住宅設備機器の引き出しおよびこれを有する住宅設備機器
【課題】引き出しを引き出したとき、ユーザーは被収納物全体を一目で観察でき、被収納物を、垂直方向に設けたままで引き出しに対して容易に着脱できる住宅設備機器の引き出しを提供する。
【解決手段】引き出し1は、移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。引き出しを引き出して揺動枠体を立ち上げた状態で、揺動枠体に保持されている被収納物がユーザーMに対向して位置する。
【解決手段】引き出し1は、移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。引き出しを引き出して揺動枠体を立ち上げた状態で、揺動枠体に保持されている被収納物がユーザーMに対向して位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しおよびこれを有する住宅設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンなど住宅設備機器は、被収納物を収納するための引き出しを備えている場合が多い。たとえば、特許文献1(特開2003−189954号公報)には、補助収納部を有する引き出し構造が記載されている。
この引き出し構造では、引き出しの前面部(本発明の前板に相当)が、補助的な収納部として構成されている補助収納部になっている。そして、この補助収納部は、引き出しの開閉のための前後運動とは独立して開閉するようになっている。
【特許文献1】特開2003−189954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の引き出し構造は、前面部の裏側の補助収納部に被収納物を収納するとともに、補助収納部を揺動運動で開閉するようになっている。
そのため、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザー(使用者)は収納済みの被収納物をすぐに直接見ることはできず、補助収納部を揺動させる必要があった。また、補助収納部が前面部の裏側にあるので、被収納物を補助収納部に対して出し入れするのが困難であった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱することができる住宅設備機器の引き出しおよびこれを有する住宅設備機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる住宅設備機器の引き出しは、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しであって、前後方向に移動自在に前記キャビネットに設けられた引き出し本体と、揺動して立ち上がることができるように前記引き出し本体に支持され、前記被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備え、前記引き出しを前方に引き出して前記揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている前記被収納物がユーザーに対向して位置するように構成されている。
前記揺動枠体は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように前記引き出し本体に支持されるとともに、付勢手段によりほぼ垂直方向側に付勢されており、前記引き出しが前記キャビネットに収納されているときは、前記揺動枠体はほぼ水平方向を向き、前記引き出しが前後方向に移動する直線動作に連動して、前記揺動枠体は、前記付勢手段の付勢力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながらほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能であるのが好ましい。
本発明の一実施態様として、前記引き出し本体の底板上の収納部にも前記被収納物を収納可能になっており、前記引き出しを前記キャビネットに収納して前記揺動枠体がほぼ水平方向を向いている状態で、前記引き出し本体の前記収納部が下段で前記揺動枠体が上段となる二段の収納状態であるのが好ましい。
前記揺動枠体が揺動して立ち上がって、その枠先端が上方を向いている状態で、前記揺動枠体の枠後端が揺動中心軸より所定寸法だけ下方に位置するように、前記揺動枠体の根元部は、前記揺動中心軸より前記所定寸法だけ延びて形成されているのが好ましい。
一例として、前記キャビネットは、シンクを含むシンクキャビネットを有しており、前記引き出しは、このシンクキャビネットに設けられるとともに前記シンクのすぐ下の空間を利用して配置されているのが好ましい。
本発明にかかる住宅設備機器は、前記引き出しが前記キャビネットに引き出し収納自在に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる住宅設備機器の引き出しおよびこれを有する住宅設備機器は、上述のように構成したので、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
下記の実施例にかかる引き出しは、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能になっている。この引き出しは、収納用空間を有する引き出し本体と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体に支持され、被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備えている。そして、引き出しを前方に引き出して揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている被収納物がユーザーに対向して位置するようになっている。
これにより、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは、収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱可能にするという目的を実現している。
【0008】
本発明における住宅設備機器としては、台所に設置されるキッチン(たとえば、複合厨房家具の一種であるシステムキッチン,セクショナルキッチン)、食器や食品などを収納する収納庫、および台所の流し台などの厨房家具が一般的である。
本発明の引き出しは、洗面化粧台や洗面収納キャビネットなどの洗面機器、およびその他の住宅設備機器にも適用可能である。下記の実施例では、引き出しをシステムキッチンに設けた場合を例にとって説明する。
【実施例】
【0009】
以下、本発明にかかる実施例を図1ないし図12を参照して説明する。
図1ないし図11は本発明の第1実施例を示す図で、図1は、シンクキャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。図2はシステムキッチンの断面図、図3は、システムキッチンの断面図で、引き出しの動作を示している。
図4ないし図6は揺動枠体の動作を示す斜視図で、図4は、引き出しが収納されている状態を示している。図5は、引き出しを引き出す途中の状態を示しており、図6は、引き出しを引き出した状態を示している。
図7および図8は、それぞれ引き出しの斜視図および分解斜視図である。図9は、揺動枠体の支持構造を示す部分拡大図で、図9(A)は揺動途中の状態を示し、図9(B)は揺動枠体が立ち上がった状態を示している。図10は、揺動枠体を支持するヒンジ部材の斜視図、図11は、揺動枠体が当接するダンパ部材の斜視図である。
図12は、本発明の第2実施例を示す図で、調理台キャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。
なお、説明の便宜上、各図中の符号D1,D2,D3,D4で示す各方向を、それぞれシステムキッチンの左方,右方,前方,後方とする。
【0010】
(第1実施例)
図1に示すように、住宅設備機器としてのシステムキッチン10は、台所11に設置されている。本発明にかかる引き出し1は、システムキッチン10のキャビネット12に引き出し収納自在に設けられ、被収納物2を収納可能になっている。
キャビネット12は床面上に設置されている。キャビネット12は、コンロキャビネット13,一方の調理台キャビネット14,シンクキャビネット15および他方の調理台キャビネット16などが順次並設された構成であり、ワークトップ17が、キャビネット13〜16の上部を覆って取付けられている。キャビネット12には、引き出し1のほかに、各種形状,構造の複数の引き出しが、引き出し収納自在に設けられている。
【0011】
コンロキャビネット13には、グリル18を有するIHクッキングヒータ19,引き出し20,足下の引き出し28などが設けられて、単体としての厨房家具が構成されている。一方の調理台キャビネット14は、引き出し23,24,足下の引き出し28などを有して、単体としての厨房家具を構成している。
シンクキャビネット15の上部のワークトップ17には、水栓装置21やシンク22が設けられている。シンクキャビネット15は、引き出し1のほかに、水栓装置21,シンク22,他の引き出し25,足下の引き出し28などを有して、単体としての厨房家具を構成している。
他方の調理台キャビネット16は、ビルトインにより設けられた食器洗い乾燥機26と、引き出し29とを有して、単体としての厨房家具を構成している。調理台キャビネット14,16の上部のワークトップ17は、調理台になっている。
こうして、システムキッチン10は、単体としての厨房家具が複合した複合厨房家具を構成している。
【0012】
図1ないし図11に示す第1実施例では、シンク22を含むシンクキャビネット15に引き出し1が設けられ、この引き出し1は、シンク22のすぐ下の空間Sを利用して配置されている。これにより、従来は利用されていなかったシンク22のすぐ下の空間Sを有効利用して、被収納物2を収納することができる。
引き出し1は、前後方向(D3,D4方向)に移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体3に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。引き出し本体3は、前方に位置して固定された前板4を有している。
そして、引き出し1を前方(D3方向)に引き出して揺動枠体5を立ち上げた状態で、揺動枠体5に保持されている被収納物2が、ユーザー(使用者)Mに対向して位置する。したがって、引き出し1を前方に引き出したとき、ユーザーMは、収納済みの被収納物2の全体を一目で観察することができ、また、被収納物2を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出し1に対して容易に着脱することができる。
【0013】
第1実施例では、引き出し1が、キャビネット12を構成するシンクキャビネット15に設けられて、ワークトップ17のすぐ下に配置された場合を示している。また、後述する第2実施例(図12)では、本発明の引き出し1aが、キャビネット12を構成する一方の調理台キャビネット14に設けられて、ワークトップ17のすぐ下に配置された場合を示している。
このように、本発明の引き出し1,1aが、ワークトップ17のすぐ下(すなわち、キャビネット12の最上部)に配置されているので、調理時に頻繁に使用する被収納物2(たとえば、レードルやその他の調理用器具)を揺動枠体5で位置決め保持することができる。したがって、ユーザーMは、被収納物2を揺動枠体5に対して迅速に着脱することができ、能率よく調理作業ができる。
なお、引き出し1,1aを、キャビネット12の最上部以外の位置に配置したり、シンクキャビネット15,調理台キャビネット14以外のキャビネット13,16に設けた場合であってもよい。
【0014】
第1実施例にかかる引き出し1において、揺動枠体5は、ほぼ水平方向(図4)またはほぼ垂直方向(図6)を向いてその姿勢が変化するように、引き出し本体3に支持されるとともに、付勢手段としてのばね27によりほぼ垂直方向側に付勢されている。
引き出し1がキャビネット12に収納されているときは、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。引き出し1が前後方向に移動する直線動作(矢印Bに示す動作)に連動して、揺動枠体5は、付勢手段(ばね27)の付勢力(ばね力)によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能である。
図3では、引き出し1がキャビネット12に収納されている状態を実線で示している。また、引き出し1が前方または後方に移動する途中の状態を鎖線で示し、引き出し1が引き出されて最も前方に位置する状態を破線で示している。
【0015】
ばね27を設けたので、ユーザーMが引き出し1を前方に引き出すと、引き出し1の前進動作に連動して、揺動枠体5が、ばね27のばね力により自動的に立ち上がってほぼ垂直方向を向く。
また、ユーザーMが、引き出し1を後方(D4方向)に押して収納すると、引き出し1の後退動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力に抗してほぼ垂直方向からほぼ水平方向にその姿勢を変化させる。
その結果、ユーザーMがわざわざ揺動枠体5を垂直方向に立ち上げたり水平方向に戻す操作を行う必要はなくなり、引き出し1の使い勝手がよい。
なお、ばね27などの付勢手段を設けない場合であってもよい。この場合には、ユーザーMが揺動枠体を揺動させて垂直方向に立ち上げたり水平方向に戻したりする操作が必要になる。
【0016】
引き出し1は、引き出し本体3の底板6上の収納部7にも、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1をキャビネット12に収納して、揺動枠体5がほぼ水平方向を向いている状態で、引き出し本体3の収納部7が下段で、揺動枠体5が上段となる二段の収納状態になっている(図2〜図4)。
すなわち、引き出し1がキャビネット12に収納されて、揺動枠体5がほぼ水平になっているとき、引き出し本体3の収納部7が下段の収納部となって、この収納部7に被収納物2が収納されている。
他方、引き出し本体3とほぼ平行の姿勢でその上方に位置する揺動枠体5が上段の収納部となって、調理の際に頻繁に使用するレードルなどの調理用器具(被収納物2)が、揺動枠体5にきれいに整列して収納されている。
こうして、引き出し1では、上下二段の収納ができるので、シンク22のすぐ下の空間Sが有効に利用される。また、引き出し本体3の上部空間を揺動枠体5で無駄なく利用しているので、引き出し1における被収納物2を収納する能力が向上し、引き出し1に多くの被収納物2を収納することができる。
【0017】
キャビネット12に設けられたすべての引き出しは、受けレールとスライド部材により引き出し収納自在になっており、また、収納状態の引き出しの前板をユーザーMが後方に押せば、スライド部材などに内蔵された付勢手段(ばねなど)の付勢力(ばね力)により前方に若干押し出されるようになっている。したがって、各引き出しには把手が設けられていない。
各キャビネット13〜16の内方の左右には、側板35が縦方向(床面と垂直方向)に設けられ、側板35はキャビネット12の一部を構成している。隣り合うキャビネット13〜16同士のあいだの側板35は仕切り壁の機能を有している。コンロキャビネット13の左側の側板と、他方の調理台キャビネット16の右側の側板35は、外壁板としての機能を有している。
【0018】
引き出し1の左右に配置されている側板35には、左右一対の受けレール34が取付けられている。一対の受けレール34は、前後方向を向いてほぼ水平に且つ平行に配置されている。
受けレール34には、スライド部材36が前後方向にスライド自在に係合している。一対のスライド部材36は、引き出し本体3の左右両側に取付けられている。こうして、引き出し1は、一対の受けレール34と一対のスライド部材36を介して、キャビネット12に対して前後方向に自在に移動する。
【0019】
シンクキャビネット15において、シンク22には排水口37が形成されており、排水口37の下部には排水トラップ38が取付けられている。排水トラップ38には排水用の配管39が接続されて、シンク22からの排水を流すようになっている。
排水トラップ38および配管39などが、シンクキャビネット15における後方の内部空間S1に配置されている。水栓装置21に接続された給水用の配管および弁(図示せず)なども、シンクキャビネット15の後方の内部空間S1に配置されている。
したがって、シンクキャビネット15に設けられる引き出し1,25,28は、これら排水口37,排水トラップ38,配管類(たとえば、配管39)および弁などと干渉しないように考慮された形状,寸法を有している。
【0020】
従来のシンクキャビネットでは、シンク22の下方に形成された排水口37や排水トラップ38などが邪魔になるので、シンクのすぐ前方には幕板が固定されて、引き出しを設けない場合が多かった。
これに対して、本発明では、シンク22に対応する位置に引き出し1を設けることができるので、シンク22のすぐ下の空間Sを、デッドスペースにすることなく有効利用することができる。
【0021】
図7ないし図11に示すように、引き出し1において、引き出し本体3の左右方向の中央部に収納部7が設けられており、収納部7の左側と右側に、補助収納部47,48がそれぞれ設けられている。
収納部7,補助収納部47,48は、それぞれ被収納物2を適切に分類して収納可能になっており、出し入れし易い所定形状に形成されている。たとえば、収納部7には、嵩張らず比較的厚みの薄い台所用品などが被収納物2として収納され、補助収納部47には、箸,ナイフ,フォークなどが被収納物として収納され、補助収納部48には、包丁などが被収納物として収納されている。
なお、引き出し本体3に収納部7を設け、この収納部7に被収納物2を収納可能にしているが、収納部7を設けずに、揺動枠体5のみの一段の収納状態になるようにしてもよい。
このように本発明の引き出し1では、調理作業で使用するすべての調理用器具を引き出し1に収納することができるので、能率よく調理作業を行うことができる。
【0022】
揺動枠体5は、引き出し本体3の中央の収納部7の後部の連結部で、引き出し本体3に連結されている。すなわち、揺動枠体5は、一つまたは複数(ここでは、二つ)のヒンジ部材49を介して引き出し本体3に取付けられており、揺動中心軸CLを中心として揺動自在になっている。ヒンジ部材49はばね27を有しており、揺動枠体5は、ばね27のばね力により、引き出し本体3に対して自動的に立ち上がるように付勢されている。
揺動枠体5が揺動して立ち上がって、その枠先端60が上方を向いている状態で、揺動枠体5の枠後端61が揺動中心軸CLより所定寸法Eだけ下方に位置するように、揺動枠体5の根元部59は、揺動中心軸CLより所定寸法Eだけ延びて形成されている。
したがって、揺動枠体5の枠先端60から枠後端61までの長さ寸法Lを長くしても、揺動枠体5が揺動動作をしたときに周囲の部材と干渉する恐れがなくなり、レードルなどの比較的長い形状の被収納物2を、揺動枠体5に収納することができる。
【0023】
引き出し本体3に補助収納部47,48を設けたので、揺動枠体5の左右方向の幅寸法W1は引き出し本体3の左右方向の幅寸法W2より小さくなっている。また、揺動枠体5は、アルミニウムにより一体成形されている。
このように、揺動枠体5を小型化するとともに軽い材料で形成している。その結果、ヒンジ部材49に設けられたばね27のばね力をそれほど強くしなくても、揺動枠体5は、ばね力により自動的に揺動して容易に立ち上がることができる。
【0024】
揺動枠体5には、弾性変形可能な保持部材50が、左右方向を向いて所定位置に固定されている。保持部材50には、保持手段としての複数の凹部51が並んで形成されている。レードルなどの被収納物2を、保持部材50の弾性力に抗して凹部51に係合させれば、凹部51が弾性変形して被収納物2を位置決め保持することができる(図6の状態)。
被収納物2は保持部材50の弾性によりしっかりと保持されているので、揺動枠体5が揺動して立ち上がると、被収納物2もほぼ垂直方向を向く。また、揺動枠体5がほぼ水平の姿勢になると、これに保持されている被収納物2もほぼ水平の姿勢になる。
【0025】
図1ないし図11に示すように、左右の側板35のあいだには、案内部材としての一本のガイド棒46が掛け渡されている。このガイド棒46は、揺動枠体5の背面45と摺接して、揺動枠体5の揺動動作を案内する機能を有している。
ガイド棒46はまっすぐの丸棒であり、シンク22のすぐ下の空間Sで且つ前面に近い位置に配置され、左右方向に延びて固定されている。揺動枠体5の背面45とガイド棒46は、滑らかに摺接するようになっている。
揺動枠体5の背面45は、揺動中心すなわちヒンジ部材49に近い位置に形成された曲面部52と、曲面部52から連続的に延びて形成された平面部53とにより構成されている。
引き出し本体3の下面54には、衝撃緩衝手段としてのダンパ部材55が取付けられている。揺動枠体5の根元部59の端面57が、ダンパ部材55の出没片56に当接可能になっている。
【0026】
揺動枠体5が、ばね27のばね力により自動的に揺動して立ち上がると、揺動枠体5の端面57が、ダンパ部材55の出没片56に当接してこれを押し込む。引き出し本体3の後端面58に、揺動枠体5の端面57が当接すると、それ以上揺動枠体5が揺動せず立ち上がった姿勢を維持するようになっており、端面57と後端面58がストッパの機能を発揮する。
ダンパ部材55はショックアブソーバの機能を有しているので、出没片56がクッションの機能を発揮して、揺動枠体5の揺動動作の衝撃が吸収される。これにより、揺動枠体5は、滑らかな揺動動作で且つ騒音を発生することなく立ち上がって、ほぼ垂直方向を向くことになる。
【0027】
次に、引き出し1を引き出し収納する場合の動作について説明する。
図3ないし図11に示すように、引き出し1がキャビネット12に収納されているときは、ガイド棒46が、揺動枠体5の背面45のうち平面部53をばね27のばね力に抗して下方に押し付けている。その結果、揺動枠体5はほぼ水平の姿勢を維持している。
次に、引き出し1を矢印Bに示すように前方に引き出すと、背面45がガイド棒46と摺接しながら、揺動枠体5も前方に移動する。ガイド棒46が揺動枠体5の平面部53と摺接しているあいだは、揺動枠体5はほぼ水平の姿勢を維持したままである。
やがて、揺動枠体5の曲面部52が、ガイド棒46のところに達して接触し始めると、ガイド棒46による下方への押圧力が次第に小さくなる。すると、揺動枠体5は、ばね27のばね力により、揺動中心軸CLを中心として、矢印Gに示すように自動的に揺動動作を開始する。
さらに、引き出し1を前方に引き出すと、揺動枠体5は、立ち上がってほぼ垂直方向を向くとともに、その背面45はガイド棒46から離れる。このようにして、引き出し1の前方への移動動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向を向くように揺動する。
【0028】
こうして引き出された引き出し1では、揺動枠体5はほぼ垂直方向に立ち上がっているので、揺動枠体5に保持された被収納物2は、ユーザーMに対向して整列している。また、引き出し本体3の収納部7に収納された被収納物2も、揺動枠体5に邪魔されることなく露出している。さらに、補助収納部47,48は揺動枠体5の動作に無関係なので、これら補助収納部47,48に収納されている被収納物も露出している。
したがって、ユーザーMは、収納済みの被収納物の全体を一目で観察して、必要な被収納物2を、他の被収納物の影響を受けることなく容易に出し入れすることができる。
たとえば、揺動枠体5に関して、ユーザーMは、使用したい調理用器具(収納済みの被収納物2)や収納すべき場所(空の凹部51)を、時間を掛けて探すことなく直ちに見付けて、この調理用器具を揺動枠体5から取外したり、空の凹部51のところに調理用器具を装着することができる。
揺動枠体5がユーザーMに対向して立ち上がっているので、調理用器具を、ほぼ垂直方向に向けたままで揺動枠体5に対して容易に着脱することができる。また、揺動枠体5が邪魔になることなく、収納部7,補助収納部47,48に対しても被収納物の出し入れが容易に行える。
このように、引き出し1の使用が簡単になるので、調理作業を短時間で効率的に行うことができる。
【0029】
引き出し1に対して被収納物2の出し入れを行なったのち、引き出し1の前板4を後方に押す。すると、揺動枠体5は、その背面45がガイド棒46に接触したのち摺接しながら、前記動作と反対の動作を行なう。すなわち、揺動枠体5は、ほぼ垂直に立ち上がっている姿勢から、揺動して徐々にほぼ水平の姿勢になり、やがて、引き出し1はキャビネット12に収納される。
こうして、引き出し1をキャビネット12に収納したのち、ユーザーMは調理作業を行うことになる。
【0030】
引き出し1がキャビネット12に収納されると、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。この状態では、引き出し本体3の収納部7が下段で、その上方に位置する揺動枠体5が上段となる二段の収納状態である。
こうして揺動枠体5が折り畳まれた状態の引き出し1は、シンク22のすぐ下の空間Sに収納されていることになり、この空間Sが有効に利用されている。
【0031】
上述のように、引き出し1が前後方向に移動する直線動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動する。
したがって、ユーザーMは、揺動枠体5を立ち上げたり、立ち上がった揺動枠体5を水平にするといった別途の操作が不要になる。その結果、ユーザーMは引き出し1の引き出し収納動作のみを行えばよく、操作が極めて簡単である。
すなわち、揺動枠体5を揺動させる操作は不要であり、ユーザーMは、引き出し1を引き出すというワンアクションのみを行えば、引き出し1に対して被収納物2を容易に出し入れすることができる。
【0032】
揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向側に付勢されている。したがって、揺動枠体5の背面45がガイド棒46に摺接しながら引き出し1が前方に引き出されると、背面45がばね力によりガイド棒46を押圧する反力として、引き出し1を前方に押し出す力が発生する。
このように、ばね27は、揺動枠体5を揺動させて垂直方向に立ち上げるためのばね力を発揮する第1の機能と、引き出し1を前方に押し出そうとする力を発生する第2の機能とを有している。
ばね27がこの第2の機能を発揮するので、ユーザーMは、引き出し1を前方に軽く引っ張れば容易に引き出すことができる。
【0033】
揺動枠体5は、引き出し1の上部空間を使って立体的に揺動動作を行うので、揺動枠体5の揺動動作は、引き出し1を平面視で見た場合の引き出し1のエリアから外方に飛び出すことなく、このエリア内で完結している。
したがって、引き出し1のエリア外(平面視で見た場合のエリア外)に関する設計や製作に悪影響を及ぼす恐れはない。また、ユーザーMにとっても、引き出し1に対して被収納物の出し入れを行う際や調理を行う際に、揺動枠体5が邪魔になる恐れはない。
【0034】
(第2実施例)
図12に示す第2実施例では、住宅設備機器としてのシステムキッチン10aにおいて、一方の調理台キャビネット14に本発明の引き出し1aを設け、シンク22のすぐ前方には幕板30が固定されている。
なお、シンク22のところにも、幕板30の代わりに第1実施例の引き出し1をさらに設けた場合であってもよい。また、第1実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0035】
引き出し1aでは、揺動枠体5を引き出し本体3の幅方向一杯に配置している。すなわち、第1実施例での補助収納部47,48を省略して、揺動枠体5に対応する収納部7を左右に広げた場合を示している。その結果、揺動枠体5の左右方向の幅寸法W1が、引き出し本体3の左右方向の幅寸法W2より若干小さい寸法かまたはほぼ同じ寸法になっている。
引き出し1aは、システムキッチン10aのキャビネット12に引き出し収納自在に設けられ、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1aは、前後方向に移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体3に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。
そして、引き出し1aを前方(D3方向)に引き出して、揺動枠体5を立ち上げた状態で、揺動枠体5に保持されている被収納物2が、ユーザーMに対向して位置するようにしている。
したがって、引き出し1aを前方に引き出したとき、ユーザーMは、収納済みの被収納物2の全体を一目で観察することができ、また、被収納物2を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出し1aに対して容易に着脱することができる。
【0036】
揺動枠体5は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように、引き出し本体3に支持されるとともに、付勢手段としてのばね27(図10)によりほぼ垂直方向側に付勢されている。
そして、引き出し1aがキャビネット12に収納されているときは、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。引き出し1aが前後方向に移動する直線動作に連動して、揺動枠体5は、付勢手段(ばね27)の付勢力(ばね力)によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能である。
引き出し本体3の底板上の収納部7にも、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1aをキャビネット12に収納して、揺動枠体5がほぼ水平方向を向いている状態で、引き出し本体3の収納部7が下段で、揺動枠体5が上段となる二段の収納状態になっている。したがって、引き出し1aは、第1実施例の引き出し1と同じ作用効果を奏する。
【0037】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、システムキッチンや収納庫など住宅設備機器のキャビネットに設けられる引き出しに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1ないし図11は本発明の第1実施例を示す図で、図1はシステムキッチンの斜視図である。
【図2】システムキッチンの断面図である。
【図3】システムキッチンの断面図で、引き出しの動作を示している。
【図4】引き出しが収納されている状態を示す斜視図である。
【図5】引き出しを引き出す途中の状態を示す斜視図である。
【図6】引き出しを引き出した状態を示す斜視図である。
【図7】引き出しの斜視図である。
【図8】引き出しの分解斜視図である。
【図9】揺動枠体の支持構造を示す部分拡大図である。
【図10】揺動枠体を支持するヒンジ部材の斜視図である。
【図11】揺動枠体が当接するダンパ部材の斜視図である。
【図12】本発明の第2実施例を示す図で、調理台キャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a 引き出し
2 被収納物
3 引き出し本体
5 揺動枠体
6 底板
7 収納部
10,10a システムキッチン(住宅設備機器)
12 キャビネット
14 調理台キャビネット(キャビネット)
15 シンクキャビネット(キャビネット)
22 シンク
27 ばね(付勢手段)
59 根元部
60 枠先端
61 枠後端
CL 揺動中心軸
E 所定寸法
M ユーザー
S 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しおよびこれを有する住宅設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンなど住宅設備機器は、被収納物を収納するための引き出しを備えている場合が多い。たとえば、特許文献1(特開2003−189954号公報)には、補助収納部を有する引き出し構造が記載されている。
この引き出し構造では、引き出しの前面部(本発明の前板に相当)が、補助的な収納部として構成されている補助収納部になっている。そして、この補助収納部は、引き出しの開閉のための前後運動とは独立して開閉するようになっている。
【特許文献1】特開2003−189954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の引き出し構造は、前面部の裏側の補助収納部に被収納物を収納するとともに、補助収納部を揺動運動で開閉するようになっている。
そのため、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザー(使用者)は収納済みの被収納物をすぐに直接見ることはできず、補助収納部を揺動させる必要があった。また、補助収納部が前面部の裏側にあるので、被収納物を補助収納部に対して出し入れするのが困難であった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱することができる住宅設備機器の引き出しおよびこれを有する住宅設備機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる住宅設備機器の引き出しは、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しであって、前後方向に移動自在に前記キャビネットに設けられた引き出し本体と、揺動して立ち上がることができるように前記引き出し本体に支持され、前記被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備え、前記引き出しを前方に引き出して前記揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている前記被収納物がユーザーに対向して位置するように構成されている。
前記揺動枠体は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように前記引き出し本体に支持されるとともに、付勢手段によりほぼ垂直方向側に付勢されており、前記引き出しが前記キャビネットに収納されているときは、前記揺動枠体はほぼ水平方向を向き、前記引き出しが前後方向に移動する直線動作に連動して、前記揺動枠体は、前記付勢手段の付勢力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながらほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能であるのが好ましい。
本発明の一実施態様として、前記引き出し本体の底板上の収納部にも前記被収納物を収納可能になっており、前記引き出しを前記キャビネットに収納して前記揺動枠体がほぼ水平方向を向いている状態で、前記引き出し本体の前記収納部が下段で前記揺動枠体が上段となる二段の収納状態であるのが好ましい。
前記揺動枠体が揺動して立ち上がって、その枠先端が上方を向いている状態で、前記揺動枠体の枠後端が揺動中心軸より所定寸法だけ下方に位置するように、前記揺動枠体の根元部は、前記揺動中心軸より前記所定寸法だけ延びて形成されているのが好ましい。
一例として、前記キャビネットは、シンクを含むシンクキャビネットを有しており、前記引き出しは、このシンクキャビネットに設けられるとともに前記シンクのすぐ下の空間を利用して配置されているのが好ましい。
本発明にかかる住宅設備機器は、前記引き出しが前記キャビネットに引き出し収納自在に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる住宅設備機器の引き出しおよびこれを有する住宅設備機器は、上述のように構成したので、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
下記の実施例にかかる引き出しは、住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能になっている。この引き出しは、収納用空間を有する引き出し本体と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体に支持され、被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備えている。そして、引き出しを前方に引き出して揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている被収納物がユーザーに対向して位置するようになっている。
これにより、引き出しを前方に引き出したとき、ユーザーは、収納済みの被収納物全体を一目で観察することができ、また、被収納物を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出しに対して容易に着脱可能にするという目的を実現している。
【0008】
本発明における住宅設備機器としては、台所に設置されるキッチン(たとえば、複合厨房家具の一種であるシステムキッチン,セクショナルキッチン)、食器や食品などを収納する収納庫、および台所の流し台などの厨房家具が一般的である。
本発明の引き出しは、洗面化粧台や洗面収納キャビネットなどの洗面機器、およびその他の住宅設備機器にも適用可能である。下記の実施例では、引き出しをシステムキッチンに設けた場合を例にとって説明する。
【実施例】
【0009】
以下、本発明にかかる実施例を図1ないし図12を参照して説明する。
図1ないし図11は本発明の第1実施例を示す図で、図1は、シンクキャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。図2はシステムキッチンの断面図、図3は、システムキッチンの断面図で、引き出しの動作を示している。
図4ないし図6は揺動枠体の動作を示す斜視図で、図4は、引き出しが収納されている状態を示している。図5は、引き出しを引き出す途中の状態を示しており、図6は、引き出しを引き出した状態を示している。
図7および図8は、それぞれ引き出しの斜視図および分解斜視図である。図9は、揺動枠体の支持構造を示す部分拡大図で、図9(A)は揺動途中の状態を示し、図9(B)は揺動枠体が立ち上がった状態を示している。図10は、揺動枠体を支持するヒンジ部材の斜視図、図11は、揺動枠体が当接するダンパ部材の斜視図である。
図12は、本発明の第2実施例を示す図で、調理台キャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。
なお、説明の便宜上、各図中の符号D1,D2,D3,D4で示す各方向を、それぞれシステムキッチンの左方,右方,前方,後方とする。
【0010】
(第1実施例)
図1に示すように、住宅設備機器としてのシステムキッチン10は、台所11に設置されている。本発明にかかる引き出し1は、システムキッチン10のキャビネット12に引き出し収納自在に設けられ、被収納物2を収納可能になっている。
キャビネット12は床面上に設置されている。キャビネット12は、コンロキャビネット13,一方の調理台キャビネット14,シンクキャビネット15および他方の調理台キャビネット16などが順次並設された構成であり、ワークトップ17が、キャビネット13〜16の上部を覆って取付けられている。キャビネット12には、引き出し1のほかに、各種形状,構造の複数の引き出しが、引き出し収納自在に設けられている。
【0011】
コンロキャビネット13には、グリル18を有するIHクッキングヒータ19,引き出し20,足下の引き出し28などが設けられて、単体としての厨房家具が構成されている。一方の調理台キャビネット14は、引き出し23,24,足下の引き出し28などを有して、単体としての厨房家具を構成している。
シンクキャビネット15の上部のワークトップ17には、水栓装置21やシンク22が設けられている。シンクキャビネット15は、引き出し1のほかに、水栓装置21,シンク22,他の引き出し25,足下の引き出し28などを有して、単体としての厨房家具を構成している。
他方の調理台キャビネット16は、ビルトインにより設けられた食器洗い乾燥機26と、引き出し29とを有して、単体としての厨房家具を構成している。調理台キャビネット14,16の上部のワークトップ17は、調理台になっている。
こうして、システムキッチン10は、単体としての厨房家具が複合した複合厨房家具を構成している。
【0012】
図1ないし図11に示す第1実施例では、シンク22を含むシンクキャビネット15に引き出し1が設けられ、この引き出し1は、シンク22のすぐ下の空間Sを利用して配置されている。これにより、従来は利用されていなかったシンク22のすぐ下の空間Sを有効利用して、被収納物2を収納することができる。
引き出し1は、前後方向(D3,D4方向)に移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体3に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。引き出し本体3は、前方に位置して固定された前板4を有している。
そして、引き出し1を前方(D3方向)に引き出して揺動枠体5を立ち上げた状態で、揺動枠体5に保持されている被収納物2が、ユーザー(使用者)Mに対向して位置する。したがって、引き出し1を前方に引き出したとき、ユーザーMは、収納済みの被収納物2の全体を一目で観察することができ、また、被収納物2を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出し1に対して容易に着脱することができる。
【0013】
第1実施例では、引き出し1が、キャビネット12を構成するシンクキャビネット15に設けられて、ワークトップ17のすぐ下に配置された場合を示している。また、後述する第2実施例(図12)では、本発明の引き出し1aが、キャビネット12を構成する一方の調理台キャビネット14に設けられて、ワークトップ17のすぐ下に配置された場合を示している。
このように、本発明の引き出し1,1aが、ワークトップ17のすぐ下(すなわち、キャビネット12の最上部)に配置されているので、調理時に頻繁に使用する被収納物2(たとえば、レードルやその他の調理用器具)を揺動枠体5で位置決め保持することができる。したがって、ユーザーMは、被収納物2を揺動枠体5に対して迅速に着脱することができ、能率よく調理作業ができる。
なお、引き出し1,1aを、キャビネット12の最上部以外の位置に配置したり、シンクキャビネット15,調理台キャビネット14以外のキャビネット13,16に設けた場合であってもよい。
【0014】
第1実施例にかかる引き出し1において、揺動枠体5は、ほぼ水平方向(図4)またはほぼ垂直方向(図6)を向いてその姿勢が変化するように、引き出し本体3に支持されるとともに、付勢手段としてのばね27によりほぼ垂直方向側に付勢されている。
引き出し1がキャビネット12に収納されているときは、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。引き出し1が前後方向に移動する直線動作(矢印Bに示す動作)に連動して、揺動枠体5は、付勢手段(ばね27)の付勢力(ばね力)によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能である。
図3では、引き出し1がキャビネット12に収納されている状態を実線で示している。また、引き出し1が前方または後方に移動する途中の状態を鎖線で示し、引き出し1が引き出されて最も前方に位置する状態を破線で示している。
【0015】
ばね27を設けたので、ユーザーMが引き出し1を前方に引き出すと、引き出し1の前進動作に連動して、揺動枠体5が、ばね27のばね力により自動的に立ち上がってほぼ垂直方向を向く。
また、ユーザーMが、引き出し1を後方(D4方向)に押して収納すると、引き出し1の後退動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力に抗してほぼ垂直方向からほぼ水平方向にその姿勢を変化させる。
その結果、ユーザーMがわざわざ揺動枠体5を垂直方向に立ち上げたり水平方向に戻す操作を行う必要はなくなり、引き出し1の使い勝手がよい。
なお、ばね27などの付勢手段を設けない場合であってもよい。この場合には、ユーザーMが揺動枠体を揺動させて垂直方向に立ち上げたり水平方向に戻したりする操作が必要になる。
【0016】
引き出し1は、引き出し本体3の底板6上の収納部7にも、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1をキャビネット12に収納して、揺動枠体5がほぼ水平方向を向いている状態で、引き出し本体3の収納部7が下段で、揺動枠体5が上段となる二段の収納状態になっている(図2〜図4)。
すなわち、引き出し1がキャビネット12に収納されて、揺動枠体5がほぼ水平になっているとき、引き出し本体3の収納部7が下段の収納部となって、この収納部7に被収納物2が収納されている。
他方、引き出し本体3とほぼ平行の姿勢でその上方に位置する揺動枠体5が上段の収納部となって、調理の際に頻繁に使用するレードルなどの調理用器具(被収納物2)が、揺動枠体5にきれいに整列して収納されている。
こうして、引き出し1では、上下二段の収納ができるので、シンク22のすぐ下の空間Sが有効に利用される。また、引き出し本体3の上部空間を揺動枠体5で無駄なく利用しているので、引き出し1における被収納物2を収納する能力が向上し、引き出し1に多くの被収納物2を収納することができる。
【0017】
キャビネット12に設けられたすべての引き出しは、受けレールとスライド部材により引き出し収納自在になっており、また、収納状態の引き出しの前板をユーザーMが後方に押せば、スライド部材などに内蔵された付勢手段(ばねなど)の付勢力(ばね力)により前方に若干押し出されるようになっている。したがって、各引き出しには把手が設けられていない。
各キャビネット13〜16の内方の左右には、側板35が縦方向(床面と垂直方向)に設けられ、側板35はキャビネット12の一部を構成している。隣り合うキャビネット13〜16同士のあいだの側板35は仕切り壁の機能を有している。コンロキャビネット13の左側の側板と、他方の調理台キャビネット16の右側の側板35は、外壁板としての機能を有している。
【0018】
引き出し1の左右に配置されている側板35には、左右一対の受けレール34が取付けられている。一対の受けレール34は、前後方向を向いてほぼ水平に且つ平行に配置されている。
受けレール34には、スライド部材36が前後方向にスライド自在に係合している。一対のスライド部材36は、引き出し本体3の左右両側に取付けられている。こうして、引き出し1は、一対の受けレール34と一対のスライド部材36を介して、キャビネット12に対して前後方向に自在に移動する。
【0019】
シンクキャビネット15において、シンク22には排水口37が形成されており、排水口37の下部には排水トラップ38が取付けられている。排水トラップ38には排水用の配管39が接続されて、シンク22からの排水を流すようになっている。
排水トラップ38および配管39などが、シンクキャビネット15における後方の内部空間S1に配置されている。水栓装置21に接続された給水用の配管および弁(図示せず)なども、シンクキャビネット15の後方の内部空間S1に配置されている。
したがって、シンクキャビネット15に設けられる引き出し1,25,28は、これら排水口37,排水トラップ38,配管類(たとえば、配管39)および弁などと干渉しないように考慮された形状,寸法を有している。
【0020】
従来のシンクキャビネットでは、シンク22の下方に形成された排水口37や排水トラップ38などが邪魔になるので、シンクのすぐ前方には幕板が固定されて、引き出しを設けない場合が多かった。
これに対して、本発明では、シンク22に対応する位置に引き出し1を設けることができるので、シンク22のすぐ下の空間Sを、デッドスペースにすることなく有効利用することができる。
【0021】
図7ないし図11に示すように、引き出し1において、引き出し本体3の左右方向の中央部に収納部7が設けられており、収納部7の左側と右側に、補助収納部47,48がそれぞれ設けられている。
収納部7,補助収納部47,48は、それぞれ被収納物2を適切に分類して収納可能になっており、出し入れし易い所定形状に形成されている。たとえば、収納部7には、嵩張らず比較的厚みの薄い台所用品などが被収納物2として収納され、補助収納部47には、箸,ナイフ,フォークなどが被収納物として収納され、補助収納部48には、包丁などが被収納物として収納されている。
なお、引き出し本体3に収納部7を設け、この収納部7に被収納物2を収納可能にしているが、収納部7を設けずに、揺動枠体5のみの一段の収納状態になるようにしてもよい。
このように本発明の引き出し1では、調理作業で使用するすべての調理用器具を引き出し1に収納することができるので、能率よく調理作業を行うことができる。
【0022】
揺動枠体5は、引き出し本体3の中央の収納部7の後部の連結部で、引き出し本体3に連結されている。すなわち、揺動枠体5は、一つまたは複数(ここでは、二つ)のヒンジ部材49を介して引き出し本体3に取付けられており、揺動中心軸CLを中心として揺動自在になっている。ヒンジ部材49はばね27を有しており、揺動枠体5は、ばね27のばね力により、引き出し本体3に対して自動的に立ち上がるように付勢されている。
揺動枠体5が揺動して立ち上がって、その枠先端60が上方を向いている状態で、揺動枠体5の枠後端61が揺動中心軸CLより所定寸法Eだけ下方に位置するように、揺動枠体5の根元部59は、揺動中心軸CLより所定寸法Eだけ延びて形成されている。
したがって、揺動枠体5の枠先端60から枠後端61までの長さ寸法Lを長くしても、揺動枠体5が揺動動作をしたときに周囲の部材と干渉する恐れがなくなり、レードルなどの比較的長い形状の被収納物2を、揺動枠体5に収納することができる。
【0023】
引き出し本体3に補助収納部47,48を設けたので、揺動枠体5の左右方向の幅寸法W1は引き出し本体3の左右方向の幅寸法W2より小さくなっている。また、揺動枠体5は、アルミニウムにより一体成形されている。
このように、揺動枠体5を小型化するとともに軽い材料で形成している。その結果、ヒンジ部材49に設けられたばね27のばね力をそれほど強くしなくても、揺動枠体5は、ばね力により自動的に揺動して容易に立ち上がることができる。
【0024】
揺動枠体5には、弾性変形可能な保持部材50が、左右方向を向いて所定位置に固定されている。保持部材50には、保持手段としての複数の凹部51が並んで形成されている。レードルなどの被収納物2を、保持部材50の弾性力に抗して凹部51に係合させれば、凹部51が弾性変形して被収納物2を位置決め保持することができる(図6の状態)。
被収納物2は保持部材50の弾性によりしっかりと保持されているので、揺動枠体5が揺動して立ち上がると、被収納物2もほぼ垂直方向を向く。また、揺動枠体5がほぼ水平の姿勢になると、これに保持されている被収納物2もほぼ水平の姿勢になる。
【0025】
図1ないし図11に示すように、左右の側板35のあいだには、案内部材としての一本のガイド棒46が掛け渡されている。このガイド棒46は、揺動枠体5の背面45と摺接して、揺動枠体5の揺動動作を案内する機能を有している。
ガイド棒46はまっすぐの丸棒であり、シンク22のすぐ下の空間Sで且つ前面に近い位置に配置され、左右方向に延びて固定されている。揺動枠体5の背面45とガイド棒46は、滑らかに摺接するようになっている。
揺動枠体5の背面45は、揺動中心すなわちヒンジ部材49に近い位置に形成された曲面部52と、曲面部52から連続的に延びて形成された平面部53とにより構成されている。
引き出し本体3の下面54には、衝撃緩衝手段としてのダンパ部材55が取付けられている。揺動枠体5の根元部59の端面57が、ダンパ部材55の出没片56に当接可能になっている。
【0026】
揺動枠体5が、ばね27のばね力により自動的に揺動して立ち上がると、揺動枠体5の端面57が、ダンパ部材55の出没片56に当接してこれを押し込む。引き出し本体3の後端面58に、揺動枠体5の端面57が当接すると、それ以上揺動枠体5が揺動せず立ち上がった姿勢を維持するようになっており、端面57と後端面58がストッパの機能を発揮する。
ダンパ部材55はショックアブソーバの機能を有しているので、出没片56がクッションの機能を発揮して、揺動枠体5の揺動動作の衝撃が吸収される。これにより、揺動枠体5は、滑らかな揺動動作で且つ騒音を発生することなく立ち上がって、ほぼ垂直方向を向くことになる。
【0027】
次に、引き出し1を引き出し収納する場合の動作について説明する。
図3ないし図11に示すように、引き出し1がキャビネット12に収納されているときは、ガイド棒46が、揺動枠体5の背面45のうち平面部53をばね27のばね力に抗して下方に押し付けている。その結果、揺動枠体5はほぼ水平の姿勢を維持している。
次に、引き出し1を矢印Bに示すように前方に引き出すと、背面45がガイド棒46と摺接しながら、揺動枠体5も前方に移動する。ガイド棒46が揺動枠体5の平面部53と摺接しているあいだは、揺動枠体5はほぼ水平の姿勢を維持したままである。
やがて、揺動枠体5の曲面部52が、ガイド棒46のところに達して接触し始めると、ガイド棒46による下方への押圧力が次第に小さくなる。すると、揺動枠体5は、ばね27のばね力により、揺動中心軸CLを中心として、矢印Gに示すように自動的に揺動動作を開始する。
さらに、引き出し1を前方に引き出すと、揺動枠体5は、立ち上がってほぼ垂直方向を向くとともに、その背面45はガイド棒46から離れる。このようにして、引き出し1の前方への移動動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向を向くように揺動する。
【0028】
こうして引き出された引き出し1では、揺動枠体5はほぼ垂直方向に立ち上がっているので、揺動枠体5に保持された被収納物2は、ユーザーMに対向して整列している。また、引き出し本体3の収納部7に収納された被収納物2も、揺動枠体5に邪魔されることなく露出している。さらに、補助収納部47,48は揺動枠体5の動作に無関係なので、これら補助収納部47,48に収納されている被収納物も露出している。
したがって、ユーザーMは、収納済みの被収納物の全体を一目で観察して、必要な被収納物2を、他の被収納物の影響を受けることなく容易に出し入れすることができる。
たとえば、揺動枠体5に関して、ユーザーMは、使用したい調理用器具(収納済みの被収納物2)や収納すべき場所(空の凹部51)を、時間を掛けて探すことなく直ちに見付けて、この調理用器具を揺動枠体5から取外したり、空の凹部51のところに調理用器具を装着することができる。
揺動枠体5がユーザーMに対向して立ち上がっているので、調理用器具を、ほぼ垂直方向に向けたままで揺動枠体5に対して容易に着脱することができる。また、揺動枠体5が邪魔になることなく、収納部7,補助収納部47,48に対しても被収納物の出し入れが容易に行える。
このように、引き出し1の使用が簡単になるので、調理作業を短時間で効率的に行うことができる。
【0029】
引き出し1に対して被収納物2の出し入れを行なったのち、引き出し1の前板4を後方に押す。すると、揺動枠体5は、その背面45がガイド棒46に接触したのち摺接しながら、前記動作と反対の動作を行なう。すなわち、揺動枠体5は、ほぼ垂直に立ち上がっている姿勢から、揺動して徐々にほぼ水平の姿勢になり、やがて、引き出し1はキャビネット12に収納される。
こうして、引き出し1をキャビネット12に収納したのち、ユーザーMは調理作業を行うことになる。
【0030】
引き出し1がキャビネット12に収納されると、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。この状態では、引き出し本体3の収納部7が下段で、その上方に位置する揺動枠体5が上段となる二段の収納状態である。
こうして揺動枠体5が折り畳まれた状態の引き出し1は、シンク22のすぐ下の空間Sに収納されていることになり、この空間Sが有効に利用されている。
【0031】
上述のように、引き出し1が前後方向に移動する直線動作に連動して、揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動する。
したがって、ユーザーMは、揺動枠体5を立ち上げたり、立ち上がった揺動枠体5を水平にするといった別途の操作が不要になる。その結果、ユーザーMは引き出し1の引き出し収納動作のみを行えばよく、操作が極めて簡単である。
すなわち、揺動枠体5を揺動させる操作は不要であり、ユーザーMは、引き出し1を引き出すというワンアクションのみを行えば、引き出し1に対して被収納物2を容易に出し入れすることができる。
【0032】
揺動枠体5は、ばね27のばね力によりほぼ垂直方向側に付勢されている。したがって、揺動枠体5の背面45がガイド棒46に摺接しながら引き出し1が前方に引き出されると、背面45がばね力によりガイド棒46を押圧する反力として、引き出し1を前方に押し出す力が発生する。
このように、ばね27は、揺動枠体5を揺動させて垂直方向に立ち上げるためのばね力を発揮する第1の機能と、引き出し1を前方に押し出そうとする力を発生する第2の機能とを有している。
ばね27がこの第2の機能を発揮するので、ユーザーMは、引き出し1を前方に軽く引っ張れば容易に引き出すことができる。
【0033】
揺動枠体5は、引き出し1の上部空間を使って立体的に揺動動作を行うので、揺動枠体5の揺動動作は、引き出し1を平面視で見た場合の引き出し1のエリアから外方に飛び出すことなく、このエリア内で完結している。
したがって、引き出し1のエリア外(平面視で見た場合のエリア外)に関する設計や製作に悪影響を及ぼす恐れはない。また、ユーザーMにとっても、引き出し1に対して被収納物の出し入れを行う際や調理を行う際に、揺動枠体5が邪魔になる恐れはない。
【0034】
(第2実施例)
図12に示す第2実施例では、住宅設備機器としてのシステムキッチン10aにおいて、一方の調理台キャビネット14に本発明の引き出し1aを設け、シンク22のすぐ前方には幕板30が固定されている。
なお、シンク22のところにも、幕板30の代わりに第1実施例の引き出し1をさらに設けた場合であってもよい。また、第1実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0035】
引き出し1aでは、揺動枠体5を引き出し本体3の幅方向一杯に配置している。すなわち、第1実施例での補助収納部47,48を省略して、揺動枠体5に対応する収納部7を左右に広げた場合を示している。その結果、揺動枠体5の左右方向の幅寸法W1が、引き出し本体3の左右方向の幅寸法W2より若干小さい寸法かまたはほぼ同じ寸法になっている。
引き出し1aは、システムキッチン10aのキャビネット12に引き出し収納自在に設けられ、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1aは、前後方向に移動自在にキャビネット12に設けられた引き出し本体3と、揺動して立ち上がることができるように引き出し本体3に支持され、被収納物2を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体5とを備えている。
そして、引き出し1aを前方(D3方向)に引き出して、揺動枠体5を立ち上げた状態で、揺動枠体5に保持されている被収納物2が、ユーザーMに対向して位置するようにしている。
したがって、引き出し1aを前方に引き出したとき、ユーザーMは、収納済みの被収納物2の全体を一目で観察することができ、また、被収納物2を、ほぼ垂直方向に向けたままで引き出し1aに対して容易に着脱することができる。
【0036】
揺動枠体5は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように、引き出し本体3に支持されるとともに、付勢手段としてのばね27(図10)によりほぼ垂直方向側に付勢されている。
そして、引き出し1aがキャビネット12に収納されているときは、揺動枠体5はほぼ水平方向を向いている。引き出し1aが前後方向に移動する直線動作に連動して、揺動枠体5は、付勢手段(ばね27)の付勢力(ばね力)によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながら、ほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能である。
引き出し本体3の底板上の収納部7にも、被収納物2を収納可能になっている。引き出し1aをキャビネット12に収納して、揺動枠体5がほぼ水平方向を向いている状態で、引き出し本体3の収納部7が下段で、揺動枠体5が上段となる二段の収納状態になっている。したがって、引き出し1aは、第1実施例の引き出し1と同じ作用効果を奏する。
【0037】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、システムキッチンや収納庫など住宅設備機器のキャビネットに設けられる引き出しに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1ないし図11は本発明の第1実施例を示す図で、図1はシステムキッチンの斜視図である。
【図2】システムキッチンの断面図である。
【図3】システムキッチンの断面図で、引き出しの動作を示している。
【図4】引き出しが収納されている状態を示す斜視図である。
【図5】引き出しを引き出す途中の状態を示す斜視図である。
【図6】引き出しを引き出した状態を示す斜視図である。
【図7】引き出しの斜視図である。
【図8】引き出しの分解斜視図である。
【図9】揺動枠体の支持構造を示す部分拡大図である。
【図10】揺動枠体を支持するヒンジ部材の斜視図である。
【図11】揺動枠体が当接するダンパ部材の斜視図である。
【図12】本発明の第2実施例を示す図で、調理台キャビネットに本発明の引き出しが設けられたシステムキッチンの斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a 引き出し
2 被収納物
3 引き出し本体
5 揺動枠体
6 底板
7 収納部
10,10a システムキッチン(住宅設備機器)
12 キャビネット
14 調理台キャビネット(キャビネット)
15 シンクキャビネット(キャビネット)
22 シンク
27 ばね(付勢手段)
59 根元部
60 枠先端
61 枠後端
CL 揺動中心軸
E 所定寸法
M ユーザー
S 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しであって、
前後方向に移動自在に前記キャビネットに設けられた引き出し本体と、
揺動して立ち上がることができるように前記引き出し本体に支持され、前記被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備え、
前記引き出しを前方に引き出して前記揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている前記被収納物がユーザーに対向して位置するようにしたことを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅設備機器の引き出しであって、
前記揺動枠体は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように前記引き出し本体に支持されるとともに、付勢手段によりほぼ垂直方向側に付勢されており、
前記引き出しが前記キャビネットに収納されているときは、前記揺動枠体はほぼ水平方向を向き、
前記引き出しが前後方向に移動する直線動作に連動して、前記揺動枠体は、前記付勢手段の付勢力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながらほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能であることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項3】
請求項1または2に記載の引き出しであって、
前記引き出し本体の底板上の収納部にも前記被収納物を収納可能になっており、
前記引き出しを前記キャビネットに収納して前記揺動枠体がほぼ水平方向を向いている状態で、前記引き出し本体の前記収納部が下段で前記揺動枠体が上段となる二段の収納状態であることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載の引き出しであって、
前記揺動枠体が揺動して立ち上がって、その枠先端が上方を向いている状態で、前記揺動枠体の枠後端が揺動中心軸より所定寸法だけ下方に位置するように、前記揺動枠体の根元部は、前記揺動中心軸より前記所定寸法だけ延びて形成されていることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載の引き出しであって、
前記キャビネットは、シンクを含むシンクキャビネットを有しており、前記引き出しは、このシンクキャビネットに設けられるとともに前記シンクのすぐ下の空間を利用して配置されていることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の前記引き出しが前記キャビネットに引き出し収納自在に設けられていることを特徴とする引き出しを有する住宅設備機器。
【請求項1】
住宅設備機器のキャビネットに引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能な引き出しであって、
前後方向に移動自在に前記キャビネットに設けられた引き出し本体と、
揺動して立ち上がることができるように前記引き出し本体に支持され、前記被収納物を着脱可能に位置決め保持する揺動枠体とを備え、
前記引き出しを前方に引き出して前記揺動枠体を立ち上げた状態で、この揺動枠体に保持されている前記被収納物がユーザーに対向して位置するようにしたことを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅設備機器の引き出しであって、
前記揺動枠体は、ほぼ水平方向またはほぼ垂直方向を向いてその姿勢が変化するように前記引き出し本体に支持されるとともに、付勢手段によりほぼ垂直方向側に付勢されており、
前記引き出しが前記キャビネットに収納されているときは、前記揺動枠体はほぼ水平方向を向き、
前記引き出しが前後方向に移動する直線動作に連動して、前記揺動枠体は、前記付勢手段の付勢力によりほぼ垂直方向を向くように付勢されながらほぼ水平方向とほぼ垂直方向を向くように揺動可能であることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項3】
請求項1または2に記載の引き出しであって、
前記引き出し本体の底板上の収納部にも前記被収納物を収納可能になっており、
前記引き出しを前記キャビネットに収納して前記揺動枠体がほぼ水平方向を向いている状態で、前記引き出し本体の前記収納部が下段で前記揺動枠体が上段となる二段の収納状態であることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載の引き出しであって、
前記揺動枠体が揺動して立ち上がって、その枠先端が上方を向いている状態で、前記揺動枠体の枠後端が揺動中心軸より所定寸法だけ下方に位置するように、前記揺動枠体の根元部は、前記揺動中心軸より前記所定寸法だけ延びて形成されていることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載の引き出しであって、
前記キャビネットは、シンクを含むシンクキャビネットを有しており、前記引き出しは、このシンクキャビネットに設けられるとともに前記シンクのすぐ下の空間を利用して配置されていることを特徴とする住宅設備機器の引き出し。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の前記引き出しが前記キャビネットに引き出し収納自在に設けられていることを特徴とする引き出しを有する住宅設備機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−132205(P2008−132205A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321170(P2006−321170)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】
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