説明

低温液体のポリチオエーテルポリマー

【課題】ポリチオエーテルポリマー、ポリチオエーテルポリマーの硬化性組成物、ポリチオエーテルポリマーを作製するプロセス、およびシーラントにおけるポリチオエーテルポリマーの使用を提供すること。
【解決手段】ポリチオエーテルポリマーおよび硬化性組成物が、20℃以下の温度で液体である。本発明は、(1)1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物とポリチオールを反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程、ここで、ポリチオールは、第2の基と優先的に反応する工程;(2)第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをモノエポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程;そして(3)第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをポリビニル化合物と反応させる工程、によって形成されるポリチオエーテルポリマーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ポリチオエーテルポリマー、ポリチオエーテルポリマーの硬化性組成物、ポリチオエーテルポリマーを製造するためのプロセス、およびシーラントにおけるポリチオエーテルポリマーの使用に関連し、ここで、ポリチオエーテルポリマーおよび硬化性組成物は、20℃以下の温度で液体である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ポリチオエーテルポリマーは、それらの優れた耐燃料性のために、主に航空シーラントおよび航空宇宙シーラントにおいて、広範に使用される。航空燃料に対する抵抗性に加えて、航空シーラントおよび航空宇宙シーラントに有用なポリマーは、低温可撓性、室温での流動性、および高温抵抗性の所望の特性を示す。ポリチオエーテルポリマーを合成するために使用されるプロセスは、低コストで、悪臭および酸性副生成物がないこともまた、所望される。ポリチオエーテルポリマー化学の発展は、航空および航空宇宙の用途に適切な特性を示すポリマーをもたらしている。例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されているような、ビニルエーテルおよびポリチオールのフリーラジカル触媒付加反応によって形成されるポリチオエーテルポリマーは、室温で液体であり、優れた低温可撓性および耐燃料性を示し、その合成は、望ましくない環状または酸性の副生成物を発生しない。
【0003】
航空シーラントおよび航空宇宙シーラントに使用されるポリチオエーテルポリマーは、例えば、輸送および保管中に遭遇する可能性のある低温で、液体のままであることが、さらに所望される。特に、ポリチオエーテルポリマーは、長期間、20℃(68°F)の温度、より好ましくは4℃(39°F)の温度で、液体のままであることが所望される。
【0004】
ポリチオエーテルポリマー系において、ポリマー主鎖中の非直線性の導入(例えば、ペンダント基を導入することによって)が、ポリマーのガラス転移温度を減少させ、ポリマーの、低温で液体のまま存在するという能力を高めることは公知である。特許文献4は、−50℃未満のガラス転移温度を有する液体のポリチオエーテルポリマーを提供するために、ペンダントアルキル側鎖の導入を開示している。特許文献5は、低温で液体であり、−50℃未満のガラス転移温度を示す、耐燃料性ポリマーを製造するために、ポリチオエーテルポリマー中にペンダントメチル基を導入することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,172,179号明細書
【特許文献2】米国特許第5,959,071号明細書
【特許文献3】米国特許第5,912,319号明細書
【特許文献4】米国特許第4,366,307号明細書
【特許文献5】米国特許第5,959,071号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリチオール、ポリエポキシド、およびポリビニルエーテルの2段階の付加反応によって形成されるポリチオエーテルポリマーは、米国特許第6,486,297号に開示されている。第1段階において、ポリチオールは、プレポリマーを形成するために、ポリエポキシドまたはポリビニルエーテルのいずれかと反応する。第2段階において、プレポリマーおよび未反応のポリチオールは、第1反応段階に関与していない化合物と反応する。ポリエポキシド反応は、ポリチオエーテルポリマーの主鎖に沿って、ペンダントヒドロキシル基を導入し、それによって、ポリマー主鎖の非直線性を増加させる。米国特許第6,486,297号に開示されているようなポリエポキシドを用いて製造されるポリチオエーテルポリマーは、−40℃未満のガラス転移温度を示す。しかしながら、ポリエポキシド反応は、反応の間、ポリマー鎖の伸長に有利に働くので、その結果として生じるポリチオエーテルポリマーは、高分子量によって特徴付けられ、室温で400ポイズのオーダーの相応のとれた高粘度を示す。硬化性シーラント組成物におけるポリチオエーテルポリマーの使用のために、ポリマー粘度は、室温で100ポイズ以下のオーダーであることが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
以下のセグメント:
【化1】


を有するポリチオエーテルポリマーであって、ここで、
各Aは、式II(a)、およびII(b)から独立して選択され、
【化2】


ここで、
各Rは、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および少なくとも1つの−CH−基が少なくとも1つのメチル基で置換され得る、−[−(CH−X−]−(CH−から独立して選択され、ここで、
各Xは、O、S、−NH−、および−NR−から独立して選択され、
は、H、および−CHから選択され、
pは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、そして
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、−CH−CH−、および電子求引性基と共役するオレフィンから独立して選択され、
各Rは、C2〜10アルキレン、およびC2〜10アルキレンオキシから独立して選択され、
各Rは、酸素、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから独立して選択され、
nは、500ダルトンと20,000ダルトンとの間のポリチオエーテルポリマーの分子量を得るために選択される整数であり、そして
II(a)とII(b)との重量比は、約2:1〜3:1である、
ポリチオエーテルポリマー。
(項目2)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、−60℃以下のガラス転移温度を有する、ポリチオエーテルポリマー。
(項目3)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、20℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目4)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目5)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、少なくとも1ヶ月間、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目6)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Rが、以下:ジメルカプトジオキサオクタン、およびジメルカプトジエチルスルフィドのうちの少なくとも1つから誘導される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目7)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Rが、少なくとも1つの−O−(CH−O−(CH−O−基を含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目8)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Rが、少なくとも1つの−CH−CH−基を含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目9)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Rが、少なくとも1つの−CH−O−CH−基を含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目10)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Rが、少なくとも1つの−CH−CH−基を含み、Rが、少なくとも1つの−CH−O−CH−基を含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目11)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記分子量が、2,000ダルトンと5,000ダルトンとの間である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目12)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記分子量が、3,000ダルトンと4,000ダルトンとの間である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目13)
項目1に記載のポリチオエーテルポリマーであって、R基で終端し、ここで、各Rが、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から選択される基を独立して含有する、ポリチオエーテルポリマー。
(項目14)
式III
【化3】


を有するポリチオエーテルポリマーであって、ここで、
zは、3〜6の整数であり、
Bは、z価の基であり、
各Aは、式II(a)、および式II(b)から独立して選択され、
【化4】


ここで、
各Rは、C2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および少なくとも1つの−CH−基が、少なくとも1つのメチル基で置換され得る、−[−(CH−X−]−(CH−から独立して選択され、ここで、
各Xは、O、S、−NH−、および−NR−から独立して選択され、
は、H、および−CHから選択され、
pは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、そして、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、−CH−CH−、および電子求引性基と共役するオレフィンから独立して選択され、
各Rは、C2〜10アルキレン、およびC2〜10アルキレンオキシから独立して選択され、
各Rは、酸素、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから独立して選択され、
nは、500ダルトンと20,000ダルトンとの間のポリチオエーテルポリマーの分子量を得るために選択される整数であり、そして、
II(a)とII(b)との重量比が、約2:1〜3:1である、
ポリチオエーテルポリマー。
(項目15)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、−60℃以下のガラス転移温度を有する、ポリチオエーテルポリマー。
(項目16)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、20℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目17)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目18)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、少なくとも1ヶ月間、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目19)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、zが3である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目20)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Bが、ビニル基を含有する化合物B’から誘導される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目21)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、Bが以下:トリアリルイソシアヌレート、およびトリアリルシアヌレートのうちの少なくとも1つから誘導される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目22)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記分子量が、2,000ダルトンと5,000ダルトンとの間である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目23)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記分子量が、3,000ダルトンと4,000ダルトンとの間である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目24)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、R基で終端し、ここで、各Rは、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から選択される基を独立して含有する、ポリチオエーテルポリマー。
(項目25)
項目14に記載のポリチオエーテルポリマーであって、平均官能性が、2.05と3との間である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目26)
項目25に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記官能性が、チオール基およびビニル基から選択される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目27)
以下:
項目1のポリチオエーテルポリマー、項目14のポリチオエーテルポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される30重量%〜80重量%のポリチオエーテルポリマー、ならびに
少なくとも1つの硬化剤、
を含む硬化性組成物であって、
ここで、該硬化性組成物が、20℃以下の温度で液体である、
硬化性組成物。
(項目28)
項目27に記載の硬化性組成物であって、前記ポリチオエーテルポリマーが、反応性官能基を含有し、そして前記硬化剤が、該反応性官能基と共反応性であるオレフィン、アクリレート、およびポリエポキシドから選択される少なくとも2つの基を含有する、硬化性組成物。
(項目29)
項目27に記載の硬化性組成物であって、前記硬化剤が、金属酸化物である、硬化性組成物。
(項目30)
項目27に記載の硬化性組成物であって、充填剤をさらに含む、硬化性組成物。
(項目31)
項目30に記載の硬化性組成物であって、前記充填剤が、該硬化性組成物の5重量%〜60重量%の不揮発性成分を構成する、硬化性組成物。
(項目32)
項目27に記載の硬化性組成物であって、4℃以下の温度で液体である、硬化性組成物。
(項目33)
項目27に記載の硬化性組成物であって、少なくとも1ヶ月間、4℃以下の温度で液体である、硬化性組成物。
(項目34)
項目27に記載の硬化性組成物であって、前記ポリチオエーテルポリマーが、−60℃以下のガラス転移温度を有する、硬化性組成物。
(項目35)
項目27に記載の硬化性組成物であって、硬化する場合、60℃および大気圧でのジェット標準燃料1型において1週間浸漬後、25%以下の体積膨張パーセントを有する、硬化性組成物。
(項目36)
項目27に記載の硬化性組成物であって、20℃未満の温度で硬化可能である、硬化性組成物。
(項目37)
項目27に記載の硬化性組成物であって、少なくとも1つの可塑剤をさらに含む、硬化性組成物。
(項目38)
項目37に記載の硬化性組成物であって、前記少なくとも1つの可塑剤が、硬化性組成物の全重量の1重量%〜40重量%を構成する、硬化性組成物。
(項目39)
項目37に記載の硬化性組成物であって、前記少なくとも1つの可塑剤が、以下:フタル酸エステル、塩素化パラフィン、および水素化されたターフェニルのうちの少なくとも1つを含む、硬化性組成物。
(項目40)
項目27に記載の硬化性組成物であって、以下の添加剤:顔料、硬化促進剤、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロープ剤、および抑制剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、硬化性組成物。
(項目41)
項目40に記載の硬化性組成物であって、前記少なくとも1つの添加剤が、硬化性組成物の全重量の0.1重量%〜40重量%を構成する、硬化性組成物。
(項目42)
航空シーラントおよび航空宇宙シーラントにおける項目1に記載のポリチオエーテルポリマーの使用であって、以下の工程:
(a)前記ポリチオエーテルポリマーを含む、硬化性組成物を調製する工程、
(b)航空または航空宇宙ビークルの表面を洗浄する工程、
(c)航空または航空宇宙ビークルの表面に該硬化性組成物を付与する工程、および
(d)該硬化性組成物を硬化させる工程、
を包含する、使用。
(項目43)
航空シーラントおよび航空宇宙シーラントにおける項目14に記載のポリチオエーテルポリマーの使用であって、以下の工程:
(a)前記ポリチオエーテルポリマーを含む、硬化性組成物を調製する工程、
(b)航空または航空宇宙ビークルの表面を洗浄する工程、
(c)航空または航空宇宙ビークルの表面に該硬化性組成物を付与する工程、および
(d)該硬化性組成物を硬化させる工程、
を包含する、使用。
(項目44)
航空シーラントおよび航空宇宙シーラントとしての項目27に記載の硬化性組成物の使用であって、以下の工程:
(a)航空または航空宇宙ビークルの表面を洗浄する工程、
(b)航空または航空宇宙ビークルの表面に該硬化性組成物を付与する工程、および
(c)該硬化性組成物を硬化させる工程、
を包含する、使用。
(項目45)
ポリチオエーテルポリマーを形成するプロセスであって、以下の工程:
(a)1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物とポリチオールを反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程であって、ここで、該ポリチオールが、該第2の基と優先的に反応する工程、
(b)該第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを、該エポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程、および
(c)該第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを、ポリビニルエーテルと反応させる工程、
を包含する、プロセス。
(項目46)
項目45に記載のプロセスであって、前記第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを前記エポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程が、塩基性触媒の存在下で行われる、プロセス。
(項目47)
項目46に記載のプロセスであって、前記塩基性触媒が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、ピリジン、および置換ピリジンから選択される、プロセス。
(項目48)
項目45に記載のプロセスであって、前記ポリチオールが、ジメルカプトジオキサオクタン、ならびにジメルカプトジオキサオクタンおよびジメルカプトジエチルスルフィドの組み合わせから選択される、プロセス。
(項目49)
項目45に記載のプロセスであって、1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物が、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸グリシジルから選択される、プロセス。
(項目50)
項目45に記載のプロセスであって、前記ポリビニルエーテルが、ジビニルエーテルを含む、プロセス。
(項目51)
項目50に記載のプロセスであって、前記ジビニルエーテルが、以下:ジエチレングリコールジビニルエーテル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、およびビニルシクロヘキセンのうちの少なくとも1つを含む、プロセス。
(項目52)
項目45に記載のプロセスであって、工程(c)が、フリーラジカル触媒の存在下で行われる、プロセス。
(項目53)
ポリチオエーテルポリマーを形成するプロセスであって、以下の工程:
(a)1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物とポリチオールを反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程であって、ここで、該ポリチオールが、該第2の基と優先的に反応する工程、
(b)該第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをエポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程、および
(c)該第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをポリビニルエーテルおよび多官能化剤と反応させる工程、
を包含する、プロセス。
(項目54)
項目53に記載のプロセスであって、前記第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを反応させて、前記第2のプレポリマーを形成する工程が、塩基性触媒の存在下で行われる、プロセス。
(項目55)
項目54に記載のプロセスであって、前記塩基性触媒が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、ピリジン、および置換ピリジンから選択される、プロセス。
(項目56)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリチオールが、ジメルカプトジオキサオクタン、ならびにジメルカプトジオキサオクタンおよびジメルカプトジエチルスルフィドの組み合わせから選択される、プロセス。
(項目57)
項目53に記載のプロセスであって、1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物が、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸グリシジルから選択される、プロセス。
(項目58)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリビニルエーテルが、ジビニルエーテルを含む、プロセス。
(項目59)
項目58に記載のプロセスであって、前記ジビニルエーテルが、以下:ジエチレングリコールジビニルエーテル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、およびビニルシクロヘキセンのうちの少なくとも1つを含む、プロセス。
(項目60)
項目53に記載のプロセスであって、前記多官能化剤が、三官能性である、プロセス。
(項目61)
項目53に記載のプロセスであって、前記多官能化剤が、少なくともトリアリルシアヌレートを含む、プロセス。
(項目62)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリチオエーテルポリマーが、−60℃以下のガラス転移温度を有する、プロセス。
(項目63)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリチオエーテルポリマーが、20℃以下の温度で液体である、プロセス。
(項目64)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリチオエーテルポリマーが、4℃以下の温度で液体である、プロセス。
(項目65)
項目53に記載のプロセスであって、前記ポリチオエーテルポリマーが、少なくとも1ヶ月間、4℃以下の温度で液体である、プロセス。
(項目66)
項目53に記載のプロセスであって、工程(c)が、フリーラジカル触媒の存在下で行われる、プロセス。
(項目67)
以下:
(a)1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物とポリチオールを反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程であって、ここで、該ポリチオールが、該第2の基と優先的に反応する工程、
(b)該第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをエポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程、ならびに
(c)該第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをポリビニルエーテルと反応させる工程、
によって形成される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目68)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記第2のプレポリマー、未反応のポリチオール、および工程(c)におけるポリビニルエーテルを、多官能化剤とさらに反応させる工程によって形成される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目69)
項目68に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記多官能化剤が、三官能性である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目70)
項目68に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記多官能化剤が、少なくともトリアリルシアヌレートを含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目71)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、工程(c)が、フリーラジカル触媒の存在下で行われる、ポリチオエーテルポリマー。
(項目72)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、工程(b)が、塩基性触媒の存在下で行われる、ポリチオエーテルポリマー。
(項目73)
項目72に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記塩基性触媒が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチルアミン、ピリジン、および置換ピリジンから選択される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目74)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記ポリチオールが、ジメルカプトジオキサオクタン、ならびにジメルカプトジオキサオクタンおよびジメルカプトジエチルスルフィドの組み合わせから選択される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目75)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物が、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸グリシジルから選択される、ポリチオエーテルポリマー。
(項目76)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記ポリビニルエーテルが、ジビニルエーテルを含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目77)
項目76に記載のポリチオエーテルポリマーであって、前記ジビニルエーテルが、以下:ジエチレングリコールジビニルエーテル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、およびビニルシクロヘキセンのうちの少なくとも1つを含む、ポリチオエーテルポリマー。
(項目78)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、−60℃以下のガラス転移温度を有する、ポリチオエーテルポリマー。
(項目79)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、20℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目80)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
(項目81)
項目67に記載のポリチオエーテルポリマーであって、少なくとも1ヶ月間、4℃以下の温度で液体である、ポリチオエーテルポリマー。
【0008】
航空シーラントおよび航空宇宙シーラントの用途のための有利な特性を維持しつつ、ポリエポキシドを用いて合成されたポリチオエーテルポリマーに内在する欠点を克服するために、ポリチオエーテルポリマーの合成のためのモノエポキシドを用いる3段階の方法およびそれから作製されるシーラントが、本明細書中で開示されている。
【0009】
3段階反応プロセスにおけるチオール付加化学の使用は、低温での流動性、ならびに航空シーラントおよび航空宇宙シーラントの用途についての他の所望の特性を示すポリチオエーテルポリマーをもたらすポリマー構造の制御を可能にする。
【0010】
第1反応段階において、ポリチオールは、エポキシ基を有するモノエポキシドおよびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基と反応され得、第1のプレポリマーを形成するように、反応が、第2の基で優先的に起こる。第1段階において、チオール基は、第2の非エポキシ基の二重結合中に付加して、第1のプレポリマーを形成する。第1のプレポリマーは、ポリチオールとモノエポキシドとの1:1の付加生成物であり得、エポキシ基およびチオール基を含む。第1反応段階の後、その反応混合物は、第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを含む。
【0011】
第2反応段階は、第2のプレポリマーを形成するために、代表的に触媒の存在下で、未反応のチオール基によってエポキシ基を開環させる工程を包含する。第2反応段階において、第2のプレポリマーを形成するために、第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールの両方のチオール基が、エポキシ基の開環に加わる。第2反応段階の完了後、その反応混合物は、第2のプレポリマーおよび未反応の出発ポリチオールを含む。第2のプレポリマーは、開始時のポリチオールより高分子量を有するポリチオールである。
【0012】
第3反応段階は、多不飽和化合物(例えば、ジビニル化合物)の二重結合中の第2のプレポリマーおよび残存している未反応の出発ポリチオールの両方のチオール基のフリーラジカル触媒付加を包含する。
【0013】
3段階の合成は、20℃未満の温度で液体として存在し、航空シーラントおよび航空宇宙シーラントの用途に有用である、安定した化学特性および物理特性を有するポリチオエーテルポリマーを製造するために、分子量、ポリマー構造、および当量の制御を可能にする。望ましくない鎖の伸長をせずに、ポリマー全体の極性を増加させることによる、ポリチオエーテルポリマーの主鎖中の極性のヒドロキシル基の制御された導入は、有用なシーラント組成物の形成に使用される添加剤とポリチオエーテルポリマーの相溶性を高め、そしてまた、表面へのポリチオエーテルポリマーの接着特性も高める。
【0014】
(発明の要旨)
本発明の実施形態は、ポリチオエーテルポリマー、ポリチオエーテルポリマーを製造するためのプロセス、ポリチオエーテルポリマーの硬化性組成物、ならびに航空シーラントおよび航空宇宙シーラントにおけるポリチオエーテルポリマーの使用に関連し、ここで、ポリチオエーテルポリマーおよび硬化性組成物は、20℃未満の温度で液体である。
【0015】
本発明の第1の局面は、構造式I:
−A−[−S−(CH−R−(CH−S−A−]− I
のポリチオエーテルポリマーを提供し、ここで、
Aは、式II(a)、およびII(b):
【0016】
【化5】

から選択され、ここで、
各Rは、少なくとも1つの−CH−基が、少なくとも1つのメチル基で置換され得るC2〜6n−アルキレン、C3〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[−(CH−X−]−(CH−、および−[−(CH−X−]−(CH−から独立して選択され、ここで、
各Xは、O、S、−NH−、および−NR−から独立して選択され、
は、HおよびCHから選択され、
pは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、そして
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、−CH−CH−、および電子求引性基と共役するオレフィンから独立して選択され、そして
各Rは、C2〜10アルキレン、およびC2〜10アルキレンオキシから独立して選択され、
各Rは、酸素、C2〜6アルキレンオキシ、およびC5〜12シクロアルキレンオキシから独立して選択され、
nは、500ダルトンと20,000ダルトンとの間のポリチオエーテルポリマーの分子量を得るために選択される整数であり、そして
II(a)とII(b)との重量比は、約2〜3:1である。
【0017】
本発明の第2の局面は、(1)1つのエポキシ基およびチオール基と反応性のあるエポキシ基以外の第2の基を含む化合物とポリチオールを反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程であって、ここで、ポリチオールは、第2の基と優先的に反応する工程;(2)第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをモノエポキシ基と反応させて、第2のプレポリマーを形成する工程;そして(3)第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールをポリビニル化合物と反応させる工程、によって形成されるポリチオエーテルポリマーを提供する。
【0018】
本発明の第3の局面は、本発明のポリチオエーテルポリマーの硬化性組成物を提供する。本発明の硬化性組成物は、概して、本発明の少なくとも1つのポリチオエーテルポリマー、少なくとも1つの硬化剤を含み、そして20℃以下の温度で液体であることによって特徴付けられる。
【0019】
本発明の第4の局面は、本発明のポリチオエーテルポリマーの使用ならびに航空および航空宇宙の用途のためのシーラントにおける本発明の硬化性組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって改変されることが、理解される。従って、他に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値のパラメーターは、本発明によって得られることを求められる所望の特性に依存して、変化し得る概数である。少なくても、特許請求の範囲に対する均等の原理の適用を制限しようとする試みではなく、各数値のパラメーターは、少なくとも、報告された有効数字を考慮して、および通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0021】
本発明の広範な範囲を示す数値の範囲およびパラメーターは、概数であるが、特定の実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、本質的にそれぞれの試験測定に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含有する。
【0022】
特定の実施形態において、本発明の化合物としては、式Ia:
−A−[−S−(CH−R−(CH−S−A−]−R I(a)
のポリチオエーテルポリマーが挙げられ、
ここで、
Aは、式II(a)、およびII(b)から選択され、
ここで、
各R、R、RおよびRは、上記に定義した通りであり、
各Rは、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基、およびビニル基から独立して選択され、
nは、500ダルトンと20,000ダルトンとの間のポリチオエーテルポリマーの分子量を得るために選択される整数であり、そして
II(a)とII(b)との重量比は、約2:1〜3:1である。
【0023】
は、代表的に、少なくとも2つのチオール基を有する化合物、モノマー、またはポリマーから誘導される。特定の実施形態において、ポリチオールとしては、式IV:
HS−R−SH IV
の構造を有するジチオールが挙げられ、ここで、Rは、C2〜6n−アルキレン基;例えば、ヒドロキシル基、アルキル基(例えばメチル基またはエチル基)であり得る1つ以上のペンダント基を有するC3〜6分枝アルキレン基;アルキレンオキシ基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜10アルキルシクロアルキレン基;−[(−CH−X−]−(CH−基;または少なくとも1つの−CH−単位がメチル基で置換され得る、−[(CH−X−]−(−CH−基であり得、pは、独立して選択される2〜6の範囲の整数であり、qは、独立して選択される1〜5の範囲の整数であり、そして、rは、独立して選択される2〜10の範囲の整数である。
【0024】
他の実施形態において、ジチオールは、炭素主鎖中の1つ以上のヘテロ原子置換基を含む:つまり、Xが、ヘテロ原子(例えば、O、S、または他の二価のヘテロ原子ラジカル);第2級アミン基または第3級アミン基(すなわち、−NR−、ここで、Rは、水素またはメチルである);あるいは他の置換された三価のヘテロ原子を含むジチオール。特定の実施形態において、Xは、OまたはSであり、それによって、Rは、−[(−CH−O−]−(−CH−、または−[(CH−S−]−(−CH−である。特定の実施形態において、pおよびrは、同じである。特定の実施形態において、pおよびrの両方は、2の値を有する。
【0025】
特定の実施形態において、ジチオールとしては、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(p=2、r=2、q=1、X=S)、ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(p=2、q=2、r=1、X=0)、および1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(p=2、r=2、q=1、X=0)が挙げられる。特定の実施形態において、ジチオールは、炭素主鎖中のヘテロ原子置換基およびペンダントアルキル基(例えば、メチル基)の両方を含む。炭素主鎖中のヘテロ原子置換基およびペンダントアルキル基の両方を含むジチオールの例としては、メチル置換されたDMDS(例えば、HS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SH)、およびジメチル置換されたDMDS(例えば、HS−CHCH(CH)−S−CH(CH)CH−SHおよびHS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SH)が挙げられる。
【0026】
式Iの化合物の特定の実施形態において、Rは、C2〜6n−アルキレン基(例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、または1,6−ヘキサンジチオール)である。他の実施形態において、Rは、1つ以上のペンダント基を有するC3〜6分枝アルキレン基(例えば、1,2−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、および1,3−ジチオ−3−メチルブタン)である。他の実施形態において、Rは、C6〜8シクロアルキレンまたはC6〜10アルキルシクロアルキレン基(例えば、ジペンテンジメルカプタン、およびエチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT))である。
【0027】
は、代表的に、式V:
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH Vを有するポリビニルエーテルから誘導され、ここで、Rは、C2〜6n−アルキレン、C2〜6分枝アルキレン、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、または−[(CH−)−O−]−(−CH−)−基から選択され、mは、0〜10の有理数であり、pは、独立して選択される1〜5の整数であり、そしてrは、独立して選択される2〜10の整数である。特定の実施形態において、Rは、C2〜6アルキレンオキシおよびC5〜12シクロアルキレンオキシから選択され得る。
【0028】
特定の実施形態において、ポリビニルエーテルは、少なくとも1種のアルキレンオキシ基、および好ましくは1〜4種のアルキレンオキシ基(例えば、mが1〜4の整数である化合物)を有する化合物を含む。他の実施形態において、mは、2〜4の整数である。特定の実施形態において、ポリビニルエーテルは、ポリビニルエーテル混合物を含む。そのような混合物は、1分子当たりのアルキレンオキシ基の非整数である平均値の数によって特徴付けられる。このように、特定の実施形態において、式Vにおけるmもまた、0と10.0との間、他の実施形態において1.0と10.0との間、さらに他の実施形態において1.0と4.0との間、およびさらに他の実施形態において2.0と4.0との間の有理数の値を取り得る。
【0029】
特定の実施形態において、ポリビニルエーテルモノマーは、ジビニルエーテルモノマー(例えば、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、およびビニルシクロヘキセン);トリビニルエーテルモノマー(例えば、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、四官能性ビニルエーテルモノマー(例えば、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル));およびそれらの混合物を含む。特定の実施形態において、ポリビニルエーテルモノマーは、アルキレン基、ヒドロキシル基、アルキレンオキシ基、およびアミン基から選択される1つ以上のペンダント基をさらに含み得る。
【0030】
特定の実施形態において、RがC2〜6分枝アルキレンであるポリビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させる工程によって調製され得る。このタイプの例示的な化合物は、Rがアルキル置換されたメチレン基(例えば、−CH(CH)−)である化合物(例えば、PLURIOL(登録商標)ブレンド(例えば、R=エチレンおよびm=3.8のPLURIOL(登録商標)E−200ジビニルエーテル(BASF Corp.)))、またはアルキル置換されたエチレン(例えば、−CHCH(CH)−)である化合物(例えば、DPE−2およびDPE−3(International Specialty Products)を含むDPE(登録商標)ポリマーブレンド)を含む。
【0031】
およびRは、代表的に、式VI:
【0032】
【化6】

の構造を有するモノエポキシ化合物から誘導される。Rは、チオール基と反応性のあるエポキシ基以外の基を含む。特定の実施形態において、Rは、−CH−CH−基、および電子求引性基と共役するオレフィン(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル)から誘導される。特定の実施形態において、Rは、C2〜10アルキレン基、およびC2〜10アルキレンオキシ基から選択される。特定の実施形態において、Rは、−CH−O−CH−である。
【0033】
特定の実施形態において、式I、I(a)、III(後出)、およびIII(a)(後出)のポリチオエーテルポリマーは、2,000ダルトンと5,000ダルトンとの間の分子量を有する。他の実施形態において、式I、I(a)、IIIおよびIII(a)のポリチオエーテルポリマーは、3,000ダルトンと4,000ダルトンとの間の分子量を有する。特定の実施形態において、ポリチオエーテルポリマーにおける式II(a)の構造を有する成分Aと式II(b)の構造を有するAとの重量比は、2:1〜3:1である。
【0034】
特定の実施形態において、式Iのポリチオエーテルポリマーは、−60℃(−76°F)以下のガラス転移温度(T)を有する。
【0035】
特定の実施形態において、本発明のポリチオエーテルポリマーは、20℃(68°F)以下の温度で液体である。特定の実施形態において、本発明のポリチオエーテルポリマーは、4℃(40°F)以下の温度で液体であり、他の実施形態において、少なくとも1ヶ月間、少なくとも4℃(40°F)以下の温度で液体である。代表的に、本発明のポリチオエーテルポリマーは、20℃の温度で75ポイズ〜150ポイズの範囲の粘度、および4℃の温度で300ポイズ〜380ポイズの範囲の粘度を示す。対照的に、例えば、米国特許第6,486,297号に開示されたジエポキシドを用いて形成されたポリチオエーテルポリマーは、20℃の温度で400ポイズ〜450ポイズの範囲の粘度を示し、4℃の温度で固体である。
【0036】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、式III:
B−{−S−A−[−(CH−R−(CH−S−A−]−} IIIのポリチオエーテルポリマーを含み、さらに特には、
B−{−S−A−[−(CH−R−(CH−S−A−]−R
III(a)
ここで、
A、R、Rおよびnは、上記の通りであり、
Bは、多官能化剤から誘導されるz価の基であり
zは、3〜6の整数であり、
nは、500ダルトンと20,000ダルトンとの間のポリチオエーテルポリマーの分子量を得るために選択される整数であり、そして
II(a)とII(b)との重量比は、約2:1〜3:1である。
【0037】
Bは、z価の基であり、多官能化剤を表す化合物B’から誘導される。多官能化剤は、−SHおよび/または−CH=CH基と反応性のある2つより多い成分を有する化合物のことをいう。特定の実施形態において、多官能化剤は、3〜6個のそのような成分を含み、Bは、「z価」の基と示され、ここで、zは、その多官能性化剤に含まれるそのような成分の数、すなわち、多官能性ポリチオエーテルポリマーを含む個々の分枝の数である。
【0038】
式IIIおよびIII(a)の化合物の特定の実施形態において、多官能化剤は、三官能化剤であり、z=3である。式IIIおよびIII(a)の化合物の特定の実施形態において、多官能化剤の官能基は、ビニル基およびチオール基から選択される。混合性の官能性を有する多官能化剤(すなわち、チオール基とビニル基の両方と反応する代表的に別々の成分である成分を含む多官能化剤)もまた、使用され得る。特定の実施形態において、多官能化剤は、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、および米国特許第4,366,307号、米国特許第4,609,762号および米国特許第5,225,472号に記載されているポリチオールを含む。特定の実施形態において、三官能化剤は、チオール基と反応性のあるトリアリルシアヌレート(TAC)、およびビニル基と反応性のある1,2,3−プロパントリチオールから選択される。式IIIおよびIII(a)の構造を有するポリチオエーテルポリマーの特定の実施形態において、多官能化剤は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、またはそれらの混合物から誘導される。
【0039】
3つよりも多い反応成分(すなわち、z > 3)を有する多官能化剤は、「星型」ポリマーおよび高分枝(hyper−branch)ポリマーを生じる。例えば、2モルのTACは、1モルのジチオールと反応され得、平均4の官能性を有する多官能化剤を生成する。次いで、この多官能化剤は、プレポリマーを得るために、ポリビニル化合物およびジチオールと反応され得、続いて、三官能化剤と反応され得、平均3と4との間の官能性を有するポリチオエーテルポリマーブレンドを生じる。
【0040】
ある範囲の官能性を含む多官能化剤の混合物はまた、式IIIまたはIII(a)の構造を有するポリチオエーテルポリマーの調製において使用され得る。特定の実施形態では、特定量の三官能化剤の使用が、2.05〜3.0の平均官能性を有するポリチオエーテルポリマーを与える。他の平均官能性は、四官能性多官能化剤またはより高い価数の多官能化剤を使用することにより、達せられ得る。その得られるポリチオエーテルポリマーの平均官能性はまた、当業者に公知のように、化学量論のような因子により影響され得る。
【0041】
本発明の特定の実施形態に従って、本発明のポリチオエーテルポリマーは、硬化性組成物を形成するために使用される。本発明の硬化性組成物は、30重量%〜80重量%の、少なくとも1つの式I、I(a)、III、およびIII(a)のポリチオエーテルポリマーを含むポリチオエーテルポリマー;少なくとも1つの硬化剤;および必要に応じて、少なくとも1つの充填剤を含む。特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、20℃(68°F)以下の温度で液体である。他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、4℃(40°F)以下の温度で液体である。さらに他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、4℃(40°F)以下の温度で、少なくとも1ヶ月間は液体である。
【0042】
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの硬化剤を含む。特定の実施形態では、この硬化剤は、以下のものの少なくとも1つまたはそれより多くを含む:ポリオレフィン、ポリアクリレート、金属酸化物、およびポリエポキシド(これらは、上記ポリチオエーテルポリマーの反応性官能基と共反応性(co−reactive)である)。具体的な例示的硬化剤としては、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(例えば、EPON828(Resolution Performance Products,LLC))、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド(例えば、DEN−40(登録商標)(Dow Plastics)、エポキシ化不飽和フェノール樹脂、二量体酸ベースのエポキシ樹脂、アクリルポリオールエステルおよびメクリルポリオールエステル、ならびにトリアリルシアヌレート(TAC)が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、代表的には、少なくとも1つの充填剤を含む。充填剤は、例えば、衝撃強度を高めるため、粘度を制御するため、電気特性を改質するため、または比重を低下させるためのような、所望の物理的特性を付与するために、本発明の硬化性組成物に添加され得る。航空用途および航空宇宙用途のための本発明の硬化性組成物において有用な充填剤としては、当該分野で一般に使用される充填剤、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、およびポリマー粉末が挙げられる。例示的な充填剤としては、Sipernat(登録商標)D−13疎水性沈殿シリカ(Degussa)、Winnofil(登録商標)SPM沈殿炭酸カルシウム(Solvay Chemicals)、TS−270(Cabot Corporation)、二酸化チタン(DuPont)、水酸化アルミニウム、およびOrgasol(登録商標)1002 D Nat 1超微細ポリアミド粉末(Atofina Chemicals)が挙げられる。特定の実施形態では、この充填剤は、本硬化性組成物の5重量%〜60重量%の不揮発性成分を構成する。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、当業者に周知の他の成分を含み得る。特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下から選択される少なくとも1つの添加剤を含む:可塑剤、顔料、硬化促進剤、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロープ剤、難燃剤、マスキング剤。この添加剤は、代表的には、上記硬化性組成物中に、上記硬化性組成物の総重量に基づき、0.1重量%〜40重量%の量で存在する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの可塑剤を含む。特定の実施形態では、この可塑剤は、以下のもののうちの少なくとも1つを含む:フタル酸エステル、塩素化パラフィン、および水素化テルフェニル。有用な可塑剤の例としては、HB−40(登録商標)改質ポリフェニル(Solutia,Inc.)、および桐油(Campbell & Co.)が挙げられる。他の実施形態では、この可塑剤は、本硬化性組成物の総重量の1重量%〜40重量%を構成する。特定の実施形態では、この可塑剤は、本硬化性組成物の総重量の1重量%〜8重量%を構成する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの顔料を含む。特定の実施形態では、この顔料は、以下のもののうちの少なくとも1つを含む:カーボンブラック、金属酸化物、および炭酸カルシウム。顔料等級のカーボンブラックは、概して、小構造および小粒径(例えば、Regal(登録商標)660R(Cabot Corporation))により特徴付けられる。Brilliant1500は、顔料等級(99.995%)の炭酸カルシウム(Aldrich Chemical)の例である。特定の実施形態では、この顔料は、本硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜10重量%を構成する。他の実施形態では、この顔料は、本硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜5重量%を構成する。
【0047】
他の実施形態、例えば、上記硬化性組成物がエポキシ硬化剤を含む場合では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの硬化促進剤または触媒を含む。特定の実施形態では、この硬化促進剤は、以下の有機アミン触媒のうちの少なくとも1つを含む:トリエチルアミン(TEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、カルバメートペースト(PRC−DeSooto International)、および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(Air Products)。特定の実施形態では、例えばシランを反応させるために、触媒は、例えば、チタネートTBT(DuPont)であり得る。特定の実施形態では、この硬化促進剤は、本硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜5重量%を構成する。
【0048】
特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、1つ以上の接着促進剤およびカップリング剤を含む。接着促進剤およびカップリング剤は、上記硬化性組成物のポリチオエーテルポリマーおよび他のポリマー成分の、粒子状添加剤および基材表面への接着を増強する。接着促進剤の例としては、フェノール類(例えば、Methylon75108フェノール樹脂(Occidental Chemical Corp.)、およびエポキシ官能性、メルカプト官能性、またはアミノ官能性を含むオルガノシラン(例えば、Silquest A−187(登録商標)(8−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン)およびSilquest A−1100(登録商標)(8−アミノプロピルトリメトキシシラン)(OSi Specialties))が挙げられる。他の有用な接着促進剤としては、例えば、Tyzor(登録商標)テトラn−ブチルチタネート(TBT)(DuPont)のような有機チタネート、加水分解シラン(PRC−DeSoto International)、およびフェノリッククック(phenolic cook)(PRC−DeSoto International)が挙げられる。特定の実施形態では、この接着促進剤は、上記組成物の総重量の0.1重量%〜15重量%を構成する。特定の実施形態では、この接着促進剤は、上記組成物の総重量の0.1重量%〜5重量%を構成する。
【0049】
さらに他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つのチキソトロープ剤を含む。チキソトロープ剤は、せん断応力に応答して、硬化性組成物の粘性を安定化する。特定の実施形態では、このチキソトロープ剤は、以下の少なくとも1つを含む:ヒュームドシリカ、およびカーボンブラック。特定の実施形態では、このチキソトロープ剤は、上記組成物の総重量の0.1重量%〜5重量%を構成する。
【0050】
他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの難燃剤を含む。難燃剤は、硬化した組成物の燃焼性を低下させる。特定の実施形態では、この難燃剤は、上記硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜5重量%を構成する。
【0051】
さらに他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つのマスキング剤(例えば、松材の芳香または他の香り)を含み、これらは、上記硬化性組成物の任意の望ましくない低レベルのオーダーの臭気を隠すことにおいて有用である。特定の実施形態では、この少なくとも1つのマスキング剤は、上記硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜1重量%を構成する。
【0052】
特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの揮発性有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)をさらに含む。この有機溶媒は、適用の間のこの硬化性組成物の粘度を低下させるために含まれ、そして適用の後ですぐに蒸発する。特定の実施形態では、この少なくとも1つの有機溶媒は、上記硬化性組成物の総重量の0重量%〜15重量%を構成し、そして他の実施形態では、上記硬化性組成物の10重量%〜15重量%を構成する。
【0053】
本発明の硬化性組成物は、20℃(68°F)以下の温度で液体である。特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、4℃(40°F)以下の温度で液体である。他の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、4℃(40°F)以下の温度で、少なくとも1ヶ月間、液体である。低温で長期間の間、液体であり続けるという、硬化性組成物の能力は、例えば、航空シーラント用途および航空宇宙シーラント用途のような、実際の使用のために、この硬化性組成物の保存および輸送を容易にする。
【0054】
硬化したときに、本発明の硬化性組成物は、航空用途および航空宇宙用途において有利な特性を示す。航空シーラント用途および航空宇宙シーラント用途のために、硬化したシーラントが、少なくとも以下の特性を示すことが望ましい:(1)300〜400psiの引張り強度;(2)50psiを超える引裂き強度;(3)250%〜300%の伸び;(4)40を超える硬度(Rex);(5)乾燥条件、引き続くJRF中での浸漬、および引き続く3%NaCl中での浸漬下での、20pliを超える剥離強度。特定の実施形態では、本発明の硬化性組成物は、20℃(68°F)以下の温度で硬化可能であり、そして硬化したときに、本発明の硬化性組成物は、60℃(140°F)の温度でかつ大気圧で、JRF1型中での1週間の浸漬後に、25%以下の体積膨潤パーセントを示す。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、式Iの構造を有する直鎖状ポリチオエーテルポリマーを形成するためのプロセスを包含する。特定の実施形態では、式Iの構造を有する、本発明のポリチオエーテルポリマーは、以下のプロセスにより形成される:(1)ポリチオールを、1つのエポキシ基、およびチオール基と反応性である、エポキシ基以外の第2の基を含む化合物と反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程であって、ここでこのポリチオールが、優先的に、この第2の基と反応する工程;(2)この第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを、必要に応じて触媒の存在下で、モノエポキシ基と反応させ、第2のプレポリマーを形成する工程;(3)この第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを、ポリビニル化合物と反応させる工程。
【0056】
第1の工程では、ポリチオールは、1つのエポキシ基、およびチオール基と反応性である、エポキシ基以外の第2の基を含むモノエポキシドと反応し得、第1のプレポリマーを形成し得る。この反応条件は、このポリチオールが、優先的にこのモノエポキシドの第2の基、すなわち非エポキシ基と反応するように、確立される。
【0057】
この第1の工程では、チオール基は、第2の、非エポキシ基の二重結合に付加し得、この第1のプレポリマーを形成し得る。この第1のプレポリマーは、このポリチオールとこのモノエポキシドとの1:1付加生成物であり得、エポキシ基およびチオール基を含む。この第1の反応工程の後に、この反応混合物は、この第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを含む。
【0058】
特定の実施形態では、このポリチオールとモノエポキシドとは、70℃の温度で、1時間で反応される。特定の実施形態では、このポリチオールは、40〜80モル%、そして他の実施形態では50〜60モル%の量で存在する。特定の実施形態では、上記モノエポキシドは、5〜25モル%、そして他の実施形態では10〜15モル%の量で存在する。このモル%は、このポリチオエーテルポリマーを形成する際に使用される反応体の全モルに基づいている。
【0059】
このポリチオールは、少なくとも2つのチオール基を有する任意の化合物、ポリマー、またはモノマーを含み、そしてこれまでに記載された例示的なポリチオール化合物のいずれをも含む。特定の実施形態では、このポリチオールは、ジチオール化合物である。特定の実施形態では、このポリチオールは、ポリチオール化合物の混合物を含む。他の実施形態では、このポリチオールは、ジメルカプトジオキサオクタン、およびジメルカプトジオキサオクタンとジメルカプトジエチルスルフィドとの組合せの少なくとも1つ以上を含む。
【0060】
特定の実施形態では、チオール基と反応性であってエポキシ基以外である基は、ビニル基である。特定の実施形態では、式Iの化合物の調製において使用され、1つのエポキシ基、およびチオール基と反応性であってエポキシ基以外である基を含む化合物は、アリルグリシジルエーテルである。他の有用なモノエポキシド化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0061】
第2の反応工程では、上記第1のプレポリマーおよび第1の反応工程から残存する未反応のポリチオールは、必要に応じて触媒の存在下で、エポキシ基と反応され得、第2のプレポリマーを形成し得る。この第2の反応工程は、未反応のチオール基による上記エポキシ基の開環を包含する。第2の反応工程では、上記第1のプレポリマー上のチオール基および未反応のポリチオール上のチオール基の両方が、このエポキシ基の開環に関与し、第2のプレポリマーを形成する。この第2の反応工程の完了後に、この反応混合物は、上記第2のプレポリマーおよび未反応の出発ポリチオールよりも高分子量のポリチオールを含む。
【0062】
特定の実施形態では、上記任意の触媒は、例えば、トリエチルアミン(TEA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ピリジン、および置換ピリジンのような塩基性触媒を含む。特定の実施形態では、この第2の反応工程は、20℃〜80℃の温度で、2〜6時間、実施される。
【0063】
第3の反応工程では、ポリビニル化合物が、この第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールと反応され得る。この第3の反応工程は、第2のプレポリマーのチオール基および残存する未反応の出発ポリチオールのチオール基の両方の、多不飽和化合物(例えば、ジビニル化合物)の二重結合へのフリーラジカル触媒付加を包含する。特定の実施形態では、ポリビニルエーテル化合物は、ポリビニルエーテルである。
【0064】
このポリビニルエーテルは、これまでに開示されたポリビニルエーテルのいずれでもあり得る。特定の実施形態では、式Iの構造を有する化合物の調製において使用されるポリビニルエーテルは、ジエチレングリコールジビニルエーテルである。他の実施形態では、このポリビニルエーテルは、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、およびビニルシクロヘキセンから選択される。特定の実施形態では、このジビニルエーテルは、5〜25モル%の量で存在し、そして他の実施形態では、このポリビニルエーテルは、10〜20モル%の量で存在し、このモル百分率は、反応体の総モルに基づいている。ポリビニルエーテルの総量が、代表的には、1時間にわたって、間歇的にこの反応混合物に添加され得る。この反応がほぼ完結まで進行後に、このポリビニルエーテルの0.001重量%〜0.10重量%の量の、Vazo(登録商標)67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(DuPont)のようなフリーラジカル開始剤が添加され、反応を完結させる。
【0065】
特定の実施形態では、この第3の反応工程において使用される触媒は、少なくとも1つ以上のフリーラジカル触媒を含む。特定の実施形態では、式Iの構造を有するポリチオエーテルポリマーの調製において使用されるフリーラジカル触媒としては、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)、および有機過酸化物(例えば、ベンゾイルペルオキシド、およびt−ブチルペルオキシド)が挙げられる。
【0066】
特定の実施形態では、この第3の反応工程は、60℃〜80℃の温度で、6〜24時間実施される。
【0067】
本発明の特定の実施形態は、式IIIおよびIII(a)の構造を有する分枝状ポリチオエーテルポリマーを形成するためのプロセスを包含する。特定の実施形態では、式IIIおよびIII(a)の構造を有する、本発明のポリチオエーテルポリマーは、以下のプロセスにより形成される:(1)ポリチオールを、1つのエポキシ基、およびチオール基と反応性である、エポキシ以外の第2の基を含む化合物と反応させて、第1のプレポリマーを形成する工程;(2)この第1のプレポリマーおよび未反応のポリチオールを、必要に応じて触媒の存在下で、エポキシ基と反応させ、第2のプレポリマーを形成する工程;(3)ポリビニル化合物および多官能化剤を、この第2のプレポリマーおよび未反応のポリチオールと反応させる工程。
【0068】
分枝状ポリチオエーテルポリマーを調製するために、少なくとも1つの多官能化剤が、この第3の反応工程に包含される。多官能化剤の例は、以前に開示されている。特定の実施形態では、この多官能化剤は、三官能性であり、より具体的には、この多官能化剤は、トリアリルシアヌレート(TAC)である。特定の実施形態では、この三官能化剤は、0.5〜4モル%、そして好ましくは1〜3モル%の量で存在する。多官能化剤の使用は、2を超える官能性を有するポリチオエーテルポリマーを生成する。特定の実施形態では、本発明のプロセスにより形成されるポリチオエーテルポリマーは、2.05と3.0との間の平均官能性を有する。
【0069】
上記ポリビニル化合物の、上記ポリチオールとの反応は、付加反応であるので、この反応は、代表的には、実質的に完結まで進行する、すなわち、所望でない副生成物は、生成されないか、または実質的に生成されない。特に、本発明のポリチオエーテルポリマーを形成するプロセスは、かなりの量の好ましからざる環状副生成物を生成することはない。さらに、本発明のプロセスに従って調製されたポリチオエーテルポリマーは、代表的には、触媒残渣を実質的に含まない。
【0070】
特定の実施形態では、本発明のポリチオエーテルポリマーは、Brookfield粘度計を用いて、ASTM D−2849 §79−90に従って決定される場合、25℃の温度および760mmHgの圧力において、200ポイズ未満の粘度を示す。特定の実施形態では、本発明のポリチオエーテルポリマーは、4℃の温度において、400ポイズ未満の粘度を示す。
【0071】
特定の実施形態では、式I(a)およびIII(a)の構造を有するポリチオエーテルポリマーの、キャップされたアナログが、式VIIの構造を有する化合物、または式VIIの構造を有する2つの異なる化合物の混合物を、第3の反応工程において、さらに反応させることにより調製され得る:
CH=CH−(CH−O−R VII
式VIIの化合物は、末端エチレン性不飽和基を有するアルキルω−アルケニルエーテルであり、この末端エチレン性不飽和基は、末端チオール基と反応し、このポリチオエーテルポリマーをキャップし得る。
【0072】
式VIIにおいて、sは、0〜1の整数であり、好ましくは、0〜6の整数、より好ましくは、0〜4の整数であり、そしてRは、置換されていないアルキレン基または置換されたアルキレン基であり、好ましくは、少なくとも一つの−OH基もしくは−NHR基で置換され得るC1〜6n−アルキレン基であり、ここで、Rは、HもしくはC1〜6アルキレン基を表す。例示的な有用なR基としては、アルキレン基(例えば、エチレン、プロピレン、およびブチレン):ヒドロキシル置換基(例えば、4−ヒドロキシブチレン);ならびに、アミン置換基(例えば、3−アミノプロピレン)が挙げられる。
【0073】
式VIIの特定の化合物は、モノビニルエーテル(s=0)であり、このモノビニルエーテルとしては、アミノアルキルビニルエーテルならびにヒドロキシアルキルビニルエーテル(例えば、3−アミノプロピルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(ブタンジオールモノビニルエーテル))、ならびに置換されていないアルキニルビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテル)が挙げられる。式VIIのさらなる好ましい化合物としては、アリルエーテル(s=1)(例えば、4−アミノブチルアリルエーテル)、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテルが挙げられる。
【0074】
式IIIに存在するチオール基に対して当量の式VIIの化合物の使用は、十分にキャップされた(capped)ポリチオエーテルポリマーを提供する一方、これより少ない量の使用は、部分的にキャップされたポリマーを生じる。
【0075】
本発明の範囲内の硬化可能な組成物は、低温可撓性、低温流動性、および航空燃料に対する抵抗性が重要な属性である航空用、および宇宙空間用のシーラントとして有利に使用され得る。本発明の硬化可能な組成物は、当業者に公知の任意の手段(ブラシング、ローリングおよび噴霧すること)により表面に適用され得る。
【0076】
本発明の硬化可能な組成物は、特定の実施形態において、推奨される手順に従って周囲温度にて硬化される。特定の実施形態では、この硬化可能な組成物は、最低0℃の温度で硬化可能である。他の実施形態では、この硬化可能な組成物は、最低−10℃の温度で硬化可能である。さらに他の実施形態では、この硬化可能な組成物は、最低−20℃の温度で硬化可能である。「硬化可能な」とは、一つ以上の化学反応を経て、構成成分の間で安定な共有結合を形成し得ることを意味する。
【0077】
硬化される場合、本発明の硬化可能な組成物は、航空用および宇宙空間での適用の際のシーラントとしての使用に有利な特性を示す。一般に、航空適用および宇宙空間での適用において使用されるシーラントは、以下の特性を示すことが望ましい:試験仕様書Mil−C−27725およびMil−A−8625に従って、乾燥した状態、続いてJRF中に7日間液浸させた状態、そして続いて、3%のNaCl溶液に液浸する状態の下で決定されるMilitary Specification(Mil−C)上での20pli(pli:1インチ当たりのポンド数)より大きい剥離強度;300psi(psi:平方インチ当たりポンド)と400psiとの間の引張り強さ;直線インチ当たり50ポンドより大きい引き裂き強度;250%と300%との間の伸び;ならびに40Rexよりも大きな硬度。硬化される場合、本発明の硬化可能な組成物が、JRF1型中に60℃(140°F)、周囲圧力で1週間の液浸の後、25%以下のパーセント体積膨潤を示すこともまた望ましい。
【0078】
以下の例に示されるように、硬化される場合、本発明の硬化可能な組成物は、航空用および宇宙空間用シーラントとしての使用についての所望の特性を満たすかまたはこれを超える。対照的に、実施例5に提示されているように、本発明の実施形態として、モノエポキシドではなくジエポキシドを用いて合成されるポリチオエーテルポリマーを含有する硬化したなシーラントは、Mil−C−27725およびMil−A−8625に従って、JRFに7日間浸し、続いて3%のNaCl溶液に浸した後、20pli未満の剥離強度を示す。
【実施例】
【0079】
ここで、本発明の特定の実施形態を、詳細に言及する。本発明の特定の実施形態は、好ましい実施形態と組み合わせて記載されるが、本発明の実施形態を好ましい実施形態に限定することを意図するものではないと理解される。逆に、添付の特許請求の範囲により規定されるような本発明の実施形態の精神および範囲の内に包含され得るものとして、代替物、改変物、および等価物を網羅することが意図される。
【0080】
以下の実施例では、以下の略語は、以下の意味を有する。略語が規定されない場合、略語は、一般に受け入れられた意味を有する。
【0081】
AGE=アリルグリシジルエーテル
%CF=パーセント凝集破壊
DABCO=1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU=1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−セン
DEG−DVE=ジエチレングリコールジビニルエーテル
DMDO=ジメルカプトジオキサオクタン
DMDS=ジメルカプトジエチルスルフィド
g=グラム
エポキシ/HS=エポキシ/メルカプタン比
JRF=ジェット機標準燃料
ml=ミリリットル
mmHg=ミリメートル水銀
pli=直線インチあたりのポンド(kg/cm)
psi=平方インチあたりのポンド
TAC=トリアリルシアヌレート
以下の試験を、本発明の特定の硬化可能な組成物を特徴付けるために使用した。
【0082】
剥離強度を、Mil−C−27725およびMil−A−8625に従って決定した。接着試験パネルを、シーラントの層を金属基材(例えば、アルミニウム、鋼またチタン)に塗布し、このシーラントの上に遮蔽物を塗布し、そしてこの遮蔽物の上にシーラントの最上層を塗布することにより、調製した。硬化後、遮蔽物と金属基材との間を切断し、遮蔽物を引き出すと、剥離パターンが視覚的に特徴付けられる。望ましいパターンは、シーラントの一部が金属に接着する場合、およびシーラントの一部が切断面に沿って遮蔽物に接着する場合に生じる。このパターンは、引っ張る力/パーセント凝集破壊として表現される剥離強度の決定を可能にする。スクリーン破壊(Screen failure)は、シーラント層が遮蔽物から剥離しているが、金属基材に接着されたままである場合に生じるものとして規定され、そしてこれは、このシーラントが、このスクリーンに対する接着と比較して、金属表面に対して優れた接着を有することを示す。スクリーン破壊は、金属基材に対するシーラントの剥離強度の決定を可能にしない。
【0083】
低温可撓性を、当該分野において公知の方法(例えば、AMS 3267、§4.5.4.7、MIL−S−880E§3.3.12、およびASTMD522.58に記載されているような方法)により、決定した。
【0084】
パーセント膨潤を、ASTM D792およびAMS 3269に記載の手順に従って決定した。特定の適用において、60℃(140°F)で一週間、そして周囲温度、周囲圧力でJRF1型に液浸した後に、パーセント膨潤が、25%より大きくなく、そして好ましくは20%より大きくないことが望ましい。
【0085】
引張り強さおよび伸びを、MMS332 4.4.13.2およびAMS3277 4.5.24に従って決定した。
【0086】
硬度を、MMS 332 4.4.18およびAMS 3277 4.5.5に従って決定した。
【0087】
粘度を、MMS 332 4.4.4およびAMS 3277 4.5.8に従って決定した。
【0088】
保存温度を、、MMS 4.4.14およびAMS 3277 4.5.33に従って決定した。
【0089】
流動性(liquidity)または流動(flow)を、MMS4.4.5およびAMS3277 4.5.9.に従って決定した。
【0090】
航空用および宇宙空間用の適用に関する以下の金属基材を使用し、本発明の硬化可能な組成物を特徴づけた。Alcladは、比較的薄い純粋なアルミニウム層を、高い強度のコアアルミニウム合金の外側表面にロール結合(roll−bonding)することにより形成される複合材料である。アロジン(登録商標)は、アルミニウムおよびアルミニウムの合金の上に、クロム化成被覆を形成するための独自のプロセス(Henkel)である。AlcladおよびAlodine(登録商標)の表面は、両方とも腐食抵抗性である。本発明の硬化可能な組成物の評価のために使用される裸のアルミニウム表面は、AMS4045に準拠する。使用されるスチール表面は、AMS5516−302に準拠し、そしてチタン表面は、AMS4901に準拠する、化学的に純粋な焼鈍したチタンである。
【0091】
(実施例1)
1リットルの4つ口フラスコを、284.07g(1.56モル)のDMDOおよび60.13g(0.38モル)のDMDSで満たし、これに続いて、攪拌中しながら、43.82g(0.38モル)のAGEで満たした。この混合物を、40分間攪拌した。トリエチルアミン(0.18g、0.0018モル)を加え、そしてこの混合物を70℃で2時間加熱した。次いで、9.48g(0.038モル)のTAC、および204.94g(1.30モル)のDEG−DVEの溶液を、70℃で30分かけて加えた。次いで、この混合物を、さらに70℃で30分間攪拌した。フリーラジカル開始剤Vazo(登録商標)67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(DuPont)(0.145g、全分量の0.024%)を7回1時間間隔で加え、一方で、この反応混合物の温度を70℃に維持して、この反応を完了した。次いで、この反応混合物を、70℃で0.5mmHgで2時間脱気し、液体ポリチオエーテル、淡黄食でかつ臭いの少ないポリマー1(92ポイズの粘度を示す)を得た。この反応の収率は、602g(100%)であった。このポリチオエーテルポリマーは、4℃(39°F)の温度で56日間、液体のままであった。
【0092】
このポリチオエーテル、ポリマー1は、後にエポキシ促進剤を用いて硬化されるベース(ベース1)中に処方され得る。ポリチオエーテルポリマーを1を含有するベース組成物を、表1に提示する。
【0093】
【表1】

促進剤組成物、促進剤1の成分を、表2に提示する。
【0094】
【表2】

ベース1および促進剤1を、エポキシ/HS当量比が1:1.05で混合した。生じたシーラントの物理的特性を、25℃(77°F)で7日間硬化した後に決定した。
【0095】
【表3】

(実施例2)
1リットルの4つ口フラスコに、429.57g(2.23モル)のDMSOを充填し、その後、73.65g(0.64モル)のAGEを攪拌しながら充填した。その混合物を、1時間攪拌した。トリエチルアミン(0.21g、0.002モル)を添加し、そしてその混合物を70℃で2.5時間加熱した。次いで、21.23g(0.085モル)のTACおよび209.38g(1.32モル)のDEG−DVEの溶液を、70℃で1時間にわたって添加した。その混合物を、70℃でさらに1時間攪拌した。次いで、6部分のVazo(登録商標)67(0.33g、充填物全体の0.024%)を、温度を70℃に維持しながら1時間の間隔をあけて添加して、反応を完了させた。次いで、その混合物を70℃/0.5mmHgで2時間脱気して、淡黄色でにおいが少なく、114ポアズの粘度を示す液体ポリチオエーテルであるポリマー2を得た。収量は、734g(100%)であった。そのポリチオエーテルポリマーは4℃(39°F)の温度で63日間、液体のままおいた。
【0096】
ポリチオエーテルポリマー2を、実施例1にあるように、ベース(ベース2)に処方した。ベース2を、実施例1の促進剤および種々の組成の促進剤を用いて硬化して、剥離特性を改善した。両方の硬化組成物において、エポキシ/HS比は、1:1.05であった。促進剤2の組成を、表4に与える。
【0097】
【表4】

生じたシーラント組成物の接着力を、Mil−C−27725およびMil−A−8625に従う剥離強度試験を用いて評価した。試験パネル(Mil−C基質)を調製し、そしてJRF1型または3%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液のいずれかに、7日間、60℃(140°F)で浸漬し、その後、剥離強度を決定した。試験検体の剥離強度(pli%凝集破壊)を、表5に与える。
【0098】
【表5】

(実施例3)
5リットルの4つ口フラスコに、2356.4g(12.83モル)のDMDOを充填し、その後403.56g(3.5モル)のAGEを攪拌しながら充填した。その混合物を、70℃で1時間加熱した。トリエチルアミン(0.69g、0.0068モル)を添加し、そしてその混合物を70℃で3.5時間加熱した。116.35g(0.46モル)のTACおよび1147.28g(7.25モル)のDEG−DVEの溶液を、2.5時間にわたって70℃で添加した。その混合物を70℃でさらに1時間攪拌した。9部分のVazo(登録商標)67(0.33g、充填物全体の0.008%)を、70℃の温度で1時間の間隔をあけて添加して、反応を完了させた。その混合物を70℃/0.5mmHgで2時間脱気して、淡黄色でにおいが少なく、160ポアズの粘度を示す液体ポリチオエーテルであるポリマー3を得た。収量は、4.023Kg(100%)であった。そのポリチオエーテルポリマーを4℃(39°F)の温度で少なくとも365日間、液体のままおいた。
【0099】
ポリチオエーテルポリマー3を、実施例1におけるのと同様にベース(ベース3)に処方して、そして種々のエポキシ/メルカプタン比を用いて、表6に示される組成を有する促進剤である促進剤3を用いて硬化した。
【0100】
【表6】

ベース3、およびMil−C表面上で種々のエポキシ/メルカプタン比を生成するためのある範囲のエポキシ/HS当量比を示す種々の量の促進剤3を含有する、硬化したシーラントの剥離強度を、乾燥およびその後のJRF1型中、7日間、60℃(140°F)での浸漬の両方で評価した。その結果を、表7に与える。
【0101】
【表7】

表5および表7に示される結果によって実証されるように、硬化シーラント組成物の接着は、促進剤の組成およびエポキシ/メルカプタン比によって影響を受ける。
【0102】
(実施例4)
5リットルの4つ口フラスコに、2356.4g(12.83モル)のDMDOを充填し、その後403.56g(3.5モル)のAGEを攪拌しながら充填した。その混合物を、1.5時間攪拌した。この時間の間、反応温度は、49℃(120°F)まで上昇した。塩基触媒(2.9g、0.5ml トルエン)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の溶液を、その反応混合物に添加した。その発熱反応は、0.5時間で100℃の温度を生成した。その反応混合物を、70℃まで冷却し、そしてさらに2時間攪拌した。116.35g(0.46モル)のTAC、1147.28g(7.25モル)のDEG−DVEおよび0.2gのVazo(登録商標)67の溶液を、70℃で2時間かけて添加した。ついで、その反応混合物を、70℃でさらに1時間攪拌した。10部分のVazo(登録商標)67(0.6g、充填物全体の0.015%)を、1時間の間隔をあけて70℃の温度で添加して、その反応を完了させた。その混合物を70℃/0.5mmHgで2時間脱気して、淡黄色でにおいが少なく、145ポアズの粘度を示す液体ポリチオエーテルであるポリマー4を得た。収量は、4.023Kg(100%)であった。そのポリチオエーテルポリマーを、少なくとも365日間、4℃(39°F)の温度で液体のままおいた。
【0103】
上記ベースおよび促進剤の両方の組成において、さらなる調整がなされた。ポリチオエーテルポリマー4を用いて形成される5つのベースの組成を、表8に示す。
【0104】
【表8−1】

【0105】
【表8−2】

ベース組成物A、BおよびCを、促進剤(表9に示される組成を有する促進剤4A)を用いて硬化した。
【0106】
【表9】

25℃(77°F)の温度での1週間の硬化の後、ベース組成物A、BおよびC、ならびに促進剤4Aを用いて形成されたシーラントの硬度は、53〜55Rexであった。
【0107】
ベース組成物B、CおよびDを、促進剤(表10に示される組成を有する促進剤4B)を用いて硬化した。
【0108】
【表10】

Mil−C−27725およびMil−A−8625に従って、Mil−C、Alodine(登録商標)およびチタン表面上で、ベース組成物B、CおよびD、ならびに促進剤4Bを用いて形成されたシーラントの剥離強度(pli/%CF)を、表11に示す。
【0109】
【表11−1】

【0110】
【表11−2】

ベース組成物BおよびEをまた、促進剤(表12に示される組成を有する促進剤4C)を用いて硬化した。
【0111】
【表12】

ベース組成物BおよびE、ならびに促進剤4Cを用いて形成されたシーラントの剥離強度(pli/%CF)を、表13に示す。
【0112】
【表13】

(実施例5)
実施例5において、ポリチオエーテルポリマーを、ジエポキシドを用いて合成して、ジエポキシドを用いて合成されたポリチオエーテルポリマーを含有するシーラントの性能と、モノエポキシドを用いて合成されたポリチオエーテルポリマーを含有するシーラントの性能とを比較した。
【0113】
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(162.13g、0.58モル)、DMDO(483.81g、2.64モル)およびトリエチルアミン(0.3g、0.003モル)の溶液を、100℃で16時間加熱し、室温まで冷却し、そして1リットルの4つ口丸底フラスコに充填した。TAC(14.38g、0.058モル)およびDEG−DVE(264.69g、1.67モル)を添加し、そしてその反応混合物を、70℃まで加熱した。3部分のVazo(登録商標)67(0.3g、充填物全体の0.032%)を、1時間の間隔をあけて70℃の温度で添加して、その反応を完了させた。次いで、その反応混合物を、70℃/0.5mmHgで2時間脱気して、淡黄色でにおいが少なく、25℃で87ポアズの粘度を示す液体ポリチオエーテルであるポリマー5を得た。反応収量は、925gm(100%)であった。そのポリチオエーテルポリマーは、35日間、4℃(39°F)の温度で液体のままおいた。
【0114】
ベース組成物(実施例1におけるのと同じ成分を有するベース5)を、実施例1に記載されるモノエポキシドポリチオエーテルではなく、実施例5において形成されたポリチオエーテルを用いて処方した。ベース5を、1:1.05のエポキシ/HS当量比にある3つの種々の促進剤を用いて硬化した。ベース5を用いてシーラントを形成するために使用された促進剤の組成を、表14に示す。
【0115】
【表14】

Mil−C基質上での上記シーラントの剥離強度(pli/%CF)を、乾燥状態下、その後のJRF中での7日間の浸漬ならびにその後のMil−C−27725およびMil−A−8625に従う3%NaCl溶液中での浸漬で決定した。
【0116】
【表15】

実施例1の促進剤1を用いて硬化されたベース1に対する乾燥剥離強度は、比較のために含まれる。ベース1は、モノエポキシドおよび本発明の3工程反応プロセスを用いて形成された本発明のポリチオエーテルポリマーを含むが、他方、ベース5は、ジエポキシドを用いて形成されたポリチオエーテルポリマーを含む。上記モノエポキシドを用いて形成されたポリチオエーテルポリマーを有する硬化組成物は、ジエポキシドを用いて形成されたポリチオエーテルポリマーを含有する硬化組成物(23pli/100%CF)よりも、有意に大きい乾燥剥離強度(38pli/100%CF)を示すことが示されている。ジエポキシドを用いて形成された硬化組成物は、乾燥状態下、その後のJRF中での7日間の浸漬ならびにその後のMil−C−27725およびMil−A−8625に従う3%NaCl溶液中での浸漬剥離強度が20pliよりも大きいことが所望される、航空器シーラントおよび航空宇宙機器シーラントとしての使用のためには、受容され得ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載のポリチオエーテルポリマー。

【公開番号】特開2009−155658(P2009−155658A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97523(P2009−97523)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2006−514893(P2006−514893)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(505282916)ピーアールシー−ディーイー ソト インターナショナル, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】