説明

低膨張シリカ−チタニアガラスサンプルにおけるゼロCTEクロスオーバーの絶対測定のための光弾性法

【課題】 コストが高くかつ製造に時間がかかる高価なサンプルや設備を必要とせずに、材料の平均CTEゼロクロスオーバー温度を決定する。
【解決手段】 上部ブロック21と下部ブロック20との間に材料のサンプル25を配置する。サンプル25の上面と下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、サンプル25の上面と下面の選択温度を維持して、サンプル25の上面と下面との間に温度勾配を生じさせる。サンプル25をこの温度勾配に曝すことによって、サンプル25内に応力分布パターン18を生成させる。サンプル25のある部分がその材料のTzcと等しい温度にあるときに、パターン18は容易に特定できる形状を備え、それを測定することにより、Tzcの計算が可能になる。材料は、CTEゼロクロスオーバー温度を有するガラスまたはガラスセラミックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基本技法に対する校正の必要なく、ガラスの絶対ゼロクロスオーバー温度(absolute zero crossover temperature)(「Tzc」)を直接測定するために使用できる光弾性技法に関し、より詳しくは、基本技法に対する校正の必要ない、低熱膨張ガラス、例えば、シリカ−チタニアガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ−チタニアガラス、例えば、ULE(登録商標)ガラス(コーニング社(Corning Incorporated))は、熱膨張係数(「CTE」)が非常に低いために、極紫外線(「EUV」)リソグラフィー器具に使用するためのミラー基板に最適な材料である。この基板は、平均CTEゼロクロスオーバー温度(「Tzc」)の値について非常に狭い範囲内で指定され、この温度はガラス組成とガラスの熱履歴によって制御される。Tzcの仕様要件を満たすことを保証するためのガラスの認定は、超音波法を用いたCTEの測定を含む。この間接超音波法はこれまで非常にうまくいっているが、それにはいくつか欠点がある。例えば、
1. この方法は、明確な熱履歴を有する材料を当てにしている。異なる熱履歴の材料を測定するには、その異なる熱履歴の材料の特定の熱履歴について、校正を修正する必要がある。
2. 校正に影響を与え、気付かれない未制御要因、例えば、OH含有量の可能性があり、これにより、部品について計算されたTzcに誤差が生じるであろう。
3. この技法を絶対膨張計測に相関させる労力は、その部品について計算されたクロスオーバー温度において約1から2℃の残留誤差を示す。
4. 間接的な性質と経験的校正への依存のために、顧客は、Tzc精度に関する要件がほぼ数℃程度である場合、材料の認定結果に依存することに、不安が感じている。
【0003】
他方で、Tzcの値は、絶対膨脹計、例えば、ファブリ・ペロー干渉計においてガラスサンプルを測定することによって、確認することができる。絶対膨脹計は定評のある技法であるが、製造環境においてガラスを制御するのには適していない。何故ならば、
1. 注意深く仕上げたサンプルが必要であり、そのようなサンプルは、高価であり、製造に長期間かかる(4から8週間)。
2. 高価な特別仕様の設備と専門家が必要である。
3. 反射コーティングの温度依存性、および光学的に接触した結合の品質などの影響を定量化するのが複雑であり難しいことにより潜在的に影響を受ける。
4. 必要なサンプルのサイズが比較的大きいために、部品を製造するのに使用される材料の本当に代わりになるサンプルを選択することが難しいことがある。
5. サンプルを測定するのに非常に手間取り、典型的に数週間かかる。
【0004】
光弾性サンドイッチ・シール技法は、絶対膨張計測に要求され使用されるのよりもずっと簡単でずっと速い設備を使用して、2種類の材料のサンプル間のCTE差を測定するのに使用できる。しかしながら、この光弾性サンドイッチ・シール技法には、いくつか欠点がある。例えば、
1. 準備期間が長くかかり、比較的高価な、注意深く製造されたサンプルを必要とする。
2. 2種類の材料間のCTEの差を測定するのであって、絶対Tzcを直接的に測定するのではない。
これらの理由のために、光弾性サンドイッチ・シール技法は、製造環境における直接のTzcの特徴付けにはうまく適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、Tzcを測定する公知の方法の欠陥に鑑みて、コストが高くかつ製造に時間がかかる高価なサンプルや設備を必要とせずに、「ULE」ガラスの小さなサンプルの絶対Tzcを迅速かつ安価に測定できる技法が必要とされている。その上、そのような代替法および関連設備は、干渉計のための絶対参照を提供するために製造において使用可能であるべきであり、これにより、産業界で現在使用されている、非常に大きな労働力を要し、空間分解能が低い超音波速度測定を、この高分解能技法で置き換えることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態において、この開示は、基本技法に対する校正の必要がなく、「ULE」ガラスのサンプルの絶対Tzcを直接的に測定できる、ここに記載された光弾性法に関する。この方法は、サンプル内に応力分布パターンを生成する温度勾配にサンプルを曝す工程を含む。サンプルのある部分が材料のTzcと等しい温度にある場合、そのパターンは容易に特定できる形状を備え、その測定によりTzcの計算が可能になる。この方法は、所定のまたは公知の組成にも、ガラスサンプル、例えば、「ULE」ガラスの熱履歴にも依存しない。その上、この方法は、応力光学係数などの材料パラメータの詳細な知識にも依存しない。本開示の方法は、低膨張材料と部品を製造し使用する者にとって有用な様々な技術情報を得るのに使用できる。例えば、
1. この方法は、補助技法、例えば、超音波速度または干渉分光法の校正のための絶対参照として使用できる。
2. この方法は、膨張計測または超音波測定に必要とされるサイズのおおよそ半分である、約50mm以下の長さ寸法を有する角柱形サンプルを測定できる。
3. この方法は絶対CTE自体を直接測定しないけれども、わずかなコストと複雑さで、絶対膨張測定よりも信頼できるTzc値を提供できる。
4. Tzcの測定よりも低いレベルの精度であるが、この方法は、膨張率曲線の勾配に敏感であり、弾性率補正因子(elasticity correction factor)を計算した後にその勾配を測定するのに使用できる。
ある実施の形態において、ゼロクロスオーバー温度は±1℃の精度で決定される。別の実施の形態において、ゼロクロスオーバー温度は±0.5℃の精度で決定される。さらに別の実施の形態において、ゼロクロスオーバー温度は±0.2℃の精度で決定される。
【0007】
別の実施の形態において、この開示は、膨張率曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料、特に低膨張ガラスのゼロクロスオーバー温度を決定する方法であって、
選択された長さ、幅および高さ、並びに第1面または上面と第2面または下面、および複数の側面を有する材料であって、この材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料のサンプルを提供する工程、
高熱伝導率材料の上部と下部のブロック、これらのブロックの各々を独立して加熱および/または冷却するための素子、偏光光源および偏光光の偏光における変化を測定するための検出器を備えた装置を準備する工程、
サンプルの上面が上部ブロックと熱的に接触し、かつ底面が下部ブロックと接触するように、上部ブロックと下部ブロックとの間にサンプルを配置する工程、
上面と下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、上面と下面との間に温度勾配を生じさせるのに十分な時間に亘りそのサンプルの上面と下面の選択温度を維持する工程であって、上面の選択温度Ttが下面の選択温度Tbとは異なっている工程、
温度勾配により生じたサンプル内の等温面に対して平行な方向にサンプルを横切る光ビームの偏光状態の変化を測定することからなる光弾性技法を使用して、サンプル内の応力分布を測定して、最高の引張応力を有するサンプルの水平面を決定する工程、
垂直軸に沿ったサンプルの温度プロファイルを決定する工程、および
最高引張応力を有する面の温度値からTzcを決定する工程、
を有してなる方法に関する。このクロスオーバー温度を決定するために、サンプルにおけるある面はクロスオーバー温度になければならない。それゆえ、Tt>Tzc>Tb、またはTb>Tzc>Tt。使用される装置は、部屋、環境室および真空室からなる群より選択される室内に配置される。この材料は、その材料が、材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有するという条件で、ガラス、ガラスセラミックまたはセラミックであって差し支えない。図2は、膨張率対温度曲線の例を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】公称組成の市販の「ULE」ガラスの代表片の相対長さの温度依存性を示すグラフ
【図2】図1と同じガラス片の相対長さ(膨張率)対温度の変化の比率を示すグラフ
【図3】図1と2と同じガラス片を通る垂直温度勾配を生成する高熱伝導率ブロックの仕様を示し、さらに関連する応力プロファイルも示す概略図
【図4】図2の膨張率曲線により特徴付けられ、図3に示されたような温度勾配に曝された「ULE」ガラスの実質的に均質なサンプルにおける高さの関数としての水平歪みを示すグラフ。異なる曲線は、温度勾配の様々な強度に対応する。
【図5】温度の関数としての水平歪みを示すグラフ。データは図4の曲線から抽出した。
【図6】サンプルの中心での温度の異なる値に関する温度の関数として水平歪みを示すグラフ
【図7】図6の曲線を用いて抽出された温度の関数として水平歪みを示すグラフ
【図8】低熱膨張ガラスを通して垂直温度勾配を生成するための一体型加熱素子および冷却素子を有する高熱伝導率ブロックを用い、真空室内での互いに対するブロックとガラスサンプルの位置を示す実施の形態の概略図
【図9】一方のブロックが一体型加熱素子および冷却素子を有し、他方のブロックが外部加熱素子および冷却素子を有する、高熱伝導率ブロックを用い、それらの素子が低熱膨張ガラスを通る垂直温度勾配を生成するために使用され、真空室内の互いに対するブロックとガラスサンプルの位置を示す、実施の形態の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
方法の有用性を、例示の材料として、EUVL用途に使用するのに適した「ULE」ガラス(コーニング社)を用いてここに説明する。この方法は、膨張率曲線にゼロクロスオーバー温度を有する、任意の製造業者により製造された、どのような材料にも適用できる。この方法は、ほぼゼロの熱膨張を要求する幅広い用途、例えば、EUVL光学系、宇宙鏡に使用される光学系、人工衛星光学系、200nm未満のリソグラフィー法および他の用途に使用されることが決まっている材料のサンプルに適用できる。ここに記載されたサンプルは、長さL、幅Wおよび高さHを有し、これらのサンプルは、正方形、矩形、六角形、八角形などの形状のサンプル片に見られるような、対向する上面と下面および複数の側面を有する。この材料は、材料が、膨張率対温度曲線においてゼロクロスオーバー温度を有し、そこを通過する光に対して透明であるという条件で、ガラス、ガラスセラミックまたはガラスであって差し支えない。ここで、低熱膨張ガラスは、1ppm/℃未満のCTEを有するガラスである。
【0010】
ここに開示された方法は、真空室、空気または他の雰囲気(例えば、不活性ガス)中の環境室、または部屋、例えば、研究室で実施できる。ここで、用語「室(chamber)」は、別記しない限り、部屋、環境室および真空室を意味する集合語である。この方法を、環境室内の空気中または部屋内の空気中で行う場合、雰囲気中への熱漏れが、サンプルへのまたはサンプルからの熱の大気伝導により生じ得る。開放室内の熱流によりさらに、環境室中におけるものと比較して熱漏れ問題が複雑になる。それゆえ、この方法は、環境中への熱漏れが避けられるので、真空室内で行われたときに、「よりクリーン」である。真空室が使用される場合、その圧力は10-3mmHg未満である。ある実施の形態において、圧力は10-4mmHg未満である。しかしながら、製造サンプルのテストのために、この方法を環境室または開放室内で実施することが、製造目的には十分であり、それゆえ、ここに開示された方法の設定と実施は、より簡単でより安価になる。
【0011】
ここで、図4および5において、参照番号30、32および34は、それぞれ、ΔT=40℃、32℃および20℃を表す。また、ここで、図6および7において、参照番号40、42および44は、それぞれ、サンプルの中心での温度=18℃、20℃および22℃を表す(全ての場合において、ΔT=20℃)。
【0012】
半導体業界では、20世紀後半と21世紀初期に起こった情報革命を活気づけたシリコンチップを製造している。この業界は、半導体チップの性能を絶えず改善すると同時に、その製造コストを減少させることによって、この事業に成功してきた。このことは、半導体研究所における設備の肝心な装置であるリソグラフィー・スキャナの光学解像度をどんどん増加させることによって達成されてきた。このスキャナにより、特徴構造サイズがどんどん小さくなっているチップの製造が可能になった。スキャナの解像度が強く求められたために動作波長が減少し、その動作波長は、ArFエキシマレーザにより生成される約193nmの現行の波長での従来の屈折光学系を用いて実際に達成可能な限界に到達した。ArFスキャナは現在、可能な最小の特徴構造サイズに到達するところであり、これは、この業界が、集積回路内のコンポーネントの密度を増加させ続けるつもりなら、新たな技術を発見する必要があることを意味する。この技法が技術力の限界に到達したときにリソグラフィーを置き換える最も有望な候補は、極紫外線リソグラフィー(EUVL)である。いくつかのパイロット・ラインEUVL器具が現在運転されており、この技術を使用したチップ製造が、数年以内に始まると予測されている。生産可能なEUVL器具は、この時点で設計の段階にある。現行のパイロット・ラインの器具と、製造器具との間の重要な違いの1つは、生産スループット要件を満たすために、後者の器具により要求されるずっと高い光源強度である。
【0013】
EUVLは、半導体ウェハーの表面上に成膜される薄いフォトレジスト層(レジスト)上のマスターレチクル(マスクとしても知られている)から特徴構造を再現するために光投射システムに依存するという点で、現行の光リソグラフィーに似ている。EUVLは約13.4nmの波長で動作し、この波長で透明な公知の材料はない。それゆえ、EUVL投射システムは、屈折素子(レンズ)よりむしろ反射コンポーネント(ミラー)に基づいて構築する必要がある。放射線の極端に短い波長は、EUVLシステムの設計者に数多くの難題を突きつけている。例えば、ミラー上の反射コーティングは基本的に約70%の効率に制限され、これは、放射線の30%が各表面で失われることを意味する。この放射線はミラー基板によって熱として吸収され、これにより、材料が温度変化によって膨張または収縮した場合に、ミラーが変形する。その上、全ての気体は13.4nmの放射線を吸収するので、そのシステムは真空中で動作しなければならず、ミラーから熱を除去するのが一層難しくなり、ミラーの加熱問題を悪化させてしまう。それゆえ、ミラー基板をEUVLシステムに使用できるようにするために使用される材料に、極めて厳しい要件が課される。現在、コーニング社により製造された超低膨張(「ULE」)ガラスのコード7973は、EUVL投射ミラーの製造に最適な材料である。「ULE」ガラスコード7973は、室温で極めて小さい熱膨張係数(CTE)を有し、このことは、ミラーの形状を、加熱の際に一定のままにできるという点で重要である。この材料はまた、低脈理(非常に精密なミラー表面の製造が可能になる)、長期の化学的および物理的安定性、および真空環境との適合性などの他の重要な特性を備えている。他の低膨張ガラスとしては、シリカ、溶融シリカ、HPFS(登録商標)(コーニング社)、およびドープトシリカまたはドープト溶融シリカ(例示のドーパントとしては、制限するものではなく、フッ素、チタニア、ゲルマニア、塩素、水素、およびガラスを不透明にする他のドーパントが挙げられる)が挙げられる。
【0014】
全ての材料は、温度変化の際に、膨張するか収縮する。「ULE」ガラスは、図1に示されるように、室温に近い温度での寸法変化が極めて小さいことにより特徴付けられる。図1から分かるように、温度が0℃から20℃に上昇するにつれ、ガラスは、温度の上昇と共に減少する比率で収縮する。すなわち、相対的な長さ変化は、温度の上昇と共に減少する。20℃では、部品の長さは最小に到達し(図1における相対長さ変化がゼロ)、20℃より高い温度では、部品の長さは、温度の上昇と共に増加する。すなわち、20℃より高い温度では、相対長さ変化は、温度の上昇と共に増加する。より詳しくは、「ULE」ガラスの膨張率α(T)は、図1において20℃である、「Tzc」と表示される「ゼロクロスオーバー温度」と呼ばれる温度でゼロである。
【0015】
図2は、図1に使用したのと同じガラス片の相対長さの変化率(すなわち、膨張率α(T))を示している。Tzc未満では、膨張率α(T)は負であり、Tzcより上では、正である。熱負荷、サイズ、およびそのシステムが提供できる熱除去率の計算に基づいて、EUVLシステムの設計者は、そのシステムにおける各ミラーの最適Tzc値を計算する。これは重要な材料パラメータであり、光学系の設計者により厳密に指定されるものである。
【0016】
ガラス製造業者は、厳しいTzc要件を満たすガラスの製造だけでなく、要求される精度でのTzcの測定においても、困難に直面する。現行の超音波法は有用であることが実証されているが、あるユーザは、部品に使用される材料に相関関係がある材料から製造された追加のガラスサンプルも要求する。例えば、これらのサンプルは、ファブリ・ペロー干渉分光法を用いて測定できるが、結果は、部品が出荷されてから数ヶ月後にならないと入手できない。超音波技法からの結果は、1および2℃の間の典型的な誤差でファブリ・ペローのデータと相関関係があり、これは、ある場合には、Tzcのほぼ仕様範囲程度にあるであろう。材料の選択、各技法におけるサンプルサイズの限界、および超音波技法に使用される経験的校正に影響するかもしれない未制御要因を含むいくつかの要因から不一致が生じ得る。これらの不一致は、定量化するのが難しく、なくすのが困難である。その結果、迅速かつ精確にTzcを測定するために使用できる新規の方法をもたらすことが非常に望ましい。
【0017】
本開示は、基本法に対する校正を必要とせずに、シリカ−チタニアガラスの絶対ゼロクロスオーバー温度(「Tzc」)を直接測定するのに使用できる光弾性法を説明する。本開示の方法を例示するために、ここに、「ULE」ガラス(ニューヨーク州、コーニング所在のコーニング社)を例示のシリカ−チタニアガラスとして、制限せずに使用する。本開示の方法は、膨張率曲線にゼロクロスオーバー温度を有する他の材料にも使用でき、ほぼゼロ膨張を要求する幅広い範囲の用途に使用することが決まっている材料のサンプルに適用できる。例えば、本開示の方法は、ガラス、ガラスセラミックまたはセラミックのサンプルが透明であり、サンプル内に応力分布パターンを生成する温度勾配に曝すことができるという条件で、低温ガラス、ガラスセラミックおよびセラミックに使用できる。この材料は、応力パターンを測定するために、偏光光がその材料を透過するので、透明でなければならない。ここにより詳しく説明されるように、サンプルのある部分が材料のTzcに等しい温度にある場合、その応力パターンは、その測定によりTzcの計算を可能にする容易に特定できる形状を備える。ここに記載した方法を使用すれば、ある実施の形態において、Tzcは±1℃以内に決定できる。別の実施の形態において、Tzcは±0.5℃以内に決定される。別の実施の形態において、Tzcは±0.2℃以内に決定される。
【0018】
ここに記載した方法は、サンプルを、そのサンプル内に応力分布パターンを生成する温度勾配に曝す工程を含む。そのサンプルのある部分は、材料のTzcと等しい温度にある場合、そのパターンは、容易に特定できる形状を備え、その測定により、Tzcの計算が可能になる。この方法は、所定のまたは公知の組成にも、「ULE」または他の低膨張ガラスまたは他のサンプル材料の熱履歴にも依存しない。この方法は、応力光学係数などの材料パラメータの詳細な知識にも依存しない。この方法は、補助技法、例えば、超音波速度または干渉分光法の校正のための絶対参照としても使用できる。この方法は、完成部品の最終的なアニーリング工程を制御するのにも使用でき、それゆえ、完成部品におけるTzcの極めて微細な調節が可能になる。
【0019】
この方法は、約50mm以下の長さ寸法を有する、平行六面体、正方形角柱、直角柱または同様の幾何学形態の形状のサンプルを測定することができる。その寸法は、膨張計測または超音波測定に要求されるサンプルサイズのおおよそ半分である。この技法は絶対CTE自体を直接的に測定しないが、その結果はここに、ここに示したデータの結果として、絶対膨張測定よりも信頼性があると考えられるTzc値を提供でき、これは、膨張法のコストと複雑さのほんのわずかで達成できることを示す。光弾性法は、膨張率曲線の傾斜に敏感であり、弾性率補正因子が計算された後にこの傾斜を測定するのに使用できる。傾斜の測定はこの「補正因子」を含むので、膨張率曲線の傾斜の測定は、Tzcの測定よりも精確ではないと予測される。光弾性法の有用性を例示するために、ここでは、この方法は、EUVL用途に使用するための「ULE」シリカ−チタニアガラスへの適用に関して説明されるが、EUVL用途のガラスまたは「ULE」ガラスのいずれにも制限されない。光弾性法は、膨張率曲線においてゼロクロスオーバー温度を有するどのような材料にも適用できる。この方法は、熱膨張がほぼゼロであることを要求する幅広い用途、例えば、制限なく、天体鏡(地球または宇宙)、リソグラフィー素子およびマスク、並びに人工衛星光学系に使用することが決まっている材料のサンプルに適用できる。
【0020】
チタニアドープトシリカである超低膨張「ULE」ガラスから製造された部品のゼロCTEクロスオーバー温度Tzcは、その組成と熱履歴に依存する。現在、「ULE」部品のTzcは、高速かつ直接的な方法が利用できないために、間接超音波速度技法を用いて認定されている。本開示の方法は、市販部品を代表するために選択された「ULE」ガラスの小さなサンプルでTzcを迅速に測定するために使用できる。「ULE」ガラスは、米国特許第5970751号、同第6606883号、同第6988377号、同第7053017号、米国再発行特許第40586号、米国特許第7155936号、同第7506522号の各明細書に記載された方法によって、1〜2メートルの直径および35〜60の厚さの大きなブールの形態で製造される。ブールが形成され、アニール処理された後、部品を製造するためのブランクは、そのブールをより小さな片に切断またはノコギリ引きすることによって得られ、これらの小片は、次いで、仕上げられて所望の部品を形成する。必要に応じて、そのブランクは、部品に形成される前に、さらにアニール処理しても差し支えない。サンプルは、任意の必要な熱処理、例えば、アニール処理がブールに行われた後、ブール材料のものとして得ても差し支えない。サンプルが任意の熱処理中に主要部品(EUVL用途に意図された)を伴う限り、サンプルのTzcの測定変化は、主要部品におけるTzcの変化を反映するであろう。この動作は、追加の熱処理が必要であれば、複数回行って差し支えない。
【0021】
本開示の方法では、小さく、製造するのに容易で安価なサンプル(例えば、50mm(L)×50mm(W)×25mm(H)、すなわち2インチ×2インチ×1インチの平行六面体、ここで、L、WおよびHは、それぞれ、サンプルの長さ、幅および高さである)を使用する。このことは、匹敵するレベルの精度と正確度でTzcを決定できる任意の他の技法と比べたときに、相当な利点である。光弾性法は単純、高速、および経済的であるので、ガラス製造プラントに日常的に使用するのに適している。
【0022】
以下の文節に、この方法をさらに説明する。
【0023】
ここに開示された方法は、「ULE」ガラスのサンプルのTzcを測定できる光弾性技法である。この技法は、直角柱の形状であり、良好な品質に研磨された表面を有し、光学密着を必要としない、実質的に無応力の均質なガラスのサンプルを含む。光学密着(または光学接触)は、光弾性サンドイッチ・シール技法に使用されるサンドイッチ・シールを組み立てるため、またファブリ・ベロー膨脹計を使用して測定したサンプルの端部にミラーキャップを取り付けるために使用される技法である:それらの表面は、非常に高い平面度まで研磨され、注意深く洗浄され、ファンデルワールス力が小片を互いに保持するように密接に接触させられる。この技法は、結合剤を必要とせずに、応力下で滑らない高品質の結合部を生成できるが、高品質の表面と熟達した技術者を必要とし、費用がかかる(特に、サンドイッチ・シールの場合におけるような比較的大きな表面について)。
【0024】
図3(図の右側に示された軸方向x、yおよびz)を参照すると、第1面または上面と第2面または下面を有するサンプル25が、サンプルの周りの温度を制御できる環境室(例えば、グローブボックス)または真空室(図示せず)内の装置に挿入されており、このサンプルは、その室内のブロック20(「下部ブロック」)上に配置されており、この下部ブロック20は高熱伝導性を有する材料から製造されている。真空室が好ましい。サンプルの下面22が均一な温度を有することを確実にするのに、下部ブロック20の上面23とサンプル25の底面22との間に良好な熱接触が要求される。ブロック20は、図3に示されるように、サンプル25の下面22以外のどこにもサンプルとは接触しない。下部ブロック20は、下部ブロック20の温度を所定の温度Tbに維持するための加熱素子および/または冷却素子(図3には示されておらず、図8を参照のこと)を収容している。高熱伝導性ブロック20は、1W/(cm・K)より大きい、好ましくは2W/(cm・K)から4W/(cm・K)の範囲の熱伝導率を有する。
【0025】
サンプル25の上面26は、サンプル25の上面26の均一な温度を確実にする高熱伝導性材料のブロック21(「上部ブロック」)とも接触している。上部ブロック21は、サンプル25の上面26と密接に接触しており、埋め込まれた加熱素子および/または冷却素子(図示せず)、例えば、ブロック21の制御された加熱および/または冷却を可能にし、それによって、サンプル25の上面26とのブロック21の接触によってサンプル25の加熱/冷却を可能にする電気ヒータまたは熱電素子を収容する。矢印12は、サンプル25の上面26に伝達するためのブロック21に供給される熱の方向を示している。あるいは、間接的かまたは温度均一化素子を通していずれかの、それらの表面と接触して熱電素子を配置することなどの、サンプル25の上面26と下面22の温度を独立して正確に制御できる他の構成も可能である。サンプルの外側面を通る熱流はない。熱流は、2つのブロック間の垂直方向にある。このことは、高真空(10-3mmHg未満、好ましくは10-4mmHg未満の圧力)中で実験を行うことにより最もうまく達成され、随意的な放射線シールドの使用により支援することが好ましい。この状況において、熱伝達のための通路が他にないために、上部ブロックに供給される任意の熱は、サンプルを垂直に移動することによって放散される。高熱伝導性ブロック21は、1W/(cm・K)より大きい、好ましくは2W/(cm・K)から4W/(cm・K)の範囲の熱伝導率を有する。
【0026】
サンプルの下面22の温度を所定の値Tbに制御し、上部ブロックに一定の出力Wを印加することによって、サンプル25の上面は温度Ttを有し、上向きの矢印29により示されるように、サンプルの垂直方向に沿って、制御された温度勾配が確立される。この勾配は、サンプル25の垂直高さHにより割られた、上面と下面との間の温度差Tt−Tbに等しい。サンプル25の外側面は断熱的であるので、サンプル25内の温度分布は、矢印29の垂直方向に沿って実質的に線形様式で変化し、その温度はその方向に対して垂直な面内で一定である。温度TbおよびTtは、サンプル25内の面が、サンプルを構成するガラスのTzcと等しい温度を有するように選択される。Tzcは一般に数度内で予め知られており、温度差Tt−Tbは十分の数度であるので、この状況は実際に達成するのが容易である。
【0027】
サンプルが短い、すなわち、高さ「H」が横の寸法のLおよびWに対して小さい場合、そのサンプルは、垂直方向(矢印29)に沿って積分された熱膨張dL(T)/Lにより与えられる平均側方膨張を得る。一定の垂直勾配の場合について、平均集積膨張は:
【数1】

【0028】
に変換され、ここで、Lはサンプルの長さであり、Tは温度であり(垂直方向に沿って可変)、Tbはサンプルの下面22の温度であり、Ttはサンプルの上面26の温度である。垂直方向(図3、矢印29)に沿った温度変動のために、サンプル内の異なる面は、異なる量の歪みを経験する。その歪みは「y」すなわち垂直軸(矢印29)のみの関数であり、それは、サンプル全体の平均膨張と、局所的膨張dL(T(y))/Lとの間の差により与えられ、ここで、T(y)は、下面22上の高さyにある面に関連する局部温度である。サンプルは、各層が独自の膨張特性を有する、多くの非常に薄い層からなるサンドイッチ・シールとして効果的に挙動する。
【0029】
歪み変動は関連する応力分布を有する(図3、応力プロファイルが、番号のついていない点線の間の曲線18により表されている)。Tzcに近い温度にあるサンプルの領域は、水平方向に引張応力を発生するのに対し、そこから離れた区域は、水平方向に圧縮応力を発生する(図3、両端矢印19)。Tzcがサンプルの中心に十分に近い場合には、最高の引張応力を有する点が、Tzcと等しい温度を得たサンプルの面に対応する。サンプルが短いと仮定し、α(T)が温度に線形である場合、応力は、垂直軸に二次的に変化する。α(T)または他のサンプルアスペクト比の非線形温度依存性について、関数依存性はより複雑であるが、最大引張応力はまだ、Tzcと等しい温度にある面の位置でまたはその非常に近くで観察される。
【0030】
図4は、高さが25mmであり、他の2つの寸法が高さよりもずっと大きいと仮定したサンプル(サンプルの有限アスペクト比による補正は小さく、それらは、応力分布の形状に実質的に影響しない)に関する、市販の「ULE」ガラスにおけるα(T)の実際の温度依存性を使用して計算された歪み分布を示している。図4の異なる曲線は、サンプルの上面と下面との間の温度差における異なる値を含むシナリオに対応し、全ての温度分布はTzc=20℃の値辺りを中心としている。曲線34については、ΔT=20℃、曲線32については、ΔT=32℃、曲線30については、ΔT=40℃。歪みの強度は、α(T)が温度に関して線形であれば、温度差Tt−Tbの大きさと共に二次的に増加する。この依存性からの逸脱は、市販の「ULE」ガラスにおけるα(T)の実際の温度依存性の場合についてはわずかである。それゆえ、図4は、図2に示された膨張率曲線により特徴付けられ、図3に示された温度勾配に曝された「ULE」ガラスの実質的に均質なサンプルにおける高さの関数としての水平歪みを示している。正の歪みは引張りであり、負の歪みは圧縮である。異なる曲線は、上述したようにサンプルの上面と下面との間の異なる温度差に対応する。
【0031】
サンプル内の応力分布は、光弾性技法によって、すなわち等温面に対して平行な方向にサンプルを横断する光ビームの偏光状態における変化を測定する(図8参照)ことによって、適切に測定できる。動作波長でのサンプルの透明性以外に、光ビームの波長への制約はない。市販の光学成分の入手可能性と便宜のために、可視範囲内で動作するのに実際的である。応力プロファイルは適切な関数形態によりフィッティングされ、最大引張応力の幾何学位置が決定される。サンプル内の温度分布は、熱拡散方程式を解くことによって計算できる。熱流問題の一次元性質と、ガラスの熱伝導率が室温辺りの比較的狭い範囲ではほぼ一定であるという事実のために、垂直軸に沿った温度変動は、高さと非常に良好な近似度で線形である。それゆえ、測定した最大引張応力の幾何学位置は、温度に特有に関連付けることができ、これは、クロスオーバー温度Tzcの測定値を表す。
【0032】
光弾性技法により測定された応力は、ガラスの弾性定数と応力光学係数の温度の依存性による補正を行って、図4および5の歪み曲線に実質的に比例している。この補正は、小さく(無視できるくらい)、容易に計算でき、測定時間について十分に説明できる。図5は、温度の垂直位置により線形依存性を用いて得られた、図4の同じ3種類のシナリオに関する局所温度の関数として歪みを示しており、これは、図4の曲線から抽出され、サンプル25の下面および上面でのTは固定値である。Tzcの測定は、歪みの強度自体ではなく、純粋に、サンプル中の最大引張応力の位置に依存する。それゆえ、Tzcの測定は、応力光学係数またはサンプルの有限サイズ弾性補正などの要因の不完全な知識に由来する測定誤差の影響は受けない。
【0033】
測定は、Tbおよび/またはTtのいくつかの異なる値について繰り返し、Tzcをより正確に測定できることが好ましく、非線形性による補正の計算、特に、「ULE」ガラス中のTzc辺りのα(T)の変動の非対称特性、およびサンプルの幾何学中心の最大引張応力を生じる任意の他の影響を容易に決定できる。これらの影響はかなり小さく、図6および7の曲線により証拠付けられるように、かなり頻繁に無視することができ、これらの図は、TzcがTbとTtとの間の半分ではない場合の温度シナリオの歪み分布への影響を示している。図6において、水平歪みは、サンプルの中心での温度の異なる値に関して、位置の関数として決定した(中心温度=Tc)。曲線40、42および44は、それぞれ、18、20および22℃のTc値を表し、全ての場合におけるΔTは20℃である。曲線40、42および44が図6と同じ意味を有している図7は、温度の関数としての水平歪みを示しており、図6の曲線から抽出した。図7は、引張歪みの強度はTcにより変化するが、最大引張歪みはまだ、Tzcの数度(少なくとも2度およびおそらくは4度まで)内にあるTcの値に関してTzcで観察されることを示している。
【0034】
サンプルの不均一性による影響は常に無視できるわけではない。特に、そのTzcが垂直軸(図3に示されるような)に沿って変動するサンプルは、図4から7に示されるものとは著しく異なる歪み分布を示す。この状況は、サンプルを注意深く選択することにより、例えば、制限なく、ガラスのブールの公知の回転対称を使用することによって、避けることができる。その上、その影響は、逆温度勾配を有する対の測定を行うことにより、すなわち、実験において、温度TbとTtを逆にすることにより、正確に取り消すことができる。
【0035】
他の2つの軸に沿ったサンプルの不均一性には、「ULE」ガラスの測定への有害な影響がない。これは、「ULE」中のTzcの変動が、図2の膨張率曲線のy軸に平行なシフトに単に関連付けられているという事実による。ここに記載した光弾性法はどのような経験的校正パラメータにも依存しないことも注目に値する。例えば、材料の応力光学係数Kは、その大きさに対する乗数として測定した応力曲線に入るが、測定された応力分布の形状には影響を与えない。同様に、サンプルの形状の弾性効果による応力の減少は、測定した応力の大きさには影響を与えるが、より高次で空間依存性に影響を与えるだけである。これらの影響は、説明することができ、最大引張応力の垂直位置がサンプルの中心辺りで変動する測定によって補正できる。
【0036】
応力分布の大きさは、サンプルに沿った温度勾配の大きさに二次的に(図4から7)、また温度による膨張率の傾きに線形に依存する。「ULE」ガラスの典型的な値は1.0と2.0ppb/K2の間にあり、この小さな値でさえ、サンプルの下面と上面との間で20から40℃の温度差を用いて、測定可能な応力プロファイルを生成できる。この測定温度範囲は、標準的技法において平均CTEを確立するための典型的な値と即しており、膨張率の温度依存性における非線形性と比べて狭い。この測定温度範囲は、ガラスの熱伝導率における変動に対しても、十分に狭い。より小さなα(T)の傾きを有する材料は潜在的に、大きな勾配を必要とするが、非線形性も小さい。
【0037】
要求されるサンプルのサイズは、典型的な「ULE」ガラス製造における均質特性の容積に適合し、ガラスの特徴付けのために製造された他のサンプルと同様かまたはそれより小さい。詳しくは、適切なサンプルは、超音波CTE測定のために現在製造されるサンプル内から製造できる。これらのサイズについて、要求される温度勾配は、下部および上部ブロックに供給されるまたはそこから除去される中程度の出力W(一般に、数十ワット)で容易に生成できる。
【0038】
ここに記載した光弾性法は、自己診断特徴を備えている。この方法は、観察された応力プロファイルを公知の関数にフィッティングする工程を含むので、サンプルの不均一性に由来する潜在的な問題を検出することができる。様々な温度勾配を使用することは、測定したTzcのよりよい定義に加え、クロス検証の機能を果たす。
【0039】
十分に均一なCTEを有する材料を選択する仕事、およびサンプルに沿った均一な温度勾配の確立を容易にするために、より小さなサンプルが望ましく、この方法は、「ULE」ガラスの小さなサンプルを使用することを可能にする。より小さなサンプル容積の要件のために、販売できる部品を認定する目的のために適切なサンプルの抽出に関して柔軟性が加わり、実験の設備がより小さく、より経済的になる。
【0040】
ある実施の形態において、本開示は、各々が、熱電クーラー(「TEC」)素子に取り付けられ、温度制御のために随意的な追加のヒータを収容した、同じまたは同様な材料から製造された同じまたは同様な材料と寸法の上部および下部ブロックの使用に関する。システムが対称様式に構築される場合、TECを通って循環する電流の向きを変えることによって、温度勾配の符号を変えることができ、上述したように、反対の符号の勾配を使用して行った測定を組み合わせることにより、ガラスサンプルの不均一性から生じるある誤差をなくすことができる。TECを使用することの追加の利点は、測定が、凍結剤を使用せずに、室温以下の温度で実施できることである。このことは、一般に、プラント環境において望ましく、これにより、製造測定の日常業務をより完全に自動化することが可能になる。
【0041】
図8は、加熱素子および冷却素子が上部および下部ブロックに組み込まれた実施の形態を示している。図8において、加熱素子および冷却素子が上部ブロック21および下部ブロック20に組み込まれており、加熱素子は実線により表され、冷却素子は点線により表されている。サンプル25が、図3に示されるように、ブロック20および21の間に配置されている。ブロック20および21は、環境室または真空室60(入口ポートと出口ポート、加熱素子と冷却素子への接続のためのポート、真空ポートおよび環境室または真空室に関連する他の器具は、簡単にするために、図示されていない)内にあり、下部ブロック20は、低熱伝導性材料から製造された支持台62上に載置されている。サンプル25の表面は、ブロック内の加熱/冷却素子の別々の制御によって加熱または冷却し、それによって、サンプルに熱勾配を生成することができる。加熱素子は、熱抵抗器により最も都合よく実現でき、加熱と冷却の両方は、ブロック20および21内の蛇行した導管を通して液体を循環させることによって行っても差し支えない。熱電クーラーは、ブロック20および21内に直接埋め込むことができない。何故ならば、これらの素子は、2枚の板からなり、一方の板(「冷たい」板)から除去された熱が、他方の板に伝導され、これは、熱を消散させることのできる熱交換器に接続される必要があるからである。TECを使用する場合、図9の上部ブロックに示したものなどの実施の形態がより適している。
【0042】
図8は、偏光光hν(二点破線)を提供する可動性光源70も示している。光源70からの光hνが、サンプル25を透過し、可動性偏光検出器72により検出される。両端矢印により示されるように、光源と検出器を共に移動させることによって、光hνを定温(等温)面の異なる平行な面に透過させることができる。サンプル内の応力分布またはプロファイルは、サンプルを通る光の偏光状態の変化を測定することによって測定される。任意の偏光光源(可視、赤外、紫外)を使用して差し支えない。可動性の一点測定の代案として、測定は、イメージング偏光計(72の代わりに72p、図示せず)と組み合わせて、サンプル25の全断面を照射する面光源(70の代わりに70e、図示せず)を用いて行うことができる。イメージング偏光計は、広い視野に亘り光の偏光状態を同時に測定できる装置であり、特に、異なる等温面を透過する光の変更状態を測定することができる。
【0043】
図9において、加熱素子および冷却素子は、上部ブロック21の外部にあり、素子64内に配置されている。別の実施の形態において、下部ブロック20は加熱素子および冷却素子を収容しておらず、これら加熱/冷却素子は、ブロック20の下面と支持台62の上面との間に配置された、素子64と同様の素子である。サンプル25の表面は、ブロック内の加熱/冷却素子の別々の制御により加熱または冷却し、それによって、サンプルを通して温度勾配を生成することができる。別の実施の形態において、支持台62の上面は高熱伝導性材料から製造されており、加熱素子および冷却素子は、この支持台内に配置され、それによって、支持台の上面を、その結果として、ブロック20を加熱または冷却する。光源および検出器は、図9については示されていないが、図8に関して論じられているようなものであり、同様の様式で動作される。
【0044】
別の実施の形態において、本開示は、ある材料、たとえば、低膨張ガラスのゼロクロスオーバー温度を決定する方法であって、
選択された長さ、幅および高さ、並びに第1面または上面と第2面または下面、および複数の側面を有する材料であって、この材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料のサンプルを提供する工程、
高熱伝導率材料の上部と下部のブロック、これらのブロックの各々を独立して加熱および/または冷却するための素子、偏光光源および偏光光の偏光における変化を測定するための検出器を備えた装置を準備する工程、
サンプルの上面が上部ブロックと熱的に接触し、かつサンプルの底面が下部ブロックと接触するように、上部ブロックと下部ブロックとの間にサンプルを配置する工程、
上面と下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、このサンプルの上面と下面との間に温度勾配を生じさせるのに十分な時間に亘りそのサンプルの上面と下面の選択温度を維持する工程であって、上面の選択温度Ttが下面の選択温度Tbとは異なっている工程、
温度勾配により生じたサンプル内の等温面に対して平行な方向にサンプルを横切る偏光光の偏光状態の変化を測定することからなる光弾性技法を使用して、サンプル内の応力分布を測定して、最高の引張応力を有するサンプルの水平面を決定する工程、
垂直軸に沿ったサンプルの温度プロファイルを決定する工程、および
最高引張応力を有する面の温度値からTzcを決定する工程、
を有してなる方法に関する。このクロスオーバー温度を決定するために、サンプルにおけるある面はクロスオーバー温度になければならない。それゆえ、Tt>Tzc>Tb、またはTb>Tzc>Tt。部品の厚さは一般に長さまたは幅よりも小さいが、その厚さは、部品の長さまたは幅のいずれか、もしくはそれらの両方と同じまたはそれより大きくても差し支えない。使用される装置は、部屋、環境室および真空室からなる群より選択される室内に配置される。
【0045】
さらに別の実施の形態において、本開示は、ある材料、例えば、低熱膨張ガラスの膨張率の温度依存性を決定する方法であって、
選択された長さ、幅および高さ、並びに対向する上面と下面を有する材料であって、この材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料のサンプルを提供する工程、
高熱伝導率材料の上部と下部のブロック、これらのブロックの各々を独立して加熱および/または冷却するための素子、偏光光源および偏光光の偏光における変化を測定するための検出器を備えた装置を準備する工程、
高さにより決定されるように、サンプルの上面が上部ブロックと熱的に接触し、かつ底面が下部ブロックと接触するように、上部ブロックと下部ブロックとの間にサンプルを配置する工程、
上面と下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、このサンプルの上面と下面との間に温度勾配を生じさせるのに十分な時間に亘りそのサンプルの上面と下面の選択温度を維持する工程であって、上面の選択温度Ttが下面の選択温度Tbとは異なっている工程、
温度勾配により生じたサンプル内の等温面に対して平行な方向にサンプルを横切る偏光光の偏光状態の変化を測定することからなる光弾性技法を使用して、サンプル内の応力分布を測定して、最高の引張応力を有するサンプルの水平面を決定する工程、
垂直軸に沿ったサンプルの温度プロファイルを決定する工程、および
弾性率補正因子が計算された後に温度の関数として測定された応力分布の垂直依存性の数学的フィッティングから膨張率傾斜を決定する工程、
を有してなる方法に関する。使用される装置は、部屋、環境室および真空室からなる群より選択される室内に配置される。
【0046】
別の実施の形態において、本開示は、低膨張ガラスのゼロクロスオーバー温度および/または低熱膨張ガラスの熱膨張率の温度依存性を決定するための装置であって、
評価されるサンプルを保持するためのホルダであって、上部ブロックと下部ブロックを備え、上部ブロックおよび下部ブロックがホルダ内のサンプルの対向する面と接触し、それらのブロックが異なる温度に加熱/冷却されたときに、サンプル内に温度勾配が生じるようにそれらブロックを独立して加熱および/または冷却できるように構成されたホルダ、
偏光光源、および
偏光光源からの偏光光の偏光状態を、偏光光がサンプルを透過した後に検出するための検出器、
を備えた装置に関する。この装置は、部屋、環境室および真空室からなる群より選択される室内に配置される。
【0047】
本開示の精神および範囲から逸脱せずに、この開示に様々な改変および変更を行って差し支えないことが当業者には明白である。それゆえ、本開示は、この開示の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に含まれるという条件で包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0048】
20,21 下部または上部ブロック
25 サンプル
62 支持台
70,70e 光源
72 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料のCTEゼロクロスオーバー温度を決定する方法であって、
高熱伝導率材料の上部ブロックと下部ブロック、該ブロックの各々を独立して加熱および/または冷却するための素子、偏光光源および該偏光光の偏光における変化を測定するための検出器を備えた装置を室内に準備する工程、
選択された長さ、幅および高さ、並びに対向する上面と下面、および複数の側面を有する材料であって、該材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料のサンプルを提供する工程、
前記サンプルの上面が前記上部ブロックと熱的に接触し、かつ該サンプルの底面が前記下部ブロックと接触するように、該上部ブロックと該下部ブロックとの間に該サンプルを配置する工程、
前記サンプルの上面と下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、該サンプルの上面と下面との間に温度勾配を生じさせるのに十分な時間に亘り該サンプルの上面と下面の選択温度を維持する工程であって、該上面の選択温度Ttが該下面の選択温度Tbとは異なっている工程、
前記温度勾配により生じた前記サンプル内の等温面に対して平行な方向に該サンプルを横切る偏光光の偏光状態の変化を測定することからなる光弾性技法を使用して、該サンプル内の応力分布を測定して、最高の引張応力を有する該サンプルの水平面を決定する工程、
垂直軸に沿った前記サンプルの温度プロファイルを決定する工程、および
最高引張応力を有する面の温度値からTzcを決定する工程、
を有してなり、
前記材料が、CTEゼロクロスオーバー温度を有するガラスおよびガラスセラミックからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記過熱素子および冷却素子が、
(a) 前記サンプルと熱的に接触した前記ブロック中に組み込まれた加熱素子および冷却素子、
(b) 前記サンプルと熱的に接触した前記ブロックの外部の加熱素子および冷却素子、および
(c) 前記サンプルと接触した前記ブロックの一方の外部の加熱素子および冷却素子と、該サンプルと接触した該ブロックの他方の内部にある加熱素子および冷却素子、
からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ゼロクロスオーバー温度の決定の精度が±1℃であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記室が真空室であり、該室が、前記サンプルの面が加熱および/または冷却される前に、10-3mmHg未満の圧力まで真空にされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記偏光光が、偏光された可視光、赤外光および紫外光からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記材料が、1ppm/℃未満のCTEを有する透明ガラスまたはガラスセラミックであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
低熱膨張材料のサンプルの膨張率の温度依存性の勾配を決定する方法であって、
高熱伝導率材料の上部ブロックと下部ブロック、該ブロックの各々を独立して加熱および/または冷却するための素子、偏光光源および偏光光の偏光における変化を測定するための検出器を備えた装置を室内に準備する工程、
選択された長さ、幅および高さ、並びに対向する上面と下面、および複数の側面を有し、前記高さが前記長さと幅より小さいものである材料であって、該材料を通過する光に対して透明であり、膨張率対温度の曲線においてゼロクロスオーバー温度を有する材料のサンプルを提供する工程、
前記サンプルの上面が前記上部ブロックと熱的に接触し、かつ前記サンプルの底面が前記下部ブロックと接触するように、該上部ブロックと該下部ブロックとの間に該サンプルを配置する工程、
前記上面と前記下面をそれぞれの選択された温度まで独立して加熱または冷却し、前記サンプルの上面と下面との間に温度勾配を生じさせるのに十分な時間に亘り該サンプルの上面と下面の選択温度を維持する工程であって、該上面の選択温度Ttが該下面の選択温度Tbとは異なっている工程、
前記温度勾配により生じた前記サンプル内の等温面に対して平行な方向に該サンプルを横切る光ビームの偏光状態の変化を測定することからなる光弾性技法を使用して、該サンプル内の応力分布を測定する工程、
垂直軸に沿った前記サンプルの温度プロファイルを決定する工程、および
温度の関数として測定された前記応力分布の垂直依存性の数学的フィッティングから膨張率勾配を決定する工程、
を有してなり、
前記材料が1ppm/℃未満のCTEを有する透明ガラスまたはガラスセラミックであることを特徴とする方法
【請求項8】
前記室が真空室であり、該室が、前記サンプルの面が加熱および/または冷却される前に、10-3mmHg未満の圧力まで真空にされることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
低膨張ガラスの平均CTEゼロクロスオーバー温度を決定するための装置であって、
評価されるサンプルを保持するためのホルダであって、上部ブロックと下部ブロックを備え、該上部ブロックおよび該下部ブロックが該ホルダ内の前記サンプルの対向する面と接触し、異なる温度に加熱/冷却されたときに、該サンプル内に温度勾配が生じるように前記ブロックを独立して加熱および/または冷却できるように構成されたホルダ、
偏光光源、および
前記偏光光源からの偏光光の偏光状態を、該偏光光が前記サンプルを透過した後に検出するための検出器、
を備えた装置であり、
前記偏光光が、偏光された可視光、赤外光および紫外光からなる群より選択され、
前記評価されたサンプルの材料が、ゼロクロスオーバー温度を有する透明なガラスまたはガラスセラミックであることを特徴とする装置。
【請求項10】
10-3mmHg未満の圧力に到達し、維持できる真空室をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−43503(P2011−43503A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−184805(P2010−184805)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】