体外循環回路
【課題】体外循環回路内にプライミング液を供給してプライミングが行なわれた後に、当該プライミング液を血液で置換する際、そのプライミング液を迅速に回収することができる体外循環回路を提供すること。
【解決手段】体外循環回路1は、チューブ91および94を有する回路本体9と、プライミング液Pを供給する供給バッグ6と、液体を一時的に貯留するリザーバ3と、チューブ91の途中から分岐したチューブ10と、チューブ10と連通し、チューブ10を介してプライミング液Pを回収する回収バッグ7とを備えている。この体外循環回路1では、供給バッグ6からプライミング液Pが供給されて、少なくともハウジング33に対してプライミングが行なわれた後に、ハウジング33内のプライミング液Pを血液で置換する際、ハウジング33内のプライミング液Pは、その液面L1の回収バッグ7に対する落差により回収バッグ7に移送されて回収される。
【解決手段】体外循環回路1は、チューブ91および94を有する回路本体9と、プライミング液Pを供給する供給バッグ6と、液体を一時的に貯留するリザーバ3と、チューブ91の途中から分岐したチューブ10と、チューブ10と連通し、チューブ10を介してプライミング液Pを回収する回収バッグ7とを備えている。この体外循環回路1では、供給バッグ6からプライミング液Pが供給されて、少なくともハウジング33に対してプライミングが行なわれた後に、ハウジング33内のプライミング液Pを血液で置換する際、ハウジング33内のプライミング液Pは、その液面L1の回収バッグ7に対する落差により回収バッグ7に移送されて回収される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外循環回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液を体外循環させる体外循環回路(体外循環装置)としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この体外循環回路は、患者に接続される脱血ライン(チューブ)および送血ライン(チューブ)と、脱血ラインの下流側に接続されるリザーバ(貯血槽)と、送血ラインの上流側に接続される人工肺と、リザーバと人工肺とを接続する接続ライン(チューブ)とを有している。
【0003】
特許文献1に記載の体外循環回路(以下、単に「回路」と言う)を用いて血液の体外循環をする際には、まず、回路内にプライミング液(例えば生理食塩水)を充填して(供給して)、当該回路に対してプライミングを行なう。その後、体外循環を行なう。このような操作を行なった場合、血液がプライミング液で希釈されてしまう。
【0004】
そこで、近年、体外循環を行なう前に、プライミング液を可能な限り回収して、血液が希釈される、すなわち、血液の希釈率の増加を抑制する手技がとられつつある。この手技は、通常、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)と呼ばれている。RAPを行なうには、プライミング液を回収する回収バッグが回路に予め接続されている。この状態で、通常の体外循環の血液の流れと逆方向に患者から回路に血液を送り出し、当該血液によって回路内のプライミング液を回収バッグ側に押し出す。
【0005】
しかしながら、体外循環回路の回路構成によっては、前記逆流した血液による押し出しのみでは、プライミング液が回収バッグに確実に回収されないことがある。このため、プライミング液を確実に押し出すための補助手段(押し出し手段)として、ポンプを用いたり、ライン(チューブ)を増設して回路構成を複雑なものとしたりしていた。したがって、プライミングを行なう時点から体外循環を行なうまでの、回路に対する操作(例えば、前記ポンプの作動の切替や回路中のラインの切替)が、煩雑となる。よって、RAPを迅速に行なう、すなわち、プライミング液を迅速に回収するのが困難であった。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6908446号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、体外循環回路内にプライミング液を供給してプライミングが行なわれた後に、当該プライミング液を血液で置換する際、そのプライミング液を迅速に回収することができる体外循環回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の液体を回収する回収容器とを備えることを特徴とする体外循環回路。
【0009】
(2) 血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
前記回路本体内の液体を移送するポンプと、
プライミング液を供給するプライミング液供給部と、
前記送血ラインに接続され、血液に対してガス交換を行なう人工肺と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の前記プライミング液を回収する回収容器とを備え、
前記プライミング液供給部から前記プライミング液が供給されて、少なくとも前記貯留室に対してプライミングが行なわれた後に、該貯留室内の前記プライミング液を血液で置換する際、前記貯留室内のプライミング液は、その液面の前記回収容器に対する落差により該回収容器に移送されて回収されるよう構成されていることを特徴とする体外循環回路。
【0010】
(3) 前記貯留室内の液体の液面は、前記チューブの下端部よりも上方に位置する上記(1)に記載の体外循環回路。
【0011】
(4) 前記回収容器の設置高さを調整可能な高さ調整手段を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の体外循環回路。
【0012】
(5) 前記分岐ラインは、その前記回収容器内での開口部が水平方向または水平方向に対して上向きに開口している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の体外循環回路。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体外循環回路に対してプライミングが行なわれた後にプライミング液を血液で置換する際、すなわち、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)を行なう際、当該体外循環回路に対する簡単な操作で、プライミング液を容易かつ迅速に回収することができる。これにより、体外循環回路を用いて体外循環を行なう際、その工程(体外循環工程)に迅速に移行することができる。
【0014】
また、体外循環回路では、プライミング液が回収されるため、プライミング液で血液が希釈されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の体外循環回路を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1〜図11は、それぞれ、本発明の体外循環回路の構成例(第1実施形態)を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)、図12は、図1に示す体外循環回路が有するリザーバの側面図である。なお、以下では、説明の都合上、図12中(図13および図14も同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0017】
図1〜図11に示す体外循環回路1は、血液Bを体外循環させるものである。この体外循環回路1は、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)を行なうのが可能な回路である。ここで、「RAP」とは、体外循環回路1をプライミングして(プライミング液Pを充填して)、その後通常の、血液Bの体外循環(以下、この「血液Bの体外循環」を単に「体外循環」と言うことがある)を行なう(図11参照)前に、プライミング液Pを可能な限り回収して、血液が希釈される、すなわち、血液の希釈率の増加を抑制する手技のことである。
【0018】
図1に示すように、体外循環回路1は、4本の実質的に透明なチューブ90、92、93および96で構成された回路本体9と、これらのチューブで接続されたリザーバ(貯血槽)3、送血用のポンプ(遠心ポンプ)4および人工肺5とを有している。また、体外循環回路1は、これらの構成要素の他に、プライミング液Pを供給する供給バッグ(プライミング液供給部)6と、供給バッグ6とリザーバ3とを接続する実質的に透明なチューブ20と、回路本体9(チューブ91)から分岐した実質的に透明なチューブ(分岐チューブ(分岐ライン))10と、チューブ10に接続された回収バッグ(回収容器)7と、回収バッグを支持する回収バッグ支持装置8と、チューブ96およびチューブ10をそれぞれ開閉する2つのクランプ(クレンメ)30とをさらに有している。
【0019】
なお、本実施形態では、説明の都合上、チューブ90の図1中リザーバ3側(右側)の上下方向に延在する部分を「チューブ91」と言い、図1中人工肺5側(左側)の上下方向に延在する部分を「チューブ94」と言い、チューブ91とチューブ94との間の図1中左右方向に延在する部分を「チューブ95」と言う。
【0020】
以下、各部の構成について説明する。
図12に示すリザーバ3は、体外循環回路1中の液体(例えば、大静脈から脱血した血液Bや、プライミング液P)を一時的に貯留しておくものである。このリザーバ3は、ハウジング本体31と蓋体32とで構成されるハウジング33を有する。このハウジング33の内部には、液体(血液)を貯留する貯液空間(貯留室)34が形成されている。
【0021】
ハウジング本体31は、図12中左側において下方に突出する突出部311を有する箱形をなしており、この突出部311の下部には、貯液空間34に連通する管状の接続口(口部)35が形成されている。
【0022】
蓋体32は、ハウジング本体31の上部開口を覆うようにハウジング本体31の上端に嵌合されている。また、蓋体32の所定位置には、管状の接続口(口部)36および37がそれぞれ形成されている。
接続口35〜37は、それぞれ、体外循環回路1に次のように接続される。
【0023】
図11に示すように、接続口37には、体外循環を行なう際に脱血ラインとして機能するチューブ91が接続される。すなわち、接続口37には、体外循環を行なう際に患者の脱血部(血管)から血液が流入する。
【0024】
接続口36には、チューブ20が接続される。このチューブ20を介して、リザーバ3と供給バッグ6とが接続され、リザーバ3に供給バッグ6からのプライミング液Pが供給される。
【0025】
接続口35には、チューブ92が接続される。このチューブ92を介して、リザーバ3とポンプ4とが接続される。このポンプ4の作動により、リザーバ3から液体(血液B、プライミング液P)が人工肺5へ送られる。
【0026】
なお、ハウジング本体31および蓋体32の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができ、このなかでも特に、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0027】
このような構成のリザーバ3は、接続口36および37が鉛直上方に位置し、接続口35が鉛直下方に位置するような姿勢で使用される。
【0028】
また、接続口37には、ハウジング33の内側で、チューブ381が接続されている。これにより、チューブ381は、その上端側で接続口37を介してチューブ91と連通する。また、チューブ381の下端(下端部)381aは、開口している。図12に示すように、下端381aは、突出部311(ハウジング33)の底部312付近に位置し、当該底部312に臨んでいる。
【0029】
チューブ381の外側には、袋状をなし、チューブ381を包含するフィルタ部材382が配置されている。このフィルタ部材382は、その上端部が蓋体32に支持されている。
【0030】
フィルタ部材382は、血液中の異物や気泡を除去する機能を有するものである。フィルタ部材382の素材は、十分な血液の透過性を有する多孔質材料で構成される。
【0031】
また、接続口36のハウジング33側には、袋状をなすフィルタ部材392が配置されている。このフィルタ部材392は、その上端部が蓋体32に支持されている。
【0032】
フィルタ部材392は、プライミング液P、輸血用血液、補液中の異物や気泡を除去する機能を有するものである。フィルタ部材382の素材は、十分なプライミング液(液体)の透過性を有する多孔質材料で構成される。
【0033】
また、チューブ381とフィルタ部材382との間と、フィルタ部材392内側とには、それぞれ、消泡する消泡部材(図示せず)が設置されている。
【0034】
チューブ381の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の高分子材料を挙げることができる。
【0035】
また、フィルタ部材382および392を構成する多孔質材料としては、例えば、メッシュ(ネット)状のもの、織布、不織布等が挙げられ、これらを単独でまたは任意に組み合わせて(特に積層して)用いることができる。
【0036】
また、人工肺5には、血液が人工肺5に流入する血液流入ポート(流入口)512と、人工肺5から血液が流出する血液流出ポート(流出口)513と、ガス流入ポート514と、ガス流出ポート(図示せず)と、熱媒体流入ポート515と、熱媒体流出ポート516とが突出形成されている。また、この人工肺5には、ガス交換機能を有する中空糸膜が多数集積された中空糸膜束が収納されている。また、当該中空糸膜束の外周部に設けられ、気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材が収納されていてもよい。
【0037】
ポンプ4は、体外循環回路1(回路本体9)内の血液を送液(送血)するものである。このポンプ4は、制御装置(図示せず)からの制御によって回転する回転体(図示せず)を有している。ポンプ4では、前記回転体の回転数に応じて、送血量(送液量)を調整する(制御する)ことができる。
【0038】
このポンプ4は、リザーバ3と人工肺5との間に配置され、リザーバ3に接続されているチューブ92と、人工肺5に接続さているチューブ93とに、それぞれ、接続されている(例えば、図1参照)。
【0039】
前述したように、回路本体9は、チューブ90、92、93および96で構成されておおり、さらに、チューブ90は、3つの部位(チューブ91、94および95)に分けることができる。図1(図2、図3も同様)に示すように、体外循環回路1は、体外循環の際に脱血ラインとして機能するチューブ91と、リザーバ3と、チューブ92と、ポンプ4と、チューブ93と、人工肺5と、体外循環の際に送血ラインとして機能するチューブ94と、チューブ91およびチューブ95の端部同士を接続する接続ラインとしてのチューブ95とが、この順に接続された回路構成となっている。
【0040】
チューブ95は、体外循環回路1がプライミング液Pでプライミングされるまで当該体外循環回路1に設置されている(例えば図3参照)。その後、図5(図6〜図11も同様)に示すように、血液Bの体外循環するときには、チューブ95を、例えばそのループ951の中央部とループ951よりチューブ94側の部分との間を切断して取り除き、残った部分をそれぞれ、患者(図示せず)に予め留置された脱血用および送血用カテーテル(図示せず)に接続する。この状態で、血液Bの体外循環が行なわれる。
【0041】
また、体外循環回路1では、チューブ91の途中とチューブ94の途中とがチューブ96によって、接続されている。このチューブ96は、体外循環回路1で血液Bの再循環を行なう際に再循環ライン(接続ライン)として機能するものである。
【0042】
チューブ91の、チューブ96が接続されている部分とリザーバ3が接続されている部分との間には、チューブ10が接続されている。このチューブ10は、後述する回収バッグ7が接続されている。プライミング液Pは、チューブ10を通過して(介して)、回収バッグ7に回収されることとなる。
【0043】
なお、チューブ90〜96、10および20の構成材料としては、特に限定されず、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような可撓性を有する高分子材料が挙げられる。
【0044】
チューブ96およびチューブ10の途中には、それぞれ、クランプ30が設置されている。各クランプ30は、それぞれ、チューブを外側から圧閉することができる。これにより、チューブ96(チューブ10も同様)は、閉状態(閉塞状態)となる。また、クランプ30による圧閉が解除されると、チューブ96(チューブ10も同様)は、開状態(開放状態)となる。
【0045】
供給バッグ6は、プライミング液Pを供給するものである。供給バッグ6は、例えばポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(熱融着、高周波融着等)または接着し、袋状としたものである。このシート材同士の間に形成された空間内に、プライミング液Pが予め充填されている。プライミング液Pは、体外循環回路1全体に供給するのに十分な程度に充填されている。プライミング液Pの充填量としては、回路本体9の大部分を占めるチューブ91、94の長さがそれぞれ例えば100〜200cmである場合、750〜1500mLであるのが好ましい。
【0046】
このような供給バッグ6は、チューブ20を介して、リザーバ3(ハウジング33)に接続されている。プライミング液Pがリザーバ3からハウジング33(貯液空間34)内に流入した際、このプライミング液Pとともに流入した気泡は、フィルタ部材392によって捕捉される。これにより、気泡がフィルタ部材392より下流側に流出するのを抑制または防止することができる。
【0047】
また、供給バッグ6の口部は、ゴム栓より封止されている。このゴム栓に針管を刺通して、供給バッグ6とチューブ20と接続した際に、ゴムくず(コアリング)が生じることがある。リザーバ3では、ゴムくずやチューブ20内の異物をフィルタ部材392で捕捉することができる。
【0048】
なお、プライミング液Pとしては、例えば、生理食塩水、乳酸リンゲル液等が挙げられる。
【0049】
回収バッグ7は、プライミング液Pを回収するものである。回収バッグ7は、例えば、供給バッグ6と同様に、ポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(熱融着、高周波融着等)または接着し、袋状としたものである。このシート材同士の間に形成された空間内に、プライミング液Pが収納される(回収される)。回収バッグ7の容積は、供給バッグ6の容積と同程度またはそれより若干大きく設定されている。
【0050】
なお、回収バッグ7の外形形状は、特に限定されないが、当該回収バッグ7にプライミング液Pが充填されたとき、すなわち、回収バッグ7が膨張したとき、例えば、長尺状(平板状(扁平形状)や柱状)をなすのが好ましい。
【0051】
また、回収バッグ7は、その長手方向がほぼ水平方向と平行となるように載置してもよいし、その長手方向がほぼ鉛直方向に沿うように載置してもよい。本実施形態では、回収バッグ7は、その長手方向がほぼ鉛直方向に沿うように載置されている。
【0052】
また、チューブ10の開口部101(回収バッグ7の液体流入口)は、回収バッグ7の上部に位置し、その開口方向が水平方向であるか、または、水平方向に対してやや上方を向いている必要がある。例えば、チューブ10の開口部101が下方に向かって開口している場合、開口部101から液滴が落下すると、その落下した液滴の分、チューブ10内に空気が入り込んでしまう問題がある。このような問題が生じるのを防止するために、前述したように、チューブ10の開口部101の開口方向を規定する必要がある。開口方向が水平または上方に向いていさえすれば、チューブ10は、その開口部101側の部分が回収バッグ7の側壁から侵入してもよいし、天板(上壁)から侵入してもよい。
【0053】
また、回収バッグ7は、それを使用するとき、回収バッグ支持装置8に支持される(載置される)。回収バッグ支持装置8は、回収バッグ7が載置される載置部(支持台)81と、載置部81の高さを調整可能な高さ調整手段としてのリンク機構82とを有している。
【0054】
載置部81は、平板で構成されている。この載置部81上に回収バッグ7を設置することができる。
【0055】
リンク機構82は、互いに中央部831で回動可能に支持された2本の長尺部材83aおよび83b有している。長尺部材83aの上端部832は、載置部81に対して回動可能に支持され、長尺部材83bの上端部832は、載置部81の当該上端部832の対応する位置に設けられた係合片84に係合する。係合片84には、例えば3つの溝(凹部)841が形成されている。これらの溝841のうちの1つを選択して長尺部材83bの上端部832を係合させることにより、載置部81の高さを調整することができる。
【0056】
載置部81の高さを調整することによって、リザーバ3内の液面L1の高さを調整することができる、つまり、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さをリザーバ3内の目標とする(図11に示す)液面L1の高さに合わせることができる。これにより、後述するサイホンの原理によって、プライミング液Pを回収することができる。
【0057】
次に、体外循環回路1の作用について説明する。
[1] ここでは、プライミング液Pが充填された供給バッグ6には、チューブ20が未だ接続されていないものとする。
【0058】
図1に示す初期状態では、ポンプ4が停止している。また、チューブ96に設置されているクランプ30は、開状態となっており、チューブ10に設置されているクランプ30は、閉状態となっている。
【0059】
チューブ91には、初期状態で、3つの鉗子40が設置されている。これらの3つの鉗子40のうちの2つの鉗子40の設置箇所としては、それぞれ、図1に示す構成では、チューブ91のチューブ95との接続部とチューブ96との接続部との間であって、チューブ95近傍(チューブ95側)およびチューブ96近傍(チューブ96側)である。また、残りの1つの鉗子40の設置箇所としては、チューブ91のチューブ96との接続部とリザーバ3(接続口37)との接続部との間である。以下、チューブ91の各鉗子40がそれぞれ設置される部分を、チューブ95側(図1中の上側)から順に、「鉗子設置部911」、「鉗子設置部912」および「鉗子設置部913」と言う。
【0060】
また、チューブ94には、初期状態で、2つの鉗子40が設置されている。これらの2つの鉗子40の設置箇所としては、それぞれ、図1に示す構成では、チューブ94のチューブ95との接続部とチューブ96との接続部との間であって、チューブ95近傍(チューブ95側)およびチューブ96近傍(チューブ96側)である。以下、チューブ94の各鉗子40がそれぞれ設置される部分を、チューブ95側(図1中の上側)から順に、「鉗子設置部941」および「鉗子設置部942」と言う。
【0061】
回収バッグ7は、回収バッグ支持装置8に設置されて(支持されて)いる。この回収バッグ7の設置高さとしては、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さをリザーバ3内の目標とする(図11に示す)液面L1の高さに合わせる。回収バッグ支持装置8では、このような高さとなるように、リンク機構82の長尺部材83bの係合片84に対する係合箇所が調整されている。
【0062】
回収バッグ7の高さがこのように設定されることにより、後述するサイホンの原理によって、プライミング液Pを回収バッグ7に容易かつ迅速に回収することができる。
【0063】
[2] 次に、供給バッグ6にチューブ20を接続する。これにより、供給バッグ6内のプライミング液Pは、自重で(落差で)チューブ20を介してリザーバ3内に流入し、さらに、図2中の矢印方向へ流れる。また、このとき、ポンプ4も作動させる。
【0064】
換言すれば、供給バッグ6にチューブ20を接続すると、供給バッグ6内のプライミング液Pは、まず、チューブ20およびリザーバ3の接続口36を順に通り、ハウジング33内に導入される。ハウジング33内に導入されたプライミング液Pは、接続口35から流出する。そして、チューブ92、ポンプ4、チューブ93を順に通過し、人工肺4に送られる。プライミング液Pは、さらに、人工肺4を通過し、チューブ94に流入する。チューブ94に流入したプライミング液Pは、チューブ94の途中からチューブ96に向かうものと、チューブ94の端部(下流側)まで行き、チューブ95に向かうものとに分かれる。
【0065】
チューブ94の途中からチューブ96に向かうプライミング液Pは、チューブ96、チューブ91を順に通過し、そして、リザーバ3に再度流入する。また、チューブ95に向かうプライミング液Pは、チューブ95、チューブ91を順に通過し、かつ、チューブ91の途中でチューブ96からのプライミング液Pと合流し、そして、リザーバ3に再度流入する。リザーバ3内のプライミング液Pは、その液面L1がチューブ10の開口部101よりも高い位置にある。
【0066】
このような過程を経て、供給バッグ6およびチューブ20を除く体外循環回路1の全体がプライミング液Pで満たされる、すなわち、プライミングされる。また、体外循環回路1では、リザーバ3内の液体(プライミング液P、血液B)の液面L1は、常時、チューブ381の下端381aよりも上方に位置するように設定されている(図2〜図11参照)。これにより、リザーバ3内のプライミング液Pを回収する際、サイホンの原理を応用する(用いる)ことができる。
【0067】
また、前述したようにチューブ10がクランプ30によって閉塞しているため、プライミング液Pがチューブ91からチューブ10に流入するのが防止されている。これにより、不本意に、すなわち、体外循環回路1の全体がプライミングされる以前に、当該体外循環回路1内のプライミング液Pが回収バッグ7に回収されるのを確実に防止することができる。
【0068】
また、図2に示す状態では、リザーバ3の突出部311内のプライミング液Pは、そのうちの図2中の液面L1から図3中の液面L1までに相当する分だけ、不要な(過剰な)ものとなっている。次工程[3]では、この不要分を回収バッグ7に回収する。
【0069】
[3] 図3に示すように、チューブ96に設置されているクランプ30を閉状態とする。また、チューブ91の鉗子設置部912に鉗子40を設置し、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を設置する。また、このとき、ポンプ4の作動を停止する。
【0070】
その後、チューブ10に設置されているクランプ30を開状態とする。これにより、チューブ10を介して、チューブ91と回収バッグ7とが連通する。よって、回収バッグ7の液体流入口(チューブ10の開口部101)に対するリザーバ3内の液面L1の落差により、すなわち、サイホンの原理により、以下のように、プライミング液Pが回収バッグ7に移送されて回収される。なお、回収バッグ7の液体が流入するチューブ10の開口部101は、目標とする液面L1の高さに位置している。
【0071】
まず、チューブ91内のプライミング液Pは、チューブ10内に流入する。チューブ91内のプライミング液Pがチューブ10内に流入し始めると、当該プライミング液Pによって、リザーバ3内のプライミング液Pは、チューブ381を通過して、チューブ91に導入される(引張られる)。そして、チューブ91に導入されたプライミング液Pは、チューブ10を介して、回収バッグ7に流入する(回収される)。このような現象は、リザーバ3内の液面L1が回収バッグ7内のチューブ10の開口部101とが同じ高さに位置するまで持続する(サイホンの原理)。これにより、リザーバ3内のプライミング液Pの不要分を容易かつ迅速に回収することができる。
【0072】
このように体外循環回路1では、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さを適宜調節しさえすれば、それに対応する量のプライミング液Pが回収バッグ7に流入する。これにより、体外循環回路1を操作する際に、操作者(使用者)がリザーバ3内の液面L1の位置を確認しつつ、その操作を行なうの必要がない。
【0073】
[4] このようにプライミング液Pが回収された後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする(図4参照)。また、チューブ91の鉗子設置部911に鉗子40を設置し、チューブ94の鉗子設置部941に鉗子40を設置する。
【0074】
このような状態で、前述したようにチューブ95を切断し、患者に予め留置された2本のカテーテルのうちの送血用カテーテルに接続する。
【0075】
[5] 図4に示す状態からチューブ94の2つの鉗子40をそれぞれ取り除く。このとき、患者から送血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、図5中の矢印方向にチューブ94に流入する。この血液Bの流れは、通常の体外循環とは反対の流れとなる。
【0076】
チューブ94に流入した血液Bは、さらに、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92を順に通過し、リザーバ3の接続部35を介して、ハウジング33の突出部311内に流入する。この血液Bにより、チューブ94、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内のプライミング液Pは、ハウジング33内に押し込まれることとなる。換言すれば、チューブ94、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内のプライミング液Pは、血液Bで置換される。
【0077】
また、血液Bが突出部311内に流入すると、その血液Bと突出部311内のプライミング液Pとが混合する、すなわち、血液Bによって突出部311内のプライミング液Pの一部が血液Bよりも薄い赤色に着色する。なお、図5中の突出部311内のプライミング液Pと血液Bとの間に位置する部分は、プライミング液Pと血液Bとが混合した混合液Mを示す。
【0078】
[6] このような着色が確認された後、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を再度設置する(図6参照)。これにより、チューブ94への血液Bの流入が停止する。また、これに伴い、リザーバ3内の液面L1の上昇も停止する。
【0079】
また、図6に示す状態では、チューブ94、人工肺5、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内にあったプライミング液Pがリザーバ3内に溜まっている。さらに、リザーバ3のチューブ381からチューブ91のチューブ10が接続されている部分までの間に、プライミング液Pが残っている。次工程[7]では、この不要分を回収バッグ7に回収する。
【0080】
[7] 図6に示す状態からチューブ10に設置されているクランプ30を再度開状態とする(図7参照)。これにより、前記工程[3]とほぼ同様にサイホンの原理によって、リザーバ3内のプライミング液P(混合液Mも含む)と、リザーバ3のチューブ381からチューブ91のチューブ10が接続されている部分までのプライミング液Pとは、チューブ10から回収バッグ7に流入する。なお、プライミング液Pの流入は、リザーバ3内の液面L1が回収バッグ7内のチューブ10の開口部101とが同じ高さに位置するまで持続する。
【0081】
このように、工程[7]では、クランプ30を開状態とするという簡単な操作で、プライミング液Pの不要分を容易かつ迅速に回収することができる。
【0082】
[8] このようなプライミング液Pの流入が停止した後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする(図8参照)。また、その後、チューブ94の鉗子設置部942から鉗子40を取り外す。
【0083】
この状態で、患者から送血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、図8中矢印方向に再度流入する。これにより、体外循環回路1では、チューブ94、人工肺5、チューブ93、ポンプ4、チューブ92、リザーバ3が、血液Bで満たされる(置換される)こととなる(図8参照)。
【0084】
[9] リザーバ3内に血液Bが所定量充填された後、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を再度設置する。これにより、血液Bのチューブ94への流入が停止する。また、チューブ91の鉗子設置部913にも鉗子40を設置する。その後、チューブ91を患者に予め留置された脱血用カテーテルのハブに接続する。
【0085】
この状態で、チューブ10に設置されているクランプ30を再度開状態とする(図9参照)。
【0086】
[10] 図9に示す状態からチューブ91の鉗子設置部911および912に設置されていた鉗子40をそれぞれ取り外す。このとき、患者から脱血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、チューブ91に流入する。チューブ91に流入した血液Bは、チューブ91内のプライミング液Pを図10中の矢印方向に押し込む。これにより、チューブ91内のプライミング液Pがチューブ10を介して、回収バッグ7内に回収される。
【0087】
[11] このようにチューブ91内のプライミング液Pが血液Bで置換された後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする。その後、チューブ91の鉗子設置部913に設置されている鉗子40と、チューブ94の鉗子設置部942に設置されている鉗子40とをそれぞれ取り外す。
【0088】
この状態で、血液Bは、落差と患者の血圧とにより、図11中の矢印方向へ流れることとなる。また、このとき、ポンプ4を再度作動させる。
【0089】
換言すれば、ポンプ4が作動すると、患者から脱血用カテーテルを介して脱血された血液Bは、チューブ91(脱血ライン)を通り、まず、リザーバ3に流入する。リザーバ3では、フィルタ部材382の作用により、血液B中の気泡が除去される。気泡が除去された血液Bは、リザーバ3の接続口35から流出して、ポンプ4内を通り、人工肺5に送られる。人工肺5では、血液Bに対してガス交換(酸素加脱炭酸ガス)がなされる。ガス交換がなされた血液Bは、チューブ94(送血ライン)を経て、送血用カテーテルを介して患者に戻される。
【0090】
以上のような作用により、体外循環回路1では、当該体外循環回路1に対してプライミングが行なわれた後にプライミング液Pを血液Bで置換する際、チューブ10に設置されたクランプ30を操作する等のような簡単な操作で、プライミング液Pを容易かつ迅速に回収することができる。このため、体外循環回路1を用いた体外循環工程(前記工程[11])に迅速に移行することができる。
【0091】
また、体外循環回路1は、プライミング液Pを血液Bによって回収バッグ7側に押し出す、すなわち、RAPを行なうことが可能であるため、体外循環回路1中の血液Bがプライミング液Pで希釈されるのを防止することができる。
【0092】
また、体外循環回路1では、図11に示す状態から、チューブ91の鉗子設置部912とチューブ94の鉗子設置部942とにそれぞれ鉗子40を設置し、その後、チューブ96のクランプ30を開状態とすることができる。この場合、人工肺5を出た血液Bは、チューブ96(再循環ライン)およびリザーバ3を順に通って再度ポンプ4に戻ることとなる。よって、血液Bは、ポンプ4および人工肺5を含む環状の流路を繰り返し循環(再循環)する。
【0093】
<第2実施形態>
図13は、本発明の体外循環回路(第2実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【0094】
以下、この図を参照して本発明の体外循環回路の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0095】
本実施形態は、リザーバおよび回収バッグの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0096】
図13に示す体外循環回路1Aの回収バッグ7Aは、ポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(または接着)して袋状とし、前記融着した部分に2つの孔71が形成されたものである。各孔71は、それぞれ、回収バッグ7Aが使用される状態で、当該回収バッグ7Aの上部に位置する部分に互いに離間して配置されている。
【0097】
リザーバ3A(ハウジング33)の側面には、回収バッグ7Aを保持する(引っ掛ける)保持部材50が設置されている。この保持部材50は、板状の支持板501と、支持板501の表側に支持される2つのフック502とで構成されている。
【0098】
支持板501は、例えばリザーバ3Aのハウジング本体31と同様の材料で構成され、裏面に両面粘着テープ(図示せず)が貼付されている。この両面粘着テープが設置されていることにより、保持部材50をリザーバ3Aに対して着脱することができ、よって、リザーバ3Aに対する保持部材50の設置高さを変更することができる(図13中の二点鎖線で示す保持部材50参照)。
【0099】
各フック502は、それぞれ、形状がL字状をなし、例えばステンレス鋼のような金属材料で構成されたものである。各フック502をそれぞれ回収バッグ7Aの孔71に挿入することにより、当該回収バッグ7Aを懸垂した状態(または立て掛けた状態)で用いることができる。
【0100】
なお、両面粘着テープの粘着力は、保持部材50に回収バッグ7Aを懸垂した状態でその回収バッグ7Aにプライミング液Pが充填されても、保持部材50がリザーバ3Aから離脱しない程度に設定されている。
【0101】
このように、体外循環回路1Aでは、保持部材50が、回収バッグ7Aのリザーバ3Aに対する設置高さを調整可能に構成されている。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収量を、症例に応じて、適宜設定することができる。
【0102】
<第3実施形態>
図14は、本発明の体外循環回路(第3実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【0103】
以下、この図を参照して本発明の体外循環回路の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0104】
本実施形態は、リザーバの構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図14に示す体外循環回路1Bのリザーバ3B(ハウジング33)の側面には、回収バッグ7Aを保持する(引っ掛ける)保持機構60が設置されている。保持機構60は、下端部がリザーバ3Bに支持された支柱601と、支柱601にその長手方向に沿って移動可能に設けられた移動部材602と、移動部材602に支持される2つのフック603と、移動部材602を支柱601に対して固定する固定ネジ(固定部材)604とで構成されている。
【0105】
支柱601は、外形が円柱状をなすものである。
移動部材602は、長尺な部材で構成されており、その一端部に支柱601が挿通する孔602aが形成されている。また、移動部材602の側部には、孔602aまで貫通する雌ネジ(図示せず)が形成されている。
【0106】
各フック603は、それぞれ、形状がL字状をなし、例えばステンレス鋼のような金属材料で構成されたものである。また、これらのフック603は、移動部材602の長手方向に沿って、離間して配置されている。各フック603をそれぞれ回収バッグ7Aの孔71に挿入することにより、当該回収バッグ7Aを懸垂した状態(または立て掛けた状態)で用いることができる。
【0107】
固定ネジ604は、雄ネジ部604aと、雄ネジ部604aの一端部に設けられたヘッド部(ネジ頭)604bとで構成されている。この固定ネジ604は、雄ネジ部604が移動部材602の雌ネジに螺合し、さらに、雄ネジ部604の他端が支柱601の外周面に係合する。これにより、移動部材602を支柱601に対して固定することができ、よって、回収バッグ7Aを所定の位置(高さ)で保持することができる。
【0108】
また、固定ネジ604を緩めることにより、移動部材602の固定が解除され、当該移動部材602を移動することができる。これにより、リザーバ3Bに対する回収バッグ7Aの設置高さを変更することができる。
【0109】
このように、体外循環回路1Bでは、保持機構60が、移動部材602が移動することにより、回収バッグ7Aのリザーバ3Aに対する設置高さを調整可能に構成されている。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収量を、症例に応じて、適宜設定することができる。
【0110】
また、支柱601の外形が円柱状をなしていることにより、固定ネジ604の固定が解除された移動部材602を、支柱601の軸回りに回動させることができる。これにより、保持された回収バッグ7Aの向きを、例えば使用者の立ち位置に応じて、変更することができる。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収状態を容易に視認(確認)することができる。
【0111】
以上、本発明の体外循環回路を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、体外循環回路を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0112】
また、本発明の体外循環回路は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0113】
また、供給バッグおよび回収バッグは、それぞれ、軟質樹脂材料で構成されたものであるのに限定されず、例えばポリプロピレン等のような硬質樹脂材料で構成されたものであってもよい。
【0114】
また、チューブを開閉するものとしては、本実施形態ではクランプを挙げたが、これに限定されず、例えば、バルブであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図2】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図3】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図4】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図5】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図6】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図7】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図8】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図9】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図10】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図11】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図12】図1に示す体外循環回路が有するリザーバの側面である。
【図13】本発明の体外循環回路(第2実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【図14】本発明の体外循環回路(第3実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0116】
1、1A、1B 体外循環回路
3、3A、3B リザーバ(貯血槽)
31 ハウジング本体
311 突出部
312 底部
32 蓋体
33 ハウジング
34 貯液空間(貯留室)
35、36、37 接続口(口部)
381 チューブ
381a 下端(下端部)
382 フィルタ部材
392 フィルタ部材
4 ポンプ(遠心ポンプ)
5 人工肺
512 血液流入ポート(流入口)
513 血液流出ポート
514 ガス流入ポート
515 熱媒体流入ポート
516 熱媒体流出ポート
6 供給バッグ(プライミング液供給部)
7、7A 回収バッグ(回収容器)
71 孔
8 回収バッグ支持装置
81 載置部(支持台)
82 リンク機構
83a、83b 長尺部材
831 中央部
832 上端部
84 係合片
841 溝(凹部)
9 回路本体
90、91、92、93、94、95、96 チューブ
911、912、913、941、942 鉗子設置部
951 ループ
10 チューブ(分岐チューブ)
101 開口部
20 チューブ
30 クランプ(クレンメ)
40 鉗子
50 保持部材
501 支持板
502 フック
60 保持機構
601 支柱
602 移動部材
602a 孔
603 フック
604 固定ネジ(固定部材)
604a 雄ネジ部
604b ヘッド部(ネジ頭)
B 血液
L1、L2 液面
M 混合液
P プライミング液
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外循環回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液を体外循環させる体外循環回路(体外循環装置)としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この体外循環回路は、患者に接続される脱血ライン(チューブ)および送血ライン(チューブ)と、脱血ラインの下流側に接続されるリザーバ(貯血槽)と、送血ラインの上流側に接続される人工肺と、リザーバと人工肺とを接続する接続ライン(チューブ)とを有している。
【0003】
特許文献1に記載の体外循環回路(以下、単に「回路」と言う)を用いて血液の体外循環をする際には、まず、回路内にプライミング液(例えば生理食塩水)を充填して(供給して)、当該回路に対してプライミングを行なう。その後、体外循環を行なう。このような操作を行なった場合、血液がプライミング液で希釈されてしまう。
【0004】
そこで、近年、体外循環を行なう前に、プライミング液を可能な限り回収して、血液が希釈される、すなわち、血液の希釈率の増加を抑制する手技がとられつつある。この手技は、通常、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)と呼ばれている。RAPを行なうには、プライミング液を回収する回収バッグが回路に予め接続されている。この状態で、通常の体外循環の血液の流れと逆方向に患者から回路に血液を送り出し、当該血液によって回路内のプライミング液を回収バッグ側に押し出す。
【0005】
しかしながら、体外循環回路の回路構成によっては、前記逆流した血液による押し出しのみでは、プライミング液が回収バッグに確実に回収されないことがある。このため、プライミング液を確実に押し出すための補助手段(押し出し手段)として、ポンプを用いたり、ライン(チューブ)を増設して回路構成を複雑なものとしたりしていた。したがって、プライミングを行なう時点から体外循環を行なうまでの、回路に対する操作(例えば、前記ポンプの作動の切替や回路中のラインの切替)が、煩雑となる。よって、RAPを迅速に行なう、すなわち、プライミング液を迅速に回収するのが困難であった。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6908446号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、体外循環回路内にプライミング液を供給してプライミングが行なわれた後に、当該プライミング液を血液で置換する際、そのプライミング液を迅速に回収することができる体外循環回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の液体を回収する回収容器とを備えることを特徴とする体外循環回路。
【0009】
(2) 血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
前記回路本体内の液体を移送するポンプと、
プライミング液を供給するプライミング液供給部と、
前記送血ラインに接続され、血液に対してガス交換を行なう人工肺と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の前記プライミング液を回収する回収容器とを備え、
前記プライミング液供給部から前記プライミング液が供給されて、少なくとも前記貯留室に対してプライミングが行なわれた後に、該貯留室内の前記プライミング液を血液で置換する際、前記貯留室内のプライミング液は、その液面の前記回収容器に対する落差により該回収容器に移送されて回収されるよう構成されていることを特徴とする体外循環回路。
【0010】
(3) 前記貯留室内の液体の液面は、前記チューブの下端部よりも上方に位置する上記(1)に記載の体外循環回路。
【0011】
(4) 前記回収容器の設置高さを調整可能な高さ調整手段を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の体外循環回路。
【0012】
(5) 前記分岐ラインは、その前記回収容器内での開口部が水平方向または水平方向に対して上向きに開口している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の体外循環回路。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体外循環回路に対してプライミングが行なわれた後にプライミング液を血液で置換する際、すなわち、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)を行なう際、当該体外循環回路に対する簡単な操作で、プライミング液を容易かつ迅速に回収することができる。これにより、体外循環回路を用いて体外循環を行なう際、その工程(体外循環工程)に迅速に移行することができる。
【0014】
また、体外循環回路では、プライミング液が回収されるため、プライミング液で血液が希釈されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の体外循環回路を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1〜図11は、それぞれ、本発明の体外循環回路の構成例(第1実施形態)を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)、図12は、図1に示す体外循環回路が有するリザーバの側面図である。なお、以下では、説明の都合上、図12中(図13および図14も同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0017】
図1〜図11に示す体外循環回路1は、血液Bを体外循環させるものである。この体外循環回路1は、RAP(Retrograde Autologous Priming:逆行性自己血充填)を行なうのが可能な回路である。ここで、「RAP」とは、体外循環回路1をプライミングして(プライミング液Pを充填して)、その後通常の、血液Bの体外循環(以下、この「血液Bの体外循環」を単に「体外循環」と言うことがある)を行なう(図11参照)前に、プライミング液Pを可能な限り回収して、血液が希釈される、すなわち、血液の希釈率の増加を抑制する手技のことである。
【0018】
図1に示すように、体外循環回路1は、4本の実質的に透明なチューブ90、92、93および96で構成された回路本体9と、これらのチューブで接続されたリザーバ(貯血槽)3、送血用のポンプ(遠心ポンプ)4および人工肺5とを有している。また、体外循環回路1は、これらの構成要素の他に、プライミング液Pを供給する供給バッグ(プライミング液供給部)6と、供給バッグ6とリザーバ3とを接続する実質的に透明なチューブ20と、回路本体9(チューブ91)から分岐した実質的に透明なチューブ(分岐チューブ(分岐ライン))10と、チューブ10に接続された回収バッグ(回収容器)7と、回収バッグを支持する回収バッグ支持装置8と、チューブ96およびチューブ10をそれぞれ開閉する2つのクランプ(クレンメ)30とをさらに有している。
【0019】
なお、本実施形態では、説明の都合上、チューブ90の図1中リザーバ3側(右側)の上下方向に延在する部分を「チューブ91」と言い、図1中人工肺5側(左側)の上下方向に延在する部分を「チューブ94」と言い、チューブ91とチューブ94との間の図1中左右方向に延在する部分を「チューブ95」と言う。
【0020】
以下、各部の構成について説明する。
図12に示すリザーバ3は、体外循環回路1中の液体(例えば、大静脈から脱血した血液Bや、プライミング液P)を一時的に貯留しておくものである。このリザーバ3は、ハウジング本体31と蓋体32とで構成されるハウジング33を有する。このハウジング33の内部には、液体(血液)を貯留する貯液空間(貯留室)34が形成されている。
【0021】
ハウジング本体31は、図12中左側において下方に突出する突出部311を有する箱形をなしており、この突出部311の下部には、貯液空間34に連通する管状の接続口(口部)35が形成されている。
【0022】
蓋体32は、ハウジング本体31の上部開口を覆うようにハウジング本体31の上端に嵌合されている。また、蓋体32の所定位置には、管状の接続口(口部)36および37がそれぞれ形成されている。
接続口35〜37は、それぞれ、体外循環回路1に次のように接続される。
【0023】
図11に示すように、接続口37には、体外循環を行なう際に脱血ラインとして機能するチューブ91が接続される。すなわち、接続口37には、体外循環を行なう際に患者の脱血部(血管)から血液が流入する。
【0024】
接続口36には、チューブ20が接続される。このチューブ20を介して、リザーバ3と供給バッグ6とが接続され、リザーバ3に供給バッグ6からのプライミング液Pが供給される。
【0025】
接続口35には、チューブ92が接続される。このチューブ92を介して、リザーバ3とポンプ4とが接続される。このポンプ4の作動により、リザーバ3から液体(血液B、プライミング液P)が人工肺5へ送られる。
【0026】
なお、ハウジング本体31および蓋体32の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができ、このなかでも特に、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0027】
このような構成のリザーバ3は、接続口36および37が鉛直上方に位置し、接続口35が鉛直下方に位置するような姿勢で使用される。
【0028】
また、接続口37には、ハウジング33の内側で、チューブ381が接続されている。これにより、チューブ381は、その上端側で接続口37を介してチューブ91と連通する。また、チューブ381の下端(下端部)381aは、開口している。図12に示すように、下端381aは、突出部311(ハウジング33)の底部312付近に位置し、当該底部312に臨んでいる。
【0029】
チューブ381の外側には、袋状をなし、チューブ381を包含するフィルタ部材382が配置されている。このフィルタ部材382は、その上端部が蓋体32に支持されている。
【0030】
フィルタ部材382は、血液中の異物や気泡を除去する機能を有するものである。フィルタ部材382の素材は、十分な血液の透過性を有する多孔質材料で構成される。
【0031】
また、接続口36のハウジング33側には、袋状をなすフィルタ部材392が配置されている。このフィルタ部材392は、その上端部が蓋体32に支持されている。
【0032】
フィルタ部材392は、プライミング液P、輸血用血液、補液中の異物や気泡を除去する機能を有するものである。フィルタ部材382の素材は、十分なプライミング液(液体)の透過性を有する多孔質材料で構成される。
【0033】
また、チューブ381とフィルタ部材382との間と、フィルタ部材392内側とには、それぞれ、消泡する消泡部材(図示せず)が設置されている。
【0034】
チューブ381の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の高分子材料を挙げることができる。
【0035】
また、フィルタ部材382および392を構成する多孔質材料としては、例えば、メッシュ(ネット)状のもの、織布、不織布等が挙げられ、これらを単独でまたは任意に組み合わせて(特に積層して)用いることができる。
【0036】
また、人工肺5には、血液が人工肺5に流入する血液流入ポート(流入口)512と、人工肺5から血液が流出する血液流出ポート(流出口)513と、ガス流入ポート514と、ガス流出ポート(図示せず)と、熱媒体流入ポート515と、熱媒体流出ポート516とが突出形成されている。また、この人工肺5には、ガス交換機能を有する中空糸膜が多数集積された中空糸膜束が収納されている。また、当該中空糸膜束の外周部に設けられ、気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材が収納されていてもよい。
【0037】
ポンプ4は、体外循環回路1(回路本体9)内の血液を送液(送血)するものである。このポンプ4は、制御装置(図示せず)からの制御によって回転する回転体(図示せず)を有している。ポンプ4では、前記回転体の回転数に応じて、送血量(送液量)を調整する(制御する)ことができる。
【0038】
このポンプ4は、リザーバ3と人工肺5との間に配置され、リザーバ3に接続されているチューブ92と、人工肺5に接続さているチューブ93とに、それぞれ、接続されている(例えば、図1参照)。
【0039】
前述したように、回路本体9は、チューブ90、92、93および96で構成されておおり、さらに、チューブ90は、3つの部位(チューブ91、94および95)に分けることができる。図1(図2、図3も同様)に示すように、体外循環回路1は、体外循環の際に脱血ラインとして機能するチューブ91と、リザーバ3と、チューブ92と、ポンプ4と、チューブ93と、人工肺5と、体外循環の際に送血ラインとして機能するチューブ94と、チューブ91およびチューブ95の端部同士を接続する接続ラインとしてのチューブ95とが、この順に接続された回路構成となっている。
【0040】
チューブ95は、体外循環回路1がプライミング液Pでプライミングされるまで当該体外循環回路1に設置されている(例えば図3参照)。その後、図5(図6〜図11も同様)に示すように、血液Bの体外循環するときには、チューブ95を、例えばそのループ951の中央部とループ951よりチューブ94側の部分との間を切断して取り除き、残った部分をそれぞれ、患者(図示せず)に予め留置された脱血用および送血用カテーテル(図示せず)に接続する。この状態で、血液Bの体外循環が行なわれる。
【0041】
また、体外循環回路1では、チューブ91の途中とチューブ94の途中とがチューブ96によって、接続されている。このチューブ96は、体外循環回路1で血液Bの再循環を行なう際に再循環ライン(接続ライン)として機能するものである。
【0042】
チューブ91の、チューブ96が接続されている部分とリザーバ3が接続されている部分との間には、チューブ10が接続されている。このチューブ10は、後述する回収バッグ7が接続されている。プライミング液Pは、チューブ10を通過して(介して)、回収バッグ7に回収されることとなる。
【0043】
なお、チューブ90〜96、10および20の構成材料としては、特に限定されず、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような可撓性を有する高分子材料が挙げられる。
【0044】
チューブ96およびチューブ10の途中には、それぞれ、クランプ30が設置されている。各クランプ30は、それぞれ、チューブを外側から圧閉することができる。これにより、チューブ96(チューブ10も同様)は、閉状態(閉塞状態)となる。また、クランプ30による圧閉が解除されると、チューブ96(チューブ10も同様)は、開状態(開放状態)となる。
【0045】
供給バッグ6は、プライミング液Pを供給するものである。供給バッグ6は、例えばポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(熱融着、高周波融着等)または接着し、袋状としたものである。このシート材同士の間に形成された空間内に、プライミング液Pが予め充填されている。プライミング液Pは、体外循環回路1全体に供給するのに十分な程度に充填されている。プライミング液Pの充填量としては、回路本体9の大部分を占めるチューブ91、94の長さがそれぞれ例えば100〜200cmである場合、750〜1500mLであるのが好ましい。
【0046】
このような供給バッグ6は、チューブ20を介して、リザーバ3(ハウジング33)に接続されている。プライミング液Pがリザーバ3からハウジング33(貯液空間34)内に流入した際、このプライミング液Pとともに流入した気泡は、フィルタ部材392によって捕捉される。これにより、気泡がフィルタ部材392より下流側に流出するのを抑制または防止することができる。
【0047】
また、供給バッグ6の口部は、ゴム栓より封止されている。このゴム栓に針管を刺通して、供給バッグ6とチューブ20と接続した際に、ゴムくず(コアリング)が生じることがある。リザーバ3では、ゴムくずやチューブ20内の異物をフィルタ部材392で捕捉することができる。
【0048】
なお、プライミング液Pとしては、例えば、生理食塩水、乳酸リンゲル液等が挙げられる。
【0049】
回収バッグ7は、プライミング液Pを回収するものである。回収バッグ7は、例えば、供給バッグ6と同様に、ポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(熱融着、高周波融着等)または接着し、袋状としたものである。このシート材同士の間に形成された空間内に、プライミング液Pが収納される(回収される)。回収バッグ7の容積は、供給バッグ6の容積と同程度またはそれより若干大きく設定されている。
【0050】
なお、回収バッグ7の外形形状は、特に限定されないが、当該回収バッグ7にプライミング液Pが充填されたとき、すなわち、回収バッグ7が膨張したとき、例えば、長尺状(平板状(扁平形状)や柱状)をなすのが好ましい。
【0051】
また、回収バッグ7は、その長手方向がほぼ水平方向と平行となるように載置してもよいし、その長手方向がほぼ鉛直方向に沿うように載置してもよい。本実施形態では、回収バッグ7は、その長手方向がほぼ鉛直方向に沿うように載置されている。
【0052】
また、チューブ10の開口部101(回収バッグ7の液体流入口)は、回収バッグ7の上部に位置し、その開口方向が水平方向であるか、または、水平方向に対してやや上方を向いている必要がある。例えば、チューブ10の開口部101が下方に向かって開口している場合、開口部101から液滴が落下すると、その落下した液滴の分、チューブ10内に空気が入り込んでしまう問題がある。このような問題が生じるのを防止するために、前述したように、チューブ10の開口部101の開口方向を規定する必要がある。開口方向が水平または上方に向いていさえすれば、チューブ10は、その開口部101側の部分が回収バッグ7の側壁から侵入してもよいし、天板(上壁)から侵入してもよい。
【0053】
また、回収バッグ7は、それを使用するとき、回収バッグ支持装置8に支持される(載置される)。回収バッグ支持装置8は、回収バッグ7が載置される載置部(支持台)81と、載置部81の高さを調整可能な高さ調整手段としてのリンク機構82とを有している。
【0054】
載置部81は、平板で構成されている。この載置部81上に回収バッグ7を設置することができる。
【0055】
リンク機構82は、互いに中央部831で回動可能に支持された2本の長尺部材83aおよび83b有している。長尺部材83aの上端部832は、載置部81に対して回動可能に支持され、長尺部材83bの上端部832は、載置部81の当該上端部832の対応する位置に設けられた係合片84に係合する。係合片84には、例えば3つの溝(凹部)841が形成されている。これらの溝841のうちの1つを選択して長尺部材83bの上端部832を係合させることにより、載置部81の高さを調整することができる。
【0056】
載置部81の高さを調整することによって、リザーバ3内の液面L1の高さを調整することができる、つまり、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さをリザーバ3内の目標とする(図11に示す)液面L1の高さに合わせることができる。これにより、後述するサイホンの原理によって、プライミング液Pを回収することができる。
【0057】
次に、体外循環回路1の作用について説明する。
[1] ここでは、プライミング液Pが充填された供給バッグ6には、チューブ20が未だ接続されていないものとする。
【0058】
図1に示す初期状態では、ポンプ4が停止している。また、チューブ96に設置されているクランプ30は、開状態となっており、チューブ10に設置されているクランプ30は、閉状態となっている。
【0059】
チューブ91には、初期状態で、3つの鉗子40が設置されている。これらの3つの鉗子40のうちの2つの鉗子40の設置箇所としては、それぞれ、図1に示す構成では、チューブ91のチューブ95との接続部とチューブ96との接続部との間であって、チューブ95近傍(チューブ95側)およびチューブ96近傍(チューブ96側)である。また、残りの1つの鉗子40の設置箇所としては、チューブ91のチューブ96との接続部とリザーバ3(接続口37)との接続部との間である。以下、チューブ91の各鉗子40がそれぞれ設置される部分を、チューブ95側(図1中の上側)から順に、「鉗子設置部911」、「鉗子設置部912」および「鉗子設置部913」と言う。
【0060】
また、チューブ94には、初期状態で、2つの鉗子40が設置されている。これらの2つの鉗子40の設置箇所としては、それぞれ、図1に示す構成では、チューブ94のチューブ95との接続部とチューブ96との接続部との間であって、チューブ95近傍(チューブ95側)およびチューブ96近傍(チューブ96側)である。以下、チューブ94の各鉗子40がそれぞれ設置される部分を、チューブ95側(図1中の上側)から順に、「鉗子設置部941」および「鉗子設置部942」と言う。
【0061】
回収バッグ7は、回収バッグ支持装置8に設置されて(支持されて)いる。この回収バッグ7の設置高さとしては、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さをリザーバ3内の目標とする(図11に示す)液面L1の高さに合わせる。回収バッグ支持装置8では、このような高さとなるように、リンク機構82の長尺部材83bの係合片84に対する係合箇所が調整されている。
【0062】
回収バッグ7の高さがこのように設定されることにより、後述するサイホンの原理によって、プライミング液Pを回収バッグ7に容易かつ迅速に回収することができる。
【0063】
[2] 次に、供給バッグ6にチューブ20を接続する。これにより、供給バッグ6内のプライミング液Pは、自重で(落差で)チューブ20を介してリザーバ3内に流入し、さらに、図2中の矢印方向へ流れる。また、このとき、ポンプ4も作動させる。
【0064】
換言すれば、供給バッグ6にチューブ20を接続すると、供給バッグ6内のプライミング液Pは、まず、チューブ20およびリザーバ3の接続口36を順に通り、ハウジング33内に導入される。ハウジング33内に導入されたプライミング液Pは、接続口35から流出する。そして、チューブ92、ポンプ4、チューブ93を順に通過し、人工肺4に送られる。プライミング液Pは、さらに、人工肺4を通過し、チューブ94に流入する。チューブ94に流入したプライミング液Pは、チューブ94の途中からチューブ96に向かうものと、チューブ94の端部(下流側)まで行き、チューブ95に向かうものとに分かれる。
【0065】
チューブ94の途中からチューブ96に向かうプライミング液Pは、チューブ96、チューブ91を順に通過し、そして、リザーバ3に再度流入する。また、チューブ95に向かうプライミング液Pは、チューブ95、チューブ91を順に通過し、かつ、チューブ91の途中でチューブ96からのプライミング液Pと合流し、そして、リザーバ3に再度流入する。リザーバ3内のプライミング液Pは、その液面L1がチューブ10の開口部101よりも高い位置にある。
【0066】
このような過程を経て、供給バッグ6およびチューブ20を除く体外循環回路1の全体がプライミング液Pで満たされる、すなわち、プライミングされる。また、体外循環回路1では、リザーバ3内の液体(プライミング液P、血液B)の液面L1は、常時、チューブ381の下端381aよりも上方に位置するように設定されている(図2〜図11参照)。これにより、リザーバ3内のプライミング液Pを回収する際、サイホンの原理を応用する(用いる)ことができる。
【0067】
また、前述したようにチューブ10がクランプ30によって閉塞しているため、プライミング液Pがチューブ91からチューブ10に流入するのが防止されている。これにより、不本意に、すなわち、体外循環回路1の全体がプライミングされる以前に、当該体外循環回路1内のプライミング液Pが回収バッグ7に回収されるのを確実に防止することができる。
【0068】
また、図2に示す状態では、リザーバ3の突出部311内のプライミング液Pは、そのうちの図2中の液面L1から図3中の液面L1までに相当する分だけ、不要な(過剰な)ものとなっている。次工程[3]では、この不要分を回収バッグ7に回収する。
【0069】
[3] 図3に示すように、チューブ96に設置されているクランプ30を閉状態とする。また、チューブ91の鉗子設置部912に鉗子40を設置し、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を設置する。また、このとき、ポンプ4の作動を停止する。
【0070】
その後、チューブ10に設置されているクランプ30を開状態とする。これにより、チューブ10を介して、チューブ91と回収バッグ7とが連通する。よって、回収バッグ7の液体流入口(チューブ10の開口部101)に対するリザーバ3内の液面L1の落差により、すなわち、サイホンの原理により、以下のように、プライミング液Pが回収バッグ7に移送されて回収される。なお、回収バッグ7の液体が流入するチューブ10の開口部101は、目標とする液面L1の高さに位置している。
【0071】
まず、チューブ91内のプライミング液Pは、チューブ10内に流入する。チューブ91内のプライミング液Pがチューブ10内に流入し始めると、当該プライミング液Pによって、リザーバ3内のプライミング液Pは、チューブ381を通過して、チューブ91に導入される(引張られる)。そして、チューブ91に導入されたプライミング液Pは、チューブ10を介して、回収バッグ7に流入する(回収される)。このような現象は、リザーバ3内の液面L1が回収バッグ7内のチューブ10の開口部101とが同じ高さに位置するまで持続する(サイホンの原理)。これにより、リザーバ3内のプライミング液Pの不要分を容易かつ迅速に回収することができる。
【0072】
このように体外循環回路1では、回収バッグ7内のチューブ10の開口部101の高さを適宜調節しさえすれば、それに対応する量のプライミング液Pが回収バッグ7に流入する。これにより、体外循環回路1を操作する際に、操作者(使用者)がリザーバ3内の液面L1の位置を確認しつつ、その操作を行なうの必要がない。
【0073】
[4] このようにプライミング液Pが回収された後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする(図4参照)。また、チューブ91の鉗子設置部911に鉗子40を設置し、チューブ94の鉗子設置部941に鉗子40を設置する。
【0074】
このような状態で、前述したようにチューブ95を切断し、患者に予め留置された2本のカテーテルのうちの送血用カテーテルに接続する。
【0075】
[5] 図4に示す状態からチューブ94の2つの鉗子40をそれぞれ取り除く。このとき、患者から送血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、図5中の矢印方向にチューブ94に流入する。この血液Bの流れは、通常の体外循環とは反対の流れとなる。
【0076】
チューブ94に流入した血液Bは、さらに、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92を順に通過し、リザーバ3の接続部35を介して、ハウジング33の突出部311内に流入する。この血液Bにより、チューブ94、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内のプライミング液Pは、ハウジング33内に押し込まれることとなる。換言すれば、チューブ94、人工肺4、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内のプライミング液Pは、血液Bで置換される。
【0077】
また、血液Bが突出部311内に流入すると、その血液Bと突出部311内のプライミング液Pとが混合する、すなわち、血液Bによって突出部311内のプライミング液Pの一部が血液Bよりも薄い赤色に着色する。なお、図5中の突出部311内のプライミング液Pと血液Bとの間に位置する部分は、プライミング液Pと血液Bとが混合した混合液Mを示す。
【0078】
[6] このような着色が確認された後、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を再度設置する(図6参照)。これにより、チューブ94への血液Bの流入が停止する。また、これに伴い、リザーバ3内の液面L1の上昇も停止する。
【0079】
また、図6に示す状態では、チューブ94、人工肺5、チューブ93、ポンプ4、チューブ92内にあったプライミング液Pがリザーバ3内に溜まっている。さらに、リザーバ3のチューブ381からチューブ91のチューブ10が接続されている部分までの間に、プライミング液Pが残っている。次工程[7]では、この不要分を回収バッグ7に回収する。
【0080】
[7] 図6に示す状態からチューブ10に設置されているクランプ30を再度開状態とする(図7参照)。これにより、前記工程[3]とほぼ同様にサイホンの原理によって、リザーバ3内のプライミング液P(混合液Mも含む)と、リザーバ3のチューブ381からチューブ91のチューブ10が接続されている部分までのプライミング液Pとは、チューブ10から回収バッグ7に流入する。なお、プライミング液Pの流入は、リザーバ3内の液面L1が回収バッグ7内のチューブ10の開口部101とが同じ高さに位置するまで持続する。
【0081】
このように、工程[7]では、クランプ30を開状態とするという簡単な操作で、プライミング液Pの不要分を容易かつ迅速に回収することができる。
【0082】
[8] このようなプライミング液Pの流入が停止した後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする(図8参照)。また、その後、チューブ94の鉗子設置部942から鉗子40を取り外す。
【0083】
この状態で、患者から送血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、図8中矢印方向に再度流入する。これにより、体外循環回路1では、チューブ94、人工肺5、チューブ93、ポンプ4、チューブ92、リザーバ3が、血液Bで満たされる(置換される)こととなる(図8参照)。
【0084】
[9] リザーバ3内に血液Bが所定量充填された後、チューブ94の鉗子設置部942に鉗子40を再度設置する。これにより、血液Bのチューブ94への流入が停止する。また、チューブ91の鉗子設置部913にも鉗子40を設置する。その後、チューブ91を患者に予め留置された脱血用カテーテルのハブに接続する。
【0085】
この状態で、チューブ10に設置されているクランプ30を再度開状態とする(図9参照)。
【0086】
[10] 図9に示す状態からチューブ91の鉗子設置部911および912に設置されていた鉗子40をそれぞれ取り外す。このとき、患者から脱血用カテーテルを介して血液Bが、血圧により、チューブ91に流入する。チューブ91に流入した血液Bは、チューブ91内のプライミング液Pを図10中の矢印方向に押し込む。これにより、チューブ91内のプライミング液Pがチューブ10を介して、回収バッグ7内に回収される。
【0087】
[11] このようにチューブ91内のプライミング液Pが血液Bで置換された後、チューブ10に設置されているクランプ30を再度閉状態とする。その後、チューブ91の鉗子設置部913に設置されている鉗子40と、チューブ94の鉗子設置部942に設置されている鉗子40とをそれぞれ取り外す。
【0088】
この状態で、血液Bは、落差と患者の血圧とにより、図11中の矢印方向へ流れることとなる。また、このとき、ポンプ4を再度作動させる。
【0089】
換言すれば、ポンプ4が作動すると、患者から脱血用カテーテルを介して脱血された血液Bは、チューブ91(脱血ライン)を通り、まず、リザーバ3に流入する。リザーバ3では、フィルタ部材382の作用により、血液B中の気泡が除去される。気泡が除去された血液Bは、リザーバ3の接続口35から流出して、ポンプ4内を通り、人工肺5に送られる。人工肺5では、血液Bに対してガス交換(酸素加脱炭酸ガス)がなされる。ガス交換がなされた血液Bは、チューブ94(送血ライン)を経て、送血用カテーテルを介して患者に戻される。
【0090】
以上のような作用により、体外循環回路1では、当該体外循環回路1に対してプライミングが行なわれた後にプライミング液Pを血液Bで置換する際、チューブ10に設置されたクランプ30を操作する等のような簡単な操作で、プライミング液Pを容易かつ迅速に回収することができる。このため、体外循環回路1を用いた体外循環工程(前記工程[11])に迅速に移行することができる。
【0091】
また、体外循環回路1は、プライミング液Pを血液Bによって回収バッグ7側に押し出す、すなわち、RAPを行なうことが可能であるため、体外循環回路1中の血液Bがプライミング液Pで希釈されるのを防止することができる。
【0092】
また、体外循環回路1では、図11に示す状態から、チューブ91の鉗子設置部912とチューブ94の鉗子設置部942とにそれぞれ鉗子40を設置し、その後、チューブ96のクランプ30を開状態とすることができる。この場合、人工肺5を出た血液Bは、チューブ96(再循環ライン)およびリザーバ3を順に通って再度ポンプ4に戻ることとなる。よって、血液Bは、ポンプ4および人工肺5を含む環状の流路を繰り返し循環(再循環)する。
【0093】
<第2実施形態>
図13は、本発明の体外循環回路(第2実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【0094】
以下、この図を参照して本発明の体外循環回路の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0095】
本実施形態は、リザーバおよび回収バッグの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0096】
図13に示す体外循環回路1Aの回収バッグ7Aは、ポリ塩化ビニルのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁を融着(または接着)して袋状とし、前記融着した部分に2つの孔71が形成されたものである。各孔71は、それぞれ、回収バッグ7Aが使用される状態で、当該回収バッグ7Aの上部に位置する部分に互いに離間して配置されている。
【0097】
リザーバ3A(ハウジング33)の側面には、回収バッグ7Aを保持する(引っ掛ける)保持部材50が設置されている。この保持部材50は、板状の支持板501と、支持板501の表側に支持される2つのフック502とで構成されている。
【0098】
支持板501は、例えばリザーバ3Aのハウジング本体31と同様の材料で構成され、裏面に両面粘着テープ(図示せず)が貼付されている。この両面粘着テープが設置されていることにより、保持部材50をリザーバ3Aに対して着脱することができ、よって、リザーバ3Aに対する保持部材50の設置高さを変更することができる(図13中の二点鎖線で示す保持部材50参照)。
【0099】
各フック502は、それぞれ、形状がL字状をなし、例えばステンレス鋼のような金属材料で構成されたものである。各フック502をそれぞれ回収バッグ7Aの孔71に挿入することにより、当該回収バッグ7Aを懸垂した状態(または立て掛けた状態)で用いることができる。
【0100】
なお、両面粘着テープの粘着力は、保持部材50に回収バッグ7Aを懸垂した状態でその回収バッグ7Aにプライミング液Pが充填されても、保持部材50がリザーバ3Aから離脱しない程度に設定されている。
【0101】
このように、体外循環回路1Aでは、保持部材50が、回収バッグ7Aのリザーバ3Aに対する設置高さを調整可能に構成されている。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収量を、症例に応じて、適宜設定することができる。
【0102】
<第3実施形態>
図14は、本発明の体外循環回路(第3実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【0103】
以下、この図を参照して本発明の体外循環回路の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0104】
本実施形態は、リザーバの構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図14に示す体外循環回路1Bのリザーバ3B(ハウジング33)の側面には、回収バッグ7Aを保持する(引っ掛ける)保持機構60が設置されている。保持機構60は、下端部がリザーバ3Bに支持された支柱601と、支柱601にその長手方向に沿って移動可能に設けられた移動部材602と、移動部材602に支持される2つのフック603と、移動部材602を支柱601に対して固定する固定ネジ(固定部材)604とで構成されている。
【0105】
支柱601は、外形が円柱状をなすものである。
移動部材602は、長尺な部材で構成されており、その一端部に支柱601が挿通する孔602aが形成されている。また、移動部材602の側部には、孔602aまで貫通する雌ネジ(図示せず)が形成されている。
【0106】
各フック603は、それぞれ、形状がL字状をなし、例えばステンレス鋼のような金属材料で構成されたものである。また、これらのフック603は、移動部材602の長手方向に沿って、離間して配置されている。各フック603をそれぞれ回収バッグ7Aの孔71に挿入することにより、当該回収バッグ7Aを懸垂した状態(または立て掛けた状態)で用いることができる。
【0107】
固定ネジ604は、雄ネジ部604aと、雄ネジ部604aの一端部に設けられたヘッド部(ネジ頭)604bとで構成されている。この固定ネジ604は、雄ネジ部604が移動部材602の雌ネジに螺合し、さらに、雄ネジ部604の他端が支柱601の外周面に係合する。これにより、移動部材602を支柱601に対して固定することができ、よって、回収バッグ7Aを所定の位置(高さ)で保持することができる。
【0108】
また、固定ネジ604を緩めることにより、移動部材602の固定が解除され、当該移動部材602を移動することができる。これにより、リザーバ3Bに対する回収バッグ7Aの設置高さを変更することができる。
【0109】
このように、体外循環回路1Bでは、保持機構60が、移動部材602が移動することにより、回収バッグ7Aのリザーバ3Aに対する設置高さを調整可能に構成されている。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収量を、症例に応じて、適宜設定することができる。
【0110】
また、支柱601の外形が円柱状をなしていることにより、固定ネジ604の固定が解除された移動部材602を、支柱601の軸回りに回動させることができる。これにより、保持された回収バッグ7Aの向きを、例えば使用者の立ち位置に応じて、変更することができる。これにより、回収バッグ7Aに回収されるプライミング液Pの回収状態を容易に視認(確認)することができる。
【0111】
以上、本発明の体外循環回路を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、体外循環回路を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0112】
また、本発明の体外循環回路は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0113】
また、供給バッグおよび回収バッグは、それぞれ、軟質樹脂材料で構成されたものであるのに限定されず、例えばポリプロピレン等のような硬質樹脂材料で構成されたものであってもよい。
【0114】
また、チューブを開閉するものとしては、本実施形態ではクランプを挙げたが、これに限定されず、例えば、バルブであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図2】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図3】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図4】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図5】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図6】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図7】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図8】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図9】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図10】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図11】本発明の体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図(本発明の体外循環回路の使用方法を順に示す図)である。
【図12】図1に示す体外循環回路が有するリザーバの側面である。
【図13】本発明の体外循環回路(第2実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【図14】本発明の体外循環回路(第3実施形態)が有するリザーバおよび回収バッグを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0116】
1、1A、1B 体外循環回路
3、3A、3B リザーバ(貯血槽)
31 ハウジング本体
311 突出部
312 底部
32 蓋体
33 ハウジング
34 貯液空間(貯留室)
35、36、37 接続口(口部)
381 チューブ
381a 下端(下端部)
382 フィルタ部材
392 フィルタ部材
4 ポンプ(遠心ポンプ)
5 人工肺
512 血液流入ポート(流入口)
513 血液流出ポート
514 ガス流入ポート
515 熱媒体流入ポート
516 熱媒体流出ポート
6 供給バッグ(プライミング液供給部)
7、7A 回収バッグ(回収容器)
71 孔
8 回収バッグ支持装置
81 載置部(支持台)
82 リンク機構
83a、83b 長尺部材
831 中央部
832 上端部
84 係合片
841 溝(凹部)
9 回路本体
90、91、92、93、94、95、96 チューブ
911、912、913、941、942 鉗子設置部
951 ループ
10 チューブ(分岐チューブ)
101 開口部
20 チューブ
30 クランプ(クレンメ)
40 鉗子
50 保持部材
501 支持板
502 フック
60 保持機構
601 支柱
602 移動部材
602a 孔
603 フック
604 固定ネジ(固定部材)
604a 雄ネジ部
604b ヘッド部(ネジ頭)
B 血液
L1、L2 液面
M 混合液
P プライミング液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の液体を回収する回収容器とを備えることを特徴とする体外循環回路。
【請求項2】
血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
前記回路本体内の液体を移送するポンプと、
プライミング液を供給するプライミング液供給部と、
前記送血ラインに接続され、血液に対してガス交換を行なう人工肺と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の前記プライミング液を回収する回収容器とを備え、
前記プライミング液供給部から前記プライミング液が供給されて、少なくとも前記貯留室に対してプライミングが行なわれた後に、該貯留室内の前記プライミング液を血液で置換する際、前記貯留室内のプライミング液は、その液面の前記回収容器に対する落差により該回収容器に移送されて回収されるよう構成されていることを特徴とする体外循環回路。
【請求項3】
前記貯留室内の液体の液面は、前記チューブの下端部よりも上方に位置する請求項1に記載の体外循環回路。
【請求項4】
前記回収容器の設置高さを調整可能な高さ調整手段を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の体外循環回路。
【請求項5】
前記分岐ラインは、その前記回収容器内での開口部が水平方向または水平方向に対して上向きに開口している請求項1ないし4のいずれかに記載の体外循環回路。
【請求項1】
血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の液体を回収する回収容器とを備えることを特徴とする体外循環回路。
【請求項2】
血液を体外循環させる体外循環回路であって、
脱血ラインと送血ラインとを有する回路本体と、
前記回路本体内の液体を移送するポンプと、
プライミング液を供給するプライミング液供給部と、
前記送血ラインに接続され、血液に対してガス交換を行なう人工肺と、
液体を一時的に貯留する貯留室と、前記脱血ラインと上端側で連通し、下端部が前記貯留室の底部付近に開口したチューブとを有するリザーバと、
前記脱血ラインの途中から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと連通し、該分岐ラインを介して前記貯留室内の前記プライミング液を回収する回収容器とを備え、
前記プライミング液供給部から前記プライミング液が供給されて、少なくとも前記貯留室に対してプライミングが行なわれた後に、該貯留室内の前記プライミング液を血液で置換する際、前記貯留室内のプライミング液は、その液面の前記回収容器に対する落差により該回収容器に移送されて回収されるよう構成されていることを特徴とする体外循環回路。
【請求項3】
前記貯留室内の液体の液面は、前記チューブの下端部よりも上方に位置する請求項1に記載の体外循環回路。
【請求項4】
前記回収容器の設置高さを調整可能な高さ調整手段を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の体外循環回路。
【請求項5】
前記分岐ラインは、その前記回収容器内での開口部が水平方向または水平方向に対して上向きに開口している請求項1ないし4のいずれかに記載の体外循環回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−264169(P2008−264169A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110651(P2007−110651)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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