説明

低電圧エレクトロルミネッセンス・デバイスのための有機素子

OLEDデバイスは、カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えるとともに、(i)カソードと発光層の間に位置していて、(a)10体積%以上の炭素環縮合芳香族化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体を含む別の層と;(ii)アノードと発光層の間に位置していて、一般式(8)の化合物(ただし、それぞれのRは、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、少なくとも1つのRは、ハメットσパラ値が少なくとも0.3である電子求引置換基を表わす)を含む追加の層とを備えている。このようなデバイスでは、優れた輝度が維持された状態で駆動電圧が低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光層を備えるとともに、その発光層とカソードに挟まれていて、縮合炭素環芳香族化合物と、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの金属とある種のジピラジノ-キノキサリンヘキサカルボニトリル化合物の塩または錯体とを含む層を備える有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて、電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とで構成されている。このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0003】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。この明細書では、“有機EL素子”という用語に、アノードとカソードに挟まれたいろいろな層が含まれる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子の中で注入された正孔と電子が再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが出る。
【0004】
正孔輸送層と電子輸送層の間に有機発光層(LEL)を含む3層有機ELデバイスも提案されている。それは例えば、C. Tangら(J. Applied Physics、第65巻、3610ページ、1989年)によって開示されているものである。発光層は、一般に、ゲスト材料(ドーパントとしても知られる)をドープされたホスト材料からなる。さらに、アメリカ合衆国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が向上した。
【0005】
これら初期の発明以来、デバイスの材料がさらに改善された結果、色、安定性、輝度効率、製造しやすさなどの属性が向上した。それは例えばアメリカ合衆国特許第5,061,569号、第5,409,783号、第5,554,450号、第5,593,788号、第5,683,823号、第5,908,581号、第5,928,802号、第6,020,078号、第6,208,077号に特に開示されている。
【0006】
こうした進歩にもかかわらず、高輝度効率であると同時に、色純度が高くて長寿命である有機ELデバイスの構成要素(例えば、時にドーパントと呼ばれることもある発光材料)が相変わらず必要とされている。特に、さまざまな用途のために発光材料の発光波長を調節できることが必要とされている。例えば青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料が必要とされていることに加え、白色発光エレクトロルミネッセンス・デバイスを作るために青緑色発光材料、黄色発光材料、オレンジ色発光材料も必要とされている。例えば1つのデバイスは、発光色を組み合わせる(例えば、青緑色の光と赤色の光、または青色の光と黄色の光を組み合わせる)ことで白色光を出すことができる。
【0007】
白色ELデバイスの好ましいスペクトルと正確な色は、その白色ELデバイスをどのような用途で用いるかによって異なることになろう。例えばある特別な用途において、見る人が認識する色を変化させる処理をあとから行なわなくても白と認識される光が必要とされる場合には、ELデバイスから出る光が1931国際照明委員会(CIE)の色度座標(CIEx, CIEy)が(0.33, 0.33)であることが望ましい。他の用途、特にELデバイスから出る光をさらに処理して認識される色を変化させる用途では、ELデバイスから出る光が灰白色(例えば青味がかった白、緑味がかった白、黄味がかった白、赤味がかった白)だと十分である可能性、それどころか望ましい可能性がある。
【0008】
白色ELデバイスは、フル-カラー・ディスプレイ装置でカラー・フィルタとともに用いることができる。白色ELデバイスは、他のマルチカラー・ディスプレイ装置または機能的カラー・ディスプレイ装置でカラー・フィルタとともに用いることもできる。このようなディスプレイ装置で使用される白色ELデバイスは製造が容易であり、ディスプレイの各画素で信頼できる白色光を発生させる。OLEDは白色と呼ばれるが、この用途では白色または灰白色に見える可能性がある。また、OLEDから出る光のCIE座標は、それぞれのカラー・フィルタを通過したスペクトル成分がその光に十分な強度で存在するという条件ほど重要でない。したがって白色OLEDデバイスで使用するための大きな輝度強度を提供する新しい材料が必要とされている。
【0009】
電子輸送材料の有用な1つのクラスは、金属キレート化オキシノイド化合物に由来するものであり、その中にはオキシンそのもの(一般に8-キノリノール、8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(AlqまたはAlq3としても知られる)や、それ以外の金属オキシンキレートと非金属オキシンキレートが、従来から電子輸送材料としてよく知られている。
【0010】
Tangら(アメリカ合衆国特許第4,769,292号)とVanSlykeら(アメリカ合衆国特許第4,539,507号)は、発光層または発光領域でAlqを電子輸送材料として用いてELデバイスの駆動電圧を低下させている。
【0011】
Baldoら(アメリカ合衆国特許第6,097,147号)とHungら(アメリカ合衆国特許第6,172,459号)は、カソードに隣接して有機電子輸送層を用いることで、電子がカソードから電子輸送層に注入されたときに電子に電子輸送層と発光層の両方を横断させることを教示している。
【0012】
正孔輸送材料と電子輸送材料が混合した層を発光層で用いることがよく知られている。例えばアメリカ合衆国特許出願公開2004/0229081;アメリカ合衆国特許第6,759,146号、第6,753,098号;第6,713,192号と、その中に引用されている参考文献を参照のこと。Kwongとその共同研究者(アメリカ合衆国特許出願公開2002/0074935)は、有機小分子正孔輸送材料と、有機小分子電子輸送材料と、リン光ドーパントとを含む混合層を記載している。
【0013】
Tamanoら(アメリカ合衆国特許第6,150,042号)は、有機ELデバイスで正孔注入材料を用いることを教示している。このデバイスにおいて有用な電子輸送材料の例が与えられており、その例に電子輸送材料の混合物が含まれる。
【0014】
Seoら(アメリカ合衆国特許出願公開2002/0086180)は、電子輸送材料としてのBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンまたはバソフェナントロリンとしても知られる)と電子注入材料としてのAlqの1:1混合物を用いて電子輸送混合層を形成することを教示している。しかしSeoらのBphen/Alq混合物は安定性が悪い。
【0015】
アメリカ合衆国特許出願公開2004/0207318とアメリカ合衆国特許第6,396,209号には、電子輸送有機化合物と、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンのいずれかを少なくとも1種類含む有機金属錯体化合物とからなる混合層を含むOLED構造が記載されている。
【0016】
日本国特開2000-053957には発光体の利用が教示されており、WO 99/63023には、発光層または電子注入/輸送層において有用な有機金属錯体が教示されているが、電子注入/輸送層でこのような材料の混合物を用いることは教示されていない。
【0017】
アメリカ合衆国特許出願公開2004/0067387では、電子輸送/電子注入層で一般式(I)の化合物(アントラセン構造)を1種類以上使用することが教示されており、一般式(I)ではない化合物(Alq3を含む)を1種類以上添加することができる。Alq3は、本発明で有用な成分ではない。
【0018】
アメリカ合衆国特許第6,468,676号では、電子注入層で有機金属塩、ハロゲン化物、有機金属錯体を用いることが教示されている。有機金属錯体は、金属錯体のリストの中から選択された少なくとも1つのものである。炭素環化合物を混合することは示唆されていない。
【0019】
Zhryuanらは、Chinese Journal of SemiConductors、第21巻、パート2、2000年、184ページに、ルブレンとフェニルピリジンベリリウム(BePP2)の混合物を白色OLEDのための黄色発光層として教示している。ドーパントとしてルブレンを用いる場合には、ルブレンが2〜3体積%存在している必要がある。
【0020】
譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/076,821号、第11/077,218号、第11/116,096号には、第1の化合物を、低電圧電子輸送材料である第2の化合物と混合してOLEDデバイスの発光層のカソード側に層を形成することが記載されている。すると低電圧電子輸送材料を含むデバイスよりも駆動電圧が低いOLEDデバイスが得られる。仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料がこの層に含まれている場合もある。
【0021】
有機金属錯体(例えばリチウムキノレート(リチウム8-ヒドロキシキノレート、リチウム8-キノレート、8-キノリノラトリチウム、Liqとしても知られる))がこれまでELデバイスで使用されてきた。例えばWO 00/32717とアメリカ合衆国特許出願公開2005/0106412を参照のこと。特に、リチウムキノレートとAlqの混合物が有用であることが、例えばアメリカ合衆国特許第6,396,209号とアメリカ合衆国特許出願公開2004/0207318に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしこれらのデバイスは、大きな輝度と低い駆動電圧の組み合わせに関してあらゆる望ましいEL特性を持っているわけではない。したがってこうした進歩にもかかわらず、OLEDデバイスの駆動電圧を低下させつつ優れた輝度を維持することが、相変わらず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明により、カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えるとともに、
(i)上記カソードと上記発光層の間に位置していて、(a)10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体を含む別の層と;
(ii)上記アノードと上記発光層の間に位置していて、一般式(8)の化合物:
【化1】

(ただし、それぞれのRは、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、少なくとも1つのRは、ハメットσパラ値が少なくとも0.3である電子求引置換基を表わす)を含む追加の層とを備えるOLEDデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0024】
このようなデバイスは、優れた輝度を維持しつつ、駆動電圧が低下している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のどの特徴によるOLEDデバイスも、カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えている。この明細書では、2つの層が“隣り合っている”のは、一方の層が他方の層と共通の境界に隣接しているか、その境界を共有している場合である。
【0026】
本発明の第1の特徴では、OLEDデバイスは、カソードと発光層の間に、10体積%を超える縮合炭素環芳香族化合物と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくとも1種類の塩または錯体とを含む層を備えている。
【0027】
本発明の第2の特徴では、発光層は、少なくとも1種類のアントラセン・ホスト化合物が含まれた10体積%までの発光化合物を含むことができ、カソードと発光層の間には、10体積%以上のアントラセン化合物と、IA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体とを含む別の層が位置している。発光層と別の層のアントラセン化合物は、同じでも異なっていてもよい。
【0028】
本発明の第3の特徴では、カソードと発光層の間に、10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、シクロメタル化錯体とを含む別の層が位置している。
【0029】
本発明の第4の特徴では、別の層がカソードと発光層の間にあって単一のシクロメタル化錯体を含んでいる。
【0030】
本発明の第5の特徴では、OLEDデバイスは、カソードと発光層の間に、10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、IA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体とを含む別の層を備えている。また、アノードと発光層の間にある追加の層が、ハメットのσパラ値が少なくとも0.3である少なくとも1種類の電子求引置換基を有する化合物を含んでいる。
【0031】
本発明の第6の特徴では、OLEDデバイスの発光層は、アミン含有モノスチリル化合物、アミン含有ジスチリル化合物、アミン含有トリスチリル化合物、アミン含有テトラスチリル化合物の中から選択した少なくとも1種類の発光化合物を含んでいる。このOLEDは、カソードと発光層の間に位置していて、10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、IA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体とを含む別の層も備えている。
【0032】
本発明のさまざまな特徴に関し、錯体、有機錯体、シクロメタル化錯体という用語は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が配位結合または供与結合を通じて有機分子と錯体化することを表わしている。リガンドとして機能する分子は、実際には一座、二座、三座、多座のものが可能である。数字は、リガンド中で配位可能な原子の数を示している。金属イオンを取り囲むリガンドの数は、錯体を電気的に中性にするのに十分でなければならないことを理解されたい。さらに、錯体はさまざまな結晶形態で存在できることを理解されたい。そのとき、形態ごとに2つ以上の金属イオンが存在できて、十分な数のリガンドが存在しているために電気的に中性になっている。
【0033】
配位結合または供与結合の定義は、『グラントとハックーの化学事典』、91ページに見いだすことができる。要するに、配位結合または供与結合は、電子が豊富な原子(例えばOやN)が一対の電子を電子が欠乏した原子(例えばAlやB)に与えるときに形成される。その一例は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも呼ばれる)に見られる。この場合には、キノリン部分に存在する窒素がその孤立電子対をアルミニウム原子に与えて錯体と呼ばれる複素環またはシクロメタル化環を形成し、合計で3つの環が縮合したAlqが得られる。同じことが、Liqに当てはまる。
【0034】
この明細書の全体を通じ、炭素環、複素環、炭素環基、複素環基という用語は、一般に、『グラントとハックーの化学事典』、第5版、マグロー-ヒル・ブック社に定義されている通りである。炭素環は、炭素原子だけを含んでいるあらゆる芳香族環系または非芳香族環系であり、複素環は、炭素原子と非炭素原子(例えば、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)や、環系を形成するのに役立つ周期表の他の元素)の両方を含むあらゆる芳香族環系または非芳香族環系である。また、本発明のさまざまな特徴に関し、複素環の定義には、配位結合または供与結合を含む環も含まれる。
【0035】
本発明の第1の特徴では、本発明の層は、10体積%を超える縮合炭素環芳香族化合物と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくとも1種類の塩または錯体とを含んでいる。望ましい一実施態様では、炭素環化合物はテトラセンである(例えばルブレン)。
【0036】
縮合炭素環芳香族化合物は、一般式(1)で表わせること好ましい。
【0037】
【化2】

【0038】
一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、水素または置換基として独立に選択され;選択されたどの置換基も、合わさって別の縮合環を形成することができる。望ましい一実施態様では、R1、R4、R7、R10は水素を表わし、R5、R6、R11、R12は、独立に選択された芳香族環基を表わす。
【0039】
さらに別の一実施態様では、縮合炭素環芳香族化合物は、一般式(2)で表わすことができる。
【0040】
【化3】

【0041】
一般式(2)において、Ar1〜Ar4は、独立に選択された芳香族基(例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基、4-ビフェニル基、4-t-ブチルフェニル基)を表わす。好ましい一実施態様では、Ar1とAr4は同じ基を表わし、Ar1およびAr4とは独立に、Ar2とAr3は同じである。
【0042】
R1〜R4は、独立に、水素または置換基(例えばメチル基、t-ブチル基、フルオロ基)を表わす。一実施態様では、R1とR4は水素ではなく、同じ基を表わす。
【0043】
別の一実施態様では、炭素環化合物はアントラセン基である。特に有用な化合物は一般式(3)の化合物である。
【0044】
【化4】

【0045】
一般式(3)において、W1〜W10は、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、隣り合った2つの置換基が合わさって環を形成することができる。本発明の一実施態様では、W1〜W10は、独立に、水素、アルキル基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基の中から選択される。本発明の別の一実施態様では、W9とW10は、独立に選択された芳香族炭素環または芳香族複素環を表わす。本発明のさらに別の一実施態様では、W9とW10は、独立に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基の中から選択される。例えばW9とW10は、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、2-ビフェニル、3-ビフェニルなどの基を表わすことができる。望ましい一実施態様では、W9とW10のうちの少なくとも一方が、(アントラセンに由来する)アントラセニル基の中から選択した炭素環基を表わす。アントラセンに由来する特に有用な基は9-アントラセニル基である。本発明のさらに別の特徴では、W1〜W8は、水素またはアルキル基を表わす。本発明の特に有用な実施態様は、W9とW10が芳香族炭素環基であり、W7とW3が、独立に、水素、アルキル基、フェニル基の中から選択される場合である。
【0046】
ナフタセン・タイプの適切な縮合炭素環芳香族化合物は、従来技術において知られている方法で調製できる。そうした方法の中に、プロパルギルアルコールを、離脱基を形成することのできる試薬と反応させた後、溶媒の存在下かつ酸化剤と有機塩基の不在下で加熱することによってナフタセンを形成するというナフタセン型材料の形成法がある。2004年7月27日に出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/899,821号と第10/899,825号を参照のこと。
【0047】
本発明の特に望ましい1つの錯体は、Liqまたはその誘導体のうちの1つである。Liqは、Li+と8-ヒドロキシキノリネートの錯体であり、リチウムキノリネート錯体(リチウム8-キノリネートとしても知られているが、しばしばLiqと呼ばれる)になる。Liqは単一の化学種として存在すること、または他の形態(例えばLi6q6やLinqn)として存在することができる(ただしnは整数であり、qは8-ヒドロキシキノリネート・リガンドまたは誘導体である)。
【0048】
一実施態様では、金属錯体は一般式(4)で表わされる。
【0049】
(M)m(Q)n (4)
【0050】
一般式(4)において、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。好ましい一実施態様では、Mは、IA族の金属、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Rb+である。望ましい一実施態様では、MはLi+を表わす。
【0051】
一般式(4)では、それぞれのQは、独立に選択されたリガンドである。それぞれのQは、正味の電荷が-1であることが望ましい。好ましい一実施態様では、Qは二座リガンドである。例えばQは、8-キノレート基を表わす。
【0052】
一般式(4)では、nは整数であり、一般に1〜6である。したがって有機金属錯体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体などを形成することができる。しかし有機金属錯体は、一次元の鎖構造を形成することもできる。その場合には、nは7以上である。
【0053】
望ましい別の一実施態様では、金属錯体は一般式(4')で表わされる。
【0054】
【化5】

【0055】
一般式(4')において、Zと点線の弧は、Mと合わさって5又は6員の環を完成させるのに必要な2個または3個の原子と結合を表わす。それぞれのAは、Hまたは置換基を表わし、それぞれのBは、Z原子上の独立に選択された置換基を表わし、2つ以上の置換基が合わさって縮合環または縮合環系を形成することができる。一般式(4')において、jは0〜3であり、kは1または2である。また、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、mとnは、上記錯体上の電荷が中性となるように独立に選択された整数である。
【0056】
本発明の第1の特徴の望ましい別の一実施態様では、金属錯体は一般式(5)で表わされる。
【0057】
【化6】

【0058】
一般式(5)において、Mは、上に説明したのと同様にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。望ましい一実施態様では、MはLi+を表わす。それぞれのraとrbは、独立に選択された置換基を表わし、2つの置換基が合わさって縮合環基を形成することができる。そのような置換基の例として、メチル基、フェニル基、フルオロ置換基、2つの置換基が合わさって形成された縮合ベンゼン環基などがある。一般式(5)において、tは1〜3であり、sは1〜3であり、nは1〜6の整数である。
【0059】
一般式(6)は、錯体のリガンドがアセチルアセトネートまたはその誘導体である一実施態様を表わす。
【0060】
【化7】

【0061】
一般式(6)において、Y1、Y2、Y3は、独立に置換基を表わし、Y1、Y2、Y3のうちの任意のものが合わさって環系または縮合環系を形成することができる。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、mとnは、錯体上の電荷が中性となるように選択された整数である。一般式(6)の望ましい一実施態様では、MはLi+を表わす。置換基が水素であり、MがLi+を表わしている場合には、一般式(6)はアセチルアセトン酸リチウムを表わす。他の置換基の例として、水素に加え、炭素環基、複素環基、アルキル基(例えばメチル基)、アリール基(例えばフェニル基)、ナフチル基などがある。縮合環基は、2つの置換基を合わせることによって形成できる。
【0062】
本発明の第2の特徴では、発光層は、10体積%までの発光化合物と、一般式(3)で表わされる少なくとも1種類のアントラセン・ホスト化合物を含んでいる。カソードと発光層の間に位置する別の層は、(a)10体積%以上のやはり一般式(3)のアントラセン化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体を含んでいる。発光層と別の層の両方に存在する一般式(3)のアントラセンは、すでに説明した本発明の第1の特徴のアントラセンと同じである。本発明のこの特徴の好ましい塩または錯体は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から構成される。
【0063】
発光層と別の層のアントラセン・ホスト化合物は、同じ化合物にすること、または異なった化合物にすることができる。本発明の第2の特徴の一実施態様では、別の層のアントラセン化合物は、この層の10体積%を超えていてもよい。
【0064】
本発明の第2の特徴のさらに別の実施態様では、金属錯体は、一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)で表わされる化合物の中から選択することができる。ただしMは、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の元素の中から選択できる。本発明の第2の特徴の有用な実施態様として、一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)の錯体がある(ただしMは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす)。本発明のこの特徴の特に有用な実施態様は、一般式(4)、(4')、(5)、(6)のMがLi+である場合である。有用な金属錯体は、一般式(6)のMがLi+である場合に構成され、一般式(7)で表わされるアセチルアセトン酸リチウムとその誘導体になる。
【0065】
【化8】

【0066】
一般式(7)において、Y1、Y2、Y3は、独立に置換基を表わし、Y1、Y2、Y3のうちの任意のものが合わさって環または縮合環系を形成することができ、nは整数である。Y1とY3がメチル基であり、Y2が水素である場合には、一般式(7)は親となるアセチルアセトン酸リチウムである。一般式(7)の他の有用な誘導体は、Y1、Y2、Y3が、アルキル基、炭素環基、複素環基の中から選択される場合に形成される。ただし炭素環基と複素環基は、実際には芳香族と非芳香族が可能である。
【0067】
本発明の第3の特徴では、カソードと発光層の間に位置する本発明の別の層は、(a)10体積%以上の縮合環炭素芳香族化合物と、(b)一般式(4')で表わされるシクロメタル化錯体を含んでいる。ただしMは、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の元素を表わし、シクロメタル化錯体は8-ヒドロキシキノレート・リガンドを含んでいない。本発明の第3の特徴の有用な実施態様には、一般式(4')においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属の中から選択された金属である錯体が含まれる。本発明のこの特徴の特に有用な実施態様は、MがLi+の場合である。
【0068】
本発明のこの特徴の特に有用な一実施態様は、別の層が、10体積%を超える縮合炭素環芳香族化合物を含んでいる場合である。望ましい一実施態様では、炭素環化合物はテトラセン化合物(例えばルブレン)またはアントラセン化合物である。本発明の第3の特徴の特に有用な縮合炭素環芳香族化合物は、一般式(1)、(2)、(3)の中から選択することができる。
【0069】
一般式(4')の条件を満たすシクロメタル化錯体の特に有用な例は、MC-20、MC-28、MC-29、MC-30に見いだされる。しかしシクロメタル化化合物がこれらの例に限定されることはなく、一般式(4')の条件を満たしていて本発明の利点を示す任意の例が可能であることに注意されたい。
【0070】
本発明の第4の特徴では、カソードと発光層の間に位置する本発明の別の層は、一般式(4')で表わされる単一のシクロメタル化錯体を含んでいる。ただしMは、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の元素を表わし、シクロメタル化錯体は8-ヒドロキシキノレート・リガンドを含んでいない。本発明の第4の特徴の有用な実施態様には、一般式(4')においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属の中から選択された金属である錯体が含まれる。本発明のこの特徴の実施態様の有用なさらに別のシクロメタル化錯体は、一般式(4')においてMがLi+である場合に形成される。一般式(4')の条件を満たすシクロメタル化錯体の特別な例は、MC-20、MC-28、MC-29、MC-30に見いだされる。
【0071】
別の層に含まれた一般式(4')で表わされる単一のシクロメタル化錯体と、発光層に10体積%まで含まれた一般式(3)の少なくとも1種類のアントラセン・ホスト化合物を含むOLEDデバイスが、本発明のこの特徴の特に有用なデバイスである。発光層のための一般式(3)の有用なアントラセン・ホスト化合物は、Cpd-8、Cpd-9、Cpd-10、Cpd-12、Cpd-13に見いだされる。
【0072】
本発明の第4の特徴に含まれるOLEDデバイスを製造するとき、このデバイスの別の層と発光層のため、一般式(4')の化合物と一般式(3)の化合物の中から独立に選択することができる。
【0073】
シクロメタル化化合物とアントラセン・ホストが本発明のこの特徴に関するこれらの例に限定されることはなく、一般式(4')と(3)の条件を満たすとともに本発明の利点を示す任意の例が可能であることに注意されたい。
【0074】
本発明の第5の特徴では、OLEDデバイスは、カソードと発光層の間に位置する本発明の別の層を備えており、(a)10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の元素からなる少なくとも1種類の塩または錯体を含んでいる。本発明のこの特徴の好ましい塩または錯体は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる。このデバイスは、アノードと発光層の間に位置する追加の層も備えており、この追加の層は、一般式(8)の化合物を含んでいる。
【0075】
【化9】

【0076】
一般式(8)において、Rは、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、少なくとも1つのRは、ハメットσパラ値が少なくとも0.3である電子求引置換基を表わす。
【0077】
ハメットσ値の説明と、さまざまな置換基での値のリストに関しては、C. Hansch、A. Leo、D. Hoekman、『QSARの探索:疎水性定数、電子定数、立体定数』、アメリカ化学会、ワシントンD.C.、1995年を参照のこと。また、C. Hansch、A. Leo、『QSARの探索:化学と生物学における基礎と応用』、アメリカ化学会、ワシントンD.C.、1995年も参照のこと。
【0078】
望ましい一実施態様では、別の層の炭素環化合物は、テトラセン化合物(例えばルブレン)またはアントラセン化合物である。本発明の第5の特徴の特に有用な縮合炭素環芳香族化合物は、一般式(1)、(2)、(3)の中から選択することができ、別の層の中に、この層の10体積%を超えて存在することができる。本発明のこの特徴のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の有用な塩と錯体は、一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)に基づく錯体を含む、この明細書で説明したものである。
【0079】
本発明の第5の特徴の一実施態様では、一般式(8)のそれぞれのRは、独立に、水素、C1〜C12炭化水素、ハロゲン、アルコキシ、アリールアミン、エステル、アミド、芳香族炭素環、芳香族複素環、ニトロ、ニトリル、スルホニル、スルホキシド、スルホンアミド、スルホン酸塩、トリフルオロメチルからなるグループの中から選択される。特に有用なR基は、独立に、ニトリル、ニトロ、エステル、アミドからなるグループの中から選択される。本発明のこの特徴の別の有用な実施態様は、追加の層が正孔輸送層に隣接している場合に実現される。その追加の層で用いられる特別な化合物は以下の通りである。
【0080】
【化10】

【0081】
【化11】

【0082】
本発明の第6の特徴では、本発明のOLEDデバイスは、カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えていて、(i)発光層の中には、アミン含有モノスチリル化合物、アミン含有ジスチリル化合物、アミン含有トリスチリル化合物、アミン含有テトラスチリル化合物の中から選択した少なくとも1種類の発光化合物を含んでおり、(ii)カソードと発光層の間に位置していて、(a)10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の元素の少なくとも1種類の塩または錯体とを含む別の層を備えている。本発明のこの特徴の好ましい塩または錯体は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる。
【0083】
一般式(9)は、発光層で使用される本発明のこの特徴のモノスチリル化合物、ジスチリル化合物、トリスチリル化合物、テトラスチリル化合物の有用な実施態様を表わす。
【0084】
【化12】

【0085】
一般式(9)において、Ar5、Ar6、Ar7は、それぞれ独立に、6〜40個の炭素原子を含む置換された芳香族炭素環基と置換されていない芳香族炭素環基の中から選択される。ただしAr5、Ar6、Ar7の少なくとも1つは、スチリル基を含んでいる。スチリル基の数は1〜4であり、gは1〜4の中から選択した整数である。
【0086】
一般式(10)は、発光層で使用される本発明のこの特徴のモノスチリル化合物、ジスチリル化合物、トリスチリル化合物、テトラスチリル化合物の有用なさらに別の実施態様を表わす。
【0087】
【化13】

【0088】
一般式(10)において、Ar8、Ar9、Ar11、Ar13、Ar14は、それぞれ独立に、6〜40個の炭素原子を含む置換された1価の基または置換されていない1価の基を表わし、Ar10とAr12は、それぞれ独立に、6〜40個の炭素原子を含む置換された2価の基または置換されていない2価の基を表わす。Ar8〜Ar12で表わされる基の少なくとも1つはスチリル基を含んでいる。一般式(10)において、aとdは、それぞれ0〜2の整数を表わし、bとcは、それぞれ1〜2の整数を表わし、スチリル基の数は1〜4である。
【0089】
本発明の目的では、スチリルという用語は、化合物スチレンに由来する基PhCH=CH-を意味する。スチリル(2-フェニルエテニル、シンナメニル、スチリレンとも呼ばれる)の定義は、『グラントとハックーの化学事典』、第5版、マグロー-ヒル・ブック社、557〜558ページに見いだすことができる。また、本発明のさらに別の目的のため、本発明において有用なスチリル基はさらに置換されていてもよい。
【0090】
本発明のこの特徴の有用な一実施態様は、別の層が、10体積%を超える縮合炭素環芳香族化合物を含んでいる場合である。望ましい一実施態様では、炭素環化合物は、テトラセン化合物(例えばルブレン)またはアントラセン化合物である。本発明の第3の特徴で特に有用な縮合炭素環芳香族化合物は、一般式(1)、(2)、(3)の中から選択することができる。
【0091】
本発明の第6の特徴の有用な実施態様では、別の層は、一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)の錯体を含んでいる。ただしMは、アルカリ金属とアルカリ土類金属の中から選択した金属を表わす。本発明のこの特徴の特に有用な実施態様は、一般式(4)、(4')、(5)、(6)のMがLi+の場合である。有用な金属錯体は、一般式(6)のMがLi+である場合に形成され、一般式(7)で表わされるアセチルアセトン酸リチウムとその誘導体になる。
【0092】
一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)の条件を満たす塩または錯体の特別な例は、MC-20、NC-28、MC-29、MC-30に見いだされる。塩または錯体がこれらの例に限定されることはなく、一般式(4)、(4')、(5)、(6)、(7)の条件を満たしていて本発明の利点を示す任意の例が可能であることに注意されたい。
【0093】
本発明のどの特徴によるOLEDデバイスの構造も、ホストとドーパント(発光材料としても知られる)を注意深く選択することによって構成できる。その結果、デバイスは青、緑、赤、白いずれかの色の光を出せるようになる。さらに、上記のどの特徴においても、本発明の層または別の層は、発光性にすることができる。その場合、デバイスは、例えば白色光を発生させるELデバイスにおけるように、2つの発光層を備えている。別の一実施態様では、本発明の層または別の層は、光を出さない。これは、この層が光を実質的に出さないことを意味する。この層から発生する光は5%未満であることが好ましく、1%未満であることさえ好ましく、この層はまったく光を出さないことが望ましい。
【0094】
本発明のあらゆる特徴に関する一実施態様では、本発明の層または別の層はカソードに隣接した位置にあり、電子輸送層として機能する。本発明のあらゆる特徴に関する別の一実施態様では、本発明の層または別の層は、カソードに隣接した電子注入層に隣接した位置にある。電子注入層としては、アメリカ合衆国特許第5,608,287号、第5,776,622号、第5,776,623号、第6,137,223号、第6,140,763号に記載されているものなどがある。電子注入層は、一般に、仕事関数が4.2eV未満の電子注入材料、または仕事関数が4.2eV未満の金属の塩からなる。仕事関数が小さなアルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba)を含む薄膜を用いることができる。さらに、仕事関数が小さなこれらの金属をドープされた有機材料を電子注入層として用いてもよい。その例は、LiまたはCsをドープされたAlqである。好ましい一実施態様では、電子注入層は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機塩(その中に酸化物も含まれる)を含んでいる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機塩と錯体も含まれる。実際、デバイスの中で還元されて完全に自由な金属、または一時的な化学種としての自由状態の金属になる任意の金属塩または化合物が、電子注入層において有用である。例としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、アセチルアセトン酸リチウム(Liacac)、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、酢酸リチウム、ギ酸リチウムなどがある。実際には、電子注入層は、0.1〜10.0nmの範囲の適切な厚さに堆積された薄いインターフェイス層であることがしばしばある。しかしこの範囲は、0.1〜5.0nmであることがより一般的である。この範囲の厚さの電子注入インターフェイス層は、電子を本発明の層または別の層に効果的に注入するであろう。場合によっては、電子注入層を本発明から取り除くことができる。
【0095】
特に断わらない限り、縮合炭素環芳香族環化合物が本発明のいろいろな特徴の層または別の層に存在している場合には、その層に10体積%以上含まれていてよい。一実施態様では、炭素環化合物は、その層に20%、40%、50%含まれており、60%以上含まれている場合さえある。本発明の一般的な別の一実施態様では、この化合物は、本発明の層に90%未満、80%未満、70%未満含まれており、60%以下含まれている場合さえある。好ましい一般的な一実施態様では、この化合物は、本発明の層に15〜95体積%含まれている。この割合は、25〜90体積%であることがしばしばあり、一般には50〜80体積%である。本発明にとって有用な縮合炭素環芳香族化合物の例は以下の通りである。
【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

【0101】
【化19】

【0102】
【化20】

【0103】
【化21】

【0104】
【化22】

【0105】
【化23】

【0106】
縮合環炭素芳香族化合物が本発明のいろいろな特徴の層または別の層に存在している場合には、その層は、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族の中から選択した元素のイオンを含む少なくとも1種類の塩または錯体も含んでいる。イオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオン、または仕事関数が4.2eV未満の金属(この金属の電荷は+1または+2)の塩のイオンであることが好ましい。本発明のさらに一般的な実施態様には、2種類以上の塩または錯体、または1種類の塩と1種類の錯体の混合物が層の中に存在している実施態様が含まれる。塩としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機塩、無機塩、酸化物のうちで、還元によってデバイス内で完全に自由な金属、または一時的な化学種としての自由状態の金属にできる任意のものが可能である。縮合環炭素芳香族化合物以外に含まれるすべてを錯体または塩にすることができる。例として、アルカリ金属とアルカリ土類金属のハロゲン化物(例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2))、酸化リチウム(Li2O)、アセチルアセトン酸リチウム(Liacac)、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、酢酸リチウム、ギ酸リチウムなどがある。MC-1〜MC-30は、本発明の有用な塩または錯体のさらに別の例である。
【0107】
【化24】

【0108】
【化25】

【0109】
【化26】

【0110】
【化27】

【0111】
【化28】

【0112】
【化29】

【0113】
【化30】

【0114】
【化31】

【0115】
金属錯体は本発明の層の中に少なくとも1体積%のレベルで存在していることが望ましい。このレベルは5体積%以上であることがより一般的であり、10体積%のレベルになることがしばしばあり、20体積%を超えることさえある。一実施態様では、錯体は本発明の層の20〜60体積%のレベルで存在している。結局、縮合炭素環芳香族環化合物以外に存在するすべてを錯体または塩にすることができる。
【0116】
本発明の別の特徴では、本発明の層は仕事関数が4.2eV未満の金属元素も含んでいる。仕事関数の定義は、『CRC 化学と物理学のハンドブック』、第70版、1989〜1990年、CRCプレス社、F-132ページに見いだすことができ、さまざまな金属の仕事関数のリストは、E-93ページとE-94ページに見いだすことができる。そのような金属の典型例として、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Sm、Gd、Ybなどがある。望ましい一実施態様では、金属はLiである、
【0117】
金属元素は、本発明の層に含まれる場合には、その層の全材料の0.1体積%〜15体積%の量が存在していることがしばしばある。この量は0.1体積%〜10体積%であることが一般的であり、1〜5体積%であることがしばしばある。
【0118】
説明した本発明のどの特徴でも、アノードと発光層の間に位置していて本発明の第5の特徴による一般式(8)の化合物を含む追加の層は、アノードと発光層の間にある本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6の特徴の追加の層として組み込むこともできる。化合物Dpq-1、Dpq-2、Dpq-3、Dpq-4は、追加の層において有用な特別な例である。本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6の特徴による有用な別の実施態様は、追加の層が正孔輸送層に隣接している場合に実現される。
【0119】
説明した本発明のどの特徴でも、本発明の層、別の層、追加の層は、蛍光とリン光の両方の光を出すOLEDデバイスに適用されることを理解されたい。言い換えるならば、OLEDデバイスは実際には三重項または一重項にすることができる。本発明の利点は、蛍光デバイスとリン光デバイスの両方で実現できる。
【0120】
本発明の層の厚さは0.5〜200nmにできるが、2〜100nmが好ましく、5〜50nmが望ましい。
【0121】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、“基”という用語を用いる場合、置換基が置換可能な1つの水素を含んでいるのであれば、この用語に置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数個の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質をその置換基が失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいて、例えば、2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルがある);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0122】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0123】
デバイスの一般的構造
【0124】
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、またはこれらの組み合わせを用いた多くのOLEDデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0125】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。OLEDにとっての必須の条件は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光層とが存在していることである。追加の層を使用できるが、それについては後でさらに詳しく説明する。
【0126】
本発明によれば、小分子デバイスのための特に有用な構成は図面に示したものであり、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、電子注入層112と、カソード113からなる。これらの層について以下に詳しく説明する。基板101をカソード113に隣接した位置にすることや、基板101が実際にアノード103またはカソード113を構成することも可能であることに注意されたい。アノード103とカソード113に挟まれた有機層を、便宜上、有機EL素子と呼ぶ。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが望ましい。デバイスがリン光材料を含んでいる場合には、発光層と電子輸送層の間に位置する正孔阻止層が存在することができる。
【0127】
OLEDのアノード103とカソード113は、導電体160を通じて電圧/電流源150に接続されている。OLEDは、アノード103とカソード113の間に、アノード103がカソード113と比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノード103から有機EL素子に注入され、電子はカソード113から有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0128】
基板
【0129】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板101の上に形成されて、カソード113またはアノード103が基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板101と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノード103であることが一般的だが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板101は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板101を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。基板101は、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。これは、一般に、TFTがOLED層の下に設けられるアクティブ・マトリックス基板の場合である。しかし基板101は、少なくとも光を出す画素化領域において、大部分が透明な材料(例えばガラスまたはポリマー)でできている必要がある。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(例えばシリコン)、セラミック、回路板材料などがある。この場合にも、基板101は、アクティブ・マトリックスTFTの設計に見られるように、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0130】
アノード
【0131】
エレクトロルミネッセンス光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノード103は、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物だが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード103として用いることができる。EL光をカソード113だけを通して見るような用途では、アノード103の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0132】
カソード
【0133】
アノード103だけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソード113は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、カソードと、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)とを備えていて、カソードの上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。アルカリ金属をドープしたETL材料(例えばLiをドープしたAlq)は、有用なEILの別の一例である。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0134】
カソードを通して発光を見る場合、カソード113は、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
【0135】
正孔注入層(HIL)
【0136】
正孔注入層105は、アノード103と正孔輸送層107の間に設けることができる。正孔注入層は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層107に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層105で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばMTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。正孔注入層を本発明で用いることが好ましく、それはプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーであることが望ましい。プラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーを含む正孔注入層の厚さは、0.2〜15nmの範囲が可能であり、0.3〜1.5nmの範囲であることが好ましい。
【0137】
正孔輸送層(HTL)
【0138】
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイスに正孔輸送層が含まれていると有用であることがしばしばある。有機ELデバイスの正孔輸送層107は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0139】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。そのような化合物として、構造式(A)で表わされるものがある。
【0140】
【化32】

ただし、Q1とQ2は、独立に選択された芳香族第三級アミン部分であり、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0141】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B)で表わされる。
【0142】
【化33】

ただし
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化34】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に選択されたアリール基である。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0143】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミン基として、一般式(D)で表わされるものがある。
【0144】
【化35】

ただし、
それぞれのAreは、独立に選択されたアリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に選択されたアリール基である。
【0145】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0146】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0147】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-メチルシクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン(TAPPP)
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル(TTB)
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0148】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料を含む)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。正孔輸送層は、組成の異なる2つ以上のサブ層を含むこともできる。各層サブの組成は、上に説明した通りである。正孔輸送層の厚さは10〜500nmにできるが、50〜300nmが好ましい。
【0149】
発光層(LEL)
【0150】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は、ルミネッセンス材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。蛍光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0151】
ホストと発光材料は、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))にすることができる。ポリマーの場合、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させること、または発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。ホスト材料を互いに混合し、膜形成、電気的特性、発光効率、動作寿命、製造しやすさを改善することができる。ホストは、正孔輸送特性が優れた材料と、電子輸送特性が優れた材料を含むことができる。
【0152】
ゲスト発光材料として蛍光材料を選択する際の重要な1つの関係は、ホストと蛍光材料の励起した一重項状態のエネルギーの比較である。蛍光材料の励起した一重項状態のエネルギーは、ホスト材料の励起した一重項状態のエネルギーよりも低いことが非常に望ましい。励起した一重項状態のエネルギーは、発光する一重項状態と基底状態のエネルギー差として定義される。発光しないホストでは、基底状態としての同じ電子スピンの最低励起状態が、発光状態と見なされる。
【0153】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものがある。
【0154】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体は、金属キレート化オキシノイド(一般式E)としても知られており、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0155】
【化36】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、現われるごとに独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0156】
以上の説明から、金属は、1価、2価、3価、4価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、3価の金属(アルミニウム、ガリウムなど);別の金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の1価、2価、3価、4価の金属を使用することができる。
【0157】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0158】
有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0159】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式F1)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0160】
【化37】

ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれの環上の1個以上の置換基を表わす。この場合の各置換基は、以下に示すグループの中から個別に選択される。
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子からなるヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子が1〜24個のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、ホウ素、シアノ。
【0161】
代表例として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンと2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンがある。他のアントラセン誘導体もLELにおけるホストとして役に立つ可能性があり、例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体などがある。
【0162】
一般式(F2)のモノアントラセン誘導体もエレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用な1つのホスト材料であり、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。一般式(F2)のアントラセン誘導体は、2003年10月24日にLelia Cosimbescuによって「アントラセン誘導体ホストを含むエレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/693,121号に記載されている(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0163】
【化38】

ただし、R1〜R10は以下のようになっている。
R1〜R8はHである。
R9は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないナフチル基である。ただしR9とR10は同じではなく、アミンとイオウ化合物を含んでいない。R9は、1つ以上の縮合環をさらに備えていて芳香族縮合環系(例えばフェナントリル、ピレニル、フルオランテン、ペリレン)を形成している置換されたナフチル基であるか、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたナフチル基であるか、縮合した2つの環からなる置換されていないナフチル基であることが好ましい。R9は、パラ位が置換された2-ナフチルまたは1-ナフチルか、パラ位が置換されていない2-ナフチルまたは1-ナフチルであることが好ましい。
R10は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないビフェニル基である。R10は、置換されていて芳香族縮合環(例えばナフチル、フェナントリル、ペリレン)を形成しているビフェニル基か、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたビフェニル基か、置換されていないビフェニル基であることが好ましい。R10は、置換されていない4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、縮合環を含まない他のフェニル環で置換されていて三フェニル環系を形成している4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、2-ビフェニルであることが好ましい。特に有用なのは、9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンである。
【0164】
アントラセン誘導体の別の有用な1つのクラスは、一般式(F3);
A1-L-A2 (F3)
で表わされる。ただし、A1とA2は、それぞれ、置換された、または置換されていないモノフェニルアントリル基を表わすか、置換された、または置換されていないジフェニルアントリル基を表わし、互いに同じでも異なっていてもよく、Lは、単結合または2価の結合基を表わす。
【0165】
アントラセン誘導体の別の有用な1つのクラスは、一般式(F4);
A3-An-A4 (F4)
で表わされる。ただし、Anは、置換された、または置換されていない2価のアントラセン残基を表わし、A3とA4は、それぞれ、置換された、または置換されていない1価の縮合芳香族環基を表わすか、置換された、または置換されていない炭素原子が6個以上の非縮合環アリール基を表わし、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0166】
アメリカ合衆国特許第6,465,115号とWO 2004/018587に開示されている非対称なアントラセン誘導体は有用なホストであり、これら化合物は、単独で、または混合物の一成分として、以下に示す一般式(F5)または(F6)で表わされる。
【0167】
【化39】

ただし、
Arは、核の炭素原子が10〜50個である置換された(置換されていない)縮合芳香族基であり;
Ar'は、核の炭素原子が6〜50個である置換された(置換されていない)芳香族基であり;
Xは、核の炭素原子が6〜50個である置換された(置換されていない)芳香族基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)芳香族複素環基、炭素原子が1〜50個の置換された(置換されていない)アルキル基、炭素原子が1〜50個の置換された(置換されていない)アルコキシ基、炭素原子が6〜50個の置換された(置換されていない)アラルキル基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)アリールオキシ基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)アリールチオ基、核の炭素原子が1〜50個である置換された(置換されていない)アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基のいずれかであり;
a、b、cは0〜4の整数であり;nは1〜3の整数であり;
nが2以上である場合には、以下に示す括弧の中の化学式は同じでも異なっていてもよい。
【0168】
【化40】

【0169】
さらに、本発明により、以下の一般式(F6)で表わされるアントラセン誘導体が提供される。
【0170】
【化41】

ただし、
Arは、核の炭素原子が10〜50個である置換された(置換されていない)縮合芳香族基であり;
Ar'は、核の炭素原子が6〜50個である置換された(置換されていない)芳香族基であり;
Xは、核の炭素原子が6〜50個である置換された(置換されていない)芳香族基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)芳香族複素環基、炭素原子が1〜50個の置換された(置換されていない)アルキル基、炭素原子が1〜50個の置換された(置換されていない)アルコキシ基、炭素原子が6〜50個の置換された(置換されていない)アラルキル基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)アリールオキシ基、核の炭素原子が5〜50個である置換された(置換されていない)アリールチオ基、核の炭素原子が1〜50個である置換された(置換されていない)アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基のいずれかであり;
a、bは0〜4の整数であり;nは1〜3の整数であり;
nが2以上である場合には、以下に示す括弧の中の化学式は同じでも異なっていてもよい。
【0171】
【化42】

【0172】
発光層で用いるための有用なアントラセン材料の特別な例として以下のものがある。
【0173】
【化43】

【0174】
【化44】

【0175】
【化45】

【0176】
ベンズアゾール誘導体(一般式G)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0177】
【化46】

ただし、
nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、個別に、水素、炭素原子が1〜24個のアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど)、アリール、またはヘテロ原子で置換されたアリールで炭素原子が5〜20個のもの(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、これら以外の複素環系)、ハロ(例えばクロロ、フルオロ)、縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールなどからなる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに結合させる。Lは、複数のベンズアゾールと共役していてもよいし、共役していなくてもよい。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0178】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号と日本国特開平08-333569に記載されているように、スチリルアリーレン誘導体も、青色発光のための有用なホストである。例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンと4,4'-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1'-ビフェニル(DPVBi)は、青色発光のための有用なホストである。
【0179】
有用な蛍光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)イミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メテン化合物、カルボスチリル化合物などがある。有用な材料の代表例としては、以下のものがある。
【0180】
【化47】

【0181】
【化48】

【0182】
【化49】

【0183】
【化50】

【0184】
【化51】

【0185】
【化52】

【0186】
リン光材料をELデバイスで用いることができる。便宜上、リン光錯体ゲスト材料を、この明細書ではリン光材料と呼ぶ。リン光材料は、一般に、1つ以上のリガンド(例えばsp2炭素とヘテロ原子を通じて金属と配位することができるモノアニオン・リガンド)を含んでいる。リガンドは、フェニルピリジン(ppy)、またはその誘導体、またはその類似体にすることができる。有用なリン光有機金属材料のいくつかの例として、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)などがある。好ましいことに、多数のリン光有機金属材料がスペクトルの緑色領域で発光する。すなわち510〜570nmの範囲で発光が最大になる。
【0187】
リン光材料は、単独で、または他のリン光材料と組み合わせ、同じ層または異なる層で使用することができる。リン光材料と適切なホストが記載されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、アメリカ合衆国特許第6,458,475 B1号、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,573,651 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0197511 A1、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許第6,451,455 B1号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、アメリカ合衆国特許第6,413,656 B1号、第6,515,298 B2号、第6,451,415 B1号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、第1 238 981 A2号、第1 244 155 A2号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、日本国特開2003/073387A、2003/073388A、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、日本国特開2003/059667A、2003/073665A、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0121638 A1である。
【0188】
IrL3タイプとIrL2L'タイプのシクロメタル化Ir(III)錯体(例えば緑色の光を出すfac-トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート))の発光波長は、シクロメタル化リガンドL上の適切な位置における電子供与基または電子求引基の置換によってシフトさせること、またはシクロメタル化リガンドLのためにいろいろな複素環を選択することによってシフトさせることができる。発光波長は、補助リガンドL'を選択することによってシフトさせることもできる。赤色発光体の例は、ビス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)と、トリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)イリジウム(III)である。青色発光体の一例は、ビス(2-(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0189】
リン光材料としてビス(2-(2'-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C3)イリジウム(アセチルアセトネート)[Btp2Ir(acac)]を用いた赤い電気リン光が報告されている(C. Adachi、S. Lamansky、M.A. Baldo、R.C. Kwong、M.E. Thompson、S.R. Forrest、App. Phys. Lett.、第78巻、1622〜1624ページ、2001年)。
【0190】
他の重要なリン光材料としては、シクロメタル化されたPt(II)錯体であるシス-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)ピリジナト-N,C3')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)キノリナト-N,C5')白金(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')白金(II)(アセチルアセトネート)などがある。Pt(II)ポルフィリン錯体(例えば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II))も有用なリン光材料である。
【0191】
有用なリン光材料のさらに別の例として、3価ランタニド(例えばTb3+、Eu3+)の配位錯体がある(J. Kido他、Appl. Phys. Lett.、第65巻、2124ページ、1994年)。
【0192】
リン光材料に適したホスト材料は、三重項エキシトンの輸送がホスト材料からリン光材料へと効率的になされるが、リン光材料からホスト材料へは効率的に起こりえないようなものを選択すべきである。したがってリン光材料の三重項エネルギーはホストの三重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。一般に、三重項エネルギーが大きいというのは、光学的バンドギャップが大きいことを意味する。しかしホストのバンドギャップは、電荷キャリアを発光層に注入する際に許容できない障壁を作り出したり、OLEDを駆動する電圧の許容できない上昇を引き起こしたりするほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662に記載されている。適切なホストとしては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホストの例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニルまたはCBPとしても知られる)、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-2,2'-ジメチル-ビフェニル(2,2'-ジメチル-4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニルまたはCDBPとしても知られる)、1,3-ビス(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン(1,3-ビス(カルバゾル-9-イル)ベンゼンとしても知られる)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0193】
望ましいホスト材料は連続膜を形成することができる。
【0194】
正孔阻止層(HBL)
【0195】
リン光材料を使用しているOLEDデバイスは、エキシトンと再結合イベントがホスト材料とリン光材料を含む発光層だけで発生するようにするため、適切なホストに加え、電子輸送相111と発光層109の間に位置する少なくとも1つの正孔阻止層をしばしば必要とする。この場合、正孔がホストから正孔阻止層に移動する際にエネルギー障壁が存在せねばならない一方で、電子は、正孔阻止層を容易に通過してホスト材料とリン光材料を含む発光層へと移動できねばならない。第1の条件は、正孔阻止層のイオン化電位が発光層109のイオン化電位よりも望ましくは0.2eV以上大きいことを要請する。第2の条件は、正孔阻止層の電子親和力が発光層109の電子親和力を大幅に上回ることはなく、望ましくは発光層の電子親和力よりも小さいか、発光層の電子親和力よりも約0.2eV以上大きくはないことを要請する。
【0196】
特徴的な発光が緑である電子輸送層(例えば以下に説明するAlq含有電子輸送層)とともに用いる場合、正孔阻止層材料の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーに関する条件により、正孔阻止層の特徴的な発光は、電子輸送層の特徴的な発光よりも短い波長の発光(例えば青、紫、紫外)になる。したがって、正孔阻止層材料の特徴的な発光は、青、紫、紫外のいずれかであることが望ましい。さらに、絶対に必要というわけではないが、正孔阻止材料の三重項エネルギーは、リン光材料の三重項エネルギーよりも大きいことが望ましい。適切な正孔阻止材料は、WO 00/70655 A2とWO 01/93642 A1に記載されている。有用な正孔阻止材料の例を2つ挙げると、バソクプロイン(BCP)とビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。BCPの特徴的な発光は紫外領域であり、BAlqの特徴的な発光は青である。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528に記載されているように、BAlq以外の金属錯体も正孔とエキシトンを阻止することが知られている。さらに、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0175553 A1には、この目的でfac-トリス(1-フェニルピラゾラと-N,C2')イリジウム(III)(Irppz)を用いることが記載されている。
【0197】
正孔阻止層を用いる場合、その厚さは2〜100nmにすることができるが、5〜10nmであることが好ましい。
【0198】
電子輸送層(ETL)
【0199】
一実施態様では、本発明の層はデバイスの電子輸送層としてだけ機能する。他の実施態様では。以下に説明するように追加の電子輸送層が存在していることが望ましい。
【0200】
有機ELデバイスの電子輸送層を構成するのに用いられる望ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物であり、その中にはオキシンそのもの(一般に8キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高性能を示し、容易に薄膜の形態になる。ここで考慮するオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式(E)を満たす化合物である。
【0201】
電子輸送層で用いるのに適した他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。一般式(G)を満たすベンズアゾールも有用な電子輸送材料である。トリアジンとオキサジアゾールも電子輸送材料として有用であることが知られている。
【0202】
正孔阻止層と電子輸送層111の両方を利用する場合、電子は電子輸送層111を容易に通過して正孔阻止層に入ることができねばならない。したがって電子輸送層111の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力を大幅に上回ってはならない。電子輸送層の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力よりも小さいか、それよりも0.2eV以上は大きくないことが望ましい。
【0203】
電子輸送層を使用する場合には、その厚さは2〜100nmにすることができるが、5〜20nmであることが好ましい。
【0204】
他の有用な有機層とデバイスの構造
【0205】
層109〜111を場合によってはまとめて単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。正孔輸送層(存在する場合)と層111もまとめて単一の層にし、正孔またはエキシトンを阻止する機能を果たすとともに、電子輸送をサポートするようにできる。発光材料を正孔輸送層107に含めうることも従来技術で知られている。その場合、正孔輸送材料がホストとして機能する。多数の材料を1つ以上の層に添加し、例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作ることができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号に記載されている。着色光を出させるため適切なフィルタを白色発光デバイスに取り付けることもできる。
【0206】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0207】
有機層の堆積
【0208】
上記の有機材料は、昇華を通じてうまく堆積するが、溶媒から堆積させることもできる(そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料を含む層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0209】
OLEDの製造に役立つ有機材料(例えば有機正孔輸送材料や、有機エレクトロルミネッセンス成分をドープされた有機発光材料)は分子構造が比較的複雑であり分子結合力が比較的弱いため、物理的気相蒸着の間にその有機材料が分解しないように注意する必要がある。上記の有機材料は比較的高純度で合成されて、粉末、フレーク、顆粒の形態で提供される。これまでは、このような粉末またはフレークが物理的蒸着源の中に入れられて加熱され、その有機材料の昇華または気化による蒸気が形成され、その蒸気が基板の表面に凝縮して有機層が形成されてきた。
【0210】
物理的気相蒸着において有機の粉末、フレーク、顆粒を用いる際にいくつかの問題が観察された。それは、このような粉末、フレーク、顆粒の取り扱いが難しいということである。これら有機材料は、一般に、密度が比較的小さく、特に10-6トルの減圧状態まで排気したチェンバーの中に配置した物理的蒸着源の中に入れたとき、望ましくないことに熱伝導率が小さい。その結果、粉末、フレーク、顆粒は、加熱された蒸着源からの放射熱によってと、蒸着源の加熱された表面と直接接触している粒子またはフレークへの熱伝導によってだけ加熱される。蒸着源の加熱された表面と接触していない粉末、フレーク、顆粒は、粒子と粒子の接触面積が比較的小さいために熱伝導によって効果的に加熱されることはない。すると物理的蒸着源の中にあるこのような有機材料の加熱が不均一になる可能性がある。したがって基板の表面に蒸着によって形成される有機層が一様でなくなる可能性がある。
【0211】
有機粉末を固めて固体ペレットにすることができる。昇華可能な有機材料の粉末混合物からの複数の固体ペレットをまとめて1つの固体ペレットにするとより取り扱いやすくなる。有機粉末を固めて固体ペレットにすることは、比較的簡単なツールを用いて実現できる。有機層を形成するため、2種類以上の非発光性有機非エレクトロルミネッセンス性成分材料か発光性エレクトロルミネッセンス性成分材料を含む混合物、または非エレクトロルミネッセンス性成分材料とエレクトロルミネッセンス性成分材料の混合物から形成された固体ペレットを物理的蒸着源の中に入れることができる。このように固めたペレットは、物理的蒸着装置で使用することができる。
【0212】
本発明の1つの特徴では、有機材料からなる圧縮されたペレットからOLEDの一部となる基板の表面に有機層を形成する方法が提供される。
【0213】
本発明の材料を堆積させるための好ましい1つの方法が、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0255857とアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/945,941号に記載されており、これらの文献では、異なる蒸着源を用いて本発明のそれぞれの材料を蒸発させている。好ましい第2の方法では、温度制御された材料供給路に沿って材料が計量供給されるフラッシュ蒸発を利用する。このような好ましい方法は、譲受人に譲渡された以下の特許出願に記載されている:アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号、第10/805,980号、10/945,940号、第10/945,941号、第11/050,924号、第11/050,934号。この第2の方法を利用し、異なる蒸着源を用いてそれぞれの材料を蒸発させること、または固体材料を混合した後に同じ蒸着源を用いて蒸発させることができる。
【0214】
封止
【0215】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封止法として知られている。本発明に従って構成したELデバイスでは、これらのうちのどの密封法または封止法と乾燥法を用いてもよい。
【0216】
光学的最適化
【0217】
本発明のOLEDデバイスでは、発光特性の向上を望むのであれば、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングを、ELデバイスの上に、またはELデバイスの一部として特別に設けることができる。
【0218】
本発明の実施態様は、より大きな輝度収率、より低い駆動電圧、より大きな電力効率、より長い動作寿命、製造しやすさなどの利点を提供することができる。本発明において有用なデバイスの実施態様は、広い範囲の色相を提供することができる。その中には、(マルチカラー・ディスプレイにするため直接的な、またはフィルタを通じた)白色光の発生に役立つ色相も含まれる。本発明の実施態様は、エリア照明装置も提供することができる。
【0219】
本発明とその利点を以下の特別な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0220】
実施例8、10、26は、この明細書で権利を主張する本発明に特に関係する。“パーセンテージ”または“パーセント”という用語と記号“%”は、本発明の層に含まれる全材料のうちの特定の第1の化合物または第2の化合物の体積パーセント(または薄膜厚さ計で測定した厚さの比)を示す。第2の化合物が2つ以上存在している場合には、第2の化合物の合計体積を本発明の層に含まれる全材料のパーセンテージとして表現することもできる。
【0221】
実施例1a:Cpd-2の合成
【0222】
【化53】

【0223】
化合物(3)(化学式1)を以下のようにして調製した。窒素雰囲気下でアセチレン化合物(2)(2.0g、12ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)(100ml)に溶かし、この溶液を0℃に冷却した。カリウムt-ブトキシド(KButO)(1.4g、12ミリモル)を添加し、得られた混合物を約15分間にわたってよく撹拌した。次にこの混合物にベンゾフェノン(1)(3.53g、30ミリモル)を添加した。0℃にて30分間にわたって撹拌を続けた後、1時間かけて室温にした。この時間が経過した後、溶液を0℃に冷却し、反応物を飽和塩化ナトリウム(20ml)で処理した。次にこの混合物を酢酸エチルで希釈し、2NのHClで洗浄し(3回)、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を石油エーテルと研和すると、生成物が灰白色の固形物として得られた。化合物(3)の収量は3.0gであった。
【0224】
化合物(3)(7.0g、15ミリモル)を塩化メチレン(CH2Cl2)(70ml)に溶かし、0℃にて窒素雰囲気下で撹拌した。この溶液にトリエチルアミン(NEt3)(1.56g、15ミリモル)を添加し、得られた混合物を塩化メタンスルホニル(CH3SO2Cl)(1.92g、15ミリモル)を一滴ずつ用いて処理した。そのとき反応の温度を0〜5℃の範囲に維持した。添加後、この溶液を30分間にわたって0℃に維持した後、1時間かけて室温まで温めた。次に反応物を還流温度に加熱し、塩化メチレン溶媒を蒸溜によって除去した。キシレン(合計70ml)を添加することによって塩化メチレン溶媒を徐々に置換した。反応物の内部温度が80℃に達したとき、キシレン(10ml)に溶かしたコリジン(2.40g、19.82ミリモル)を10分間かけて一滴ずつ添加した。次に温度を110℃まで上げ、この温度を4時間にわたって維持した。この期間が過ぎた後、反応物を冷却し、減圧下で濃縮した。油性残留物をメタノール(70ml)とともに撹拌すると、粗生成物が得られた。この材料を濾過して取り出し、メタノールと石油エーテルで洗浄すると、化合物Cpd-2が明るい赤色の固形物として得られた。収量は1.5gであり、Cpd-2の融点は300〜305℃であった。N2キャリア・ガスを用いた昇華(250℃、200ミリトル)によってこの生成物をさらに精製した。
【0225】
実施例1b:MC-1の合成
【0226】
【化54】

【0227】
8-ヒドロキシキノリン(4.64g、31.96ミリモル)をアセトニトリル(50ml)に溶かした。この溶液に2.5Mのn-BuLi(15.5ml、36.36ミリモル)を窒素雰囲気下で室温にて一滴ずつ添加した。n-BuLiの添加後、この混合物を1時間にわたって撹拌した。黄色の固形物を濾過して取り出し、少量の冷たい水とアセトニトリルで洗浄し、最終的に空気中で乾燥させた。リチウム8-キノレート(Liq)の収量は4.8gであった。
【0228】
実施例2:デバイス1-1〜1-6の製造
【0229】
一連のELデバイス(1-1〜1-6)を以下のようにして構成した。
【0230】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0231】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0232】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0233】
4.次に、ホスト材料であるルブレンと0.5体積%のL46に対応する厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0234】
5.MC-3、またはCpd-1(ルブレン)、またはこの2つの混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)(表1参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0235】
6.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0236】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0237】
【化55】

【0238】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表1に示してある。これらのデバイスから出る光の色はほぼ同じであり、平均として1931 CIE(国際照明委員会)CIEx、CIEy座標が0.65、0.35に対応していた。
【0239】
【表1】

【0240】
表1から、MC-3と10%を超えるCpd-1の混合物を電子輸送層で用いることにより、電圧が非常に低くて輝度が優れたデバイスが得られることがわかる。MC-3だけ、またはCpd-1だけ、または10%のCpd-1と90%のMC-3の混合物からなるETLでは、電圧がより高く、輝度が劣るデバイスになる。
【0241】
実施例3:デバイス2-1〜2-6の製造
【0242】
一連のELデバイス(2-1〜2-6)を実施例2とまったく同じ方法で構成したが、電子輸送層がAlq、MC-3、Cpd-1のいずれか、またはMC-3とCpd-1の混合物からなる点が異なっている。表2参照。
【0243】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表2に示してある。これらのデバイスから出る光の色はほぼ同じであり、平均としてCIEx、CIEy座標が0.65、0.35に対応していた。
【0244】
【表2】

【0245】
表2に示してあるように、MC-3とCpd-1の混合物を電子輸送層で用いることにより、この産業で最も一般的な電子輸送材料であるMC-3だけ、またはCpd-1だけ、またはAlqだけを用いた場合よりも非常に低い電圧と優れた輝度が得られる。
【0246】
実施例4:デバイス3-1〜3-6の製造
【0247】
一連のELデバイス(3-1〜3-6)を実施例2とまったく同じ方法で構成したが、電子輸送層がAlq、MC-3、Cpd-3のいずれか、またはMC-3とCpd-3の混合物からなる点が異なっている。表3参照。
【0248】
【化56】

【0249】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表3に示してある。これらのデバイスから出る光の色はほぼ同じであり、平均とCIEx、CIEy座標が0.65、0.35に対応していた。
【0250】
【表3】

【0251】
表3からわかるように、MC-3とCpd-3の混合物をETLで用いると、電子輸送材料としてMC-3だけを用いたデバイス(3-2)、またはCpd-3だけを用いたデバイス(3-6)、またはAlq(3-1)だけを用いたデバイスと比べて非常に低い電圧と優れた輝度のデバイス(3-3、3-4、3-5)が得られる。
【0252】
実施例5:デバイス4-1〜4-12の製造
【0253】
一連のELデバイス(4-1〜4-12)を以下のようにして構成した。
【0254】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0255】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0256】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0257】
4.次に、9-(4-ビフェニル)-10-(2-ナフチル)アントラセンと、6%のNPBと、2%の2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンに対応する厚さ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0258】
5.MC-3からなるか、Cpd-3とMC-3の混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)(表4参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0259】
6.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0260】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0261】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表4に示してある。これらのデバイスから出る光の色のCIEx、CIEy座標も表4に示してある。
【0262】
【表4】

【0263】
表4に示してあるように、デバイスの電子輸送層が5%または10%のCpd-3と混合したMC-3からなる場合には、MC-3だけを用いた場合と比較し、デバイスの電圧がいくらか低下するが、輝度が非常に悪く、色が顕著にシフトする。MC-3と10%を超えるCpd-3を用いると、非常に低い電圧と、優れた輝度および色が得られる。
【0264】
実施例6:比較用デバイス5-1〜5-12の製造
【0265】
一連のELデバイス(5-1〜5-12)を実施例5とまったく同じ方法で構成したが、電子輸送層が、MC-3、またはMC-3とCpd-1の混合物からなる点が異なっている。表5参照。
【0266】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表5に示してある。これらのデバイスから出る光の色のCIEx、CIEy座標も表5に示してある。
【0267】
【表5】

【0268】
表5からわかるように、電子輸送層が5%のCpd-1と混合したMC-3に対応する場合には、電圧のわずかな上昇が見られる。MC-3と10%Cpd-1の混合物を用いる場合にはデバイスの電圧がいくらか低下する。どちらの場合にも、対応するデバイスはETLにMC-3だけが含まれたデバイスと比べて輝度が低く、色が顕著にシフトする。ETLが10%を超えるCpd-1と混合したMC-3からなるデバイスは、電圧が非常に低いだけでなく、色と輝度も優れている。
【0269】
実施例7:比較用デバイス6-1〜6-6の製造
【0270】
比較を目的として、ELデバイス6-1〜6-6を以下のようにして構成した。アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0271】
1.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0272】
2.次に、N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さ75nmの正孔輸送層(HTL)をa)の上に蒸着した。
【0273】
3.次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を正孔輸送層の上に堆積させた。
【0274】
4.次に、表6に示してあるようにAlq、またはMC-3、または両者の混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上に堆積させた。
【0275】
5.ETLの上に厚さ0.5nmのLiF層を堆積させた。
【0276】
6.LiF層の上に厚さ100nmのAl層を堆積させてカソードを形成した。
【0277】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0278】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を効率(W/A)と電圧(V)の形態で表6に示してある。
【0279】
【表6】

【0280】
表6から、電子輸送材料としてAlqとMC-3の混合物を用いたデバイスでは、Alqだけを用いたデバイスと比べて電圧は低下せず、上昇したことがわかる。
【0281】
実施例8:デバイス7-1〜7-9の製造
【0282】
一連のELデバイス(7-1〜7-9)を以下のようにして構成した。
【0283】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0284】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
【0285】
3.ジピラジノ[2,3-f:2',3'-h]キノキサリンヘキサカルボニトリルからなる正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
【0286】
4.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を65nmの厚さに堆積させた。
【0287】
5.次に、Alq3からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0288】
6.Alq3からなるか、Cpd-1(ルブレン)とフッ化リチウム(LiF)の混合物からなる厚さ40nmの電子輸送層(ETL)(表7参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0289】
7.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ100nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0290】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0291】
このようにして形成したデバイスの輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表7に示してある。これらのデバイスから出る光の色のCIEx、CIEy座標も表7に示してある。
【0292】
【表7】

【0293】
表7に示してあるように、デバイスの電子輸送層が5%〜75%のフッ化リチウム(LiF)と混合したCpd-1からなる場合には、比較例であるデバイス7-1(Alq3(100%))またはデバイス7-2(Cpd-1(100%))と比べてデバイスの電圧を低下させることと、より優れた輝度効率を得ることができる。
【0294】
実施例9:デバイス8-1〜8-6の製造
【0295】
一連のELデバイス(8-1〜8-6)を以下のようにして構成した。
【0296】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0297】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0298】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0299】
4.次に、Alq3からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0300】
5.Alq3からなるか、Cpd-1(ルブレン)とMC-20の混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)(表8参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0301】
6.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0302】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0303】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表8に示してある。
【0304】
【表8】

【0305】
表8の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-20からなるか、炭素環Cpd-1と混合したMC-20からなる場合には、実施例8-1(Alq3(100%))の比較用デバイスと比べてデバイスの電圧が低下するのに優れた輝度効率を維持できる。
【0306】
実施例10:デバイス9-1〜9-6の製造
【0307】
一連のELデバイス(9-1〜9-6)を以下のようにして構成した。
【0308】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0309】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
【0310】
3.ジピラジノ[2,3-f:2',3'-h]キノキサリンヘキサカルボニトリルからなる正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
【0311】
4.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を134nmの厚さに堆積させた。
【0312】
5.次に、赤色ドーパントL46(0.5体積%)を含むCpd-1からなる厚さ40nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0313】
【化57】

【0314】
6.Alq3からなるか、Cpd-1(ルブレン)と金属錯体MC-16の混合物からなる厚さ40nmの電子輸送層(ETL)(表9参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0315】
7.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ100nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0316】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0317】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表9に示してある。
【0318】
【表9】

【0319】
表9の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-1と混合した金属錯体MC-16からなる場合には、実施例9-1(Alq3(100%))、実施例9-2(MC-16(100%))、実施例9-3(本発明の範囲外であるMC-16(25%)とAlq3(75%)の混合物)の比較用デバイスと比べてデバイスの電圧が低下し、輝度効率が向上し、赤色が改善する。
【0320】
実施例11:デバイス10-1〜10-6の製造
【0321】
一連のELデバイス(10-1〜10-6)を以下のようにして構成した。
【0322】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0323】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0324】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0325】
4.次に、1.5体積%の青色ドーパントL55を含むCpd-12からなる厚さ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0326】
【化58】

【0327】
5.Alq3からなるか、MC-16とCpd-12の混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)(表10参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0328】
6.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0329】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0330】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表10に示してある。
【0331】
【表10】

【0332】
表10の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-12と混合した金属錯体MC-16からなる場合には、実施例10-1(Alq3(100%))または実施例10-2(MC-16(100%))の比較用デバイスと比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。
【0333】
実施例12:デバイス11-1〜11-6の製造
【0334】
一連のELデバイス(11-1〜11-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、金属錯体MC-16をMC-3で置き換えた点が異なっている。
【0335】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表11に示してある。
【0336】
【表11】

【0337】
表11の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-12と混合した金属錯体MC-3からなる場合には、実施例10-1(Alq3(100%))の比較用デバイスと比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。
【0338】
実施例13:デバイス12-1〜12-6の製造
【0339】
一連のELデバイス(12-1〜12-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、LELとETL両方の炭素環Cpd-12をCpd-10で置き換えた点が異なっている。
【0340】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表12に示してある。
【0341】
【表12】

【0342】
表12の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-10と混合した金属錯体MC-16からなる場合には、実施例12-1(Alq3(100%))と実施例12-2(Cpd-10(100%))の比較用デバイスと比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。比較例12-1は優れた電圧を示すが、輝度効率は本発明の実施例よりも劣る。
【0343】
実施例14:デバイス13-1〜13-6の製造
【0344】
一連のELデバイス(13-1〜13-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、LELとETL両方の炭素環Cpd-12をCpd-10で置き換え、金属錯体MC-16をMC-3で置き換えた点が異なっている。
【0345】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表13に示してある。
【0346】
【表13】

【0347】
表13の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-10と混合した金属錯体MC-3からなる場合には、比較例13-1と同程度で、比較例13-2よりは優れたデバイスの電圧を得ることができる。しかし本発明の実施例の輝度効率とCIE色座標は、これら比較例のデバイスよりも優れている。
【0348】
実施例15:デバイス14-1〜14-6の製造
【0349】
一連のELデバイス(14-1〜14-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、炭素環Cpd-12をCpd-9で置き換え、金属錯体MC-16をMC-3で置き換えた点が異なっている。
【0350】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表14に示してある。
【0351】
【表14】

【0352】
表14の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、炭素環Cpd-9と混合した金属錯体MC-3からなる場合には、比較例14-1と同程度で、比較例14-2よりは優れたデバイスの電圧を得ることができる。しかし本発明の実施例の輝度効率とCIE色座標は、これら比較例のデバイスよりも優れている。
【0353】
実施例16:デバイス15-1〜15-6の製造
【0354】
一連のELデバイス(15-1〜15-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、金属錯体MC-16をMC-20で置き換えた点が異なっている。
【0355】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表15に示してある。
【0356】
【表15】

【0357】
表15の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-20からなるか、炭素環Cpd-12と混合したMC-20からなる場合には、デバイスの電圧を比較例15-1と同程度かそれ以下にすることができる。しかし本発明の実施例の輝度効率とCIE色座標は、比較例のデバイスよりも優れている。
【0358】
実施例17:デバイス16-1〜16-6の製造
【0359】
一連のELデバイス(16-1〜16-6)を実施例9と同じ方法で構成したが、炭素環Cpd-1をCpd-12で置き換えた点が異なっている。
【0360】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表16に示してある。
【0361】
【表16】

【0362】
表16の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-20からなるか、炭素環Cpd-12と混合したMC-20からなる場合には、平均として、デバイスの電圧を比較例16-1以下にし、輝度効率とCIE色座標を本発明の実施例と同程度にすることができる。
【0363】
実施例18:デバイス17-1〜17-6の製造
【0364】
一連のELデバイス(17-1〜17-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、L55を3.0体積%のL48で置き換えた点が異なっている。
【0365】
【化59】

【0366】
さらに金属錯体MC-16をMC-3で置き換えた。
【0367】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表17に示してある。
【0368】
【表17】

【0369】
表17の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-12と混合した金属錯体MC-3からなる場合には、比較用のデバイスである実施例17-1(Alq3(100%))または実施例17-2(MC-3(100%))と比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。
【0370】
実施例19:デバイス18-1〜18-6の製造
【0371】
一連のELデバイス(18-1〜18-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、L55を3.0体積%のL48で置き換えた点が異なっている。
【0372】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表18に示してある。
【0373】
【表18】

【0374】
表18の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-12と混合した金属錯体MC-16からなる場合には、比較用のデバイスである実施例18-1(Alq3(100%))または実施例18-2(MC-16(100%))と比べてデバイスの電圧を顕著に低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。実施例18-2では、駆動電圧が高すぎて意味のあるデータがまったく得られなかった。さらに、アミン含有スチリル化合物を発光体として使用すると、この実施例と実施例11の比較からわかるように輝度効率を向上させることができる。
【0375】
実施例20:デバイス19-1〜19-6の製造
【0376】
一連のELデバイス(19-1〜19-6)を実施例11と同じ方法で構成したが、LELのL55を3.0体積%のL48で置き換え、LELのCpd-12を炭素環Cpd-9で置き換え、ETLのMC-16をMC-3で置き換え、ETLのCpd-12をCpd-3で置き換えた点が異なっている。
【0377】
【化60】

【0378】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表19に示してある。
【0379】
【表19】

【0380】
表19の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-3と混合した金属錯体MC-3からなる場合には、比較用のデバイスである実施例19-1(Alq3(100%))または実施例19-2(MC-3(100%))と比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。
【0381】
実施例21:デバイス20-1〜20-5の製造
【0382】
一連のELデバイス(20-1〜20-5)を実施例9と同じ方法で構成したが、ETLのMC-20をMC-28で置き換えた点が異なっている。
【0383】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表20に示してある。
【0384】
【表20】

【0385】
表20の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-28からなるか、炭素環Cpd-1と混合したMC-28からなる場合には、本発明の実施例において優れたデバイスの電圧と、優れた輝度効率と、優れたCIE色座標を得ることができる。
【0386】
実施例22:デバイス21-1〜21-5の製造
【0387】
一連のELデバイス(21-1〜21-5)を実施例9と同じ方法で構成したが、ETLのMC-20をMC-30で置き換えた点が異なっている。
【0388】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表21に示してある。
【0389】
【表21】

【0390】
表21の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-30からなるか、炭素環Cpd-1と混合したMC-30からなる場合には、平均として、本発明の実施例において優れたデバイスの電圧と、優れた輝度効率と、優れたCIE色座標を得ることができる。
【0391】
実施例23:デバイス22-1〜22-4の製造
【0392】
一連のELデバイス(22-1〜22-4)を以下のようにして構成した。
【0393】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0394】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0395】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0396】
4.次に、0.5体積%の赤色ドーパントL46を含むCpd-1からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0397】
5.MC-29とCpd-1の混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)(表22参照)をLELの上に真空蒸着した。
【0398】
6.厚さ0.5nmのフッ化リチウム層をETLの上に真空蒸着した。その後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させてカソード層を形成した。
【0399】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0400】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表22に示してある。
【0401】
【表22】

【0402】
表22の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、炭素環Cpd-1と混合した金属錯体MC-29からなる場合には、比較用デバイスである実施例22-1(Cpd-1(100%))と比べてデバイスの電圧を低下させることと、優れた輝度効率と優れたCIE色座標を得ることができる。
【0403】
実施例24:デバイス23-1〜23-6の製造
【0404】
一連のELデバイス(23-1〜23-6)を実施例23と同じ方法で構成したが、ETLの金属錯体MC-29をMC-28で置き換えた点が異なっている。
【0405】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表23に示してある。
【0406】
【表23】

【0407】
表23の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-28からなるか、炭素環Cpd-1と混合したMC-28からなる場合には、平均として、本発明の実施例において優れたデバイスの電圧と、優れた輝度効率と、優れたCIE色座標を得ることができる。
【0408】
実施例25:デバイス24-1〜24-6の製造
【0409】
一連のELデバイス(24-1〜24-6)を実施例23と同じ方法で構成したが、ETLの金属錯体MC-29をMC-30で置き換えた点が異なっている。
【0410】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表24に示してある。
【0411】
【表24】

【0412】
表24の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が、金属錯体MC-30からなるか、炭素環Cpd-1と混合したMC-30からなる場合には、平均として、本発明の実施例において優れたデバイスの電圧と、優れた輝度効率と、優れたCIE色座標を得ることができる。
【0413】
実施例26:デバイス25-1〜25-6の製造
【0414】
一連のELデバイス(25-1〜25-6)を実施例10と同じ方法で構成したが、ETLのCpd-1をCpd-12で置き換えた点が異なっている。
【0415】
このようにして形成したデバイスの駆動電圧と輝度効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を表25に示してある。
【0416】
【表25】

【0417】
表25の本発明の実施例に示してあるように、デバイスの電子輸送層が炭素環Cpd-12と混合した金属錯体MC-16からなる場合には、実施例25-1(Alq3(100%))、実施例25-2(MC-16(100%))、実施例25-3(本発明の範囲外であるAlq3(25%)とCpd-12(75%)の混合物)の比較用デバイスと比べて駆動電圧が同程度で、輝度効率が向上し、赤色が改善される。
【0418】
この明細書で言及した特許文献と刊行物の全内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。本発明をいくつかの好ましい実施態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神と範囲を外れることなく、さまざまな変更や修正を施しうることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0419】
【図1】本発明によるデバイスの一実施態様の概略断面図である。
【符号の説明】
【0420】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
111 電子輸送層(ETL)
112 電子注入層(EIL)
113 カソード
150 電圧/電流源
160 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えるとともに、
(i)上記カソードと上記発光層の間に位置していて、(a)10体積%以上の縮合炭素環芳香族化合物と、(b)周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IIB族いずれかの元素の少なくとも1種類の塩または錯体を含む別の層と;
(ii)上記アノードと上記発光層の間に位置していて、一般式(8)の化合物:
【化1】

(ただし、それぞれのRは、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、少なくとも1つのRは、ハメットσパラ値が少なくとも0.3である電子求引置換基を表わす)を含む追加の層とを備えるOLEDデバイス。
【請求項2】
上記塩または錯体がアルカリ金属またはアルカリ土類金属で構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
上記別の層が光を出す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
上記別の層が光を出さない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
上記別の層が上記発光層の隣にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
上記縮合炭素環芳香族化合物がテトラセンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
上記縮合炭素環芳香族化合物が一般式(1):
【化2】

で表わされる(ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、水素と置換基からなるグループの中から独立に選択され;表示されたどの置換基も、合わさって別の縮合環を形成することができる)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
上記縮合炭素環芳香族化合物が一般式(2):
【化3】

で表わされる(ただし、
Ar1〜Ar4は、独立に選択された芳香族基を表わし;
R1〜R4は、水素または独立に選択された置換基を表わす)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
R1がR4と同じであり、どちらも水素ではなく、Ar1がAr4と同じであり、Ar2がAr2と同じである、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
上記縮合炭素環芳香族化合物が
【化4】

である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
上記縮合炭素環芳香族化合物が一般式(3):
【化5】

で表わされる(ただし、
W1〜W10は、独立に、水素または独立に選択された置換基を表わし、隣り合った2つの置換基が合わさって環を形成することができる)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
W9とW10の少なくとも一方が芳香族基である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
W2、W3、W6、W7のうちの少なくとも1つが置換基である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
W2、W3、W6、W7のうちの少なくとも1つが芳香族基である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
上記縮合炭素環芳香族化合物が、上記別の層の10体積%を超える割合を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
上記縮合炭素環芳香族化合物が、上記別の層の15〜95体積%を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
上記縮合炭素環芳香族化合物が、上記別の層の50〜80体積%を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
(b)が有機塩である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
(b)が無機塩である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
上記金属錯体がリチウム錯体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
(b)が、一般式(4)で表わされる金属錯体:
(M)m(Q)n (4)
である(ただし、
Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、
それぞれのQは独立に選択されたリガンドを表わし、
mとnは、錯体(4)上の電荷が中性になるように選択された整数である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
少なくとも1つのQが二座リガンドを表わす、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
Qが8-キノラト基を表わす、請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
(b)が一般式(4')で表わされる有機金属錯体:
【化6】

である(ただし、
Zと点線の弧は、Mと合わさって5又は6員の環を完成させるのに必要な2個または3個の原子と結合を表わし;
それぞれのAは、Hまたは置換基を表わし、それぞれのBは、Z原子上の独立に選択された置換基を表わし、2つ以上の置換基が合わさって縮合環または縮合環系を形成することができ;
jは0〜3であり、kは1または2であり;
Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし;
mとnは、上記錯体上の電荷が中性となるように独立に選択された整数である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
上記金属錯体が、一般式(5):
【化7】

で表わされる(ただし、
それぞれのraとrbは独立に選択された置換基を表わし、2つの置換基が合わさって環を形成することができ;
sは0〜3であり;
tは0〜3であり;
nは整数である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
(b)が一般式(6)で表わされる有機金属錯体:
【化8】

である(ただし、
Y1、Y2、Y3は、独立に置換基を表わし、Y1、Y2、Y3のうちの任意のものが合わさって環系または縮合環系を形成することができ;
Mは1価または2価の金属であり;
mとnは、上記錯体上の電荷が中性となるように選択された整数である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
上記有機金属錯体が、一般式(7):
【化9】

で表わされる(ただし、
Y1、Y2、Y3は、独立に置換基を表わし、Y1、Y2、Y3のうちの任意のものが合わさって環系または縮合環系を形成することができ;
nは整数である)、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
上記有機金属錯体がLiqであり、上記縮合炭素環芳香族化合物が、アントラセン核またはテトラセン核を含む縮合炭素環芳香族化合物の中から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
上記金属錯体が、上記別の層の20〜60体積%を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
(a)と(b)を含む上記別の層が、(c)仕事関数が4.2eV未満の金属元素も含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
上記金属元素が、上記別の層に含まれる全材料の0.1〜15体積%の量存在している、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
カソードと、発光層と、アノードをこの順番で備えるとともに、そのカソードと発光層の間に一般式(4')で表わされるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくとも1種類の塩または錯体:
【化10】

(ただし、
Zと点線の弧は、Mと合わさって5又は6員の環を完成させるのに必要な2個または3個の原子と結合を表わし;
それぞれのAは、Hまたは置換基を表わし、それぞれのBは、Z原子上の独立に選択された置換基を表わし、2つ以上の置換基が合わさって縮合環または縮合環系を形成することができ;
jは0〜3であり、kは1または2であり;
Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし;
mとnは、上記錯体上の電荷が中性となるように独立に選択された整数である
を含む層を備えるOLEDデバイス。
【請求項33】
一般式(8)のそれぞれのRの選択が、独立に、水素、C1〜C12炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、アリールアミン基、エステル基、アミド基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、スルホキシド基、スルホンアミド基、スルホネート基、トリフルオロメチル基からなるグループの中からなされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
それぞれのR基の選択が、独立に、ニトリル基、ニトロ基、エステル基、アミド基からなるグループの中からなされる、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
上記追加の層が正孔輸送層の隣にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項36】
一般式(8)の化合物の選択が、
【化11】

【化12】

の中からなされる、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514217(P2009−514217A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537747(P2008−537747)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/039854
【国際公開番号】WO2007/050303
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】