説明

低粘度液晶ポリマー組成物

【課題】本発明の課題は、LCPの溶融粘度または流動性を改良する方法、ならびに親のLCP本来の強度、堅牢性、および伸長特性を維持しながら、より低い加工温度において、厚みの小さいあるいは複雑な形状を持つ製品を効率的に作ることが可能な、改良された溶融粘度や流動性を持つLCP樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、電子部品中で使用される液晶ポリマー組成物であって、
a.液晶ポリマーと
b.官能基がヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、および第1または第2アミンからなる群から選択される1モル当たり100から300グラムの分子量を有する一官能性、二官能性または三官能性化合物であって、いずれの二官能性または三官能性化合物の官能基は同じ基であり、前記官能基は芳香族環の炭素に直接結合している化合物とを、前記液晶ポリマー1kg当たり5から250ミリ当量の水準で、前記官能化合物と前記液晶ポリマーとを200℃から400℃の温度で30秒から10分間接触させて、1000秒-1のずり速度で測定したときに前記組成物の溶融粘度の少なくとも10%を低下させることを含むことを特徴とする液晶ポリマー組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常に高い靭性を持つ改良されたメルトフロー液晶ポリマー組成物(LCP)に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマー組成物は当技術分野で「液晶」および「異方性溶融体」を含む種々の用語で知られている。LCPは、液晶性を持たない類似のポリマーと比較して、例外的に高い引張り強度と引張り係数を持つことで知られている。LCPは、さまざまな電子部品の成形用樹脂を含む多くの用途、さらにフィルムなどのその他の用途において有用である。LCPは困難な成形条件において流動可能であることで知られているが、電子部品をカプセル封入するためなどのある場合において、標準的な成形グレードのLCPの溶融粘度は高すぎる。
【0003】
一般的に言って、どのような所与のLCPであってもその溶融粘度はポリマーの分子量に最も影響を受け、分子量が小さくなればなるほど溶融粘度は低くなる。低分子量のLCPは縮重合により直接合成することができるが、この方法はいくつかの欠点を持つことがある。生成されたポリマーは、溶融縮合プロセスが継続することにより溶融加工の間に分子量(MW)が増加する傾向を持つことがある。50パスカル以下の水準の極端に低い粘度ではこれらのLCPは非常に脆い。加えて、成形グレードのポリマーを作るために設計されたプロセスにおいて、そのような低分子量のポリマーの取扱いは問題が多いことがある。
【0004】
特許文献1は、高分子量LCP100部と、MWが約1000から7000、好ましくは1000〜4000の低分子量LCP1〜100部、好ましくは10〜40部を混合することによる、比較的低い溶融粘度を有するLCPの調製方法について記述している。MWが1000から7000の範囲の低分子量LCP材料は容易に入手できないため、この方法には特殊な装置を使用して特殊な低分子量のLCPを生産する必要がある。
【0005】
特許文献2は、多量のポリエステルまたはポリオレフィンと、好ましくは1000分子量未満の低いMWの液晶化合物との改良された溶融加工可能な配合物について記述している。その液晶化合物は、溶融配合物中でポリオレフィンおよびポリエステル成分と化学的に反応しない。ポリオレフィンまたはポリエステル90重量部に液晶化合物10重量部を添加することによって、25%から75%の溶融粘度の低下が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第376615号
【特許文献2】米国特許第4434262号
【特許文献3】米国特許第4075262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえに本発明の目的は、LCPの溶融粘度または流動性を改良する方法、ならびに親のLCP本来の強度、堅牢性、および伸長特性を維持しながら、より低い加工温度において、厚みの小さいあるいは複雑な形状を持つ製品を効率的に作ることが可能な、改良された溶融粘度や流動性を持つLCP樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
改良された流動性および優れた靭性特性を持つ組成物であって、サーモトロピック液晶ポリマーと、官能基がヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、および第1または第2アミンからなる群から選択される官能化合物を、液晶ポリマー1キログラム当たり約5から約250ミリ当量を含む組成物。
【0009】
本発明はまた、反応条件において、液晶ポリマー1キログラム当たり官能化合物約5から約250ミリ当量の割合で液晶ポリマーと官能化合物とを化合させることにより、低い溶融粘度のサーモトロピック液晶ポリマーを製造する実用的な方法に関する。官能化合物はヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、および第1または第2アミンからなる群から選択される。
【0010】
本発明はさらに、液晶ポリマーと、前記液晶ポリマー1キログラム当たり約5から約250ミリ当量の、官能基がヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、および第1または第2アミンからなる群から選択される官能化合物とを、前記官能化合物と前記液晶ポリマーとの反応を引き起こすのに十分な温度において、かつ1000秒-1のずり速度で測定したときに前記液晶ポリマーの溶融粘度の少なくとも10%の低下を引き起こすのに十分な時間化合させることによって液晶ポリマーの流動性を改良する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(LCP成分)
サーモトロピック液晶ポリマーは当技術分野で「液晶」および「異方性溶融体」を含む種々の用語で知られている。液晶ポリマーは、一般的に分子の軸に沿って長く平坦でそしてかなり堅いモノマーから調製され、同軸または平行のいずれかである分子鎖を拡張する連結基を有する。ポリマーが液晶状態であるかどうかは、光学異方性を測定する既知の方法によって決めることができる。溶融状態において、偏光顕微鏡を使って交差した偏光子の間で検査したときに、もし光を透過するならばポリマーは光学異方性である。ここでサーモトロピック液晶ポリマーはその従来の意味が与えられており、参照として本明細書に組み込まれる特許文献3に記載されているTOT試験によるLCPである。本発明に有用なLCPポリマーには、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、ポ
リ(エステル−イミド)、ポリ(エステル−アミド−イミド)、ポリアゾメチン、またはそれらの混合物が含まれる。いかなるサーモトロピックLCPもこれらの組成物中およびプロセス中で使用することができる。
【0012】
好ましいサーモトロピックLCPはポリエステルまたはポリ(エステル−アミド)であり、ポリエステルまたはポリ(エステル−アミド)が部分的にまたは全体に芳香族であると特に好ましい。芳香族ポリエステルとは、エステル連結基の炭素原子および酸素原子、−C(O)O−(この式中の太字)が芳香族環の一部である炭素原子に結合していることを意味している。
【0013】
(官能化合物)
ここで使用される官能化合物は一、二、三官能性などであってもよい。どの特定の官能化合物でも、1つより多くの官能基が存在する場合は、官能基は同じ官能基であることが好ましい。官能基は芳香族環の炭素原子に直接結合することもまた好ましい。添加される官能化合物の総量がLCP1キログラム当たり約5から約250ミリ当量(meq/kg)の範囲内であれば、1つを超える官能化合物を使用してもよい。LCP粘度を低下させるプロセスを妨害しない置換基であれば、そのような他の置換基が官能化合物に含まれていても良い。
【0014】
有用な官能化合物には、ヒドロキノン、1−ナフトール、ビスフェノール−A、1,6−ヘキサンジアミンカルバマート、テレフタル酸、トリメシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1−ナフトエ酸、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸ジメチル、二酢酸ヒドロキノン、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−アミノフェノール、アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウム、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、4,4’−ビフェノール、1,6−ヘキサンジアミン、4−スルホイソフタル酸、およびイソフタル酸が含まれる。好ましい官能基はヒドロキシルおよびアミンであり、ヒドロキシルおよびカルボキシルは当量ベースで驚くほどより効果的に粘度を低下させるために特に好ましい。好ましい官能化合物は一官能性または二官能性であり、二官能性がより好ましい。しかしまた、粘度を低下させる間に分岐または架橋をLCP中に導入することが望まれる場合、三官能性またはそれ以上の官能化合物が使用される。好ましくは、官能化合物は1モル当たり約100から約300グラムの分子量を有する。
【0015】
上記にリストした有用な官能化合物の他に、LCP粘度を低下させるリストにある適当な官能基を容易に生成する化合物もまた有用な群の定義に含まれる。例えば、アミンカルバマートは一般的に容易に対応するアミンに熱分解し、そのためここではアミンとみなされる。
【0016】
官能化合物の選択において重要な要因は揮発性である。比較的揮発性の化合物を使用することができるが、選択する官能化合物はあまり揮発性が高すぎず、処理条件において蒸気圧が低いことが好ましい。溶融粘度を低下させるプロセスにとって致命的ではないが、比較的揮発性の官能化合物の揮発は歩留まり損失となり、従来の押出し成形機内で粘度を低下させる官能化合物の「実際の効率」を低下させる。もし化合物が比較的揮発性であれば、揮発による消失を避けるために予防措置を取らなければならず、さもなくば官能化合物の一部は大気中に「失われて」しまうであろう。
【0017】
LCP1kg当たり約25から約125ミリ当量の官能化合物を使用することが好ましい。ここで当量とは、プロセスまたは組成物に添加する官能基(例、ヒドロキシルなど)の「モル」数のことを意味する。
【0018】
(他の成分)
本発明の低溶融粘度のLCP組成物は、LCPの流動性または物理的特性を損なうことなしに、その中に充填剤、補強剤、顔料、潤滑剤、離型剤、抗酸化剤、および通常熱可塑性組成物中に見られる他の材料などの他のタイプの成分を任意に有していてもよい。
【0019】
(調製)
LCPの粘度を低下させるために、官能化合物と出発物質のLCPとを適度に均一に混合することが必要である。これは、官能化合物とLCPのエステル基の間で反応が起こる温度に混合物をさらすステップの前またはそれと同時に、LCPと官能化合物を溶融混合することによってなされる。これは、一軸または二軸のスクリュー押出し成形機、または混練機などの典型的なポリマー溶融混合装置中でそのプロセスを行うことによって、最も好都合になされる。このタイプのプロセスは、環境への放出物があったとしても、ほとんど放出しない。
【0020】
LCPの粒子(ペレットなど)と官能化合物の粉末または液体を適当な相対的な量で単にドライブレンドすることによって、新規の組成物を作ることができる。ドライブレンドはタンブルブレンドで実施することが可能である。配合された混合物はその後、適当な溶融混合機に送り込むことができる。その代わりに、通常はペレットの形状であるポリマーと官能化合物を別々に溶融混合装置に計量しながら供給し、その中でポリマー(および、おそらく官能化合物)を溶融させている最中に混合させることができる。
【0021】
溶融粘度を低下させるための反応を行うために、温度はLCPの融点より高くすべきである。この温度は典型的には約200℃から約400℃の溶融温度の範囲であり、好ましくは約275℃から約360℃である。使用する温度、官能化合物、およびLCPに依存して、有用な溶融粘度の低下は典型的には約30秒から約10分で、好ましくは約45秒から約3分で得られる。この時間範囲は、ポリマー溶融混合装置中での典型的な滞留時間である。
【0022】
特許請求された組成物の成分は、通常以下の段階のいずれかで溶融混合により添加される:
1.LCPの粘度を低下させた後に成分を添加する。LCPの溶融粘度の低下は、官能化合物との反応の前後、および成分を添加する前の「純粋な」LCPの粘度を比較することにより測定される。
【0023】
2.粘度低下プロセスの前および別のステップ中に添加する。粘度低下は、官能化合物との反応の前後の組成物(添加された成分を含む)を基に測定される。
【0024】
3.粘度低下と同じ操作での添加、すなわち官能化合物がポリマーと混合かつ/または反応するのと本質的に同時に、添加された成分が溶融混合される。これは、粘度低下と他の成分の混入を1つのステップで完遂することができるため、多くの場合において好ましい。粘度低下は、同じ方法で混合された追加の成分を含むが官能化合物が存在しないポリマーの、前の粘度と後の粘度を比較することによって測定される。
【0025】
粘度が低下したLCP組成物は顆粒化されるか、または後に成形または押出し成形の適用で使用するために成形することができる。代わりに、組成物は成形機中で直接調製して、成形部品を成形することができる。
【0026】
(溶融粘度の測定)
特許請求したLCP組成物の粘度は、1000秒-1のずり速度において測定したときに、下記に示すように元の粘度から少なくとも10%低下する:
最終粘度≦初期粘度−0.10(初期粘度)
ほとんどの場合、LCPの最終粘度は初期粘度より少なくとも50%低く測定される。特定の適用例では、本発明のLCP組成物は出発物質のLCPの温度水準よりも低い温度水準で加工することができる。ほとんどの実際の適用例では、粘度低下は好ましくは少なくとも50%である。ある場合には、最終粘度は原料のLCPの初期粘度から1または2程度の大きさで低下する。この約10パスカル以下の低い粘度水準では、最終的なLCPは熱硬化性の低粘度特性を有する熱可塑性物質であり、カプセル封入および複合材料などの熱硬化性の適用に使用することができる。
【0027】
本発明の改良された流動性をもつLCPの最終的な粘度は、しばしば驚くほど粘度が安定していることが見出される。いくつかの熱可塑性材料、すなわちスプルおよびランナは慣例的に再生されるため、粘度安定性は商用への適用において重要な要素である。リサイクルプロセスにおいて未使用の材料との混合を可能にするように、溶融プロセス時間(15分以上)の妥当な期間中、スプルおよびランナの粘度を安定に保つことは重大なことである。改良された流動性であっても、最終的なLCPは驚くべきことに親のLCPの高い強度と堅牢性と良好な伸長特性を保持する。
【0028】
下記の実施例の溶融粘度はKayenessレオメータ(Kayeness社、RD#3、Box30、E.Main St.,Honeybrook、PA 19344 U.S.A.)で測定した。一般的にKayenessレオメータは、1000 l/sにおいて約50パスカルまでの溶融粘度を容易に日常的に測定することができる。しかし、この50パスカルの値以下の粘度を測定するには大きな注意を払う必要がある。
【0029】
表Iおよび表IIの実施例の溶融粘度は、2.0cm(0.80インチ)の長さの0.5mm(0.02インチ)の半径の穴を持つ金型を使用して、360秒の溶融時間を使って得られた。表IIIの実施例の溶融粘度は、3.48cm(1.2インチ)の長さの0.20mm(0.0078インチ)の半径の穴を持つ実験的な金型を使用して得られた。この小さな径の金型は、市販のEDMタイプのドリルを使用して特注で作られた。この小さな0.20mmの金型は、0.5mmの半径の金型より10パスカル未満の粘度のより正確な測定を提供し、0.4パスカルの水準の粘度を約±0.1パスカルの正確さで測定することができる。両方の金型において、(複数のサンプルの粘度を測定する場合に)粘度値のばらつきを最小限に食い止めるために、サンプル間で少なくとも5分間、好ましくは約30分間の予熱時間を必要とする。
【0030】
1000 l/sで約20パスカルの水準の粘度以下では、測定試験の保留部分の間に金型からのサンプルの垂れ落ちのために、粘度の測定は非常に難しい。
その垂れ落ちは、予熱の間および測定の合間(複数の測定は通常1つのKayeness試験でなされる)に開口部に手動で栓をすることにより効果的に非常に減少させることできる。
【0031】
約10パスカル、および特に約5パスカル未満の粘度水準では、極端に流動性の溶融体はKayenessピストンおよびシリンダーの間に滲み出る傾向にある。これらの測定のばらつきは、安定した状態の粘度に到達するまで(溶融体がそれ以上ピストンとシリンダー壁の間に滲み出ることはないということを示す)
1つのずり速度にて複数の測定を行うことによって減少させることができる。
【実施例】
【0032】
比較例Aを含めた表Iおよび表IIに列挙した実施例において、LCPポリマーは50/50/70/30/270/50のモル比のヒドロキノン/4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の組成を有する。LCPポリマーは、ASTM D3414−82を用いて25℃/分の加熱速度で測定した場合に231℃の融点を有し、ASTM D648を用いて1.8MPaにおいて測定した場合に120℃の加熱たわみ温度(HDT)を有する。LCPポリマーは容易に適用できる方法または当業者によく知られた方法、例えばモノマー中の炭素環状の酸と縮合させたヒドロキシル基の酢酸エステルによって作ることができる。
【0033】
表IIIにおいて、LCPポリマーは50/50/70/30/320のモル比のヒドロキノン/4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸の組成を有する。このポリマーは、当業者によく知られた標準的な重縮合技術により適当なモノマーから調製することができる。この重縮合プロセス中に集積される副生物の量によって示されるように重合がほぼ完了したとみなされた時点で、溶解したかたまりを真空中に置き、より高い温度に加熱して重合を完了させ、残留する副生物を除去する。
【0034】
表III中のプレポリマーは、LCPポリマーと同じ組成の低分子量のものであり、重合プロセスが短縮されることを除いては本質的に同じ方法で調整される。成分(967.6グラム)は765.3ミリリットルの無水酢酸と混合し、170℃で40分間環流した。無水酢酸はその後の3時間で温度を325℃に上昇させる間に除去された。この時点で、50分かけて50mmまで、さらに20分かけて1mmまで徐々に減圧し、その後さらに85分間一定に保った。その結果得られる脆い生成物が表III中のプレポリマーである。
【0035】
実施例中で使用される官能化合物は次の通りである:テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、ヒドロキノン、二酢酸ヒドロキノン、トリメシン酸、1−ナフトエ酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1−ナフトール、ビスフェノールA、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、および4,4’−ビフェノールは全て実験用品店を含む種々の場所で市販されており容易に入手できる。アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウムはRhone−PoulencまたはBASFから入手できる。ヘキサメチレンジアミンカルバマート(Diak(登録商標)#1)はDuPont−Dow Elastmers、Wilmington、DE、U.S.Aから入手できる。
【0036】
ペレット状のLCPは官能化した化合物とドライブレンドし、その後Werner & Pfleiderer 28mm二軸押出し成形機の後方に送り込んだ。押出し成形機は200〜300rpmで作動するバレルとともに作動し、表Iおよび表II中の実施例では290℃に、表III中の実施例では340℃にセットされた。
【0037】
押出し成形機から出てくるストランドは水で急冷され、ペレットに切断された。ペレットは80〜100℃で一晩中真空乾燥(600〜1200Pa、無水、窒素ブリード)させた。非常に低い溶融粘度の組成物を調製する場合、ストランドを下方の水急冷浴の中に斜めに動かし、溶融体が金型表面にこびりつくのを効果的に避けるために、押出し成形機上で45°の金型を使用するのが好都合であった。
【0038】
乾燥したペレットはHPM社(820 Marion Rd.,Gilead,OH 43338,U.S.A.)の171g(6オンス)のHPM射出成形機(HPM社 200−TP 6.5−6.5オンス 射出成形機)を使って射出成形させた。その機械には一般用のタイプのスクリューが装着されていた。この組成物のためにバレルとノズルの温度は典型的には290℃に設定され、金型は80〜90℃に温水加熱された。
【0039】
引張り強度および伸び率は、ASTM D638−91に従って、0.51cm(0.2インチ)/minのクロスヘッド速度で、3.2mm(1/8インチ)の厚さの引張り試験片上で測定した。伸び率を正確に測定するために歪みゲージを使用した。
【0040】
曲げ弾性率は、ASTM D790−92に従って1.6mm(1/16インチ)の厚さの曲げ試験片上で測定した。
【0041】
使用した官能化合物および粘度安定性試験の結果を表Iに示したが、改善された粘度を有するLCPの最終粘度は驚くほど安定であることがわかった。
【0042】
【表1】

【0043】
使用した官能化合物と粘度および特性試験の結果を表IIに示したが、LCPの最終粘度がほとんどの場合に初期の粘度より少なくとも50%少なくなっていることを示している。
【0044】
【表2】

【0045】
a 白い、明らかに結晶性の物質(おそらくヒドロキノン)が押出し成形機の真空ポートから昇華した。したがって生成物中の実際のヒドロキノンの量は200meq/kgより幾分か少なくなりがちであると思われる。
b 非常に低い粘度。5パスカル未満の値が単純に非常に低い粘度の尺度である。
【0046】
表IIIは、出発物質のLCPの特性をプレポリマーおよび本発明のLCPと比較していて、本発明の新規LCP組成物の靭性と低い溶融粘度特性の驚くべき組合せを示している。本発明のLCPは、直接重合させたプレポリマーと比較して、2つの素材の溶融粘度が非常に似ているという事実にもかかわらず、押出し成形の際のストランド形成の容易さによって示されるように驚くべきほど強靱である。プレポリマーはベルト上で扱わねばならず切断に際し破砕しなくてはならないのに対し、最終的なLCPのストランドは、容易に押し出され、ペレットに切断される。
【0047】
加えて、プレポリマーは非常に脆く、液体窒素を使用した極低温ではハンマーミルで簡単に微粉末に粉砕されるのに対し、本発明のLCPは繊維状の物質を形成し、連続的な粉砕において伸長し続けた。この特性は、プレポリマーと官能化合物群を加えたLCP組成物の粉砕生成物のかさ密度を反映している。表に示したLCP組成物の低い密度は、繊維状の特質を示している。粉砕された生成物を比較した50倍の倍率の写真は、本発明のLCP組成物の繊細な繊維状の特質を実証し、本質的に粒状に研ぎ出されたプレポリマー組成物とははっきりと対比された。
【0048】
【表3】

【0049】
上記に示した記述から明らかなように、調製された材料および従った方法は広範な本発明の特定の実施形態に関するものに過ぎない。本発明の形式を例示し記述してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更することができる。したがって、本発明がそれによって限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品中で使用される液晶ポリマー組成物であって、
a.液晶ポリマーと
b.官能基がヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、および第1または第2アミンからなる群から選択される1モル当たり100から300グラムの分子量を有する一官能性、二官能性または三官能性化合物であって、いずれの二官能性または三官能性化合物の官能基は同じ基であり、前記官能基は芳香族環の炭素に直接結合している化合物とを、前記液晶ポリマー1kg当たり5から250ミリ当量の水準で、前記官能化合物と前記液晶ポリマーとを200℃から400℃の温度で30秒から10分間接触させて、1000秒-1のずり速度で測定したときに前記組成物の溶融粘度の少なくとも10%を低下させることを含むことを特徴とする液晶ポリマー組成物。

【公開番号】特開2010−196074(P2010−196074A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135253(P2010−135253)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【分割の表示】特願2000−543530(P2000−543530)の分割
【原出願日】平成11年3月29日(1999.3.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】