説明

体動判定装置

【課題】使用者の体動を検出し、歩行及び/又は走行のピッチやバランスを判定することができる体動判定装置を提供する。
【解決手段】使用者の体動情報を取得する体動情報取得手段と、体動情報取得手段が取得した体動情報に基づいて使用者の体動が歩行か否かを判定する歩行判定手段と、歩行判定手段によって歩行であると判定された体動情報を用いて使用者の歩行状態を判定する体動判定手段と、を備える。歩行状態には、使用者の歩行のピッチの一定性、及び/又は、使用者の歩行の左右のバランスを含む。体動情報は、使用者の体動により生ずる加速度値であり、生体情報取得手段は、少なくとも、使用者の体動についての左右方向及び上下方向の加速度値を検出可能な加速度センサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体動判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の体動を判定する装置の一つとして歩数計があり、使用者の体動を検出して、歩行(走行を含む。以下同じ。)か否かを判定したり、歩行と判定した場合には歩数(ステップ)をカウントしたり、更には、この歩数に応じた消費エネルギーを算出したりすることが可能となっている。また、その他の体動判定装置としては、例えば、特許文献1に示すようなものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−191580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の歩数計では、使用者が歩行を行っていることを判定したり、その歩数をカウントしたりすることはできても、使用者が、リズムよく左右の脚を一定のピッチで踏み出して歩行しているか否か、更には、左右のいずれに偏った歩行であるのか、というような、歩行の仕方を評価することはできないものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、使用者の体動を検出し、歩行及び/又は走行のピッチやバランスを判定することができる体動判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の体動判定装置は、使用者の体動情報を取得する体動情報取得手段と、前記体動情報取得手段が取得した体動情報に基づいて前記使用者の体動が歩行か否かを判定する歩行判定手段と、前記歩行判定手段によって歩行であると判定された体動情報を用いて前記使用者の歩行状態を判定する体動判定手段と、を備えることを特徴とする。なお、本発明において、歩行の語には走行の意味を含むものとする。
【0007】
また、本発明の体動判定装置の前記歩行状態には、前記使用者の歩行のピッチの一定性、及び/又は、前記使用者の歩行の左右のバランスを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の体動判定装置の前記体動情報は、前記使用者の体動により生ずる加速度値であり、前記生体情報取得手段は、少なくとも、前記使用者の体動についての左右方向及び上下方向の加速度値を検出可能な加速度センサであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の体動判定装置において、前記使用者の歩行のピッチの一定性は、前記使用者の歩行に対応する加速度値を周波数解析することによって判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の体動判定装置において、前記使用者の歩行の左右のバランスは、前記使用者の歩行に対応する加速度値を示す波形を解析することによって判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の体動判定装置は、前記使用者の歩行の左右のバランスの偏りの度合いを判定することが可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の体動判定装置において、前記体動判定手段による判定は、前記体動判定装置の起動中に自動的に実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
使用者の体動を検出し、歩行状態(例えば、歩行及び/又は走行のピッチや左右のバランス)を判定することができる体動判定装置を提供することができる。これにより、使用者は、自己の歩行及び/又は走行の癖を容易に把握することができ、矯正を行う際の目安とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る体動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る体動判定装置の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る体動判定装置の加速度センサの出力について周波数解析の例を示す図であって、(a)は、X軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、Y軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、Z軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
【図4】本発明に係る体動判定装置の加速度センサの出力について、左脚及び右脚のピッチが一定でない歩行の場合の、周波数解析の例を示す図であって、(a)は、X軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、Y軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、Z軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
【図5】本発明に係る体動判定装置の加速度センサの出力について、リズムが悪い歩行の場合の、周波数解析の例を示す図であって、(a)は、X軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、Y軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、Z軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
【図6】本発明の体動判定装置の加速度センサ(X軸センサ)の出力の波形解析の例を示す図であり、(a)は、バランスがよい歩行の場合の波形を示す図、(b)は、左脚のステップのピッチが右脚のステップのピッチよりも長い歩行の場合の波形を示す図、(c)は、右脚のピッチが左脚のピッチよりも長い歩行の場合の波形を示す図である。
【図7】本発明に係る体動判定装置の結果表示の例を示す図である。
【図8】本発明の体動判定装置の変形例に係る判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態としての体動判定装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は、体動判定装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、体動判定装置10は、操作部21、表示部22、電源部23、加速度センサ31、演算部32、記憶部33、計時部34、A/D変換器35、及び、制御部40を備える。以下に、各部の詳細な構成について説明する。
【0016】
まず、本発明において、体動情報とは、使用者の体動に関する情報であり、より具体的には、使用者の体動(例えば、歩行、走行、これら以外の運動)を反映する情報であり、体動の強弱に関する体動情報(体動強度)や、体動の反復性・連続性、同じ体動が繰り返されているときの体動のピッチ(体動ピッチ)や回数(例えば歩数)などが挙げられる。体動強度としては、使用者の体動の加速度値に関するデータを用いるのが好適である。また、加速度値に関するデータとしては、体動ごとの上限ピーク値から下限ピーク値を差し引いた値、体動ごとの加速度値自体、一定時間当たりの加速度値の積算値(「加速度値の大きさ」)など、適宜採択可能である。また、体動とは、使用者の体の動作全般を指し、歩行、走行のほか、これら以外の活動が含まれる。
【0017】
操作部21(生体情報取得手段、入力手段)は、主として、使用者の生体情報の入力や、体動判定装置10の設定事項を入力するための入力手段として機能する。操作部21の個数・形状・操作方法は特に限定されるものではなく、ボタン式、タッチセンサ式、ダイヤル式など適宜採択可能である。ここで、操作部21によって入力される生体情報としては、一例として、体重、身長、年齢、一歩あたりの距離などをあげることができるが、特に限定されるものではない。また、設定事項とは、使用者が体動判定装置10を使用する上での設定事項であり、例えば、体動判定装置10の初期設定、現在日時、表示部22における表示内容の切り替え、後述の判定モードの選択などが挙げられる。このように入力された生体情報や設定事項は、制御部40の制御により、記憶部33(例えばRAM(Random Access Memory))に記憶され、表示部22に表示されるようになっている。
【0018】
表示部22は、制御部40から送られてくるデータを表示するための表示手段であって、主として使用者の生体情報や設定事項の表示、操作の案内表示、現在時刻・日付・曜日の表示、その使用日における通算の消費エネルギー・歩数・歩行距離、これらの過去数日分のデータの表示などを行う。表示内容は記憶部33に記憶されており、制御部40は、記憶部33にあらかじめ記憶されたプログラムにしたがい、体動判定装置10の使用状況に応じて、記憶部33からデータを読み出して、表示部22に表示させるようになっている。表示部22は、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)などの液晶を用いたものを採用すればよいが、表示部22と操作部21とを、例えばタッチパネル機能を備えた液晶表示パネルとして一体的に構成してもよい。
【0019】
電源部23は、電池(バッテリー)などの電力供給源によって構成される電力供給手段であり、体動判定装置10の各構成部材には、制御部40を介して電力が供給されるようになっている。
【0020】
体動判定装置10は、内部機構として、加速度センサ31、演算部32、記憶部33、計時部34、A/D変換器35、及び制御部40を備える。演算部32及び制御部40は、それぞれ集積回路により構成することが好ましく、演算部32及び制御部40を一体的に構成してもよい。
【0021】
記憶部33は、揮発性メモリ(図示せず)、不揮発性メモリ(図示せず)などによって構成される記憶手段である。揮発性メモリは、制御部40による処理等のための各種データを一時的に記憶できるようになっている。また、演算部32の演算処理時の記憶領域としても機能する。不揮発性メモリは、長期保存すべきデータの記憶に使用される。例えば、使用者により入力された生体情報の記憶、消費エネルギー算出式の記憶、後述の判定処理のためのプログラム、その他の各種プログラムの記憶などに用いることができるようになっている。
【0022】
計時部34は、所定時間の経過の計測や、所定時間が経過しているか否かの判断を行い、例えば、使用者が体動判定装置10の使用を開始した時点からの経過時間の計測や、使用者の体動ピッチ(例えば、1歩当たりに要した時間)を判断することが可能である。なお、本実施形態では、計時部34は独立の構成要素としているが、計時回路として制御部40に一体化された構成とし、制御部40自身により所定時間を経過しているか否かの判断を行うようにしてもよい。
【0023】
加速度センサ31は、使用者の体動に関する体動情報を取得する体動情報取得手段であり、使用者の体動によって生じる加速度値に応じ、出力値が変化するセンサである。より具体的には、加速度センサ31は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の体動をそれぞれ検出することができるように、X軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cを有し(図1参照)、X軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cの各出力値を合成した値を加速度値として取得することができるようになっている。なお、本実施形態においては、X軸センサ31aは使用者の体動の左右方向(肩幅方向)の加速度、Y軸センサ31bは使用者の体動の上下方向(身長方向)の加速度、Z軸センサ31cは使用者の体動の前後方向の加速度をそれぞれ検出して出力するものとして説明する。このように、本実施形態においては、体動情報取得手段として加速度センサ31を用いるため、使用者の体動強度は加速度値に関するデータとなっており、加速度値が高ければ体動強度が強く、加速度値が低ければ体動強度が弱いものとして、体動情報を取得することができる。さらに、使用者の体動の加速度値を3軸方向のそれぞれで検出できるので、それぞれの出力値に応じて、使用者の歩行状態(例えば、歩行や走行のリズム、ピッチ、左右のバランス)を判定することが可能となる。
【0024】
加速度センサ31により取得される出力は、制御部40や演算部32等による処理のために、A/D変換器35によりアナログ−デジタル変換される。より具体的には、X軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cによって取得されたアナログデータとしての各出力値は、それぞれA/D変換器35a、A/D変換器35b、A/D変換器35cによってデジタルデータに変換されるとともに、計時部34と連動して、取得開始からの経過時間に対応させて記憶部33に記憶されるようになっている。また、演算部32により、X軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cの各出力値のA/D変換値を合成することにより、加速度値(加速度値のA/D変換値)を計算により求め、計時部34と連動して、取得開始からの経過時間に対応させて記憶部33に記憶させてもよい。このように、経過時間に対応させて加速度値を取得すれば、取得された順に時系列的に加速度値を観察することで、体動強度のみならず、体動の反復性・連続性の有無、同じ体動が繰り返されているときのピッチ(体動ピッチ)や回数(例えば歩数)を体動情報として同時に取得することが可能となる。
加速度センサ31によって使用者のあらゆる体動による加速度値をより正確に取得するために、体動判定装置10の使用者への装着は、使用者の身体に可能な限り密着していることが好ましい。さらに、加速度センサ31のX軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cのそれぞれの検出方向が、使用者に対して所定の方向と一致させながら、体動判定装置10を使用者の体幹部(胸部や腹部)の中心に固定するようにする。
このように取得された体動情報は、制御部40の制御により、記憶部33に記憶させ、その一部(例えば歩数)が表示部22に表示される。
【0025】
図1に示すように、制御部40は、操作部21、表示部22、電源部23、加速度センサ31、演算部32、記憶部33、計時部34、及び、A/D変換器35と電気的に接続されており、制御部40によって各動作が制御されるようになっている。
【0026】
また、制御部40は、後述の演算部32とともに、体動情報取得手段としての加速度センサ31によって取得された体動情報について、ピッチの一定性や左右バランスを判定する体動判定手段として機能する。より具体的には、連続的な歩行(走行を含む)が所定時間行われていると判断された場合において、その歩行が、一定のピッチを刻むようなリズムの良いものか否か、左右のいずれに偏った歩行であるか、を判定する。この判定に際しては、前記所定時間において取得された歩行による加速度値について、周波数解析や波形解析を行うものであり、その詳細な具体例については後述する。
【0027】
なお、制御部40は、歩行判定手段及び歩数カウント手段としても機能する。なお、制御部40による歩行判定方法及び歩数カウント方法についての一例を以下に簡単に説明する。制御部40は、加速度センサ31によって取得された加速度値を、A/D変換器35によってA/D変換させ、取得された順に時系列的に記憶部33に記憶させるとともに、横軸に経過時間(単位:秒)、縦軸に加速度値のA/D変換値(単位:カウント)をとり、順次取得される総ての加速度値のA/D変換値をプロットして波形を取得し、加速度値の推移をみて、一例として、次のように処理する。
加速度値の波形の振幅が歩行としての1歩と判断できるか否かを、第1閾値Xを超える大きさの振幅であるか否かにより判断する。そして、このような波が、所定の変動係数が第2閾値Y以下となるばらつきがない状態で所定個数以上みられるか否かを判断し、これを満たす波形を確認できる場合は、連続的な歩行であると判定する。さらに、そのピーク値ごとに1歩としてカウントしていく。なお、変動係数とは、標準偏差を平均で割った値である。
【0028】
演算部32は、制御部40の制御のもと種々の演算処理を行うことが可能な演算手段であり、例えば、加速度センサ31の出力値についての周波数解析、波形解析、記憶部33に記憶された使用者の生体情報や体動情報(例えば歩数)に基づいて、使用者の消費エネルギーの算出を行う。
【0029】
次に、体動判定装置10を用いた判定処理について、図2を参照して説明する。図2は、体動判定装置10の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0030】
体動判定装置10を起動させた後、使用者により操作部21を操作させて、消費エネルギーの算出、その他の各種処理に必要な生体情報(例えば体重、身長、年齢、一歩あたりの距離など)を入力させるとともに、入力された生体情報を、記憶部33の所定領域に記憶させる(ステップS10)。
【0031】
初期設定が終了した後、体動判定装置10は使用者の身体に装着されると、体動判定装置10により使用者の体動情報を取得し、記憶部33へ記憶する(ステップS11)。より具体的には、加速度センサ31によって使用者の体動による加速度値を取得し、A/D変換器35は、加速度センサ31のX軸センサ31a、Y軸センサ31b、Z軸センサ31cによって取得されたアナログデータとしての各出力値を、それぞれA/D変換するとともに、制御部40は、計時部34から、取得が開始された時点からの経過時間を同時に取得して、各出力値のA/D変換値を、その取得開始から所定の経過時間に対応させて記憶部33に記憶する。
【0032】
取得した体動情報について、使用者が連続的な歩行(及び/又は走行。以下同じ。)をしているものと評価できるか否かを判定する歩行判定を行う(ステップS12)。この歩行判定の条件は特に限定されるものではないが、一例としては、加速度値の波形の振幅が歩行としての1歩と判断できるか否かを、第1閾値Xを超える大きさの振幅であるか否かにより判断し、かつ、所定の変動係数が第2閾値Y以下となるばらつきがない状態で、所定個数以上みられるか否かを判断し、これを満たす波形を確認できる場合は、歩行であると判定すればよい。
【0033】
制御部40は、歩行判定の条件を満たすという判断がされた後、その条件を継続的に満たす体動情報が取得できているか、換言すれば、歩行が中断されていないかどうかを判断する(ステップS13)。
【0034】
歩行が中断されていないと判断した場合には(ステップS13でNo)、制御部40は、連続的に歩行している時間を計算する(ステップS14)。制御部40は、連続歩行時間が、所定時間T以上であるか否かを判断し(ステップS16)、所定時間Tに満たない場合には(ステップS16でNo)、結果表示を適宜更新し(ステップS20)、体動情報の取得・記憶を継続する(ステップS11)。所定時間Tとしては、後述のバランス判定(ステップS19)を適切に行うことができる任意の時間を設定すればよい。
一方、歩行が中断されたと判断された場合には(ステップS13でYes)、制御部40は、連続歩行時間をクリアするなどして(ステップS15)、結果表示を適宜更新し(ステップS20)、体動情報の取得・記憶を継続する(ステップS11)。なお、結果表示として変更すべき事項がない場合には、ステップS20を通らずに、直接ステップS11へ移行してもよい。
【0035】
制御部40は、連続歩行時間が、所定時間T以上であると判断した場合には(ステップS16でYes)、周波数解析を行う(ステップS17)。周波数解析は、使用者の歩行において、左脚のステップと右脚のステップとのピッチを判断するために行うものであり、図3を参照して説明する。図3(a)は、使用者の左右方向に係るX軸センサ31aが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、使用者の上下方向に係るY軸センサ31bが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、使用者の前後方向に係るZ軸センサ31cが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
【0036】
図3では、1分(60秒)間に120歩(120rpm)のペースで歩行した場合の例であるため、1秒当たり、左脚によるステップと右脚によるステップとを1回ずつ、計2歩の歩行を行うペースとなる。
まず、上下方向の加速度については、1秒当たり、一方の脚(例えば左脚)のステップによって上下方向に1周期分の加速度値が検出されたあと、直ぐに他方の脚(例えば右脚)のステップによって上下方向に1周期分の加速度値が検出されるので、Y軸センサ31bは1秒間に2周期分の加速度値を検出することになる。その結果、図3(b)に示すように、横軸の2Hzにおいてピークを確認することができる。なお、2Hz周辺以外の周波数で表れる加速度値は、腕振りその他の動作による測定ノイズであると考えられる。
【0037】
一方、左右方向の加速度については、1秒当たり、一方の脚(例えば左脚)のステップによって一方の方向(左脚ステップの場合は右方向)に関して1/2周期分の加速度値が検出されたあと、直ぐに他方の脚(例えば右脚)のステップによって他方の方向(右脚ステップの場合は左方向)に関して1/2周期分の加速度値が検出されるので、X軸センサ31aは1秒間に1周期分の加速度値を検出することになる。その結果、図3(a)に示すように、横軸の1Hzにおいてピークを確認することができる。
【0038】
なお、使用者の前後方向についての加速度値を検出するZ軸センサ31cについても同様に周波数解析を行ってもよいが(図3(c)参照)、本実施形態においては、使用者の左右方向に係るX軸センサ31a、及び、使用者の上下方向に係るY軸センサ31bからの加速度値を周波数解析すれば足りる。
【0039】
図3(a)及び(b)に示すように、使用者の上下方向に関する加速度値は周波数2Hzにピークを確認でき、左右方向に関する加速度値は、そのちょうど半分の周波数1Hzがピークとなっていることを明確に確認することができるため、このことから、この使用者は、一定のリズムで左右の脚を一定ピッチで等間隔に踏み出して歩行しているものとして判定することが可能となる。
【0040】
一方、左右の脚のステップのピッチが等間隔でない場合には、図3に示すような明確な波形が得られない。ここで、図4は、本発明に係る体動判定装置の加速度センサの出力について、左脚及び右脚のピッチが一定でない歩行の場合の、周波数解析の例を示す図であって、(a)は、X軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、Y軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、Z軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
左脚のステップのピッチが、右脚のステップのピッチよりも短い、というように左右のピッチが等間隔でない場合には、例えば、図4(a)に示すように、左右方向の加速度値について、1Hz以外の周波数においてもピークが現れ、同様に、図4(b)に示すように、上下方向の加速度値について、2Hz以外の周波数においてもピークが現れる、というような波形を確認することができる。このことから、この使用者は、一方の脚のステップのピッチが、他方の脚のステップのピッチよりも短い(又は長い)、として判定することが可能となる。
【0041】
また、図5は、本発明に係る体動判定装置の加速度センサの出力について、リズムが悪い歩行の場合の、周波数解析の例を示す図であって、(a)は、X軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(b)は、Y軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフ、(c)は、Z軸センサが検出した加速度値のパワースペクトルを縦軸、周波数を横軸にとったグラフである。
左右の脚のステップのピッチがランダムであったり、止まりかけたりする場合には、図4よりもさらにノイズの多い波形が確認されることになる。例えば、左右方向に係るX軸センサ31a、上下方向に係るY軸センサ31b、前後方向に係るZ軸センサ31cの各加速度値について周波数解析を行うと、図5(a)乃至(c)に示すように、ノイズの多い波形が確認される。このことから、この使用者は、歩行のリズムが悪いものとして判定することが可能となる。
【0042】
このように、少なくとも、使用者が歩行したときの左右方向(X軸方向)の加速度値及び上下方向(Y軸方向)の加速度値についての周波数解析を行えば、使用者は、一定のリズムで左右の脚を一定ピッチで等間隔に踏み出して歩行しているのか、一方の脚のステップのピッチが他方の脚のステップのピッチよりも短い(又は長い)か、歩行のリズムが悪いか、を判定することが可能となる。従って、左右のいずれの脚のステップのピッチが、他方の脚のステップのピッチに対して短い(長い)のか、まで判断する必要がないのであれば、後述の波形解析(ステップS18)を行うことなく、判定の処理(ステップS19)を行ってもよい。
【0043】
次に、制御部40は、波形解析を行う(ステップS18)。波形解析は、使用者の歩行において、左右のいずれの脚のステップのピッチが、他方の脚のステップのピッチに対して短い(長い)のか、を判断するために行うものであり、図6を参照して説明する。図6は、本発明の体動判定装置の加速度センサ(X軸センサ)の出力の波形解析の例を示す図であり、(a)は、バランスがよい歩行の場合の波形を示す図、(b)は、左脚のステップのピッチが右脚のステップのピッチよりも長い歩行の場合の波形を示す図、(c)は、右脚のピッチが左脚のピッチよりも長い歩行の場合の波形を示す図である。図6(a)乃至(c)のいずれについても、縦軸にX軸センサ31aの出力値(A/D変換値)、横軸に時間をとったときの波形である。また、図6において、X軸センサ31aの出力値は、右方向への加速度値は+(プラス)側へ推移し、左方向への加速度値は−(マイナス)側へ推移するものとして表している。したがって、各波形は、グラフの下方向への凸部が左脚1歩、次の上方向への凸部が右脚1歩、さらに次の下方向への凸部が左脚1歩、というように、使用者の歩行と対応している。
【0044】
図6(a)では、加速度値の+側(右方向)への出力波形と−側(左方向)への出力波形とが、同じ時間間隔で順次繰り返されており、かつ、互いにほぼ反転した波形形状となっている。これにより、左右方向(X軸方向)に偏りのないバランスの良い歩行であることを確認することが可能である。
【0045】
一方、図6(b)では、加速度値の+側(右方向)への出力波形と−側(左方向)への出力波形とが、図6(a)のような反転波形ではない。すなわち、加速度値の+側(右方向)への出力よりも、−側(左方向)への出力の方が、大きく弧を描くような波形であり、1歩当りの−側(左方向)への出力の時間間隔が長くなっている。従って、左方向に偏った左バランスの歩行であることを確認することが可能である。また、例えば、−側(左方向)と+側(右方向)との各時間間隔の割合に応じて、左方向への偏りの度合いを求めることも可能である。
【0046】
さらに、図6(c)においても、加速度値の+側(右方向)への出力波形と−側(左方向)への出力波形とが、図6(a)のような反転波形ではなく、加速度値の−側(左方向)への出力よりも、+側(右方向)への出力の方が、大きく弧を描くような波形であり、1歩当りの+側(右方向)への出力の時間間隔が長くなっている。従って、右方向に偏った右バランスの歩行であることを確認することが可能である。また、例えば、−側(左方向)と+側(右方向)との各時間間隔の割合に応じて、右方向への偏りの度合いを求めることも可能である。
【0047】
次に、制御部40は、上述の周波数解析(ステップS17)、波形解析(ステップS18)の各結果に基づいて、使用者の体動としての歩行についてバランス判定を行う(ステップS19)。より具体的には、周波数解析の結果に基づいて、すなわち、使用者が歩行したときの左右方向(X軸方向)の加速度値及び上下方向(Y軸方向)の加速度値についての周波数解析を行うことにより、使用者は、一定のリズムで左右の脚を一定ピッチで等間隔に踏み出して歩行しているのか、一方の脚のステップのピッチが他方の脚のステップのピッチよりも短い(又は長い)か、歩行のリズムが悪いか、を判定する。また、波形解析の結果に基づいて、左右のいずれの脚のステップのピッチが、他方の脚のステップのピッチに対して短い(長い)のか、を判定する。
【0048】
制御部40は、前記バランス判定の結果を、結果表示として、表示部22に更新する(ステップS20)。判定の結果表示としては、特に限定されるものではないが、一例として、図7に示すような結果表示を行えばよい。図7は、本発明に係る体動判定装置の結果表示の例を示す図である。図7に示すように、左右方向に帯状に設けられた指示領域21aと、その中心に固定的に表示されたセンター表示21b(図7では、破線及び三角形の図形)とを有し、判定(ステップS19)の結果に応じて指示領域21a内で長手方向に移動可能な指示部21cを設ける。従って、例えば、周波数解析の結果、図4のような波形が確認され、波形解析の結果、図6(b)のような波形が確認されたときは、図7に示すように、指示部21cは、センター表示21bに対して左側を指示するようにする。また、波形解析において、−側(左方向)と+側(右方向)との各時間間隔の割合に応じて求めた左方向への偏りの度合いが、低い場合はセンター表示21b寄り、高い場合はセンター表示21bから離れる方向に、指示部21cを指示させるようにする。
また、結果表示としては、前記判定の結果表示のみならず、消費エネルギー、歩数、歩行距離などを表示しても良い。さらに、使用者による操作部21の操作により、各表示の切替えが可能な構成としても良い。
【0049】
つづいて、図8を参照しつつ、本発明の体動判定装置の変形例について説明する。ここで、図8は、本発明の体動判定装置の変形例に係る判定処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示す変形例においては、上述の実施形態の体動判定装置のように自動的に歩行バランス判定が実行されるのではなく、使用者が判定開始の操作を行ってから歩行バランス判定を行うものである。従って、変形例に係る体動判定装置では、上述の実施形態の体動判定装置のような消費エネルギーや歩数の算出等を自動的に行う一方で、バランス判定モードを使用者自身によって任意に開始させる構成や、バランスの判定のみを行って消費エネルギーや歩数の算出等は行わない構成とすることもできる。以下に判定処理の流れを説明する。
なお、上述の実施形態と共通する部材については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
まず、使用者は、変形例に係る体動判定装置を起動させた後、操作部21を操作して、消費エネルギーの算出その他の各種処理に必要な生体情報(例えば体重、身長、年齢、一歩あたりの距離など)を予め入力する。入力された生体情報は、記憶部33の所定領域に記憶される。
【0051】
次に、使用者は、変形例に係る体動判定装置を自身の身体に装着した後に、入力手段としての操作部21を操作することによって判定処理を開始させ、図2のステップS11と同様に、体動判定装置は使用者の体動情報を取得し、記憶部33へ記憶する(ステップS100)。制御部40は、取得した体動情報について、図2のステップS12同様、使用者が連続的な歩行をしているものと評価できるか否かを判定する歩行判定を行い(ステップS101)、歩行判定の条件を満たすという判断がされたか、換言すれば、歩行が開始されたかどうかを判断する(ステップS102)。歩行が開始されていないと判断された場合には(ステップS102でNo)、制御部40は、ステップS100からの処理を繰り返す。
【0052】
歩行が開始されたと判断した場合には(ステップS102でYes)、制御部40は、引き続き、使用者の体動情報を取得し、記憶部33へ記憶し(ステップS103)、使用者が連続的な歩行をしているものと評価できるか否かを判定する歩行判定を行う(ステップS104)。
制御部40は、歩行が中断されていないかどうかを判断し(ステップS105)、歩行が中断されていないと判断した場合には(ステップS105でNo)、連続的に歩行している時間を計算する(ステップS106)。制御部40は、連続歩行時間が、所定時間T以上であるか否かを判断し(ステップS107)、所定時間Tに満たない場合には(ステップS107でNo)、ステップS103からの処理を繰り返す。
一方、歩行が中断されたと判断された場合には(ステップS105でYes)、制御部40は、結果表示を行い(ステップS111)、判定処理を終了する。なお、この場合の結果表示としては、判定処理に必要な体動情報が取得できなかったものとして、エラー表示を行うなどすればよい。
【0053】
制御部40は、連続歩行時間が、所定時間T以上であると判断した場合には(ステップS107でYes)、周波数解析を行う(ステップS108)。周波数解析については、上述の実施形態と同様に行えばよく、詳細な説明は省略する。次に、制御部40は、波形解析を行う(ステップS109)。波形解析についても上述の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
つづいて、制御部40は、上述の周波数解析(ステップS108)、波形解析(ステップS109)の各結果に基づいて、使用者の体動としての歩行についてバランス判定を行う(ステップS110)。より具体的には、周波数解析の結果に基づいて、すなわち、使用者が歩行したときの左右方向(X軸方向)の加速度値及び上下方向(Y軸方向)の加速度値についての周波数解析を行うことにより、使用者は、一定のリズムで左右の脚を一定ピッチで等間隔に踏み出して歩行しているのか、一方の脚のステップのピッチが他方の脚のステップのピッチよりも短い(又は長い)か、歩行のリズムが悪いか、を判定する。また、波形解析の結果に基づいて、左右のいずれの脚のステップのピッチが、他方の脚のステップのピッチに対して短い(長い)のか、を判定する。
【0055】
制御部40は、前記バランス判定の結果を、結果表示として、表示部22に表示する(ステップS111)。判定の結果表示としては、特に限定されるものではないが、一例として、上述の実施形態と同様に、図7に示すような結果表示を行えばよい。
【符号の説明】
【0056】
10 体動判定装置
21 操作部
22 表示部
23 電源部
31 加速度センサ(体動情報取得手段)
31a X軸センサ
31b Y軸センサ
31c Z軸センサ
32 演算部
33 記憶部
34 計時部
35 A/D変換器
35a A/D変換器
35b A/D変換器
35c A/D変換器
40 制御部(歩行判定手段、体動判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体動情報を取得する体動情報取得手段と、
前記体動情報取得手段が取得した体動情報に基づいて前記使用者の体動が歩行か否かを判定する歩行判定手段と、
前記歩行判定手段によって歩行であると判定された体動情報を用いて前記使用者の歩行状態を判定する体動判定手段と、
を備える
ことを特徴とする体動判定装置。
【請求項2】
前記歩行状態には、前記使用者の歩行のピッチの一定性、及び/又は、前記使用者の歩行の左右のバランスを含むことを特徴とする請求項1に記載の体動判定装置。
【請求項3】
前記体動情報は、前記使用者の体動により生ずる加速度値であり、前記生体情報取得手段は、少なくとも、前記使用者の体動についての左右方向及び上下方向の加速度値を検出可能な加速度センサであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の体動判定装置。
【請求項4】
前記使用者の歩行のピッチの一定性は、前記使用者の歩行に対応する加速度値を周波数解析することによって判定することを特徴とする請求項3に記載の体動判定装置。
【請求項5】
前記使用者の歩行の左右のバランスは、前記使用者の歩行に対応する加速度値を示す波形を解析することによって判定することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の体動判定装置。
【請求項6】
前記使用者の歩行の左右のバランスの偏りの度合いを判定することが可能であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のうち、いずれか1に記載の体動判定装置。
【請求項7】
前記体動判定手段による判定は、前記体動判定装置の起動中に自動的に実行されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の体動判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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