説明

低NoXCO酸化促進剤

FCCプロセスにおいてCOの酸化を促進する微粒子組成物であって、該組成物は少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅または銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土担体上に沈着し、該組成物が実質的にプラチナを含まない、微粒子組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主要な工業的問題は、硫黄、炭素および窒素含有燃料の加工および燃焼から生じる、排ガス流中の一酸化炭素、硫黄酸化物、および窒素酸化物のような、空気汚染物質の濃度を低下させる有効な方法の開発に関連する。これらの排ガス流の大気への放出は、従来の稼働でしばしば見られる、硫黄酸化物、一酸化炭素および窒素酸化物の濃度では環境的に望ましくない。硫黄および窒素含有炭化水素原料の接触分解においてコークス沈着物により不活性化されている、クラッキング触媒の再生は、加工の典型例であり、これは比較的高濃度の一酸化炭素、硫黄および窒素酸化物を含有する排ガス流を生じさせる場合がある。
【0002】
重油留分の接触分解は、原油の内燃機関により利用される燃料のような有用な製品への変換で使用される主な精製操作の1つである。流動接触分解(FCC)プロセスでは、高分子量の炭化水素の液体および蒸気を、熱い、微粉化固体触媒粒子と、流動床反応器または細長いトランスファーライン反応器のいずれかの中で接触させ、所望の程度のクラッキングが典型的には自動車用ガソリンおよび留出燃料中に存在する種の低分子量炭化水素に作用するのに十分な期間、流動化または分散した状態で高温にて維持する。
【0003】
炭化水素の接触分解では、いくつかの非揮発性炭質材料またはコークスが触媒粒子上に沈着する。コークスは、高度に凝縮された芳香族炭化水素を含み、一般に約4〜約10重量パーセントの水素を含有する。炭化水素原料が有機硫黄および窒素化合物を含有するとき、コークスもまた硫黄および窒素を含有する。コークスがクラッキング触媒上に蓄積するにつれて、触媒のクラッキング活性およびガソリン調合剤の製造に対する触媒の選択性が低下する。コークスの沈着を通して実質的に不活性化された触媒は、反応領域から継続的に取り除かれる。この不活性化した触媒は、揮発性沈着物を高温にて不活性ガスにより除去するストリッピング領域に運ばれる。触媒粒子は、次いで、好適な再生プロセスでコークス沈着物を実質的に除去することにより、本質的に元の能力に再活性化される。再生された触媒は、次いで、連続的に反応領域に戻され、この周期が繰り返される。
【0004】
触媒の再生は、空気のような酸素を含有するガスで、触媒表面からコークス沈着物を燃やすことにより実現される。これらのコークス沈着物の燃焼は、分かりやすく言えば、炭素の酸化であると見なすことができ、生成物は一酸化炭素および二酸化炭素である。
【0005】
再生器からの燃焼排ガス中の一酸化炭素の残留濃度が高いことが、接触分解プロセスの開始以来、問題になっている。FCCの進化により、再生された触媒中で、必要とされる低い炭素濃度を実現するために、FCC再生器中で次第に高い温度を用いるようになっている。典型的には、今日、再生器は、促進剤を用いず、全燃焼のユニットにおいて0.5まで、36以上の範囲のCO/CO比を有する燃焼排ガスが生じるとき、約1100°F〜約1400°Fの範囲の温度で現在稼働している。一酸化炭素の酸化は、非常に発熱性であり、サイクロンまたは燃焼排ガス管内では、希薄触媒相で起こる場合がある、いわゆる「一酸化炭素の後燃え」が生じる場合がある。後燃えは、工場設備に著しい損傷を与えている。他方、大気−ベント型燃焼ガス中における未燃一酸化炭素は、燃料価の損失を意味し、生態学的に望ましくない。
【0006】
大気中に排出することができる、一酸化炭素の量を制限すること、および一酸化炭素をより完全に酸化することにより得られるプロセスの利点は、再生器における一酸化炭素の完全燃焼を実現する手段を提供するためのいくつかの取り組みを促してきた。
【背景技術】
【0007】
FCC再生において一酸化炭素を完全に燃焼させるために提案されている手段には、(1)標準的な再生に比べて、再生器に導入する酸素の量を増加させる、および(2)再生器の平均稼働温度を上昇させる、または(3)クラッキング触媒に種々の一酸化炭素の酸化促進剤を含めて、一酸化炭素の燃焼を促進する、のいずれかが含まれる。外来可燃物の添加または一酸化炭素の燃焼熱を吸収するための水もしくは熱受容性固体の使用のような、一酸化炭素の後燃えの問題に対する種々の解決法が提案されている。
【0008】
完全燃焼モードで稼働している再生に適用される処理の具体例としては、触媒または再生器に、CO燃焼促進剤である金属を添加することが挙げられる。例えば、米国特許第2,647,860号では、クラッキング触媒に0.1〜1重量パーセントの酸化クロムを添加して、COの燃焼を促進することが提案されている。米国特許第3,808,121号には、再生器にCO燃焼促進剤である金属を含有する比較的大きな粒子を用いることが教示されている。小さな大きさの触媒は、クラッキング反応器および触媒再生器の間を循環し、一方燃焼促進粒子は再生器に残る。また、米国特許第4,072,600号および同第4,093,535号では、触媒インベントリ全体に基づいて、0.01〜50ppmの濃度でクラッキング触媒中にPt、Pd、Ir、Rh、Os、RuおよびReを使用して、完全燃焼ユニットにおけるCO燃焼を促進することが教示されている。
【0009】
FCCユニットの再生器中で一酸化炭素の酸化を触媒するための貴金属の使用は、広く商業的に許容されている。この開発の歴史の一部は、米国特許第4,171,286号および同第4,222,856号に記載されている。開発の初期段階では、貴金属はクラッキング触媒の粒子上に沈着していた。現行の実務では、一般に、貴金属を含有する固体の流動化可能な粒子の形態の促進剤が供給されており、このような粒子はクラッキング触媒の粒子から物理的に分離している。貴金属またはその化合物は、好適なキャリア材料の粒子上に担持されており、促進剤粒子は通常クラッキング触媒の粒子とは別に再生器に導入される。促進剤の粒子は、微粒子としてシステムから除去されず、クラッキング/ストリッピング/再生周期中クラッキング触媒粒子とともに循環する。促進剤のCO燃焼効率の判断は、(より熱い)希薄相、サイクロン、または燃焼排ガス管と、濃密相との間の温度の差、ΔT、を制御する能力により行われる。大部分のFCCユニットは、現在、PtCO燃焼促進剤を使用している。プラチナのような燃焼促進剤の使用はCO排出量を低下させるが、このようなCO排出量の低下は、通常、再生器の燃焼排ガス中の窒素酸化物(NO)の増加により実現されるものである。
【0010】
FCCユニットにおいて、商業ベースで用いられている促進剤製品としては、少量のプラチナ(例えば、100〜1500ppm)を含浸させた、か焼し、噴霧乾燥した、カオリン粘土の多孔質微小球が挙げられる。米国特許第4,171,286号(上記)を参照のこと。大部分の商業的に用いられている促進剤は、高純度多孔質アルミナ、典型的にはガンマアルミナの微小球にプラチナ源を含浸させることにより得られる。種々の商品において貴金属としてプラチナが選択されていることは、プラチナがFCC再生器中で一酸化炭素の酸化を促進するために、最も有効なVIII族金属であるという、先行技術の開示に一致する、この金属の優位性を反映しているようである。例えば、米国特許第4,107,032号の図3および米国特許第4,350,614号の同図を参照のこと。その図は、CO/CO比において、0.5〜10ppmで、種々の貴金属促進剤の濃度を増加させることの効果を示す。
【0011】
米国特許第4,608,357号には、パラジウムがシリカ−アルミナの特定の形の粒子上に担持されているとき、つまり溶脱ムライトでは、FCCユニットの再生器中に広がるような条件下で、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化の促進においてパラジウムが非常に有効であることが教示されている。パラジウムは、促進剤のうち唯一の触媒活性金属成分であってよく、またはプラチナのような他の金属と混合してもよい。
【0012】
米国特許第5,164,072号および同第5,110,780号は、La−安定化アルミナ、好ましくは約4〜8重量パーセントのLa上にPtを有するFCC用CO促進剤に関する。セリアは「必ず除かなくてはならない」ことが開示されている。3段には、「適切な量、約6〜8パーセントのLa存在下で、2パーセントのCeは役に立たない。Laが少ない場合、実際は有害である。」ことが開示されている。具体例では、‘072号および’780号は、ガンマアルミナ上に担持されているプラチナのCO促進に対する8%のCeの負の効果、およびLaの正の効果を示す。
【0013】
硫黄および窒素を含有する原料を接触分解プロセスで利用するとき、触媒上に沈着したコークスは硫黄および窒素を含有する。コークスで不活性化された触媒の再生中、コークスは、後に硫黄および窒素の一部を、それぞれ硫黄酸化物および窒素酸化物に変化させる、触媒表面で燃焼する。
【0014】
残念ながら、プラチナおよびパラジウムのようなより活性の強い燃焼促進剤はまた、再生領域での窒素酸化物の形成を促進する働きも有する。先行技術のCO促進剤の使用は、NOの劇的な増加(例えば、>300%)を引き起こす場合があると報告されている。触媒再生器で、再生器の燃焼排ガスのNO含量を増加させることなく、コークスおよびCOを完全に燃焼させることは困難である。窒素酸化物の大気への放出は環境的に望ましくないため、これらの促進剤の使用は、ある望ましくない排出物を別のものに置換する効果を有する。多くの司法権は、大気に放出される燃焼排ガス流に存在する場合がある、NOの量を制限している。環境問題に応えて、NOの排出を低減する方法を見つけることに多くの努力が費やされている。
【0015】
種々の取り組みが、NOの形成の低減または形成後のそれらの処理のいずれかのために用いられている。最も典型的には、FCC触媒粒子の一体部分として、またはFCC触媒との混合物中の別の粒子として、添加剤が用いられている。
【0016】
NOの排出を制御しながら、CO促進を実行する種々の添加剤が開発されている。
【0017】
米国特許第4,350,614号、同第4,072,600号および同第4,088,568号は、Ptに基づくCO促進剤に希土類を添加することに言及している。例は、若干利点を示す4%のREOである。FCCUからのNO排出を減少させることにおける、REOのいかなる効果も全く教示されていない。
【0018】
米国特許第4,199,435号では、無機担体上のPt、Pd、Ir、Os、Ru、Rh、Reおよび銅から選択される燃焼促進剤が教示されている。
【0019】
米国特許第4,290,878号では、従来のPt促進剤に比べて、NOを低減するPt――IrおよびPt――Rh二金属促進剤が教示されている。
【0020】
米国特許第4,300,997号では、過剰にNOを形成させない、COの酸化に対するPd――Ru促進剤の使用が教示されている。
【0021】
米国特許第4,544,645号では、Ruを除く他の全てのVIII族金属とPtの二金属から成るものが記載されている。
【0022】
米国特許第6,165,933号および同第6,358,881号(W.R.グレース(Grace)には、NOの形成を最小限に抑えながら、FCCプロセスにおけるCO燃焼を促進するための、(i)酸性酸化物担体、(ii)アルカリ金属および/もしくは
アルカリ土類金属またはこれらの混合物、(iii)酸素貯蔵能を有する遷移金属酸化物、ならびに(iv)パラジウムを含有する成分を含む組成物が記載されている。
【0023】
米国特許第6,117,813号では、VIII族の遷移金属酸化物、IIIB族の遷移金属酸化物およびIIA族の金属酸化物から成るCO促進剤が教示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、FCCプロセスにおけるNO排出制御を有する、改良されたCO酸化促進剤に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、NO排出制御とともに、改良されたCO酸化促進活性を提供することができる、FCCプロセスで使用するのに好適な新規組成物を提供する。
【0026】
1つの態様では、本発明は、FCCプロセスでのCO酸化を促進するための微粒子組成物であって、該組成物が、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土担体上に沈着し、該組成物が実質的にプラチナを含まない組成物を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明はFCC触媒粒子の一体部分として、またはFCC触媒と混合された別の粒子として、本発明のCO酸化促進微粒子組成物を用いるFCCプロセスを包含する。組成物は、先行技術のCO酸化促進剤より低いNO排出を提供する。
【0028】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下で更に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は下記実施例における各種サンプルについてのCO燃焼およびNO水準を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1つの態様では、本発明は、あるクラスの組成物が、FCCプロセスにおけるCOの酸化およびNOガス排出の低減の両方に対して非常に効果的であるという発見を包含する。本発明のCO酸化組成物は、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀を含む少なくとも1種の化合物が、アニオン性粘土担体上に沈着し、該組成物が実質的にプラチナを含まないことを特徴とする。
【0031】
本発明による微粒子組成物では、インジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土上に沈着する。この微粒子組成物を調製する好適な方法は、インジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀を含む少なくとも1種の化合物の塩を含有する溶液を、既存のアニオン性粘土に含浸させることである。この溶液は、好ましくは水性であるが、本来有機物であってもよい。
【0032】
好適な塩としては、塩化物、硝酸塩、および含浸溶液の製造に用いられる液体に可溶性
である他の錯体が挙げられる。
【0033】
含浸には任意の従来の技術を用いることができる。例は、湿式含浸または初期湿式含浸である。
【0034】
アニオン性粘土は、その間にアニオンおよび水分子が存在する、二価および三価金属水酸化物の特定の組み合わせの正に帯電した層から成る結晶構造を有する。ハイドロタルサイトは、Mgが二価金属であり、Alが三価金属であり、炭酸塩が存在する主なアニオンである、天然由来のアニオン性粘土の例である。ミックスネライトは、Mgが二価金属であり、Alが三価金属であり、水酸基が存在する主なアニオンである、アニオン性粘土である。
【0035】
アニオン性粘土は、結晶構造を作り上げる原子の同一性により更に細分化される。例えば、パイロオーライト−ショグレナイト−ハイドロタルサイト群のアニオン性粘土は、水分子および/または種々のアニオン(例えば、炭酸イオン)の割り込み層が交互に重なる、ブルーサイト様層(マグネシウムカチオンが、水酸基により8面体状に取り囲まれている)に基づく。ブルーサイト様層のマグネシウムの一部がより高荷電のカチオン、例えば、Al3+に同形置換されたとき、得られるMg2+――Al3+――OH層は正電荷を得る。したがって、化合物全体を電気的に中性にするためには、上述のように、適切な数の割り込みアニオンが必要である。
【0036】
このような結晶構造を示す天然鉱物としては、パイロオーライト、ショグレナイト、ハイドロタルサイト、スティヒタイト、リーブサイト、エアドレイト(eardleyite)、マナセアイト(mannaseite)、バーバートナイトおよびハイドロカルマイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
アニオン性粘土は、「混合金属水酸化物」または「層状複水酸化物」と呼ばれることも多い。この表現は、上述のように、アニオン性粘土の正に帯電した金属水酸化物のシートが、異なる酸化状態の2種の金属カチオン(例えば、Mg2+およびAl3+)を含有してよいという事実に由来する。更に、多くのアニオン性粘土のXRDパターンがハイドロタルサイト、MgAl(OH)16(CO)・4HOのXRDパターンと類似しているため、アニオン性粘土は、一般的に「ハイドロタルサイト様化合物」とも呼ばれる。
【0038】
本明細書の目的のために、(特に明記しない限り)、「ハイドロタルサイト様」化合物および「アニオン性粘土」という用語の使用は、これらの用語がアニオン性粘土、ハイドロタルサイト自体に加えて、「ハイドロタルサイト様化合物」として一般に知られている物質のクラスのあらゆるメンバーを含むと解釈すべきであるいう了解のもとで、互換的であると考えるものとする。
【0039】
アニオン性粘土の調製は、多くの先行技術刊行物に記載されている。アニオン性粘土化学の2つの主な総説が刊行されており、そこにはアニオン性粘土の合成に利用可能な合成方法が要約されている:F.Cavaniら“Hydrotalcite−type anionic clays:Preparation,Properties and Applications,”Catalysis Today”,11(1991)Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam;およびJ P Besseおよびothers“Anionic clays:trends in pillary chemistry,its synthesis and microporous solids”(1992),2,108,editors:M.I.Occelli,H.E.Robson,Van Nostrand R
einhold,N.Y.
【0040】
これらの総説では、著者らは、Mg――Alアニオン性粘土の特徴は、無秩序なMgO様生成物の形成をもたらす、500℃での穏やかなか焼であると述べている。無秩序なMgO様生成物は、スピネル(厳しいか焼時に得られる)およびアニオン性粘土と区別できる。本明細書では、無秩序なMgO様物質をMg――Al固体溶液と呼ぶ。更に、これらのMg――Al固体溶液は、周知の記憶効果を有し、それによりこのようなか焼物質を水へ曝露することによりアニオン性粘土構造が再形成される。
【0041】
2種のアニオン性粘土の調製が、これらの総説に記載されている。大部分の従来の方法は、可溶性二価金属塩と可溶性三価金属塩との共沈(Besseでは、この方法は塩に基づく方法と呼ばれている)であり、所望により続いて結晶サイズを増加させるための熱水処理またはエージングを行う。2番目の方法は、二価金属酸化物を可溶性三価金属塩と大気圧で反応させ、続いて大気圧下でエージングを行う、塩−酸化物法である。この方法は、可溶性三価金属塩と、ZnOおよびCuOとの併用についてのみ記載している。
【0042】
アニオン性粘土に関する著作物としては、更に以下の論文を参照する:Chemistry Letters(Japan),843(1973)、Clays and Clay Minerals,23,369(1975)、Clays and Clay Minerals,28,50(1980)、Clays and Clay Minerals,34,507(1996)、Materials Chemistry and Physics,14,569(1986).
【0043】
本発明の微粒子組成物は、以下のプロセスにより製造される。一般に、プロセスは、a)二価金属化合物と三価金属化合物との物理的混合物を粉砕する工程と、b)該物理的混合物を約200〜約800℃の範囲の温度でか焼する工程と、c)か焼した混合物を水性懸濁液に再水和して、アニオン性粘土を形成する工程とを含み、ここでイリジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀を含む少なくとも1種の化合物が物理的混合物および/または工程c)の水性懸濁液中に存在する。
【0044】
本明細書では、「粉砕」という用語は、粒径を低下させる任意の方法として定義する。このような粒径の低下は、同時に、反応性表面の形成および/または粒子の加熱をもたらす場合がある。粉砕に用いることができる機器としては、ボールミル、高剪断ミキサ、コロイドミキサ、およびスラリーに超音波を導入することができる電気変換器が挙げられる。低剪断ミキサ、すなわち、懸濁液中の成分を本質的に保つために実施される攪拌は、「粉砕」とは見なさない。
【0045】
物理的混合物は、乾燥粉末としてまたは懸濁液中で粉砕することができる。物理的混合物が懸濁液中に存在するとき、混合物中に存在する少なくとも1種の金属化合物(二価金属化合物、三価金属化合物、またはその両方)は水不溶性でなければならないことは、明らかであろう。
【0046】
好適な二価金属としては、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい二価金属としては、マグネシウム、マンガンおよび鉄またはこれらの組み合わせが挙げられる。好適な亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム化合物は、これらのそれぞれの水不溶性酸化物、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、重炭酸塩および粘土であり、一般に酢酸塩、ヒドロキシ酢酸塩、硝酸塩および塩化物のような水溶性塩である。好適な水不溶性マグネシウム化合物としては、MgO、Mg(OH)のような酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム、炭酸
マグネシウム、ヒドロキシ炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、ハイドロマグネサイト、ならびにドロマイト、サポナイトおよびセピオライトのようなマグネシウム含有粘土が挙げられる。好適な水溶性マグネシウム化合物は、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、(ヒドロキシ)酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、および塩化マグネシウムである。
【0047】
好ましい二価金属化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、重炭酸塩、および(ヒドロキシ)酢酸塩であり、それはこれらの物質が比較的安価であるためである。更に、これらの物質は、アニオン性粘土に、加熱時に環境的に有害なガスとして洗い流されなければならないまたは取り除かれるであろう、望ましくないアニオンを残さない。
【0048】
好適な三価金属としては、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム、バナジウム、コバルト、マンガン、ニッケル、インジウム、セリウム、ニオブ、ランタンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい三価金属はアルミニウムである。好適なガリウム、鉄、クロム、バナジウム、コバルト、ニッケルおよびマンガン化合物は、これらのそれぞれの水不溶性酸化物、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、重炭酸塩、アルコキシドおよび粘土であり、一般に酢酸塩、ヒドロキシ酢酸塩、硝酸塩および塩化物のような水溶性塩である。好適な水不溶性アルミニウム化合物としては、遷移アルミナ、三水和アルミニウム(ボーキサイト鉱石濃縮物、ギブサイト、バイヤライト)およびその熱処理された形(フラッシュか焼された三水和アルミニウムを含む)、ゾル、非晶質アルミナ、および(シュード)ベーマイトのような酸化アルミニウムならびに水酸化アルミニウム、カオリンのようなアルミニウム含有粘土、セピオライト、ベントナイト、およびメタカオリンのような改質粘土が挙げられる。好適な水溶性アルミニウム塩は、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、およびアルミン酸ナトリウムである。
【0049】
好ましい三価金属化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩および(ヒドロキシ)酢酸塩であり、それはこれらの物質が比較的安価であるためである。更に、これらの物質は、アニオン性粘土に、加熱時に環境的に有害なガスとして洗い流されなければならないまたは取り除かれるであろう、望ましくないアニオンを残さない。
【0050】
本発明のアニオン性粘土担体は、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントでドープされる。
【0051】
アニオン性粘土担体は、いくつかの方法で調製できる、1種またはそれ以上のドープされた金属化合物と共沈することによりドープしてよい。一般に、金属化合物およびドーパントは、均質に分散した状態でドーパント含有金属化合物に変換される。
【0052】
ドーパントは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、アルコキシド、炭酸塩およびタングステン酸塩として使用してよい。熱分解性アニオンを有する化合物の使用が好ましい、なぜなら、触媒目的に望ましくないアニオンが存在しないとき、得られるドープされた金属化合物を断続的に洗浄することなく、直接乾燥できるためである。
【0053】
上述のように、本発明の最初の工程は、二価および三価金属化合物の物理的混合物の粉砕を含む。この物理的混合物は、種々の方法で調製することができる。二価および三価金属化合物は、乾燥粉末(ドープまたは交換された)または(水性)懸濁液として混合し、それによりスラリー、ゾルまたはゲルを形成することができる。後者の場合では、二価および三価金属化合物を、粉末、ゾルまたはゲルとして懸濁液に添加し、混合物の調製およ
び粉砕は乾燥後に行う。
【0054】
物理的混合物を水性懸濁液中で調製する場合、分散剤を懸濁液に添加することができる。好適な分散剤としては、界面活性剤、リン酸塩、糖、デンプン、高分子、ゲル化剤、膨潤性粘土等が挙げられる。酸または塩基もまた、懸濁液に添加してよい。
【0055】
物理的混合物中の二価金属の三価金属に対するモル比は、好ましくは約0.01〜約10、より好ましくは約0.1〜約5、最も好ましくは約1〜約3の範囲である。物理的混合物は、乾燥粉末としてまたは懸濁液中で粉砕される。物理的混合物の粉砕に加えて、二価金属化合物および三価金属化合物は、物理的混合物を形成する前に、個々に粉砕してもよい。
【0056】
物理的混合物を懸濁液中で粉砕するとき、混合物は、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、コロイドミル、高剪断ミキサ、ニーダーで、または超音波を用いて、室温にて約1〜約30分間湿式粉砕される。湿式粉砕後かつか焼前に、物理的混合物を乾燥しなくてはならず、例えば、噴霧乾燥を使用してよい。
【0057】
物理的混合物の乾燥に加えて、結合特性を最適化するために、物理的混合物を、約20〜約90℃、より好ましくは約30〜約60℃の範囲の温度で、約15分〜約6時間、エージングしてもよい。
【0058】
粉砕後に得られる粒子の好ましい平均粒径は、約0.1〜約10ミクロン、より好ましくは約0.5〜約5ミクロン、最も好ましくは約1〜約3ミクロンである。粉砕中の温度は、周囲温度またはそれ以上であってよい。より高い温度が、例えば、粉砕プロセスから自然に生じてもよく、または外部の加熱源により発生してもよい。好ましくは、粉砕中の温度は、約20℃〜約90℃、より好ましくは約30〜約50℃の範囲である。
【0059】
物理的混合物は、約200〜約800℃の範囲、より好ましくは約300〜約700℃の範囲、最も好ましくは約350℃〜約600℃の範囲の温度でか焼される。か焼は、約0.25〜約25時間、好ましくは約1〜約8時間、最も好ましくは約2〜約6時間実施される。固定床または回転か焼炉のような、全ての市販型のか焼炉を用いることができる。
【0060】
か焼は、例えば、空気、酸素、不活性雰囲気(例えば、N2)、水蒸気またはこれらの混合物等の種々の雰囲気で実施することができる。
【0061】
このように得られる、か焼された物質は再水和可能な酸化物を含有していなくてはならない。形成される再水和可能な酸化物の量は、用いられる二価および三価金属化合物の種類およびか焼温度に依存する。好ましくは、か焼された物質は、約10〜100%の再水和可能な酸化物、より好ましくは約30〜100%、更により好ましくは約50〜100%、最も好ましくは約70〜100%の再水和可能な酸化物を含有する。工程b)で形成される再水和可能な酸化物の量は、工程c)で得られるアニオン性粘土の量に等しく、それから算出される。この量は、種々の既知の量の純アニオン性粘土を、工程c)の再水和された生成物のサンプルと混合することにより決定できる。粉末X線回折(PXRD)で測定したときの、アニオン性粘土のこれらの混合されたサンプル中の非アニオン性粘土に対する相対強度の外挿を用いて、次いで、再水和された生成物中のアニオン性粘土の量を決定することができる。再水和不可能な酸化物の例は、スピネル型酸化物である。
【0062】
か焼された物質の再水和は、か焼した混合物を水またはアニオンの水溶液と接触させることにより行われる。これは、か焼した混合物を、十分な液体噴霧とともにろ床上を通過
させる、またはか焼した混合物を液体に懸濁させることにより行うことができる。再水和中の液体の温度は、好ましくは約25〜約350℃、より好ましくは約25〜約200℃、最も好ましくは約50〜約150℃であり、温度の選択は用いられる二価および三価金属化合物の性質に依存する。再水和は、約20分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、より好ましくは約1〜約4時間実施される。
【0063】
再水和中、高剪断ミキサ、コロイドミキサ、ボールミル、ニーダー、超音波等を用いることにより、懸濁液を粉砕することができる。再水和は、バッチ式または連続式で、所望により既に公開されている米国特許出願第2003−0003035号に従って、連続多段階操作で実施することができる。例えば、再水和懸濁液を原料調製容器で調製し、その後懸濁液を2つまたはそれ以上の変換容器を通して連続的に送り出す。必要な場合、添加剤、酸または塩基を、任意の変換容器中で懸濁液に添加することができる。各容器を、それ自体の望ましい温度に調節することができる。
【0064】
再水和中、アニオンを液体に添加することができる。好適なアニオンの例としては、NO、NO、CO2−、HCO、SO2−、SONH、SCN、S2−、SeO、F、Cl、Br、I、ClO、ClO、BrOおよびIOのような無機アニオン、ケイ酸塩、アルミン酸塩ならびにメタケイ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、長鎖カルボン酸塩(例えば、セバシン酸塩、カプリン酸塩およびカプリル酸塩(CPL))、アルキル硫酸塩(例えば、ドデシル硫酸塩(DS)およびドデシルベンゼン硫酸塩)、ステアリン酸塩、安息香酸塩、フタロシアニン、四スルホン酸塩のような有機アニオン、ポリスチレンスルホン酸、ポリイミド、安息香酸ビニルおよびジアクリル酸ビニルのような高分子アニオン、ならびにpH依存的ホウ素含有アニオン、ビスマス含有アニオン、タリウム含有アニオン、リン含有アニオン、ケイ素含有アニオン、クロム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオブ含有アニオン、タンタル含有アニオン、マンガン含有アニオン、アルミニウム含有アニオンおよびガリウム含有アニオンが挙げられる。
【0065】
本発明によるプロセスで用いられるドープされたアニオン性粘土は、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀から成る群から選択される少なくとも1種の化合物に沈着する。化合物は、好ましくは、所望の元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、またはヒドロキシ炭酸塩である。化合物は、物理的混合物および/または工程c)の水性懸濁液に存在してよい。
【0066】
物理的混合物中に存在する場合、化合物は、粉砕工程a)前または粉砕工程a)中、か焼工程b)中、または粉砕工程a)とか焼工程b)の間に、物理的混合物に添加してよい。か焼中の添加は、か焼炉と同様にミキサとしても効率的に用いることができる、十分な混合能力を備えるか焼炉を使用することが必要である。化合物は、固体粉末として、懸濁液中で、または好ましくは溶液中で、工程a)の物理的混合物および工程c)の懸濁液に添加することができる。か焼中に添加する場合、それは粉末の形態で添加される。
【0067】
得られる組成物は、追加のか焼および所望により追加の再水和工程に供することができる。か焼の後に次の再水和を行う場合、最初の再水和工程後に形成されるものに類似したアニオン性粘土が形成されるが、機械的強度は高まっている。これらの2番目のか焼および再水和工程は、最初のか焼および再水和工程と同じまたは異なる条件下で行ってよい。追加のか焼工程中および/または再水和工程中、更に化合物を添加してよい。これらの追加の化合物は、物理的混合物および/または工程c)の水性懸濁液中に存在する添加剤と同じであっても異なってもよい。
【0068】
更に、追加の再水和工程中、アニオンを添加することができる。好適なアニオンは、最
初の再水和工程に関連して上記で言及したものである。最初のおよび追加の再水和工程中に添加されたアニオンは、同じであっても異なってもよい。
【0069】
必要な場合、本発明のプロセスにより調製した組成物を、従来の触媒または、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、ジルコニア、チタニア、ボリア、カオリンのような(改質)粘土、酸溶脱カオリン、脱アルミン酸化カオリン、スメクタイトおよびベントナイトのような吸着剤成分、(改質またはドープされた)リン酸アルミニウム、ゼオライト(例えば、ゼオライトX、Y、REY、USY、RE−USY、またはZSM−5、ゼオライトベータ、シリカライト)、リン酸塩(例えば、メタまたはピロリン酸塩)、孔調節剤(pore regulating agent)(例えば、糖、界面活性剤、高分子)、結合剤、充填剤およびこれらの組み合わせと混合することができる。所望により1種またはそれ以上の上記従来の触媒成分と混合された組成物を成形して、成形体を形成することができる。好適な成形方法としては、噴霧乾燥、ペレット化、押出成形(所望により、混練と組み合わせる)、ビーズ化(beading)、もしくは触媒および吸着剤で用いられる任意の他の従来の成形方法、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅および銀から成る群から選択される少なくとも1種の化合物は、金属として測定したとき、アニオン性粘土の重量に基づいて、0.001〜2.0重量%の好ましい量、より好ましくは0.01〜2.0、更により好ましくは0.01〜10重量%、最も好ましくは0.01〜0.15重量%、アニオン性粘土上に存在する。
【0071】
触媒組成物は、好ましくは1.0〜100重量%、より好ましくは1.0〜40重量%、更により好ましくは3.0〜25重量%、最も好ましくは3.0〜15重量%の本発明の組成物を含む。
【0072】
本発明による触媒組成物は、好ましくは20〜約2000ミクロン、好ましくは20〜600ミクロン、より好ましくは20〜200ミクロン、最も好ましくは30〜100ミクロンの粒径を有する。
【0073】
添加剤組成物を添加剤微粒子として用いる場合(FCC触媒粒子自体に一体化するのと対照的に)、添加剤粒子中の添加剤成分の量は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%である。最も好ましくは、添加剤粒子は完全に添加剤成分から成る。添加剤粒子は、好ましくは、FCCプロセス中の触媒インベントリとともに循環するのに好適な大きさである。添加剤粒子は、好ましくは、約20〜200μmの平均粒径を有する。添加剤粒子は、好ましくは、FCCUの厳しい環境に耐え得るような磨耗特性を有する。
【0074】
既に言及したように、本発明の添加剤組成物は、FCC触媒粒子自体に一体化してもよい。このような場合、従来のFCC触媒粒子成分のいずれかを、本発明の添加剤組成物と併用してもよい。FCC触媒粒子に一体化した場合、本発明の添加剤組成物は、好ましくは、少なくとも約0.02重量%のFCC触媒粒子に相当する。
【0075】
本発明の添加剤成分がFCC触媒粒子に一体化している場合、好ましくは成分を最初に形成し、次いでFCC触媒粒子を作り上げる他の構成物と組み合わせる。添加剤成分をFCC触媒粒子に直接組み込むことは、任意の既知の技術により実現できる。この目的に好適な技術の例は、米国特許第3,957,689号、同第4,499,197号、同第4,542,188号および同第4,458,623号に開示されており、この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0076】
本発明の組成物を、任意の従来のFCCプロセスで用いてよい。典型的なFCCプロセスは450〜650℃の反応温度で実施され、触媒再生温度は600〜850℃である。本発明の組成物を、任意の典型的な炭化水素原料のFCCプロセスで用いてよい。好ましくは、本発明の組成物は、平均を超える窒素量を含有する炭化水素原料、特に残留原料、または少なくとも0.1重量%の窒素含量を有する原料のクラッキングに関与するFCCプロセスで用いられる。用いられる本発明の添加剤成分の量は、具体的なFCCプロセスに依存して変化する。好ましくは、(循環インベントリ中で)用いられる添加剤成分の量は、循環触媒インベントリ中のFCC触媒の重量に基づいて約0.05〜15重量%である。FCCプロセス触媒再生工程中、本発明の組成物の存在は、NO生成物の最終的な量を最小限に抑えながら、その上COの酸化を効率的に促進する。
【実施例1】
【0077】
この実施例では、添加剤サンプルは全て、調製した溶液を用いて、液滴、初期湿式型金属含浸において、適切な金属前駆体(例:塩化プラチナ、硝酸ロジウム、塩化パラジウム等)または金属前駆体の組み合わせを添加して、完成サンプルに対する所望の金属負荷を実現することにより調製する。溶液を量的にアニオン性粘土担体に添加した後、前駆体を分解し、過剰な水を除去するため、得られたサンプルを110℃のオーブンで12時間乾燥させ、次いで取り出し、室温に冷却する。
【0078】
以下の実施例中の添加剤は、不活性化方法として、約1日程度の所定の期間、典型的な工業流動接触分解ユニット(FCCU)内での曝露を疑した条件に供した。各添加剤を総最終量の1重量%で、工業用FCCUから得た再生していない使用済み触媒にブレンドした。次いで、混合物全体を、FCCU再生器中のコークス燃焼工程を疑した条件に供し、全てのコークスが燃焼し、コークス燃焼からガスが発生しなくなるまで、CO、CO2およびNOをまとめたガス水準をモニタした。
【0079】
図1では、最初のサンプルは、コークス燃焼におけるCO、CO2およびNOのベースラインを定めるために試験したブランク(添加剤を含まず、使用済み触媒のみ)である。灰色の棒は左側の軸を指し、燃焼中に測定したCO2のCOに対するモル比をまとめたものである。黒点は右側の軸を指し、使用済み触媒のみのNO水準に対する留分として報告されたNO水準(そのためこの値はブランクで1.0)である。
【0080】
3種の実施例の添加剤を含むことの効果は全ての場合で明らかであり、CO2のCOに対する比は、添加剤のCO燃焼活性により増加し、NO水準も増加しており、正確に典型的な商業的結果を反映している。
【0081】
図1における2種の類似するRhサンプルを比較すると、Baで改質されたHTC担体は、改質されていないHTC上のサンプルに比べて優れたCO燃焼を示し、NO水準は僅かに低い。これらを比較する別の方法は、各サンプルについて、留分のNO水準(使用済み触媒のみに比べて)に対する留分のCO減少(これも使用済み触媒のみに比べて)の比を見ることである。この数(CONO因子と呼ばれる)が大きくなるにつれて、その添加剤は、付随するNO増加を最小限に抑えながらCO燃焼を促進するという観点で、より効果的である。この場合、改質されていないHTCサンプルは、0.32のCONO因子を示し、一方担体に組み込まれたBaを有するサンプルでは0.45が得られ、明らかにドープされたHTCに関連する性能の改善を示す。
【0082】
類似するPt Ba−HTC添加剤を有する、この同じサンプルを比較すると、CO燃焼活性はほぼ同一であるが、NO増加が非Ptサンプルの半分未満であり(CONO因子は0.45対0.2)、非Ptサンプルの優位性が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解プロセスにおける触媒再生中のCO酸化を促進するのに好適な微粒子組成物であって、前記組成物がGa3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅、または銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土担体上に沈着し、組成物が実質的にプラチナを含まない、微粒子組成物。
【請求項2】
アニオン性粘土担体がハイドロタルサイト様化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アニオン性粘土がハイドロタルサイトである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
流動接触分解プロセスにおける触媒再生中のCO酸化を促進するのに好適な微粒子組成物を調製するためのプロセスであって、該微粒子組成物がGa3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅、または銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土担体上に沈着し、組成物が実質的にプラチナを含まず、プロセスが
a)二価金属化合物および三価金属化合物の物理的混合物を粉砕する工程と、
b)約200〜約800℃の範囲の温度で粉砕した物理的混合物をか焼する工程と、
c)か焼した混合物を水性懸濁液中で再水和してアニオン性粘土を形成する工程と、
を含み、ドーパントが工程(a)の物理的混合物中および/または工程(c)の水性懸濁液中に存在し、微粒子組成物がプラチナを本質的に含まない、プロセス。
【請求項5】
粉砕が、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、コロイドミル、ニーダーまたは高剪断ミキサ内で、または超音波を用いることにより実施される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
か焼温度が約300〜約700℃の範囲である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
か焼温度が約350〜約600℃の範囲である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
工程a)の物理的混合物をエージングする工程を更に含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項9】
エージングが、約20〜約90℃の範囲の温度で、約15分〜約6時間の範囲で行われる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
二価金属が、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよびこれらの組み合わせである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項11】
二価金属が、マグネシウム、マンガン、鉄、またはこれらの組み合わせである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
三価金属が、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム、バナジウム、コバルト、マンガン、ニッケル、インジウム、セリウム、ニオブ、ランタンおよびこれらの組み合わせである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項13】
三価金属がアルミニウムである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
形成されたアニオン性粘土の次のか焼工程を更に含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項15】
続いてか焼されたアニオン性粘土を再水和する工程を更に含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
炭化水素原料の低分子量成分への流動接触分解中のCO酸化を促進する方法であって、前記方法が、炭化水素原料を高温で炭化水素のクラッキングを触媒するのに好適なクラッキング触媒に接触させて、それにより低分子量の炭化水素成分が微粒子CO酸化促進剤の存在下で形成される工程を含み、前記微粒子組成物が、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+から成る群から選択される少なくとも1種のドーパントを有するアニオン性粘土担体を含み、イリジウム、ロジウム、パラジウム、銅、または銀を含む少なくとも1種の化合物がアニオン性粘土担体上に沈着し、組成物が実質的にプラチナを含まず、前記CO低減組成物が、前記CO排出を低減するのに十分な量存在する、方法。
【請求項17】
前記クラッキング触媒が、炭化水素原料との接触中に流動化する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
用いたクラッキング触媒を前記接触工程から回収する工程と、前記触媒を再生するための条件下で前記用いられた触媒を処理する工程とを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炭化水素原料が少なくとも0.1重量%の窒素を含有する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−520587(P2011−520587A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510745(P2010−510745)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056567
【国際公開番号】WO2008/148685
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509129255)
【Fターム(参考)】