説明

低温液化ガスタンク用免震装置

【課題】 タンク自体の構成の複雑化を抑え、ランニングコストを抑制可能とする。
【解決手段】 地盤に設けたコンクリート基礎6の上面に永久磁石7を設置し、その上方に配置したLNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に超電導物質8を取り付ける。
更に、LNGタンク1の屋根2c,3c側より取り出したLNG11から液体ヘリウム12を分離精製する液体ヘリウム分離装置9を備えると共に、液体ヘリウム分離装置9より液体ヘリウム12を導く液体ヘリウム配管10の下流側に、超電導物質8に備えた冷却剤流路8aを接続する。LNG11をもとに得られる液体ヘリウム12を冷却剤として用いて超電導物質8を冷却し、この冷却により超電導状態となる超電導物質8と永久磁石7との間に発生する磁気的反発力により、LNGタンク1をコンクリート基礎6より浮上させて、地盤側の振動がLNGタンク1へ伝達されることを抑制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG等の低温液化ガスを貯留するための低温液化ガスタンク用の免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、LNG等の低温液化ガスの貯蔵タンクとして広く用いられている地上式の低温液化ガスタンクは、プレストレストコンクリート(以下、PCと記す)製の床スラブ(コンクリートスラブ)とPC製の側板と鋼製の屋根とからなる外槽の内側に、鋼製の底板と側板と屋根からなる内槽を備えた二重殻タンクとしてある。
【0003】
又、上記内槽内に貯蔵する貯蔵液体であるLNG等の低温液化ガスの吸熱によるガス化を防止するために、内槽の底板と外槽の底板の間には、保冷ブロックのような底部保冷材を挟持させるようにし、又、内槽の側板と外槽の側板の間、及び、内槽の屋根と外槽の屋根の間の空間に、パーライト粒子等の保冷材が充填してある。更に、上記内槽と外槽の間の上記底部保冷材やパーライト粒子等の保冷材が充填してある空間には、窒素ガスが充填してある。
【0004】
上記低温液化ガスタンクは、外部との伝熱を抑制するために低温液化ガスの単位体積当たりの表面積を小さくするという観点から考えると大型化されることが多く、たとえば、大型のLNG用のタンクでは、直径約80m、高さ約50mにもなることがある。
【0005】
上記のような低温液化ガスタンクを地震の多い地域に建設する場合は、地盤に予めコンクリート基礎を設け、該コンクリート基礎の表面に、上記低温液化ガスタンクの外槽の床スラブの平面形状の径方向及び周方向に分散させた複数個所に対応させて免震ゴム(積層ゴム)を設置し、該各免震ゴムの上側に、上記低温液化ガスタンクの外槽の床スラブを載置して取り付けるようにした免震構造が採用されることが多い。
【0006】
ところで、建築物の免震構造の1つとして、建築物の底部を地盤より分離させた状態とし、該建築物の底部と地盤のいずれか一方に磁場発生器としての永久磁石を設け、且つ他方に上記永久磁石の磁場を受けるための超電導体を、上記永久磁石に対向させて設けてなる構成として、上記永久磁石に対する超電導体の磁気的反発力を利用して、上記建築物を地盤より浮上させるようにした形式のものが従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、LNGを収容した液体貯蔵タンクの制振装置の1つとして、該液体貯蔵タンクの底部と地盤との間に、交差する二方向に配置したリニアモータを設け、液体貯蔵タンク内の貯蔵液体であるLNGの液面変動に応じて上記リニアモータを駆動制御することにより該LNGのスロッシングに伴う液体貯蔵タンクの振動を抑制するようにしたものがあり、更に、上記各リニアモータを超電導コイルを備えてなる構成として、該各超電導コイルを、上記液体貯蔵タンク内に収容されたLNGを用いて冷却させるようにすることが従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−302452号公報
【特許文献2】特許第2549436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、コンクリート基礎上に低温液化ガスタンクの床スラブを免震ゴムを介して支持させるようにした免震構造では、上記免震ゴムが時間の経過と共に劣化するため、免震機能に低下が生じるという問題がある。
【0010】
特許文献1には、建築物の底部と地盤との間に対向させて設けた永久磁石と超電導体との磁気的反発力を利用して、上記建築物を地盤より浮上させる考えは示されているが、上記建築物の免震を図るためには、上記超電導体を常に超電導状態に保持する必要がある。
【0011】
なお、現状では、超電導体を超電導状態とするためには、該超電導体を、その超電導転移温度以下となる非常に低い温度まで冷却する必要があり、その冷却にコストが嵩む。
【0012】
しかし、特許文献1には、超電導体を冷却すべき場合は冷却手段内に配置するという考えが示されているのみであって、上記超電導体を冷却し続けることができるようにするための現実的な手段は何ら示されていないというのが実状である。
【0013】
特許文献2には、液体貯蔵タンクの底部に設けた各リニアモータの超電導コイルを上記液体貯蔵タンク内に収容されたLNGを用いて冷却する考えが示されているが、上記各リニアモータの超電導コイルへタンク内のLNGを導くための装置構成としては、タンク底版の下面に、上記超電導コイルを囲繞する非伝導非磁性の合成樹脂製のシースを設け、該シースの内部と連通するLNGの供給側と排出側の一対の通路を、上記タンク底版に貫通させて設けた構成が示されているのみである。
【0014】
しかし、前記したようなPC製の床スラブを備えた外槽の内側に、鋼製の底板を備えた内槽を設けてなる二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクでは、内部が空の状態から低温液化ガスを収納するときには、該低温液化ガスに接するようになる上記内槽の鋼製の底板と、該内槽の底板の外側に底部保冷材が介装された状態で配置されている外槽のPC製の床スラブとでは、上記低温液化ガスの冷熱の影響による収縮量に差が生じてしまう。
【0015】
そのために、上記二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクの底部に、上記特許文献2に示されたLNGの流路と同様に、タンク内の低温液化ガスをタンク下方へ取り出したり、タンク内へ再び戻したりするための流路を設ける場合は、該流路に、上記内槽の底板と外槽の床スラブの低温液化ガス収納時における収縮量の差に起因する両者の相対変位を吸収できるようにするための手段を備える必要があり、よって、該流路の構成が複雑化してしまうことから、二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクの底部に、タンク内部に収納された低温液化ガスを内外方向に流通させるための流路を設けることは、あまり現実的ではない。
【0016】
そこで、本発明は、PC製の床スラブ及び側板と鋼製の屋根とからなる外槽の内側に、鋼製の底板と側板と屋根からなる内槽を備えた二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクについて、免震を良好に図ることができ、且つ該低温液化ガスタンク自体の構成の複雑化を招くことなく上記免震に要するランニングコストを抑えることができる低温液化ガスタンク用免震装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、地盤に設けたコンクリート基礎の上面と、その上方に配置した二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクにおける外槽の床スラブの底面とのいずれか一方と他方に、上下方向に配置した永久磁石と超電導物質を相対向させて取り付け、更に、上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を備え、該冷却手段で冷却されて超電導状態となる上記超電導物質と、上記永久磁石との間に発生する磁気的反発力により上記低温液化ガスタンクをコンクリート基礎より浮上させるようにした構成を有する低温液化ガスタンク用免震装置とする。
【0018】
又、上記構成において、超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、低温液化ガスタンクの屋根側から取り出した低温液化ガスより分離精製する液体ヘリウムを冷却剤とし、且つ該冷却剤を、上記超電導物質に備えた冷却剤流路に流通させるようにしてなる構成とする。
【0019】
同様に、上記構成において、超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、低温液化ガスタンクの屋根側から取り出した低温液化ガスを上記超電導物質に備えた冷却剤流路に流通させるようにしてなる構成とする。
【0020】
同様に、上記構成において、地盤に設けたコンクリート基礎の上面に永久磁石を取り付けると共に、低温液化ガスタンクにおける外槽の床スラブの底面に超電導物質を取り付け、且つ上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、上記超電導物質の上側に、低温液化ガスタンクの外槽を貫通して上端面が該低温液化ガスタンクの内槽の底板の底面に接するように配置した伝熱部材の下端を取り付けてなる構成として、上記超電導物質を、上記内槽の底板及び上記伝熱部材を介した上記低温液化ガスとの熱伝導により冷却させるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の低温液化ガスタンク用免震装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)地盤に設けたコンクリート基礎の上面と、その上方に配置した二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクにおける外槽の床スラブの底面とのいずれか一方と他方に、上下方向に配置した永久磁石と超電導物質を相対向させて取り付け、更に、上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を備え、該冷却手段で冷却されて超電導状態となる上記超電導物質と、上記永久磁石との間に発生する磁気的反発力により上記低温液化ガスタンクをコンクリート基礎より浮上させるようにした構成としてあるので、地盤の水平方向の振動のみならず、地盤の鉛直方向の振動についても、低温液化ガスタンクへの振動の伝達を抑制できて、該低温液化ガスタンクの免震を良好に図ることができる。
(2)又、上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、上記低温液化ガスタンクに収納されている低温液化ガスより分離精製可能な液体ヘリウム、あるいは、上記低温液化ガス自体を使用することで実現することができるため、上記超電導物質を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段を別途用意する必要はない。更に、上記超電導物質に永久磁石に対する磁気的反発力を発生させるために、該超電導物質に電力を供給して電磁力を発生させる必要はないことから、低温液化ガスタンクの免震効果を維持するために必要なランニングコストを抑えることができる。
(3)更に、上記低温液化ガスタンク自体の構成の複雑化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の低温液化ガスタンク用免震装置の実施の一形態として、LNGタンクに適用した場合の例を示す概略切断側面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の免震装置における低温液化ガスタンクの床スラブとコンクリート基礎に設けた超電導物質と永久磁石の部分を拡大して示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図4】図1の免震装置における各超電導物質を液体ヘリウム配管で接続して液体ヘリウムの流通経路を形成した状態を示すもので、(イ)は矩形の区画内に縦横に配列された超電導物質に対して適用する場合の例を、(ロ)は直線状の区画に2列に配列された超電導物質に対して適用する場合の例をそれぞれ示す概略平面図である。
【図5】本発明の実施の他の形態を示す概略切断側面図である。
【図6】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、低温液化ガスタンクの床スラブとコンクリート基礎に設けた超電導物質と永久磁石の部分を拡大して示す切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図4は本発明の低温液化ガスタンク用免震装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0025】
すなわち、PC製の床スラブ2a及び側板2bと鋼製の屋根2cとからなる外槽2の内側に、鋼製の底板3aと側板3bと屋根3cからなる内槽3を備え、且つ上記外槽2の床スラブ2aと内槽3の底板3aとの間に底部保冷材4を、又、上記外槽2の側板2b及び屋根2cと内槽3の側板3b及び屋根3cとの間にパーライト粒子等の保冷材5をそれぞれ充填してなる二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクとしてのLNGタンク1を、地盤に設けたコンクリート基礎6の上方に或る隙間を隔てて配置する。且つ上記コンクリート基礎6の表面と、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に、永久磁石7と超電導物質8の対を、上下方向に対向させた配置として複数組設置する。更に、上記各超電導物質8を超電導状態となるように冷却するための冷却手段として、該各超電導物質8に冷却剤流路8aを備えると共に、低温液化ガスとしてのLNG11より液体ヘリウム12を分離精製するようにしてある液体ヘリウム分離装置9から冷却剤として用いる液体ヘリウム12を上記各超電導物質8の冷却剤流路8aに導くための冷却剤配管としての液体ヘリウム配管10の下流側を、上記各超電導物質8の冷却剤流路8aに接続してなる構成とする。これにより、上記液体ヘリウム12により冷却されることで超電導状態となる各超電導物質8と、上記永久磁石7との間に発生する磁気的反発力により、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aを、上記コンクリート基礎6より浮上させるようにする。
【0026】
詳述すると、上記地盤に設けたコンクリート基礎6の上面における上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの直下位置となる領域には、図2に示すように、上記床スラブ2aの径方向及び周方向に分散させた配置で複数の永久磁石7が設置してある。
【0027】
一方、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面には、上記コンクリート基礎6に設置した各永久磁石7の真上となる位置毎に個別に配置した超電導物質8を、それぞれ取り付ける。
【0028】
上記各超電導物質8は、その内部に冷却剤流路8aが設けてあり、外部より供給される低温の冷却剤を、該冷却剤流路8aの一端側の入口8bから他端側の出口8cまで流通させることにより、該超電導物質8自体を上記冷却剤の温度まで冷却することができるようにしてあるものとする。なお、本実施の形態では、上記したように冷却剤として液体ヘリウム12を用いることから、上記各超電導物質8としては、上記液体ヘリウム12の温度よりも高い温度で超電導状態となる材質のものを用いるようにすればよい。又、上記LNGタンク1を浮上させた状態で上下方向や水平方向の位置を保持できるようにするという観点から考えると、上記超電導物質8は、超電導状態となるときにピン止め効果を発揮する材質のものとすることが望ましい。
【0029】
更に、上記LNGタンク1の屋根2c,3cから内槽3の内底部付近まで上下方向に延びるパイプとして設けてあるLNG取出口13に、上記液体ヘリウム分離装置9を、LNG供給管14を介し接続して、上記LNGタンク1のLNG取出口13より取り出されるLNG11の一部を、上記LNG供給管14を経て上記液体ヘリウム分離装置9に供給し、該液体ヘリウム分離装置9にて、上記LNG11に含まれているヘリウムを、液体ヘリウム12として分離精製できるようにしてある。
【0030】
なお、上記液体ヘリウム分離装置9より液体ヘリウム12の分離精製に供した後に排出されるLNG11aは、更に該LNG11a中に含まれているプロパンやブタンの分離精製を行うための装置(図示せず)へ供給するようにすればよい。あるいは、図示しないLNG戻し管を介し上記LNGタンク1の屋根2c,3c側に設けてあるLNG注入口15へ導いて、上記LNGタンク1へ再度収納させるようにしてもよい。又、後述するヘリウム再混合装置18へ送るようにしてもよい。
【0031】
上記液体ヘリウム分離装置9における液体ヘリウム12の取出口には、冷却剤供給ポンプ16を備えた冷却剤配管としての液体ヘリウム配管10の上流側端部が接続してあり、且つ該液体ヘリウム配管10の下流側に、上記各超電導物質8の冷却剤流路8aの入口8b側を接続するようにしてある。
【0032】
ところで、LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの径寸法が大きい場合は、該床スラブ2aの底面に設けた超電導物質8が広い範囲に配置されるようになっている。そのために、上記広い範囲に配置されている各超電導物質8の冷却剤流路8aを直列に接続して上記冷却剤となる液体ヘリウム12を流通させようとすると、該液体ヘリウム12を流通させる経路の長さが非常に長くなってしまう。
【0033】
そのために、上記床スラブ2aの底面を、たとえば、水平面内で直交する2方向の直線により縦横に分割した主として矩形状となる区画や、水平面内で一方向に配列された超電導物質8の列を2列ずつ含む直線状の区画や、周方向に所要の角度間隔で分割された扇形の区画等、任意の形状の複数の区画に分割するようにして、分割された区画毎に複数の超電導物質8が含まれるようにする。
【0034】
上記のようにして分割された各区画内に配置されている複数の超電導物質8については、図4(イ)に超電導物質8が縦横に配列された矩形状の区画の場合を、又、図4(ロ)に超電導物質8が2列に配置された直線状の区画の場合をそれぞれ示すように、1つの区画内に配置されている複数の超電導物質8を、ほぼ半数ずつ2つのグループに分ける(図4(イ)(ロ)では、一点鎖線で囲んだグループxと二点鎖線で囲んだグループyに分けた状態が示してある)。且つ、上記1つの区画内の2つの超電導物質8のグループ毎に、隣接配置されている超電導物質8の冷却剤流路8aの入口8bと出口8cを、液体ヘリウム配管10を介し順次直列に接続することにより、1つの区画内に、上記2つの超電導物質8のグループ毎に個別に対応する上記液体ヘリウム12の2つの流通経路を、ほぼ平行な配置で形成させるようにしてある。
【0035】
更に、このほぼ平行な配置となる超電導物質8の各グループに対応する2つの流通経路について、互いに液体ヘリウム12を対向流として流通させることができるように該各流通経路の上下流方向を定めて、各流通経路の上流側端部に配置されている超電導物質8の入口8bに、上記液体ヘリウム分離装置9(図1参照)より液体ヘリウム12を導くための液体ヘリウム配管10の下流側を分岐させて接続するようにしてある。これにより、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に設定された各区画では、該各区画内の2つの超電導物質8のグループ毎に形成されている2つの流通経路に上記液体ヘリウム分離装置9より液体ヘリウム配管10を通して導かれる液体ヘリウム12を流通させることによって、該各区画内に配置されているすべての超電導物質8を、上記液体ヘリウム12により冷却することができるようにしてある。しかも、この際、各区画における一方の液体ヘリウム12の流通経路の上流側寄りに設けられている超電導物質8の近傍には、他方の流通経路の下流側寄りに設けられている超電導物質8が配置されるようにしてあるため、各流通経路を上流側から下流側へ流通する液体ヘリウム12が複数の超電導物質8の冷却に順次供されることに伴って徐々に温度が上昇するようになる場合でも、該各区画の面内にて各超電導物質8の温度分布に部分的な偏りが生じることを抑制できるようにして、該各区画の面内で、各超電導物質8とコンクリート基礎6側に設置してある対応する永久磁石7との間の磁気的反発力に部分的な偏りが生じる虞を防止できるようにしてある。
【0036】
上記各区画における2つの液体ヘリウム12の流通経路の下流側端部に位置する超電導物質8の冷却剤流路8aの出口8cは、冷却剤排出管17を介して、ヘリウム再混合装置18に接続してある。
【0037】
上記ヘリウム再混合装置18には、上記LNGタンク1のLNG取出口13よりLNG11を導くためのLNG配管19の下流側端部と、上記LNGタンク1のLNG注入口15へLNG11を戻すためのLNG戻し管20の上流側端部が接続してある。これにより、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aに取り付けてある各超電導物質8の冷却に供された後に上記冷却剤排出管17を通して上記ヘリウム再混合装置18に導かれる液体ヘリウム12を、該ヘリウム再混合装置18にて、上記LNGタンク1より上記LNG配管19を通して導かれるLNG11に再混合するようにしてある。
【0038】
なお、上記ヘリウム再混合装置18には、LNG11を気化させる機能と、液体ヘリウム12を気化させる機能と、LNG11及び液体ヘリウム12の双方の気化したガスを混合してから再液化させる機能を備えてなる構成とすることが望ましい。かかる構成としてあるヘリウム再混合装置18によれば、LNG11と液体ヘリウム12を気化させたガス同士で容易に均一に混合させることができ、その後、両者の混合気体を再液化させてLNG11に戻すことにより、上記各超電導物質8の冷却に供した後の液体ヘリウム12を、容易に且つ均一な状態で上記LNG11に再混合させることができるようにしてある。
【0039】
上記ヘリウム再混合装置18にて液体ヘリウム12の再混合が行われた後のLNG11は、該ヘリウム再混合装置18より上記LNG戻し管20と上記LNGタンク1のLNG注入口15を通してLNGタンク1へ戻すようにしてある。
【0040】
なお、21と22はLNG供給管14とLNG配管19にそれぞれ設けたLNG送液用のポンプである。又、上記コンクリート基礎6とLNGタンク1の外槽2の床スラブ2aとの間に設ける永久磁石7と超電導物質8の対の数と平面的な配置は、図示するための便宜上のものであり、実際には、上記永久磁石7と超電導状態とさせる上記超電導物質8との間に発生させることができる磁気的反発力の大きさと、上記LNGタンク1の総重量との関係や、該LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの平面サイズなどに応じて、上記永久磁石7と超電導物質8の対の数及び配置は自在に設定してよい。
【0041】
以上の構成としてある本発明の低温液化ガスタンク用免震装置を使用する場合は、LNG供給管14のポンプ21と、液体ヘリウム分離装置9と、液体ヘリウム配管10の冷却剤供給ポンプ16と、ヘリウム再混合装置18と、LNG配管19のポンプ22を運転するようにする。これにより、LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aに取り付けた各超電導物質8の冷却剤流路8aに、LNGタンク1より液体ヘリウム分離装置9に導かれたLNG11より分離精製された液体ヘリウム12が流通されるようになるため、上記各超電導物質8が、上記液体ヘリウム12によって冷却されて超電導状態となる。
【0042】
したがって、上記超電導状態となる上記各超電導物質8と、その下方のコンクリート基礎6に設けられている永久磁石7との間に磁気的反発力が発生するようになるため、上記各超電導物質8が取り付けられている上記外槽2の床スラブ2aと一体に、上記LNGタンク1が上記コンクリート基礎6上で浮上するようになる。
【0043】
このように、本発明の低温液化ガスタンク用免震装置によれば、上記LNGタンク1を、上記超電導状態となる各超電導物質8とコンクリート基礎6に設けられている永久磁石7との間に発生する磁気的反発力によりコンクリート基礎6に対して非接触とさせることができるため、該コンクリート基礎6が設けてある地盤の振動が上記LNGタンク1に対して伝達される量を大幅に低減させることができる。
【0044】
しかも、上記LNGタンク1は、コンクリート基礎6上で浮上しているため、地盤の水平方向の振動のみならず、鉛直方向の振動に対しても振動の伝達を抑制する効果を得ることができる。
【0045】
よって、上記LNGタンク1について、免震を良好に図ることができる。
【0046】
更に、上記LNGタンク1を浮上させるための超電導物質8と永久磁石7との磁気的反発力を発生させる際、上記超電導物質8を超電導状態とさせるための冷却は、上記浮上させる対象であるLNGタンク1に収納されているLNG11より分離精製可能な液体ヘリウム12を冷却剤として使用することによって実現できるため、上記超電導物質8を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段を別途用意する必要はない。
【0047】
しかも、上記超電導物質8を超電導状態とさせるための冷却剤として用いる液体ヘリウム12は、上記LNGタンク1の屋根2c,3c側に設けたLNG取出口13より取り出すLNG11を液体ヘリウム分離装置9に導いて、該液体ヘリウム分離装置9でLNG11より分離精製することで製造できるようにしてあるため、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aと、内槽3の底板3aに、温度変化に伴う両者の部分的な相対変位を考慮した状態でタンク内外を連通させるための孔を設ける必要はなく、このため、本発明の低温液化ガスタンク用免震装置は、上記外槽2と内槽3とからなる二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクであるLNGタンク1自体の構成の複雑化を抑えることができると共に、該LNGタンク1に現実に適用する場合に有利な構成とすることができる。
【0048】
更には、上記超電導物質8に永久磁石7に対する磁気的反発力を発生させるために、該超電導物質8に電力を供給して電磁力を発生させる必要はないことから、本発明の低温液化ガスタンク用免震装置によれば、LNGタンク1を地盤より浮上させて免震効果を維持するために必要なランニングコストを抑えることができる。
【0049】
次に、図5は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1乃至図4(イ)(ロ)と同様の構成において、LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に設けた複数の超電導物質8を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、上記複数の各超電導物質8の冷却剤流路8aにLNG11より分離精製する液体ヘリウム12を流通させるようにした構成に代えて、上記冷却手段を、LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に設けた複数の超電導物質8の冷却剤流路8aに、上記LNGタンク1より取り出したLNG11を冷却剤として流通させる構成としたものである。
【0050】
具体的には、図1乃至図4(イ)(ロ)に示したものと同様に上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に複数の超電導物質8を取り付ける。且つ、上記LNGタンク1のLNG取出口13に、冷却剤供給ポンプ16付きの冷却剤配管としてのLNG配管23の上流側端部を接続すると共に、該LNG配管23の下流側に、上記各超電導物質8の冷却剤流路8aの入口8bを接続した構成とする。
【0051】
なお、上記各超電導物質8に対して上記LNG配管23を接続して該各超電導物質8の冷却剤流路8aに対して上記LNG11を流通させるための流通経路の具体的な構成は、上記LNG配管23を、前述した図1乃至図4(イ)(ロ)の実施の形態にて各超電導物質8の冷却剤流路8aを接続した液体ヘリウム配管10と同様の配置として、上記各超電導物質8の冷却剤流路8aを接続した構成としてあるものとする(図4(イ)(ロ)の括弧書き参照)。これにより、本実施の形態においても、上記床スラブ2aの底面に形成する任意の形状の複数の分割区画毎に、複数の超電導物質8の冷却剤流路8aを経る2つの流通経路をほぼ平行な配置で形成できると共に、このほぼ平行な配置の2つの流通経路に、上記冷却剤としてのLNG11を互いに対向流で流通させることができるため、複数の超電導物質8の冷却に順次供されることに伴ってLNG11の温度が徐々に上昇するようになる場合であっても、上記各区画の面内にて各超電導物質8の温度分布に部分的な偏りが生じることを抑制して、該各区画の面内で、各超電導物質8とコンクリート基礎6側に設置してある対応する永久磁石7との間の磁気的反発力に部分的な偏りが生じる虞を防止できるようにしてある。
【0052】
本実施の形態で上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aに取り付ける超電導物質8としては、上記冷却剤としてのLNG11を冷却剤流路8aに流通させて冷却することによって超電導状態となる材質の超電導物質8を用いるようにしてあるものする。
【0053】
上記LNG配管23で各超電導物質8の冷却剤流路8aを順次接続することによって形成した各LNG11の流通経路の下流側端部に配置された超電導物質8の冷却剤流路8aの出口8cは、冷却剤排出管17を介して上記LNGタンク1のLNG注入口15に接続してある。これにより、上記各超電導物質8の冷却に供した後のLNG11は、上記冷却剤排出管17と上記LNGタンク1のLNG注入口15を通してLNGタンク1へ戻すようにしてある。
【0054】
その他の構成は図1乃至図4に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0055】
本実施の形態の低温液化ガスタンクの免震装置によれば、上記LNG配管23の冷却剤供給ポンプ16を運転することにより、LNGタンク1より取り出したLNG11を冷却剤として用いて各超電導物質8を冷却して超電導状態とさせることができ、この超電導状態となる各超電導物質8とコンクリート基礎6に設けられている永久磁石7との間に発生する磁気的反発力により、上記LNGタンク1をコンクリート基礎6より浮上させて該コンクリート基礎6に対して非接触とさせることができる。このため、上記コンクリート基礎6が設けてある地盤の振動が上記LNGタンク1に対して伝達される量を大幅に低減させることができ、よって、該LNGタンク1の免震を良好に図ることができる。
【0056】
更に、上記LNGタンク1を浮上させるための超電導物質8と永久磁石7との磁気的反発力を発生させる際、上記超電導物質8を超電導状態とさせるための冷却は、上記浮上させる対象であるLNGタンク1に収納されているLNG11を冷却剤として使用することによって実現できるため、上記超電導物質8を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段を別途用意する必要はない。
【0057】
以上により、本実施の形態によっても、図1乃至図4(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
しかも、上記各超電導物質8の冷却剤として用いるLNG11は、上記LNGタンク1の屋根2c,3c側に設けたLNG取出口13より取り出すようにしてあるため、該LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aと、内槽3の底板3aに、温度変化に伴う両者の部分的な相対変位を考慮した状態でタンク内外を連通させるための孔を設ける必要はないため、上記外槽2と内槽3とからなる二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクであるLNGタンク1に現実に適用する場合に有利な構成とすることができる。
【0059】
次いで、図6は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1及び図2に示したと同様に、地盤側のコンクリート基礎6の上面に複数の永久磁石7を設置すると共に、上記コンクリート基礎6の上方に或る隙間を隔てて配置したLNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に、上記各永久磁石7の上方に個別に配置した複数の超電導物質8を取り付けた構成において、上記各超電導物質8を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、上記LNGタンク1より取り出したLNG11より分離精製する液体ヘリウム12を各超電導物質8に設けた冷却剤流路8aに流通させるようにした構成に代えて、上記各超電導物質8の冷却手段を、LNGタンク1の内槽3に収納されているLNG11と上記各超電導物質8の間で生じる熱伝導を利用して該各超電導物質8を冷却させる形式の冷却手段としたものである。
【0060】
具体的には、本実施の形態の低温液化ガスタンク用免震装置は、図6に示すように、コンクリート基礎6に設置した各永久磁石7の直上位置に個別の超電導物質8を配置し、且つLNGタンク1の外槽2の床スラブ2aと、底部保冷材4における上記各超電導物質8の真上位置となる部分に、上下方向に貫通する一連の貫通孔24をそれぞれ設ける。
【0061】
上記各貫通孔24には、上下方向に延びる柱状の伝熱部材25を、該伝熱部材25の上端面が上記底部保冷材4の上面と面一になるように挿入配置する。これにより、上記伝熱部材25の上端面が、上記底部保冷材4の上側に配置される上記LNGタンク1の内槽3の底板3aの底面に接触するようにする。更には、上記内槽3の底板3aに該内槽3に収納されるLNG11の荷重が作用して該内槽3の底板の3aが多少撓むことにより、上記伝熱部材25の上端面の全面を、上記内槽3の底板3aの底面に密着させることができるようにしてある。
【0062】
上記各伝熱部材25は、その下端が上記外槽2の床スラブ2aの底面よりもやや上方となる高さ位置に配置されるようにしてあり、且つ、該各伝熱部材25の下端面に、それぞれ対応する配置としてある上記各超電導物質8の上端面が密着させて取り付けてある。これにより、上記LNGタンク1の内槽3にLNG11が収納されている状態では、該内槽3内のLNG11と、上記各超電導物質8との間で生じる上記内槽3の底板3aと上記伝熱部材25を介在させた熱伝導により、該各伝熱部材25の下端に取り付けてある上記超電導物質8を、上記LNG11の温度と一致する低温か又はLNG11の温度付近の低温まで冷却することができるようにしてある。
【0063】
上記の点に鑑みて、本実施の形態で上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aに取り付ける各超電導物質8は、上記LNG11の温度と一致する低温か又はLNG11の温度付近の低温に冷却することにより超電導状態となる材質の超電導物質8を用いるようにしてあるものする。又、本実施の形態で使用する各超電導物質8は、冷却剤を流通させる形式の冷却は行わないことから、冷却剤流路は備えないものとしてある。
【0064】
又、上記伝熱部材25は、できるだけ熱伝導率の高い材質のものとすることが望ましい。
【0065】
なお、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aに対して上記各超電導物質8及び各伝熱部材25を実際に取り付ける場合の作業としては、上記床スラブ2aのPCを構築するときに、予め所定の位置に上記超電導物質8及び伝熱部材25を配置した状態で、床スラブ2a構築用のコンクリートの打設を行うようにして、床スラブ2aの構築と同時に該床スラブ2aに対する上記各超電導物質8及び各伝熱部材25の取り付けを行うようにすればよい。
【0066】
又、上記各伝熱部材25は、図6に示すように、下端側の平面形状よりも上端部の平面形状が小さくなる側面テーパ形状とし、且つ上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aと、底部保冷材4に一連に設ける各貫通孔24は、上記各伝熱部材25の側面テーパ形状に応じて下端側よりも上端部が細くなる形状とすることが望ましい。かかる構成とすれば、上記LNGタンク1の内槽3にLNG11を収納するときに、該LNG11の荷重を上記内槽3の底板3aを介して受ける上記底部保冷材4が上下方向に圧縮されるような変形を生じようとしても、該底部保冷材4における上記各伝熱部材25がそれぞれ挿入してある各貫通孔24の周囲の部分では、該各伝熱部材25の側面テーパ形状により、該各伝熱部材25に対する底部保冷材4の下方への相対変位が抑えられるようになる。このため、上記内槽3にLNG11を収納して、該LNG11の荷重が上記内槽3の底板3aを介して上記各伝熱部材25及び底部保冷材4に上方から作用するときに、上記伝熱部材25の上端部の周囲では、底部保冷材4の上面の沈み込みが抑えられるようになることから、上記各伝熱部材25の上端部より上記内槽3の底板3aに対して局所的に大きな応力が作用するようになる虞を防止できるようにしてある。
【0067】
その他の構成は図1及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0068】
以上の構成としてある本実施の形態の低温液化ガスタンク用免震装置を使用する場合は、LNGタンク1の内槽3に、LNG11を収納するようにする。これにより、上記内槽3に収納されたLNG11と、上記LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面に取り付けてある各超電導物質8との間で生じる上記内槽3の底板3aと各伝熱部材25を介した熱伝導により、上記各超電導物質8が冷却されて超電導状態となる。
【0069】
したがって、上記超電導状態となる上記各超電導物質8と、その下方のコンクリート基礎6に設けられている永久磁石7との間に磁気的反発力が発生するようになるため、上記各超電導物質8が取り付けられている上記外槽2の床スラブ2aと一体に、上記LNGタンク1が上記コンクリート基礎6上で浮上するようになる。
【0070】
以上により、本実施の形態によっても、上記LNGタンク1をコンクリート基礎6より浮上させて該コンクリート基礎6に対して非接触とさせることができるため、上記コンクリート基礎6が設けてある地盤の振動が上記LNGタンク1に対して伝達される量を大幅に低減させることができて、該LNGタンク1の免震を良好に図ることができる。
【0071】
更に、上記LNGタンク1を浮上させるための各超電導物質8と対応する永久磁石7との磁気的反発力を発生させる際、上記各超電導物質8を超電導状態とさせるための冷却は、上記浮上させる対象であるLNGタンク1に収納されているLNG11と、上記各超電導物質8との間で生じる上記内槽3の底板3aと伝熱部材25を介した熱伝導によって実現できるため、上記超電導物質8を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段を別途用意する必要はない。
【0072】
以上により、本実施の形態によっても、図1乃至図4(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
又、上記外槽2の床スラブ2aに対して取り付けられる上記各伝熱部材25は、その上端面が内槽3の底板3aの底面に接しているのみであることから、空の状態の上記内槽3にLNG11を収納することに伴って該内槽3に収縮が生じても、各伝熱部材25の上端面に対して上記内槽3の底板3aの底面が摺動する現象が生じるのみで、何ら構造的に無理な力が作用する虞はない。
【0074】
しかも、上記各超電導物質8の冷却に用いるLNG11は、上記LNGタンク1に収納したままでよいため、該LNGタンク1の外槽2の床スラブ2aと内槽3の底板3aに、LNG11を外部へ取り出すための孔を設ける必要はない。このため、LNGタンク1自体の構成の複雑化を抑えることができて、上記外槽2と内槽3とからなる二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクであるLNGタンク1に現実に適用する場合に有利な構成とすることができる。
【0075】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図1乃至図4(イ)(ロ)の実施の形態、及び、図5の実施の形態では、コンクリート基礎6側に超電導物質8を設置し、低温液化ガスタンクとしてのLNGタンク1の外槽2の床スラブ2aの底面側に、上記超電導物質8と対になる永久磁石7を取り付ける構成としてもよい。又、二重殻タンク形式で且つ屋根2c,3c側からLNG11の取り出しを行うようにしてあるLNGタンク1であれば、いかなるLNGタンク1に適用してもよい。
【0076】
図1乃至図4(イ)(ロ)の実施の形態は、二重殻タンク形式としてあって、外槽2の床スラブ2aの底面に設ける超電導物質8を超電導状態とするための冷却に使用する液体ヘリウム12を分離精製することが可能な低温液化ガスを収納する低温液化ガスタンクであれば、LNG11以外の低温液化ガスを収納する低温液化ガスタンクに適用してもよい。この場合であっても、上記低温液化ガスタンクより取り出される低温液化ガスから分離精製される液体ヘリウム12を、上記外槽2の床スラブ2aの底面に設けてある超電導物質8の冷却剤として用いて該超電導物質8を冷却して超電導状態にさせることにより、該超電導状態の超電導物質8と、地盤側のコンクリート基礎6に設けた永久磁石7との間に生じる磁気的反発力によって上記低温液化ガスタンクを地盤側のコンクリート基礎6より浮上させることができるため、該低温液化ガスタンクの免震を良好に図ることができる。
しかも、上記超電導物質8を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段として、上記低温液化ガスより分離精製する液体ヘリウム12を冷却剤として利用する以外の冷却手段を別途用意する必要はないこと、更に、上記低温液化ガスタンクに収納された低温液化ガスの取り出しを該低温液化ガスタンクの屋根2c,3c側より行うようにすることにより、上記二重殻タンク形式としてある低温液化ガスタンクの外槽2の床スラブ2aと内槽3の底板3aを貫通する孔を設ける必要をなくすことができて、該二重殻タンク形式の低温液化ガスタンク自体の構成の複雑化を抑えることができることから、該低温液化ガスタンクに現実に適用する場合に有利な構成とすることができること、更には、上記超電導物質8に永久磁石7に対する磁気的反発力を発生させるために、該超電導物質8に電力を供給して電磁力を発生させる必要はないことから、低温液化ガスタンクの免震効果を維持するために必要なランニングコストを抑えることができること、等は勿論である。
【0077】
又、図5の実施の形態、及び、図6の実施の形態は、二重殻タンク形式としてあって、外槽2の床スラブ2aの底面に設ける超電導物質8を超電導状態とするための冷却に使用する低温液化ガスを収納する低温液化ガスタンクであれば、LNG11以外の低温液化ガスを収納する低温液化ガスタンクに適用してもよい。この場合であっても、上記低温液化ガスタンク内に収納される低温液化ガスの有する低温を利用して、上記外槽2の床スラブ2aの底面に設けてある超電導物質8を冷却して超電導状態にさせることにより、該超電導状態の超電導物質8と、地盤側のコンクリート基礎6に設けた永久磁石7との間に生じる磁気的反発力によって上記低温液化ガスタンクを地盤側のコンクリート基礎6より浮上させることができるため、該低温液化ガスタンクの免震を良好に図ることができること、しかも、上記超電導物質8を超電導状態になるまで冷却するための冷却手段として、上記低温液化ガスの低温を利用する以外の冷却手段を別途用意する必要はないこと、は勿論である。
【0078】
更に、図5の実施の形態を上記低温液化ガスタンクに適用する場合は、上記低温液化ガスタンクに収納された低温液化ガスの取り出しを該低温液化ガスタンクの屋根2c,3c側より行うようにすることにより、上記二重殻タンク形式としてある低温液化ガスタンクの外槽2の床スラブ2aと内槽3の底板3aを貫通する孔を設ける必要をなくすことができること、一方、図6の実施の形態を上記低温液化ガスタンクに適用する場合は、上記超電導物質8の冷却のために低温液化ガスを低温液化ガスタンクより取り出す必要がないため、この場合も、上記二重殻タンク形式としてある低温液化ガスタンクの外槽2の床スラブ2aと内槽3の底板3aを貫通する孔を設ける必要をなくすことができ、よって、上記二重殻タンク形式の低温液化ガスタンク自体の構成の複雑化を抑えることができることから、該低温液化ガスタンクに現実に適用する場合に有利な構成とすることができること、は勿論である。
【0079】
更には、上記図5の実施の形態を上記低温液化ガスタンクに適用する場合、及び、図6の実施の形態を上記低温液化ガスタンクに適用する場合のいずれにおいても、超電導物質8に永久磁石7に対する磁気的反発力を発生させるために、該超電導物質8に電力を供給して電磁力を発生させる必要はないことから、低温液化ガスタンクの免震効果を維持するために必要なランニングコストを抑えることができることも勿論である。
【0080】
本発明の低温液化ガスタンク用免震装置は、円形以外の平面形状を有する低温液化ガスタンクに適用してもよい。又、低温液化ガスタンクのサイズや低温液化ガスを収納した状態での総重量や平面形状、及び、対で使用する超電導物質8と永久磁石7のサイズや、超電導物質8と永久磁石7の間に発生可能な磁気的反発力の大小等に応じて、コンクリート基礎6と、その上方に配置される低温液化ガスタンクの外槽2の床スラブ2aとの間に設ける超電導物質8と永久磁石7の対の数や配置を自在に設定してよい。
【0081】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
1 LNGタンク(低温液化ガスタンク)
2 外槽
2a 床スラブ
3 内槽
3a 底板
6 コンクリート基礎
7 永久磁石
8 超電導物質
8a 冷却剤流路
11 LNG(低温液化ガス)
12 液体ヘリウム
25 伝熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けたコンクリート基礎の上面と、その上方に配置した二重殻タンク形式の低温液化ガスタンクにおける外槽の床スラブの底面とのいずれか一方と他方に、上下方向に配置した永久磁石と超電導物質を相対向させて取り付け、更に、上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を備え、該冷却手段で冷却されて超電導状態となる上記超電導物質と、上記永久磁石との間に発生する磁気的反発力により上記低温液化ガスタンクをコンクリート基礎より浮上させるようにした構成を有することを特徴とする低温液化ガスタンク用免震装置。
【請求項2】
超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、低温液化ガスタンクの屋根側から取り出した低温液化ガスより分離精製する液体ヘリウムを冷却剤とし、且つ該冷却剤を、上記超電導物質に備えた冷却剤流路に流通させるようにしてなる構成とした請求項1記載の低温液化ガスタンク用免震装置。
【請求項3】
超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、低温液化ガスタンクの屋根側から取り出した低温液化ガスを、上記超電導物質に備えた冷却剤流路に流通させるようにしてなる構成とした請求項1記載の低温液化ガスタンク用免震装置。
【請求項4】
地盤に設けたコンクリート基礎の上面に永久磁石を取り付けると共に、低温液化ガスタンクにおける外槽の床スラブの底面に超電導物質を取り付け、且つ上記超電導物質を超電導状態になるように冷却するための冷却手段を、上記超電導物質の上側に、低温液化ガスタンクの外槽を貫通して上端面が該低温液化ガスタンクの内槽の底板の底面に接するように配置した伝熱部材の下端を取り付けてなる構成として、上記超電導物質を、上記内槽の底板及び上記伝熱部材を介した上記低温液化ガスとの熱伝導により冷却させるようにした請求項1記載の低温液化ガスタンク用免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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