説明

住宅の庇構造

【課題】住宅の外観意匠を格段に高めることができる庇構造を提供する。
【解決手段】この庇構造は、住宅本体1における一階外壁2と二階外壁3の境界部分から張り出した玄関用庇、カーポート用庇、窓用庇等の庇群を、同一高さレベルで一体的に連続させてなる連続庇4を備えている。そして、この連続庇4を、住宅本体1における玄関側の正面10全体を含めた少なくとも3方向の面10、11、12に跨って広範囲にバランス良く配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として戸建て住宅の外観意匠を向上する庇構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、戸建て住宅の外壁には、玄関用庇、窓用庇、カーポート用庇等の各種庇が屋外へ張り出して設けられている。このような各種庇は、それぞれが独立して不規則に配置されていることが多く、この場合、外観上のまとまりが悪くなって、住宅の外観意匠を高める上での妨げになっていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1にも開示されているように、玄関用庇や勝手口用庇といった各種庇を、住宅本体における一階と二階の境界部分に沿って設けた見切り材の延長上に配置して、同一の高さレベルに揃えることで、住宅の外観意匠を高めることが提案されている。また、例えば特許文献2にも開示されているように、玄関用庇やカーポート用庇といった各種庇を同一の高さレベルで一体的に連続させることで、住宅の外観意匠を高めることも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−21240号公報
【特許文献2】特開平8−338138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、各種庇を単に同一の高さレベル揃えるようにしても、各種庇は、それぞれが独立して張り出した状態のままであるから、依然として外観上のまとまりが悪く、住宅の外観意匠を格段に高めるまでには至っていない。
【0006】
また、特許文献2に開示されているように、各種庇を同一の高さレベルに揃えて一体化すれば、それぞれが独立して張り出した状態となっているときよりも、外観上のまとまりが良くなるが、各種庇を一体化してなる部分は、住宅外周のごく一部(例えば、住宅外周における1つのコーナー部)に偏って配置されているだけであって、住宅本体に対するバランスが悪く、この場合も住宅の外観意匠を格段に高めるまでには至っていない。
【0007】
この発明は、上記不具合を解消して、住宅本体における一階と二階の境界部分から張り出した庇群を同一高さレベルで一体的に連続させてなる連続庇を、住宅本体に対するバランスに配慮しながら見栄え良く配置して、住宅の外観意匠を格段に高めることができる住宅の庇構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の住宅の庇構造は、住宅本体1における一階外壁2と二階外壁3の境界部分から張り出した庇群を同一高さレベルで一体的に連続させてなる連続庇4を、前記住宅本体1における玄関20側の正面10全体を含めた少なくとも3方向の面10、11、12に跨って配置したことを特徴とする。
【0009】
具体的に、前記連続庇4は、前記住宅本体1からの張り出し量L1が2m以上とされた幅広部40を備え、この幅広部40を、前記住宅本体1における玄関20側の正面10と、この玄関20側の正面10を挟むようにして互いに略平行に延びる一対の側面11、12とに跨って配置している。
【0010】
また、前記幅広部40を、平面視略凹状に形成して、その凹所を平面視略長方形状の住宅本体1における玄関20側の端部に被せるようにして配置している。
【0011】
さらに、前記幅広部40の先端部分の要所要所を、前記住宅本体1に対して間隔をあけて設けた付帯壁80、81、82によって支持して、前記住宅本体1と付帯壁80、81、82との間に、前記幅広部40によって覆われた付帯空間84、86、87を確保している。
【0012】
また、前記幅広部40を、前記住宅本体1における二階外壁3から張り出したバルコニー23の下側において、平面から見て前記バルコニー23よりも張り出すようにして配置している。
【0013】
さらに、前記連続庇4は、少なくとも玄関用庇と、カーポート用庇と、窓用庇とを同一高さレベルで一体的に連続させてなる。
【0014】
さらにまた、前記連続庇4の外周端面に沿って設けた化粧見切り材70を、前記住宅本体1における一階外壁2と二階外壁3の境界部分に沿って設けた層間見切り材25に同一高さレベルで連続させて、これら化粧見切り材70及び層間見切り材25を前記住宅外周の全周に亘って配置している。
【発明の効果】
【0015】
この発明の住宅の庇構造においては、本来独立して設けられる例えば玄関用庇、カーポート用庇、窓用庇等の庇群を一纏めに集約した連続庇を、住宅本体における玄関側の正面全体を含めた少なくとも3方向の面に亘って広範囲にバランス良く配置しているので、住宅外周における余分な水平ラインをなくして、まとまりのあるすっきりとした外観とすることができ、住宅の外観意匠を格段に高めることができる。
【0016】
特に、連続庇の平面視略凹状に形成された幅広部を、平面視略長方形状の住宅本体における玄関側の端部を囲むようにして、住宅本体における玄関側の正面及びこの正面を挟む一対の側面に跨って配置することで、最も人目に付き易い玄関側の正面から住宅全体を見たときに、あたかも住宅本体に大きな翼を取り付けたような斬新で均整の取れた外観とすることができ、住宅の外観意匠をより一層高めることができる。
【0017】
また、幅広部の先端部分の要所要所を付帯壁によって支持して、住宅本体の一階周りに付帯空間を確保することで、住宅本体の一階部分に拡がりを持たせて住宅全体を大きく見せることができ、住宅の外観意匠をより一層高めることができる。
【0018】
さらに、幅広部を、二階外壁から張り出したバルコニーよりも平面から見て張り出すようにして配置することで、バルコニーに邪魔されることなく連続庇の連続性を維持して、住宅の外観意匠を良好に維持することができる。
【0019】
さらにまた、連続庇の化粧見切り材を、住宅本体の層間見切り材に同一高さレベルで連続させて、これら化粧見切り材及び層間見切り材を住宅外周の全周に亘って途切れることなく配置することで、住宅本体における庇のある部分と庇のない部分との意匠性を調和させて、住宅の外観意匠をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る住宅の庇構造は、図1乃至図6に示すように、二階建て戸建て住宅の住宅本体1における一階外壁2と二階外壁3の境界部分から張り出した庇群(具体的には、玄関用庇、カーポート用庇、窓用庇)を同一高さレベルで一体的に連続させることによって構成した略水平板状の連続庇4を備えている。
【0021】
住宅本体1は、例えば平面視略長方形状に形成されており、その正面(東側面)10には、一階において玄関20が設けられ、正面(東側面)10を挟むようにして互いに略平行に延びる一対の側面(南側面、北側面)11、12には、一階においてデッキ21、22が夫々設けられ、一方の側面(南側面)11には、二階外壁3から張り出したバルコニー23が設けられている。なお、住宅本体1の一階外壁2及び二階外壁3には、各種の窓W・・が適宜設けられている。
【0022】
また、住宅本体1における背面(西側面)13全体及び他方の側面(北側面)12に跨るようにして、一階外壁2と二階外壁3の境界部分に沿って層間見切り材25が設けられている。層間見切り材25は、図7に示すように、断面略コ字状の長尺材であって、互いに略平行な一対のフランジ部26、26と、これらフランジ部26、26の一端部間を連結するウエブ部27とを備え、そのウエブ部27を一階外壁2の上端部に取り付けた取付金具28に固定することによって、溝部開口29が外側を向くようにして住宅本体1に取り付けられている。なお、図7において、30はH形鋼からなる二階床梁、31は二階外壁3の軸組、32は二階外壁3の外壁パネル、33は一階外壁2の軸組、34は一階外壁2の外壁パネルである。
【0023】
そして、上記のように構成された住宅本体1における玄関20側の正面10全体を含めた3方向の面すなわち正面(東側面)10及び両側面(南側面、北側面)11、12に跨って、連続庇4が配置されている。
【0024】
連続庇4は、図1及び図2に示すように、住宅本体1からの張り出し量L1が2m〜4mとされた平面視略凹状の幅広部40と、住宅本体1からの張り出し量L2が0.5m〜1mとされた平面視略長方形状の幅狭部41とを備え、幅広部40が、その凹所を住宅本体1における玄関20側の端部に被せるようにして、住宅本体1における正面(東側面)10の幅方向全長、両側面(南側面、北側面)11、12の幅方向全長の約半分に亘って配置され、幅狭部41が、住宅本体1における一方の側面(南側面)11の幅方向全長の残り約半分に亘って配置されている。そして、後述するように幅広部40がカーポート用庇及び玄関用庇として、幅狭部41が窓用庇として機能するようになっている。
【0025】
幅広部40は、図8に示すように、複数の鋼材を枠状に組み付けてなる庇フレーム51と、この庇フレーム51の上面に下地合板52を介して設けた水勾配を有する勾配断熱材53と、この勾配断熱材53の上面に設けた防水シート材54と、庇フレーム51の下面に軒裏野縁55を介して設けた軒裏天井板56と、庇フレーム51の先端部分に設けた軒樋材57とを備え、その庇フレーム51を一階外壁2の上端部から張り出した腕木58・・に固定することによって、住宅本体1に取り付けられている。
【0026】
幅狭部41は、図9に示すように、上面に水勾配を有する外装ケース60と、この外装ケース60に長手方向に間隔をあけて内装された複数の支持材61・・と、これら支持材61・・の下面間に軒裏野縁62を介して設けた軒裏天井板63とを備え、その支持材61・・を一階外壁2の上端部から張り出した腕木64・・に固定することによって、住宅本体1に取り付けられている。
【0027】
このようにして構成された連続庇4の外周端面すなわち幅広部40と幅狭部41の外周端面には、化粧見切り材70が連続して設けられている。化粧見切り材70は、図8及び図9に示すように、上記の層間見切り材25と同様の断面略コ字状の長尺材であって、互いに略平行な一対のフランジ部71、71と、これらフランジ部71、71の一端部間を連結するウエブ部72と、このウエブ部72の裏面に取り付けた取付部73とを備え、その取付部73を幅広部40の庇フレーム51先端や幅狭部41の外装ケース60先端に固定することによって、溝部開口74が外側を向くようにして連続庇4の外周端面に沿って取り付けられている。
【0028】
そして、この化粧見切り材70が、一階外壁2と二階外壁3の境界部分に沿って設けた上記の層間見切り材25に同一高さレベルで連続され、これら化粧見切り材70及び層間見切り材25が、住宅外周1の全周に亘って途切れることなく配置されている。
【0029】
また、連続庇4の幅広部40においては、その先端部分の要所要所が、住宅本体1に対して間隔をあけて設けた第1、第2、第3付帯壁80、81、82及び複数の付帯柱83・・によって支持されている。
【0030】
第1付帯壁80は、図1に示すように、住宅本体1における他方の側面(北側面)12に対向して配され、住宅本体1と第1付帯壁80との間には、幅広部40によって覆われた第1付帯空間としてのカーポート84が確保されている。従って、幅広部40における住宅本体1と第1付帯壁80との間に跨る部位は、カーポート用庇として機能するようになっている。なお、カーポート84には、目隠し用の面材85が設けられている。
【0031】
第2付帯壁81は、図1に示すように、住宅本体1における正面(東側面)10に対向して配され、住宅本体1と第2付帯壁81との間には、幅広部40によって覆われた第2付帯空間としての玄関ポーチ86が確保されている。従って、幅広部40における住宅本体1と第2付帯壁81との間に跨る部位は、玄関用庇として機能するようになっている。
【0032】
第3付帯壁82は、図1に示すように、住宅本体1における一方の側面(南側面)11に対向して配され、住宅本体1と第3付帯壁82との間には、幅広部40によって覆われた第3付帯空間としての多目的空間87が確保されている。なお、多目的空間87には、目隠し用の面材88、88が設けられている。
【0033】
なお、第1、第2、第3付帯壁80、81、82は、図8に示すように、その壁面方向に間隔をあけて配置した複数の柱89・・を囲むようにして、複数の壁材90・・を取り付けることによって構成されている。
【0034】
さらに、連続庇4の幅広部40は、バルコニー23の下側において、図2に示すように、平面から見てバルコニー23よりも張り出すようにして配置されており、これにより住宅本体1から張り出したバルコニー23が設けられていても、バルコニー23に邪魔されることなく連続庇4の連続性を維持して、連続庇4を強調させるようにしている。
【0035】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、連続庇4を、住宅本体1における玄関側の正面10全体を含めた3方向の面10、11、12に跨って配置していたが、住宅本体1における4方向のすべての面10、11、12、13に跨って、すなわち、住宅本体1の外周を取り囲むようにして配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態に係る庇構造を採用した住宅の一階部分の横断面図である。
【図2】同じく住宅の二階部分の横断面図である。
【図3】同じく住宅の正面(東側面)側の立面図である。
【図4】同じく住宅の一方の側面(南側面)側の立面図である。
【図5】同じく住宅の他方の側面(北側面)側の立面図である。
【図6】同じく住宅の背面(西側面)側の立面図である。
【図7】層間見切り材の取付部位における縦断面図(図2のA−A断面図)である。
【図8】連続庇の幅広部の取付部位における縦断面図(図2のB−B断面図)である。
【図9】連続庇の幅狭部の取付部位における縦断面図(図2のC−C断面図)である。
【符号の説明】
【0037】
1・・住宅本体、2・・一階外壁、3・・二階外壁、4・・連続庇、10・・正面(東側面)、11・・一方の側面(南側面)、12・・他方の側面(北側面)、20・・玄関、23・・バルコニー、25・・層間見切り材、40・・幅広部、70・・化粧見切り材、80、81、82・・付帯壁、84、86、87・・付帯空間、L1・・張り出し量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅本体(1)における一階外壁(2)と二階外壁(3)の境界部分から張り出した庇群を同一高さレベルで一体的に連続させてなる連続庇(4)を、前記住宅本体(1)における玄関(20)側の正面(10)全体を含めた少なくとも3方向の面(10)(11)(12)に跨って配置したことを特徴とする住宅の庇構造。
【請求項2】
前記連続庇(4)は、前記住宅本体(1)からの張り出し量(L1)が2m以上とされた幅広部(40)を備え、この幅広部(40)を、前記住宅本体(1)における玄関(20)側の正面(10)と、この玄関(20)側の正面(10)を挟むようにして互いに略平行に延びる一対の側面(11)(12)とに跨って配置した請求項1記載の住宅の庇構造。
【請求項3】
前記幅広部(40)を、平面視略凹状に形成して、その凹所を平面視略長方形状の住宅本体(1)における玄関(20)側の端部に被せるようにして配置した請求項2記載の住宅の庇構造。
【請求項4】
前記幅広部(40)の先端部分の要所要所を、前記住宅本体(1)に対して間隔をあけて設けた付帯壁(80)(81)(82)によって支持して、前記住宅本体(1)と付帯壁(80)(81)(82)との間に、前記幅広部(40)によって覆われた付帯空間(84)(86)(87)を確保した請求項2又は3記載の住宅の庇構造。
【請求項5】
前記幅広部(40)を、前記住宅本体(1)における二階外壁(3)から張り出したバルコニー(23)の下側において、平面から見て前記バルコニー(23)よりも張り出すようにして配置した請求項2乃至4のいずれかに記載の住宅の庇構造。
【請求項6】
前記連続庇(4)は、少なくとも玄関用庇と、カーポート用庇と、窓用庇とを同一高さレベルで一体的に連続させてなる請求項1乃至5のいずれかに記載の住宅の庇構造。
【請求項7】
前記連続庇(4)の外周端面に沿って設けた化粧見切り材(70)を、前記住宅本体(1)における一階外壁(2)と二階外壁(3)の境界部分に沿って設けた層間見切り材(25)に同一高さレベルで連続させて、これら化粧見切り材(70)及び層間見切り材(25)を前記住宅外周の全周に亘って配置した請求項1乃至6のいずれかに記載の住宅の庇構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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