説明

低臭気性溶剤型塗料組成物

本発明は、「(A)エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の塗料用樹脂、(B)低臭気性有機溶剤、(C)炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、および、必要により、塗料用樹脂(A)用の硬化剤(D)を含んでなり、有機溶剤としてキシレンおよびトルエンを実質的に含まないことを特徴とする低臭気性溶剤型塗料組成物、および、当該塗料組成物からなる低臭気性塗膜を有するコンテナ、建築物あるいは構造物」に関する。
本発明は、臭気中和性を有する成分(C)を含有することにより、低臭気性に優れるという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
発明の技術分野
本発明は、低臭気溶剤型塗料組成物に関し、さらに詳しくは、貨物等を収容して輸送するコンテナボックスや建築物・構造物などの内面塗装用塗料などとして好適に使用され、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく抑制される低臭気溶剤型塗料組成物に関する。
従来技術の問題点
従来、コンテナ等の内面塗装に使用される塗料は、塗装後しばらくの間は臭気を発生し、コンテナによる貨物の輸送中にその臭気が貨物に付着し、貨物の商品価値を損なう恐れがあるという問題点があった。
そのため、ペイント臭の主な原因物質と思われるキシレンなどを全く使用せず、ペイント臭が著しく抑制された低臭気溶剤型塗料組成物の開発が求められていた。
なお、低臭気溶剤型塗料組成物に関しては、これまでにも種々提案されている。
例えば、特開平2−180972号公報には、少なくとも水、酸性バインダーおよび消臭成分の固体酸からなる水性消臭塗料が開示され、酸性バインダーとしては、カチオン性ポリマー、ポリ酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂(アクリル、エチレン、ビニルバーサチック酸等の共重合体)などが挙げられている。この水性消臭塗料からなる塗膜によれば、塩基性ガス等の悪臭を化学吸着によって除去できる旨記載されている。
しかしながら該公報に記載の塗料には、溶剤臭の低減および抑制の点で改良の余地がある。
特開2002−212484号公報には、カテキン化合物、タンニン酸またはタンニン化合物を消臭剤として添加した、動植物油又は光開始剤含有印刷インキが開示され、動植物油含有印刷インキとして、顔料、ワニス、動植物油を含有するものが挙げられ、光開始剤含有印刷インキとして、顔料、光重合性液状化合物、光開始剤を含有するものが挙げられている。
しかしながら該公報に記載の塗料には、カテキン化合物等の消臭効果の点で改良の余地がある。
さらに、特開昭54−99140号公報には、低〜中沸点の溶剤に溶解性を有する樹脂を溶解したアルミサッシ補修用速乾性インキが開示され、樹脂としては、天然又は合成樹脂であるガムロジン、ケトン樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂が挙げられ、溶剤としては、速乾性の観点から、ラッカーシンナー、キシレン、トルエン等の芳香族系、酢酸ブチル等のエステル系、MEK等のケトン系、その他揮発油系等が挙げられているが、臭気に関しては何ら記載も示唆もされていない。
発明の目的
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、貨物等を輸送するコンテナボックスや建築物・構造物などの内面塗装用塗料などとして好適に使用され、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく抑制される低臭気溶剤型塗料組成物、その塗膜、および該塗膜を有する低臭気性のコンテナ、建築物、構造物などの各種成形体を提供することを目的としている。
【発明の開示】
本発明に係る低臭気性溶剤型塗料組成物は、
(A)エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の塗料用樹脂、
(B)低臭気性有機溶剤、
(C)炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、および、必要により
(D)塗料用樹脂(A)用の硬化剤
を含んでなり、有機溶剤としてキシレンおよびトルエンを実質的に含まないことを特徴としている。
本発明では、上記低臭気性有機溶剤(B)が、酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブからなる群から選ばれた低臭気性有機溶剤であることが好ましい。
本発明では、上記化合物(群)(C)が、炭素数8以上のエステルのうちの1種である、ヘキサン酸−2−プロペニルエステル[CH(CHCOOCHCH=CH]、
ヘプタン酸−2−プロペニルエステル[C13COOCHCH=CH]、
オクタン酸−2−プロペニルエステル[C15COOCHCH=CH]、
酢酸−4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルエステル:

、ラクトンの1種である5−ヘプチルジヒドロ−2(3H)−フラノン:

のうちの何れか1種以上であることが好ましい。
本発明では、酢酸ブチルに代表される低臭気性有機溶剤(B)を塗料組成物中に5〜30重量%の範囲で含むことが好ましく、また、上記化合物(C)を塗料組成物中に0.01〜1.0重量%の範囲で含むことが好ましい。
本発明では、上記エポキシ樹脂用の硬化剤が、ポリアミドまたはその変性物からなる硬化剤であり、
また、ウレタン樹脂用の主剤がポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリチオールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であり、
ウレタン樹脂用の硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
本発明に係るコンテナ用塗料組成物は、上記の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなっている。
本発明に係るコンテナ用インテリア塗料組成物は、上記の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなっている。
本発明に係るコンテナ用フロア塗料組成物は、上記の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなっている。
本発明に係るコンテナ用シーラント塗料組成物は、上記の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなっている。
本発明に係る建築物用または構造物用塗料組成物は、上記の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなっている。
本発明に係る低臭気性塗膜は、上記の何れかに記載の塗料組成物から塗布形成されている。
本発明に係る低臭気性塗膜付コンテナ、建築物あるいは構造物は、上記の低臭気性塗膜がコンテナ、建築物あるいは構造物の内側表面に形成されたことを特徴としている。
本発明によれば、貨物等を収容して輸送するコンテナボックスや建築物・構造物などの内面塗装用塗料などとして好適に使用され、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく抑制可能な低臭気溶剤型塗料組成物、その塗膜、および該塗膜を有する低臭気性のコンテナ、建築物、構造物などの各種成形体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る低臭気溶剤型塗料組成物(塗料、塗料組成物とも言う。)、その塗膜、および該塗膜を有する低臭気性のコンテナ、建築物、構造物などの各種成形体について具体的に説明する。
[低臭気溶剤型塗料組成物]
本発明に係る低臭気性溶剤型塗料組成物は、
(A)エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の塗料用樹脂、
(B)低臭気性有機溶剤、
(C)炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(化合物(C))、および、必要により、
(D)塗料用樹脂(A)用の硬化剤
を含んでなり、有機溶剤としてキシレンおよびトルエンを実質的に含んでいない。
[塗料用樹脂(A)]
塗料用樹脂(A)としては、得られる低臭気性溶剤型塗料組成物の常温硬化または焼き付け硬化に使用可能なエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂((メタ)アクリル樹脂ともいう。)、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、なかでもエポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂が基材への付着性、耐薬品性、塗装作業性、防食性)の点からは好ましい。
なお、本発明では、「樹脂」なる用語は、塗料中にあって、硬化剤との組合わせで論じるときは、主に、硬化剤などにて未だ三次元架橋されていない未架橋物(未硬化物)の意味で用いる。
本発明では、これら樹脂(A)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
以下、特に好ましいエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびそれら樹脂用の硬化剤について詳述する。
<エポキシ樹脂(a)>
本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、エポキシ当量が150〜600、好ましくは180〜500である。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特にビスフェノールA(BPA)タイプのエポキシ樹脂が好ましく用いられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いると、密着力の優れた塗膜を形成することができる。
ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂としては、たとえばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAプロピレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、例えば、エポキシ樹脂としてエポキシ当量が160〜500で、液状〜固形のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
これらの好ましいエポキシ樹脂を更に詳しく例示すると、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂をはじめ、ダイマー酸変性、ポリサルファイド変性のエポキシ樹脂等を挙げることができ、芳香環を有する構造のエポキシ樹脂が水添された構造のものを用いることもできる。ビスフェノールAまたはビスフェノールFタイプ等の芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。
代表的なエポキシ樹脂としては、常温で液状のものでは、「エピコート828(商品名)」(シェル(株)製、エポキシ当量180〜190、粘度12,000〜15,000cPs/25℃)、「エポトートYDF−170(商品名)」(東都化成(株)製、エポキシ当量160〜180、粘度2,000〜5,000cPs)、「フレップ60(商品名)」(東レチオコール(株)製、エポキシ当量約280、粘度約17,000cPs/25℃)などを挙げることができ、常温で半固型状のものでは、「エポトートYD−134(商品名)」(東都化成(株)製、エポキシ当量230〜270)などを挙げることができ、常温で固型状のものでは、「エピコート1001(商品名)」(シェル(株)製、エポキシ当量450〜500)などを挙げることができる。
<エポキシ樹脂(a)用の硬化剤>
エポキシ樹脂用の硬化剤としては、前記エポキシ樹脂を反応、硬化させ得るものであれば特に限定されず、アミン系、カルボン酸系、酸無水物系、シラノール系のものなどを任意に使用することができるが、常温環境下で施工する場合、特にアミン系の硬化剤が好ましく用いられる。
このようなアミン系硬化剤としては、アミン価50〜1,000の液状〜固形の硬化剤が好ましい。これらのアミン系硬化剤を更に詳しく例示すると、ポリアルキレンポリアミン、芳香族アミン、ポリアミド、ポリアミドアミン等を挙げることができ、さらにこれらのアミンにエポキシ化合物を付加させたエポキシアダクト体、マンニッヒ変性体、カルボン酸によるアミド変性体等の変性物を用いることもできる。
さらにこれらのアミン化合物をケトンで変性したケチミンタイプの硬化剤も使用することができる。これらの硬化剤のうちで、ポリアミドとしては、具体的には、「ラッカマイドTD−966(商品名)」(大日本インキ化学工業(株)製、アミン価150〜190)などを挙げることができ、その他のアミン化合物として、ケチミンタイプの変性脂環式ポリアミンである「アンカミンMCA(商品名)」(アンカーケミカル社製、アミン価250〜350)など、エポキシアダクト系アミンである「PA−23(商品名)」(大竹化学(株)製、アミン価80〜150)など、変性フェノルカミンである「カードライト541LV(商品名)」(アンカーケミカル社製、アミン価260〜350)など、変性芳香族ポリアミンである「アデカハードナーEH101(商品名)」(旭電化(株)社製、アミン価400〜500)など多種の化合物を例示することができる。これらのアミン系硬化剤のなかでは、ポリアミド、ポリアミドアミンのエポキシアダクト、変性フェノルカミンが特に好ましい。
<ウレタン樹脂(b)>
ウレタン樹脂としては、特に限定されず、1液型である油変性形(例:ウレタン化油)、湿気硬化形、ブロック形等の何れかであってもよく、2液型である触媒硬化形、ポリオール硬化形等の何れかであってもよい。なお、硬化剤としてあるいは硬化開始には、油変性形では酸素、湿気硬化形では湿気、ブロック形では加熱、触媒硬化形ではアミン、ポリオール硬化形ではポリオール等が用いられる。
以下、塗装作業性、耐薬品性、付着性の点から特に好ましい態様である、ウレタン樹脂用主剤としてのポリオールおよび/またはポリチオールと、硬化剤としてのウレタン樹脂用ポリイソシアネート系硬化剤とを用いる場合について詳説する。
<ポリオール>
本発明で用いられるウレタン樹脂用主剤のポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、アルカンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット);ポリグリセロール、ポリテトラメチレングリコール等の多価ヒドロキシ化合物などの炭素原子数10程度までのポリグリコール化合物、および無水フタル酸、セバシン酸、脂肪酸、エポキシ樹脂等から誘導されるポリエステルポリオール、エポキシポリオール(アルカノールアミン変性エポキシ)、ポリエーテルポリオールまたはアクリルポリオールなどが挙げられる。
中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールが好ましく、特にポリエステルポリオール、アクリルポリオールが望ましい。
<ポリチオール>
本発明で用いられるポリチオール(ポリメルカプト化合物)は、メルカプト基(−SH基)を2個以上有する化合物である。ポリチオールとしては、具体的には、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,3−ジメチルカプトプロパノール、トルオール−3,4−ジチオール、α,α’−ジメチルカプト−p−キシロール、ジメルカプトエタン、ジエチレングリコールジメルカプタン、トリエチレングリコールジメルカプタン、ジチオカテコール、3−クロロチオカテコール、ジチオレゾルシン、ジメルカプトトルエン、キシリレンジメルカプタン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、ジメルカプトナフタリン、ジドデカンジチオール、ジチオールフェノール、4,4’−ジチオフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−チオジフェノール、ジメルカプトベンゾチアゾール、ジチオエリスリトールなどが挙げられる。
また上記以外のポリチオールの具体例として、脂肪族ポリオールとメルカプト低級脂肪酸とからなる完全エステルまたは部分エステルが挙げられる。上記脂肪族ポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、アルカンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)などが挙げられる。中でも、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
また、ビスフェノールAグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ等のグリシジルエーテル類も用いることができる。
また、上記メルカプト低級脂肪酸としては、具体的には、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトサリチル酸、メルカプトグリコール酸、N−(2−ヒドロキシエチル)チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、メルカプトリンゴ酸などが挙げられる。中でも、メルカプト酢酸(HSCHCOOH)、メルカプトプロピオン酸が好ましい。
本発明で特に好ましく用いられるポリチオールは、ペンタエリスリトールとメルカプト酢酸またはメルカプトプロピオン酸、もしくはトリメチロールプロパンとメルカプト酢酸またはメルカプトプロピオン酸とからなる2〜4個のメルカプト基を有するエステルである。
なお、1個のメルカプト基を有するチオール化合物は、希釈剤として、もしくは可塑剤として使用することができる。本発明においては、溶剤を使用する必要性を低減でき、また臭気が少ない点で、ポリチオールを用いることが望ましい。
<ポリイソシアネート系硬化剤>
本発明でポリイソシアネート系硬化剤として用いられるポリイソシアネートとしては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6 XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水素化MDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、リジンジイソシアネート(2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート)(LDI)、メチルシクロヘキサン−2,4(or2,6)−ジイソシアネート(水素化TDI or HTDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等のジイソシアネート類;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート類などが挙げられる。
以上に記載されたイソシアネートから誘導されるヌレート体、もしくはアダクト体等も硬化剤として用いることができる。
また、上記以外のポリイソシアネートの具体例として、次のようなカルボジイミド型ポリイソシアネートが挙げられる。
このカルボジイミド型ポリイソシアネートは、−N=C=N−基を1個以上有し、具体的には、カルボジイミド型ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド型トリレンジイソシアネート、カルボジイミド型ジメチルビフェニレンジイソシアネート、カルボジイミド型キシリレンジイソシアネート、カルボジイミド型ナフタレンジイソシアネート、カルボジイミド型ヘキサメチレンジイソシアネート、カルボジイミド型イソフォロンジイソシアネート、カルボジイミド型水添キシリレンジイソシアネート、カルボジイミド型水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
本発明で好ましく用いられるイソシアネートから誘導されるヌレート体、もしくはアダクト体等のポリイソシアネートのうちでは、カルボジイミド型ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド型トリレンジイソシアネート、カルボジイミド型ジメチルビフェニレンジイソシアネート、カルボジイミド型ヘキサメチレンジイソシアネートである。特にカルボジイミド型ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
なお、−N=C=N−基を1個有するカルボジイミド型ポリイソシアネートは、下記の式で表わすことができる。
(OCN−R)−N=C=N−(R−NCO)
[式中の(OCN−R)、(R−NCO)は、ポリイソシアネートである。]
さらに、上記ポリイソシアネート以外のポリイソシアネートの具体例として、(1)3価以上の脂肪族多価アルコール(i)とトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI or HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(ii)とのアダクト、および(2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI or HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる、下記式(I):

で示される環を有するイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)を挙げることができる。
上記アダクトの構成成分として用いられる3価以上の脂肪族多価アルコール(i)としては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)などが挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
また、上記アダクトの構成成分として用いられるトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI or HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6 XDI)(ii)の中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)が好ましい。
本発明で用いられる上記(1)のアダクトは、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコール(i)とビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等(ii)とを付加重合することにより得られる。
本発明で好ましく用いられるアダクトとしては、たとえば下記の式で表わされる化合物などが挙げられる。
(1)TMPと水素化XDIとのアダクト

[式中のR:1,3−シクロヘキシレン基]
(2)ペンタエリスリトールと水素化XDIとのアダクト
C−[CHO−CO−NH−CH−R−CH−NCO]
[式中のR:1,3−シクロヘキシレン基]
本発明でポリイソシアネートとして用いられるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)は、分子中に、前記式(I)で示される環を1個または2個以上有する。
本発明で用いられるイソシアヌレート構造体は、たとえば上述したビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6 XDI)の三量体化反応、五量体化反応、七量体化反応を行なうことにより得られる。
本発明では、ウレタン樹脂用の主剤としては、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリチオールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が好ましく、また、
ウレタン樹脂用の硬化剤としては、HDI、MDI、TDIからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物が好ましい。
本発明においては、塗料組成物に含まれるポリオールおよび/またはポリチオール、ポリイソシアネートの各成分は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の当量と、ポリオールに含まれる水酸基の当量およびポリチオールに含まれるチオール基の当量の合計量との比[NCO基/(OH基+SH基)]が通常0.1〜5、好ましくは0.2〜4、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは0.7〜2の範囲内になる量で用いられる。
また、ポリイソシアネートとしてカルボジイミド型イソシアネート以外のポリイソシアネートとともに、上記のようなカルボジイミド型ポリイソシアネートを併用する場合、カルボジイミド型イソシアネートは、これらのポリイソシアネートの合計量100重量部に対して、通常1重量部以上200重量部未満、好ましくは5重量部以上150重量部未満、さらに好ましくは20重量部以上100重量部未満の量で用いられる。
カルボジイミド型ポリイソシアネートを上記のような量で用いると、急速に硬化して塗膜を形成し得るポリウレタン樹脂塗料が得られる。上記のようなポリオールおよび/またはポリチオールとポリイソシアネートとを含有する塗料組成物は、ポットライフが長いため、取り扱い易い。
<アクリル樹脂((メタ)アクリル樹脂)(c)>
アクリル樹脂((メタ)アクリル樹脂とも言う。)としては、特開平11−171933号公報の第[0021]〜[0023]段に記載のものなどを使用できる。
この(メタ)アクリル系樹脂について詳述すると、(メタ)アクリル樹脂としては、従来より塗料用に使用されているものが挙げられるが、側鎖および/または主鎖末端に水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などの硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル成分単位含有共重合体が好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル成分単位含有共重合体としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルプロピ(メタ)アクリレートなどから誘導される成分単位を含む共重合体が挙げられる。
このような(メタ)アクリル酸エステル成分単位含有共重合体として市販されているものでは、「アクリディックA−430、アクリディックA−810−45」(大日本インキ化学工業(株)製)、「テスロイド4211−46、テスロイド4212−46」(日立化成ポリマー(株)製)、「ダイヤナールLR−620、ダイヤナールHR−656」(三菱レイヨン(株)製)、「ヒタロイド3046C、ヒタロイド3018、ヒタロイド3083−70B」(日立化成工業(株)製)、「ダイヤナールBR−106」(三菱レイヨン(株)製)、「Eterkyd1401 BA−80、Eterkyd1480 BA−65」(台湾Etermal Chemical社製)などがある。
(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、GPCにて測定して1,000〜15,000好ましくは5,000〜10,000であり、それより大きくなると溶剤への溶解性が低下する傾向にあり、小さくなると得られる塗膜の耐候性が低下する傾向にある。
<硬化剤(D)>
(メタ)アクリルポリオール樹脂用の硬化剤(D)としては、メラミン樹脂(メラミン硬化剤)、尿素樹脂(尿素樹脂硬化剤)、多塩基性有機酸および多価イソシアネート類等が挙げられる。本発明では、これら硬化剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
これら(メタ)アクリルポリオール樹脂用の硬化剤(D)としては、特開平11−171933号公報の第[0023]〜[0027]段に記載のものなどを使用できる。すなわち、メラミン樹脂(メラミン硬化剤)としては、例えばブチル化メラミン、メチル化メラミン、エポキシ変性メラミンなどが挙げられ、用途に応じて各種変成度のものが適宜用いられ、また自己縮合度も適宜選ぶことができる。
尿素樹脂(尿素樹脂硬化剤)としては、例えばメチル化尿素樹脂やブチル化尿素樹脂等が挙げられる。多塩基性有機酸としては、例えば、長鎖脂肪族ジカルボン酸類、芳香族多価カルボン酸類およびこれらの酸無水物などが挙げられる。該多価イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの無黄変性ジイソシアネートやその付加物、イソシアヌレート類から導かれる基を有する多価イソシアネートなどが挙げられ、これらの中でイソシアヌレート類から導かれる基を有する多価イソシアネートが特に好ましい。これら多価イソシアネート類は、常温硬化により好適であり、例えば、重合体(A)中に水酸基が存在する場合などでは、イソシアネート基とのウレタン反応などによる常温硬化により好適である。
その他、ブロック化多価イソシアネート類も硬化剤、主として加熱硬化型用の硬化剤として好ましく使用できる。
<硬化触媒>
本発明においては、上記塗料組成物が、さらに硬化触媒を含有することも可能であり、上記硬化触媒は、金属化合物または酸であることが望ましい。
該金属化合物としては、例えば、錫化合物等が挙げられ、酸としては、例えば、リン酸、スルホン酸等が挙げられる。ウレタン樹脂系塗料等において、多価イソシアネート類を用いて常温硬化を行わせる場合には、金属化合物例えば、ジブチル錫ジラウレート等の公知触媒の添加によって硬化を促進させることも可能である。
またエポキシ樹脂用硬化剤などとして用いられるメラミン硬化剤または尿素樹脂硬化剤の使用に際しては、リン酸系またはスルホン酸系の酸性触媒の添加によって硬化を促進することもできる。
[酢酸ブチルに代表される低臭気性有機溶剤(B)]
本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物(塗料組成物)を調製する際には、ペイント臭の主な原因となるようなキシレン、トルエンなどを除き、低臭気性の種々の溶剤(溶媒)を使用でき、n−ブタノールなどのアルコール類;酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;エチルセロソルブなどのグリコールエーテル類;市販の各種シンナー類;等が使用可能であるが、
酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトンなどのケトン類;n−ブタノールなどのアルコール類;が好ましく、
なかでもエステル類の酢酸ブチルが低臭気性、塗料への溶解性(換言すると、樹脂分等を溶剤が容易に溶解できること)、揮発速度の点(すなわち塗料を塗装した場合に溶剤が適度の揮発速度を有し、塗装性に優れる点)で望ましい。
このような低臭気性溶剤は、1種または2種以上組合わせて用いることができる。低臭気性溶剤を2種以上組合わせて用いる場合、本発明では、酢酸ブチル溶剤と、それ以外の上記した低臭気性溶剤とを併用することが粘度調整、レベリング性、発泡防止性の点から望ましい。
このような酢酸ブチルに代表される低臭気性溶剤(B)は、合計で、塗料組成物中に通常、5〜30重量%の範囲で、好ましくは10〜25重量%の範囲で含まれることが塗装作業性、粘度調整性等の点から望ましい。
また、酢酸ブチル溶剤と「その他の低臭気性溶剤」とを組合わせて用いる場合には、低臭気性溶剤の合計100重量部中に、酢酸ブチル溶剤が30〜80重量部、好ましくは40〜70重量部となる量で用いることが低臭気性、溶解性の点で望ましい。
また、この酢酸ブチル溶剤に代表される低臭気性溶剤は、塗料中に含まれる樹脂(A)量が通常、5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%となるような量で用いることが塗装作業性、塗膜性能等の点から望ましい。
[化合物(C)]
本発明では、化合物(C)としては、炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンが用いられる。
この化合物(C)としては、塗料中の溶剤臭、ペイント臭などを中和あるいは低減可能であり、また塗料が被塗物表面に塗装されその塗膜が乾燥した後も塗膜中の残存溶剤や周囲の溶剤臭、塗料原材料の臭気などを可能な限り低減、抑制し得るものが好ましく、そのメカニズムは、物理的吸着、化学反応などの何れでもよい。
このような化合物(C)としては、
(a):(総)炭素数8以上、好ましくは(総)炭素数8〜15のエステル(特に、シクロヘキシル環などの環構造を有していてもよい鎖状エステル)、あるいは、
(b):ラクトン中に含まれる水素原子の一部が炭素数1〜15程度のアルキル基などで置換されていてもよいα−,β−,γ−,δ−ラクトン、あるいはそれらのラクトンの環構造中に不飽和結合を有する不飽和ラクトンなどのラクトンが挙げられる。
該ラクトン(b)としては、該エステル(a)と同程度の(総)炭素数のヒドロキシカルボン酸の環状エステルであるラクトン、好ましくはα−、β−、γ−、δ−ヒドロキシカルボン酸の環状エステルであるラクトン、特に好ましくはγ−、δ−ヒドロキシカルボン酸の環状エステルであるラクトンが挙げられる。
本発明では化合物(C)としては、このように炭素数8〜15のエステル(特に、シクロヘキシル環などの環構造を有していてもよい鎖状エステル)および/またはラクトンが臭気中和効率、コスト、入手の容易性などの点で好ましい。
このような化合物(C)としては、上記炭素数のエステル(鎖状エステル)では、C1〜10程度の飽和あるいは不飽和カルボン酸と、C3〜10程度の1価の不飽和(シクロヘキシル環などの環構造を有していてもよい鎖状)アルコールとのエステル、例えば、
(1):ヘキサン酸−2−プロペニルエステル[CH(CHCOOCHCH=CH]、
(2):ヘプタン酸−2−プロペニルエステル[C13COOCHCH=CH]、
(3):オクタン酸−2−プロペニルエステル[C15COOCHCH=CH]、
(4):酢酸−4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルエステル[一般名:p−ターシャリ−ブチル−シクロヘキシル−アセテート]:

等が挙げられる。
上記のラクトン等では、具体的には、例えば、
一般式(c):

(式(c)中、Rは、H又はC1〜15程度のアルキル基又はアルキレン基、例えば、CH、C、n−C、n−C17、n−C1225、n−C1429、CHCHCH=CHCHなどであってもよく、あるいは隣接する炭素原子と結合してベンゼン環などの環構造を形成してもよい。nは、0〜5程度の整数。)などが挙げられる。
このようなラクトンとしては、式(c)中、R=C15、n=1である
(5):5−ヘプチルジヒドロ−2(3H)−フラノン[一般名:アルデヒドC−14、γ−ドデカラクトン]:

の他、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−パルミトラクトン、γ−ステアロラクトン、δ−バレロラクトン,δ−カプロラクトンなどの飽和ラクトン(以上式(c)に属するラクトン);
以下、式(c)には属しないクロトラクトン、α−アンゲリカラクトン、β−アンゲリカラクトン、クマリン(デルタラクトンとベンゼン環との縮合物)などの不飽和ラクトン;
その他にジャスモラクトン、ジャスモン:

、などが挙げられる。さらには、特開2002−275495号公報、特開2003−102819号公報、特開2002−275495号公報、特公表2002−540853号公報、特公表2002−505720号公報等に記載の消臭用あるいは芳香性の脂肪族エステル、環状エステルなどを用いてもよい。
これらのうちでは、付番(1)〜(5)に記載の化合物が臭気中和効果に優れる点で好ましい。
このような化合物(C)のうちでは、炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましいが、これら化合物(C)は、1種または2種以上組合わせて用いられる。
本発明では、このような化合物(C)を塗料組成物中に通常、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲で含むことが臭気中和効率、コストの点から望ましい。
また、この化合物(C)、特に好ましくは炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(C)は、塗料中に含まれる低臭気性有機溶剤(B)100重量部に対して、通常、0.03〜5重量部、好ましくは0.07〜3重量部、特に好ましくは0.1〜1.0重量部の量で用いることが臭気中和効率、コストの点から望ましい。
<その他の配合成分>
本発明に係る塗料組成物には、上記成分(A)〜(D)などの他にさらに、下記のような「その他の成分」が含まれていてもよい。
このようなその他の成分としては、例えば、可塑剤、安定剤、タレ止め・沈降防止剤、酸化チタン(チタン白)等の着色剤、体質顔料、粘度調節剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、上記以外の塗膜形成成分などの各種成分が挙げられる。
<タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)>
タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。
このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200−20」等の他、「ディスパロンA630−20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
<着色剤>
着色剤には、顔料、染料などが挙げられる。顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料を用いることができる。有機系顔料としては、黒色のカーボンブラック、青色のフタロシアニンブルー、緑色のフタロシアニングリーン、赤色の不溶性アゾ顔料(ナフトールAS)、黄色のモノアゾ系顔料等が挙げられる。無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、バライト粉、シリカ、タンカル、タルク、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO、酸化亜鉛)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等があげられる。
<体質顔料>
体質顔料としては、例えば、カリ長石、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ末等が挙げられる。
[塗料組成物の製造]
上記のような塗料組成物を製造するには、上記樹脂(A)と、酢酸ブチルに代表される低臭気性有機溶剤(B)と、臭気中和剤としての機能などを有する化合物(C)と、必要により用いられる硬化剤(D)とに加えて、硬化触媒、可塑剤、無機脱水剤(安定剤)、タレ止め・沈降防止剤、酸化チタン(チタン白)等の着色剤、体質顔料、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、上記以外の塗膜形成成分、充填剤、難燃剤、チクソトロピー性付与剤、熱伝導改良剤、接着成分、香剤などを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合し、溶媒に溶解・分散等すればよい。
この際には、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル3本ロールミル、ニーダー等の通常の塗料化に用いられる種々の混合・攪拌装置を用いることができる。硬化剤成分(D)として非ブロック多価イソシアナート類を用いると、常温硬化型の塗料組成物を得ることができる。このような塗料組成物では、硬化剤成分は別個に調合され、二液型の塗料組成物とされる。
なお、硬化剤成分(D)としてメラミン樹脂、尿素樹脂、ブロック多価イソシアネート類を用いると、加熱硬化型で、しかも一液型の塗料組成物を得ることができる。
[塗料組成物の用途]
このような本発明の塗料組成物は、低臭気性であり、塗装後に塗膜から揮散する臭気が蓄積し易い部材あるいは部位、例えば、コンテナ内塗装用として、特に、コンテナのインテリア、フロア、シーラントの塗装用として好適に使用される。その他、土木資材、建材(例:パネル、パーテイション、ドア、車輌内装部材等)、電気部品、電子部品、工芸用品、服飾産業用品、医療用品、文具用品などの各種基材の表面被覆用のコーティング材(コーティング用組成物)として、また、基材の表面防汚用の塗料として好適に用いられる。このように本発明の塗料組成物は、電気・電子、建材・工芸、服飾産業、医療、農林・水産業、発電、港湾・土木建設、造船あるいは船舶の修理特に船舶塗装などの広範な産業分野で用いられる。
以下、このような塗料組成物にて、基材表面が被覆されてなる各種塗膜付き基材について例を挙げて述べる。
<塗膜付き基材>
本発明に係る塗膜付き基材は、コンテナ、建築物、構造物などの基材表面が、上記した特定の塗料組成物から形成された塗膜にて被覆されてなっている。
上記基材としては、主に材質面、構造面から分類すると、アルミ板、鉄板、ステンレス板、ブリキ板等の各種金属板;ケイ酸カルシウム板(珪カル板);等が挙げられる。また、基材を主に用途面から分類すると、コンテナ内装部材(コンテナインテリア例えば、フロア材、壁材、天井材)、土木資材、建材パネル、パーテイション特にトイレ用パーテイション、ドア、キッチンパネル、車輌内装部材等が挙げられる。
本発明においては、これら基材の表面には、直接、上記塗料組成物からなる塗膜が形成されていてもよいが、該基材の表面に、必要により下塗り層などとして、予めエポキシ系プライマー層あるいは、紫外線硬化型層などを適宜形成し、その表面に本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物からなる塗膜が積層形成されていてもよい。
また、本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物を、シーラント(sealant、密閉材)の表面に塗装してもよく、また、本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物自体をシーラントとして、コンテナ内部に架台として設置されるフロアボード等の基材間の隙間、コンテナ内面の溶接部等に充填して用いてもよい。
特に、本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物を、シーラントの表面に塗装する場合には、下地となるシーラントとしては、溶剤としてトルエン、キシレンが含まれず、酢酸ブチルに代表される低臭気性有機溶剤(B)や臭気中和剤等としての機能を有する上記化合物(C)が必要により配合されたもの、例えば、このような組成のクロロプレンゴム系のシーラントなどが好ましい。
例えば、基材の表面にエポキシ系プライマー層、本発明の低臭気性溶剤型塗料組成物層を順次積層形成してなる塗膜付基材では、基材への塗膜の密着性、塗膜の低臭気性、防食性、耐薬品性等の効果を有する。
特に、この際用いられる基材が金属製であり、この硬化性の低臭気性溶剤型塗料組成物(塗料)が相手金属部材に直接焼付塗装等がされている場合や、相手金属部材に予め形成されたエポキシ樹脂系プライマー層、あるいは各種樹脂系粉体塗料からなる層の表面に、この硬化性組成物からなる塗料が焼き付け塗装されて硬化性組成物層が形成されている場合には、該低臭気性溶剤型塗料組成物層は、相手金属部材などとの付着性が良好であり、かつ、水や油を主成分とする各種汚染物質ははじきやすくすなわち撥水性、撥油性を有し、従って耐汚染性に優れ、またこれら汚染物質が仮に付着しても拭き取りが容易であり耐汚染除去性に優れている。
【発明の効果】
本発明によれば、貨物等を輸送するコンテナボックスや建築物・構造物などの内面塗装用塗料などとして好適に使用され、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく抑制可能な低臭気溶剤型塗料組成物、その塗膜、および該塗膜を有する低臭気性のコンテナ、建築物、構造物などの各種成形体が提供される。
【実施例】
以下、本発明に係る低臭気性溶剤型塗料組成物、その製法、塗装方法などについて具体的に説明するが、本発明は、係る実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
<エポキシ樹脂系低臭気性溶剤型塗料組成物の調製1>
表1に示すように、下記の主剤と、硬化剤とからなるエポキシ樹脂系低臭気性溶剤型塗料組成物を調製した。
<主剤>
ビスフェノールA型(BPA)エポキシ樹脂の酢酸ブチル溶液(樹脂のMw=1001、NV=75%、大竹明新化学(株)製、品番:「E001−75B」)30.00重量部と、
臭気中和性の化合物(群)(C){組成:(1):ヘキサン酸−2−プロペニルエステル[CH(CHCOOCHCH=CH]、(2):ヘプタン酸−2−プロペニルエステル[C13COOCHCH=CH]、(3):オクタン酸−2−プロペニルエステル[C15COOCHCH=CH]、(4):酢酸−4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルエステル[一般名:p−ターシャリ−ブチル−シクロヘキシル−アセテート]、(5):5−ヘプチルジヒドロ−2(3H)−フラノン、上海タカサゴ−ユニオン社製、商品名:「中和剤350120−1」}0.01重量部と、
沈降・タレ防止剤(有機系、主成分:ポリエチレンワックス、大竹明新化学(株)製)4.00重量部と、
タレ止め剤(無機系、主成分:ベントナイト、ヘクライト、ステアリン酸アルミニウム等。(RHEOX社製)1.00重量部と、
着色顔料(白色、酸化チタン(ルチル型、アナタース型)、DUPONT社製)18.00重量部と、
体質顔料1(硫酸バリウム、堺化学(株)社製)8.00重量部と、
体質顔料2(タルク、富士タルク(株)社製)18.00重量部と、
体質顔料3(シリカ末、竹原化学(株)社製)7.00重量部と、
酢酸ブチル溶剤(ダイセル(株)社製)7.99重量部と、
有機溶剤[トルエン、キシレン、酢酸ブチルを除く。MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、イソブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、N−ブタノール、ブタノール、ターペン(テレピン油)、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、(クラレ(株)社製)]5.80重量部と、
添加剤(アクリルビニルエーテル系消泡剤、共栄化学(株)社製)0.20重量部(合計100.00重量部)。
<硬化剤>
ポリアミド樹脂溶液(ポリアミド樹脂の酢酸ブチル溶液、NV=60%、大竹明新化学(株)製、商品名「PA−53(B/100)」)97重量部と、
硬化促進剤(三級アミン、エアープロダクツジャパン社製)1.00重量部と、
酢酸ブチル溶剤(ダイセル(株)社製)2.00重量部(合計100.00重量部)。
<塗料の調製>
上記主剤85.0重量部と、上記硬化剤15.0重量部(合計100重量部)を混合して、低臭気性溶剤型塗料組成物(NV=73.0wt%、PVC(Pigment Volume Content、顔料体積濃度)=36.0%、塗料中のトルエン、キシレン含量=0%、塗料中の有効成分に占める臭気中和性の化合物(C)の含有量=0.012%)を調製した。
なお、塗料中のトルエン、キシレン含量は、主剤と硬化剤とを混合してなる塗料組成物中に含まれるトルエン、キシレン含有量で評価した。
また、塗料中の有効成分に占める臭気中和性の化合物(C)の含有量は、主剤と硬化剤とを混合してなる塗料組成物を塗布硬化してなる塗膜(乾燥塗膜)中に含まれる臭気中和性の化合物(C)量で評価した。
<塗装>
20リットル(L)ペール缶の内面に下塗として、エポキシ樹脂系ジンクリッチ塗料(商品名「EPICON ZINC SC B−2」、中国塗料(株)製)を乾燥膜厚が25μm(厚)となるように吹き付け塗装した後、10分間養生し、下塗層が未硬化のうちに、上塗として、上記低臭気性溶剤型塗料組成物を乾燥膜厚が50μm(厚)となるように吹き付け塗装し、30分間静置養生した後、80℃で30分間加熱し、強制乾燥した。(合計乾燥膜厚:75μm)
その後、30分間放冷し、次いで、ペール缶のフタを閉じて密封した。
<経時的な臭気強度および放出ガス(キシレンガス)量の測定>
得られた塗装ペール缶(試験体)を所定の期間(7日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月間)静置した後、塗装ペール缶内面から発生するガスの測定を行い、それと同時に臭気強度の測定も行なった。ガスの測定および臭気強度の測定を行なった後、ペール缶のフタを開けた状態で1時間放置し、再び閉蓋して密封状態とした。
各測定試験毎にこの操作を繰り返し実施した。
<臭気の測定方法>
光明理化学工業(株)製の「北川式ガス検知器」にて、塗装ペール缶(試験体)内に発生するキシレンガスの測定(単位:ppm)を行なった。
その結果、「北川式ガス検知器」によるキシレン濃度の測定値は、7日目で200ppm、1ヶ月目で70ppm、2ヶ月目で50ppm、3ヶ月目で25ppmとなった。
なお、この検知器は、測定対象となるガスの種類により、検知管を使い分けるようになっており、この試験では、キシレンガス測定用の検知管を使用した。
このキシレンガス測定値は、キシレンガス濃度の大小を示し、その数値が大きいほど、発生したキシレンガス量が多いことを意味している。
また、臭気強度は、7日目で「1」(溶剤臭を感じる。)、1ヶ月目で「3」(僅かに溶剤臭を感じる。)、2ヶ月目で「4」(僅かに臭気を感じる。)、3ヶ月目で「4」となった。
結果を併せて表2に示す。
なお、臭気強度の評価基準は、以下の通り。
<臭気強度の評価基準>
「5」ほとんど臭気を感じない。
「4」僅かに臭気を感じる。
「3」僅かに溶剤臭を感じる。
「2」臭気を感じる。
「1」溶剤臭を感じる。
「0」不快感を覚える。
<基材への塗膜の付着性、塗膜の引掻き硬度の測定>
(a)試験方法:
基本的には、「JIS K 5600」に記載の試験方法に準拠して行なった。
(b)試験片の作製
試験用塗装板片の作製法は、基材として、1.6mm(厚)のブラスト鋼板(JIS K 5410)を用いた点以外は、前記「経時的な臭気強度および放出ガス(キシレンガス)量の測定」の場合と全く同様にして塗装した。
すなわち、1.6mm(厚)のブラスト鋼板(JIS K 5410)に下塗として、エポキシ樹脂系ジンクリッチ塗料(商品名「EPICON ZINC SC B−2」、中国塗料(株)製)を乾燥膜厚が25μm(厚)となるように吹き付け塗装した後、10分間養生し、下塗層が未硬化のうちに、上塗として、上記低臭気性溶剤型塗料組成物を乾燥膜厚が50μm(厚)となるように吹き付け塗装し、30分間静置養生した後、80℃で30分間加熱し、強制乾燥した。(合計乾燥膜厚:75μm)
その後、30分間放冷した。
次いで、塗膜の付着性、塗膜の引掻き硬度、耐液体性(耐薬品性)、耐中性塩水噴霧性、耐湿性をそれぞれ下記の測定条件下で測定した。
その結果、
塗膜の付着性(JIS K 5600−5−6、クロスカット法による付着性試験法に準拠。)は「有り」(25目付着/25目中)となり、
塗膜の引掻き硬度(JIS K 5600−5−4、鉛筆法による引掻き硬度の試験法に準拠。)は「3H」となり、
耐液体性(耐薬品性)(JIS K 5600−6−1、耐液体性(一般的方法)試験法、点滴法に準拠。)は、10%HSO水溶液、10%NaOH水溶液および、99.8%エタノール水溶液では、何れも「4」(僅かに変色が認められる。)となり、
耐中性塩水噴霧性(JIS K 5600−7−1、耐中性塩水噴霧試験法に準拠。)は、一般部で「5」(変化なし。)となり、クロスカット部で「4」(僅かに白化、変色、さびの発生が認められる。)となり、
耐湿性(JIS K 5600−7−2、耐湿性(連続結露法)一回転式試験法に準拠。)は、「4」(僅かに白化、変色が認められる。)となった。
結果を併せて表3に示す。
<塗膜の付着性>
「JIS K 5600−5−6」、クロスカット法による付着性試験法に準拠し、塗装された試験片における塗膜の密着剥離テストを行なった。
評価基準は以下の通り。
「有り」:25目中で25目付着。
「無し」それ以下。
<塗膜の引掻き硬度>
「JIS K 5600−5−4」、鉛筆法による引掻き硬度の試験法に準拠して、塗装された試験片の鉛筆硬度試験を行なった。鉛筆の芯で、塗膜を引き掻き、塗膜の硬さを鉛筆の濃度記号で表した。
<耐液体性(耐薬品性)>
「JIS K 5600−6−1」、耐液体性(一般的方法)試験法、点滴法に準拠して、塗装された試験片の耐薬品性試験を行なった。
試験液としては、10%HSO水溶液、10%NaOH水溶液および、99.8%エタノール水溶液を用いた。試験時間は、72時間とした。
耐液体性の評価判断基準は下記の通り。
「5」変化なし。
「4」僅かに変色が認められる。
「3」白化、変色が認められる。
「2」僅かに膨れ、シワ、割れが認められる。
「1」膨れ、シワ、割れが認められる。
<耐中性塩水噴霧性>
「JIS K 5600−7−1」、耐中性塩水噴霧試験法に準拠して、塗装された試験片の塩水噴霧に対する塗膜の抵抗性試験を行なった。
塗装された試験片には、「JIS K 5600−5−6:4.1.1」に規定されている工具の刃先で塗膜の上から試験片の素地に達するように、交差する2本の対角線のように切り傷(クロスカット)を付け、試験時間は1000時間とした。
塗膜評価は、下記の評価基準で行い、塗膜の一般部と、クロスカット部の塗膜状態について評価を行なった。
耐中性塩水噴霧性の評価基準は以下の通り。
「5」変化なし。
「4」僅かに白化、変色、さびの発生が認められる。
「3」さび、膨れ、はがれの発生が認められる。
「2」さび、膨れ、はがれの発生が小面積に認められる。
「1」さび、膨れ、はがれの発生が大面積に認められる。
<耐湿性>
「JIS K 5600−7−2」、耐湿性(連続結露法)−回転式試験法に準拠して、塗膜の耐湿性試験を行なった。試験時間は800時間とした。
評価基準は以下の通り。
「5」変化なし。
「4」僅かに白化、変色が認められる。
「3」はがれの発生が認められる。
「2」さび、膨れ、はがれの発生が小面積に認められる。
「1」さび、膨れ、はがれの発生が大面積に認められる。
[実施例2〜4、比較例1〜2]
実施例1において、塗料組成物の配合組成をそれぞれ表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製し、実施例1と同様の試験を行なった。
配合組成、測定結果を表1〜3に示す。


【産業上の利用可能性】
以上詳述したように、本発明に係る低臭気性溶剤型塗料組成物は、貨物等を輸送するコンテナボックスや建築物・構造物などの内面塗装用塗料などとして好適に使用され、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく低減、抑制可能であり、塗装作業者の安全衛生面の向上を図ることができ、また、該塗料が内面塗装されたコンテナに貨物を収容して運搬、保管等を行なっても、ペイント臭が貨物につき難く、商品価値を低下させないという利点がある。この塗料は、コンテナ、建築物、構造物などの各種成形体に塗装でき、いずれの場合も上記効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の塗料用樹脂、
(B)低臭気性有機溶剤、
(C)炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、および、必要により
(D)塗料用樹脂(A)用の硬化剤
を含んでなり、有機溶剤としてキシレンおよびトルエンを実質的に含まないことを特徴とする低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項2】
低臭気性有機溶剤(B)が、酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブからなる群から選ばれた少なくとも1種の低臭気性有機溶剤である請求の範囲第1項に記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項3】
炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(C)が、
ヘキサン酸−2−プロペニルエステル[CH(CHCOOCHCH=CH]、
ヘプタン酸−2−プロペニルエステル[C13COOCHCH=CH]、
オクタン酸−2−プロペニルエステル[C15COOCHCH=CH]、
酢酸−4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルエステル:

、5−ヘプチルジヒドロ−2(3H)−フラノン:

のうちの何れか1種以上であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項4】
低臭気性有機溶剤(B)を塗料組成物中に5〜30重量%の範囲で含む請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項5】
炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(C)を塗料組成物中に0.01〜1.0重量%の範囲で含む請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項6】
ウレタン樹脂の主剤が、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリチオールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求の範囲第1〜5項の何れかに記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂用の硬化剤(D−1)が、ポリアミドまたはその変性物からなる硬化剤であり、
ウレタン樹脂用の硬化剤(D−2)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求の範囲第1〜6項の何れかに記載の低臭気性溶剤型塗料組成物。
【請求項8】
請求の範囲第1〜7項の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなるコンテナ用塗料組成物。
【請求項9】
請求の範囲第1〜7項の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなるコンテナ用インテリア塗料組成物。
【請求項10】
請求の範囲第1〜7項の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなるコンテナ用フロア塗料組成物。
【請求項11】
請求の範囲第1〜7項の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなるコンテナ用シーラント塗料組成物。
【請求項12】
請求の範囲第1〜7項の何れかに記載された低臭気性溶剤型塗料組成物からなる建築物用または構造物用塗料組成物。
【請求項13】
請求の範囲第1〜12項の何れかに記載の塗料組成物からなる低臭気性塗膜。
【請求項14】
請求の範囲第13項に記載の低臭気性塗膜が、コンテナ、建築物あるいは構造物の内側表面に形成された低臭気性塗膜付コンテナ、建築物あるいは構造物。

【国際公開番号】WO2005/000979
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503215(P2005−503215)
【国際出願番号】PCT/JP2003/008111
【国際出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】