒸発し、この非イメージ化領域内においてコート紙の横目方向(cross direction)において著しい収縮をもたらす。これに反して、コート紙上の印刷インキ層が伝熱と水分蒸発への障害の役割をするため、イメージが作られた領域の真下に位置したコート紙の水分は比較的ゆっくり蒸発し、イメージが作られた領域内においてはコート紙の横目方向での収縮をほとんど与えない。その結果、コート紙の非イメージ化領域は隣接するイメージ化領域を、乾燥工程の間において横目方向に圧縮し、イメージ化領域の座屈に導く。
【0009】
この現象は「フルーティング」として知られている。またそれがヒートセットオフセット印刷、特にはヒートセットウエブオフセット印刷の間に現われると、顧客苦情および様々な欠陥、たとえば波打ちを引き起こす。
【0010】
その問題はとりわけ紙に関連し、ペーパーウェブのバックボーンをなす木繊維の構造により生じる。木は異なる繊維の不均質な化合物である。これらの構造は化学結合により安定化される。それらの繊維内の水分子がスペーサーとして作用し、繊維寸法を増大させ、全体の紙ウェブの寸法に影響を与える。印刷プロセス中に、繊維はより多くの水分を吸収して膨潤する。熱風浮揚乾燥機では、印刷インキに加えてさらに紙も乾燥される。繊維間/繊維内の水分子が蒸発され、繊維が縮み、互いに緊密に接触することを可能にする。それにより、紙ウェブは縮む。新しい化学結合がこれらの繊維間で形成される。したがって、紙の寸法は変化する。印刷プロセスの後、紙ウエブ内に異なる水分の領域(つまりイメージが作られた領域と、イメージが作られなかった領域の水含有量)があるので、ウエブの寸法のこの変化はいくつかの領域において他の隣接した領域より一層厳しい。異なる水分を有するこれらの領域における繊維の異なる膨潤および収縮程度により、紙の上にウエーブが形成される。新しく形成された化学結合は非常に強く、再湿潤後にも完全には破壊されない。
【0011】
言いかえれば、本明細書において用語「フルーティング」は、ヒートセット乾燥機を通った後に印刷された紙に形成される波状のクリーズ(crease)、ウエーブ(wave)またはバンド(band)として定義される。先に言及されたように、ウェブが流れる方向にしわが現われ、それは大体永久的であり、製品が配達された後数ヶ月は緩和されない。
【0012】
多くの努力がヒートセット印刷の間のフルーティングの問題を克服するためになされた。
【0013】
先行技術によれば、新しい紙製品が、Jpn Tappi J.,(2003)vol.57,no.1,2003年1月、pp92−97で示唆された。ここではウエブオフセット印刷でフルーティングを示さない紙が記載されている(王子製紙によって発表された)。ウエブオフセット印刷の後に乾燥することに起因する収縮力が最小限にされることが述べられた。しかしながら、そのような紙の使用はより高いコストを引き起こす。また、いくつかの用途では、印刷業者はプリンタと同様に印刷インキの選択でも制限される。
【0014】
さらに、フルーティングを回避できるコーティングが、従来技術のTappi J.,(2000)vol.83,no.4,Apr.2000において示唆される。フルーティングを生ずる傾向は、コーティング配合物により大きな程度で決定され、より少ない吸収性のコーティングがフルーティングを減少させる。該紙の上で使用されることが適当である特定のコーティングおよび印刷インキに関する簡明な示唆は記載されていない。
【0015】
先行技術によれば、異なる理論に基づいた様々な概念がフルーティング問題を回避するために示唆されたことに留意すべきである。
【0016】
2002年の第69回の、Pulp and paper research conference,Tokyo,Japan,17−18 2002年6月、および関連する報告(P−06,pp166−171[Tokyo,Japan:Japan TAPPI,2002,186pp])において、135℃の範囲の乾燥温度は、オフセット印刷プロセスの間のフルーティングを防ぐことが記載されている。印刷プロセスの初期段階での乾燥条件は、フルーティングの予防において重要であると説明される。この概念は合理的な結果に結びつかない。
【0017】
この技術から、当業者は、フルーティング問題、特にはヒートセット印刷工程で生じるフルーティング問題を解決するために存在する概念について混乱する。
【0018】
フルーティングのすべての緩和のためには、市場に出て後の再加湿がある。しかし、それらは再現性のある結果を与えない。
【0019】
J.Pulp Pap.Sci,(Sept.1993)Vol.19,no.5,J214−219によれば、理論的および実験的分析の結果が提供され、乾燥機の設計および操作を変化させることによるフルーティングの緩和が示唆されている。
【0020】
米国特許6,058,844は、HSWO印刷機上でサーモセット印刷インキで両側が印刷された軽量コート紙の印刷されたウェブに生じるフルーティングまたはしわを減少させる方法および装置に関する。問題は、印刷されたウェブが印刷機の印刷インキ乾燥およびヒートセットオーブンを出て、ウエブ冷却チルロールの上を通過する際に、ウエブをその幅方向に広げることにより解決される。それにより印刷されたウエブは、それが冷却され、印刷インキが永久的に硬化するまで水平で滑らかな状態の中に保持される。冷える中および冷却前にウエブを広げることは、平坦な状態で印刷インキを硬化することを許容する。なぜならウエブは熱硬化の間平坦に保持され、フルーティングが生じないからである。該方法と装置は、高速で、軽量グレードの紙でのプレスの操作を容易にすると記述される。しかし、そのような装置で実験しても示された利点が得られない。
【0021】
さらに、WO 2004/003293はいくつかの特徴を有する紙を開示する。これは最大の特徴として親油性表面のコーティングを有し、これがこの発明の要点である。
この出願中で言及される好適な表面特性を達成するために、印刷される紙の表面に、SMA添加剤のような親油性物質を使用することが必須である(Raisaprint D100またはRaisaprint D200、WO 2004/003293の5ページ参照)。それらは、表面の化学的性質をコントロールし、かつ表面の親油性特徴を達成するために使用される。これらの物質を有するコーティング紙は高価であり、したがって好ましくない。
【0022】
米国特許5,713,990および米国特許5,875,720は、印刷インキビヒクル中に溶剤として高沸点油を含む印刷インキ組成物を開示する。さらに、米国6,206,960には溶剤としてのボディド(bodied)きり油が開示され、これは印刷インキ組成物中に存在し、350℃より高い温度でのみ分解する。米国特許6,206,960に記載された印刷プロセス中の示唆された乾燥温度は最大149℃である。米国特許6,709,503は、印刷インキ組成物中の溶剤としての改質亜麻仁油を開示する。この溶剤は350℃より高い温度でのみ分解する。印刷プロセス中の乾燥温度は高いと説明される。米国特許5,427,615は高い引火点を有し、350℃以上の温度でのみ分解する脂肪酸エステル溶剤を紹介する。
【0023】
米国特許4,357,164は、低沸点溶剤を含む印刷インキを開示する。しかしながら、米国特許4,357,164は、湿し水を使用しない乾式リソグラフィック印刷プロセスに関し、フルーティングの問題を全く生じさせない。
【0024】
WO2005/118728は、フルーティング問題を回避できる印刷インキ配合物を示す。しかしながら、この文献に記載された発明は、大きな「タック」の欠点を有する。
【0025】
タックも印刷インキ組成物の粘着性と呼ぶことができる。印刷インキがあまりにも粘着性、すなわち大きなタックを持っている場合、印刷機のローラは紙ウエブから一部分を取る場合がある。この採取は明らかに平滑度および恐らく印刷の光沢を害し、ブランケット上への繊維の堆積に結局帰着する。それは印字品質に顕著に影響を与え、ブランケットの洗浄を必要とする。最も厳しい場合では、あまりにも大きなタックはオフセットブランケットの表面上に紙ウエブを引っぱる。その結果、印刷機は停止され、清浄にされなければならない。
【0026】
タックを低減する1つの方法は印刷インキにさらに溶剤を加えることである。しかしながら、溶剤は印刷インキのレオロジーに影響し、他の問題を生じることがある。これらの問題は例えばミスチング、高いドットゲイン、および過剰な乳化があげられる。通常、溶剤は印刷インキの乾燥特性に否定的な影響を及ぼすことがある。上に述べられるように、フルーティングを回避するために適したヒートセットオフセット印刷インキとしての印刷インキ配合物において乾燥特性は非常に重要な特性である。一方ではフルーティングを回避し、他方では低減されたタックを有する印刷インキ組成物を設計するのはしたがって非常に難しい。
【0027】
要約すれば、フルーティング問題を回避し、同時に印刷品質を低下させることなく連続的に印刷機を作動させることができる十分に低いタックを有する、ヒートセットオフセット印刷インキとしての印刷インキ配合物への強い要求が存在する。
【0028】
本発明の目的は、特許請求の範囲に記載される発明によって上記の課題を解決することである。
【0029】
本発明は、少なくとも1つの顔料、および200から270℃の範囲内の沸点を有する少なくとも2つの溶剤の混合物を含む、低減されたタックを有するヒートセットオフセット印刷インキとして配合された印刷インキ組成物に関する。好ましくは、少なくとも1つの溶剤は210から230℃の範囲の沸点を有し、さらなる溶剤は240から270℃の範囲の沸点を有する。好ましい実施態様によれば、本発明の印刷インキ組成物は、異なる芳香族含量の少なくとも2つの溶剤の混合物を含む。
【0030】
本発明の印刷インキ組成物には、顔料は顔料ペーストの形で加えられる。印刷インキ組成物は、1から60重量%、好ましくは25%から50重量%、最も好ましくは30から45重量%で顔料ペーストを含む。
【0031】
好ましい実施態様では、本発明の印刷インキ組成物は、溶剤の重量に基づいて1重量%の芳香族含量を有している少なくとも1つの溶剤と、溶剤の重量に基づいて12重量%の芳香族含量を有している少なくとも1つの第二の溶剤を含む。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの溶剤はミネラルオイル溶剤であり、印刷インキ組成物の重量に基づいて少なくとも1%の量で存在する。さらなる好適な量は、少なくとも3重量%、5重量%、またたとえば10重量%であり、恐らく30重量%までである。
【0033】
最も好ましくは、印刷インキ組成物中に存在する溶剤のすべてがミネラルオイルである。
【0034】
本発明の印刷インキ組成物は、使用する準備ができた、使用準備済み(ready−to−use)の印刷インキ組成物の重量に基づいて15から30重量%の量でワニスを含むことができる。またワニスは少なくとも1つの植物油を含むことができる。該植物油は、限定されるものではないが、例えばスタンド油である。
【0035】
本発明の印刷インキ組成物は少なくとも1つの自己構造化樹脂(self−structured resin)を含むワニスを含むことができる。該自己構造化樹脂は、限定されないがたとえば、30Pas(35%、6/9ARブレンド中)の粘度と良好な相溶性を有する自己構造化ロジン樹脂である。ワニスは、さらに40Pas(55%、6/9中)の粘度と、非常によい相容性(曇り点:110℃、6/9AF中)を備えた炭化水素樹脂を含むことができる。
【0036】
本発明のワニスは、好ましくは主樹脂と共−樹脂の混合物を含む。
【0037】
好ましくは、主樹脂は30Pas(6/9AR ブレンド*中、35%)の粘度、および良好な相容性(曇り点120℃:6/9AF ニュー*中)を備えた自己構造化フェノール変性ロジン樹脂である。本発明の好ましい自己構造化したフェノール変性ロジン樹脂の例は、例えばCray Valiey Tergraf UZ87、Hexion Setaprint P7950、Arez PM1235である。
【0038】
好ましくは、共−樹脂は、40Pas(55%、6/9*中)の粘度と、非常に良好な相容性(曇り点:110℃、6/9AF*中)を備えた炭化水素樹脂である。本発明による好ましい炭化水素樹脂用の例は、例えばNeville Nevprint LGである。
【0039】
本発明のワニスは、本発明の非フルーティングヒートセット印刷インキ組成物内に、15%から50%の量で存在する。本発明のワニスが印刷インキ組成物中のただ一つのワニスである場合、それは印刷インキ組成物中に15重量%から30重量%の量で存在することが好ましい。
【0040】
本発明は、0.05%未満のAFT値を有する、印刷された紙を含む得られた印刷された基体を達成するための、ヒートセットオフセット印刷プロセスにおける、本明細書で定義されるような印刷インキ組成物の使用に関する。
【0041】
AFT値は、AFTメータにより標準状態で27cm×5cmの寸法の印刷された基体片で測定される。
【0042】
本発明は、上記で定義された印刷インキ組成物を基体に適用し、0.05%未満の印刷された基体のAFT値を達成することを含む、ヒートセットオフセット印刷プロセスに関する。
【0043】
本明細書に記載されたプロセスによれば、ヒートセット乾燥機の最後のゾーンでのウェブ温度は85℃から120℃の間にある。
【0044】
低沸点溶剤の存在は、ヒートセット印刷プロセス中の乾燥温度を、フルーティングを回避するのに十分に低い温度にすることを許容する。ヒートセット乾燥機の最後のゾーンでの好ましいウェブ温度は、85℃から120℃の間、より好ましくは90℃と110℃の間、および最も好ましくは95℃と105℃の間である。適した乾燥温度は、例えば120℃、110℃、100℃、95℃、90℃または85℃である。
【0045】
本発明の組成物において使用可能な低沸点溶剤の好ましい量は1重量%よりも多く(使用準備済みの印刷インキ組成物に基づいて)、より好ましくは5重量%よりも多く(使用準備済みの印刷インキ組成物に基づいて)、特には10から40重量%(使用準備済みの印刷インキ組成物に基づいて)である。
【0046】
ISO 12634:1996(E)によれば、タックは以下の通り定義される:
「ローラ表面上の印刷インキまたはビヒクルフィルムの分離によって引き起こされた、所定の幅の2つの回転するローラ間の復元力」
【0047】
タック測定のためのASTM基準における1つの定義は以下のD 4361−97である:「タック−2つの急速に離れる表面間の印刷インキまたはビヒクルの薄い流体フィルムを分離するのに必要な力の関数;それは流体の内部凝集を示すレオロジー的なパラメータである。」
【0048】
印刷インキのタックは、その高速転写特性を制御する。さらに、それは紙のピッキングと、多色刷りにおけるウェットトラッピングを予測する能力に関して有意である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、AFT測定の原理を示す図である。
【図2】図2は、AFT測定用の装置を示す図である。
【図3】図3は、3本ローラ−タックメーターの概略図である。
【0050】
公知の機器は、駆動ローラの印刷インキフィルム上に置かれるメジャーリングローラーに加えられる力を決定する。
【0051】
図3は、3本ローラ−タックメーターの概略図を示す。
【0052】
タックメーターの異なるメーカーは、自身の独自のスケールを確立している。この発明では、タック−o−スコープ(Tack−o−scope(登録商標)、Testprint BV、オランダ)がタックを測定するために使用される。
【0053】
タック測定機器の操作原理:
印刷インキの定義された重量が、3本ローラシステムに置かれる。ローラシステムは、中央の金属製の駆動ローラ、印刷インキ分配ローラおよびタック測定用の測定ローラーから成る。外側の2つのローラはエラストマー層で覆われている。速度調節および温度安定化の後、測定ローラ上の軸方向力が決定される。この軸方向力はタックの表示として使用される。軸方向力が大きいほど、タックの値は大きくなる。
【0054】
本発明で使用されるミネラルオイル溶剤は、それらの沸点範囲、それらの芳香族含量およびそれらのアニリン点によって特徴づけられる。沸点または蒸留範囲[℃]は、DIN ISO 3405またはASTM D86による蒸留によって決定される。初期および最終沸点は沸点範囲を決定する。アニリン点[℃]は、溶剤の溶解力を表し、DIN ISO 2977またはASTM D 611によって測定される。芳香族含量[重量%]はASTM D 2140またはEC−A−A07(UV)によって決定される。炭化水素タイプ分析はDIN 51378によって行われ、芳香族(Car)、ナフテン系物質(Cn)およびパラフィン系物質(Cp)の含量を決定する[%で]。
【0055】
本発明で使用される溶剤タイプ:
【0056】
【表1】

【0057】
曇り点温度は、液体(固形物と溶剤の溶液)が曇り始める温度として定義される特性値である。樹脂とワニスの溶解度または相容性は、Chemotronic(登録商標)装置(Novomatics GmbH/ドイツ)を使用して、曇り点測定によって決定される。
【0058】
印刷インキ製造用の天然または合成樹脂の曇り点を測定する標準手順は、以下のとおりである:2グラムの樹脂および18グラムのテスト油が、磁気撹拌機棒が挿入されたガラス試験管へ秤量される。制御された加熱と撹拌条件において、試料はテスト油に完全に溶かされる。その後、曇り点温度に到達するまで、この透明で均一な溶液は冷却される。テストの終わりに、測定値は統合データプリンタによって試験報告書に印刷される。CP=曇り点(より小さいほど、より可溶性である)。
【0059】
第一のミネラルオイルの芳香族含量は好ましくは1%である。また、第2のミネラルオイルの芳香族含量は好ましくは12%である。
【0060】
記載されたワニスの中に存在する両方のミネラルオイルの混合物は、重量%で好ましくは6%から10%の芳香族含量、より好ましくは7%から9%の芳香族含量、最も好ましくは8%の芳香族含量を有している。
【0061】
ワニスはさらに野菜油、好ましくはスタンド油を含む。
【0062】
ワニスは、好ましくは主樹脂および共−樹脂の混合物を含む。低タックワニスは、通常低可溶性樹脂からできている。しかしながら、本発明のワニスは高度に可溶の自己構造化樹脂を含む。
【0063】
好ましくは主樹脂は、30Pasの粘度(6/9 AR ブレンド*中、35%)と、良好な相溶性(曇り点:120℃、6/9 AF ニュー*中)の自己構造化フェノール変性ロジン樹脂である。さらに自己構造化樹脂は非ニュートニアン流動挙動を示す。当業者は、p−Ostwald法を使用して、回転粘度計での粘性測定によって樹脂の構造を決定できる。標準のニュートニアン樹脂は、0.9から1.0のp−Ostwald指数を有している。自己構造化樹脂は、0.6から0.8のp−Ostwald指数を有している。本発明の好ましい自己構造化フェノール変性ロジン樹脂の例は、たとえばCray Valley Tergraf UZ87、Hexion Setaprint P7950、Arez PM1235である。
【0064】
好ましくは、共−樹脂は、40Pasの粘度(6/9*中、55%)と、非常に良好な相溶性(曇り点:110℃、6/9 AF*中)を有する。本発明の好ましい炭化水素樹脂用の例は、例えばNeville Nevprint LGまたはResinall R260である。
【0065】
ワニスは、本明細書に記載された非フルーティングヒートセット印刷インキ組成物内に、印刷インキ組成物の重量に基づいて、15%から50%、好ましくは15から30重量%で存在する。
【0066】
製造例(ワニス「7131」):
オフセット技術の中で使用される樹脂は、ミネラルオイル留出物溶液中の樹脂の溶解度(曇り点)および粘度によって特徴づけられる。これらの溶液は、Thermotronic(登録商標)(Novomatics GmbH/ドイツ)ワニスミキサ中で調製できる。樹脂タイプによって、混合物は樹脂溶解度(Testoils、例えば:DOW/Haltermann PKWF 6/9、6/9AF、6/9AFニュー、6/9AR、6/9AR ブレンド)に調節された芳香族含量を備えたミネラルオイル留出物の45重量%から65重量%まで、および35重量%から55重量%までの固形樹脂(hard resin)を含んで作られる。樹脂溶液粘度は、23℃でコーン(25mmの直径)アンドプレートを使用して、回転粘度計によって決定される。コーンとプレートの間のギャップは0.05mmでなければならない。粘度は、25s−1の煎断速度で測定される。
【0067】
ワニスは、240から270℃の範囲の低い沸点範囲のミネラルオイルを含む(1つの部分は15%の芳香族含量であり、他の部分は1%の芳香族含量であり;混合物は8%の最終芳香族の含量を得るように使用される)。それは野菜のスタンド油を含む。主樹脂は、30Pas(6/9 AR ブレンド*の中の35%)の粘度および良好な相容性(曇り点:120℃(6/9AF ニュー*中)を有する自己構造化フェノール変性ロジン樹脂である。共−樹脂は、40Pas(6/9*中、55%)および非常によい相容性(曇り点:110℃(6/9AF*中)の粘度を有する炭化水素樹脂である。樹脂は溶剤と添加剤で薄められ、180℃に加熱され、30分間撹拌される。ワニスのレオロジーおよびタックがチェックされた後、ワニスは130℃に冷却され排出された。
【0068】
次の表は、例示目的のためのワニスの成分の概略を示す:
【0069】
【表2】

【0070】
製造例2:
「1/3ワニス」の記載:
以下のワニスは例示目的のために示され、新しいワニスではない。「1/3ワニス」は、非常に低い沸点範囲を有するミネラルオイル:210から230℃(芳香族含量〈1%)、植物油(ウッドオイル:wood oil)および可塑剤(ジ−酸−ジ−エステル)を含む。ワニス中の主樹脂は低い粘度(30Pas; 6/9AR ブレンド*中、45%)および良好な相容性(曇り点:135℃;6/9AF*中、10%)を有している。共−樹脂は中程度の粘度(35Pas;6/9 AR*中、40%)、中程度の相容性(曇り点:115℃;6/9*中、10%)およびゲル反応性を有している。ワニスはアルミニウムキレート錯体でゲル化される。
【0071】
樹脂は溶剤と添加剤で薄められ、160℃に加熱され、30分間撹拌される。その後、ゲル化剤(溶剤中3.8%希釈)がさらに加えられ、30分間撹拌される。ワニスのレオロジーおよびタックがチェックされた後、ワニスは130℃に冷却され排出された。
【0072】
次の表は、例示目的のためのワニスの成分の概略を示す:
【0073】
【表3】

【0074】
実施例1:
シリーズ14000Dの印刷インキはワニス7131に基づく。
印刷インキ組成物は、顔料ペースト(顔料レベル30%)で作られた。低沸点範囲(沸点(bp)=210−230℃、芳香族含量(Car)〈1%、アニリン点(AP)=84℃)のミネラルオイル溶剤が、改善された乾燥のために選ばれた。中程度沸点範囲および良好な溶解度(bp=240−270℃、Car=12%、AP=72℃)のミネラルオイル溶剤が、改善されたローラ安定性のために選ばれた。高度な顔料レベルは、印刷機上の薄い印刷インキフィルムを許容し、それは乾燥をスピードアップする。PEとPTFEワックスペーストが、紙シートの改善された摩擦耐性および良好なスリップのために加えられた。
【0075】
印刷インキシリーズ14000Dの組成:
【0076】
【表4】


印刷インキの成分は最大60℃の温度で溶解装置中で混合された。
【0077】
実施例2:
非フルーティングヒートセット印刷インキ組成物
シリーズ14000Tの印刷インキは、ワニス7131に基づく。印刷インキ組成物は顔料ペースト(顔料レベル30%)で作られた。中程度の沸点範囲(bp=240−270℃)のミネラルオイル溶剤だけが、改善されたローラー安定性およびより小さいタックのために選ばれた。シアンにおいては、より高い芳香族含量のミネラルオイル溶剤が、より良好な溶解性のために使用された。高度な顔料レベルは、印刷機上の薄い印刷インキフィルムを許容し、それは乾燥をスピードアップする。PEとPTFEワックスペーストが、紙シートの改善された摩擦耐性および良好なスリップのために使用された。
【0078】
印刷インキシリーズ14000Tの組成:
【0079】
【表5】


印刷インキの成分は最大60℃の温度で溶解装置中で混合された。
【0080】
実施例3:
非フルーティングヒートセット印刷インキ組成物
シリーズ15000は、ワニス7131および「4/7ワニス」に基づく。印刷インキ組成物は、顔料ペースト(顔料レベル30%)で作られた。低沸点範囲(bp=210−230℃)のミネラルオイル溶剤は、改善された乾燥性のために選ばれた。高い沸点範囲(bp=280−310℃、Car=12%、AP=82℃)のミネラルオイル溶剤が、改善されたローラ安定性のために選ばれた。黄色は最後に印刷されるので、中程度の沸点範囲の溶剤が使用できる(bp=240−270℃)。非常に高い顔料レベルは、印刷機上の薄い印刷インキフィルムを許可し、これは印刷インキの乾燥をスピードアップする。多量のPTFEワックスペーストが、紙シートの改善された摩擦耐性および良好なスリップのために加えられた。
【0081】
印刷インキシリーズ15000の組成:
【0082】
【表6】


印刷インキの成分は最大60℃の温度で溶解装置中で混合された。
【0083】
実施例4:
非フルーティングヒートセット印刷インキ組成
シリーズ16000はワニス7131および「1/3ワニス」に基づく。印刷インキ組成物は、顔料ペースト(顔料レベル30%)で作られた。低沸点範囲(bp=210−230℃)のミネラルオイル溶剤が、改善された乾燥のために選ばれた。さらに、中程度の沸点範囲(bp=240−270℃)のミネラルオイル溶剤が、改善されたローラー安定性のために加えられた。増量剤ペーストが印刷インキの固形分を増加させ、また、紙の上の印刷インキに残る固形分を改善するために使用された非常に高い顔料レベルは、印刷機上の薄い印刷インキフィルムを許可し、これは印刷インキの乾燥をスピードアップする。少量のPTFEワックスペーストが、紙シートの改善された摩擦耐性および良好なスリップのために使用された。
【0084】
印刷インキシリーズ16000の組成:
【0085】
【表7】


印刷インキの成分は最大60℃の温度で溶解装置中で混合された。
【0086】
AFT値の決定のための分析方法
前述のワニス、印刷インキ組成物および記載されたプロセスは、標準的なヒートセットオフセット印刷インキで印刷された紙と比較された時、著しく少ないフルーティングを示す印刷された紙を得るために適している。非フルーティングヒートセットオフセット印刷インキ組成物、ワニスおよびそれぞれのプロセスは、以下に記載される分析方法により測定されたときに、フルーティング現象を少なくとも30%低減することができる。
【0087】
図1は、AFT測定の原理を例証する。図2は、AFT測定用の装置を示す。
【0088】
図2の中で示されるようなAFT装置が、AFT装置のクランプ内へ、長さと幅を有する印刷された基体の試料を挿入し、フルーティングによって引き起こされるシャドーパターンをローアングル光の中で視覚的に観察することにより使用される。紙は全く水平になるまで、すなわちフルーティングによって引き起こされたシャドーパターンが消滅するまで引っ張られる。引っ張りによる試料の伸びが測定され、長さB−長さAとされる。AFT値は250mmで割られたmm単位での伸びを%で示したものである。250mmは引っ張り方向におけるクランプ間の初期のサンプル長さである。この方法のために、下記のパラメータがセットされた。
【0089】
AFT測定のための試料調製:
印刷された紙は、HSWO印刷により得られた。
フルーティングは両側に印刷されたグリーン領域上で測定された。印刷されたグリーン領域において、黄色光学濃度は、1.2であり、シアン光学濃度は1.5であった。
印刷されたグリーン領域の寸法は、20cm×20cm(MD×CD)であった。印刷された領域は、印刷されていない白い紙の部分により囲まれた。
27cm×5cm(CD×MD)の試料が、印刷されたグリーン領域から切り取られた。
MD=機械方向、CD=機械方向との直交方法
【0090】
商業用のヒートセットオフセット印刷された紙の典型的なAFT値は0.07−0.11%である(比較例を参照)。AFT値が0.05%かより小さい場合、試料は非フルーティングと考えられる。測定は、23℃および相対湿度50%で行われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの顔料、および200から270℃の範囲の沸点を有する少なくとも2つの溶剤の混合物を含む、低減されたタックを有するヒートセットオフセット印刷インキとして配合された印刷インキ組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの溶剤が210から230℃の範囲の沸点を有する、請求項1記載の印刷インキ組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの溶剤が240から270℃の範囲の沸点を有する、請求項1または2記載の印刷インキ組成物。
【請求項4】
該少なくとも2つの溶剤の混合物が、異なる芳香族含量を有する複数の溶剤を含む、請求項1から3のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項5】
顔料が顔料ペーストの形態で加えられる、請求項1から4のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの溶剤が、溶剤に基づいて1重量%の芳香族含量を有し、少なくとも第二の溶剤が溶剤に基づいて12重量%の芳香族含量を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの溶剤がミネラルオイル溶剤である、請求項1から6のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項8】
溶剤の混合物が印刷インキ組成物の少なくとも1重量%の量で存在する、請求項1から7のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項9】
溶剤の混合物が印刷インキ組成物の5重量%から40重量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項10】
印刷インキ組成物中に存在する全ての溶剤がミネラルオイル溶剤である、請求項1から9のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項11】
使用準備済みの印刷インキ組成物に基づいて15から30重量%の量でワニスを含む、請求項1から10のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項12】
該ワニスが少なくとも1つの野菜油を含む、請求項10記載の印刷インキ組成物。
【請求項13】
該植物油はスタンド油を含む、請求項11記載の印刷インキ組成物。
【請求項14】
該ワニスが少なくとも1つの自己構造化樹脂を含む、請求項10から12のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項15】
該ワニスが少なくとも1つの、30Pas(6/9ARブレンド中、35%)の粘度と良好な相溶性(6/9ARニュー中、曇り点120℃)を有する自己構造化ロジン樹脂を含む、請求項10から13のいずれか1項記載の印刷インキ組成物。
【請求項16】
該ワニスがさらに、40Pas(6/9中55%)の粘度と非常に良好な相溶性(6/9AF中、曇り点110℃)を有する炭化水素樹脂を含む、請求項14記載の印刷インキ組成物。
【請求項17】
得られる印刷された基体のAFT値の0.05%未満を達成するための、ヒートセットオフセット印刷プロセスにおける、請求項1から16のいずれか1項記載の1つまたは複数の印刷インキ組成物の使用。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項記載の1つまたは複数の印刷インキ組成物を基体に適用することを含むヒートセットオフセット印刷プロセスであって、該基体が水銀ポロシティ法により測定した時に0.07ml/g未満である表面ポロシティを有する基体、またはGurley−Hill空気透過値が7000s/100ml以上の表面ポロシティを有する基体から選択される、印刷プロセス。
【請求項19】
印刷された基体のAFT値の0.05%未満を達成するための、請求項19記載のプロセス。
【請求項20】
ヒートセット乾燥機の最終ゾーンのウエブ温度が85℃から120℃の間である、請求項18または19記載のプロセス。
【請求項21】
コーティングされた基体にヒートセットオフセット印刷インキを適用し、それにより印刷された基体のAFT値の0.05%未満を達成する、ヒートセットオフセット印刷された基体のフルーティングを低減する方法。
【請求項22】
該基体が水銀ポロシティ法により測定した時に0.07ml/g未満である表面ポロシティを有する基体、またはGurley−Hill空気透過値が7000s/100ml以上の表面ポロシティを有する基体から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
コーティングされた基体に、低沸点溶剤を含むヒートセットオフセット印刷インキを適用することを含む、ヒートセットオフセット印刷プロセスにおけるヒートセット乾燥機の最終ゾーンにおけるウエブ温度を低減する方法。
【請求項24】
該基体が水銀ポロシティ法により測定した時に0.07ml/g未満であるポロシティを有する基体、またはGurley−Hill空気透過値が7000s/100ml以上のポロシティを有する基体から選択される、請求項23記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−525129(P2010−525129A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504716(P2010−504716)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055119
【国際公開番号】WO2008/132190
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(596024024)サン・ケミカル・コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】