説明

低蛋白米の炊飯方法とそれによる保存食品

【課題】 低蛋白米や低蛋白混合米を対象として大規模では勿論、小規模でも手間無く極く簡単に美味しく炊き上げられるようにする。
【解決手段】 低蛋白米、または低蛋白混合米を対象米42と、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水40と、を容器8に入れて、蓋をせずに、あるいは通気性のある蓋を施して、通電により発熱させた電熱管1内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気43と、容器8に下方から対面する平面域に配管した電熱管1からの輻射熱44、44aとに曝して加熱し、炊飯および殺菌することにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米とを対象とした低蛋白米の炊飯方法とそれによる保存食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搗精歩留まり70%以下まで搗精した特精米は、89〜92%まで搗精される一般精米に比し低蛋白で、日本酒の製造や食事療法に好適なものとなるが、通常の炊飯方法で炊飯すると、食味が悪く極めて摂取し難い問題があるのを、蒸気による蒸し工程を含み、煮沸し炊飯することで解消する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、一次蒸し工程と、一次蒸し工程後の湯浸漬工程と、湯浸漬工程後の二次蒸し工程とを含んでいる。さらには、炊飯前の洗米工程は2〜3回とし、一次蒸し工程の前に水浸漬工程を設け、二次蒸し工程の直後に高温の乾燥空気による水分飛ばし工程を設けている。蒸気は104℃以下の飽和蒸気であり、水浸漬工程は20分以上、一次蒸し工程は10〜20分、湯浸漬工程は4〜6分、二次蒸し工程は12〜15分としている。
【0003】
一方、食事療法が注目されるなか、蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米なども提案、提供されるようになり(例えば、特許文献2、3参照。)、これを100%使用して炊飯した極く低蛋白な米飯が食されることがあるし、この低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米として炊飯した、それぞれに合った低蛋白度の米飯も食されている。このような食事療法の有効性の認識から低蛋白米の低蛋白化がますます望まれ、その低蛋白化は現状、通常の搗精米の10分の1程度から25分の1程度にまで進んでいる。また、搗精歩留まりの低下の度合いは低蛋白米のコスト上昇度合に一致するので穀物澱粉の含有量がさらに増大している。
【特許文献1】特開平6−209726号公報
【特許文献2】特開平9−252730号公報
【特許文献3】特開2000−262792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の炊飯方法では、特別な工程を含む多くの工程と長い炊飯時間を要するので、米飯類を工場生産して販路に広く供給するような場合には適していても、小売店や家庭でその都度手軽に炊飯し炊きたてを販売したり、食したりするには到底向かない。通常の炊飯方法ではもとより、特許文献1に記載の炊飯方法においても、穀物澱粉よりなり、あるいは穀物澱粉が含まれた低蛋白米は、穀物澱粉の含有量が多いほど過剰に凝集して固まりやすく美味しく炊き上げるのは困難である。
【0005】
本発明者等はこのような問題に関し、低蛋白米の提案、提供に携わる者として日々実験をし検討を重ねている。そんな中、上記以外の特許文献4(特開2002−206868号公報)に記載された新規な過熱水蒸気処理装置に遭遇し、過熱水蒸気による食品に対する加熱には、食品の水分を飛ばし難い特性を有して、煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、炊飯、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった各種の加熱調理ができ、しかも、過熱水蒸気は、過熱ヒータ内に飽和水蒸気を通して拘束力、熱効率よく加熱して過熱水蒸気とするもので、200V〜400Vの大電流を通電させることで800℃程度に処理室を昇温させられ、過熱ヒータ自体の発熱も輻射熱として食品に働く上、過熱ヒータは500℃程度以上で赤熱するので輻射熱は遠赤外線となり食品を風味よく焼き上げられるし、所望の焦げ目を付けられることなどを知見した。
【0006】
そこで、過熱ヒータの食品に対する加熱機能をより高めるのに併せ、低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米を美味しく炊き上げる炊飯方法の研究を重ね、これを実現した。
【0007】
本発明の目的は、そのような低蛋白米や低蛋白混合米を対象として大規模では勿論、小規模でも手間無く極く簡単に美味しく炊き上げられる低蛋白米の炊飯方法とそれによる保存食を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の低蛋白米の炊飯方法は、蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米と、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水と、を容器に入れて、蓋をせずに、あるいは通気性のある蓋をして、通電により発熱させた電熱管内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気と、前記容器に下方から対面する平面域に配管した前記電熱管からの輻射熱とに曝して加熱し、炊飯および殺菌することを1つの特徴としている。
【0009】
このような構成では、低蛋白米または低蛋白混合米を通常炊飯するとその穀物澱粉の含有量に応じて凝集し固まりやすいのを、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の水と容器にいれて、蓋をせずに、あるいは通気性のある蓋をして、通電により発熱させた電熱管内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気と、前記容器に下方から対面する平面域に配管した前記電熱管からの輻射熱とに曝して加熱することにより、過熱水蒸気が流動雰囲気をなして容器の外面はもとより蓋をされない、あるいは通気性のある蓋を施された容器内の低蛋白米または低蛋白混合米や水にも均等に及んで効率のよい潜熱移行を図って加熱するのに併せ、電熱管からの輻射熱も容器の側から及んで加熱し加熱蒸気による容器を介した低蛋白米または低蛋白混合米と水との加熱を補うので、容器内の水および低蛋白米または低蛋白混合米が過熱水蒸気の温度の高さに応じた早い立ち上がり速度で昇温させられ、特に水は低蛋白米または低蛋白混合米の吸水に不足があればそれを補いながら、過熱水蒸気からの熱を昇温対流とその後の沸騰、蒸発発散時の攪乱作用により米粒個々に早期にむら無く伝達して早期昇温によるむらの無い十分なα化を図って、しかも、昇温の速さに見合って余分な分量の水が早期に蒸発されるようにしながらもそれ以上の水分の蒸発は極く少なく抑えて、米粒の表面湿度を制限することで過剰に凝集して固まらせるようなことなく炊飯し、炊き上げ、また、処理温度の高さに見合った殺菌ができる。従って、水は最低限米粒個々の吸水を補いかつ蒸気の熱の伝達を効果的に行えればよく、通常の搗精米の場合に比し大幅に少なくてよく、しかも過剰な水分は蒸発を促進してその影響を無くせるので、水加減の難しさなく炊飯の早期炊き上がりにも貢献する。
【0010】
本発明の低蛋白米の炊飯方法は、また、蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精された精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米と、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水と、を容器に入れて、蓋をせずに、あるいは通気性の蓋をして、通電により発熱させた電熱管内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される100℃〜250℃程度の過熱水蒸気と、前記容器に下方から対面する平面域に配管した前記電熱管からの輻射熱とに曝して加熱し、炊飯および殺菌することを別の特徴としている。
【0011】
このような構成では、前記1つの特徴の場合に加え、さらに、過熱水蒸気の温度が100℃〜250℃程度と高いことによって、さらに、吸水、α化のさらなる早期促進と、余分な水のさらなる早期蒸発による米粒の弾力性向上とが図れるし、炊飯温度が高い分だけ殺菌度も高められる。
【0012】
電熱管は、蒸気供給口を有した上流部と蒸気放出口を有した下流部とを、平行な2つの平面域に配管し、下流部側を容器側に対向させて用いる、さらなる構成では、
電熱管は上流側と下流側とでそれに通された水蒸気を加熱するのに消費する熱量の割合に違いがあって、蒸気供給口側の上流部は蒸気放出口側の下流部よりも熱を奪われやすく昇温しにくいのを、平行な2つの平面域に配管した上流部および下流部の内の発熱の高い下流部を容器側に対向させて加熱するので、過熱水蒸気と共に電熱管からの強い輻射熱を、より均等に、効率よく、容器および低蛋白米または低蛋白混合米に及ぼし、首尾よく炊飯すことができる。
【0013】
本発明の保存食品は、以上のような炊飯方法で得られた米飯類を、包装したことを特徴としている。
【0014】
このような構成では、過熱水蒸気の温度の高さに見合った余分な水の早期対流、沸騰、蒸発発散による米粒を攪乱しながらのむらの無い早期昇温を伴なう、十分な吸水、α化、および過剰な凝集による固まりなしに、炊き上げられ、より高温で殺菌されたものを包装しているので、水分過多による変質や劣化がしにくく、真空包装によらなくても、脱気程度の包装にても腐敗しにくいものとなる。
【0015】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の低蛋白米の1つの特徴の炊飯方法によれば、過熱水蒸気が流動雰囲気をなして容器の外面はもとより容器内の低蛋白米または低蛋白混合米や水にも直接に及んでそれらをまわりからほぼ均等に効率よく加熱しながら、電熱管からの輻射熱は特に容器の側から同時に及んでそれを加熱して容器を介した低蛋白米または低蛋白混合米と水との加熱を補助することで、対象米および水を効率よくかつむら無く加熱しながら、水による低蛋白米または低蛋白混合米の吸水の補足、水による対流、沸騰、蒸発発散を伴なう過熱水蒸気の熱の米粒個々へのむらの無い早期伝達、余分な水の早期蒸発を図って、十分なα化を確保しながら過剰に凝集して固まらせるようなことなく、美味しく炊き上げられるし、過熱水蒸気とそれを生成した通電管からの輻射熱による処理温度が通常沸騰状態に比して高い分だけ殺菌効果が大きい。しかも、簡単な装置によって大規模炊飯から家庭を含む小規模炊飯まで対応できる。
【0017】
本発明の低蛋白米の別の特徴の炊飯方法によれば、前記1つの特徴の場合に加え、さらに、過熱水蒸気の温度が適度に高いことによって、α化を確保しながら余分な水のより早期な蒸発によって米粒の弾力性を高めて美味しさを向上でき、殺菌度もさらに高められる。
【0018】
また、電熱管の上流部および下流部を平行な2つの平面域に配管して、発熱量が高くむらの少ない下流部を容器側に対向させて、より効率よく、よりむら無く炊き上げられる。
【0019】
本発明の保存食品によれば、十分な吸水、α化、および過剰な凝集による固まりなしに、炊き上げられ、より高温で殺菌された米飯類を包装しているので、水分過多による変質や劣化がしにくく、真空包装によらなくても、つまり少々の空気が残留していても腐敗しにくいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る、低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米を対象とした炊飯方法の実施の形態につき、図1〜図3を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0021】
本実施の形態の方法は、蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米を炊飯の対象米42とし、図1に示すように通電により発熱する電熱管1に水蒸気を供給して放出される過熱水蒸気43と、電熱管1からの輻射熱44とにより加熱して炊飯をする。このような過熱水蒸気43は、食品につき煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、炊飯、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった各種の加熱調理を始めとする少なくとも1つの加熱処理が行えるし、処理が蒸しである場合など、必要に応じて飽和水蒸気による処理もできる。しかし、上記のような対象米42の炊飯のために、対象米42を通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水40と共に図1(b)に示すように容器8に入れて、蓋をせずに、あるいは通気性のある蓋を施して、通電により発熱させた電熱管1内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気43と、容器8に下方から対面する平面域に配管した電熱管1からの輻射熱44とに曝して加熱し、炊飯および殺菌する。
【0022】
一般に、低蛋白米または低蛋白混合米を通常炊飯すると、つまり、低蛋白米または低蛋白混合米とそれに見合う量の水とを容器に入れて蓋をし、容器の外部から加熱して通常炊飯すると、その穀物澱粉の含有量に応じて凝集し固まりやすい。しかし、上記のように対象米42を通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の水40と共に容器8に入れて、蓋をせずに、あるいは通気性のある蓋を施して、通電により発熱させた電熱管1内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気43と、容器8に下方から対面する平面域に配管した電熱管1からの輻射熱とに曝して加熱することにより、過熱水蒸気43が流動雰囲気をなして容器8の外面はもとより蓋をされない容器8内の対象米42や水40にも均等に及んで効率のよい潜熱移行を図って加熱するのに併せ、電熱管1からの輻射熱44も容器8の側から同時に及んで、加熱し過熱水蒸気43による容器8を介した加熱を補うので、容器8内の水40および対象米42が過熱水蒸気43の温度の高さに応じた早い立ち上がり速度で昇温させられ、特に水40は対象米42の吸水に不足があればそれを補いながら、過熱水蒸気43からの熱を昇温対流とその後の沸騰、蒸発発散時の攪乱作用により米粒個々に早期にむら無く伝達して早期昇温によるむらの無い芯までの十分なα化を図って、しかも、昇温の速さに見合って余分な分量の水40が前記役目を営みながらも早期に蒸発されて米粒の表面湿度を制限することで過剰に凝集して固まらせるようなことなく炊飯し、炊き上げられる。また、処理温度の高さに見合った殺菌ができる。従って、水40は最低限米粒個々の吸水を補いかつ過熱水蒸気43の熱の米粒への伝達を効果的に行えればよく、通常の搗精米の場合に比し大幅に少なくてよく、炊飯の早期炊き上がりにも貢献する。
【0023】
このような本実施の形態によると、過熱水蒸気43が容器8の外面はもとより容器8内の対象米42や水40にも直接に及んでそれらをまわりからほぼ均等に加熱しながら、電熱管からの輻射熱は特に容器の側から同時に及んでそれを加熱して容器8を介した低蛋白米または低蛋白混合米と水との加熱を補助することで、対象米および水を効率よくかつむら無く加熱しながら、水による低蛋白米または低蛋白混合米の吸水の補足、水による対流、沸騰、蒸発発散を伴なう過熱水蒸気の熱の米粒個々へのむらの無い早期伝達により十分なα化を図って、しかも、余分な水の早期蒸発により米粒を過剰に凝集して固まらせるようなことなく、美味しく炊き上げられる。また、過熱水蒸気43とそれを生成した電熱管1からの輻射熱44による処理温度が通常沸騰状態に比して高い分だけ殺菌効果が大きい。しかも、図1、図2に示すような簡単な装置によって、その設置規模を炊飯量に対応させることにより大規模炊飯から家庭を含む小規模炊飯まで対応できる。
【0024】
ここで、容器8は、容積に対する開口面積の比率が高いほど、また、容積に対する深さの割合が小さいほど、従って同じ容積であれば浅く開口が広いほど、流動雰囲気をなす過熱水蒸気43に対する容器8内の対象米42および水40の受熱面積が大きくなるし、電熱管1からの輻射熱44に対する受熱面積も大きくなるので、加熱効率が向上する。しかも、容器8は熱伝導性のよい金属製とするのが加熱効率の上で好適であり、鉄系、銅系、アルミニウム系が適している。
【0025】
また、過熱水蒸気43は100℃〜250℃程度とすると、過熱水蒸気43の温度が高いことによって、対象米42の吸水、α化のさらなる早期促進と、水40のさらなる早期蒸発による米粒の弾力性向上とが図れるし、150℃前後の実験では水40の量に対する依存度が低く、少量の水40にても十分なα化状態で炊き上がり過剰な凝集による固まり防止に好適であるし、水40の量を増大していくことで炊き上げ時間を短くし、また、米粒の軟らかさを幾分か増していける。しかも、炊飯温度が高い分だけ殺菌度も高められる。
【0026】
さらに、電熱管1は、図1(a)に示す蒸気供給口2側の図1(a)(b)において下側配管の上流部1aと、図1(a)に示す蒸気放出口3側の図1(a)(b)において上側配管の下流部1bとして、上下に重なる2つの平面域に配管することにより、下流部1bを配管した平面域側を容器8側に対向させている。これにより、電熱管1は上流側と下流側とでそれに通された飽和水蒸気を所望温度の過熱水蒸気43にまで加熱するのに消費する熱量の割合に違いがあって、蒸気供給口2側の上流部1aは蒸気放出口3側の下流部1bよりも熱を奪われやすく昇温しにくいのを、平行な2つの平面域に配管した上流部1aおよび下流部1bの内の発熱の高い下流部1bを容器8側に対向させて加熱するので、過熱水蒸気43と共に電熱管1からの強い輻射熱44を、より効率よく、よりむら無く炊飯することができる。もっとも、上流部1aも発熱して輻射熱44aを発散するのでこれが対象米42の側に及ぶのを下流部1bが邪魔しない図1(a)、図2に示すように上下で若干ずれる配管関係としている。
【0027】
特に、上流部1aと下流部1bとが、図1(a)、図2に黒塗りと白抜きとで区別して示した配管横に矢印を付しているように、それらへの通電方向が逆向きで対向し合うように配管して前記処理を行うようにしている。これにより、電熱管1に通電したときその周波数に応じた交番磁界がまわりに発生し、周波数の大小によって電気機器を誤動作させるノイズになったり、人体に影響したりするといわれているが、上流部1aと下流部1bとが互いに逆向きに通電される状態で対向し合っていることでそれらのまわりに生じる交番磁界を互いに打ち消し合わせることができ、電磁波のまわりへの影響を防止ないしは軽減することができる。図示する例では上流部1aと下流部1bとは渦巻状の配管で相互の接続部1cを渦巻の中心部に位置させることで上記のように対向し合う配管条件を満足している。
【0028】
なお、前記互いのずれは図示するように上流部1aを下流部1bよりも配管1本分だけ小さな経路となるように配管して満足している。もっとも、過熱水蒸気43を生成する場合、電熱管1の赤熱する下流部1bは上流部1aよりも長い範囲に亘る。これを配慮して対象米42に対向する側に配管する下流部1bを、反対象米42側に配管する上流部1aよりも長くして対象米42に対する輻射熱の効用を高めている。配管の形態や長さの関係は特に問うものではないが、前記交番磁界の打ち消し合いのためには、上流部1aと下流部1bとは同じ長さどうしで対向し合うのが好適である。
【0029】
ところで、以上のような炊飯方法により、過熱水蒸気43の温度の高さに見合った水の早期対流、沸騰、蒸発発散による米粒を攪乱しながらのむらの無い早期昇温を伴なう、十分な吸水、α化、および余分な水の蒸発発散にて過剰な凝集による固まりなしに、炊き上げ、より高温で殺菌された米飯50を、炊飯直後に図3に示すように樹脂製袋51などの樹脂フィルムやアルミニウム箔などをラミネートするなどした包装容器51により包装することにより、水分過多がなく変質や劣化がしにくく、真空引きまでするようなことなく雑菌の繁殖を抑えられて腐敗しにくいものとなる。この結果、脱気包装、具体的にはし食う空間ないで密封する程度の簡易な包装で賞味期限や保存期限を十分に確保することができ、大量に工場生産して保存食品として包装し供するのに好適である。図3に示す例では樹脂製袋51内に米飯50を収容して脱気包装した状態で四周をヒートシール52や高周波溶着して密封状態に封止している。
【0030】
上記のような炊飯を行う装置は、図1(a)(b)に模式的に示すように、電熱管1と電熱管1が放出する過熱水蒸気43を分散して対象米42の側に放出ないしは噴出する多数のノズルを持ったノズル管5を断熱壁が囲ったキャビネット6内に収容して使用上の熱的安全と、熱の外部への逃げを抑制して熱効率が低下しないようにしている。キャビネット6の過熱水蒸気43や輻射熱44を容器8に向ける開口、具体的には上端開口には過熱水蒸気43や輻射熱44は下から上方へ通すが、結露水や万一の調理上の汁類が上方から下方へ落ちるのを受けて、側方などに案内し排出処理などできるようにするグリル格子7が設けられ、その上に対象米42、水40を入れた容器8を置いてバッチ式に加熱処理できるようにした場合の例を示している。容器8、水40、対象米42に供給した過熱水蒸気43などはその周りに十分に篭らせながら相対移動成分を持った接触を図って潜熱を奪われやすくするために、ヒンジ9などを中心に開閉できる断熱壁が囲った蓋11を設けて処理室13を形成し、限られた排出口12を通じてしか排出しないようにし、十分な接触時間と相対移動とが図れる更新状態となるように過熱水蒸気43の流れの経路や流れの速度を制限している。
【0031】
上記のような食品の処理を行うのに、電熱管1に供給して過熱水蒸気とする過熱水蒸気源として、水21を供給してヒータ22により加熱し飽和水蒸気を生成することができる蒸気発生装置23を接続し、ヒータ22および電熱管1の両端間に接続して通電を図るドライバ24、25をマイクロコンピュータなどの制御装置26によって、初期設定され、あるいは操作パネル27から入力された制御信号を基に制御するようにしている。制御は主としてヒータ22の駆動、駆動停止、駆動電流、電圧の制御、電熱管1の駆動、駆動停止、駆動電流、駆動電圧を制御する。ここに、蒸気発生装置23はヒータ22の駆動停止状態にて常温水を電熱管1に供給することができるし、ヒータ22を駆動して飽和水蒸気にして電熱管1に供給することもできる。また、ヒータ22の駆動電流や駆動電圧、通電のデューティ比を飽和水蒸気生成に必要な値未満に設定することで、その未満となる程度によって種々な温度の温水や熱水を電熱管1に供給することもできる。一方、電熱管1は駆動停止状態で蒸気発生装置23から供給される過熱水蒸気源をそのまま放出することができるし、駆動電流、駆動電圧、通電のデューティ比によってさらに温度を上げた温水、熱水、飽和水蒸気、過熱水蒸気43として放出することができ、その時の昇温程度を電熱管1に通す水21や飽和水蒸気の電磁弁101による調節によって調節することもできる。過熱水蒸気43は700℃〜800℃程度にまで昇温させることができ、対象米42の単時間での加熱処理が可能になる。また、対象米42の表面に焼きを与えられるし、対象米42の水分を余り奪わない特徴がある。このとき、電熱管1は500℃程度以上で赤熱し温度の高い遠赤外線の輻射熱を放射し、対象米42を風味よく焦げ目を付けるのに好適となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は低蛋白米または低蛋白混合米を対象とした炊飯に実用でき、美味しく炊き上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の、1つの実施の形態に係る食品の加熱処理装置の全体構成を示す平面図、横断面図である。
【図2】図1の装置の制御系を含めた概略構成図である。
【図3】真空包装した米飯を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電熱管
1a 上流部
1b 下流部
2 蒸気供給口
3 蒸気放出口
5 ノズル管
6 キャビネット
7 グリル格子
8 容器
9 ヒンジ
11 蓋
12 排出口
13 処理室
23 蒸気発生装置
24、25 ドライバ
26 制御装置
27 操作パネル
40 水
42 対象米
43 過熱水蒸気
44、44a 輻射熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精され搗精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米と、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水と、を容器に入れて、蓋をせずに、あるいは通気蓋を施して、通電により発熱させた電熱管内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される過熱水蒸気と、前記容器に下方から対面する平面域に配管した前記電熱管からの輻射熱とに曝して加熱し、炊飯および殺菌することを特徴とする低蛋白米の炊飯方法。
【請求項2】
蛋白質が所定の低含有量に調整された穀物澱粉またはこれを含んでなる人工の低蛋白米、またはこの低蛋白米と玄米から通常またはそれ未満の搗精歩留まりにまで搗精された精米とを混合して蛋白質が所定の低含有量に調整された低蛋白混合米と、通常の搗精米の場合と同等かそれ未満の量の水と、を容器に入れて、蓋をせずに、通電により発熱させた電熱管内に飽和水蒸気を通して加熱し放出される100℃〜250℃程度の過熱水蒸気と、前記容器に下方から対面する平面域に配管した前記電熱管からの輻射熱とに曝して加熱し、炊飯および殺菌することを特徴とする低蛋白米の炊飯方法。
【請求項3】
電熱管は、蒸気供給口を有した上流部と蒸気放出口を有した下流部とを、平行な2つの平面域に配管し、下流部側を容器側に対向させて用いる請求項1、2のいずれか1項に記載の低蛋白米の炊飯方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の低蛋白米の炊飯方法で得られた米飯類を、包装した保存食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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